(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0016】
本発明の防弾楯は、楯本体部と自立用脚材とからなり、楯本体部は空洞率が5%以上20%以下である繊維強化樹脂からなるものである。また、自立用脚材は、前記楯本体部と接合される接合部と、ヒンジ部と、楯支持部と、楯支持部の接地側に備えられた接地板とを具備し、前記楯支持部と、前記接地板とが一体化されてなるものである。
図1は本発明に係る防弾楯の好ましい実施態様の一例を示す外観図、
図2は本発明に係る自立用脚材の好ましい実施態様の一例を示す外観図であり、以下これらを例にとり説明するが、これらに限定されるものではない。
【0017】
<繊維強化樹脂>
本発明で用いる繊維強化樹脂は、空洞率が5%以上20%以下である。自動車部材や航空機部材に用いられる繊維強化樹脂においては、その強度等を向上させるため、極力空洞が生じないよう、強化繊維基材の内部までマトリックス樹脂が浸透されるように成形される。
【0018】
しかしながら、本発明に係る防弾楯の用途において、このように成形した場合、強化繊維基材を構成する強化繊維の自由度が小さくなるため、繊維強化樹脂としたときの拳銃弾等の飛来物に対する耐衝撃吸収性(耐弾性能)が低下する。
【0019】
そのため、織物の片面のみに樹脂を付着させることで、織物を構成する繊維の自由度を確保することができ、繊維強化樹脂としたときの飛来物に対する耐衝撃吸収性(耐弾性能)を向上することができる。
【0020】
そして、繊維強化樹脂とした時の空洞率を上記範囲とすることで、飛来物の被弾時に耐弾性能に寄与する繊維の割合が増え、繊維の自由度を確保しながらも繊維強化樹脂の剛性を損ねることがないため、耐衝撃吸収性能(耐弾性能)に優れた繊維強化樹脂とすることが可能となる。
【0021】
本発明において繊維強化樹脂に用いられる繊維としては、引張強度が17cN/dtex以上のものが好ましく、17〜45cN/dtexのものがより好ましく、19〜40cN/dtexのものがさらに好ましい。また、繊維の引張弾性率としては、300〜2000cN/dtexが好ましく、350〜1800cN/dtexがさらに好ましい。
【0022】
このような特性を備えた繊維としては、特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリエーテルアミド、全芳香族ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ノボロイド、ポリピリドビスイミダゾール、ポリアリレート、ポリケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン等からなる繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維等が好ましく使用でき、耐衝撃性、生産性、価格等からアラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリピリドビスイミダゾール繊維、ガラス繊維がさらに好ましく使用できる。
【0023】
また、これら繊維の繊度としては、100〜7000dtexであることが好ましく、200〜3500dtexの範囲がさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
【0024】
さらに繊維を用いて布帛を作製する。該布帛としては、織物、編物、不織布、フェルト、一方向性シート(UD〔繊維が一方向に引き揃えられたもの〕)、及び複数のUDを引き揃え方向の角度を変えて積層した一方向シート積層体、例えば0°/90°に積層した一方向性シート(UD:0°/90°積層)積層体(あるUDの引き揃え方向を0°としたとき、次層のUDの引き揃え方向を90°違えて積層することを意味する。以下「一方向性シート(UD:0°/90°積層)積層体」と称する場合もある)、3次元構造物等が好ましく使用でき、寸法安定性、強度から織物、UDがさらに好ましく使用できる。
【0025】
上記織物としては、平織、綾織、朱子織、畝織、斜子織、杉綾、二重織等を用いることができる。
【0026】
かかる繊維あるいは布帛は、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、耐電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤、油剤等を含有、または付着せしめることができる。
【0027】
