特許第6856186号(P6856186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856186
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】水切り
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/158 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   E04D13/158
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-73954(P2016-73954)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-186742(P2017-186742A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595031731
【氏名又は名称】株式会社神清
(74)【代理人】
【識別番号】100150533
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 雅登
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−132122(JP,U)
【文献】 特開平09−137565(JP,A)
【文献】 実開平01−138036(JP,U)
【文献】 実開平05−042498(JP,U)
【文献】 実開平03−028227(JP,U)
【文献】 実開平01−159026(JP,U)
【文献】 実開平01−157825(JP,U)
【文献】 特開2011−163094(JP,A)
【文献】 実開昭52−004217(JP,U)
【文献】 実開昭48−102821(JP,U)
【文献】 実開平06−006554(JP,U)
【文献】 実開昭54−107121(JP,U)
【文献】 実開平05−071322(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/158
E04D 3/40
E04D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
垂直に伸びた内側垂直部と、
内側垂直部の下端から水平に伸びた内側水平部と、
内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、
ケラバ部又は壁取合い部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、
内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、
溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切り。
【請求項2】
垂直に伸びた外側垂直部と、
外側垂直部の上端から水平に伸びた外側水平部と、
外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた中間垂直部と、
中間垂直部の下端から外側垂直部の方向に水平に伸びた中間水平部と、
中間水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、
内側垂直部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、
内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、
ケラバ部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、
内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、
溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切り。
【請求項3】
水平に伸びた外側水平部と、
外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、
内側垂直部の下端から外側水平部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、
内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、
ケラバ部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、
内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、
溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切り。
【請求項4】
垂直に伸びた外側垂直部と、
外側垂直部の下端から水平に伸びた外側水平部と、
外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、
内側垂直部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、
内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、
壁取合い部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、
内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、
溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切り。
【請求項5】
請求項1、2、3、又は4記載の水切りであって、
前記溝が連続する凹凸面の凹面からなるものであることを特徴とする水切り。
【請求項6】
請求項1、2、3、又は4記載の水切りであって、
