(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記施工を行う前に、複数の回転圧入杭を複数個所の地盤に貫入させ、貫入毎の前記回転圧入杭の圧入力Qin、貫入速度w、及び回転速度θを求め、前記圧入力Qin、前記貫入速度w、及び、前記回転速θと、先端支持力Ruとの相関関係から前記先端支持力推定式を予め得る
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法。
前記施工を行う前に、複数の回転圧入杭を複数個所の地盤に貫入させ、貫入毎の前記回転圧入杭の圧入力Qin、回転トルクTを求め、前記圧入力Qin及び前記回転トルクTと、先端支持力Ruとの相関関係から前記先端支持力推定式を予め得る
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法。
前記先端支持力推定式で算出された前記先端支持力Ruが、施工する前記回転圧入杭に必要な設計先端支持力Ra以上である場合に前記回転圧入杭の貫入を停止し、前記設計先端支持力Raより小さい場合に前記回転圧入杭の貫入を継続するようにした
ことを特徴とする請求項12に記載の施工管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の回転圧入工法では、以下のような問題があった。
すなわち、回転圧入工法は低騒音・低振動かつ省スペースなどの特徴を有しており、杭体自体に圧入力とトルクを直接加えて施工することから、鋼管杭特有の理想的な工法である。ところが、回転圧入杭の支持力性能については研究例や試験例が少ないため、構造物の鉛直荷重を支える支持杭として適用するためには、都度、載荷試験を実施して支持力性能を確認する必要があるという問題があった。
さらに、施工時のトルクと施工時の圧入力により先端支持力を評価する方法はあるものの、先端の粗度に応じてトルクと摩擦力から先端支持力を推定する方法となっている。この方法の場合には、開端杭のように先端に地中の土砂が詰まって閉塞して先端支持力を発揮する条件においては、先端の土砂の詰まり具合や詰まる土砂の構成などが施工の制御や地盤の状態に応じて変化することから事前の地盤調査の結果から先端の粗度を想定することは難しく、先端支持力の推定は困難である。
【0006】
一方、回転圧入杭の特徴として、支持層への根入れを確保することで、高い支持力が期待でき、安定して支持力が発揮されることが確認されている。
しかしながら、回転圧入工法には明確な打ち止め時における管理方法がないため、根入れ長の管理による方法しかない現状となっている。そして、杭を打設する地点の地盤は事前調査を行った場所と離れる場合があり、調査結果と同じ地盤条件になるとは限らない。一方で、支持層が調査結果よりも浅い深度にある場合などでは、既に十分な支持力が得られているにも関わらず、根入れ長を確保するために、圧入が困難な硬い地盤に時間をかけて必要以上の根入れを確保することになる。この場合には、施工時間が増え、長時間の過負荷がかかることで杭本体や圧入機等の施工機械の劣化が生じるという問題があった。
このように、施工時には荷重として施工時圧入力とトルク、変位として回転速度と貫入速度があり、制御の対象となるパラメータが多く存在することから、優れた施工管理方法の確立が求められていた。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたものであって、回転圧入工法において回転圧入杭の先端支持力を管理することで、支持層の不陸にも対応可能となり、施工品質を向上させることができる回転圧入杭の先端支持力推定方法、先端支持力管理システム、施工管理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概要は下記の通りである。
【0009】
(1)本発明の第一の態様は、杭先端が解放された鋼管杭からなる回転圧入杭を地盤に回転圧入する施工時に、前記回転圧入杭の先端支持力を推定する回転圧入杭の先端支持力推定方法であって、前記施工時に測定された、圧入力Qinと、支持力推定指標Hとを入力する入力工程と、前記圧入力Qinと、前記支持力推定指標Hとを使用し、回転圧入杭における圧入力Qinと、先端支持力Ruと、支持力推定指標Hとの相関関係から定式化した(1)式で表される先端支持力推定式に基づいて、前記回転圧入杭の先端支持力Ruを推定する推定工程と、を有する。
【数1】
A:X軸を前記支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を(2)式で表した際の勾配
B:X軸を前記支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を(2)式で表した際のY切片
【数2】
【0010】
(2)上記(1)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、Dを杭外径(mm)、θを回転速度(rad/min)、wを貫入速度(mm/min)としたとき、前記支持力推定指標Hが0.5D×θ/wであってもよい。
(3)上記(2)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、前記回転圧入杭の周面摩擦による影響である修正圧入力Qin’を計測し、下記(3a)式で求められる補正係数αにより前記先端支持力推定式を補正した修正先端支持力推定式に基づいて前記先端支持力Ruが推定されてもよい。
【数3】
(4)上記(2)又は(3)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、前記施工を行う前に、複数の回転圧入杭を複数個所の地盤に貫入させ、貫入毎の前記回転圧入杭の圧入力Qin、貫入速度w、及び回転速度θを求め、前記圧入力Qin、前記貫入速度w、及び、前記回転速θと、先端支持力Ruとの相関関係から前記先端支持力推定式を予め得てもよい。
