特許第6855945号(P6855945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855945
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】蓄圧装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/033 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   F15B1/033
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-113575(P2017-113575)
(22)【出願日】2017年6月8日
(65)【公開番号】特開2018-204759(P2018-204759A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】岩間 康太郎
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−090201(JP,A)
【文献】 特開2012−122495(JP,A)
【文献】 実開昭52−117609(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0042644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00− 1/26
F15B 3/00
F15B 11/00−11/22;21/14
F02D 13/00−28/00
F02D 29/00−29/06
F16D 25/00−39/00;48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄圧室と、前記第1蓄圧室の断面積よりも大きい断面積を有する第2蓄圧室を内部に備える筐体と、
前記筐体に設けられる第1連通孔を含み、圧力供給源と前記第1蓄圧室とを連通させる第1の流路と、
前記筐体に設けられる第2連通孔を含み、前記圧力供給源と前記第2蓄圧室とを連通させる第2の流路と、
前記第1の流路上に設けられる第1切替弁と、
前記第2の流路上に設けられる第2切替弁と、
前記第1の流路上であって、前記圧力供給源と前記第1切替弁との間に設けられる第1逆止弁と、
前記第2の流路上であって、前記圧力供給源と前記第2連通孔との間に設けられる第2逆止弁と、
前記第1切替弁と前記第1逆止弁との間において前記第1の流路から分岐し、前記圧力供給源から出力される圧力、又は前記筐体内に蓄圧された圧力を端部から搬出する搬送路と、
前記第1蓄圧室内に設けられ、前記圧力供給源から出力される圧力によって、前記第1蓄圧室の内壁に沿って前記第1蓄圧室内を移動する第1ピストンと、
前記第2蓄圧室内に設けられ、前記圧力供給源から出力される圧力によって、前記第2蓄圧室の内壁に沿って前記第2蓄圧室内を移動する第2ピストンと、
一端が前記第1ピストンに当接し、他端が前記第2ピストンに当接する弾性部材と、
を具備する、前記圧力供給源から出力される圧力を蓄圧する蓄圧装置。
【請求項2】
前記第1ピストンは、前記圧力供給源から出力される圧力を受圧する第1受圧面と、
前記第1受圧面の端部から延在し前記第1蓄圧室の内壁に対向する第1側壁と、
前記第1受圧面に対向し、前記弾性部材の一端が当接する第1当接面と
を備え、
前記第1側壁は、前記第1ピストンの前記第1蓄圧室内の移動にともなって、前記第1蓄圧室から前記第2蓄圧室へと突出する、請求項1に記載の蓄圧装置。
【請求項3】
前記第2ピストンは、前記圧力供給源から出力される圧力を受圧し、前記第1受圧面の受圧面積よりも大きい受圧面積を有する第2受圧面と、
前記第2受圧面の端部から延在し前記第2蓄圧室の内壁に対向する第2側壁と、
前記第2受圧面に対向し、前記弾性部材の他端が当接する第2当接面と
を備え、
前記第2当接面は、前記第2ピストンの前記第2蓄圧室内の移動にともなって、前記第1ピストンにおける前記第1側壁とも当接する、請求項2に記載の蓄圧装置。
【請求項4】
前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給して、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、
前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蓄圧装置。
【請求項5】
前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給し、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、
前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧し、
前記第2蓄圧室内にて蓄圧した後、前記圧力供給源の作動を停止させ、且つ前記第1切替弁を開状態として、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力を、前記搬送路へと放圧する、請求項4に記載の蓄圧装置。
【請求項6】
前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給し、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、
前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態として、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧し、
