特許第6855911号(P6855911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855911
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】タイヤの雪上性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20210329BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   G01M17/02
   B60C19/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-90967(P2017-90967)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-189454(P2018-189454A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】岩本 直樹
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−014667(JP,A)
【文献】 特開2015−137999(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3123589(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0250997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラムの走行面に雪を吹き付けつつ、この走行面の幅よりも狭い幅を有しかつ幅方向に移動する押圧器によってこの雪を上記走行面に押し付けて、圧雪層を形成する工程
及び
試験タイヤを上記圧雪層の上で走行させる工程
を含むタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項2】
上記圧雪層を形成する工程において、上記ドラムが回転したときの上記走行面の速度が、10km/h以上100km/h以下である請求項1に記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項3】
上記圧雪層を形成する工程において、上記押圧器が幅方向に移動する速度が、1m/h以上100m/h以下である請求項1又は2に記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項4】
上記圧雪層を形成する工程において、上記走行面の幅の15%以上30%以下である幅を有する押圧器によって上記雪を上記走行面に押し付ける請求項1から3のいずれかに記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項5】
上記圧雪層を形成する工程と上記試験タイヤを上記圧雪層の上で走行させる工程との間に、
上記ドラムを回転させつつ、幅方向に移動する切削器で、上記圧雪層の表面を削る工程
をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項6】
上記圧雪層の表面を削る工程において、上記ドラムが回転したときの上記走行面の速度が、60km/h以上120km/h以下である請求項5に記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項7】
上記圧雪層の表面を削る工程において、上記切削器が幅方向に移動する速度が、10m/h以上200m/h以下である請求項5又は6に記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項8】
上記切削器の背面の幅が1cm以上10cm以下である請求項5から7のいずれかに記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項9】
上記押圧器が、そのトレッド面に溝が刻まれていないタイヤである請求項1から8のいずれかに記載のタイヤの雪上性能評価方法。
【請求項10】
走行面を有しかつ回転しうるドラム、
上記走行面に雪を吹き付ける降雪器
及び
上記走行面の幅よりも狭い幅を有しており、上記走行面の幅方向に移動しつつ上記雪を上記走行面に押しつける押圧器