本発明で用いる繊維強化樹脂を構成する樹脂(マトリックス樹脂)としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、珪素樹脂、ポリイミド樹脂、ビニルエステル樹脂等やその変性樹脂等、熱可塑性樹脂であれば塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル、ポリアミド等、さらには熱可塑性ポリウレタン、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ネオプレン、ポリエステル等の合成ゴム又はエラストマー等が好ましく使用できるが、特に限定されるものではない。中でも、フェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂を主成分とする樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂が耐衝撃性、寸法安定性、強度、価格等から好ましく使用できる。さらに好ましくはフェノール樹脂とポリビニルブチラール樹脂を主成分とする樹脂である。
【0028】
かかる熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂には、工業的にその目的、用途、製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のため通常使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、変性剤、可塑剤、充填剤、離型剤、着色剤、希釈剤等を含有せしめることができる。
【0029】
上記繊維強化樹脂を製造する方法については特に制限はないが、例えば布帛の片面のみに熱硬化性樹脂を付着してなるプリプレグ材料を所定枚数積層し、加熱加圧成形して得る方法や、布帛の片面のみに熱可塑性樹脂をラミネートさせた材料を所定枚数積層し、加熱加圧成形後に常温程度まで冷却してから圧力を開放する成形方法を好ましく用いることができる。
【0030】
樹脂を付着させる際は、溶剤あるいは希釈剤を用い、樹脂の塗液、いわゆるワニスの形態で用いることや、あらかじめフィルムを作製し、ラミネートする方法が挙げられるが、ワニスの形態で塗布し得る場合にはワニスの形態が簡便で好ましい。熱可塑性樹脂の場合は、塗布可能な粘度に溶融させた樹脂を塗布する方法を採用することも可能であるが、当該熱可塑性樹脂を溶解し得る溶媒を用いて溶液とし、塗布する方法、分散液を用いて塗布したのち、加熱して溶融含浸やラミネートさせる方法等も用いることができる。
【0031】
プリプレグ材料等樹脂を付着させた材料を得る方法は、布帛の片面に均一に付着させることができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコート、キスコート、コンマダイレクトコート等の塗布(コーティング)方法、ラミネート装置によるラミネート法等が一般的に行われる。ただし、塗布する樹脂粘度によっては、加工時に織物内部に浸透する可能性があるため、樹脂粘度の影響を受け難く、一定量の加工液が正確に塗布できる利点のあるコンマリバースコートが適している。
【0032】
このとき、布帛の片面のみに熱硬化性樹脂を付着させる際の樹脂付着率を6〜15質量%とすることが好ましい。これにより繊維強化樹脂としたときの空洞率を5%以上20%以下に制御することが容易になる。
【0033】
樹脂付着率を6質量%以上とすることにより、繊維強化樹脂としたときに飛来物が衝突した際、優れた剛性が得られ形態保持性に優れる。また、15質量%以下とすることにより布帛を構成する繊維の自由度が十分に得られ優れた耐衝撃吸収性が得られる。この樹脂付着率は織物質量に対する量であり、耐衝撃吸収性能(耐弾性能)の点から好ましくは8〜11質量%である。
【0034】
布帛内部への樹脂浸透を抑制する点から、1回目の塗布加工で布帛表面に薄く塗って薄膜を形成させ、2回目以降の塗布加工で目標とする樹脂比率に仕上げることが、効果的に本発明の繊維強化樹脂を得るための樹脂加工のポイントである。
【0035】
本発明で用いる繊維強化樹脂は、前記の通り、加熱加圧成形により好ましく得ることができる。この工程により、熱硬化性樹脂は硬化物となり、繊維強化樹脂が得られる。一方で、樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合は、前述の加熱加圧成形後に常温程度まで冷却してから圧力を開放することで繊維強化樹脂が得られる。前記の通り、常温冷却操作が不十分のまま圧力を開放すると、適正な特性が得られず、真夏の高温環境下で使用した場合、変形等のトラブルが生じるため注意が必要である。
【0036】
製造方法としては、例えば、前記プリプレグ材料を、樹脂付着面が一定方向になるように、すなわち樹脂付着面が樹脂非付着面に接するようにして複数枚数積層し、これを加熱加圧成形する方法がある。この場合、繊維強化樹脂の一方の面は樹脂が付着した状態となり、他方の面は布帛が露出した状態となる。また、前記プリプレグ材料を、樹脂付着面が一定方向になるようにして所定枚数重ね合せ、さらに、樹脂付着面の反対側に、両面に樹脂を付着させたプリプレグ1枚を配置して、これを加熱加圧成形してもよい。この場合、繊維強化樹脂の両面が、樹脂が付着した状態となる。