前記溝が複数の凹凸部の連続する凹部からなるものであって、凸部と凸部との間にあるものであることを特徴とする水切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い板状の屋根材(例えばスレートやアスファルトシングルなど)を使用した屋根のケラバ部(切妻屋根の妻側の端の部分)や壁取合い部(壁と屋根材とが接している部分)の水切りに関する。
【背景技術】
【0002】
ケラバ部や壁取合い部の水切りは、暴風雨や豪雨などによって、ケラバ部や壁取合い部の屋根材の側面から流れ込む雨水を、野地板に染み渡らせることなく、屋根材と野地板との間で受けて、軒先まで案内し、排水させるためのものである。
【0003】
従来の水切りとしては、正面視(軒側からの断面視)において、垂直に伸びた外側垂直部と、外側垂直部の上端から水平に伸びた外側水平部と、外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた中間垂直部と、中間垂直部の下端から外側垂直部の方向に水平に伸びた中間水平部と、中間水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部とを有する水切りに、内側垂直部に接続されると共に内側水平部の下方にまで垂直に伸びた垂直支持部と、内側水平部の下に一定の間隔を置いて平行に配置されるように垂直支持部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた水平支持部と、水平支持部の先端に上方に折り返された折返支持部とを有する水切りシートを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の水切りは、ケラバ部における防水紙を敷いた野地板と屋根材との間に内側水平部及び水切りシートを差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持して施工された。
【0005】
さらにその他、前記の水切りシートの水平支持部上の折返支持部側にシーラント材を備えたものや、前記の水切りシートは備えないものの、内側水平部の折返部にシーラント材を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
通常、暴風雨や豪雨などによって、屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込んだ雨水は、内側垂直部を伝わって内側水平部上に落ち、そのまま内側水平部に案内されて軒先まで流れ落ち、排水されることとなる。
【0007】
しかし、長年に渡って屋根材の側面と内側垂直部との隙間から入り込んだ埃や砂等が内側水平部上に堆積することにより、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み内側垂直部を伝わって内側水平部上に落ちた雨水が、堰き止められて溜まってしまい、やがては、雨水が軒先に向けて案内されることなく折返部を超えてあふれ出し、屋根材を固定している釘を伝わって野地板に染み渡り、野地板が腐ってしまうことがあった。
【0008】
上記の従来の水切りでは、例え、雨水が折返部を超えてあふれ出したとしても、雨水が前記の水切りシートの水平支持部上に落ち、そのまま軒先まで案内され、排水された。
【0009】
さらに、備えられたシーラント材の存在によって、折返部又は折返支持部と屋根材の下面との間に隙間を生じさせることがないため、雨水が折返部又は折返支持部を超えてあふれ出すことがなかった。
【0010】
しかし、上記の従来の水切りは、屋根材の下に位置する内側水平部にシーラント材を設けたものや、内側水平部の更に下の位置に水切りシート又はシーラント材を備えた水切りシートを設けたものであるため、一般的に流通している水切りと比べ、野地板から屋根材までの高さが高いものとなり、野地板と屋根材との上下間の隙間が大きくなってしまうことから、施工時に作業者による踏み割れ(施工時に作業者が屋根材の上を歩く際に屋根材が割れてしまうこと)が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−163094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、長年に渡って屋根材の側面と内側垂直部との隙間から入り込んだ埃や砂等が内側水平部上に堆積することによっても、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み内側垂直部を伝わって落ちる雨水が、内側水平部上に堰き止められて溜まってしまうことがなく、かつ、一般的に流通している水切りと比べ、野地板から屋根材までの高さが高いものとならない水切りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の課題解決手段は、少なくとも、垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部の下端から水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、ケラバ部又は壁取合い部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切りである。
【0014】
本発明の第2の課題解決手段は、垂直に伸びた外側垂直部と、外側垂直部の上端から水平に伸びた外側水平部と、外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた中間垂直部と、中間垂直部の下端から外側垂直部の方向に水平に伸びた中間水平部と、中間水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、ケラバ部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切りである。
【0015】
本発明の第3の課題解決手段は、水平に伸びた外側水平部と、外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部の下端から外側水平部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、ケラバ部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切りである。
【0016】