を有するタイヤの雪上性能評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの雪上性能の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路走行用のタイヤには、雪上での良好な走行性能や制動性能が求められる。タイヤのこれらの雪上性能の評価に、インサイドドラム型の走行試験機が用いられることがある。試験においては、この試験機のドラムの内周面に、圧雪からなる層(圧雪層)が形成される。タイヤがこの圧雪層の表面に所定の荷重で押し付けられ、ドラムが所定の速度で回転される。これにより、摩擦係数や制動距離が測定される。雪上性能を評価するためのインサイドドラム型の試験機についての検討が、特開2008−14667公報で報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−14667公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドラムの内周面に形成された圧雪層の硬さは、タイヤの雪上性能に影響を及ぼす。雪上性能の評価精度を向上させるために、より均一な硬さを有する圧雪層が形成できる評価方法が求められている。
【0005】
本発明の目的は、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる評価方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る評価方法は、
回転するドラムの走行面に雪を吹き付けつつ、この走行面の幅よりも狭い幅を有しかつ幅方向に移動する押圧器によってこの雪を上記走行面に押し付けて、圧雪層を形成する工程
及び
試験タイヤを上記圧雪層の上で走行させる工程
を含む。
【0007】
好ましくは、上記圧雪層を形成する工程において、上記ドラムが回転したときの上記走行面の速度は、10km/h以上100km/h以下である。
【0008】
好ましくは、上記圧雪層を形成する工程において、上記押圧器が幅方向に移動する速度は、1m/h以上100m/h以下である。
【0009】
好ましくは、上記圧雪層を形成する工程において、上記走行面の幅の15%以上30%以下である幅を有する押圧器によって上記雪を上記走行面に押し付ける。
【0010】
好ましくは、この評価方法は、上記圧雪層を形成する工程と上記試験タイヤを上記圧雪層の上で走行させる工程との間に、
上記ドラムを回転させつつ、幅方向に移動する切削器で、上記圧雪層の表面を削る工程
をさらに含む。
【0011】
好ましくは、上記圧雪層の表面を削る工程において、上記ドラムが回転したときの上記走行面の速度は、60km/h以上120km/h以下である。
【0012】
好ましくは、上記圧雪層の表面を削る工程において、上記切削器が幅方向に移動する速度は、10m/h以上200m/h以下である。
【0013】
好ましくは、上記切削器の背面の幅は、1cm以上10cm以下である。
【0014】
好ましくは、上記押圧器は、そのトレッド面に溝が刻まれていないタイヤである。
【0015】
本発明に係る評価装置は、走行面を有しかつ回転しうるドラム、上記走行面に雪を吹き付ける降雪器、及び上記走行面の幅よりも狭い幅を有しており上記走行面の幅方向に移動しつつ上記雪を上記走行面に押しつける押圧器を有する。
【発明の効果】
【0016】
この評価方法では、降雪器が走行面に吹き付けた雪は、押圧器により走行面に押し付けられる。この押圧器の幅は、走行面の幅より狭い。この方法では、この押圧器が走行面の幅方向に移動し、併せてドラムが回転する。押圧器は、走行面に対して、その幅方向及び周方向に移動する。この方法では、押圧器が、走行面上の雪を幅方向及び周方向に移動しながら押さえるため、走行面上に硬さの均一性の高い圧雪層が形成できる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法が示されたフロー図である。
図2図2は、図1の圧雪層形成工程で使用する装置の一実施形態が示された正面図である。
図3図3は、図1の圧雪層形成工程の途中の様子が示された模式図である。
図4図4は、図1の圧雪層表面切削工程の途中の様子が示された正面図である。
図5図5は、図4のV−V線に沿った断面図の一部である。
図6図6は、図1の圧雪層形成工程で形成された圧雪層の硬さの分布である。
図7図7は、従来の方法で形成された圧雪層の硬さの分布である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法が示されたフロー図である。本発明に係る評価方法は、
(1)圧雪層形成工程
