特許第6856055号(P6856055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856055
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】容量可変箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/355 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   B65D5/355
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-112185(P2018-112185)
(22)【出願日】2018年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-214401(P2019-214401A)
(43)【公開日】2019年12月19日
【審査請求日】2020年4月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中路 哲也
(72)【発明者】
【氏名】夏川 準司
【審査官】 内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−058945(JP,A)
【文献】 米国特許第03313467(US,A)
【文献】 特表2008−518853(JP,A)
【文献】 米国特許第03669251(US,A)
【文献】 実開昭61−017028(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3150844(JP,U)
【文献】 実開昭61−178317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/355
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対の端壁および左右一対の側壁からなる胴部と、
前記胴部の下側開口部を閉塞している底壁と、
前記胴部の上側開口部を閉塞している頂壁と、を備えており、
前後一対の前記端壁と左右一対の前記側壁とを接続する各稜線部は、少なくとも罫線を含んで構成されており、
前記各端壁には、左右一対の端壁切断誘導線および左右一対の端壁折曲誘導線がそれぞれ形成されており、
前記各端壁切断誘導線は、前記罫線の一端を起点として、前記端壁の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在しており、
前記各端壁折曲誘導線は、前記罫線を起点として、前記端壁切断誘導線に向けて斜め上方に延在しており、
前記各端壁折曲誘導線は、上下方向に間隔をあけて並ぶ複数の誘導線からなることを特徴とする容量可変箱。
【請求項2】
前記端壁切断誘導線は、前記端壁の左右方向の中央部に向けて階段状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の容量可変箱。
【請求項3】
前記端壁切断誘導線は、複数の弧を連ねた形状を呈することを特徴とする請求項2に記載の容量可変箱。
【請求項4】
前記端壁切断誘導線の弧の下端部にはアール状の切り込みが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の容量可変箱。
【請求項5】
前記各稜線部は、前記罫線と、前記罫線の一端に連続するスリットと、から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の容量可変箱。
【請求項6】
前記両端壁には左右方向に延びる折曲誘導線が形成されているとともに、前記両側壁には前後方向に延びる折曲誘導線が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の容量可変箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内容量を変化させることができる容量可変箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の容量可変箱として、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1の容量可変箱は、側面と天面との境界位置となる第1の折線から所定距離離れた側面上の位置に設けられた第2の折線を備えているとともに、各側面板のそれぞれの境界線上に、縦方向に延びる切断可能線を備えている。
【0003】
