特許第6856204号(P6856204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856204多重生体認証装置及びそれを含む出入システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856204
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】多重生体認証装置及びそれを含む出入システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20210329BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20210329BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20210329BHJP
【FI】
   G06T1/00 400H
   G06T7/00 510B
   A61B5/1171
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-565137(P2019-565137)
(86)(22)【出願日】2018年1月5日
(65)【公表番号】特表2020-507878(P2020-507878A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】KR2018000258
(87)【国際公開番号】WO2018151411
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年8月13日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0019811
(32)【優先日】2017年2月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519295225
【氏名又は名称】クルシャルテク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRUCIALTEC CO.LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】519295236
【氏名又は名称】クルシャルトラック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CRUCIALTRAK,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】オ、ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヨン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドン ホ
【審査官】 岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−208682(JP,A)
【文献】 韓国特許第10−2016−0040037(KR,B1)
【文献】 特開2010−211579(JP,A)
【文献】 特開2002−083298(JP,A)
【文献】 特開2004−295572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00
A61B 5/117− 5/1172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の身体的特徴の認証が可能なホストシステムを含む多重生体認証装置であって、
前記ホストシステムは、
ユーザの生体データを取得する生体データ入力部と、
取得した前記生体データと、予め登録されている前記ユーザの生体データを比較して識別を行う生体データ識別部とを含み、
前記生体データ入力部は、前記ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受け、
前記ホストシステムは、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられる構成において、
前記生体データ入力部は、
指紋認証手段と、
前記指紋認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、手のひらを撮影できる手のひら静脈認証手段と、
前記手のひら静脈認証手段の一側において、ユーザの親指と人差し指の間に対応する領域に位置する虹彩認証手段及び顔認証手段とを有する
ことを特徴とする、多重生体認証装置。
【請求項2】
前記生体データは、指紋データ、虹彩データ、静脈データ、網膜データ、顔画像データ、掌形データのうちの2つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の多重生体認証装置。
【請求項3】
前記生体データ入力部は、前記ユーザが前記多重生体認証装置から離隔した位置から、前記多重生体認証装置に近接する位置に接近しながら眺めると、前記ユーザの身体から複数の生体データの入力を受けることを特徴とする、請求項1に記載の多重生体認証装置。
【請求項4】
前記指紋認証手段は、各指紋データを取得する複数の指紋認証カメラを有し、
複数の指紋認証カメラのうち第1の指紋認証カメラは、親指を除く他の指のうち所定の数の指の指紋を撮影し、
複数の指紋認証カメラのうち第2の指紋認証カメラは、親指を除く他の指のうち前記第1の指紋認証カメラが撮影できない指の指紋を撮影することを特徴とする、請求項に記載の多重生体認証装置。
【請求項5】
前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、パンチルト(pan−tilt)ドライバにより駆動されることを特徴とする、請求項に記載の多重生体認証装置。
【請求項6】
前記生体データ識別部は、取得した2つ以上の前記生体データを同時に識別できることを特徴とする、請求項1に記載の多重生体認証装置。
【請求項7】
前記ホストシステムは、
前記ユーザの生体データが予め登録されている生体データ登録部と、前記生体データ識別部の識別結果をIDで表示するID表示部とをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重生体認証装置。