(2)圧雪層表面切削工程
及び
(3)タイヤ走行工程
を備えている。
【0020】
上記(1)の工程では、走行試験機の走行面の表面に、圧雪からなる層(圧雪層)が形成される。図2には、この工程で用いられる試験機2が示されている。この試験機2はインサイドドラム型である。この試験機2は低温環境下におかれる。図において矢印Xで表される方向が左方向であり、その逆が右方向である。矢印Yで表される方向が上方向であり、その逆が下方向である。この試験機2は、ドラム4、把持部6、押圧器8、ドラム支持部10、降雪器12及び台部14を備えている。把持部6及びドラム支持部10は、台部14上に設置されている。
【0021】
ドラム4は円筒状を呈している。ドラム4の内周面は、走行面16を構成する。図2に示されるとおり、ドラム4は把持部6とドラム支持部10との間に位置している。ドラム4は把持部6側の面に開口を有している。把持部6に装着された押圧器8は、この開口からドラム4の内部に挿入される。
【0022】
把持部6は、押圧器8が装着される回転軸18、この回転軸18の回転を制御するための回転制御部20、押圧器8を上下方向に移動させるための昇降機22を備えている。回転制御部20は、押圧器8を回転させることができる。回転制御部20は、押圧器8の回転を減速したり、停止する制動機能を有している。昇降機22は、回転軸18を上下方向に移動させる。押圧器8は、昇降機22により上下方向に移動されうる。これにより、押圧器8に所望の荷重を負荷することができる。把持部6は、台部14上を左右方向に移動可能である。これにより、押圧器8は左右方向(ドラム4の走行面16の幅方向)に移動されうる。
【0023】
押圧器8は、上記のとおり、把持部6に装着される。押圧器8の幅は、走行面16の幅よりも小さい。押圧器8は、把持部6により、走行面16の幅方向の一方の端から他方の端まで移動することができる。この実施形態では、押圧器8は、そのトレッド面に溝が刻まれていないタイヤである。
【0024】
ドラム支持部10は、ドラム4を支えている。ドラム支持部10は、ドラム4を所望の速度で回転させることができる。
【0025】
降雪器12は、人工の雪を降らせる。降雪器12は、ドラム4の内部に雪の吹き出し口24を備えている。降雪器12は、走行面16に雪を吹き付けることができる。
【0026】
上記(1)の工程では、図2の装置を使用して、走行面16上に圧雪層26が形成される。図3は、圧雪層26が形成される途中の状態が示された模式図である。これは、ドラム4を図2の左側から見た図である。この図では、ドラム4の走行面16と押圧器8と降雪器12とが示されている。この工程で、圧雪層26が形成される方法は次の通りである。
【0027】
まず、把持部6により、押圧器8がドラム4の走行面16に所望の荷重で押し付けられる。降雪器12が雪28を走行面16に吹き付ける。ドラム4が図3の矢印Aの方向に回転する。押圧器8は、図3の矢印Bの方向に回転する。押圧器8は、この雪28を走行面16に押し付けつつ走行面16の幅方向に移動する。押圧器8は、走行面16の幅方向の一方の端から他方の端までの移動を繰り返す。降雪器12により走行面16に吹き付けられた雪28は、押圧器8により走行面16上で延ばされ、固められる。これにより、走行面16上に圧雪層26が形成される。走行面16全体に、所望の厚みの圧雪層26が形成される。これにより、上記(1)の工程が終了する。
【0028】
上記(2)の工程では、上記(1)の工程で形成された圧雪層26の表面が、切削される。図4には、上記(2)工程の途中の状態が示されている。この試験機2は、切削器30をさらに備えている。この実施形態では、押圧器8が把持部6から取り外され、代わりに切削器30が、把持部6に装着される。図において矢印Xで表される方向が左方向であり、その逆が右方向である。矢印Yで表される方向が上方向であり、その逆が下方向である。この工程で、圧雪層26が切削される方法は次の通りである。
【0029】
まず、把持部6により、切削器30の先端が圧雪層26の表面に接触される。ドラム4が回転するとともに、図4に示されるように、切削器30は走行面16の幅方向(左右方向)に移動する。このとき、切削器30は回転しない。切削器30は、走行面16の幅方向の一方の端から他方の端までの移動を繰り返す。圧雪層26の表面が切削器30により削られる。切削器30は、走行面16の幅方向への移動を繰り返しながら、徐々に下方向(走行面16側)に移動する。圧雪層26の表面の凹凸が取り除かれ、圧雪層26の表面が平滑となる。走行面16全体において、圧雪層26が所望の厚みとなるまで、圧雪層26が削られる。これにより、上記(2)の工程が終了する。