本発明の第4の課題解決手段は、垂直に伸びた外側垂直部と、外側垂直部の下端から水平に伸びた外側水平部と、外側水平部の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部の下端から外側垂直部と反対方向に水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部と、を有し、壁取合い部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切りであって、内側垂直部に棟から軒の方向に伸び、かつ、屋根材の側面に対して反対側に凹んだ溝が設けられ、溝の開口部が折返部の高さより上にのみ設けられていることを特徴とする水切りである。
【0018】
本発明の第の課題解決手段は、第1、2、3、又は4の課題解決手段の水切りであって、前記溝が連続する凹凸面の凹面からなるものであることを特徴とする水切りである。
【0019】
本発明の第6の課題解決手段は、第1、2、3、又は4の課題解決手段の水切りであって、前記溝が複数の凹凸部の連続する凹部からなるものであって、凸部と凸部との間にあるものであることを特徴とする水切りである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1、2、3、及び4の課題解決手段の水切りは、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み内側垂直部を伝わって落ちる雨水を、内側垂直部に設けられた、棟から軒の方向に伸びた溝に流れ込ませ、そのまま軒先まで案内し、排水させることができる。
【0021】
このため、例え、長年に渡って屋根材の側面と内側垂直部との隙間から入り込んだ埃や砂等が内側水平部上に堆積したとしても、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み内側垂直部を伝わって落ちる雨水が、内側水平部上に堰き止められて溜まってしまうことがない。
【0022】
よって、雨水が折返部を超えてあふれ出すことがないため、雨水が屋根材を固定している釘を伝わって防水紙の下の野地板に染み渡り、野地板が腐ってしまうことがない。
【0023】
さらに、本発明の第1、2、3、及び4の課題解決手段の水切りは、屋根材の下に位置する内側水平部にシーラント材を設けたものや、内側水平部の更に下の位置に水切りシート又はシーラント材を備えた水切りシートを設けたものではないため、野地板から屋根材までの高さが一般的に流通している水切りと同等であることから、野地板と屋根材との上下間の隙間が大きくなってしまうことがない。
このため、施工時に作業者による踏み割れが発生するおそれがない。
【0024】
さらに、本発明の第1、2、3、又は4の課題解決手段の水切りは、溝の開口部が折返部の高さより上に設けられていることから、例え、長年に渡って屋根材の側面と内側垂直部との隙間から入り込んだ埃や砂等が、内側水平部上に折返部の高さまで堆積したとしても、溝が埃や砂等で埋まってしまうことがない。
【0025】
このため、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み内側垂直部を伝わって落ちる雨水を、埃や砂等によって邪魔させることなく、溝に流れ込ませ、そのまま軒先まで案内し、排水させることができる。
【0026】
なお、例え、溝に少量の埃や砂等が落ちたとしても、それらは堆積することなく、溝を流れる雨水によって流され、軒先で排出されることとなる。
【0027】
本発明の第5及び6の課題解決手段の水切りは、溝が、連続する凹凸面の凹面からなるものや複数の凹凸部の連続する凹部からなるものであって、凸部と凸部との間にあるものであることから、棟から軒の方向にかけて、直線状、ジグザグ状、階段状等の様々に伸びた複数の溝を形成することができる。
【0028】
このため、暴風雨や豪雨などによって屋根材の側面と内側垂直部との隙間から流れ込み様々な方向から内側垂直部を伝わって落ちる雨水を、確実に溝に導いて流れ込ませ、そのまま軒先まで案内し、排水させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態1の水切りの正面図
図2】本発明の実施の形態1の水切りの使用状態を示す一部断面正面図
図3図2の部分拡大図
図4】破風部側から視た屋根材と溝との関係を示す部分拡大説明図
図5】本発明の実施の形態1の水切りの使用状態を示す別の断面部分拡大図
図6】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図
図7(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図
図8】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図
図9】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図
図10】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの側面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの側面部分拡大図
図11】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの側面部分拡大図
図12】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの側面部分拡大図
図13】(a)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図、(b)本発明の実施の形態1の別の水切りの正面部分拡大図
図14】本発明の実施の形態2の水切りの正面図
図15】本発明の実施の形態3の水切りの正面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本発明の実施の形態1のケラバ部の水切り10を以下のとおり説明する(図1参照)。
【0031】