前記第2蓄圧室内にて蓄圧した後、前記第1切替弁を開状態として、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力を、前記搬送路へと放圧し、且つ前記第2切替弁を開状態として、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へとさらに供給し、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗してさらに移動させることにより、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にてさらに蓄圧する、請求項4に記載の蓄圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載されるブレーキ、オートマチックトランスミッション、及びマニュアルトランスミッション等に用いられ、油圧オイルを蓄圧して、必要時に放圧するために用いられる蓄圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の車両においては、燃費効率の向上、排気エミッションの低減、及び騒音低減等を目的として、車両停止中にエンジンを自動停止させる、いわゆるアイドリングストップ技術を搭載する車両が提案されている。
【0003】
エンジンが停止すると、一般的に、エンジンと連結されている油圧供給源であるオイルポンプの作動も停止するため、例えばアクチュエータを用いて自動的にクラッチを切断・係合させるタイプのマニュアルトランスミッションを搭載した車両において、クラッチに供給されるオイルも油路から抜けてしまうため、クラッチは切断状態となってしまう。
【0004】
他方、運転者がアクセルペダルを踏み込む場合等、所定の条件を満たすと、エンジンは再始動され、オイルポンプも再始動するが、エンジンの再始動とともに、クラッチが係合していないと、エンジンの再始動とクラッチの係合との間に時間差が生じ、係合ショックが発生するという問題がある。
【0005】
特許文献1には、この問題を解消するため、オイルポンプとクラッチを結ぶ油路上に蓄圧装置を分岐配置することで、エンジン停止中であっても、クラッチの油路中のオイルが抜けないように保持して、エンジン再始動と共にクラッチへ油圧を供給する蓄圧装置及びそれを含むシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−313252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された蓄圧装置においては、オイルポンプ等の油圧供給源停止時における補助デバイスとして、前述のようなアイドリングストップ技術等のような、瞬時に油圧を発生させる必要がある場面においては好適である。他方、油圧供給源の油圧に比して微量でも高い油圧を供給する必要がある場合においては、油圧供給源自体の体格を大きくし性能を高くするか、又は別の油圧供給源をさらに設ける必要があり、消費電力の増加やコストアップの面で課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、瞬時に圧力を発生させる必要がある場面に適用することができ、さらに、オイルポンプ等の圧力供給源が出力する圧力よりも高い圧力を供給する必要がある場面においても適用することが可能な、蓄圧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄圧装置は、第1蓄圧室と、前記第1蓄圧室の断面積よりも大きい断面積を有する第2蓄圧室を内部に備える筐体と、前記筐体に設けられる第1連通孔を含み、圧力供給源と前記第1蓄圧室とを連通させる第1の流路と、前記筐体に設けられる第2連通孔を含み、前記圧力供給源と前記第2蓄圧室とを連通させる第2の流路と、前記第1の流路上に設けられる第1切替弁と、前記第2の流路上に設けられる第2切替弁と、前記第1の流路上であって、前記圧力供給源と前記第1切替弁との間に設けられる第1逆止弁と、前記第2の流路上であって、前記圧力供給源と前記第2連通孔との間に設けられる第2逆止弁と、前記第1切替弁と前記第1逆止弁との間において前記第1の流路から分岐し、前記圧力供給源から出力される圧力、又は前記筐体内に蓄圧された圧力を端部から搬出する搬送路と、前記第1蓄圧室内に設けられ、前記圧力供給源から出力される圧力によって、前記第1蓄圧室の内壁に沿って前記第1蓄圧室内を移動する第1ピストンと、前記第2蓄圧室内に設けられ、前記圧力供給源から出力される圧力によって、前記第2蓄圧室の内壁に沿って前記第2蓄圧室内を移動する第2ピストンと、一端が前記第1ピストンに当接し、他端が前記第2ピストンに当接する弾性部材と、を具備するものである。
【0010】
この構成により、前記圧力供給源の油圧を前記第1蓄圧室に供給して、前記弾性部材を撓ませて、前記第1蓄圧室内において蓄圧させることできる。これにより、瞬時に油圧を発生させる必要がある場合において、かかる構成の蓄圧装置を適用させることができる。また、前記第1蓄圧室にて蓄圧させた後、前記第1切替弁及び前記第2切替弁に対して所定の操作を実行することで、前記圧力供給源の油圧を前記第2蓄圧室に供給して、前記弾性部材をさらに撓ませて、前記第2蓄圧室内において蓄圧させることができる。なお、前記第2蓄圧室の断面積は前記第1蓄圧室の断面積よりも大きくなるよう設計されているため、パスカルの原理に基づいて、前記圧力供給源の油圧は、前記第2蓄圧室においても蓄圧されることとなる。その結果、かかる構成の蓄圧装置における蓄圧量は、前記第1蓄圧室における蓄圧分と、前記第2蓄圧室における蓄圧分の総計となる結果、(前記弾性部材の撓みとして)前記第1蓄圧室が昇圧されている。これにより、前記圧力供給源の油圧よりも高い油圧を供給する必要がある場面においても、かかる構成の蓄圧装置を適用させることができる。
【0011】
また、本発明の前記蓄圧装置において、前記第1ピストンは、前記圧力供給源から出力される圧力を受圧する第1受圧面と、前記第1受圧面の端部から延在し前記第1蓄圧室の内壁に対向する第1側壁と、前記第1受圧面に対向し、前記弾性部材の一端が当接する第1当接面とを備え、前記第1側壁は、前記第1ピストンの前記第1蓄圧室内の移動にともなって、前記第1蓄圧室から前記第2蓄圧室へと突出することが好ましい。
【0012】