【0037】
プリプレグ材料の積層枚数は、用途や布帛の目付に応じて適宜決定されるが、通常50枚程度であり、積層枚数が多いと成形工程が煩雑となるため、30枚以下が好ましい。
【0038】
本発明で用いる繊維強化樹脂の製造方法は、加熱プレス成形工程により所定の形状に成形することが一般的であり、例えば、下記の手順により実施することができる。
【0039】
まず、下型及び上型から構成され、所定形状の成形空間を有する金型を準備し、下型及び上型を所定温度に加熱しておく。
【0040】
そして、繊維強化樹脂を構成するプリプレグ等樹脂を付着させた材料を一定方向に所定枚数重ね合せて積層し、これを前記金型内に配置する。
【0041】
そして、所定圧力にて加熱し、圧縮成形した後、金型内から取り出すことにより、繊維強化樹脂を得る。
【0042】
このときの成形条件は、使用する樹脂等により適宜設定することができるが、フェノール樹脂の場合、成形温度は150〜170℃が好ましく、成形圧力は3〜20MPaが好ましく、成形時間は15〜30分が好ましい。
【0043】
また、オートクレーブ成形法により所定の形状に成形することも可能であり、例えば、下記の手順により実施することができる。
【0044】
一般的なオートクレーブ成形法は、所定の形状のツール板にプリプレグを積層して、バッギングフィルムで覆い、積層物内を脱気しながら加圧加熱硬化または加圧加熱冷却させる方法である。オートクレーブ成形法は、繊維配向が精密に制御でき、またボイドの発生が少ないため、力学特性に優れ、高品位な成形体が得られる。また、樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合では、積層体の内部温度を所定温度に下がるまで加圧状態を維持し、十分に冷却してから圧力を開放する。
【0045】
このときの成形条件は、使用する樹脂等により適宜設定することができるが、フェノール樹脂の場合、成形温度は150〜170℃が好ましく、成形圧力は0.3〜15MPaが好ましく、成形時間は15〜60分が好ましい。
【0046】
上記のようなオートクレーブ成形では、反応釜の容量に応じて、複数個の成形加工が可能であり、成形効率に優れる。
【0047】
<自立用脚材>
本発明に係る自立用脚材2aは、繊維強化樹脂からなる楯本体部1と接合される設合部7と、ヒンジ部8と楯支持部9と接地板10aから構成される。
【0048】
自立用脚材の構成材料は、特に限定されるものではないが、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、亜鉛、鉛、すずなどの純金属や、物性を改質するため、2種類以上の金属または炭素等の非金属を溶かし合わせた合金、例えば炭素鋼、高張力鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、ジューコール鋼、ハッドフィールド鋼、超強靱鋼、ステンレス鋼、鋳鉄、銅合金(真鍮、すず青銅、アルミニウム青銅、ベリリウム銅等)、アルミニウム合金(Al−Cu系合金、Cu合金、Al−Si系合金、Al−Mg系合金、ジュラルミン等)、マグネシウム合金(Mg−Al−Zn合金、Mg−Zn−Zr合金、Mg−希土類元素合金、Mg−Th系合金、Mg−Mn合金、Mg−Th−Mn合金、Mg−Zn−RE(希土類金属)合金等)、チタン合金、ニッケル合金(Ni−Mn合金、Ni−Cu合金、Ni−Mo合金、Ni−Cr合金等)、亜鉛合金、鉛合金、すず合金、また、アルミ、チタン、銅等の金属マトリックスを金属やセラミックスの粒子、ウィスカ、短繊維、連続長繊維で強化した金属基複合材料(例えば、ボロン繊維強化アルミ、炭化珪素/チタン)等が好ましく使用できる。軽量性、硬度、耐力、耐衝撃性等からチタン、ステンレス鋼、ジュラルミン、チタン合金がさらに好ましく使用できる。また、かかる金属には製造工程や加工工程での生産性から常識の範囲内で不純物を含んでいてもよい。さらに、繊維強化樹脂では、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が使用できる。軽量性、硬度、剛性等から炭素繊維がさらに好ましく使用できる。
【0049】
本発明に係る自立用脚材の接合部7は、楯本体部1と自立用脚材2aを接合するものである。例えば接合部7は、楯本体部1の固定部6に接合される。接合する際の接合方法については、ネジやボルトをナットで固定することが好ましく、固定部位に着弾しても貫通しないように挿入用穴付近をワッシャ―等で対策されている限りにおいて制限はないが、接合部7および/または楯本体部1にボルト挿入用孔12を設け、ボルト固定等の方法を採用することができる。該孔に挿入するボルトについては、楯本体部と接合部いずれにも孔を設け、独立したボルトとナットで固定してもよいし、楯本体部1および/または接合部7にねじ切りした突起部等を設け、これを対応する接合部7および/または楯本体部1に設けた孔部に挿入し、ネジやボルトで止めることも可能である。その場合防弾楯との固定用の穴形状を長孔にして防弾楯に固定することで、楯本体部と自立用脚材との接合部付近に実弾が着弾した場合でも、防弾楯の変形による弾丸エネルギーの吸収を阻害することなく、耐弾することができる。