【0011】
(5)上記(1)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、Tを回転トルク(kN・mm)、Dを杭外径(mm)としたとき、前記支持力推定指標HがT/0.5Dであってもよい。
(6)上記(5)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、前記回転圧入杭の周面摩擦による影響である修正回転トルクTsの計測値と、下記(3b−1)式で求められる補正係数β1と、下記(3b−2)式で求められる補正係数β2とにより、前記先端支持力推定式を補正した修正先端支持力推定式に基づいて前記先端支持力Ruが推定されてもよい。
【数4】
【数5】
(7)上記(5)又は(6)に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法では、前記施工を行う前に、複数の回転圧入杭を複数個所の地盤に貫入させ、貫入毎の前記回転圧入杭の圧入力Qin、回転トルクTを求め、前記圧入力Qin及び前記回転トルクTと、先端支持力Ruとの相関関係から前記先端支持力推定式を予め得てもよい。
【0012】
(8)本発明の第二の態様は、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法を使用して前記回転圧入杭の先端支持力を管理する先端支持力管理システムであって、前記先端支持力推定式が格納された記憶部と、前記記憶部に格納されている前記先端支持力推定式に基づいて前記先端支持力Ruを算出する演算処理部と、を有する。
(9)上記(8)に記載の先端支持力管理システムでは、前記演算処理部において、算出した前記先端支持力Ruに応じて前記回転圧入杭の貫入を継続するか否かを判定してもよい。
(10)上記(8)に記載の先端支持力管理システムでは、前記記憶部には、施工する回転圧入杭に必要な設計先端支持力Raが格納され、前記演算処理部では、算出された前記先端支持力Ruが前記設計先端支持力Ra以上であるか否かを判定してもよい。
(11)上記(8)〜(10)のいずれか1項に記載の先端支持力管理システムは、前記演算処理部で処理した結果を表示する表示部を更に有してもよい。
【0013】
(12)本発明の第三の態様は、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法を使用して前記回転圧入杭の施工を管理する施工管理方法であって、推定された前記先端支持力Ruに応じて前記回転圧入杭の貫入を継続するか否かを判定する工程を更に有する。
(13)上記(12)に記載の施工管理方法では、前記先端支持力推定式で算出された前記先端支持力Ruが、施工する前記回転圧入杭に必要な設計先端支持力Ra以上である場合に前記回転圧入杭の貫入を停止し、前記設計先端支持力Raより小さい場合に前記回転圧入杭の貫入を継続するようにしてもよい。
(14)上記(12)又は(13)に記載の施工管理方法は、前記先端支持力Ruを算出する工程では、前記回転圧入杭の周面摩擦による影響である修正圧入力Qin’又は修正回転トルクTsの計測値を用いて、下記(3a)式で求められる補正係数αにより、又は、下記(3b−1)式で求められる補正係数β1と、下記(3b−2)式で求められる補正係数β2とにより補正した修正先端支持力推定式に基づいて前記先端支持力Ruを算出してもよい。
【数6】
【数7】
【数8】
【0014】
(15)本発明の第四の態様は、上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の回転圧入杭の先端支持力推定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
(16)本発明の第五の態様は、上記(12)〜(14)のいずれか一項に記載の施工管理方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転圧入工法における回転圧入杭の先端支持力を的確に推定することで、支持層の不陸にも対応可能となり、施工品質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、先端部1aが解放された鋼管杭からなる回転圧入杭1を地盤に圧入する際の状態を示す概略図である。
図1に示すように、回転圧入杭1は、軸周り方向に回転トルクT(kN・mm)を付与しつつ、軸方向に圧入力Qin(kN)を付与することにより、所定の回転ピッチpで地盤に圧入される。
圧入力Qinは、施工中に施工機械で地上部に出ている杭部分を把持して杭頭部から杭先端部に向けて付与する荷重である。
回転ピッチpは、回転圧入杭の貫入速度w(mm/min)に対する回転速度θ(rad/min)を、杭外径D(mm)の1/2である杭の半径を用いて無次元化した割合であって、p=0.5D×θ/wで表される。尚、貫入速度wは、回転圧入杭1が1分当たりに地中に挿入される速度であり、回転速度θは、回転圧入杭1が1分当たりに回転する角度である。
【0018】
先端支持力Ruとは、杭の先端近傍で発揮される支持力である。先端部1aが解放された鋼管杭(開端杭)においては、管内に取り込んだ土砂が閉塞して先端支持力Ruを発揮する。従って、先端支持力Ruは、回転圧入杭1の先端部1aだけでなく、回転圧入杭1の先端部1aから杭外径Dの1倍〜5倍程度上方までの範囲Aで発揮される、杭軸の杭頭1bから杭先端方向に向けた抵抗である。
【0019】
回転圧入杭1は、
図2及び
図3に示すような杭回転圧入機2により回転トルクTと圧入力Qinとを付与することで地盤に回転圧入される。
【0020】
尚、回転圧入杭1は、先端部1aに掘削用の掘削ビットが設けられたビット付鋼管杭であってもよく、先端部1aに掘削用の掘削ビットが設けられていないビット無鋼管杭であってもよい。
