特許第6856061号(P6856061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856061
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/41 20180101AFI20210329BHJP
   F24F 11/87 20180101ALI20210329BHJP
【FI】
   F24F11/41 220
   F24F11/87
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-199820(P2018-199820)
(22)【出願日】2018年10月24日
(62)【分割の表示】特願2016-240661(P2016-240661)の分割
【原出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-11949(P2019-11949A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】塩野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 規宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松原 篤志
(72)【発明者】
【氏名】田坂 昭夫
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−141039(JP,A)
【文献】 特開2011−149654(JP,A)
【文献】 実開平04−103541(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/41
F24F 11/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の空調対象空間の空調を行うために、前記空調対象空間の周囲の前記屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システム(10)であって、
前記空調対象空間の空気と熱交換を行う利用側熱交換器(61)、前記利用側熱交換器との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器(62)、及び前記共通空間から取り入れられる空気を前記熱源側熱交換器に流して前記共通空間に吹き出させる熱源側ファン(63)を有し、複数の前記熱源側熱交換器が前記共通空間に配置されている複数の空気調和機(21〜25)と、
屋外から前記共通空間に空気を取り入れるための吸気口及び/又は前記共通空間から前記屋外に空気を排気するための排気口の近傍に配置され、送風量の変更が可能な少なくとも一つの換気ファン(46,47)と、
前記共通空間の気温に関する情報に基づいて前記換気ファンの送風量を変更する制御装置(30)と、
を備え、
前記複数の空気調和機は、それぞれ、前記熱源側熱交換器で熱交換される前の前記共通空間の空気の温度を検知する第1温度センサ(71)及び圧縮機を有し、前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器と前記圧縮機を含む冷媒回路を形成しており、前記圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を所定の範囲に収める制御に前記第1温度センサの検知温度を用い、前記第1温度センサの検知温度に基づいて前記冷媒回路の蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御を行う、空気調和システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
冷房運転時に前記共通空間の気温の上昇を検知した場合に、前記共通空間の気温を降下させるために前記換気ファンの送風量を上げる第1制御を行い、
暖房運転時に前記共通空間の気温の下降を検知した場合に、前記共通空間の気温を上昇させるために前記換気ファンの送風量を上げる第2制御を行う、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
冷房運転時に前記共通空間の気温が上昇するか下降するかを判断して、上昇する場合に前記換気ファンの送風量を上げ、下降する場合に前記換気ファンの送風量を下げる、
請求項1または請求項2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記共通空間の気温を検出する少なくとも一つの第2温度センサ(51)をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2温度センサが検知する温度に応じて前記換気ファンの送風量を変更する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
屋内の空調対象空間の空調を行うために、前記空調対象空間の周囲の前記屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システム(10)であって、
前記空調対象空間の空気と熱交換を行う利用側熱交換器(61)、前記利用側熱交換器との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器(62)、及び前記共通空間から取り入れられる空気を前記熱源側熱交換器に流して前記共通空間に吹き出させる熱源側ファン(63)を有し、複数の前記熱源側熱交換器が前記共通空間に配置されている複数の空気調和機(21〜25)と、
屋外から前記共通空間に空気を取り入れるための吸気口及び/又は前記共通空間から前記屋外に空気を排気するための排気口の近傍に配置され、送風量の変更が可能な少なくとも一つの換気ファン(46,47)と、
前記共通空間の気温に関する情報に基づいて前記換気ファンの送風量を変更する制御装置(30)と、
を備え、
前記複数の空気調和機は、それぞれ、前記熱源側熱交換器で熱交換される前の前記共通空間の空気の温度を検知する第1温度センサ(71)を有し、前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器を含む冷媒回路を形成しており、前記第1温度センサの検知温度に基づいて前記冷媒回路の蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御を行い、
前記制御装置は、
冷房運転時に前記共通空間の気温の上昇を検知した場合に、前記共通空間の気温を降下させるために前記換気ファンの送風量を上げる第1制御を行い、
暖房運転時に前記共通空間の気温の下降を検知した場合に、前記共通空間の気温を上昇させるために前記換気ファンの送風量を上げる第2制御を行う、空気調和システム。
【請求項6】
屋内の空調対象空間の空調を行うために、前記空調対象空間の周囲の前記屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システム(10)であって、
前記空調対象空間の空気と熱交換を行う利用側熱交換器(61)、前記利用側熱交換器との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器(62)、及び前記共通空間から取り入れられる空気を前記熱源側熱交換器に流して前記共通空間に吹き出させる熱源側ファン(63)を有し、複数の前記熱源側熱交換器が前記共通空間に配置されている複数の空気調和機(21〜25)と、
屋外から前記共通空間に空気を取り入れるための吸気口及び/又は前記共通空間から前記屋外に空気を排気するための排気口の近傍に配置され、送風量の変更が可能な少なくとも一つの換気ファン(46,47)と、
前記共通空間の気温に関する情報に基づいて前記換気ファンの送風量を変更する制御装置(30)と、
を備え、
前記複数の空気調和機は、それぞれ、前記熱源側熱交換器で熱交換される前の前記共通空間の空気の温度を検知する第1温度センサ(71)を有し、前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器を含む冷媒回路を形成しており、前記第1温度センサの検知温度に基づいて前記冷媒回路の蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御を行い、
前記制御装置は、
冷房運転時に前記共通空間の気温が上昇するか下降するかを判断して、上昇する場合に前記換気ファンの送風量を上げ、下降する場合に前記換気ファンの送風量を下げる、空気調和システム。
【請求項7】
屋内の空調対象空間の空調を行うために、前記空調対象空間の周囲の前記屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システム(10)であって、
前記空調対象空間の空気と熱交換を行う利用側熱交換器(61)、前記利用側熱交換器との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器(62)、及び前記共通空間から取り入れられる空気を前記熱源側熱交換器に流して前記共通空間に吹き出させる熱源側ファン(63)を有し、複数の前記熱源側熱交換器が前記共通空間に配置されている複数の空気調和機(21〜25)と、