【0050】
さらに、自立用脚材にヒンジ部8を設けることで、自立用脚材を使用しない場合は、折り畳んで収納することが可能であり、手で持って現場に急行する場合の機動性に優れ、倉庫保管や車両積載時にはコンパクトに収納することができる。
【0051】
本発明に係る自立用脚材の接地板10aは、自立させた際に使用者が立膝の状態で、足で踏んで固定することで、主把手や補助把手を手で保持しなくても自立時の安定性を高めることができ、両手での無線操作や、拳銃の弾切れ時の再装填作業が可能となる。
【0052】
接地板10aの形状は特に限定されるものではないが、楯本体部1の底辺と略平行方向に広がる面を有する形状が好ましい。具体的な形状の例としては折り畳み時の収納性、操作性を損なわなければ特に制限はない。
図4は本発明における自立用脚材の接地板の好ましい実施態様の例を示す外観上面図である。接地板10aを上からみた時の形状として、三角形、楕円形、台形、ホームベース型、半円型、長方形の他、円形等いずれも構わない。また、頂点を面取りした形状であってもよい。
図4中上方が楯本体部1側であっても楯本体部1に対し、奥行き側であってもよいが、防弾楯を自立させた時の安定性の点から
図4中y方向を楯本体部の底辺と略平行方向としx方向を楯本体部に対し奥行方向(楯本体部から使用者に向かう方向)とするとき、y方向の長さが長い方が、
図4中x方向奥側(つまりは
図4中下方が使用者側で、上方が楯本体部1側)であることが好ましい。接地板の上面からみた形状は、楯本体部1の底辺と略平行方向(つまりは楯本体部1を立てた際の幅方向)に面が拡がるような形状であることが好ましく、加工性や、折り畳み時の収納性、操作性から長方形が好ましく使用できる。接地板が長方形の場合、楯本体部1の底面と略平行方向が長方形の長辺に相当する形状であることが好ましい。接地板がそれ以外の形状である場合、楯本体部1の底面と略平行方向に拡がる面を含んでいればよい。
【0053】
また、接地板10aは、
図2a、
図3aに示されるように楯本体部1の底辺と略平行方向に拡がる面の中央付近で楯支持部9との連結箇所11dを設けると、楯支持部9に対して左右両側に面が拡がる、いわゆる両翼を有する形状となり、使用者が左右いずれの足でも踏むことができる点、接地板の剛性を十分に確保する点で好ましい。製品重量の軽量化が重視される場合や、専用設計(右利き用、左利き用)等使用者にあわせた設計とする場合等では、上記形状を半裁したような、片翼を有する形状、すなわち楯支持部9に対していずれか片側に楯本体部1の底面と略平行方向に拡がる面を有する形状であってもよい。
【0054】
ここで、略平行とは、厳密に平行である必要はなく、楯本体部1の底辺と概ね平行な方向に面を有していればよい。これにより、防弾楯を自立させたときに使用者が足で踏んで固定しやすい状態となる。
【0055】
接地板の幅方向のサイズは、20cm〜自立用脚材を接合させる防弾楯の製品幅以下にすることが好ましく、25cm〜50cmであることがより好ましい。また、奥行方向の寸法は5cm〜15cm以下にすることが好ましく、7cm〜12cmであることがより好ましい。
【0056】
ここで、幅方向、奥行方向の寸法はいずれも接地板の最大寸法であり、楯本体部1の底辺と略平行方向に広がる辺が幅寸法、楯本体部1に対し、奥行側の辺が奥行寸法を示している。
【0057】
接地板のサイズが大きいほど、防弾楯を自立させた時の安定性は良くなるが、製品重量の増加や、自立用脚材を収納した際の操作性、現場移動時の機動力の低下等につながるので、防弾楯のサイズに応じて設定することが好ましい。
【0058】
接地板は、通常上記のように足で踏んで固定することができる上面部を有するが、その端部に側面部を有することが好ましい。側面部は接地板の上面に対し上方向および/または下方向に延びるように設けられることが好ましい。
【0059】
図3は本発明における自立脚用の接地板の好ましい実施態様の一例を示す外観図であり、それぞれaが上面図、bが正面図、cが側面図である。
図3において、長方形の接地板10aは、上面部14の楯本体部の底辺に対し略平行方向の楯本体部側端部(つまりは長方形の長辺方向で楯本体部側端部)に長方形の側面部13aおよび楯本体部の底辺に対し、奥行側方向の端部の両側にそれぞれ三角形の側面部13bが設けられている。通常
図3c中側面板13bの左側が楯本体部側になるように設置される。
図3a中上面部14の中央付近には、楯支持部9と連結するための連結箇所11dが設けられている。
【0060】