この容量可変箱では、側面と天面との境界位置を第1の折線または第2の折線に設定することができ、側面の高さを多段階に変更して箱の容量を可変することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−125237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の容量可変箱において、例えば、箱の容量を小さく可変する場合には、各側面板のそれぞれの稜線部上にある切断可能線を、所望の容量となる位置まで切断する操作が必要である。このため、容量を可変する操作が煩雑であった。また、切断可能線に意図しない破れが生じてしまうと、箱が変形するおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決し、容量を可変する際の操作が容易であり、かつ、箱の変形が生じ難い容量可変箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の容量可変箱は、前後一対の端壁および左右一対の側壁からなる胴部と、前記胴部の下側開口部を閉塞している底壁と、前記胴部の上側開口部を閉塞している頂壁と、を備えている。前後一対の前記端壁と左右一対の前記側壁とを接続する各稜線部は、少なくとも罫線を含んで構成されている。前記各端壁には、左右一対の端壁切断誘導線および左右一対の端壁折曲誘導線がそれぞれ形成されている。前記各端壁切断誘導線は、前記罫線の一端を起点として、前記端壁の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在している。前記各端壁折曲誘導線は、前記罫線を起点として、前記端壁切断誘導線に向けて斜め上方に延在している。前記各端壁折曲誘導線は、上下方向に間隔をあけて並ぶ複数の誘導線からなる。
【0008】
本発明において、箱の容量を可変する場合には、各端壁切断誘導線に沿って両端壁に切込みを入れ、この切込みの間で両端壁を折り曲げる。そして、端壁折曲誘導線に沿って両端壁を折り曲げつつ、両側壁を折り曲げる。これによって箱の容量を可変することができる。この場合、各端壁切断誘導線および各端壁折曲誘導線は、いずれも、端壁の左右方向の中央部に向けて延在している。したがって、従来のような切断可能線を稜線部上に設けることなく両端壁および両側壁を折り曲げることができる。このため、各稜線部の強度が確保され、箱の変形が生じ難い。また、両端壁を折り曲げつつ両側壁を折り曲げる際に、各端壁切断誘導線に沿って稜線部側に切り残された部分を、各端壁折曲誘導線に沿って折り畳むことができる。これによって、稜線部の近傍部分を補強することができる。したがって、箱の変形が生じ難い。
【0009】
また、前記端壁切断誘導線は、前記端壁の左右方向の中央部に向けて階段状に形成されていることが好ましい。端壁切断誘導線を階段状とすることで、両端壁の折り曲げ位置を特定し易く、箱の容量を可変する際の操作性が向上する。
【0010】
また、前記端壁切断誘導線は、複数の弧を連ねた形状を呈することが好ましい。この構成では、弧に沿って手指を押し当てることで、端壁に容易に切込みを形成することができる。これにより、端壁の折り曲げ操作が行い易い。
【0011】
また、前記端壁切断誘導線の弧の下端部にはアール状の切込部が形成されていることが好ましい。弧に沿って手指を押し当てた際に、弧の下端部から破れが生じるのを防止することができる。
【0012】
また、前記各稜線部は、前記罫線と、前記罫線の一端に連続するスリットと、から構成されていることが好ましい。この構成とすることで、スリットまたは罫線を利用して端壁および側壁を折り曲げることができる。スリットの部分で折り曲げる場合には、端壁と側壁との境界部分がスリットによって分離しているため、従来のような切断可能線を用いた煩雑な操作を必要とせず、端壁および側壁を容易に折り曲げることができる。したがって、容量を可変する際の操作が容易である。
また、従来のような稜線部上の切断可能線を必要としないので、強度が向上し箱の変形が生じ難い。
【0013】
また、前記両端壁には左右方向に延びる折曲誘導線が形成されているとともに、前記両側壁には前後方向に延びる折曲誘導線が形成されていることが好ましい。
この構成では、両折曲誘導線に沿って、両端壁および両側壁を折り曲げることができるので、箱の容量を可変する際の操作性に優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、容量を可変する際の操作が容易であり、かつ、箱の変形が生じ難い容量可変箱が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を前方右上から見た斜視図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱のブランクシートを示す図であり、外面側が見えるように配置した平面図である。
図2B】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱のブランクシートを示す図であり、内面側が見えるように配置した平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱の拡大前面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を形成する場合の説明図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を最大容量で形成する場合の説明図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を罫線とスリットとの境界部で折り曲げた容量で