屋外から前記共通空間に空気を取り入れるための吸気口及び/又は前記共通空間から前記屋外に空気を排気するための排気口の近傍に配置され、送風量の変更が可能な少なくとも一つの換気ファン(46,47)と、
前記共通空間の気温に関する情報に基づいて前記換気ファンの送風量を変更する制御装置(30)と、
前記共通空間の気温を検出する少なくとも一つの第2温度センサ(51)と、
を備え、
前記複数の空気調和機は、それぞれ、前記熱源側熱交換器で熱交換される前の前記共通空間の空気の温度を検知する第1温度センサ(71)を有し、前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器を含む冷媒回路を形成しており、前記第1温度センサの検知温度に基づいて前記冷媒回路の蒸気圧縮式冷凍サイクルの制御を行い、
前記制御装置は、前記第2温度センサが検知する温度に応じて前記換気ファンの送風量を変更する、空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システム、特に、屋内の空調対象空間の空調を行うために、空調対象空間の周囲の屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調対象外の天井室などの屋内の共通空間を活用して空気調和を行う複数の小型一体型空気調和機を用いた空気調和システムが提案されている。例えば特許文献1(特開昭48−2756号公報)に記載されている一体型空気調和機は、冷凍サイクルを行うための調温用熱交換器と放熱用熱交換器の両方が屋内、特に天井との境界部分に配置されている。そして、共通空間の空気が複数の一体型空気調和機の複数の放熱用熱交換器による熱交換に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている空気調和システムでは、天井室などの屋内の共通空間を断熱空気流路とし、排風機によって天井室内空気を入れ換えている。しかしながら、特許文献1に記載されている排風機によって天井室内空気を入れ換えるだけでは、建物の構造、一体型空気調和機の台数及び一体型空気調和機の配置によっては、効率の良い空調運転が難しい場合がある。
【0004】
本発明の課題は、空調対象外の屋内の共通空間の空気を複数の空気調和機で熱交換のために効率良く共用して消費エネルギーを抑制することのできる空気調和システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空気調和システムは、屋内の空調対象空間の空調を行うために、空調対象空間の周囲の屋内に配置されている空調対象外の共通空間の空気との間で熱交換を行う空気調和システムであって、空調対象空間の空気と熱交換を行う利用側熱交換器、利用側熱交換器との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器、及び共通空間から取り入れられる空気を熱源側熱交換器に流して共通空間に吹き出させる熱源側ファンを有し、複数の熱源側熱交換器が共通空間に配置されている複数の空気調和機と、屋外から共通空間に空気を取り入れるための吸気口及び/又は共通空間から屋外に空気を排気するための排気口の近傍に配置され、送風量の変更が可能な少なくとも一つの換気ファンと、共通空間の気温に関する情報に基づいて換気ファンの送風量を変更する制御装置と、を備える、ものである。
【0006】
第1観点に係る空気調和システムによれば、制御装置が共通空間の気温に関する情報に基づいて換気ファンの送風量を変更することにより、吸気口から取り入れられる空気の流量及び排気口から排気される空気の流量が変化することから、共通空間の気温を調整することができる。例えば、複数の空気調和機の熱交換量の総量が変化したり、屋外の吸気口の付近の気温が変化したりして共通空間の気温が変化した場合に、換気ファンの消費電力が上がっても複数の空気調和機の効率化が図れて全体として効率化が図れるときには換気ファンの送風量を上げることができる。また、換気ファンの送風量を下げても複数の空気調和機の効率化が図れて全体として効率化が図れるときには換気ファンの送風量を下げて換気ファンの消費電力を下げられる。
【0007】
本発明の第2観点に係る空気調和システムは、第1観点の空気調和システムにおいて、共通空間の気温を検出する少なくとも一つの共通空間用温度センサをさらに備え、制御装置は、共通空間用温度センサが検知する温度に応じて換気ファンの送風量を変更する、ものである。
【0008】
第2観点に係る空気調和システムによれば、共通空間用温度センサによって実際の共通空間の気温が検知できることから、実際の共通空間の空気の温度が複数の空気調和機で熱交換のために効率良く共用することができるものになっているか否かを実際に判断しながら換気ファンの送風量を変更することができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る空気調和システムは、第1観点又は第2観点に係る空気調和システムにおいて、制御装置は、複数の空気調和機の運転台数を検知可能に構成され、複数の空気調和機の運転台数を共通空間の気温に関する情報として用いて、運転台数に基づいて換気ファンの送風量を変更する、ものである。
【0010】
第3観点に係る空気調和システムによれば、制御装置が複数の空気調和機の運転台数に基づいて換気ファンの送風量を変更することから、運転台数が多いために共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し易いときは換気ファンの送風量を上げて共通空間の空気の温度の変化を抑制することができ、運転台数が少なくて共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し難いときは換気ファンの送風量を下げて換気ファンの消費電力が上がるのを抑制することができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る空気調和システムは、第1観点又は第2観点の空気調和システムにおいて、制御装置は、複数の空気調和機の処理負荷量に関する情報を取得可能に構成され、複数の空気調和機の処理負荷量に関する情報を共通空間の気温に関する情報として用いて、処理負荷量に基づいて換気ファンの送風量を変更する、ものである。
【0012】
第4観点に係る空気調和システムによれば、制御装置が複数の空気調和機の処理負荷量に基づいて換気ファンの送風量を変更することから、処理負荷量が多いために共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し易いときは換気ファンの送風量を上げて共通空間の空気の温度の変化を抑制することができ、処理負荷量が少なくて共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し難いときは換気ファンの送風量を下げて換気ファンの消費電力が上がるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る空気調和システムは、第1観点から第4観点のいずれかの空気調和システムにおいて、制御装置は、共通空間の実際の温度に関する情報と共通空間の目標温度に関する情報とを比較して共通空間の実際の温度を共通空間の目標温度に一致させるように換気ファンの送風量を変更するフィードバック制御を行う、ものである。
【0014】
第5観点に係る空気調和システムによれば、制御装置が共通空間の実際の温度を共通空間の目標温度に一致させるように換気ファンの送風量を変更するフィードバック制御を行うことから、予期しえない外乱によって共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率の悪くなる方向に変化しても、修正動作を効率良く行うことができる。
【0015】
本発明の第6観点に係る空気調和システムは、第5観点の空気調和システムにおいて、制御装置は、複数の空気調和機の共通空間の将来の気温に関する情報を取得可能に構成され、共通空間の将来の気温に関する情報に基づいて換気ファンの送風量の変更を補正するフィードフォワード制御を行う、ものである。
【0016】
第6観点に係る空気調和システムによれば、制御装置が共通空間の将来の気温に関する情報に基づいて換気ファンの送風量の変更を補正するフィードフォワード制御を行うことから、予期される外乱によって共通空間の空気の温度が空気調和機の熱交換の効率の悪くなる方向に変化するのを抑制するための準備を事前に整えることができ、外乱による共通空間の空気の温度と目標温度との乖離を小さくできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1観点に係る空気調和システムでは、共通空間の空気を複数の空気調和機が熱交換のために効率良く共用して消費エネルギーを抑制することができるようになる。
【0018】
本発明の第2観点に係る空気調和システムでは、共通空間の現状にあわせた精度の良い制御を行うことができる。
【0019】
本発明の第3観点に係る空気調和システムでは、制御装置の負担の増加を抑制しながら空気調和システム10の全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。
【0020】
本発明の第4観点に係る空気調和システムでは、システム全体としてのエネルギー効率を向上させ易くなる。