上記側面部は接地面10bの法線17とのなす角A15(以下「接地面の法線と側面部のなす角A」、あるいは単に「なす角A」と称する)が−30°以上30°以下となるようになす角Aが設けられていることで接地板の剛性が高まり、実弾が着弾した際の衝撃力での変形や、足で踏んだ際の形態保持性の点から好ましく、0°以上23°以下となるように設けることがより好ましい。
図5は本発明における自立脚用の接地板の好ましい実施態様の一例を示す外観正面図であるが、図中、なす角A15は、図中、側面部13aと法線17との間の角である。法線と側面部が重なる場合は、なす角A15は0°となり、側面部の端部が上面部よりも内側に傾く場合はマイナスで表現するものとする。
【0061】
なお、
図3で示される例のように側面部が複数ある場合は、楯本体部と平行方向側もしくは奥行側のいずれかが上記範囲に含まれることが好ましいが、それぞれのなす角Aがいずれも上記範囲に含まれることがより好ましい。なお、側面部を接地板の上面に対し上方向のみに設ける場合においても接地面の法線と側面部のなす角Aが上記範囲にある場合に、着弾時の衝撃により接地板がずれても、足で止めやすい点で利点がある。なお、この際のなす角は、法線と側面部で形成される角のうち、小さい方の角を指す。
【0062】
側面部を設ける位置としては、特に制限はないが、(a)楯本体部の底辺に対し略平行方向の楯本体部側端部および/または(b)楯本体部の底辺に対し、奥行側方向の端部に設けることが、使用者が足で踏んで固定しやすい点で好ましい。例えば、上記(a)の位置に側面部を設け、楯本体部の底辺に対し略平行方向の楯本体部の奥側の端部に側面部を設けないことにより、接地板の上面が楯本体部の奥行き側にいる使用者の足に向けて低くなるように傾くので、より一層使用者が足で踏んで固定しやすくなる。また、上記(b)の位置に設け、側面部の形状を奥行き側に向かって低くなるようにすることで同様の効果を得ることができる。この場合の側面部を側面方向からみた形状は、楯本体部側の端部から奥行き側の端部に向けて一部もしくは全部がテーパー状となるよう台形、三角形等の形状であってもよい。
【0063】
なお、接地板の側面部の高さ方向の寸法は、楯本体部と自立用脚材との接合位置や、地面との接地高さから調整するが、最も高い部位で5mm〜110mmの範囲とすることが好ましい。接地板の端部(側面)の寸法が5mm以上であると、接地板の剛性において優れた向上効果が得られる。また、110mm以下であることで、折り畳んだ際の収納性に優れ、製品重量も重くなりすぎず、機動性に優れる。特に優れた接地板の剛性を得るには10mm〜30mmの範囲が好ましい。
【0064】
側面部は、上面部とは別部材で構成してもよいが、上面部を構成する部材の端部を折り曲げて側面部とすることが好ましい。また、上面部の形状中、角部や湾曲部を折り曲げる際は、複数方向(例えば長方形の場合は長辺方向の折り曲げと短辺方向の折り曲げがある)に折り曲げることになるが、折り曲げた側面部同士は連結することで、構造体としての剛性が高まるので好ましい。
【0065】
また当然ながら、前述の外観寸法の接地板を中実品で構成すると、防弾楯の重心が低くなり、より安定する方向となるが、製品重量が重くなるので、厚み1〜5mm程度の板材であることが好ましい。厚みが1mm未満では、接地板の剛性が不十分となる。また、5mmを超えると製品重量が重くなり、機動性が低下する。接地板の剛性を得るには、板材の厚みは2mm〜3mmの範囲がより好ましい。
【0066】
接地板の上面は平板のような板状でもよいが、足で踏んだ際の安定性や滑り止めの対策から、凹凸部が設けられていてもよいし、一部に孔が開けられた開孔部があってもよい。さらには、接地板の表面に滑り止めのゴム材料を貼り付けることも好ましい。凹凸部としては、上面部の上部側に複数の凸部および/または凹部が設けられている態様、足形状に窪みが設けられた態様等が挙げられる。凹凸部を設ける場合には、厚みとしては、同じであるが、上面部からみたときに凹凸を有する態様でもよいし、厚肉部および/または薄肉部を設けて凹凸を有する態様としてもよい。一部に開孔部が設けられている場合としては、パンチングにより複数の孔が開けられている態様、網状に開孔部が設けられている態様等が挙げられる。このようなパンチングや網状は全面に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。開孔部あるいは薄肉部を設けることにより、軽量化を図ることができるが、必要以上に強度を損なわない程度にとどめることが望ましい。
【0067】
接地板の隣り合う側面同士は、お互いを固定した方がより剛性が高くなるので好ましく、固定方法は特に限定しないが、溶接、ビス固定、ボルト固定、リベット固定等が好ましい。
【0068】
本発明で用いる自立用脚材は、楯支持部と接地板が一体化され、これにヒンジ部が設けられ、接合部を介して楯本体部と開閉可能に接合されることにより、開時は安定して自立し、閉時はコンパクトに折りたたむことができる防弾楯が得られる。
【0069】
例えば