【請求項8】
前記生体データ登録部に登録されているユーザの生体データがバックアップされる生体データ保存データベースをさらに含み、
前記ホストシステムが多重生体認証装置から分離されると、前記生体データ登録部に登録されているユーザの生体データが削除され、
前記ホストシステムが多重生体認証装置に再接続されると、前記生体データ保存データベースにバックアップされているユーザの生体データが前記生体データ登録部に復元されることを特徴とする、請求項に記載の多重生体認証装置。
【請求項9】
前記モジュールまたはハウジングの表面に形成され、前記ユーザの指または手のひらの接近方向を案内する案内ガイドをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多重生体認証装置。
【請求項10】
前記案内ガイドは、視覚または触覚的に指または手のひらの接近方向を案内することを特徴とする、請求項に記載の多重生体認証装置。
【請求項11】
2つ以上の身体的特徴の認証が可能な多重生体認証装置であって、
指紋認証手段と、
前記指紋認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、手のひらを撮影できる手のひら静脈認証手段と、
前記指紋認証手段及び手のひら静脈認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、ユーザの虹彩及び顔画像をそれぞれ撮影する虹彩認証手段及び顔認証手段とを含み、
前記指紋認証手段、手のひら静脈認証手段、虹彩認証手段及び顔認証手段は、1つのハウジングに収納されてモジュール化されている構成において、
前記指紋認証手段は、それぞれ別個の指紋撮影が可能な複数の指紋認証カメラを有し、
前記複数の指紋認証カメラは、隣接して配置され、
前記手のひら静脈認証手段は、前記複数の指紋認証カメラの下側に配置され、
前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、前記手のひら静脈認証手段の一側面に隣接して配置されることを特徴とする
ことを特徴とする、多重生体認証装置。
【請求項12】
前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、隣接して位置し、同一のパンチルトドライバにより駆動されることを特徴とする、請求項11に記載の多重生体認証装置。
【請求項13】
前記ハウジングの全部または一部は、
可視光を一部遮断するカラー光学樹脂(color optical resin)層と、
前記カラー光学樹脂層の上面に設けられるハーフミラーコーティング(half−mirror coating)層と、
前記カラー光学樹脂層の下面に設けられるアンチリフレクションコーティング(anti−reflection coating)層とを含むことを特徴とする、請求項11に記載の多重生体認証装置。
【請求項14】
ホストシステムを有する多重生体認証装置と、前記ホストシステムから識別されたユーザを選別して出入りさせるゲートとを含む、出入システムであって、
身体的特徴の認証が可能なホストシステムが、
ユーザの生体データを取得する生体データ入力部と、
取得した前記生体データと、予め登録されている前記ユーザの生体データを比較して識別を行う生体データ識別部とを含み、
前記生体データ入力部は、前記ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受け、
前記ホストシステムは、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられる構成において、
前記生体データ入力部は、
指紋認証手段と、
前記指紋認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、手のひらを撮影できる手のひら静脈(palm vein)認証手段と、
前記手のひら静脈認証手段の一側において、ユーザの親指と人差し指の間に対応する領域に位置する虹彩認証手段及び顔認証手段とを有し、
前記ホストシステムは、ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受ける生体データ入力部を有することを特徴とする、出入システム。
【請求項15】
前記ホストシステムは、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられることを特徴とする、請求項14に記載の出入システム。
【請求項16】
前記ホストシステムは、指紋データ、虹彩データ、静脈データ、網膜データ、顔画像データ、掌形データのうちの2つ以上の生体データを用いて身体的特徴の認証が可能であることを特徴とする、請求項14に記載の出入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重生体認証装置及びそれを含む出入システムに関し、特に複数の生体認証技術を用いて生体データの認証成功率と速度を向上させた多重生体認証装置及びそれを含む出入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生体認証技術とは、生きている人間の身体的特徴または行動的特徴を自動化した装置で測定して個人識別手段に活用する技術である。
【0003】
このような生体認証は、身体的特徴の認証と行動的特徴の認証に分けられる。身体的特徴の認証には、指紋(fingerprint)認証、顔(face)認証、虹彩(iris)認証、静脈(vein)認証、網膜(retina)認証、掌形(hand geometry)認証などがあり、行動的特徴の認証には、音声認証、歩行認証、署名認証などがある。
【0004】
近年では、生体認証の正確度を向上させるために、身体的特徴の認証と行動的特徴の認証を複合して活用することもある。
【0005】
このような生体認証のうち身体的特徴の認証は、比較的以前から開発が行われており、金融、出入管理、医療福祉、公共、検疫、エンターテイメントなどの様々な分野で既に商用化されてセキュリティ技術として用いられている。
【0006】