【0021】
本発明の第5観点又は第6観点に係る空気調和システムでは、共通空間の空気を複数の空気調和機が熱交換のために安定して効率良く共用することができる空気調和システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る空気調和システムが設置されたビルの模式的な断面図。
図2】第1実施形態に係る空気調和システムが設置されたビルの模式的な平面図。
図3】第1実施形態に係る空気調和システムの構成の一例を示すブロック図。
図4】空気調和システムを構成する一体型の空気調和機の模式的な断面図。
図5図4の空気調和機の冷媒回路の一例を示す回路図。
図6】第1実施形態の空気調和システムの冷房運転時の動作の一例を示すフローチャート。
図7】第1実施形態の空気調和システムの暖房運転時の動作の一例を示すフローチャート。
図8】変形例1Bの空気調和システムの構成の概要を説明するための概念図。
図9】変形例2Aの空気調和システムの冷房運転時の動作の一例を示すフローチャート。
図10】変形例2Bの空気調和システムを構成するセパレート型の空気調和機についての第1ケーシングの外観の一例を示す斜視図。
図11図10の空気調和機の模式的な断面図。
図12】変形例3Aの空気調和システムの冷房運転時の動作の一例を示すフローチャート。
図13】第4実施形態に係る空気調和システムが設置されたビルの模式的な断面図。
図14】第4実施形態の空気調和システムの冷房運転時の動作の一例を示すフローチャート
図15】第5実施形態に係る空気調和システムが設置されたビルの模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
(1)全体構成
本発明の第1実施形態に係る空気調和システムについて図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2に示されている空気調和システム10は、屋内98の空調対象空間である部屋RMの空調を行うために、部屋RMの周囲の屋内98に配置されている空調対象外の共通空間である天井裏ATの空気との間で熱交換を行う。ここでは、部屋RMが1つの場合について説明しているが、複数の部屋を空気調和システム10で空調する場合にも本願発明を適用することができる。また、ここで説明する空気調和システム10が空気の経路を制御するのは連続した1つの共通空間である。しかし、例えばビルの1階の天井裏と2階の天井裏のように独立した複数の共通空間の空気の経路を本発明に係る1台の空気調和システムで制御するように構成してもよい。
【0024】
図1に示されている空気調和システム10は、複数の一体型の空気調和機21,22,23,24,25とコントローラ30と第1換気ファン46と共通空間用温度センサ51を備えている。図3には、コントローラ30と空気調和システム10の他の構成機器との関係の概要が示されている。上述の5台の一体型の空気調和機21〜25は、全てコントローラ30によって制御されている。また、第1換気ファン46が、コントローラ30によって制御されている。コントローラ30は、共通空間である天井裏ATの気温に関する情報である共通空間用温度センサ51の検知温度に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更する。
【0025】
(2)詳細構成
(2−1)一体型の空気調和機21〜25
一体型の空気調和機21〜25は、互いに異なる構造の機器とすることもできるが、ここでは全て同じ構造の機器で構成されているものとして説明する。従って、全ての一体型の空気調和機21〜25の代表として空気調和機21を例に挙げて図4及び図5を用いて説明する。空気調和機21は、空調対象空間である部屋RMの空気と熱交換を行う利用側熱交換器61、利用側熱交換器61との間で熱の伝達が行われる熱源側熱交換器62、天井裏ATから取り入れられる空気を熱源側熱交換器62に流して再び天井裏ATに吹き出させる熱源側ファン63、部屋RMから取り入られる空気を利用側熱交換器61に流して再び部屋RMに吹き出させる利用側ファン64、及びケーシング65を有している。他の一体型の空気調和機22〜25も、空気調和機21と同じように、利用側熱交換器61、熱源側熱交換器62、熱源側ファン63及び利用側ファン64をそれぞれのケーシング65の内部に有している。従って、空気調和機22〜25の複数の熱源側熱交換器62が共通空間である天井裏ATの空気を共用することができる。
【0026】
利用側熱交換器61及び熱源側熱交換器62には、例えば多数のフィン(図示せず)の間を通過する空気とそれらフィンを貫通する複数の伝熱管(図示せず)の中を流れる冷媒との熱交換を行わせるフィンアンドチューブ式の熱交換器をそれぞれに用いることができる。利用側熱交換器61と熱源側熱交換器62の間では、図5に示されている冷媒回路60を流れる冷媒によって熱の伝達が行われる。
【0027】
熱源側ファン63及び利用側ファン64には、例えば遠心送風機、軸流送風機又は横断流送風機(クロスフローファン)をそれぞれに用いることができる。図4に示されている熱源側ファン63及び利用側ファン64はクロスフローファンである。ここで示されている熱源側ファン63及び利用側ファン64は、熱源側ファン63及び利用側ファン64の回転数をそれぞれ独立して変更可能に構成されている。従って、コントローラ30は、空気調和機21から空気調和機25までの熱源側ファン63及び利用側ファン64に流れる熱源側送風量及び利用側送風量を、熱源側と利用側とで独立して別々に制御することができ、また各空気調和機について独立して個別に制御することができる。
【0028】
空気調和機21のケーシング65の内部空間は、内部に配置された仕切板65aによって、空調対象空間側区域65bと共通空間側区域65cとに分けられている。部屋RMに露出しているケーシング65の側面には、部屋RMから空気を取り入れるための部屋側吸気口65d及び部屋RMに空気を吹き出すための部屋側吹出口65eが形成されている。また、天井裏ATに露出しているケーシング65の側面には、天井裏ATから空気を取り入れるための共通空間側吸気口65f及び天井裏ATに空気を吹き出すための共通空間側吹出口65gが形成されている。
【0029】
図5には冷媒回路60の一例が示されている。冷媒回路60は、圧縮機66、四路切換弁67、熱源側熱交換器62、膨張機構68、利用側熱交換器61及びアキュムレータ69が冷媒配管60aで接続されて構成されている。冷房運転時には、四路切換弁67が実線の接続になり、圧縮機66から吐出された冷媒が四路切換弁67を介して熱源側熱交換器62に流れる。熱源側熱交換器62において天井裏ATの空気との熱交換により冷やされた冷媒は、膨張機構68で膨張されて利用側熱交換器61に流れる。利用側熱交換器61において部屋RMの空気と熱交換により暖められた冷媒は、四路切換弁67及びアキュムレータ69を介して圧縮機66に吸入される。暖房運転時には、四路切換弁67が破線の接続になり、圧縮機66から吐出された冷媒が四路切換弁67を介して利用側熱交換器61に流れる。利用側熱交換器61において部屋RMの空気との熱交換により冷やされた冷媒は、膨張機構68で膨張されて熱源側熱交換器62に流れる。熱源側熱交換器62において天井裏ATの空気と熱交換により暖められた冷媒は、四路切換弁67及びアキュムレータ69を介して圧縮機66に吸入される。
【0030】
空気調和機21は、制御のために、温度センサ71〜76を備えている。温度センサ71は、熱源側熱交換器62で熱交換される前の天井裏ATの空気の温度を検知する。温度センサ72は、利用側熱交換器61で熱交換される前の部屋RMの空気の温度を検知する。温度センサ73は、膨張機構68と利用側熱交換器61との間において、利用側熱交換器61の出入口の冷媒の温度を検知する。温度センサ74は、膨張機構68と熱源側熱交換器62との間において、熱源側熱交換器62の出入口の冷媒の温度を検知する。温度センサ75は、アキュムレータ69と圧縮機66との間において、圧縮機66に吸入される冷媒の温度を検知する。温度センサ76は、圧縮機66と四路切換弁67との間において、圧縮機66から吐出される冷媒の温度を検知する。空気調和機21は、これら温度センサ71〜76を用いて例えば圧縮機66に吸入される冷媒の過熱度が所定の範囲に収まるように制御される。また圧縮機66から吐出される冷媒の温度が所定値以下になるように制御される。空気調和機21の冷媒回路60では、冷凍サイクル、特に蒸気圧縮式冷凍サイクルが実施される。
【0031】
圧縮機66は、回転数(運転周波数)を変化させることで容量を変更可能に構成されている。空気調和機21〜25は、例えば、圧縮機66の回転数、熱源側ファン63の回転数及び利用側ファン64の回転数を調整することによって処理負荷量に対応することができる。処理負荷量は、例えば、部屋RMの設定温度と部屋RMから空気調和機21〜25に吸い込まれる空気の温度との温度差よって増減する。例えば、冷房運転において、設定温度が28℃且つ吸い込まれる空気の温度が30℃の場合に比べて設定温度が28℃且つ吸い込まれる空気の温度が32℃の場合の方が、処理負荷量は大きくなる。また、例えば、冷房運転において、設定温度が28℃且つ吸い込まれる空気の温度が30℃の場合に比べて設定温度が26℃且つ吸い込まれる空気の温度が30℃の場合の方が、処理負荷量は大きくなる。暖房運転では、例えば、設定温度が24℃且つ吸い込まれる空気の温度が20℃の場合に比べて設定温度が24℃且つ吸い込まれる空気の温度が18℃の場合の方が処理負荷量は大きく、設定温度が22℃且つ吸い込まれる空気の温度が20℃の場合に比べて設定温度が24℃且つ吸い込まれる空気の温度が20℃の場合の方が処理負荷量は大きくなる。