【0030】
上記(3)の工程では、圧雪層26の上で、雪上性能が評価されるタイヤ(試験タイヤ)が走行される。リムに装着され、所望の内圧となるように空気が充填された試験タイヤが用意される。この実施形態では、切削器30が把持部6から取り外され、代わりに試験タイヤが、把持部6に装着される。
【0031】
上記(3)の工程では、把持部6により、試験タイヤが圧雪層26の表面に所望の荷重で押し付けられ、ドラム4が回転される。試験タイヤが回転し、圧雪層26の上を走行する。これにより、所望の雪上性能が計測される。例えば、摩擦係数や制動距離が計測される。これにより、上記(3)の工程が終了する。
【0032】
上記(1)の工程及び(2)の工程で圧雪層26が形成されると、上記(3)の工程では、これを用いて通常複数の試験タイヤが評価される。すなわち、一つの試験タイヤの雪上性能の計測が終了すると、この試験タイヤが把持部6から取り外される。別の試験タイヤが把持部6に装着され、このタイヤの雪上性能が計測される。
【0033】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0034】
この評価方法では、上記(1)の工程において、降雪器12が走行面16に吹き付けた雪28は、押圧器8により走行面16に押し付けられる。この押圧器8の幅は、走行面16の幅より狭い。この方法では、この押圧器8が走行面16の幅方向に移動し、併せてドラム4が回転する。押圧器8は、走行面16に対して、その幅方向及び周方向に移動する。この方法では、押圧器8が、走行面16上の雪28を走行面16の幅方向及び周方向に移動しながら押さえるため、走行面16上に硬さの均一性の高い圧雪層26が形成できる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。
【0035】
圧雪層26の表面の凹凸は、タイヤの雪上性能に影響を及ぼす。雪上性能の評価精度をより向上させるために、圧雪層26の表面を平滑にすることが重要となる。この評価方法では、上記(2)の工程において、圧雪層26の表面が切削される。この工程により、圧雪層26の表面の凹凸が除去される。この工程後の圧雪層26の表面の平滑性は高い。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。
【0036】
図2において、両矢印Wdは、走行面16の幅を表す。両矢印Wtは、押圧器8の幅を表す。上記(1)の工程においては、その幅Wtが幅Wdの30%以下である押圧器8によって雪28を走行面16に押し付けるのが好ましい。この押圧器8は、走行面16の幅方向に十分な距離移動できる。このようにすることで、硬さの均一性の高い圧雪層26が形成できる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。この観点から幅Wtは幅Wdの25%以下がより好ましい。上記(1)の工程においては、その幅Wtが幅Wdの15%以上である押圧器8によって雪28を走行面16に押し付けるのが好ましい。この押圧器8は、効率的に走行面16上の雪28を押さえることができる。この方法では、効率的に圧雪層26が形成できる。
【0037】
上記(1)の工程において、ドラム4が回転したときの走行面16の速度Vdは、10km/h以上が好ましい。速度Vdを10km/h以上とすることで、走行面16に吹き付けられた雪28が、押圧器8で抑えられる前に、走行面16から剥がれ落ちることが防止されている。この観点から、速度Vdは20km/h以上がより好ましい。速度Vdは、100km/h以下が好ましい。速度Vdを100km/h以下とすることで、圧雪層26の硬さが短時間で高くなることが防止される。速度Vdを100km/h以下とすることで、容易に圧雪層26を所望の硬さに調整しうる。この観点から、速度Vdは90km/h以下がより好ましい。
【0038】
上記(1)の工程において、押圧器8が走行面16の幅方向に移動する速度Vtは、1m/h以上が好ましい。速度Vtを1m/h以上とすることで、硬さの均一性の高い圧雪層26が形成できる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。速度Vtは、100m/h以下が好ましい。速度Vtを100m/h以下とすることで、押圧器8が走行面16に吹き付けられた雪28を押しのけることが防止されている。この方法では、凹凸の少ない圧雪層26が形成できる。