水切り10は、正面視において、垂直に伸びた外側垂直部12と、外側垂直部12の上端から水平に伸びた外側水平部14と、外側水平部14の先端から下方に垂直に伸びた中間垂直部16と、中間垂直部16の下端から外側垂直部12の方向に水平に伸びた中間水平部18と、中間水平部18の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部20と、内側垂直部20の下端から外側垂直部12と反対方向に水平に伸びた内側水平部22と、内側水平部22の先端に上方に折り返された折返部24とを有するものである。
【0032】
水切り10は、ケラバ部における防水紙(図示しない)を敷いた野地板26とスレートの屋根材28との間に内側水平部22を差し込み、内側垂直部20を屋根材28の側面に対向させて配置し、折返部24にて屋根材28の下面を支持し、破風部にあたる外側垂直部12と外側水平部14とで、のぼり木30を覆い、棟から軒の方向にかけて、ケラバ部に施工されるものである(図2参照)。
【0033】
なお、一般的に、内側垂直部20と屋根材28の側面との隙間Cは3mm以下に、内側水平部22と屋根材28の下面との隙間Sは2mm以下になるように施工されている。
また、水切り10は、屋根材28の2枚重ねの部分や3枚重ねの部分の下に差し込まれる。
【0034】
さらに、水切り10は、内側垂直部20に、ケラバ部に施工した際に棟から軒の方向に伸びるように設けられた溝32を有するものである(図1、2参照)。
溝32は、雨水Rを軒先に向けて案内するためのものである。
【0035】
このため、暴風雨や豪雨などによって、屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから流れ込み、内側垂直部20を伝わって落ちる雨水Rは、溝32に流れ込み、そのまま軒先まで案内され、排水されることとなる(図2、3参照)。
【0036】
よって、例え、長年に渡って屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから入り込んだ埃や砂等Dが、内側水平部22と屋根材28の下面との隙間Sに堆積したとしても、屋根材28の側面を伝わって落ちるわずかの雨水Rだけが内側水平部22上に流れ落ちるだけで、内側垂直部20を伝わって落ちる雨水Rは、内側水平部22上に流れ落ちることがほとんどない。
【0037】
このため、雨水Rが堆積した埃や砂等Dによって堰き止められて内側水平部22上に溜まって折返部24を超えてあふれ出すことがないことから、雨水Rが屋根材28を固定している釘を伝わって防水紙の下の野地板26に染み渡り、野地板26が腐ってしまうことがない。
【0038】
さらに、溝32は、開口部34が折返部24の高さHより上となるように設けられている(図1参照)。
【0039】
このため、例え、長年に渡って屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから入り込んだ埃や砂等Dが、内側水平部22と屋根材28の下面との隙間Sを埋め尽くす程に堆積したとしても、溝32が埃や砂等Dで埋まってしまうことがない。
【0040】
このため、暴風雨や豪雨などによって屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから流れ込み内側垂直部20を伝わって落ちる雨水Rは、埃や砂等Dによって邪魔されることなく、溝32に流れ込み、そのまま軒先まで案内され、排水されることとなる。
【0041】
なお、通常、埃や砂等Dは、内側水平部22上の隙間Sにおいて、破風部側から視て、屋根材28の3枚重ねの部分の一番下の屋根材28の隅切り部分K(流れ込んだ雨水をその場で堰き止めないように破風部側の屋根材の上部の隅を斜めに切り落とした部分)に堆積することが多い(図4参照)。
【0042】
なぜなら、屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから少しずつ入り込んだ埃や砂等Dは、隅切り部分Kが障害物となって、雨水Rに流されることなく、その場に堰き止められてしまうからである。
【0043】
なお、例え、溝32に少量の埃や砂等Dが落ちたとしても、溝32には隅切り部分Kのような障害物がないことから、埃や砂等Dは、溝32に堆積することなく、溝32を流れる雨水Rによって流され、軒先で排出されることとなる。
【0044】
このため、溝32に流れ込んだ雨水Rは、埃や砂等Dによって邪魔されることなく、棟から軒の方向にかけて円滑に流されていくこととなる(図4参照)。
【0046】
その他、屋根材28の2枚重ねの部分の下に、開口部34の上部を屋根材28の最上面より高くなるように設けた溝32を備える水切りが差し込まれている場合には、開口部34の上部と屋根材28の側面との隙間Gから流れ込んだ雨水Rは、内側水平部22上に流れ落ちることなく、直接、溝32に流れ込み、そのまま軒先まで案内され、排水されることとなる(図5参照)。
【0047】
さらに、溝32は、正面視における内側垂直部20において、外側垂直部12側に凹んだ略逆コの字形のものであるが、これに限定されることなく、外側垂直部12側に凹んだ形状であればどのようなものであっても良いほか、溝としての機能を有する形状であればどのようなものであっても良い。
【0048】
例えば、略くの字形の溝36(図6(a)参照)や略レの字形の溝38(図6(b)参照)のような形状であっても良い。
【0049】
その他、内側垂直部20の上端に上部が中間水平部18と連続する凹みからなる溝42(図7(b)参照)、又は内側垂直部20の下端にシーラント材44を取り付けることによって内側垂直部20の上端に上部が中間水平部18と連続した凹みを形成したものからなる溝46(図8(a)参照)のような形状であっても良い。
【0050】
その他、棟から軒の方向に伸びる上下に連続する凹凸面48の凹面50を溝52(図8(b)参照)、又は溝54(図9(a)参照)としたものでも良い。
【0051】
その他、碁盤格子状に並べられた複数の凹凸部56における棟から軒の方向に伸びた連続する凹部58を溝60(図9(b)、図10(a)参照)としたものや、千鳥格子状に並べられた複数の凹凸部62における棟から軒の方向に伸びた連続する凹部64を溝66(図10(b)参照)としたものでも良い。
【0052】