掘削ビットは、支持力を得るために取り付けられる羽根とは異なり、施工性を向上するための構造である。本願において、掘削ビットが設けられている場合、掘削ビットの鋼管杭外面からの外側突出長は、20mm以下である。一方、鋼管杭の先端には、軸方向長さ300mm程度のフリクションカッターが設けられてもよい。フリクションカッターは二重管構造を有し、鋼管杭の外面から20mm以下で突出している。ビットが、このフリクションカッター上に設けられた場合、フリクションカッター外面から20mm以下で突出し得るため、鋼管外面からは20+20=40mm以下で突出することとなる。尚、掘削ビットの内側突出長も、20mm以下であることが好ましい。
【0021】
図2に示すように、杭回転圧入機2の一例として、リーダー24Aを備えた自走式の圧入機本体24と、リーダー24Aに設けられる把持部24Bを回転させるための駆動モーター25と、を有する三点式杭打ち機2Aを用いることができる。
また、
図3に示すように、杭回転圧入機2の他の例として、把持部26A及びスラストジャッキ26Bを備えた据え置き式の圧入機本体26と、把持部26Aを回転させるための駆動モーター27と、を有する全周旋回式圧入機2B(2)を使用しても良い。
なお、杭打設深度(杭先端位置)はリーダーに設けられるストロークセンサーやエンコーダー等の一般的な計測装置により計測するよう構成されている。
【0022】
本発明者らは、このようにして施工される回転圧入杭の先端支持力Ruを的確に推定する方法について鋭意検討した。
その結果、回転圧入杭を地盤に回転圧入する施工時に、圧入力Qinと、支持力推定指標Hの構成因子(回転速度・貫入速度、又は、回転トルク)とを測定し、回転圧入杭における圧入力Qinと、先端支持力Ruと、支持力推定指標Hとの相関関係から定式化した下記(1)式で表される先端支持力推定式に基づいて、回転圧入杭の先端支持力Ruを推定することが有効であることを見出した。
【数9】
A:X軸を前記支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を(2)式で表した際の勾配
B:X軸を前記支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を(2)式で表した際のY切片
【数10】
【0023】
本発明は上述の新たな知見に基づきなされたものである。以下、本発明を各実施形態に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る回転圧入杭の先端支持力推定方法について説明する。
本実施形態に係る先端支持力推定方法は、回転圧入杭を地盤に回転圧入する施工時の回転速度θと貫入速度wとに基づいて回転圧入杭の先端支持力を推定するものであり、入力工程と推定工程とを有する。
すなわち、本実施形態に係る先端支持力推定方法においては、回転圧入杭の外径をD(mm)、回転速度をθ(rad/min)、貫入速度をw(mm/min)とした場合に、0.5D×θ/wで示される値(回転ピッチ)を支持力推定指標Hとする。
【0025】
まず、入力工程として、回転圧入杭1を地盤に回転圧入する施工時に、圧入力Qinと、上記支持力推定指標Hの構成因子である回転速度θと貫入速度wとを測定してこれらの情報をコンピュータに入力する。
【0026】
次に、推定工程として、入力工程で得られた圧入力Qinと、支持力推定指標Hとを使用し、回転圧入杭における圧入力Qinと、先端支持力Ruと、支持力推定指標Hとの相関関係から定式化した下記(1a)式で表される先端支持力推定式に基づいて、回転圧入杭1の先端支持力Ruを推定する。
【数11】
【0027】
A1は、X軸を支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を下記(2a)式で表した際の勾配である。
B1は、X軸を支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を下記(2a)式で表した際のY切片である。
プロット点の近似線は、例えば、最小二乗法による対数近似線を用いればよい。
【0029】
上記(1a)式で表される先端支持力推定式は、後述するような施工試験及び載荷試験によって定式化された式である。圧入力Qin、貫入速度w、回転速度θは、杭回転圧入装置2に設けられた計測部によって連続的に計測される。
【0030】
本実施形態に係る先端支持力推定方法によれば、回転圧入杭1を回転圧入する施工時に、圧入力Qin、貫入速度w、及び回転速度θの測定情報を連続的又は間欠的に計測し、計測された測定情報から上述の(1a)式で表される先端支持力推定式に基づいて先端支持力Ruを算出することができる。
すなわち、施工時の圧入力Qin、回転速度θ、貫入速度w、及び先端支持力Ruの間に高い相関関係があることに基づいて定式化した先端支持力推定式を用いることで、容易にかつ精度よく回転圧入によって施工される回転圧入杭の先端支持力Ruを推定できる。従って、推定される先端支持力Ruに応じて回転圧入杭の貫入を継続するか否かを判定することができる。
また、後述するように、このような先端支持力Ruを推定することによる施工管理方法を採用することで、十分な先端支持力Ruが発揮できる状態で回転圧入杭を打ち止めすることができる。
したがって、支持層までの深度によって打ち止めを管理する場合のように、支持層に対する根入れ長の過不足を防止でき、支持層の不陸にも対応することが可能となる。
【0031】
ここで、上述の(1a)式で表される先端支持力推定式を定式化するための施工試験及び載荷試験について説明する。
【0032】
施工試験では、
図1に示すように、実際の地盤や人工的に作成した地盤に回転圧入杭1を回転圧入し、回転圧入施工を停止する予め設定された打ち止め時の深度(打ち止め深度Z0)よりも杭外径Dの2倍程度上方の位置までの区間において、回転速度θを一定値に保持したまま貫入させる。