この構成により、前記圧力供給源から出力される圧力を、前記第1蓄圧室内における前記第1受圧面にて効率的に受圧し、前記弾性部材へと伝達することで、前記弾性部材を撓ませて、かかる圧力を前記第1蓄圧室内において蓄圧することができる。さらに、前記弾性部材は、耐荷重値以上撓むと破損する恐れがある。そこで、前記第1ピストンに前記第1側壁を設けた上で、前記第1ピストンが前記第1蓄圧室内を移動すると、前記第1側壁が前記第2蓄圧室へと突出するように前記第1側壁を設計することで、かかる前記弾性部材の破損の恐れを防止している。なお、前記第1側壁は、前記第1蓄圧室の内壁に対向するように設けられており、前記第1ピストンの前記第1蓄圧室内の移動を効率的に案内している。
【0013】
また、本発明の前記蓄圧装置において、前記第2ピストンは、前記圧力供給源から出力される圧力を受圧し、前記第1受圧面の受圧面積よりも大きい受圧面積を有する第2受圧面と、前記第2受圧面の端部から延在し前記第2蓄圧室の内壁に対向する第2側壁と、前記第2受圧面に対向し、前記弾性部材の他端が当接する第2当接面とを備え、前記第2当接面は、前記第2ピストンの前記第2蓄圧室内の移動にともなって、前記第1ピストンにおける前記第1側壁とも当接することが好ましい。
【0014】
この構成により、前記圧力供給源から出力される圧力を、前記第2蓄圧室内における前記第2受圧面にて効率的に受圧し、前記弾性部材へと伝達することで、前記弾性部材をさらに撓ませて、かかる圧力を前記第2蓄圧室内において蓄圧することができる。また、前記第2ピストンにおける前記第2当接面は、前記第2ピストンが前記第2蓄圧室内を移動すると、前記第1ピストンにおける前記第1側壁とも当接するように設計されている。これにより、前記第2ピストンの前記第2蓄圧室内での蓄圧のための移動は、前記第2当接面が前記第1側壁に当接した時点で終了することとなり、前記弾性部材の耐荷重値以上の撓みを防止している。なお、前記第2側壁は、前記第2蓄圧室の内壁に対向するように設けられており、前記第2ピストンの前記第2蓄圧室内の移動を効率的に案内している。
【0015】
また、本発明の前記蓄圧装置において、前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給して、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧するようにしてもよい。
【0016】
この構成により、前記圧力供給源から出力される圧力を、第1段階として、前記第1蓄圧室内において効率的に供給し、前記弾性部材の付勢力に抗して前記第1ピストンを移動させることで、前記弾性部材を撓ませて、かかる圧力を前記第1蓄圧室内において蓄圧することができる。また、前記圧力供給源から出力される圧力を、第2段階として、前記第2蓄圧室内において効率的に供給し、前記弾性部材の付勢力に抗して前記第2ピストンを移動させることで、前記弾性部材をさらに撓ませて、かかる圧力を前記第2蓄圧室内において蓄圧することができる。また、この構成により、第1段階及び第2段階を一連の蓄圧工程とすると、かかる構成の蓄圧装置における蓄圧量は、前記第1蓄圧室における蓄圧分と、前記第2蓄圧室における蓄圧分の総計となる結果、前記第1蓄圧室が昇圧されている。
【0017】
また、本発明の前記蓄圧装置において、前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給し、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧し、前記第2蓄圧室内にて蓄圧した後、前記圧力供給源の作動を停止させ、且つ前記第1切替弁を開状態として、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力を、前記搬送路へと放圧することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、前述の一連の蓄圧工程を経て蓄圧(昇圧)された圧力のうち、前記第1切替弁を開状態することによって、前記第1蓄圧室内に蓄圧及び昇圧された圧力を、瞬時に前記搬送路へと放圧することができる。具体的には、前記第1蓄圧室内及び前記第2蓄圧室内にて蓄圧された状態で、前記圧力供給源の作動を停止させ、前記第1切替弁を開状態とすると、前記弾性部材が撓みを解消する方向に付勢力を発出し、前記第1ピストンが前記第1蓄圧室内を移動することで、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力が、前記第1切替弁を経由して、前記搬送路へと放圧される。なお、前記搬送路へと放圧される圧力は、前述の一連の蓄圧工程を経て昇圧されているため、放圧初期は昇圧された圧力で放圧されるが、その後は、前記弾性部材の荷重特性に準じ、次第に漸減していき、前記第1ピストンが前記第1蓄圧室内における初期状態の場所まで移動すると、放圧は終了する。かかる構成の蓄圧装置は、例えば前述の車両用のアイドリングストップ技術や、車両用の各種計測器等に応用することができる。
【0019】
また、本発明の前記蓄圧装置において、前記第1切替弁を開状態且つ前記第2切替弁を閉状態とし、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内へと供給し、前記第1蓄圧室内において前記第1ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させた後、前記第1切替弁を閉状態とすることで前記圧力供給源から出力される圧力を前記第1蓄圧室内にて蓄圧した後、前記第1切替弁を閉状態且つ前記第2切替弁を開状態として、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へと供給して、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗して移動させて、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にて蓄圧し、前記第2蓄圧室内にて蓄圧した後、前記第1切替弁を開状態として、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力を、前記搬送路へと放圧し、且つ前記第2切替弁を開状態として、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内へとさらに供給し、前記第2蓄圧室内において前記第2ピストンを前記弾性部材の付勢力に抗してさらに移動させることにより、前記圧力供給源から出力される圧力を前記第2蓄圧室内にてさらに蓄圧するようにしてもよい。
