(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電線が前記外装材に複数挿通され、前記補強層が、それぞれの前記電線の外周面に個別に被覆形成されている請求項1ないし3のいずれか1項記載のワイヤハーネス。
前記電線が前記外装材に複数挿通され、前記補強層が、それぞれの前記電線の外周面に一括して被覆形成されている請求項1ないし3のいずれか1項記載のワイヤハーネス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に記載する。
前記補強層が、前記外装材の外周面における周方向及び長さ方向の一部に被覆形成されているとよい。これによれば、車両衝突時、衝撃が加わることが予想される部位に補強層を選択的に形成することができ、補強層を構成する樹脂を無駄に消費せずに済む。
【0011】
前記補強層が、前記外装材の外周面における周方向及び長さ方向の略全域にわたって被覆形成されていてもよい。これによれば、外装材全体を補強することができ、補強の信頼性を高めることができる。また、外装材の外周面に補強層の形成範囲を区画するマスキング等を施す必要がなく、製造の容易性を確保することができる。
【0012】
前記電線が前記外装材に複数挿通され、前記補強層が、それぞれの前記電線の外周面に個別に被覆形成されているとよい。これによれば、外装材の内部に補強層が形成されるため、ワイヤハーネスの外径が大きくなることがなく、また、補強層と外装材との間に水が浸入する懸念を解消することができる。さらに、各電線に個別に対応して補強層が形成されているため、車両衝突時、万一、一部の電線が補強層の破断とともに金属製の外装材と導通したとしても、他部の電線は補強層によって絶縁状態に保護される。
【0013】
前記電線が前記外装材に複数挿通され、前記補強層が、それぞれの前記電線の外周面に一括して被覆形成されていてもよい。これによれば、外装材の内部に補強層が形成されるため、ワイヤハーネスの外径が大きくなることがなく、また、補強層と外装材との間に水が浸入する懸念を解消することができる。さらに、各電線を一括して補強層が形成されているため、例えば、外装材に各電線を挿通する作業を一度で済ますことができる。
【0014】
前記外装材の端部から離間した位置にコネクタが設置され、前記電線が、前記外装材の端部から前記コネクタ側に露出し得る端部領域を有し、前記端部領域にシート材が巻き付けられ、前記補強層は、前記シート材に被覆形成されているとよい。これによれば、電線の端部領域がシート材を介して補強層により保護される。また、従来、端部領域に対応して設けられていたグロメットを省略することができるため、外径の大型化や組み付け工数の増加を抑えることができる。しかも、端部領域にシート材が巻き付けられ、補強層がシート材に被覆形成されるため、グロメットに電線を先通しする作業を行わずに済み、その分、作業負担を軽減することができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1を
図1及び
図2を参照して説明する。本実施例1は、図示しないハイブリッド自動車において、車両前部のエンジンルーム内に搭載された機器と、車両後部の室内に搭載された機器とを接続するため、主に車両の床下に配索されるワイヤハーネス10を例示するものである。
【0016】
ワイヤハーネス10は、複数(図示する場合は2本)の高圧の電線20を備えている。
図2に示すように、電線20は、導体21を絶縁被覆22で包囲した被覆電線として構成されている。図示する場合、電線20はシールド機能をもたないノンシールド電線になっている。各電線20の両端部は、車両前部及び車両後部における機器に設けられたコネクタ90に接続されて保持されている。
【0017】
ワイヤハーネス10は、車両の床下に設置され、各電線20を挿通する外装材としてのパイプ30を備えている。パイプ30は、金属製(アルミニウム、鉄、ステンレス、銅等)であって円管状をなし、内部に収容した各電線20を外部異物から保護するとともに電磁波をシールドする機能を有する。図示するパイプ30は、直線状をなしているが、配索経路に応じてパイプベンダー等で屈曲され得る。パイプ30の外周面は、電線20が高圧であることを示すため、オレンジ色等の識別色で着色されている。なお、