形成する場合の説明図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を罫線とスリットとの境界部で折り曲げた容量で形成した斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を端壁切断誘導線の上から二段目で折り曲げた容量で形成する場合の説明図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を端壁切断誘導線の上から二段目で折り曲げた容量で形成する場合の説明図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を端壁切断誘導線の上から二段目で折り曲げた容量で形成した斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を最小容量で形成する場合の説明図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を最小容量で形成する場合の説明図である。
図13】本発明の第1実施形態に係る容量可変箱を最小容量で形成した斜視図である。
図14】本発明の第2実施形態に係る容量可変箱を前方右上から見た斜視図である。
図15A】本発明の第2実施形態に係る容量可変箱のブランクシートを示す図であり、外面側が見えるように配置した平面図である。
図15B】本発明の第2実施形態に係る容量可変箱のブランクシートを示す図であり、内面側が見えるように配置した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各実施形態において同一の部分に同一の符号を付し重複する説明は省略する。
以下の説明において、前後左右上下の方向は、容量可変箱を説明する上で便宜上設定したものであり、容量可変箱の構成を限定するものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、容量可変箱1(以下、単に「箱1」ということがある)は、前後一対の端壁11,12および左右一対の側壁13,14からなる胴部10と、胴部10の下側開口部を閉塞している底壁20と、胴部10の上側開口部を閉塞している頂壁30と、を備えている。
【0018】
箱1は、図2A図2Bに示すように、一枚の段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートSを各罫線において山折りまたは谷折りすることで形成される。図2Aに示すブランクシートSは内面側が見えるように配置されている。また、図2Bに示すブランクシートSは外面側が見えるように配置されている。
図2Bに示すように、ブランクシートSの端壁11,12、側壁13,14、底壁20(図1参照)および頂壁30(図1参照)を仕切る各罫線(折線)は、ブランクシートSの内面を押し込んで形成された線状の溝である。
なお、罫線に切れ込み(ハーフカット線等)を形成してもよい。このようにすると、罫線においてブランクシートSを折り曲げ易くなる。
【0019】
前端壁11は、図1に示すように、四角形に形成されている(図2A図2B参照)。
前端壁11の左縁部には、罫線L1(図2A図2B参照)を介して左側壁13が連設されている。
左側壁13は、前端壁11の左縁部から後方に向けて延びている。左側壁13は、前端壁11に対して直角に形成されている。左側壁13は、四角形に形成されている。
【0020】
前端壁11と左側壁13との稜線部(角部)は、罫線L1と、罫線L1の上端(一端)に連続するスリットST1とから構成されている。前端壁11と左側壁13とは、罫線L1で連続しており、スリットST1で非連続となっている。
【0021】
左側壁13の後縁部には、罫線L2(図2A図2B参照)を介して、後端壁12が連設されている。
後端壁12は、左側壁13の後縁部から右方に向けて延びている。後端壁12は、左側壁13に対して直角に形成されている。後端壁12は、前端壁11と同じ形状である。
【0022】
左側壁13と後端壁12との稜線部(角部)は、罫線L2と、罫線L2の上端(一端)に連続するスリットST2とから構成されている。左側壁13と後端壁12とは、罫線L2で連続しており、スリットST2で非連続となっている。
【0023】
後端壁12の右縁部には、罫線L3(図2A図2B参照)を介して、接合片15が連設されている。接合片15は、後端壁12の右縁部に沿って帯状に形成されている。
接合片15は、右側壁14の内面の後端部に接着剤によって接合される部位である。
【0024】
前端壁11の右縁部には、罫線L4(図2A図2B参照)を介して右側壁14が連設されている。
右側壁14は、前端壁11の右縁部から後方に向けて延びている。右側壁14は、前端壁11に対して直角に形成されている。右側壁14は、左側壁13と同じ形状である。
【0025】
前端壁11と右側壁14との稜線部(角部)は、罫線L4と、罫線L4の上端(一端)に連続するスリットST4とから構成されている。前端壁11と右側壁14とは、罫線L4で連続しており、スリットST4で非連続となっている。
【0026】