【0032】
(2−2)排気口43及び吸気口44
排気口43は、ビル90の西壁91に形成されている。吸気口44は、ビル90の東壁92に形成されている。これら西壁91と東壁92は、ビル90の内部である屋内98と屋外99との間に設けられた境界である。排気口43及び吸気口44を通して屋外99と天井裏ATとの間で空気を通気させる。ここでは、排気口43及び吸気口44が西壁91と東壁92に形成されているが、排気口43及び吸気口44の形成される場所は、東西に限られるものではなく、例えば北と南、東南と南西、又は同じ北壁の東寄りと西寄りでもよい。
【0033】
(2−3)第1換気ファン46
第1換気ファン46には、例えば遠心送風機、軸流送風機又は横断流送風機をそれぞれに用いることができる。図2に示されている第1換気ファン46は、軸流送風ファンである。第1換気ファン46は、排気口43に取り付けられている排気ファンである。つまり、第1換気ファン46が排気口43の近傍に設けられているということである。換気ファン取り付け位置は、換気口近傍であればよいので、上述のように排気口43に取り付けられる場合だけでなく、換気口に気流を発生させられる離れた場所に取り付けられていてもよい。
【0034】
この第1換気ファン46の駆動により、図2に矢印AR1で示されている天井裏ATから排気口43を通って屋外99に吹き出す気流が発生する。矢印AR1で示されている気流の発生にともなって天井裏ATが負圧になり、屋外99から吸気口44を通って天井裏ATに流れ込む気流(矢印AR2で示された気流)が発生する。その結果、天井裏ATでは、吸気口44から排気口43に向かう気流(矢印AR3で示された気流)が発生する。
【0035】
(2−4)コントローラ30
コントローラ30は、図3に示されているように、マイクロプロセッシングユニット(MPU)31とメモリ32とクロック33とを含んでいる。コントローラ30は、空気調和機21,22,23,24,25の各制御部21a,22a,23a,24a,25aに接続されている。コントローラ30は、第1換気ファン46の制御部46aにも接続されている。また、コントローラ30には共通空間用温度センサ51が接続され、共通空間用温度センサ51の検知温度がコントローラ30に入力される。また、空気調和機21〜25の運転状態に関する情報が制御部21a〜25aからコントローラ30に送信される。そのため、コントローラ30は、空気調和機21〜25がそれぞれ運転されているか否かを検知することができる。また、コントローラ30は、処理負荷量を算出するためのデータを制御部21a〜25aから入力することができる。
【0036】
例えば、コントローラ30のメモリ32には、後述する第1実施形態の空気調和システム10の動作を制御するためのプログラムが記憶されている。MPU31がメモリ32に記憶されているプログラムに従って制御部21a〜25a,46aに指令を送信する。ここでは、コントローラ30がビル90の内部に設置されている場合について説明するが、コントローラ30はビル90の外部に設置されていてもよく、コントローラ30の記憶機能と処理機能が別々の場所に設けられていてもよい。
【0037】
(2−5)共通空間用温度センサ51
共通空間用温度センサ51には、例えばサーミスタを用いることができる。共通空間用温度センサ51は、第1換気ファン46及び空気調和機21〜25から吹き出される空気の影響を受け難い場所に取り付けられる。このような場所としては、例えば、第1換気ファン46の天井裏ATの側、空気調和機21〜25の共通空間側吹出口65g(図4参照)から吹き出される空気が直接当たらない天井CEに近い場所あるいは天井CEから離れた高い場所などがある。
【0038】
(3)全体動作
(3−1)冷房運転
部屋RMが冷房されているときには、一体型の空気調和機21〜25から部屋RMに向かって冷風が吹き出される。部屋RMに吹き出される冷風の温度は、通常、屋外99の気温よりも低い。このとき空気調和機21〜25から天井裏ATに向かって温風が吹き出される。天井裏ATに吹き出される温風の温度は、通常、屋外99の気温よりも高い。従って、もし天井裏ATの換気をしなければ、空気調和機21〜25から吹き出される温風によって天井裏ATの空気が暖められて天井裏ATの気温が上昇する。この天井裏ATの気温の上昇は、冷房運転を行っている空気調和機21〜25の熱交換効率の低下を招く。第1換気ファン46の駆動によって天井裏ATを換気して天井裏ATの気温の上昇を抑制すれば、このような熱交換効率の低下を抑制できる。しかしながら、第1換気ファン46を過剰に運転しても、天井裏ATの気温を屋外99の気温よりも下げることができず、第1換気ファン46で消費される電気エネルギーによって全体としてのエネルギー効率をかえって低下させてしまう。空気調和機21〜25の熱源側熱交換器62の熱交換効率を上げるには第1換気ファン46の回転数を上げることが好ましく、第1換気ファン46の消費電力を抑えるには回転数を下げることが好ましいことから、両方を考慮したエネルギー効率を最大にするには第1換気ファン46の回転数について最適値又は最適な範囲が存在する。
【0039】
ところが、このような第1換気ファン46の回転数の最適値又は最適な範囲は、空気調和機21〜25の運転状況に応じて変化する。例えば、空気調和機21〜25のうちの5台が能力一杯で冷房運転している場合に比べて2台しか冷房運転していない場合には、回転数の最適値又は最適な範囲が小さくなる。つまり、空気調和機21〜25の運転状況に応じて第1換気ファン46の回転数を適切な値に調整することで、第1換気ファン46の回転数を常に一定で駆動している場合に比べてエネルギー効率を向上させることができる。
【0040】
第1換気ファン46の回転数を常に最適値に保つことは難しいが、第1換気ファン46の回転数を適切に調整してエネルギー効率を向上させる一つの方法として、天井裏ATの気温を検知する共通空間用温度センサ51の検知温度が一定になるように回転数を制御する方法がある。天井裏ATの気温に基づいて第1換気ファン46の回転数を調整する方法について図6に示されているフローに沿って説明する。冷房運転の場合には、例えば、第1換気ファン46の回転数が最適値に比べて小さい場合には、空気調和機21〜25から吹き出される温風によって天井裏ATの気温が上昇する。そこで、コントローラ30は、まず、共通空間用温度センサ51の検知温度を取得する(ステップS1)。
【0041】
次に、共通空間用温度センサ51の検知温度に応じて第1換気ファン46の回転数の調整について判断する(ステップS2)。例えば予め設定されている第1インターバル終了までに天井裏ATの気温に変化が無ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数をそのまま維持する。なお、コントローラ30は、クロック33を使って第1インターバルの終了を検知できるように構成されている。共通空間用温度センサ51の検知温度に変化が無ければ、次のステップS5に進む。もし、第1インターバル終了までに天井裏ATの気温上昇が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の増加分に合わせて上げて(ステップS3)、次のステップS5に進む。逆に、もし、第1インターバル終了までに天井裏ATの気温降下が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の下降分に合わせて下げて(ステップS4)、次のステップS5に進む。ステップS5で、コントローラ30は、空気調和システム10の運転を停止するか否かを判断して、運転を続行する場合にはステップS1に戻り、運転を停止する場合には第1換気ファン46の送風量を調整するための動作であるステップS1〜S5を終了する。なお、ステップS1に戻る際には、コントローラ30は第1インターバルの始めに戻る。このように、コントローラ30は、天井裏ATの気温に関する情報として共通空間用温度センサ51の検知温度に基づいて、第1換気ファン46の回転数を変更して送風量を変更している。
【0042】
(3−2)暖房運転
ここまでは、部屋RMが空気調和機21〜25により冷房されている場合について説明したが、部屋RMが暖房されている場合について簡単に説明する。部屋RMが暖房されているときには、空気調和機21〜25から部屋RMに向かって温風が吹き出される。部屋RMに吹き出される温風の温度は、通常、屋外99の気温よりも高い。このとき空気調和機21〜25から天井裏ATに向かって冷風が吹き出される。天井裏ATに吹き出される冷風の温度は、通常、屋外99の気温よりも低い。従って、もし天井裏ATの換気をしなければ、空気調和機21〜25から吹き出される冷風によって天井裏ATの空気が冷やされて天井裏ATの気温が下降する。この天井裏ATの気温の下降は、暖房運転を行っている空気調和機21〜25の熱交換効率の低下を招く。第1換気ファン46の駆動によって天井裏ATを換気して天井裏ATの気温の下降を抑制すれば、このような熱交換効率の低下を抑制できる。しかしながら、第1換気ファン46を過剰に運転しても、天井裏ATの気温を屋外99の気温よりも上げることができず、第1換気ファン46で消費される電気エネルギーによって全体としてのエネルギー効率をかえって低下させてしまう。暖房運転の場合も冷房運転の場合と同様に、第1換気ファン46の回転数を適切な値に調整することで、第1換気ファン46の回転数を一定で駆動している場合に比べてエネルギー効率を向上させることができる。