【0020】
この構成により、前述の一連の蓄圧工程を経て蓄圧(昇圧)された圧力のうち、前記第1切替弁を開状態することによって、前記第1蓄圧室内に蓄圧(昇圧)された圧力を、瞬時に前記搬送路へと放圧することができると同時に、前記第2蓄圧室内での蓄圧工程を追加させることができるため、かかる構成の蓄圧装置においては、昇圧状態を維持することが可能となる。従って、昇圧された圧力を継続的に放圧することもできる。
【0021】
具体的には、前記第1蓄圧室内及び前記第2蓄圧室内にて蓄圧された状態で、前記第1切替弁を開状態とすると、前記弾性部材が撓みを解消する方向に付勢力を発出し、前記第1ピストンが前記第1蓄圧室内を移動(初期状態に戻る方向へ移動)することで、前記第1蓄圧室内に蓄圧された圧力が、前記第1切替弁を経由して、前記搬送路へと放圧される。一方、前記第2切替弁も開状態となっていることから、前記圧力供給源から出力される圧力は、前記第2蓄圧室内へと供給されており(前記第1切替弁も開状態となっているが、前記第1蓄圧室内において蓄圧(昇圧)された圧力が放圧されているため、前記圧力供給源から出力される圧力が前記第1蓄圧室内へと供給されることはない)、前記第1ピストンの前記第1蓄圧室内での移動に追従するように、前記第2ピストンは、前記弾性部材を撓ませる方向に前記第2蓄圧室内を移動する。そうすると、前述の一連の蓄圧工程を経て蓄圧(昇圧)した状態を維持するように、前記弾性部材の撓み量は維持されることとなるため、前述の一連の蓄圧工程を経て昇圧された圧力を、前記搬送路へと継続的に放圧することが可能となる。
【0022】
このように、かかる構成の蓄圧装置は、昇圧された圧力(高圧力)を継続的に放圧することができるため、高圧供給が必要な圧力制御システムに応用することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、瞬時に圧力を発生させる必要がある場面に適用することができ、さらに、オイルポンプ等の圧力供給源が出力する圧力よりも高い圧力を供給する必要がある場面においても適用することが可能な、蓄圧装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る初期状態の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る蓄圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る蓄圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蓄圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る蓄圧工程終了時点の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る放圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図5C】本発明の一実施形態に係る放圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る蓄圧工程終了時点の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る放圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
図6C】本発明の一実施形態に係る放圧工程中の蓄圧装置(一部断面図)及び圧力供給源を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要素には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0026】
蓄圧装置の全体構成
本発明の一実施形態に係る蓄圧装置1の全体構成の概要について、図1を参照しつつ説明する。図1は本発明の一実施形態に係る初期状態の蓄圧装置1(一部断面図)及び圧力供給源2を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る蓄圧装置1は、かかる蓄圧装置1を含む蓄圧システム上において、上流側において圧力供給源2と、下流側において被圧力供給回路3と、それぞれ連結されている。圧力供給源2は、具体的にはオイルポンプ等、油圧を発生させることができる一般的な供給源を用いることができる。また、油圧でなく水圧や空気圧を発生させる一般的な供給源を用いることもできる。
【0028】
被圧力供給回路3とは、例えば車両用のブレーキシステム、オートマチックトランスミッション、又はマニュアルトランスミッションなど、油圧が利用される要素や技術が適用されうる。
【0029】
蓄圧装置1は、筐体100を備える。筐体100には、所定の断面積を有する第1蓄圧室110と、第1蓄圧室110の断面積よりも大きい断面積を有する第2蓄圧室120が設けられる。さらに、筐体100には、第1の連通孔101及び第2の連通孔102が設けられており、第1の連通孔101は、第1蓄圧室110と圧力供給源2とを連通させる(後述の第1切替弁13が開状態となっている場合において、第1蓄圧室110と圧力供給源2とは連通する。)第1の流路11の一部を構成し、第2の連通孔102は、第2蓄圧室120と圧力供給源2とを連通させる(後述の第2切替弁23が開状態となっている場合において、第2蓄圧室120と圧力供給源2とは連通する。)第2の流路21の一部を構成している。なお、筐体100内部の構成については、後述する。
【0030】