右側壁14と後端壁12との稜線部(角部)は、罫線L3と、罫線L3の上端(一端)に連続するスリットST3とから構成されている。右側壁14と後端壁12とは、罫線L3で連続しており、スリットST3で非連続となっている。なお、スリットST3は、接合片15を介して後端壁12と右側壁14とを接続することによって形成される。
【0027】
前端壁11、後端壁12、左側壁13および右側壁14の内面には、図2Bに示すように、各壁の長手方向に延びる平行な折曲誘導線16が複数形成されている。各折曲誘導線16は、フラップの短手方向に等間隔で形成されている。複数の折曲誘導線16のうち、一部のものは、後記する階段状の端壁切断誘導線41の段状部分に対応して形成されている。
【0028】
以上のようなブランクシートS(図2A図2B参照)を罫線L1〜L4で折り曲げつつ、接合片15を右側壁14の後内面に接合することで、前端壁11、左側壁13、後端壁12および右側壁14によって角筒状の胴部10が形成される(図1参照)。
【0029】
底壁20は、図2A図2Bに示すように、前後の底内フラップ21,21と、左右の底外フラップ22,22と、によって構成されている。前後の底内フラップ21,21は、前後の端壁11,12の下縁部に罫線L5,L6を介して連設されている。左右の底外フラップ22,22は、左右の側壁13,14の下縁部に罫線L7,L8を介して連設されている。
図1に示すように、前後一対の底内フラップ21,21の下側に、左右一対の底外フラップ22,22を重ねて配置することで、底壁20が形成されている。底内フラップ21,21と底外フラップ22,22とは、接着剤等によって接合される。
【0030】
胴部10の上側開口部は、図1に示すように、頂壁30で閉塞されている。頂壁30は、前後一対の内フラップ31,31と、左右一対の外フラップ32,32とによって構成されている。
前側の内フラップ31は、図2A図2Bに示すように、前端壁11の上縁部に罫線L9を介して連設されている。前側の内フラップ31は、図1に示すように、前端壁11の上縁部から後方に向けて延びている。前側の内フラップ31は、前端壁11に対して直角に形成されている。
【0031】
後側の内フラップ31は、後端壁12の上縁部に罫線L10を介して連設されている。後側の内フラップ31は、図1に示すように、後端壁12の上縁部から前方に向けて延びている。後側の内フラップ31は、後端壁12に対して直角に形成されている。
【0032】
左側の外フラップ32は、図2A図2Bに示すように、左側壁13の上縁部に罫線L11を介して連設されている。左側の外フラップ32は、図1に示すように、左側壁13の上縁部から右方に向けて延びている。左側の外フラップ32は、左側壁13に対して直角に形成されている。
【0033】
右側の外フラップ32は、図2A図2Bに示すように、右側壁14の上縁部に罫線L12を介して連設されている。右側の外フラップ32は、図1に示すように、右側壁14の上縁部から左方に向けて延びている。右側の外フラップ32は、右側壁14に対して直角に形成されている。
【0034】
前後一対の内フラップ31,31および左右一対の外フラップ32,32の内面には、図2Bに示すように、フラップ31の長手方向に延びる平行な折曲誘導線33が複数形成されている。各折曲誘導線33は、フラップ31の短手方向に等間隔で形成されている。本実施形態では、前記した折曲誘導線16と同じ間隔で折曲誘導線33を配置している。
【0035】
前端壁11および後端壁12には、図2A図2Bに示すように、左右一対の端壁切断誘導線41,41および左右一対の端壁折曲誘導線51,51が形成されている。左右一対の端壁切断誘導線41,41および左右一対の端壁折曲誘導線51,51は、前端壁11と後端壁12とで同様の構成であるので、以下では前端壁11に形成されるものについて説明し、適宜、後端壁12に形成されるものについて説明する。
【0036】
図3に示すように、左右一対の端壁切断誘導線41,41および左右一対の端壁折曲誘導線51,51は、前端壁11を左右方向に二分する基準線X1を中心として線対称に形成されている。各端壁切断誘導線41および端壁折曲誘導線51は、いずれもミシン目状の切込線で形成されている。なお、端壁折曲誘導線51は、ハーフカット線等によって形成することもできる。
【0037】
左側の端壁切断誘導線41は、罫線L1の上端部L1aを起点として前端壁11の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在している。一方、右側の端壁切断誘導線41は、罫線L4の上端部L4aを起点として前端壁11の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在している。
各端壁切断誘導線41は、前端壁11の左右方向の中央部に向けて3つの弧41a〜41cを連ねた階段状に形成されている。各弧41a〜41cの下端部には、下方に湾曲するアール状(円弧凹状)の切込部43が形成されている。
【0038】
各端壁切断誘導線41の傾斜角度は、各弧41a〜41cの膨出端に接する共通の接線(不図示)を引いた場合に、その接線が罫線L1,L4に対してそれぞれ45度の角度となるように設定されている。
【0039】