圧入力Qinは、地盤の抵抗の変化により多少の上下があるものの、概ね一定値になるように制御される。ここで、打ち止め深度Z0は、施工試験で用いる杭外径Dと地盤条件に基づいて設計される先端支持力が得られる深度である。
貫入速度w及び回転速度θは、打ち止め深度Z0から上方に杭外径Dの0.1倍程度の長さ区間を打ち止め直前区間Kとして、この区間Kに回転圧入杭1の先端部1aが到達したときに測定される平均値を採用する。
【0033】
載荷試験では、試験用の回転圧入杭を所定の深度で打ち止めした後、鉛直方向から荷重により載荷を行う。そして、深度方向に複数断面の杭の応力分布を計測して周面摩擦力と先端支持力Ruを分離して測定する。尚、載荷試験は、例えば、地盤工学会から発刊されている「杭の鉛直載荷試験方法・同解説2002」に示される、「杭の押込み試験」、「杭の急速載荷試験」、「杭の衝撃載荷試験」に従って実施すればよい。
【0034】
表1に、具体例としての試験1〜25について、掘削ビットの有無、杭外径(mm)、支持層地盤の種類(砂層/礫層)、圧入力Qin(kN)、回転速度θ(rad/min)、貫入速度w(mm/min)、回転ピッチ0.5D×θ/w(−)、先端支持力Ru(kN)、及びQin/Ru(−)を示す。
試験1〜14では、掘削ビットを有しないビット無鋼管杭を用いた。
試験15〜25では、先端部において周方向に均等に四つの掘削ビットが設けられたビット付鋼管杭を用いた。
【0036】
試験1〜25について、X軸を支持力推定指標H(=0.5D×θ/w)の自然対数とし、Y軸をQin/Ruとしてプロットしたグラフを
図5に示す。このグラフは、施工試験後に載荷試験を実施した回転圧入杭のQin/Ruと、支持力推定指標H(=0.5D×θ/w)の自然対数との関係を示したものである。
【0037】
図5から、各試験の試験結果のプロットについて最小二乗法による近似線を算出すると、
図6に示すように下記(2a−1)式が得られる。
【数13】
【0038】
そして、この(2a−1)式に基づいて、上記(1)式に対応する先端支持力推定式である(1a−1)式が導かれる。
実構造物の設計では、先端支持力Ruの設計式に対して十分な安全率が考慮されているため、打ち止め管理式においてもばらつきは許容される。従って、全データの近似式から求めた(1a−1)式を用いることは妥当である。
【0040】
このような相関性があることを確認したことにより、施工時に杭回転圧入機2から刻々と測定される圧入力Qin、貫入速度w、回転速度θのデータから先端支持力推定式である(1a−1)式を使用して先端支持力Ruを推定することができる。
【0041】
尚、許容される安全率が低い構造物について打ち止め管理を行う場合には、
図6に示すように、(2a−1)式の近似線に平行で、かつQin/Ruの点の最大値を含む上限を示す近似線である(2a−1’)式を算出し、これに基づいて得られる(1a−1’)式を先端支持力推定式として用いてもよい。
【0043】
この場合、載荷試験による試験結果は、
図6において(2a−1’)式で示される直線よりも下方の領域に包含されているため、より信頼性を高めることができる。
【0044】
また、上述した先端支持力推定式は、試験1〜25のプロット点に基づいて導出された推定式であるが、実際に施工する圧入鋼管杭のビット有無に合わせた試験結果のみを用いて導出した推定式を用いることで、推定の精度を高めることができる。
すなわち、ビット有りの鋼管杭について支持力を推定する場合には、
図7Aに示すように、ビット有りの試験について、上記(2a−1)式と同様に(2a−1−1)式を求め、これに基づき得られる(1a−1−1)式を支持力推定式として用いてもよい。
【数17】
【数18】
また、同様に、ビット無しの鋼管杭について支持力を推定する場合には、
図7Bに示すように、ビット無しの試験について、上記(2a−1)式と同様に(2a−1−2)式の近似線を求め、これに基づき得られる(1a−1−2)式を支持力推定式として用いてもよい。
【数19】
【数20】
【0045】
尚、上記の例では、プロットの最小二乗法による近似線である(2a−1)式から平行移動した近似線である(2a−1’)式を導き出して先端支持力推定式である(1a−1’)式を求めた。しかし、近似線はプロットを最小二乗法以外の近似法を用いて得てもよい。
また、上記(2a−1’)式で示す近似線は、最小二乗法による近似線の傾きを厳密に一定とした平行移動により得られたものでなくてもよく、例えば、対象とするプロット点を包絡するような直線又は曲線であってもよい。
【0046】
また、上述した先端支持力推定式である(1a)式において、杭長が長い場合や、支持層より上部に厚い粘土層が存在する場合などにはより精緻な先端支持力Ruの推定を行うために、支持層より上部での杭周面の影響を除く補正を行うようにしてもよい。
その際には、回転圧入杭1を支持層の上部で一旦引き上げ、杭先端に空隙を生じさせて先端の抵抗が発生しない条件で、その際の回転速度θを一定にして、貫入速度wを変化させて貫入させたときの圧入力、すなわち杭周面の影響(周面摩擦力が起因となる押し込み方向の抵抗力)である修正圧入力Qin’を計測する。このとき、貫入速度wを変化させる範囲は、機械の能力から決まる最大の速度からほぼゼロまでの範囲であることが望ましい。
具体的には、施工時の圧入力Qinから杭周面の影響である修正圧入力Qin’を除去することにより求まる(3a)式で表される補正係数αを求める。
そして、補正係数αを用いた(1a−1*)式の修正先端支持力推定式によって、より精緻な先端支持力Ruを推定できる。