その他、内側垂直部20に、縦方向より横方向に厚みのある網目68を備えた網70を貼り付け、正面視において、複数の網目68を凹凸部72とし、かつ、網目68の縦方向を凹部74とし、更に、棟から軒の方向に連続する凹部74を溝76としたものでも良い(図11(a)、(b)参照)。
【0053】
その他、内側垂直部20に、複数の凹凸部78を備えたシート材80を、凹凸部78側を内側垂直部20に対向させて貼り付け、棟から軒の方向に連続する凹部82を溝84としたものでも良い(図12(a)、(b)参照)。
【0054】
以上の溝が、連続する凹凸面の凹面からなるものや複数の凹凸部の連続する凹部からなるものである場合には、棟から軒の方向にかけて、直線状、ジグザグ状、階段状等の様々に伸びた複数の溝を形成することができるため、暴風雨や豪雨などによって屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから流れ込み様々な方向から内側垂直部20を伝わって落ちる雨水Rを、確実に溝に導くことが可能となる。
【0055】
さらに、溝32は、上部に底に向けて備えられた、先端が丸みを帯びているものや鋭いものなどの突起86を設けたものとしても良い(図13(a)、(b)参照)。
なお、突起86の形状は限定されるものではない。
【0056】
溝32の上部に突起86を設けることにより、暴風雨や豪雨などによって屋根材28の側面と内側垂直部20との隙間Cから流れ込み内側垂直部20を伝わって落ちる雨水Rを、突起86に集めて伝わらせ、溝32の底に落とすことができるため、雨水Rを溝32に集め易くすることができる。
【0057】
次に、本発明の実施の形態2のケラバ部の水切り88を以下のとおり説明する(図14参照)。
【0058】
水切り88は、正面視において、水平に伸びた外側水平部14と、外側水平部14の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部20と、内側垂直部20に設けられた棟から軒の方向に伸びた溝32と、内側垂直部20の下端から外側水平部14と反対方向に水平に伸びた内側水平部22と、内側水平部22の先端に上方に折り返された折返部24とを有するものである。
【0059】
水切り88は、ケラバ部と破風部とを同質の屋根材で施工する場合(本発明の属する業界において「同質役物の施工」と呼ばれるもの)に用いられるものであって、ケラバ部における防水紙を敷いた野地板とスレートの屋根材との間に内側水平部22を差し込み、内側垂直部20を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部24にて屋根材の下面を支持し、破風部の屋根材と受桟との間に外側水平部14を差し込み、施工されるものである。
【0060】
水切り88は、実施の形態1の水切り10において、外側垂直部12、中間垂直部16、及び中間水平部18とを欠いた構成に過ぎないものである。
このため、その他の水切り10と共通する構成については、その説明を省略する。
また、水切り88の作用効果についても、水切り10の作用効果と共通するため、その説明を省略する。
【0061】
次に、本発明の実施の形態3の壁取合い部の水切り90を以下のとおり説明する(図15参照)。
【0062】
水切り90は、正面視において、垂直に伸びた外側垂直部12と、外側垂直部12の下端から水平に伸びた外側水平部14と、外側水平部14の先端から下方に垂直に伸びた内側垂直部20と、内側垂直部20に設けられた棟から軒の方向に伸びた溝32と、内側垂直部20の下端から外側垂直部12と反対方向に水平に伸びた内側水平部22と、内側水平部22の先端に上方に折り返された折返部24とを有するものである。
【0063】
水切り90は、壁取合い部における防水紙を敷いた野地板とスレートの屋根材との間に内側水平部22を差し込み、内側垂直部20を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部24にて屋根材の下面を支持し、受桟の上に外側水平部14を載せ、外側垂直部12を壁の下葺き材に沿って取り付け、壁取合い部に施工されるものである。
【0064】
水切り90は、実施の形態1の水切り10において、中間垂直部16と中間水平部18とを欠いた構成であるほか、外側垂直部12の伸びる方向が異なるだけに過ぎないものである。
【0065】
このため、その他の水切り10と共通する構成については、その説明を省略する。
また、水切り90の作用効果についても、水切り10の作用効果と共通するため、その説明を省略する。
【0066】
なお、以上に説明した水切り10、88、及び90は金属製のものが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0067】
さらに、正面視において、少なくとも、垂直に伸びた内側垂直部と、内側垂直部に設けられた棟から軒の方向に伸びた溝と、内側垂直部の下端から水平に伸びた内側水平部と、内側水平部の先端に上方に折り返された折返部とを有し、ケラバ部又は壁取合い部における野地板と屋根材との間に内側水平部を差し込み、内側垂直部を屋根材の側面に対向させて配置し、折返部にて屋根材の下面を支持する水切り(図示しない)であれば、外側垂直部、外側水平部、中間垂直部、及び中間水平部の有無や形状等に関係なく、本発明の効果を奏することができるため、課題解決手段となり得る。
【符号の説明】
【0068】
10 ケラバ部の水切り(実施の形態1)
12 外側垂直部
14 外側水平部
16 中間垂直部
18 中間水平部
20 内側垂直部
22 内側水平部
24 折返部
26 野地板
28 屋根材
30 のぼり木
32 溝
34 溝の開口部
36 溝
38 溝
42 溝
44 シーラント材
46 溝
48 凹凸面
50 凹面
52 溝
54 溝
56 凹凸部
58 凹部
60 溝
62 凹凸部
64 凹部
66 溝
68 網目
70 網
72 凹凸部
74 凹部
76 溝
78 凹凸部
80 シート材
82 凹部
84 溝
86 突起
88 ケラバ部の水切り(実施の形態2)
90 壁取合い部の水切り(実施の形態3)
C 内側垂直部と屋根材の側面との隙間
D 埃や砂等
G 溝の開口部の上部と屋根材の側面との隙間
H 折返部の高さ
K 隅切り部分
R 雨水
S 内側水平部と屋根材の下面との隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15