左側の端壁折曲誘導線51は、罫線L1を起点として前端壁11の左右方向の中央部に向けて斜め上方に延在している。一方、右側の端壁折曲誘導線51は、罫線L4を起点として前端壁11の左右方向の中央部に向けて斜め上方に延在している。
各端壁折曲誘導線51は、上下方向に3つの平行な誘導線51a〜51cからなる。各誘導線51a〜51cは、等間隔で形成されている。上側の誘導線51aは、端壁切断誘導線41の上側の弧41aの膨出端に向けて延在している。また、中央の誘導線51bは、端壁切断誘導線41の上側の弧41aの下端部(上側の弧41aと中央の弧41bとの境界部分)に向けて延在している。また、下側の誘導線51cは、端壁切断誘導線41の中央の弧41bの膨出端に向けて延在している。各端壁折曲誘導線51は、各端壁切断誘導線41の各弧41a〜41cの膨出端に接する共通の接線(不図示)に対して直交している。
【0040】
なお、図2Aに示すように、後端壁12において、左側の端壁切断誘導線41は、罫線L2の上端L2aを起点として後端壁12の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在している。一方、右側の端壁切断誘導線41は、罫線L3の上端部L3aを起点として端壁11の左右方向の中央部に向けて斜め下方に延在している。
【0041】
また、後端壁12において、左側の端壁折曲誘導線51は、罫線L2を起点として後端壁12の左右方向の中央部に向けて斜め上方に延在している。一方、右側の端壁折曲誘導線51は、罫線L3を起点として後端壁12の左右方向の中央部に向けて斜め上方に延在している。
【0042】
次に、容量可変箱1を形成する際の手順について説明する。以下の手順において、前後の内フラップ31,31の折り曲げ順、および左右の外フラップ32,32の折り曲げ順は、特に限定されない
初めに、図4に示すように、胴部10の下側開口部を底壁20で閉塞する。この場合、前後一対の底内フラップ21,21を罫線L5,L6に沿って内側に折り曲げ、次いで、左右一対の底外フラップ22,22を罫線L7,L8に沿って内側に折り曲げて底内フラップ21,21の下面に重ね、これらを接着剤等によって接合する。
【0043】
次に、胴部10の上側開口部を頂壁30で閉塞する。箱1を最大容量で形成する場合には、図5に示すように、前後一対の内フラップ31,31を罫線L9,L10に沿って内側に折り曲げ、次いで、左右一対の外フラップ32,32を罫線L11,L12に沿って内側に折り曲げる。そして、外フラップ32,32同士の突き合わせ部を図示しない封止テープ等によって封止する。
これによって、図1に示すように、最大容量とした箱1を形成することができる。
【0044】
なお、頂壁30を閉塞せずに、内フラップ31,31と外フラップ32,32とを部分的に重ね合わせるだけの構造として箱1を形成してもよい。この場合には、内フラップ31,31および外フラップ32,32の内側に形成した複数の折曲誘導線33を周方向に同じ高さ位置で折り曲げることで頂壁30を形成することができる。
【0045】
また、稜線部のスリットST1〜ST4の上下方向の中間部分等で、前端壁11、後端壁12、左側壁13および右側壁14を折り曲げて、箱1を構成してもよい。この場合には、図5に示したものよりも容量を小さくすることができる。
【0046】
図6図7に示す箱1は、図1の容量可変箱1よりも容量を小さくしたものである。この箱1では、罫線L1〜L4の上端部L1a〜L4a部分(境界部分)で各部を折り曲げて頂壁30を形成している。
【0047】
具体的に、折り曲げ部分が上記境界部分となるため、前側の内フラップ31は、これに連続する前端壁11の上部と一緒に内側に折り曲げられる。前側の内フラップ31および前端壁11の上部は、罫線L1,L4の上端部L1a,L4aを通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。同様に、後側の内フラップ31は、これに連続する後端壁12の上部と一緒に折り曲げられる。後側の内フラップ31および後端壁12の上部は、罫線L3,L2の上端部L3a,L4aを通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。
【0048】
また、左側の外フラップ32は、これに連続する左側壁13の上部と一緒に内側に折り曲げられる。左側の外フラップ32および左側壁13の上部は、罫線L1,L2の上端部L1a,L2aを通る左側壁13の折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。同様に、右側の外フラップ32は、これに連続する右側壁14の上部と一緒に内側に折り曲げられる。右側の外フラップ32および右側壁14の上部は、罫線L4,L3の上端部L4a,L3aを通る右側壁14の折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。
以上のような折り曲げを行うことで頂壁30が形成され、容量を小さくした箱1が形成される(図7参照)。
【0049】