なお、第1の流路11と第2の流路21は、図1に示すように、その一部を両者が共用してもよいし、各々独立的に(共用部分なく)設けられてもよい。
【0031】
また、図1に示すように、蓄圧装置1は、第1の流路11上において第1切替弁13を有し、第2の流路21上において第2切替弁23を有する。第1切替弁13及び第2切替弁23は、例えば通電時に弁を開き、非通電時に弁を閉じるソレノイド弁を用いることができる。この場合、第1切替弁13及び第2切替弁23の通電及び非通電を制御する制御部300は、図1に示すように、蓄圧装置1内に設けられていてもよいし、被圧力供給回路3(例えば、オートマチックトランスミッション)を制御する中央制御部の中に設けられてもよい。制御部300は、例えば、圧力供給源2から出力される圧力の出力時間や、第1ピストン130及び第2ピストン140の筐体100内における位置等に基づいて、第1切替弁13及び第2切替弁23の通電又は非通電の切替えを制御している。
【0032】
また、図1に示すように、蓄圧装置1は、第1の流路11上であって、圧力供給源2と第1切替弁13との間に、第1逆止弁15を有し、第2の流路21上であって、圧力供給源2と第2連通孔102との間に、第2逆止弁25を有する。第1逆止弁15は、圧力供給源2から出力される圧力(例えば油圧)を、第1蓄圧室110へと供給することを許容する一方、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力が、第1の流路11を逆流して、圧力供給源2へ放圧されることを防止している。第2逆止弁25は、圧力供給源2から出力される圧力を、第2蓄圧室120へと供給することを許容する一方、第2蓄圧室120内に蓄圧された圧力が、第2の流路21を逆流して、圧力供給源2へ放圧されることを防止している。なお、第1逆止弁15及び第2逆止弁25は、一般的に市販されているものを用いることができる。
【0033】
また、図1に示すように、蓄圧装置1には、第1切替弁13と第1逆止弁15との間において、第1の流路11から分岐する搬送路31が設けられている。搬送路31の一端31aは、第1の流路11から分岐するように、第1の流路11と連結されており、他端31bによって、被圧力供給回路3へと圧力を搬出している。これにより、搬送路31は、圧力供給源2が作動している状態においては、圧力供給源2から出力される圧力を、被圧力供給回路3へと搬送している。また、第1蓄圧室110において蓄圧された状態においては、第1切替弁13が開状態となることを条件に、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力を、被圧力供給回路3へと搬送している。
【0034】
1.筐体100内部の構成(第1蓄圧室110及び第2蓄圧室120)
続いて、図1及び図2を参照して、筐体100の内部の構成について、詳しく説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る蓄圧工程中の蓄圧装置1(筐体100においては断面図)及び圧力供給源2を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、筐体100は、筒状且つ中空状の形状を有しており、その内部に、所定の断面積Xを有する第1蓄圧室110と、第1蓄圧室110の断面積よりも大きい断面積Y(X<Y)を有する第2蓄圧室120が設けられる。筐体100、第1蓄圧室110、及び第2蓄圧室120の断面の形状は、特に制限はなく、例えば円状、楕円状、及び多角形状のものを用いることができる。前述のとおり、第1蓄圧室110は、第1連通孔101を含む第1の流路11によって、圧力供給源2と連通し、第2蓄圧室120は、第2連通孔102を含む第2の流路21によって、圧力供給源2と連通している。
【0036】
第1蓄圧室110内には、第1ピストン130が設けられている。第1ピストン130は、圧力供給源2から出力される圧力(油圧)を受圧する第1受圧面131と、第1受圧面131の端部(外周部)から延在し、第1蓄圧室110の内壁110aに対向する第1側壁132と、第1受圧面131に対向し、後述する弾性部材160の一端が当接する第1当接面133と、を有する。
【0037】
第2蓄圧室120内には、第2ピストン140が設けられている。第2ピストン140は、圧力供給源2から出力される圧力(油圧)を受圧する第2受圧面141と、第2受圧面141の端部(外周部)から延在し、第2蓄圧室120の内壁120aに対向する第2側壁142と、第2受圧面141に対向し、後述する弾性部材160の他端が当接する第2当接面143と、を有する。
【0038】
筐体100内には、さらに弾性部材160が設けられている。弾性部材160の一端は、第1ピストン130の第1当接面133に当接し、弾性部材160の他端は、第2ピストン140の第2当接面143に当接している。
【0039】
なお、弾性部材160は、一般的なコイルばね等、伸縮することで付勢力を発出することができるものを用いることができる。
【0040】
さらに、筐体100内において、第1ピストン130と第1蓄圧室110の内壁110aとの間には、第1のシール部材115が設けられている。第1のシール部材115の形状は、第1蓄圧室110の断面形状に沿ったものとすることができる。第1のシール部材115を設けることにより、圧力供給源2から第1蓄圧室110内へと供給される圧力(油圧)の漏れを防止することができる。また、圧力供給源2としてオイルポンプを用いる場合においては、単に第1蓄圧室110からの油漏れを防止することができる。
【0041】
同様に、筐体100内においては、第2ピストン140と第2蓄圧室120の内壁120aとの間には、第2のシール部材125が設けられている。第2のシール部材125の形状は、第2蓄圧室120の断面形状に沿ったものとすることができる。第2のシール部材125を設けることにより、圧力供給源2から第2蓄圧室120内へと供給される圧力(油圧)の漏れを防止することができる。また、圧力供給源2としてオイルポンプを用いる場合においては、単に第2蓄圧室120からの油漏れを防止することができる。