図1に示すように、各電線20の両端部側は、パイプ30の両端部から外側に延出して車両前部及び車両後部に導入される端部領域23になっている。
【0018】
また、ワイヤハーネス10は、パイプ30の外周面を覆うように形成される補強層40を備えている。補強層40は、樹脂材からなる樹脂被膜であって、ポリウレア樹脂の塗膜(被覆層)として構成される。ポリウレア樹脂は、イソシアネートとアミノ基との化学反応で形成されるウレア結合が主体となった化合物であり、耐衝撃性、耐水、耐食、耐摩耗性に優れるという特徴を有している。また、ポリウレア樹脂は、変形追従性を有しており、補強層40の形成後に、パイプ30を曲げ加工することが可能であり、且つ、車両衝突時のパイプ30の変形にも追従可能である。
【0019】
補強層40は、ポリウレア樹脂が小型ガン等のスプレー装置を介してパイプ30の外周面にスプレーされることで、短時間に一定厚みの塗膜として形成される。この場合に、補強層40は、接着性の向上を図るため、下塗り層としてのプライマー層の上にポリウレア樹脂が被覆して積層されるものであってもよい。また、補強層40は、高圧であることの注意喚起のため、パイプ30の外周面と同色のオレンジ色等に着色されていてもよい。
【0020】
もっとも、補強層40は、ポリウレア樹脂に代えてポリウレタン樹脂の塗膜で構成されるものであってもよい。ポリウレタン樹脂は、イソシアネートと水酸基等との化学反応で形成されるウレタン結合が主体となる化合物である。さらに、補強層40は、ポリウレア樹脂とポリウレタン樹脂とを混合したハイブリッド樹脂の塗膜であってもよく、あるいは一部にポリウレア樹脂及びポリウレタン樹脂以外の樹脂や樹脂以外の成分を含むものであってもよい。
【0021】
本実施例1の場合、補強層40は、車両衝突時、突起物等の外部異物と干渉することが予想される部位に選択的に形成されている。具体的には、補強層40は、パイプ30の外周面の周方向及び長さ方向の一部に被覆形成されている。より具体的には、補強層40は、パイプ30が床下に設置された状態で、路面と対向する下側の半周部(周方向に約180度の角度範囲)で且つ車両の進行方向前部側に被覆形成されている。
【0022】
組み付けに際し、各電線20がパイプ30に挿通され、パイプ30が車両床下に沿って配設される。その状態で、車両衝突等に起因し、車両前部側に衝撃力が加わり、外部異物としての突起物がパイプ30の前部下半周側に形成された補強層40と干渉し、補強層40に、局所的な集中荷重が作用することがある。しかるに本実施例1の場合、補強層40がポリウレア樹脂の塗膜で構成されているため、パイプ30に亀裂が生じるのを効果的に防止することができ、パイプ30の損傷を良好に抑えることができる。特に、本実施例1においては、補強層40が衝撃が加わることが予想される部位に選択的に形成されているため、ポリウレア樹脂等の樹脂材を無駄に消費せずに済む。
【0023】
<実施例2>
図3及び
図4は、本発明の実施例2を示す。なお、実施例2において実施例1と同一又は相当(対応)する部位には実施例1と同一符号を付し、重複する説明を省略する。この点は、後述する実施例3〜5も同様である。
本実施例2は、補強層40がパイプ30の外周面に被覆形成されている点で実施例1と同様であるが、補強層40の形成範囲がパイプ30の周方向及び長さ方向の略全域にわたっている点で実施例1とは異なる。補強層40が、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂又はこれら樹脂の混合樹脂から選択される少なくとも1種からなる点は、実施例1と同様である。本実施例2の場合、補強層40がパイプ30の外周面の略全域に被覆形成されているため、スプレー装置等を用いて補強層40を容易に形成することができる。
【0024】
<実施例3>
図5は、本発明の実施例3を示す。本実施例3の場合、補強層40が各電線20の外周面に被覆形成されており、パイプ30側には形成されていない。補強層40は、それぞれの電線20に個別に形成され、ポリウレア樹脂等の樹脂材が各電線20にスプレー装置でスプレーされることで、各電線20の絶縁被覆22の外周面に被覆形成される。補強層40の形成範囲は、各電線20の周方向及び長さ方向の略全域にわたっているが、一部のみであってよい。
【0025】