図8図10の箱1は、図7の箱1よりも容量をさらに小さくしたものである。この箱1では、端壁切断誘導線41の3つの弧41a〜41cのうち、上側の弧41aの下端位置(中央の弧41bの上端位置)を折り曲げ位置として各部を折り曲げ、頂壁30を形成している。
【0050】
具体的に、前側の内フラップ31は、これに連続する前端壁11の上部と一緒に内側に折り曲げられる。前側の内フラップ31および前端壁11の上部は、上側の弧41aの下端位置を通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。同様に、後側の内フラップ31は、これに連続する後端壁12の上部と一緒に内側に折り曲げられる。後側の内フラップ31および後端壁12の上部は、上側の弧41aの下端位置を通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。各内フラップ31が折り曲げられることで、図8に示すように、前端壁11の左右上端部および後端壁12の左右上端部には、上側の弧41aによって区画される区画片45がそれぞれ突出形成される。
【0051】
また、左側の外フラップ32は、図9に示すように、これに連続する左側壁13の上部と一緒に内側に折り曲げられる。この場合、左側の外フラップ32および左側壁13の上部は、前端壁11および後端壁12の折曲誘導線16と同じ高さ位置にある左側壁13の折曲誘導線16に沿って折り曲げられる。同様に、右側の外フラップ32は、これに連続する右側壁14の上部と一緒に内側に折り曲げられる。右側の外フラップ32および右側壁14の上部は、前端壁11および後端壁12の折曲誘導線16と同じ高さ位置にある右側壁14の折曲誘導線16に沿って折り曲げられる。
【0052】
以上のような折り曲げを行うことで頂壁30が形成され、容量をさらに小さくした箱1が形成される(図10参照)。頂壁30の四隅には、各外フラップ32の折り曲げによって、区画片45が誘導線51aを境にして二つ折りに折り畳まれて配置される。したがって、頂壁30の四隅部分は、上下方向に外フラップ32と、二つ折りの区画片45と、内フラップ31とが重なる4重構造となっている。
【0053】
図11図13の箱1は、図10の箱1よりも容量をさらに小さくして最小容量としたものである。この箱1では、端壁切断誘導線41の3つの弧41a〜41cのうち、下側の弧41cの下端位置を折り曲げ位置として各部を折り曲げ、頂壁30を形成している。
【0054】
具体的に、前側の内フラップ31は、これに連続する前端壁11と一緒に内側に折り曲げられる。前側の内フラップ31および前端壁11は、下側の弧41cの下端位置を通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。同様に、後側の内フラップ31は、これに連続する後端壁12と一緒に内側に折り曲げられる。後側の内フラップ31および後端壁12は、下側の弧41cの下端位置を通る折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。各内フラップ31が折り曲げられることで、図12に示すように、前端壁11の左右側部および後端壁12の左右側部には、上側の3つの弧41a〜41cによって区画される区画片46がそれぞれ突出形成される。
【0055】
また、左側の外フラップ32は、図12に示すように、これに連続する左側壁13と一緒に内側に折り曲げられる。左側の外フラップ32および左側壁13は、前端壁11および後端壁12の折曲誘導線16と同じ高さ位置にある左側壁13の折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。同様に、右側の外フラップ32は、これに連続する右側壁14と一緒に内側に折り曲げられる。右側の外フラップ32および右側壁14は、前端壁11および後端壁12の折曲誘導線16と同じ高さ位置にある右側壁14の折曲誘導線16に沿って内側に折り曲げられる。
【0056】
以上のような折り曲げを行うことで頂壁30が形成され、最小容量とした箱1が形成される(図10参照)。頂壁30の四隅には、各外フラップ32の折り曲げによって、区画片46が誘導線51cを境にして二つ折りに折り畳まれて配置される。したがって、頂壁30の四隅部分は、上下方向に外フラップ32と、二つ折りの区画片46と、内フラップ31とが重なる4重構造となっている。
【0057】
以上説明した本実施形態の容量可変箱1では、稜線部のスリットST1〜ST4または罫線L1〜L4を利用して、前端壁11、後端壁12、左側壁13および右側壁14(以下、単に「壁」ということがある)を折り曲げることができる。スリットST1〜ST4で折り曲げる場合には、隣接する壁同士の境界部分がスリットST1〜ST4で分離しているため、従来のような切断可能線を用いた煩雑な操作を必要とせずに、壁を容易に折り曲げることができる。したがって、容量を可変する際の操作が容易である。
【0058】