図1、2においては、接合部7と、連結箇所11aで連結された、接地板10aを一体化した楯支持部9が、ヒンジ部8により開閉可能に設けられ、楯本体部1と接合部7で接合されている。ヒンジ部8は、連結箇所11bで接合部と連結され、連結箇所11cで楯支持部9と連結され、楯支持部9に設けられたスライド孔部内を連結箇所11cに配置した連結ピンがスライドすることにより、自立用脚材が開閉する。スライド孔の長手方向端部に、スライドさせたヒンジ部を止めるための誘導路を設け、ヒンジ部を係止可能にしてもよい。楯支持部9は、接地板と一体化され、接合部を介して接合された楯本体部を自立させるための部材である。形状は楯本体部を自立させるために機能すれば制限はないが、構造をシンプルにする視点から棒状であることが好ましい。断面形状についても接合部7や接地板を接合可能であれば制限はないが、四角断面、コの字断面等が好ましく用いられる。なお、楯支持部は接地板と一体成形されていてもよい。
【0070】
自立用脚材のヒンジ部が展開されて、接地板が接地面に接している際、接地板の楯本体部側から使用者側に向けて低くなるように接地板が接地面に接する態様が好ましい。この際接地面と接地板上面とのなす角B(以下「接地面と接地板上面とのなす角B」、あるいは単に「なす角B」と称する)16が5°以上45°以下となるように設けることで、単なる平板形状よりも、接地板の剛性を高めることでき、足で踏んだ時の荷重での変形にも耐えられ、着弾時に受ける衝撃による接地板の撓みを抑え、防弾楯が着弾時の衝撃で転倒することを抑制できる。接地面と楯本体部とのなす角Bが5°以上であることで接地板の剛性が十分に優れるものとなる。また、接地面と楯本体部とのなす角Bが45°以下であることで、立膝状態で接地板を踏み続けた際に足首に負荷がかからず、咄嗟の行動がとりやすく機動性に優れるものとなる。接地板の剛性や機動性を確保するためには、接地面と接地板上面とのなす角Bが10°〜20の範囲がさらに好ましい。
図6は本発明における自立用脚材の接地板の好ましい実施態様の一例を示す外観側面図であるが、図中、なす角B16は、図中、接地面10bと接地板の上面部14との間の角である。
【0071】
また、自立用脚材のヒンジ部を展開して防弾楯を自立させた時の接地面に対する楯本体部の自立角度2bが65°以上〜80°以下となるよう、自立用脚材を楯本体部に接合することが好ましい。楯本体部を自立させた時の角度が65°以上であることで、接地面に対して防弾楯の傾斜が適切になり、実弾が着弾した際の衝撃で防弾楯は転倒し難くかつ、防弾楯(下部)と接地面との隙間が僅少で、かつ、防護面積(水平投影面積)を十分効果的にとることができる傾向になる。また、自立させた時の角度が85°以下であることで、実弾が着弾した時の反動で防弾楯が転倒しにくく、優れた自立安定性を有する。実弾が着弾した時の自立安定性の点から自立角度は75°前後(具体的には75°±5°)が好ましい。
【0072】
楯本体部の後ろ面側に少なくとも1つの把手、好ましくは主把手4と補助把手3を取り付けることで、防弾楯の取扱い性や犯行現場への移動、犯人制圧、確保する際の機動力を向上することができる。なお、補助把手を取り付ける際の補助把手は利き腕に応じて使い分ける可能性があるため、左右に1個取り付けることが好ましい。構成材料としては、自立用脚材と同様、前述の材料で構成することが好ましい。また、主把手や補助把手等の把手を把持する部分には、すべり止め用の発泡ゴムシート材や熱収縮型のチューブ材を装着することがより好ましい。
【0073】
楯本体部に少なくとも1つの窓部5aを設けることで、拳銃を所持した相手と対峙した場合でも、使用者の安全を確保し、相手を目視確認することで、現場の状況に応じた適正な対応が可能となる。窓部5aは、窓枠bを介して楯本体部に固定される。窓部5aには使用者の視界が確保できるように透明な材料で構成することが好ましく、さらに、楯本体部分と同様に防弾性能を有していることが好ましい。窓部を構成する材料としては、特に限定はされないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明な樹脂板が好ましい。これらの樹脂板を単独で用いる場合や、2種類以上の透明な樹脂板を重ね合わせて使用することも可能である。2種類以上の透明な素材を重ね合わせることで、より機械的強度を向上させることができる。以上のように、透明な材料を窓部に使用することにより窓部から前方を目視で確認して、拳銃等を所持した相手に対抗することができる。
【0074】
以上のようにして得られた、楯本体部と自立用脚材からなる防弾楯は、拳銃弾等の飛来物に対する防護材料として、自立性に優れ、着弾時の衝撃による転倒抑制効果を奏する。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の特性については、次の測定法を用いた。
【0076】
(測定・評価方法)
1.原糸強度、伸度、引張弾性率