本実施例3の場合、車両衝突時にパイプ30に衝撃が加わり、仮にパイプ30が損傷しても、各電線20が補強層40によって保護されているため、各電線20の導通状態を良好に維持することができる。また、補強層40がポリウレア樹脂等の変形追従性の良好な樹脂材で構成されていれば、補強層40の形成後に各電線20を配索経路に応じて屈曲させることができる。
【0026】
本実施例3によれば、補強層40がパイプ30の内部に形成されているため、ワイヤハーネス10の外径が大きくなることがなく、また、補強層40とパイプ30との間に水が浸入する懸念を解消することができる。さらに、本実施例3の場合、補強層40が各電線20に個別に形成されているため、車両衝突時、万一、一方の電線20に対応した補強層40が破壊されても、他方の電線20に対応した補強層40が生きている限り、他方の電線20の導通状態を維持することができる。
【0027】
<実施例4>
図6は、本発明の実施例4を示す。本実施例4の場合、補強層40がポリウレア樹脂等の樹脂被膜であって各電線20の外周面に被覆形成されており、この点で実施例3と同様である。もっとも、補強層40は、それぞれの電線20に一括して形成されている点で、実施例3と異なる。具体的には、補強層40は、互いに隣接する各電線20の周囲にまたがって被覆形成され、全体として断面長円形又は楕円形の外形状を呈している。
【0028】
本実施例4によれば、実施例3と同様、補強層40がパイプ30の内部に形成されているため、ワイヤハーネス10の外径が大きくなることがなく、また、補強層40とパイプ30との間に水が浸入する懸念を解消することができる。さらに、本実施例4の場合、補強層40を介することで、複数の電線20を一体に取り扱うことができるため、各電線20をパイプ30に一度に通すことができ、各電線20の挿通作業を簡単に行うことができる。
【0029】
<実施例5>
図7及び
図8は、本発明の実施例5を示す。本実施例5の場合、補強層40が、各電線20の端部領域23を覆うように形成されており、この点で実施例1〜4と異なる。なお、端部領域23は、電線20の端部側において、パイプ30の端部とコネクタ90との間に露出可能に配索される領域である。
【0030】
実施例1〜4の場合、各電線20の端部領域23は、図示を省略したゴム製のグロメットで覆われていたが、本実施例5における各電線20の端部領域23は、グロメットでは無く、シート材60で一括して覆わされている。シート材60は、PVC(ポリ塩化ビニル)等の可撓性に富んだ樹脂材からなり、フィルムを含むものである。
【0031】
このシート材60は、各電線20の端部領域23に巻かれつつパイプ30の端部とコネクタ90とに跨って固着される。補強層40は、ポリウレア樹脂等の樹脂材がシート材60の表面にスプレー装置でスプレーされて被覆形成され、各電線20の周囲をシート材60を介して間接的に覆っている。補強層40の形成範囲は、シート材60の表面全体にわたっているとよいが、一部のみでもよい。
【0032】
実施例5によれば、各電線20の端部領域23の周囲からグロメットを省略することができるため、外径の大型化や組み付け工数の増加を抑えることができる上、グロメットに各電線20を先通しする作業を行う必要がなく、作業負担を軽減することができる。
【0033】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した上記実施例1〜5に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)外装材は、コルゲートチューブや収縮チューブ等のチューブであってよく、補強層は、チューブの周面に被覆形成されるものであってもよい。
(2)補強層は、パイプ等の外装材の内周面に形成されるものであってもよい。
(3)補強層は、電線とパイプ等の外装材の両方に形成されるものであってもよい。
(4)パイプは、樹脂製であってもよく、樹脂と金属とを積層してなる複合型であってもよい。
(5)電線は、個別にシールド機能を有するシールド電線であってもよい。
(6)パイプ等の外装材に挿通される電線の個数は、限定されず、1本であってもよく、あるいは3本以上であってもよい。
(7)ワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車に限らず、電気自動車や一般的な自動車に適用されるものであってもよく、その適用部位も限定されない。