このとき、施工時の圧入力Qinおよび修正圧入力Qin’は貫入速度wの変化に応じて連続的に変化する値、つまり貫入速度wの関数となるため、施工時の圧入力Qinと施工時の圧入力Qinから除去する修正圧入力Qin’は支持層の施工時の貫入速度wに応じた値を用いる。したがって、(1a*)式によって先端支持力を推定する際に、補正係数αは、支持層施工時の貫入速度wの変化に応じて逐次演算された値を用いる。
【0049】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る回転圧入杭の先端支持力推定方法について説明する。
本実施形態に係る先端支持力推定方法は、回転圧入杭を地盤に回転圧入する施工時の回転トルクTに基づいて回転圧入杭の先端支持力を推定するものであり、入力工程と推定工程とを有する。
すなわち、本実施形態に係る先端支持力推定方法においては、回転トルクをT(kN・mm)、杭外径をD(mm)とした場合に、T/0.5Dで示される値を支持力推定指標Hとする。
【0050】
まず、入力工程として、回転圧入杭1を地盤に回転圧入する施工時に、圧入力Qinと、上記支持力推定指標Hの構成因子である回転トルクTとを測定してコンピュータに入力する。
【0051】
次に、推定工程として、入力工程で得られた圧入力Qinと、支持力推定指標Hとを使用し、回転圧入杭における圧入力Qinと、先端支持力Ruと、支持力推定指標Hとの相関関係から定式化した下記(1b)式で表される先端支持力推定式に基づいて、回転圧入杭の先端支持力Ruを推定する。
【数23】
【0052】
A2は、X軸を支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を下記(2b)式で表した際の勾配である。
B2は、X軸を支持力推定指標Hの自然対数とし、Y軸をQin/Ruとした試験結果のプロット点の近似線を(2b)式で表した際のY切片である。
プロット点の近似線は、例えば、最小二乗法による対数近似線を用いればよい。
【0054】
上記(1b)式で表される先端支持力推定式は、後述するような施工試験及び載荷試験によって定式化された式である。圧入力Qin、回転トルクTは、杭回転圧入装置2に設けられた計測部によって連続的に計測される。
【0055】
本実施形態に係る先端支持力推定方法によれば、回転圧入杭を回転圧入する施工時に、圧入力Qin、及び、回転トルクTの測定情報を連続的又は間欠的に計測し、計測された測定情報から上述の(1b)式で表される先端支持力推定式に基づいて先端支持力Ruを算出することができる。
すなわち、施工時の圧入力Qin、回転トルクT、及び先端支持力Ruの間に高い相関関係があることに基づいて定式化した先端支持力推定式を用いることで、容易にかつ精度よく回転圧入によって施工される回転圧入杭の先端支持力Ruを推定できる。従って、推定される先端支持力Ruに応じて回転圧入杭の貫入を継続するか否かを判定することができる。
また、後述するように、このような先端支持力Ruを推定することによる施工管理方法を採用することで、十分な先端支持力Ruが発揮できる状態で回転圧入杭を打ち止めすることができる。
したがって、支持層までの深度によって打ち止めを管理する場合のように、支持層に対する根入れ長の過不足を防止でき、支持層の不陸にも対応することが可能となる。
【0056】
ここで、上述の(1b)式で表される先端支持力推定式を定式化するための施工試験及び載荷試験について説明する。
【0057】
施工試験では、
図1に示すように、実際の地盤や人工的に作成した地盤に回転圧入杭1を回転圧入し、回転圧入施工を停止する予め設定された打ち止め時の深度(打ち止め深度Z0)よりも杭外径Dの2倍程度上方の位置までの区間において、回転速度θを一定値に保持したまま貫入させる。
圧入力Qinは、地盤の抵抗の変化により多少の上下があるものの、概ね一定値になるように制御される。ここで、打ち止め深度Z0は、施工試験で用いる杭外径Dと地盤条件に基づいて設計される先端支持力が得られる深度である。
回転トルクTは、打ち止め深度Z0から上方に杭外径Dの0.1倍程度の長さ区間を打ち止め直前区間Kとして、この区間Kに回転圧入杭1の先端部1aが到達したときに測定される平均値を採用する。
【0058】
載荷試験では、試験用の回転圧入杭を所定の深度で打ち止めした後、鉛直方向から荷重により載荷を行う。そして、深度方向に複数断面の杭の応力分布を計測して周面摩擦力と先端支持力Ruを分離して測定する。尚、載荷試験は、例えば、地盤工学会から発刊されている「杭の鉛直載荷試験方法・同解説2002」に示される、「杭の押込み試験」、「杭の急速載荷試験」、「杭の衝撃載荷試験」に従って実施すればよい。
【0059】
表2に、具体例としての試験1〜24について、掘削ビットの有無、杭外径(mm)、支持層地盤の種類(砂層/礫層)、圧入力Qin(kN)、回転トルクT(kN・mm)、T/0.5D(kN)、先端支持力Ru(kN)、及びQin/Ru(−)を示す。
試験1〜14では、掘削ビットを有しないビット無鋼管杭を用いた。
試験15〜24では、先端部において周方向に均等に四つの掘削ビットが設けられたビット付鋼管杭を用いた。
【0061】
試験1〜24について、X軸を支持力推定指標H(=T/0.5D)の自然対数とし、Y軸をQin/Ruとしてプロットしたグラフを
図8に示す。このグラフは、施工試験後に載荷試験を実施した回転圧入杭のQin/Ruと、支持力推定指標H(=T/0.5D)との関係を示したものである。
【0062】
図8から、各試験の試験結果のプロットについて最小二乗法による近似線を算出すると、
図9に示すように下記(2b−1)式が得られる。
【数25】
【0063】
そして、この(2b−1)式に基づいて、上記(1)式に対応する先端支持力推定式である(1b−1)式が導かれる。
実構造物の設計では、先端支持力Ruの設計式に対して十分な安全率が考慮されているため、打ち止め管理式においてもばらつきは許容される。従って、全データの近似式から求めた(1b−1)式を用いることは妥当である。
【0065】