【0043】
天井裏ATの気温に基づいて第1換気ファン46の回転数を調整する方法については、暖房運転の場合は図7に示されているフローに沿って説明することができる。暖房運転の場合には、例えば、第1換気ファン46の回転数が最適値に比べて小さい場合には、空気調和機21〜25から吹き出される冷風によって天井裏ATの気温が下降する。そこで、コントローラ30は、まず、共通空間用温度センサ51の検知温度を取得する(ステップS1)。
【0044】
次に、共通空間用温度センサ51の検知温度に応じて第1換気ファン46の回転数の調整について判断する(ステップS2)。例えば予め設定されている第2インターバル終了までに天井裏ATの気温に変化が無ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数をそのまま維持する。なお、コントローラ30は、クロック33を使って第2インターバルの終了を検知できるように構成されている。共通空間用温度センサ51の検知温度に変化が無ければ、次のステップS5に進む。もし、第2インターバル終了までに天井裏ATの気温降下が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の減少分に合わせて上げて(ステップS13)、次のステップS5に進む。逆に、もし、第2インターバル終了までに天井裏ATの気温上昇が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の上昇分に合わせて下げて(ステップS14)、次のステップS5に進む。ステップS5で、コントローラ30は、空気調和システム10の運転を停止するか否かを判断して、運転を続行する場合にはステップS1に戻り、運転を停止する場合には第1換気ファン46を調整するための動作であるステップS1〜S5を終了する。なお、ステップS1に戻る際には、コントローラ30は第2インターバルの始めに戻る。
【0045】
(4)変形例
(4−1)変形例1A
上記第1実施形態では、第1換気ファン46が排気ファンである場合について説明したが、第1換気ファン46は、吸気ファンであってもよい。また、第1換気ファン46は、吸気と排気とを切り換え可能に構成されたファンであってもよい。
【0046】
(4−2)変形例1B
上記第1実施形態では、換気ファンが1つの第1換気ファン46だけの場合について説明した。しかし、空気調和システムが換気ファンを複数備えてもよく、例えば、図8に示されている変形例1Bの空気調和システム10は、第1換気ファン46だけでなく、吸気口44に第2換気ファン47を備えている。この第2換気ファン47は、コントローラ30により制御されて回転数を変更できるように構成されている吸気ファンである。変形例1Bの空気調和システム10は、コントローラ30が、天井裏ATの気温に関する情報として共通空間用温度センサ51の検知温度に基づいて、第1換気ファン46及び第2換気ファン47の回転数を変更して送風量を変更する。従って、変形例1Bの空気調和システム10では、駆動する換気ファンの台数を変更することにより送風量を変更することもできる。
【0047】
(4−3)変形例1C
上記第1実施形態及び変形例1Bの空気調和システム10では、送風方向が吸気口44から排気口43に向かうものに固定されている場合について説明したが、送風方向を切り換えられるように構成されてもよい。例えば、変形例1Bで第1換気ファン46と第2換気ファン47を吸気と排気を切り換えられる換気ファンとする変形例1Cの空気調和システム10を構成することもできる。変形例1Cの空気調和システム10では、第1換気ファン46を吸気ファンに切り換え、第2換気ファン47を排気ファンに切り換えることで、送風方向を排気口43から吸気口44に向かうように切り換えることができる。
【0048】
(4−4)変形例1D
上記第1実施形態では、共通空間用温度センサ51を一つ設けた場合について説明したが、共通空間である天井裏ATに複数の温度センサを設置してもよい。その場合には、例えば、コントローラ30は、複数の温度センサの平均値の変化で判断してもよい。また、例えば、複数の温度センサの検知温度に重み付けをして加重平均の変化で判断してもよい。また、例えば、コントローラ30は、複数の温度センサのうち検知温度が増加している個数とそのままの個数と減少している個数を比較して最も個数が多いものに基づいて判断してもよい。
【0049】
(4−5)変形例1E
上記第1実施形態では、第1換気ファン46の回転数を制御することによって送風量を変化させる場合について説明したが、送風量の変更は回転数の変更に限られるものではない。例えば、換気ファンを複数設けて、コントローラ30で駆動する換気ファンの数量を変更するように制御することにより送風量を変更してもよい。また、換気ファンとダンパとを組み合わせて、換気ファンの回転数を変えずに、コントローラ30でダンパを制御することによって流量を変更するように構成してもよい。
【0050】
<第2実施形態>
(5)全体構成
本発明の第2実施形態に係る空気調和システムは、例えば、図1乃至図4に示されている第1実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。第2実施形態に係る空気調和システム10は、第1実施形態の空気調和システム10のメモリ32に記憶されているプログラムを変更することにより構成することができる。そこで、第2実施形態の空気調和システム10については、空気調和システム10の構成の説明を省略し、主に空気調和システム10の動作の説明を行う。
【0051】
既に説明したように、空気調和機21〜25の運転台数が多いほど天井裏ATの気温の変化は顕著になる。例えば、空気調和機21〜25が1台も運転されていなければ、空気調和機21〜25による天井裏ATの気温の変化がなくなる。このように空気調和機21〜25が全て停止している場合には、第1換気ファン46を停止して送風量を0にする。逆に、空気調和機21〜25が全て運転されている場合には、天井裏ATの気温の変化が最も顕著になる。そこで、空気調和機21〜25の運転台数が多くなるに従って、第1換気ファン46の送風量を順次増やすように構成している。そのために、まず、コントローラ30は、現在運転されている空気調和機21〜25の運転台数を検知する。コントローラ30は、予め空気調和機21〜25の運転台数に対応する第1換気ファン46の回転数をメモリ32に記憶している。運転台数に応じて、この記憶している回転数で回転するようにコントローラ30が第1換気ファン46を制御する。つまり、コントローラ30は、空気調和機21〜25の運転台数を共通空間である天井裏ATの気温に関する情報として用いて、運転台数に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更している。この場合、第1換気ファン46は、停止以外に5段階のファンタップ(第1ファンタップ〜第5ファンタップ)を持っていて、第1ファンタップが最も回転数が低く、第5ファンタップが最も回転数が高くなるように段階的に回転数(送風量)を切り換えられるように構成されてもよい。
【0052】
(6)変形例
(6−1)変形例2A
上記第2実施形態の空気調和システム10は、空気調和機21〜25の運転台数のみに基づいて第1換気ファン46の送風量を変更する場合について説明した。しかし、共通空間である天井裏ATの気温に関する情報として、空気調和機の運転台数に空気調和機の運転台数以外の情報を組み合わせてもよい。変形例2Aの空気調和システムは、例えば、図1乃至図4に示されている第1実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。例えば、変形例2Aの空気調和システム10として、空気調和機21〜25の運転台数と共通空間用温度センサ51の検知温度とを天井裏ATの気温に関する情報として用い、コントローラ30が第1換気ファン46の送風量を変更するように構成することもできる。このような変形例2Aの空気調和システム10は、例えば、第1実施形態の空気調和システム10のメモリ32に記憶されているプログラムを変更することにより構成することができる。
【0053】