【0042】
なお、筐体100内において、第1ピストン130及び第2ピストン140とで挟まれる領域(弾性部材160が位置する領域)には、油等の液体又はエアが充填されており、図1に示すように、かかる領域に油等の液体が充填される場合には、筐体100内において、効率的に蓄圧できるように、エア抜き機構170が設けられる。
【0043】
2.蓄圧工程について
次に、上記構成を有する蓄圧装置1における蓄圧工程について、図1乃至図4を参照しつつ、詳細を説明する。なお、図2乃至図4は、本発明の一実施形態に係る蓄圧工程中の蓄圧装置1(筐体100においては断面図)及び圧力供給源2を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
【0044】
2−1.第1段階の蓄圧工程について(第1蓄圧室110内での蓄圧)
まず、図1乃至図3を参照しつつ、第1段階の蓄圧工程として、第1蓄圧室110内において蓄圧する工程を説明する。
【0045】
図1は、蓄圧装置1の初期状態を示しており、圧力供給源2も作動されていない。したがって、筐体100内において、第1ピストン130及び第2ピストン140は、各々第1蓄圧室110内及び第2蓄圧室120内において、初期状態の場所において配置されている。具体的には、第1ピストン130は、第1蓄圧室110内において、第1受圧面131の少なくとも一部が、第1蓄圧室110の内壁110aに当接した状態で配置されている。同様に、第2ピストン140は、第2蓄圧室120内において、第2受圧面141の少なくとも一部が、第2蓄圧室120の内壁120aに当接した状態で配置されている。なお、弾性部材160は、例えば、プリテンション状態(若干の撓みがある状態)で、筐体110内に配置されている。
【0046】
次に、圧力供給源2のスイッチをONとして作動させ、且つ第1切替弁13を開状態とすると(第2切替弁23は閉状態)、図2に示すように(図1の状態から図2の状態へと遷移)、圧力供給源2から出力される圧力(油圧)が、第1切替弁13を経由して、第1の連通孔101を含む第1の流路11を通って、最終的に第1蓄圧室110内へと供給される。
【0047】
圧力供給源2から出力される圧力は、第1蓄圧室110内に供給されると、第1ピストン130における第1受圧面131において受圧されると同時に、第1受圧面131を押圧して、弾性部材160の付勢力(弾性荷重)に抗しながら、第1ピストン130を第1蓄圧室110内において移動させる(図2においては紙面上方向へ移動)。かかる第1ピストン130の移動に伴って、弾性部材160も次第に撓んでいく。第1ピストン130は、弾性部材160を撓ませながら、圧力供給源2から出力される圧力と、弾性部材160の弾性荷重(例えばバネ荷重)とが釣り合うポイントまで、第1蓄圧室110内を移動していく。最終的に、圧力供給源2から出力される圧力と弾性部材160の弾性荷重が釣り合うと、第1ピストン130の移動は終了する。なお、圧力供給源2から出力される圧力Pと、弾性部材160の弾性荷重とが釣り合うとは、仮に第1ピストン130の断面積が第1蓄圧室110の断面積Xと同じであるとすれば、弾性部材160に伝達される荷重値は「P×X」となり、かかる値と弾性部材160の荷重特性における所定の撓み量に対応する荷重値が「P×X」となったポイントのことをいう。
【0048】
ここで、図3に示すように(図2の状態から図3の状態へと遷移)、第1ピストン130の移動が終了した時点で、第1切替弁13を閉状態とすると、圧力供給源2から供給された圧力(油圧)は、弾性部材160の撓みに変換されつつ、第1蓄圧室110内に保持される。これにより、かかる圧力を、第1段階の蓄圧工程として、第1蓄圧室110内にて蓄圧することができる。
【0049】
なお、図1の状態から図3の状態までの遷移変化において、第1ピストン130における第1側壁132は、第1蓄圧室110における内壁110aに沿って移動する。ここで、第1側壁132は、第1受圧面131の端部(外周部)から、かかる内壁110aに沿って延在しており、かかる第1側壁132は、第1ピストン130が第1蓄圧室110を移動するにつれて、最終的には第2蓄圧室120へと突出するように設計されている。これにより、弾性部材160が必要以上に撓むことに起因して破損したり、弾性部材160の荷重特性が変わってしまうことを防止している。なお、かかる第1側壁132の長さ(第1蓄圧室110の内壁110aに沿って延びる長さ)は、弾性部材160の荷重特性、昇圧の程度等を考慮し、適宜調整することができる。例えば、第1側壁132の長さを短くすればするほど、第2ピストン140の移動量が相対的に大きくなり、弾性部材160の総撓み量が大きくなる。したがって、昇圧の程度を大きくすることができる。
【0050】
具体的には、第1側壁132を設けない場合であって、且つ圧力供給源2から出力される圧力が弾性部材160の耐荷重値を大幅に超えるような場合においては、第1当接面133と第2当接面143とが実質的に重なりあう(当接してしまう)程度まで弾性部材160が撓む場合が生じうる。そうすると、弾性部材160における荷重特性が大幅に変容したり、弾性部材160自体が破損してしまう等の恐れがある。しかしながら、図1乃至図3に示すような第1側壁132を設けておけば、第2当接面143は、第1当接面133と重なりあう(当接する)前に、必ず第1側壁132と当接することとなり、第2ピストン140の移動が規制されることとなる。これにより、前述のような弾性部材160の破損等を防止することができる。
【0051】
ところで、図2の状態において、圧力供給源2から出力される圧力は、第1蓄圧室110と同時に、搬送路31を経由して、被圧力供給回路3へも供給されている。したがって、本発明の一実施形態に係る蓄圧装置1においては、例えば車両用のブレーキシステム、オートマチックトランスミッション、及びマニュアルトランスミッション等を圧力供給源2にて作動させると同時に、蓄圧することも可能である。なお、第1段階の蓄圧工程が終了する図3の状態においては、圧力供給源2のスイッチをONとして作動を継続させておいてもよいし、圧力供給源2のスイッチをOFFとしておいてもよい。