【0039】
上記(1)の工程において、押圧器8に負荷される荷重Fは、300N以上が好ましい。荷重Fを300N以上とすることで、効率的に雪28を硬くすることができる。荷重Fは、600N以下が好ましい。荷重Fを600N以下とすることで、吹き付けられた雪28に押圧器8が沈み込むことが防止されている。この方法では、凹凸の少ない圧雪層26が形成できる。
【0040】
前述したとおり、押圧器8は、そのトレッド面に溝が刻まれていないタイヤが好ましい。タイヤは内圧を調整することで、そのトレッドの硬さを調整することができる。押圧器8としてタイヤを使用することで、種々の雪質を有する雪28に対して、硬さの均一性の高い圧雪層26が形成できる。
【0041】
押圧器8としてタイヤを使用するとき、このタイヤの内圧は、300kPa以上が好ましい。タイヤの内圧を300kPa以上とすることで、このタイヤでは、トレッドが十分な硬さを有する。このタイヤは、雪28を均一に押し付けうる。この方法では、硬さの均一性の高い圧雪層26が形成できる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。
【0042】
上記(1)の工程において、降雪器12が雪28を吹き付ける走行面16上の位置は、図3で示されるように、試験タイヤの前方側(走行面16が試験タイヤに向かっていく側。図3ではタイヤの左側)であって、ドラム4の中心位置よりも下側が好ましい。さらに、降雪器12が雪28を吹き付ける位置は、走行面16の幅方向の中心が好ましい。降雪器12が雪28を吹き付ける位置をこのようにすることで、雪28の飛散が効果的に抑えられる。この方法では、効率良く走行面16に圧雪層26を形成することができる。
【0043】
上記(2)の工程において、ドラム4が回転したときの走行面16の速度Veは、60km/h以上が好ましい。速度Veを60km/h以上とすることで、削られた雪28が圧雪層26の表面から、効果的に飛ばされうる。削られた雪28が圧雪層26の表面に付着することが防止されている。この方法では、表面が平滑な圧雪層26が得られる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。この観点から、速度Veは70km/h以上がより好ましい。速度Veは、120km/h以下が好ましい。速度Veを120km/h以下とすることで、圧雪層26の表面の剥がれが効果的に防止されている。
【0044】
上記(2)の工程において、切削器30が走行面16の幅方向に移動する速度Vcは、10m/h以上が好ましい。速度Vcを10m/h以上とすることで、効率良く圧雪層26の表面を削ることができる。速度Vcは、200m/h以下が好ましい。速度Vcを200m/h以下とすることで、圧雪層26の表面の剥がれが効果的に防止されている。
【0045】
図5は、図4のV−V線に沿った断面図の一部である。この図では、切削器30の断面と、圧雪層26の表面のみが示されている。図において矢印Xで表される方向が左方向であり、その逆が右方向である。ドラム4の開口は、左側に位置する。直線Lは、走行面16の幅方向(左右方向)に延びる仮想線である。矢印Aで示されるのは、走行面16の走行方向である。図で示されるように、この切削器30の背面(走行面16が切削器30に向かっていく方向に対向する面)は、ドラム4の開口の方を向くように、走行面16の幅方向に対して傾斜しているのが好ましい。このようにすることで、切削器30により削られた雪28をドラム4の外へ排出することができる。削られた雪28が圧雪層26の表面に付着することが防止されている。この方法では、表面が平滑な圧雪層26が得られる。この方法では、精度よくタイヤの雪上性能が評価できる。
【0046】
図5において、符号θは、切削器30の背面が直線Lとなす角度を表す。角度θは、5°以上が好ましい。角度θを5°以上とすることで、切削器30により削られた雪28を効果的にドラム4の外へ排出することができる。角度θは、45°以下が好ましい。角度θを45°以下とすることで、効率良く圧雪層26の表面を削ることができる。
【0047】
図5において、両矢印Wcは、切削器30の背面の幅を表す。幅Wcは、1cm以上が好ましい。幅Wcを1cm以上とすることで、効率良く圧雪層26の表面を削ることができる。幅Wcは、10cm以下が好ましい。幅Wcを10cm以下とすることで、圧雪層26の表面の剥がれが効果的に防止されている。
【0048】