変形例2Aの空気調和システム10の動作の一例について、図9を用いて説明する。図9には、冷房運転のとこの動作が示されている。まず、コントローラ30は、空気調和機21〜25の運転台数を検知する(ステップS21)。そして、空気調和機21〜25の運転台数に基づいて第1換気ファン46の回転数を設定し、コントローラ30は、第1換気ファン46の送風量を変更する(ステップS22)。コントローラ30は、第1インターバル経過後に、共通空間用温度センサ51の検知温度を取得する(ステップS23)。共通空間用温度センサ51の検知温度に応じて第1換気ファン46の回転数の調整の必要性について判断する(ステップS24)。第1インターバル終了までに天井裏ATの気温に変化が無ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数をそのまま維持する。そのため、共通空間用温度センサ51の検知温度に変化が無ければ、次のステップS27に進む。もし、第1インターバル終了までに天井裏ATの気温上昇が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の増加分に合わせて上げて(ステップS25)、次のステップS27に進む。逆に、もし、第1インターバル終了までに天井裏ATの気温降下が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の下降分に合わせて下げて(ステップS26)、次のステップS27に進む。ステップS27で、コントローラ30は、空気調和システム10の運転を停止するか否かを判断して、運転を続行する場合にはステップS21に戻り、運転を停止する場合には第1換気ファン46を調整するための動作であるステップS21〜S27を終了する。なお、ステップS21に戻る際には、コントローラ30は第1インターバルの始めに戻る。
【0054】
(6−2)変形例2B
上記第1実施形態及びその変形例1A〜1D並びに第2実施形態及びその変形例2Aにおいては、空気調和機21〜25が一体型である場合について説明したが、空気調和機21〜25は、セパレート型であってもよい。図10及び図11には、セパレート型の空気調和機21が示されている。セパレート型の空気調和機21が一体型の空気調和機21と大きく異なるのは、一体型の空気調和機21が1つのケーシング65の内部空間を仕切板65aによって分割していたのに対してセパレート型の空気調和機21が2つの分離した第1ケーシング110と第2ケーシング120を備えている点である。部屋RMに露出している第1ケーシング110には、部屋RMから空気を取り入れるための部屋側吸気口111及び部屋RM1に空気を吹き出すための部屋側吹出口112が形成されている。また、天井裏ATに露出している第2ケーシング120には、天井裏ATから空気を取り入れるための共通空間側吸気口121及び天井裏ATに空気を吹き出すための共通空間側吹出口122が形成されている。図11に示されているように、空気調和機21の熱源側ファン63及び利用側ファン64には遠心ファンを用いることができる。また、利用側熱交換器61及び熱源側熱交換器62は、熱源側ファン63及び利用側ファン64を囲むように四角形の環状に形成することができる。例えば、利用側熱交換器61は、図10に示されている4つの部屋側吹出口112に対応するように配置される4つの辺を有する四角形の環状に形成されている。
【0055】
図11には、1台の空気調和機21において、一つの熱源側熱交換器62と一つの利用側熱交換器61との間で熱の伝達が行われる構成について説明したが、1台の空気調和機21において、第1ケーシング110とその中に収納されている機器を複数設けて、一つの熱源側熱交換器62と複数の利用側熱交換器61との間で熱の伝達が行われるように構成してもよい。このように利用側熱交換器61を複数有する空気調和機、例えば、一つの熱源側熱交換器62と二つの利用側熱交換器61との間で熱の伝達が行われる空気調和機の運転と、一つの熱源側熱交換器62に一つの利用側熱交換器61との間で熱伝達が行われる空気調和機の運転では、重み付けを変えてもよい。例えば、一つの熱源側熱交換器62に一つの利用側熱交換器61との間で熱伝達が行われる空気調和機の運転台数が1台増えた場合に第1換気ファン46の送風量を1タップだけ上げるのに対し、一つの熱源側熱交換器62と二つの利用側熱交換器61との間で熱の伝達が行われる空気調和機の運転台数が1台増えた場合には送風量を2タップ上げるようにコントローラ30が制御してもよい。
【0056】
同様に、空気調和機21〜25の空調能力によって重み付けをしてもよい。例えば、空気調和機21の空調能力が空気調和機22の空調能力よりも大きいとする。このような場合に、空調能力の小さな空気調和機22が運転された場合に増やす送風量に対して、空調能力の大きな空気調和機23が運転された場合に増やす送風量の方が大きくなるように構成してもよい。空調能力は、冷房運転については冷房能力であり、暖房運転については暖房能力であり、一定時間内にどの程度の熱エネルギーを空調対象空間から奪う(又は与える)ことができるかの性能である。空調能力が大きいほど多くの熱エネルギーを空調対象空間から奪う(又は与える)ことができる。
【0057】
<第3実施形態>
(7)全体構成
本発明の第3実施形態に係る空気調和システムは、例えば、図1乃至図4に示されている第1実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。第3実施形態に係る空気調和システム10は、第1実施形態の空気調和システム10のメモリ32に記憶されているプログラムを変更することにより構成することができる。そこで、第3実施形態の空気調和システム10については、空気調和システム10の構成の説明を省略し、主に空気調和システム10の動作の説明を行う。
【0058】
第3実施形態の空気調和システム10の空気調和機21〜25は、設定温度を個別にコントローラ30を使って入力ができるように構成されている。しかしここでは、設定温度が、空気調和機21〜25で同じに設定されており、例えば、西壁91には、夕刻に太陽光が直接当たるため、西壁91に近い側において、夕刻に部屋RMの温度が高くなる場合について考える。例えば、冷房運転において、空気調和機21,23が運転されており、空気調和機21,23の設定温度が27℃であり、空気調和機21が部屋RMから吸い込む空気の温度が29℃で、空気調和機23が部屋RMから吸い込む空気の温度が28℃であり、天井裏ATの気温が32℃である場合について考える。コントローラ30は、空気調和機21及び空気調和機23の温度センサ72によって、空気調和機21,23が吸い込む空気の温度を検知することができる。また、天井裏ATの気温は、空気調和機21,23が吸い込む空気の温度であるから、空気調和機21及び空気調和機23の温度センサ71によって検知することができる。さらに、コントローラ30は、空気調和機21及び空気調和機23が運転されていて、それらの設定温度が27℃であることを、制御部21a,23aから得ることができる。コントローラ30は、これらの情報を使って、空気調和機21及び空気調和機23の処理負荷量を算出し、処理負荷量に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更する。
【0059】
第2実施形態の空気調和システム10では、運転台数に基づいて第1換気ファン46の送風用を変更しているため、例えば上述の状態で空気調和機21が運転を停止しても空気調和機23が運転を停止しても第1換気ファン46の送風量の変化分は同じになる。しかし、第3実施形態の空気調和システム10では、上述の場合には空気調和機21の処理負荷量が大きいため、空気調和機21が運転を停止したときの方が、空気調和機23が運転を停止したときよりも送風量の変化分を大きくすることができる。その結果、第2実施形態の空気調和システム10に比べて第3実施形態の空気調和システム10は、きめ細かな送風量の調整が可能になる。上述の例では、空気調和機21,23の吸い込む空気の温度が異なる場合について説明したが、吸い込む空気の温度が同じでも空気調和機21〜25の設定温度が異なれば処理負荷量が異なるので、そのように処理負荷量が異なる場合でも、第1換気ファン46についてきめ細かな送風量の調整が可能になる。なお、ここまでは冷房運転について説明したが、暖房運転についても、コントローラ30は、空気調和機21〜空気調和機25の処理負荷量を算出し、処理負荷量に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更することができ、暖房運転でも同様の効果を奏する。
【0060】
(8)変形例
(8−1)変形例3A
上記第2実施形態の空気調和システム10は、空気調和機21〜25の処理負荷量のみに基づいて第1換気ファン46の送風量を変更する場合について説明した。しかし、共通空間である天井裏ATの気温に関する情報として、空気調和機の処理負荷量に空気調和機の処理負荷量以外の情報を組み合わせてもよい。変形例3Aの空気調和システムは、例えば、図1乃至図4に示されている第1実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。例えば、変形例3Aの空気調和システム10として、空気調和機21〜25の処理負荷量と共通空間用温度センサ51の検知温度とを天井裏ATの気温に関する情報として用い、コントローラ30が第1換気ファン46の送風量を変更するように構成することもできる。このような変形例3Aの空気調和システム10は、例えば、第1実施形態の空気調和システム10のメモリ32に記憶されているプログラムを変更することにより構成することができる。
【0061】