【0052】
2−2.第2段階の蓄圧(昇圧)工程について(第2蓄圧室120内での蓄圧)
続いて、図4を参照しつつ、第2段階の蓄圧工程として、第2蓄圧室120内において蓄圧する工程を説明する。
【0053】
前述のように、第1段階の蓄圧工程が終了した後、圧力供給源2のスイッチをONとして、圧力供給源2を作動させる(又は、図3の状態において圧力供給源2のスイッチをONとして作動を継続させる場合においては、その作動状態を維持する)。その上で、図3の状態において閉状態とされた第1切替弁13は、そのまま閉状態と、且つ第2切替弁23を開状態とすると、図4に示すように(図3の状態から図4の状態へと遷移)、圧力供給源2から出力される圧力(油圧)が、第2切替弁23を経由して、第2の連通孔102を含む第2の流路21を通って、最終的に第2蓄圧室120内へと供給される。
【0054】
圧力供給源2から出力される圧力は、第2蓄圧室120内に供給されると、第2ピストン140における第2受圧面141において受圧されると同時に、第2受圧面141を押圧して、弾性部材160の付勢力(弾性荷重)に抗しながら、第2ピストン140を第2蓄圧室120内において移動させる(図4においては紙面下方向へ移動)。
【0055】
ここで、圧力供給源2から出力される圧力に基づいて、第2ピストン140が第2蓄圧室120内において移動する原理について説明する。第2蓄圧室120内へ供給される圧力は、前述の第1段階において、第1蓄圧室110内へと供給される圧力と同じ大きさである一方で、第1ピストン130における第1受圧面131の断面積(受圧面積)と比較して、第2ピストン140における第2受圧面141の断面積(受圧面積)の方が大きくなっている。ここで、第1受圧面131の断面積が第1蓄圧室110の断面積Xと同じであるとすれば、弾性部材160に伝達される荷重値は「P×X」となる一方、第2受圧面141の断面積が第2蓄圧室120の断面積Yと同じであるとすれば、弾性部材160に伝達される荷重値は「P×Y」となる。ここで、前述のとおり、YはXよりも大きな値であることから、第2ピストン140を介して弾性部材160へと伝達される荷重の方が、第1ピストン130を介して弾性部材160へと伝達される荷重よりも大きくなる。これは、パスカルの原理を応用したものであり、この原理に基づいて、第2ピストン140は、第2蓄圧室120内において移動することができる。
【0056】
かかる第2ピストン140の移動に伴って、弾性部材160もさらに撓んでいく。これにより、圧力供給源2から出力された圧力(油圧)は、弾性部材160の更なる撓みに変換されつつ、第2蓄圧室120内において蓄圧されていくため、蓄圧装置1全体として、圧力供給源2から出力された圧力を、昇圧させて蓄圧する。なお、最終的には図5A又は図6Aの状態のように、第2ピストン140における第2当接面143が、第1ピストン130の第1側壁132と当接すると、第2段階の蓄圧工程(昇圧工程)が終了する。
【0057】
なお、図5A又は図6Aの状態のように、第2段階の蓄圧工程は、第2当接面143が第1側壁132に当接して、第2ピストン140の移動が規制される時点で終了することとなる。
【0058】
ところで、第2ピストン140の移動を規制する手段として、第1側壁132を設ける代わりに、第2蓄圧室120の内壁120aから、第2蓄圧室120内に向かって突出する凸部を設けてもよい。
【0059】
3.放圧工程について
次に、上記構成を有する蓄圧装置1における放圧工程について、図5A乃至図5C、及び図6A乃至図6Cを参照しつつ、詳細を説明する。なお、図5A及び図6Aは、本発明の一実施形態に係る蓄圧工程終了時点の蓄圧装置1(筐体100においては断面図)及び圧力供給源2を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。また、図5B図5C図6B、及び図6Cは、本発明の一実施形態に係る放圧工程中の蓄圧装置1(筐体100においては断面図)及び圧力供給源2を含む、基本的な蓄圧システムを示す概略ブロック図である。
【0060】
3−1.第1の放圧方法
まず、図5A乃至図5Cを参照しつつ、第1の放圧方法について説明する。
【0061】
図5Aは、前述の第2段階の蓄圧(昇圧)工程が終了した状態を示しており、第2ピストン140における第2当接面143が第1ピストン130の第1側壁132に当接し、第2ピストン140の移動が規制されている。この段階において、圧力供給源2のスイッチをOFFとして、作動を停止させる。
【0062】
次に、圧力供給源2のスイッチをOFFのまま、第1切替弁13を開状態とすると、図5Bに示すように、弾性部材160の撓みに変換されて、第1蓄圧室110内において蓄圧及び昇圧されていた圧力が、第1の流路11を経由して搬送路31へと放圧される。これにより、第1蓄圧室110内に蓄圧及び昇圧された圧力を、瞬時に搬送路31へと放圧することができる。より具体的には、第1蓄圧室110内及び第2蓄圧室120内にて蓄圧された状態で、圧力供給源2の作動を停止させて、第1切替弁13を開状態とすると、弾性部材160が撓みを解消する方向に付勢力を発出し、前記第1ピストン130が第1蓄圧室110内を移動(図5Bにおいては紙面下方向へ移動)する。これにより、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力が、第1切替弁13を経由して、搬送路31へと放圧されることとなる。なお、搬送路31へと放圧される圧力は、前述の一連の第1段階及び第2段階の蓄圧工程を経て昇圧されているため、放圧初期は昇圧された圧力の値で放圧される。
【0063】
なお、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力が放圧される間、第2切替弁23を開状態としておくことで、第2蓄圧室120内に蓄圧された圧力は、第2逆止弁25によって、第2の流路21を逆流することはできず、第2蓄圧室120内に蓄圧された圧力は、そのまま蓄圧状態が維持されることとなる。
【0064】