JIS L1013:2010 8.5に基づき、つかみ間隔25cm、引張り速度30±3cm/min、N=10回の引張り試験で引張強度(cN/dtex)、引張弾性率を求め平均値を算出した。
【0077】
2.繊度
JIS L 1013:2010 8.3.1 A法に基づき、112.5m分の小かせをサンプル数5セット採取し、20℃、60%の環境下で4時間放置後、その質量(g)を測定し、その値に10000/112.5をかけ、繊度(dtex)を求め平均値を算出した。
【0078】
3.目付
JIS L 1096:2010 8.3.2に基づき、約200mm×200mmの試験片2枚の質量(g)を量り、1m
2当たりの質量(g/m
2)を求め、平均値を算出した。
【0079】
4.織物の密度
JIS L 1096:2010 8.6.1に基づき、区間25.4mmの糸本数をたて/よこ方向に各5箇所ずつ数え、25.4mm当たりの密度(本/25.4mm)を求め、平均値を算出した。
【0080】
5.織物の厚さ
JIS L 1096:2010 8.4に基づき、ダイヤルシックネスゲージ(押さえ圧23.5kPa)で10秒間加圧後の厚みを5箇所測り、平均値を算出した。
【0081】
6.曲げ特性
JIS K7017:1999 10.1に基づき、試験片寸法を長さ60mm、幅20mmの試験片を4本準備して、支点間距離40mm、試験速度3mm/minの3点曲げ試験で曲げ応力(MPa)、曲げ弾性率(GPa)を求め、平均値を算出した。なお、試験片の寸法はノギスを用いて計測した。なお、厚さも同様にノギスを用いて計測した。
【0082】
7.粘度
JIS Z 8803:2011 9.4に基づき、B型粘度計で20℃に調温した樹脂の粘度を計測した。
【0083】
8.空洞率
JIS K7075:1991 8.2に基づき、30×30cmサイズの繊維強化樹脂材料を成形し、目付(g/cm
2)、厚さ(mm)、樹脂付着率(%)、構成材料の比重から、繊維体積含有率(%)および樹脂体積含有率(%)を求め、空洞率(%)を算出した。
該空洞率は、まず加熱加圧プレス成形後の繊維強化熱硬化性樹脂積層体層のみの目付(g/cm
2)、厚さ(mm)、樹脂付着率(%)、構成材料の比重から、繊維体積含有率(%)および樹脂体積含有率(%)を求め、空洞率(%)を算出した。
【0084】
9.樹脂付着率
3項記載の方法で樹脂加工前後の目付を算出し、下記式にて樹脂付着率(質量%)を算出した。
樹脂付着率(質量%)=(樹脂付着後目付−樹脂付着前目付)/樹脂付着後目付×100
【0085】
10.耐衝撃性能(V50耐弾性)
MIL−STD−662Fに準拠し、豊和工業(株)製小口径発射装置により1.1gの高速飛翔体でのBallistic Limit(V50:50%不貫通限界速度)を評価した。射距離2.5m、試験片サイズ150mm×150mm、試験数16枚の貫通速度(m/s)と不貫通速度(m/s)を求め、不貫通データ(弾速)の速い方から5点と、貫通データ(弾速)の遅い方から5点の計10点のデータから算出した。
[判定]600m/s以上:○、600m/s未満:×とした。
【0086】
11.自立保持性能(自立安定性)
MIL−STD−662Fに準拠し、豊和工業(株)製小口径発射装置により5.56gの高速飛翔体での転倒抑制効果を評価した。射距離2.5m、防弾楯サンプル(サイズ900mm×530mm、R500)に対し、弾速500m/sで、中央、左上、右上の計3発射撃した。
[判定]1回も転倒しない:〇、1回転倒した:△、2回以上転倒した:×
[総合判定]全て○判定の場合:○、△、×判定を含む場合:×とした。
【0087】
12.防弾楯の自立角度
防弾楯を自立させた状態で、防弾楯の上部から100gの重りを付けた糸を垂らし、該糸で防弾楯の上部から床面までの距離(a)、床面の重りから防弾楯の下部までの距離(b)を計測し、θ=tan
―1(a)/(b)で自立角度を算出した。
【0088】
13.なす角A
接地面の法線の、接地面から接地板と側面部の接点までの距離(a)、前記法線が接地面と接する点から側面部の端部までの距離(b)を計測し、θ=tan
―1 (b)/(a)で接地板のなす角Aを算出した。
【0089】
14.なす角B
接地面の法線の、接地面から接地板と側面部の接点までの距離(a)、前記法線がと接地面と接する点から接地板の端部が接地面に接する点までの距離(c)を計測し、θ=tan
―1(a)/(c)で接地板の角Bを算出した。
【0090】
実施例1
原糸強度20cN/dtex、引張弾性率500cN/dtexのパラアラミド繊維(総繊度3300dtex)を使用した平織織布(目付:460g/m
2、織り密度17本/2.5cm、厚さ0.64mm)にフェノール系樹脂(主成分:フェノール樹脂+ポリビニルブチラール樹脂)のワニス(粘度1400cP(mPa・s))をコンマリバースコート機で1回目の片面塗布加工のクリアランス0.10mm、塗布加工速度10m/分の条件で塗布し、乾燥温度80〜150℃で段階的に昇温して乾燥後、1回目と同じワニスを用いて2回目の片面塗布加工をクリアランス0.20mmとした以外は1回目と同様の方法で塗布した後、乾燥温度80〜150℃で段階的に昇温して乾燥した。樹脂付着率8.9質量%のプリプレグ材料を得た。なお、1回目の塗布後の樹脂付着率は3.0%であった。