変形例3Aの空気調和システム10の動作の一例について図12を用いて説明する。図12には、冷房運転時の動作が示されている。まず、コントローラ30は、空気調和機21〜25の制御部21a〜25aから処理負荷量の計算に必要なデータを入力し、空気調和機21〜25の処理負荷量を取得する(ステップS31)。そして、空気調和機21〜25の処理負荷量に基づいて第1換気ファン46の回転数を設定し、コントローラ30は、第1換気ファン46の送風量を変更する(ステップS32)。コントローラ30は、第3インターバル経過後に、共通空間用温度センサ51の検知温度を取得する(ステップS33)。共通空間用温度センサ51の検知温度に応じて第1換気ファン46の回転数の調整について判断する(ステップS34)。第3インターバル終了までに天井裏ATの気温に変化が無ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数をそのまま維持する。そのため、共通空間用温度センサ51の検知温度に変化が無ければ、次のステップS37に進む。もし、第3インターバル終了までに天井裏ATの気温上昇が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の増加分に合わせて上げて(ステップS35)、次のステップS37に進む。逆に、もし、第3インターバル終了までに天井裏ATの気温降下が生じれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を気温の下降分に合わせて下げて(ステップS36)、次のステップS37に進む。ステップS27で、コントローラ30は、空気調和システム10の運転を停止するか否かを判断して、運転を続行する場合にはステップS31に戻り、運転を停止する場合には第1換気ファン46を調整するための動作であるステップS31〜S37を終了する。なお、ステップS31に戻る際には、コントローラ30は第3インターバルの始めに戻る。
【0062】
(8−2)変形例3B
上記第3実施形態及び変形例3Aでは、全ての空気調和機21〜25が同じように冷房運転する場合又は全てが暖房運転をする場合について説明した。しかし、例えば一部の空気調和機21,23,24が冷房運転をし、他の空気調和機22,25が暖房運転をするような使用方法も可能である。そのような場合に、例えば、運転台数を計算するときに、異なる運転をしている空気調和機で符合を変えて加算するように構成してもよい。例えば、全体の運転台数は、冷房運転が3台で暖房運転が2台であるから、1台の冷房運転と等価とみなしてもよい。
【0063】
<第4実施形態>
(9)全体構成
本発明の第4実施形態に係る空気調和システムは、図13に示されているように、例えば、図1乃至図4に示されている第1実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。上記第1実施形態及び変形例1A〜1D、第2実施形態及び変形例2A〜2B並びに第3実施形態及び変形例3Aの空気調和システム10では、コントローラ30は、天井裏ATの気温を制御するために天井裏ATの気温についての目標温度を設定していなかった。しかし、第4実施形態に係る空気調和システム10は、目標温度を設定し、天井裏ATの実際の温度と天井裏ATの目標温度を比較して共通空間の実際の温度を共通空間の目標温度に一致させるように第1換気ファン46の送風量を変更するフィードバック制御を行うように構成されている。そのために、この第4実施形態の空気調和システム10は、屋外99の気温を測定する屋外温度センサ52をさらに備えている。なお、図13に示されているように、空調対象空間である部屋は、第1の部屋RM1と第2部屋RM2に分かれていてもよい。
【0064】
上述の第3実施形態の空気調和システム10についての説明から分かるように、処理負荷量が大きければ、天井裏ATの気温が変化しやすくなる。冷房運転においては処理負荷量が大きいほど天井裏ATの気温は上昇しやすくなり、暖房運転において処理負荷量が大きいほど天井裏ATの気温は下降しやすくなる。しかし、処理負荷量が同じであっても、屋外99の気温と天井裏ATの温度差が異なると、第1換気ファン46の送風量を同じにしても温度変化の抑制に差が生じる。例えば、冷房運転において天井裏ATの気温が34℃になっている場合に、屋外99の気温が30℃のときと屋外99の気温が32℃のときでは前者の方が温度変化の抑制効果が大きくなる。
【0065】
また、天井裏ATの容積によっても温度変化の抑制に差が生じる。第1換気ファン46の送風量が同じでも、天井裏ATの容積が小さいと天井裏ATの空気の入れ換えを短時間で行えるが、容積が大きくなるに従って天井裏ATの空気の入れ換えに時間が掛かるようになるからである。
【0066】
そこで、例えば、特定の天井裏ATについて屋外99の気温と処理負荷量を変化させて実験又はシミュレーションを行い、屋外99の気温と処理負荷量に対する適切な天井裏ATの気温の目標温度を予め設定しておく。目標温度と屋外99の気温及び処理負荷量との関係は、コントローラ30のメモリ32に記憶されている。つまり、第4実施形態の空気調和システム10は、共通空間の目標温度に関する情報として、屋外99の気温と処理負荷量を使ってメモリ32から読み出した目標温度を用いる。また、第4実施形態の空気調和システム10は、共通空間の実際の温度に関する情報として、共通空間用温度センサ51の検知温度を用いる。コントローラ30は、天井裏ATの実際の温度に関する情報として共通空間用温度センサ51の検知温度と天井裏ATの目標温度とを比較して天井裏ATの実際の温度である共通空間用温度センサ51の検知温度を目標温度に一致させるように第1換気ファン46の送風量を変更する。なお、ここでは、共通空間用温度センサ51が1つの場合について説明したが、複数の共通空間用温度センサを用いて、共通空間の気温にそれらの平均値又は重み付けをした加重平均値を用いてもよい。
【0067】
第4実施形態の空気調和システム10の動作の一例について図14を用いて説明する。図14には、冷房運転時の動作が示されている。まず、コントローラ30は、空気調和機21〜25の制御部21a〜25aから処理負荷量の計算に必要なデータを入力し、また屋外温度センサ52から検知温度を入力する(ステップS41)。そして、空気調和機21〜25の処理負荷量を計算して目標温度をコントローラ30が取得する(ステップS42)。コントローラ30は、第4インターバル経過後に、共通空間用温度センサ51の検知温度を取得する(ステップS43)。共通空間用温度センサ51の検知温度に応じて第1換気ファン46の回転数の調整について判断する(ステップS44)。第4インターバル時点で共通空間用温度センサ51の検知温度が天井裏ATの気温が目標温度と同じであれば、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数をそのまま維持する。そのため、検知温度が目標温度と一致していれば、次のステップS37に進む。もし、第4インターバル終了時点で検知温度が目標温度より高ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を温度差に合わせて上げて(ステップS45)、次のステップS47に進む。逆に、もし、第4インターバル終了時点で検知温度が目標温度より低ければ、コントローラ30は、第1換気ファン46の回転数を温度差に合わせて下げて(ステップS46)、次のステップS47に進む。ステップS47で、コントローラ30は、空気調和システム10の運転を停止するか否かを判断して、運転を続行する場合にはステップS41に戻り、運転を停止する場合には第1換気ファン46を調整するための動作であるステップS41〜S47を終了する。なお、ステップS41に戻る際には、コントローラ30は第4インターバルの始めに戻る。このように、コントローラ30は、第1換気ファン46を調整するための動作であるステップS41〜S47の動作を行うことにより、共通空間の実際の温度を共通空間の目標温度に一致させるように第1換気ファン46の送風量を変更するフィードバック制御を行う。
【0068】
(10)変形例
(10−1)変形例4A
上記第4実施形態の空気調和システム10は、目標温度に関する情報として屋外99の気温と空気調和機21〜25の処理負荷量を用いているが、目標温度に関する情報はこれだけに限られるものではない。例えば、空気調和機21〜25の処理負荷量に代えて空気調和機21〜25の運転台数を用いてもよい。変形例4Aに係る空気調和システム10は、例えば、図13に示されている第4実施形態に係る空気調和システム10と同じ構成を有している。この場合も、例えば、特定の天井裏ATについて屋外99の気温と運転台数を変化させて実験又はシミュレーションを行い、屋外99の気温と運転台数に対する適切な天井裏ATの気温の目標温度を予め設定しておく。この場合、図14のステップS41で、コントローラ30は、共通空間用温度センサ51の検知温度と空気調和機21〜25の運転台数を入力する。ステップS42では、コントローラ30は、これら検知温度と運転台数から天井裏ATの目標温度を取得する。そして、変形例4Aの空気調和システム10は、ステップS43〜S47の動作を同じように行う。
【0069】
(10−2)変形例4B
上記第4実施形態の空気調和システム10では、フィードバック制御を行う場合について説明したが、さらに、複数の空気調和機21〜25の天井裏ATの将来の気温に関する情報をコントローラ30が取得できるように構成して、天井裏ATの将来の気温に関する情報に基づいて第1換気ファン46の送風量の変更を補正するフィードフォワード制御を行うように空気調和システム10を構成してもよい。変形例4Bの空気調和システム10も、例えば、第4実施形態の空気調和システム10のメモリ32に記憶されているプログラムを変更することによって構成することができる。
【0070】