このような相関性があることを確認したことにより、施工時に杭回転圧入機2から刻々と測定される圧入力Qin、回転トルクTのデータから先端支持力推定式である(1b−1)式を使用して先端支持力Ruを推定することができる。
【0066】
尚、許容される安全率が低い構造物について打ち止め管理を行う場合には、
図9に示すように、(2b−1)式の近似線に平行で、かつQin/Ruの点の最大値を含む上限を示す近似線である(2b−1’)式を算出し、これに基づいて得られる(1b−1’)式を先端支持力推定式として用いてもよい。
【0068】
この場合、載荷試験による試験結果は、
図9において(2b−1’)式で示される直線よりも下方の領域に包含されているため、より信頼性を高めることができる。
【0069】
尚、本実施形態に係る先端支持力推定方法においても、第一実施形態で説明した通り、推定の精度を高めるために、実際に施工する圧入鋼管杭のビット有無に合わせた試験結果のみを用いて導出した推定式を用いてもよい。
【0070】
尚、上記の例では、プロットの最小二乗法による近似線である(2b−1)式から平行移動した近似線である(2b−1’)式を導き出して先端支持力推定式である(1b−1’)式を求めた。しかし、近似線はプロットを最小二乗法以外の近似法を用いて得てもよい。
また、上記(2b−1’)式で示す近似線は、最小二乗法による近似線の傾きを厳密に一定とした平行移動により得られたものでなくてもよく、例えば、対象とするプロット点を包絡するような直線又は曲線であってもよい。
【0071】
また、上述した先端支持力推定式である(1b)式において、杭長が長い場合や、支持層より上部に厚い粘土層が存在する場合などにはより精緻な先端支持力Ruの推定を行うために、支持層より上部での杭周面の影響を除く補正を行うようにしてもよい。
その際には、回転圧入杭1を支持層の上部で一旦引き上げ、杭先端に空隙を生じさせて先端の抵抗が発生しない条件で再度貫入させたときの杭周面の影響(周面摩擦力が起因となる押し込み方向の抵抗力)である修正回転トルクTsおよび修正圧入力Qin’を計測する。
具体的には、施工時の回転トルクTから杭周面の影響である修正回転トルクTsを除去することにより求まる(3b−1)式で表される補正係数β1を求める。
更に、施工時の圧入力Qinから修正圧入力Qin’を除去することにより求まる(3b−2)式で表される補正係数β2を求める。
そして、補正係数β1、β2を用いた(1b*)式の修正先端支持力推定式によって、より精緻な先端支持力Ruを推定できる。
【0073】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態は、上述の先端支持力推定方法を使用して回転圧入杭の先端支持力を管理する先端支持力管理システム(以下、本実施形態に係る先端支持力管理システムと呼称する場合がある)であり、測定部と、記憶部と、演算処理部とを有する。
【0074】
図4に示すように、本実施形態に係る先端支持力管理システム10は、上述したように回転圧入杭1を把持した把持部を昇降させることにより回転圧入杭1を地盤に圧入する杭回転圧入機2を利用したものである。このシステム10は、杭回転圧入機2で取得した計測値(圧入力Qin、貫入速度w、回転速度θ、回転トルクT)をコンピュータ3に入力し、コンピュータ3内の演算処理部31により先端支持力Ruを算出し推定する。この杭回転圧入機2で測定した計測値は、演算処理部31を有するコンピュータ3に無線又は有線により通信可能に接続されている。
【0075】
コンピュータ3は、前記演算処理部31と、記憶部32とを有する。又、コンピュータ3は、演算処理部31で算出された先端支持力Ruの推定値を表示する表示部4を備えていてもよい。
記憶部32には、先端支持力推定式と、所定の設計先端支持力Raとが組み込まれている。各計測部21、22で計測された計測値は、回転圧入杭1の貫入工程において連続的又は間欠的に計測される時系列データであり、記憶部32にこれら時系列データが格納されている。
尚、先端支持力推定式については、第一実施形態で説明したように、施工を行う前に、複数の回転圧入杭を複数個所の地盤に貫入させることで得られた圧入力Qinと、先端支持力Ruと、支持力推定指標Hとの相関関係から予め求められた先端支持力推定式を用いればよい。
【0076】
演算処理部31では、記憶部32で記憶されている先端支持力推定式を使用し、杭回転圧入機2の各計測部21、22から入力された計測値(記憶部のデータ)に基づいて、先端支持力Ruを算出する演算処理が実行される。さらに演算処理部31では、算出された先端支持力Ruと設計先端支持力Raとが比較される処理が行われる。その処理結果(推定した先端支持力Ruと設計先端支持力Raとの判定結果)は表示部4によって視認可能に出力されることが好ましい。尚、設計先端支持力Raとは、施工する回転圧入杭に必要な先端支持力の設定値であり、支持力推定指標Hの計測結果の精度などを考慮して、必要とされる安全率に応じてマージンが設定されてもよい。
このように、先端支持力管理システム10によって推定された先端支持力Ruに基づいて回転圧入杭1の貫入を打ち止めするものである。つまり、本実施の形態では、先端支持力管理システム10を用いて杭回転圧入機2によって回転圧入杭1を圧入する回転圧入杭1の施工管理を行うことができる。
尚、先端支持力Ruが設計先端支持力Ra以上になったことを確認してから、より安全性を高めるために多少のマージンを確保すべく更に貫入してもよい。
【0077】
杭回転圧入機2は、回転圧入杭1に回転力と圧入力とを付与しながら地盤に圧入し、
図4に示すように、圧入力Qin、及び、支持力推定指標(貫入速度w及び回転速度θ、又は、回転トルクT)がそれぞれ圧入力計測部21、及び、指標計測部22によって計測される。
【0078】