本発明では、圧雪層26の硬さは、コンパクションテスター(米国Smitheres社製CTI Compaction Gauge)によって測定される。圧雪層26の表面にこのコンパクションテスターが押し付けられて、硬さが測定される。測定は、−8℃の温度下でなされる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0050】
[実施例]
図1に示された(1)の工程及び(2)の工程により、ドラムの走行面に圧雪層が形成された。これらの工程では、図2に示されたインサイドドラム型の走行試験機が使用された。この試験機の走行面の幅Wdは、1000mmであった。
【0051】
上記(1)の工程では、押圧器として、そのトレッド面に溝が刻まれていないタイヤが使用された。このタイヤのサイズは265/70R17である。このタイヤの内圧は350kPaとされた。このタイヤには500Nの荷重が負荷された。このタイヤが走行面の幅方向に動く速度Vtは、36m/hとされた。走行面の速度Vdは、40km/hとされた。この工程では、厚みが5cmの圧雪層が、走行面上に形成された。
【0052】
上記(2)の工程では、上記タイヤが把持部から取り外され、把持部に切削器が取り付けられた。この切削器が上記圧雪層の表面に接触された。切削器が走行面の幅方向に動く速度Vcは、100m/hとされた。走行面の速度Veは、90km/hとされた。切削器の高さが徐々に下げられ、圧雪層の厚みが2cmとなるまで、圧雪層の表面が削られた。
【0053】
[比較例]
インサイドドラム型の走行試験機のドラムの走行面に、圧雪層が形成された。この試験機は、図2の試験機と同じドラム及び降雪器を備えている。この試験機は、図2に示された押圧器を有していない。この比較例の方法では、雪を抑えるのに、幅が600mmで外径が110mのローラーが使用された。このローラーの質量は、15kgであった。このローラーは、ウレタンよりなっている。このローラーが、走行面上に載せられた。従って、このローラーにより、走行面には、このローラーの自重による荷重が負荷されている。降雪器から走行面に雪が吹きかけられ、ドラムが回転された。走行面の速度は、40km/hとされた。これにより、厚みが2cmの圧雪層が、走行面上に形成された。この方法では、圧雪層の表面を切削する工程は、有していない。これは、従来の評価方法である。
【0054】
[圧雪層の硬さの分布]
実施例及び比較例の方法で形成された圧雪層のそれぞれについて、硬さの分布が測定された。実施例の方法で形成された圧雪層の硬さの分布が図6に示されている。比較例の方法で形成された圧雪層の硬さの分布が図7に示されている。実施例の圧雪層は、比較例の圧雪層と比べて、硬さが高く、場所によるばらつきが小さい。比較例の圧雪層は、走行面の幅方向中央近辺で硬さが高くなっている。走行面の幅方向中央近辺は降雪器の雪の吹き出し口に近く、ここに吹き付けられた雪の量が多いのが原因と考えられる。一方、実施例の方法では、押圧器が走行面の幅方向に移動しながら雪を押し付けるため、吹き出し口の位置によらず、硬さの均一性の高い圧雪層が形成できている。
【0055】
[表面の平滑度]
実施例において、上記(2)の工程の前及び後で、レーザー変位計で表面の形状が測定された。測定には、キーエンス社製のLJV−7300が使用された。一回の測定において、幅が走行面の1/4で長さがドラム一周分である領域が測定された。圧雪層の幅方向の一方の端から他方の端まで測定できるように、幅方向の位置を変えて4回測定が実施された。この測定で、表面の凹凸の最も高い位置と最も低い位置との差が得られた。この差は、切削前の圧雪層では2.5cmであり、切削後の圧雪層では0.7cmであった。
【0056】
図6と7との比較から明らかなように、実施例の評価方法は、比較例の評価方法よりも結果が優れている。平滑度の評価に示されるように、実施例の評価方法では、圧雪層表面の凹凸が抑えられている。これらの結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明された方法は、種々のタイヤの雪上性能の評価に用いられうる。
【符号の説明】
【0058】
2・・・試験機
4・・・ドラム
6・・・把持部
8・・・押圧器
10・・・ドラム支持部
12・・・降雪器
14・・・台部
16・・・走行面
18・・・回転軸
20・・・回転制御部
22・・・昇降機
24・・・吹き出し口
26・・・圧雪層
28・・・雪
30・・・切削器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7