【0091】
該プリプレグ材料を一定方向に16枚積層、防弾楯成形用金型にセットし、150℃、100kg/cm
2、30分加熱加圧成形して熱硬化性樹脂を硬化させ、空洞率11%の繊維強化樹脂を得た。
【0092】
幅寸法30cm、奥行寸法7cm、なす角A0°、三角形状で側面部下方向長さ1.9cm、なす角B13°の接地板と、長さ16cm、幅3cmの接合部と、長さ30cm、幅2cmの楯支持部と、長さ15cm、幅2.5cmのヒンジ部で成したアルミニウム製の自立用脚材を得た。なお、接地板の側面部は上面部を構成する部材の端部を、接地面に対し略平行に接地面に向けて延びるように折り曲げることにより形成した。
【0093】
直径32mm、肉厚2mmのアルミニウム製パイプで構成したコの字型の主把手と、直径20mm、肉厚2mmのアルミニウム製パイプで構成したコの字型の補助把手を得た。
【0094】
タテ10cm、ヨコ28cm、厚み6mmのアクリル樹脂板3枚と、タテ10cm、ヨコ28cm、厚み8のポリカーボネート樹脂板を、アクリル/アクリル/アクリル/ポリカの順で積層した窓用の透明体を得た。
【0095】
板圧2mmのアルミニウム製の板材で構成した透明体固定用の窓枠を得た。この窓枠に窓用の透明体をはめ込んだ。
【0096】
繊維強化樹脂、自立用脚材、主把手、補助把手、透明体をはめ込んだ窓枠を組み合わせて、自立角度75°の防弾楯(高さ900mm×幅(弧長)530mm、使用者側の面の幅方向の曲率半径R500mm)を得た。なお、接合部を含む各部材は六角ボルトと袋ナットで楯本体部と固定した。防弾楯の評価結果を表1に示す。
【0097】
実施例2
自立角度80°に接地板を調整し、樹脂付着率を6.0質量%にした以外は、実施例1と同じ手法で、防弾楯(高さ900mm×幅(弧長)530mm、使用者側の面の幅方向の曲率半径R500mm)を得た。評価結果を表1に示す。
【0098】
実施例3
自立角度が65°に接地板を調整し、樹脂付着率を10.5質量%にした以外は、実施例1と同じ手法で、防弾楯(高さ900mm×幅(弧長)530mm、使用者側の面の幅方向の曲率半径R500mm)を得た。評価結果を表1に示す。
【0099】
比較例1
原糸強度20cN/dtex、引張弾性率500cN/dtexのパラアラミド繊維(総繊度3300dtex)を使用した平織織布(目付:460g/m
2、織り密度17本/2.5cm、厚さ0.64mm)にフェノール系樹脂(主成分:フェノール樹脂+ポリビニルブチラール樹脂)のワニス(粘度1400cP(mPa・s))をコンマリバースコート機で表面の塗布加工のクリアランス0.30mm、塗布加工速度10m/分の条件で塗布し、乾燥温度80〜150℃で段階的に昇温して乾燥後、表面と同じワニスを用いて裏面の塗布加工をクリアランス0.25mm、塗布加工速度5m/分の条件で塗布した以外は表面と同様の方法で塗布した後、乾燥温度80〜150℃で段階的に昇温して乾燥した。樹脂付着率22.0質量%のプリプレグ材料を得た。なお、表面の塗布後の樹脂付着率は12.0%であった。
【0100】
該プリプレグ材料を一定方向に16枚積層、防弾楯成形用金型にセットし、150℃、100kg/cm
2、30分加熱加圧成形して熱硬化性樹脂を硬化させ、空洞率2%の繊維強化樹脂を得た。
【0101】
長さ16cm、幅3cmの接合部と、長さ30cm、幅2cmの楯支持部と、長さ15cm、幅2.5cmのヒンジ部で構成したアルミニウム製の自立用脚材(接地板無し品)を得た。
【0102】
その他は実施例1と同様の手法で得た主把手、補助把手、透明体をはめ込んだ窓枠を組み合わせ、自立角度を85°に調整した防弾楯(高さ900mm×幅(弧長)530mm、使用者側の面の幅方向の曲率半径R500mm)を得た。なお、接合部を含む各部材は六角ボルトと袋ナットで楯本体部と固定した。評価結果を表1に示す。
【0103】
比較例2
自立角度を80°に調整した以外は、比較例1と同じ手法で、防弾楯(高さ900mm×幅(弧長)530mm、使用者側の面の幅方向の曲率半径R500mm)を得た。なお、自立用脚材は防弾楯の左右に1本ずつ取り付けた。評価結果を表1に示す。
【0104】
実施例1、2、3は優れた自立保持性能を示した。
【0105】
比較例1、2は実施例よりも自立保持性能が劣っていた。
【0106】
【表1】
【解決手段】楯本体部1と自立用脚材2aとからなる防弾楯であって、前記楯本体部は空洞率が5%以上20%以下である繊維強化樹脂からなり、前記自立用脚材は前記楯本体部と接合される接合部と、ヒンジ部と、楯支持部と、楯支持部の接地側に備えられた接地板とを具備し、前記楯支持部と、前記接地板とが一体化されてなる、防弾楯。