また、罫線L1〜L4で壁を折り曲げる場合には、各端壁切断誘導線41に沿って両端壁11,12に切込みを入れ、この切込みに沿って両端壁11,12を折り曲げる。そして、端壁折曲誘導線51に沿って両側壁13,14を折り曲げることで箱1の容量を可変することができる。この場合、各端壁切断誘導線41および各端壁折曲誘導線51は、いずれも、両端壁11,12の左右方向の中央部に向けて延在しているので、各稜線部の罫線L1〜L4に切込みが存在せず、各稜線部の強度が確保される。また、両側壁13,14を折り曲げる際に、各端壁切断誘導線41に沿って稜線部側に切り残された区画片45や区画片46を、各端壁折曲誘導線51に沿って折り畳むことができる。これによって、稜線部の近傍部分を補強することができる。したがって、箱1の変形が生じ難い。
【0059】
また、端壁切断誘導線41は、階段状に形成されているので、両端壁11,12の折り曲げ位置を特定し易く、箱1の容量を可変する際の操作性が向上する。
【0060】
また、端壁切断誘導線41は、複数の弧41a〜41cを連ねた形状を呈する。これにより、弧41a〜41cに沿って手指を押し当てることで、端壁11,12に容易に切り込みを形成することができる。これにより、端壁11,12の折り曲げ操作が行い易い。
【0061】
また、端壁切断誘導線41の弧41a〜41cの下端部にはアール状の切込部43が形成されている。これにより、弧41a〜41cに沿って手指を押し当てた際に、弧41a〜41cの下端部から破れが生じるのを防止することができる。
【0062】
また、両端壁11,12および両側壁13,14に折曲誘導線16が形成されているので、折り曲げ操作が行い易い。したがって、箱1の容量を可変する際の操作性に優れる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、図14図15Aおよび図15Bを参照して第2実施形態の容量可変箱1Aについて説明する。本実施形態の箱1Aが前記第1実施形態の箱1と異なるところは、各稜線部からスリットST1〜ST4(図1参照)を無くし、各稜線部を罫線L1〜L4だけで構成した点である。
【0064】
箱1Aは、図15A図15Bに示すように、一枚の段ボール製のシートを切り抜いたブランクシートS1を各罫線において山折りまたは谷折りすることで形成される。図15Aに示すブランクシートS1は内面側が見えるように配置されている。また、図15Bに示すブランクシートS1は外面側が見えるように配置されている。
本実施形態では、各稜線部からスリットST1〜ST4(図1参照)を無くしている分、図14に示すように、罫線L1〜L4の上端部L1a〜L4aに頂壁30を形成する内フラップ31,31と外フラップ32,32とが連続している。したがって、両端壁11,12および両側壁13,14の高さが第1実施形態の箱1に比べて低く形成されている。
【0065】
本実施形態において、箱1Aを最大容量で形成する場合には、図14に示すように、罫線L1〜L4の上端部L1a〜L4a部分で各部を折り曲げて頂壁30を形成する。これによって、最大容量とした箱1Aを形成することができる。
【0066】
また、これよりも容量を小さくする場合には、端壁切断誘導線41の3つの弧41a〜41cのうち、適宜の弧41a(41b,41c)を選択し、選択した弧41a(41b,41c)を折り曲げ位置として各部を折り曲げ、頂壁30を形成する。
【0067】
本実施形態においても、各端壁切断誘導線41に沿って両端壁11,12に切込みを入れ、この切込みに沿って両端壁11,12を折り曲げることができる。そして、端壁折曲誘導線51に沿って両側壁13,14を折り曲げることで箱1Aの容量を可変することができる。この場合、各端壁切断誘導線41および各端壁折曲誘導線51は、いずれも、両端壁11,12の左右方向の中央部に向けて延在しているので、各稜線部の罫線L1〜L4に切込みが存在せず、各稜線部の強度が確保される。また、両側壁13,14を折り曲げる際に、各端壁切断誘導線41に沿って稜線部側に切り残された区画片45や区画片46を、各端壁折曲誘導線51に沿って折り畳むことができる。これによって、稜線部の近傍部分を補強することができる。したがって、箱1Aの変形が生じ難い。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、端壁切断誘導線41は、階段状としたが、これに限られることはなく、直線状としてもよい。
【0069】
また、端壁切断誘導線41を3つの弧41a〜41cからなる階段状としたが、四角い階段状としてもよい。また、階段(突部)の数や端壁折曲誘導線51の数は任意に設定することができる。
【0070】
また、前後方向および左右方向に延びる折曲誘導線16は、必ずしも設けなくてもよい。
【0071】
本実施形態の容量可変箱1,1Aは段ボール製であるが、各種公知の板紙によって容量可変箱を形成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1A 容量可変箱
11 前端壁(端壁)
12 後端壁(端壁)
13 左側壁(側壁)
14 右側壁(側壁)
16 折曲誘導線
17 ジッパー
17a 帯状領域
20 底壁
30 頂壁
31 内フラップ
32 外フラップ
33 折曲誘導線
41 端壁切断誘導線
41a〜41c 弧
43 切込部
51 端壁折曲誘導線
51a〜51c 誘導線
L1〜L4 罫線
ST1〜ST4 スリット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B