天井裏ATの将来の気温に関する情報とは、例えば、冬季のビルのテナントの営業日には空気調和システム10が午前7時から自動的に暖房運転を行うというような空気調和システム10の運転スケジュールに関する情報である。通常は空気調和システム10の運転開始と同時に第1換気ファン46が駆動されるが、午前7時の運転開始時には屋外99の気温よりも天井裏ATの気温が高いことが分かっていれば、午前7時の空気調和システム10の運転開始から予め定められた待機時間が経過するまでは第1換気ファン46を停止させておくような第1換気ファン46の送風量の変更を補正する制御を行ってもよい。
【0071】
(10−3)変形例4C
上記第4実施形態及び変形例4A〜4Bでは、全ての空気調和機21〜25が同じように冷房運転する場合又は全てが暖房運転をする場合について説明した。しかし、例えば一部の空気調和機21,23,24が冷房運転をし、他の空気調和機22,25が暖房運転をするような使用方法も可能である。そのような場合に、例えば、運転台数や処理負荷量を計算するときに、異なる運転をしている空気調和機で符合を変えて加算するように構成してもよい。例えば、空気調和機21〜25のそれぞれの処理負荷量をL1〜L5と表すとすると、全体の処理負荷量ΣLは、|L1−L2+L3+L4−L5|で計算できる。また、全体の運転台数は、冷房運転が3台で暖房運転が2台であるから、1台の冷房運転と等価とみなしてもよい。
【0072】
<第5実施形態>
(11)全体構成
上記実施形態及び変形例では、集中的にコントローラ30のよって換気ファンの回転数を制御する場合について説明したが、換気ファンにも独立した制御部を配置し、自立分散制御を行ってもよい。例えば、第1実施形態の空気調和システム10の共通空間用温度センサ51の検知温度が第1換気ファン46に入力され、第1換気ファン46がコントローラ30と同様のMPU31とメモリ32を有するコントローラ30を備えるように変更する(図15参照)。図15に示されている第5実施形態の空気調和システム10でも、換気ファンが屋外99の気温と天井裏ATの気温を比較して、温度差に応じて換気ファンの回転数を変えて送風量を変更することができる。例えば、コントローラ30を備える図15の第1換気ファン46が図6のステップS1〜S5を行えばよい。ステップS5の判断は、例えば、第1換気ファン46への駆動電力の遮断を検知して判断すれるように構成すればよい。
【0073】
(12)特徴
(12−1)
上述の空気調和システム10は、複数の空気調和機21〜25の複数の熱源側熱交換器62が共通空間である天井裏ATに配置されている。制御装置であるコントローラ30が天井裏ATの気温に関する情報に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更することにより、吸気口44から取り入れられる空気の流量及び排気口43から排気される空気の流量が変化することから、天井裏ATの気温を調整することができる。この天井裏ATの気温に関する情報は、天井裏ATの気温の実測値(共通空間用温度センサ51の検知温度又は複数の共通空間用温度センサの検知温度の平均値)でもよく(第1実施形態、変形例1A〜変形例1C、変形例1E及び第5実施形態参照)、天井裏ATの気温についての複数の温度センサの検知温度(共通空間用温度センサ51及び屋外温度センサ52の検知温度)でもよく(変形例1D参照)、複数の空気調和機21〜25の運転台数でもよく(第2実施形態参照)、天井裏ATの気温の実測値(共通空間用温度センサ51の検知温度)と複数の空気調和機21〜25の運転台数でもよく(変形例2A参照)、複数の空気調和機21〜25の運転台数に重み付けを行ったもの又複数の空気調和機21〜25の運転台数に重み付けを行ったものと天井裏ATの気温の実測値でもよく(変形例2B参照)、複数の空気調和機21〜25の処理負荷量でもよく(第3実施形態参照)、天井裏の気温の実測値と複数の空気調和機21〜25の処理負荷量でもよく(変形例3A参照)、天井裏ATの気温の実測値(共通空間用温度センサ51の検知温度)と天井裏ATの目標温度を得るためのデータでもよい(第4実施形態及び変形例4A〜4C参照)。また、共通空間は、天井裏ATに限られるものではなく、例えばビルの上下の階の天井裏をつなぐ吹き抜け又は部屋と部屋の間の壁を2重にしてその中に設けられた2つの壁の隙間であってもよい。
【0074】
例えば、複数の空気調和機21〜25の熱交換量の総量が変化したり、屋外99の吸気口の付近の気温が変化したりして天井裏ATの気温が変化した場合に、第1換気ファン46の消費電力が上がっても複数の空気調和機21〜25の効率化が図れて全体として効率化が図れるときには第1換気ファン46の送風量を上げることができる。また、第1換気ファン46の送風量を下げても複数の空気調和機21〜25の効率化が図れて全体として効率化が図れるときには第1換気ファン46の送風量を下げて第1換気ファン46の消費電力を下げられる。このように、空気調和システム10では、共通空間である天井裏ATの空気を複数の空気調和機21〜25が熱交換のために効率良く共用して消費エネルギーを抑制することができる。
【0075】
(12−2)
第1実施形態、変形例1A〜変形例1E、変形例2A、変形例3A、第4実施形態、変形例4A及び第5実施形態で説明したように、一つの温度センサ(共通空間用温度センサ51)又は複数の温度センサ(共通空間用温度センサ51と屋外温度センサ52)とによって実際の天井裏ATの気温が検知できる。実際の天井裏ATの空気の温度が複数の空気調和機21〜25で熱交換のために効率良く共用することができるものになっているか否かを判断しながら第1換気ファン又は第1換気ファン46と第2換気ファン47の送風量を変更することができる。その結果、空気調和システム10は、天井裏ATの実情にあわせた精度の良い制御を行うことができる。
【0076】
(12−3)
第2実施形態及び変形例2Aで説明したように、制御部装置であるコントローラ30が複数の空気調和機21〜25の運転台数に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更することから、運転台数が多いために天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し易いときは第1換気ファン46の送風量を上げて天井裏ATの気温の変化を抑制することができる。また、空気調和機21〜25の運転台数が少なくて天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し難いときは第1換気ファン46の送風量を下げて第1換気ファン46の消費電力が上がるのを抑制することができる。このように、コントローラ30の負担の増加を抑制しながら空気調和システム10の全体としてのエネルギー効率を向上させることができる。
【0077】
(12−4)
第3実施形態及び変形例3Aで説明したように、コントローラ30が複数の空気調和機21〜25の処理負荷量に基づいて第1換気ファン46の送風量を変更することから、処理負荷量が多いために天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し易いときは第1換気ファン46の送風量を上げて天井裏ATの気温の変化を抑制することができる。また、空気調和機21〜25の処理負荷量が少なくて天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率が悪くなる方向に変化し難いときは第1換気ファン46の送風量を下げて第1換気ファン46の消費電力が上がるのを抑制することができる。その結果、空気調和システム10の全体としてのエネルギー効率を向上させ易くなる。
【0078】
(12−5)
第4実施形態及び変形例4A〜4Cで説明したように、コントローラ30が天井裏ATの実際の温度を天井裏ATの目標温度に一致させるように第1換気ファン46の送風量を変更するフィードバック制御を行うことから、予期しえない外乱が天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率の悪くなる方向に変化しても、空気調和システム10は、修正動作を効率良く行うことができる。このように、共通空間の空気を複数の空気調和機21〜25が熱交換のために安定して効率良く共用する空気調和システム10を構築することができる。
【0079】
(12−6)
変形例4Bで説明したように、コントローラ30が天井裏ATの将来の気温に関する情報に基づいて第1換気ファン46の送風量の変更を補正するフィードフォワード制御を行う。空気調和システム10は、このような構成により、予期される外乱によって天井裏ATの気温が空気調和機21〜25の熱交換の効率の悪くなる方向に変化するのを抑制でき、外乱による天井裏ATの気温と目標温度との乖離を小さくできる。
【符号の説明】
【0080】
10 空気調和システム
21〜25 空気調和機
30 コントローラ(制御装置の例)
46 第1換気ファン
47 第2換気ファン
51 共通空間用温度センサ
61 利用側熱交換器
62 熱源側熱交換器
63 熱源側ファン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開昭48−2756号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15