圧入力Qinを計測する圧入力計測部21としては、杭回転圧入機2のリーダーに設けられる駆動モーターの油圧を検出する油圧センサーを利用し、回転圧入杭1を地盤Gに圧入する圧入力値として計測する構成が採用されている。例えば連続的、或いは回転圧入杭1が円周方向に1/4回転や1/8回転程度、回転する毎に計測及び記録される。
支持力推定指標として回転ピッチpを用いる場合、指標計測部22としては、例えば回転圧入杭1を把持する把持部の時間当たりのストローク(貫入速度w)を計測する構成と、回転圧入杭1を把持する把持部の回転部分からエンコーダー等を使って回転速度を計測する構成とを採用することができる。
また、支持力推定指標として回転トルクTを用いる場合、指標計測部22としては、例えば回転圧入杭1を把持する把持部に備えた回転トルクセンサによって回転方向に作用する荷重を計測する構成を採用することができる。
【0079】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態は、上述の先端支持力推定方法を使用して回転圧入杭の施工を管理する施工管理方法(以下、本実施形態に係る施工管理方法と呼称する場合がある)であり、計測工程と、算出工程と、判定工程とを有する。
【0080】
以下、本実施形態に係る施工管理方法について、
図10のフローチャートを使用して詳しく説明する。
先ず、ステップS1において、
図2及び
図3に示す杭回転圧入機2(2A、2B)を使用して回転圧入杭1に回転力と圧入力を与えながら地盤に対して回転圧入を開始する。
そして、ステップS2において、回転圧入中の杭回転圧入機2の
図4に示す圧入力計測部21、及び、指標計測部22で、それぞれ圧入力Qinと、支持力推定指標Hの構成因子である貫入速度w及び回転速度θ、又は、回転トルクTが計測される。計測は、連続的又は所定時間ピッチで行われる。これら計測されたデータ(圧入力Qin、貫入速度w、回転速度θ、又は回転トルクT)は、
図4に示すコンピュータ3の演算処理部31に入力される。以降、演算処理装置31は、ステップS3、S4の処理を実行する。
【0081】
ステップS3において、予め記憶部32に格納されている先端支持力推定式を用い、測定されたデータに基づいて先端支持力Ruが算定される。ステップS4において、演算処理装置31は、算定された先端支持力Ruが、記憶部32に予め格納されている設計先端支持力Raの値以上であるか否かを判断する。算定した先端支持力Ruが設計先端支持力Ra以上である場合(Ru≧Ra、ステップS4:YES)には、ステップS5に進む。一方、算定した先端支持力Ruが設計先端支持力Raよりも小さい場合(Ru<Ra、ステップS4:NO)には、ステップS2に戻り引き続き回転圧入の施工とともに各データ(圧入力Qin、貫入速度w、回転速度θ、及び回転トルクT)が測定され、回転圧入杭1の回転圧入による貫入が継続される。
尚、ステップS4において、地盤中に支持層には適さない、硬質な薄層や、硬度の高い障害物がある場合等には、一時的にRu≧Raとなることがある。このような場合には圧入の施工を止めることは適切ではない。一般的に、鉛直支持力性能を評価する際の載荷試験において、杭を沈下させる量は杭径の10%程度であるため、杭径の10%以上の長さを貫入させている区間で安定してRu≦Raの関係が得られていることを確認できた場合にステップS5に進んでもよい。
演算処理部31で算定された先端支持力Ruの数値や、ステップS4の結果(先端支持力Ruが設計先端支持力Raの対比結果)等は、表示部4を介して視認可能に出力されることが好ましい。
【0082】
そして、ステップS4において、算出した先端支持力Ruが設計支持力Ra以上であることを確認することで、十分な先端支持力が確保され、回転圧入杭1が定着されたことになるため、ステップS5において回転圧入杭1の回転圧入による貫入を停止して打ち止めとし、施工が終了となる。
ここで、回転圧入杭1の打ち止めとは、回転圧入による貫入を停止することであり、回転を停止した後に、施工時の圧入力の付与を停止する場合と、施工時の圧入力の付与を停止した後に回転を停止する場合がある。
【0083】
次に、杭周面の影響を除いた修正先端支持力推定式を用いた回転圧入杭1の施工管理方法について、
図11のフローチャートを使用して説明する。
この場合には、上述したステップS1の後、ステップS6において、回転圧入杭1を支持層の上部で一旦引き上げ、ステップS7で、周面摩擦による影響に関連する修正圧入力Qin’、又は、修正回転トルクTsを計測する。
そしてステップS8において、支持層に貫入させた際の圧入力Qin、及び、支持力推定指標H(回転速度θ及び貫入速度w、又は、回転トルクTs)を計測する。そして、ステップS9において、演算処理装置31は、計測された貫入速度wと修正圧入力Qin’、又は、計測された回転トルクT、圧入力Qin、修正回転トルクTs及び修正圧入力Qin’を用いて、予め記憶部32に格納されている関係式から補正係数(上述したα、β1、β2)を求める。さらに、演算処理装置31は、修正先端支持力推定式を用い、測定されたデータに基づいて先端支持力Ruを算定する。
【0084】
その後、ステップS10において、演算処理装置31は、算定された先端支持力Ruが、記憶部32に予め格納されている設計先端支持力Raの値よりも大きいか否かを判断する。算定した先端支持力Ruが設計先端支持力Ra以上である場合(Ru≧Ra、ステップS10:YES)には、ステップS5に進む。一方、算定した先端支持力Ruが設計先端支持力Raよりも小さい場合(Ru<Ra、ステップS10:NO)には、ステップS8に戻り引き続き回転圧入の施工とともに各データ(圧入力Qin、貫入速度w、及び回転速度θ、回転トルクT)が測定され、回転圧入杭1の回転圧入による貫入が継続される。
【0085】
そして、ステップS10において、算出した先端支持力Ruが設計支持力Ra以上であることを確認することで、十分な先端支持力が確保され、回転圧入杭1が定着されたことになるため、ステップS5において回転圧入杭1の回転圧入による貫入を停止して打ち止めとし、施工が終了となる。