その後、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力は、図5Cに示すように、第1ピストン130が初期状態に戻るまで(第1ピストン130における第1受圧面131が、第1蓄圧室110の内壁110aに当接するまで)移動が継続する限りにおいて、搬送路31へと放圧される。なお、搬送路31へと放圧される圧力の大きさは、放圧初期は前述の通り、昇圧された圧力の値で放圧されるが、その後は、弾性部材160の荷重特性に準じて、次第に漸減していき、最終的には0となる。このように、放圧初期においては昇圧された圧力を放圧し、その後、漸減的に放圧される放圧方法は、例えば前述の車両用のアイドリングストップ技術や、車両用の各種計測器等に応用することができる。
【0065】
また、かかる第1の放圧方法においては、放圧過程において、圧力供給源2のスイッチは常にOFFとされていることから、省エネルギーを重視する場面において好適に用いられる。
【0066】
なお、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力が全て放圧された後においては、第2蓄圧室120内に蓄圧された圧力(残圧)を解放して初期状態に戻すことが好ましい。この場合、例えば第2蓄圧室120を、別途設けられるオイルタンク(図示せず)と連結させて、残圧を解放する方法が考えられる。また、第2蓄圧室120に蓄圧された圧力も、被圧力供給回路3へと放圧することができるように、第2蓄圧室120と被圧力供給回路3とを結ぶ新たな切替弁と別搬送路の組合せ(図示せず)を設けてもよい。第1蓄圧室110及び第2蓄圧室120に蓄圧された圧力が全て放圧されると、蓄圧装置1は初期状態に戻ることとなる。
【0067】
3−2.第2の放圧方法
次に、図6A乃至図6Cを参照しつつ、第2の放圧方法について説明する。
【0068】
図6Aは、前述の第2段階の蓄圧(昇圧)工程が終了した状態を示しており、第2ピストン140における第2当接面143が第1ピストン130の第1側壁132に当接し、第2ピストン140の移動が規制されている。しかしながら、第1の放圧方法とは異なり、図6Aの状態においても、圧力供給源2のスイッチはONとして、作動を継続させている。また、第2切替弁23も常に開状態となっている。
【0069】
次に、圧力供給源2のスイッチをONのまま、且つ第2切替弁23を開状態としたまま、第1切替弁13を開状態とすると、図6Bに示すように、弾性部材160の撓みに変換されて、前述の一連の蓄圧工程を経て蓄圧(昇圧)された圧力のうち、第1蓄圧室110内に蓄圧及び昇圧された圧力が、第1の流路11を経由して搬送路31へと放圧される。これにより、第1蓄圧室110内に蓄圧及び昇圧された圧力を、瞬時に搬送路31へと放圧することができる。より具体的には、第1蓄圧室110内及び第2蓄圧室120内にて蓄圧された状態で、圧力供給源2の作動を継続させつつ、第1切替弁13及び第2切替弁23を開状態とすると、弾性部材160が撓みを解消する方向に付勢力を発出し、第1ピストン130が第1蓄圧室110内を移動(図6Bにおいては紙面下方向へ移動)する。これにより、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力が、第1切替弁13を経由して、搬送路31へと放圧されることとなる。
【0070】
他方、第1ピストン130が第1蓄圧室110内を移動(図6Bにおいては紙面下方向へ移動)することによって、第2ピストン140における第2当接面143と第1ピストン130における第1側壁132との当接関係が解消されて、第2ピストン140の移動が許容される。ここで、圧力供給源2からの圧力は、第2切替弁23を開状態として、継続的に第2蓄圧室120内へと供給されるため、かかる圧力によって、第2ピストン140も、前述の第1ピストン130の移動に追従するように、第2蓄圧室120を再び移動する。このように、第1蓄圧室110内に蓄圧された圧力を搬送路31へと放圧するための第1ピストン130の移動と、圧力供給源2から出力される圧力を、第2蓄圧室120内において蓄圧(昇圧)するための第2ピストン140の移動が、見かけ上一体的に生じることとなり、最終的には図6Bの状態から図6Cの状態(第1ピストン130における第1受圧面131が、第1蓄圧室110の内壁110aに当接する状態(初期状態))へと遷移して、かかる放圧及び昇圧が終了する。
【0071】
したがって、第1蓄圧室110内から搬送路31へと放圧される圧力は、前述の一連の第1段階及び第2段階の蓄圧工程を経て昇圧されているため、放圧初期は昇圧された圧力の値で放圧される。加えて、放圧初期後においても、前述の第1の放圧方法とは異なり、前述のとおり、放圧工程と同時に昇圧工程も継続的に実行されているため、かかる放圧される圧力の値は、放圧工程が終了するまで、常に初期の昇圧された圧力の値で一定的とすることができ、高圧供給を瞬時且つ継続的に供給することが可能となる。
【0072】
このような第2の放圧方法は、瞬時且つ継続的に高圧を供給する必要がある場面において好適に用いることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。蓄圧装置1の各部の配置や構成等は、上記実施形態には限定されない。
【符号の説明】
【0074】
1 蓄圧装置
2 圧力供給源
3 被圧力供給回路
11 第1の流路
13 第1切替弁
15 第1逆止弁
21 第2の流路
23 第2切替弁
25 第2逆止弁
31 搬送路
31a 搬送路の一端
31b 搬送路の他端
100 筐体
101 第1連通孔
102 第2連通孔
110 第1蓄圧室
110a 第1蓄圧室の内壁
115 第1のシール部材
120 第2蓄圧室
120a 第2蓄圧室の内壁
125 第2のシール部材
130 第1ピストン
131 第1受圧面
132 第1側壁
133 第1当接面
140 第2ピストン
141 第2受圧面
142 第2側壁
143 第2当接面
160 弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C