【0086】
このように、本実施形態に係る施工管理方法によれば、コンピュータ3の演算処理部31において定式化した先端支持力推定式によって算出された先端支持力Ruが、設計先端支持力Ra以上であるか否かを判定し、施工する回転圧入杭1に必要な設計先端支持力Ra以上である場合に回転圧入杭1の貫入を停止し、設計先端支持力Raよりも小さい場合に回転圧入杭1の貫入を継続するように施工管理することができる。
【0087】
以上説明した回転圧入杭の先端支持力推定方法、先端支持力管理システム、及び、施工管理方法によれば、回転圧入杭1を回転圧入する際に、圧入力Qin、及び、支持力推定指標H(回転速度θ及び貫入速度w、又は、回転トルクTs)の測定情報を連続的又は間欠的に計測し、計測された測定情報から先端支持力推定式に基づいて先端支持力Ruを算出することができる。
すなわち、施工時の圧入力Qin、支持力推定指標H(回転速度θ及び貫入速度w、又は、回転トルクTs)、及び先端支持力Ruの間に高い相関関係があることに基づいて定式化した先端支持力推定式を用いることで、容易にかつ精度よく回転圧入によって施工される回転圧入杭1の先端支持力Ruを推定できるので、推定される先端支持力Ruに応じて回転圧入杭1の貫入を継続するか否かを判定することができる。このような先端支持力Ruを推定することによる施工管理方法を採用することで、十分な先端支持力Ruが発揮できる状態で回転圧入杭1を打ち止めすることができる。
したがって、支持層までの深度によって打ち止めを管理する場合のように、支持層に対する根入れ長の過不足を防止でき、支持層の不陸にも対応することが可能となり、施工品質を向上させることができる。
【0088】
なお、上述した回転圧入杭の先端支持力推定方法又は施工管理方法は、CPUやメモリ、インターフェースからなるコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって実現され、上述したステップS3〜S4、又はS9〜S10は、上記コンピュータの各種ハードウェア資源と上記コンピュータプログラムとが協働することによって実現される。
また、上記したコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な一時的ではない有形の記録媒体に格納されて提供されても良い。
【0089】
次に、上述した回転圧入杭の先端支持力推定方法の効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
【0090】
(実施例1)
試験実施例として、外径800mmの鋼管を中間層が10mの条件で施工し、載荷試験を行った。
図12〜
図15に、その結果をグラフとして示す。これらのグラフでは、それぞれ縦軸を支持層への根入れ比(支持層への貫入量L(mm)を杭外径D(mm)で除したもの)としている。
図12は根入れ比L/Dと圧入力Qin(kN)との関係を示したグラフである。
図13は根入れ比L/Dと回転速度θ(rad/min)との関係を示したグラフである。
図14は根入れ比L/Dと貫入速度w(mm/min)との関係を示したグラフである。
図15は根入れ比L/Dと先端支持力Ru(kN)と、第一実施形態で説明した(1a−1)式と同様に導き出した先端支持力推定式E1、及び、(1a−1’)式と同様に導き出した先端支持力推定式E2に基づいて推定した、回転圧入杭1の先端支持力Ruの推定値の関係を示したグラフである。
【0091】
これにより、実際に載荷試験から得られた先端支持力Ruが、先端支持力推定式E1から推定された先端支持力に良く一致していることが確認できる。
さらに、先端支持力推定式E2を用いた場合には、十分に安全側に先端支持力を推定できることが確認できる。
したがって、本発明による先端支持力Ruの推定値が有効であることを確認できた。
【0092】
(実施例2)
試験実施例として、外径800mmの鋼管を中間層が10mの条件で施工し、載荷試験を行った。
図16〜
図18に、その結果をグラフとして示す。これらのグラフでは、それぞれ縦軸を支持層への根入れ比(支持層への貫入量L(mm)を杭外径D(mm)で除したもの)としている。
図16は根入れ比L/Dと圧入力Qin(kN)との関係を示したグラフである。
図17は根入れ比L/Dと回転トルクT(kN・m)との関係を示したグラフである。
図18は根入れ比L/Dと先端支持力Ru(kN)と、第二実施形態で説明した(1b−1)式と同様に導き出した先端支持力推定式E3、及び、(1b−1’)式と同様に導き出した先端支持力推定式E4に基づいて推定した、回転圧入杭1の先端支持力Ruの推定値の関係を示したグラフである。
【0093】
これにより、実際に載荷試験から得られた先端支持力Ruが、先端支持力推定式E3から推定された先端支持力に良く一致していることが確認できる。
さらに、先端支持力推定式E4を用いた場合には、十分に安全側に先端支持力を推定できることが確認できる。
したがって、本発明による先端支持力Ruの推定値が有効であることを確認できた。
【0094】
以上、本発明による回転圧入杭の先端支持力推定方法、先端支持力管理システム、及び回転圧入杭の施工管理方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0095】
例えば、支持層より上部の中間層において、例えばスクリューオーガー、ハンマグラブ等を使用して回転圧入杭の鋼管内の土砂を排土する方法や、鋼管内に配管をして水を吐出させて鋼管内の土砂を緩める方法や、バイブロハンマー等を用いて振動を与える方法等の補助工法を用いても良い。
【0096】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。