しかしながら、身体的特徴の認証に属する指紋認証、顔認証、虹彩認証、手のひら静脈(palm vein)認証などが個別に認証システムに適用される場合、次のような利点及び欠点がある。
【0007】
まず、指紋認証は、高い認証率や1秒以内の速い検証速度などの利点がある。しかしながら、指紋が損傷した場合や、指にケガをしたり、包帯を巻いている場合に、指紋認証が難しいという欠点がある。
【0008】
顔認証は、ユーザがカメラを用いる違和感が少なく、判読のために自ずと提出することになるユーザの写真により事後追跡が行えるという利点がある。しかしながら、顔認証は、照明や映像の角度に影響されるという欠点がある。また、変装をした場合や、月日の経過により顔が変化したり、成形手術をした場合に、顔認証が難しいという欠点がある。
【0009】
虹彩認証は、統計学的にDNA分析よりも正確性が高く、複製がほぼ不可能であり、眼鏡を着用していても認証できるという利点がある。また、虹彩は、外傷や非常にまれな疾病による場合を除いて、一生の間ほとんど変化しないという利点もある。しかしながら、虹彩認証は、認証方法によっては先入観で違和感を持つことがあり、サークルレンズを着用すると認証が難しく、システム構築コストが高価であるという欠点がある。
【0010】
手のひら静脈認証は、指紋や指のない人も用いることができ、静脈が人体の内部にあるので外傷や老化による変形の可能性が少なく、複製がほぼ不可能であるという利点がある。しかしながら、手の甲の皮膚の背景から静脈が分布した部分を抽出することが容易ではなく、システム構築時にハードウェアの構成が複雑なために小型化が難しく、構築コストが高価であるという欠点がある。
【0011】
このような利点及び欠点により、認証システムに各生体認証方法を適用することは完璧であるとはいえない。すなわち、1つの生体特徴だけでは、高い性能と信頼性を有するシステムを実現することは困難である。
【0012】
よって、複数の生体特徴を総合的に認識し、事前登録されているユーザであるか否かを認証できるようにするシステムが求められている。また、このようなシステムを用いることにより発生し得る問題、例えば、システムが複雑になってユーザに不便を及ぼすなどの問題を事前に解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、個別の生体認証技術を融合して同時処理が可能な多重生体認証装置及びそれを含む出入システムを提供することを技術的課題とする。
【0014】
また、本発明は、ユーザ生体情報の登録または識別過程において発生し得る時間の浪費、不便、心理的違和感などの問題を解決できる多重生体認証装置及びそれを含む出入システムを提供することを他の技術的課題とする。
【0015】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した技術的課題に限定されるものではなく、言及していない他の技術的課題は、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題を達成するために、本発明の一実施形態は、2つ以上の身体的特徴の認証が可能なホストシステムを含む多重生体認証装置であって、前記ホストシステムは、ユーザの生体データを取得する生体データ入力部と、取得した前記生体データと、予め登録されている前記ユーザの生体データを比較して識別を行う生体データ識別部とを含み、前記生体データ入力部は、前記ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受け、前記ホストシステムは、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられることを特徴とする多重生体認証装置を提供する。
【0017】
本実施形態において、前記生体データは、指紋データ、虹彩データ、静脈データ、網膜データ、顔画像データ、掌形データの少なくとも2つであってもよい。
【0018】
本実施形態において、前記生体データ入力部は、前記ユーザが前記多重生体認証装置から離隔した位置から、前記多重生体認証装置に近接する位置に接近しながら眺めると、前記ユーザの身体から複数の生体データの入力を受けてもよい。
【0019】
本実施形態において、前記生体データ入力部は、指紋認証手段と、前記指紋認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、手のひらを撮影できる手のひら静脈(palm vein)認証手段と、前記手のひら静脈認証手段の一側において、ユーザの親指と人差し指の間に対応する領域に位置する虹彩認証手段及び顔認証手段とを有してもよい。
【0020】
本実施形態において、前記指紋認証手段は、各指紋データを取得する複数の指紋認証カメラを有し、複数の指紋認証カメラのうち第1の指紋認証カメラは、親指を除く他の指のうち所定の数の指の指紋を撮影し、複数の指紋認証カメラのうち第2の指紋認証カメラは、親指を除く他の指のうち前記第1の指紋認証カメラが撮影できない指の指紋を撮影してもよい。
【0021】
本実施形態において、前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、パンチルト(pan−tilt)ドライバにより駆動されてもよい。
【0022】
本実施形態において、前記生体データ識別部は、取得した2つ以上の前記生体データを同時に識別してもよい。
【0023】
本実施形態において、前記ホストシステムは、前記ユーザの生体データが予め登録されている生体データ登録部と、前記生体データ識別部の識別結果をIDで表示するID表示部とをさらに含んでもよい。
【0024】
本実施形態において、前記生体データ登録部に登録されているユーザの生体データがバックアップされる生体データ保存データベースをさらに含み、前記ホストシステムが多重生体認証装置から分離されると、前記生体データ登録部に登録されているユーザの生体データが削除され、前記ホストシステムが多重生体認証装置に再接続されると、前記生体データ保存データベースにバックアップされているユーザの生体データが前記生体データ登録部に復元されてもよい。
【0025】
本実施形態において、前記モジュールまたはハウジングの表面に形成され、前記ユーザの指または手のひらの接近方向を案内する案内ガイドをさらに含んでもよい。
【0026】
本実施形態において、前記案内ガイドは、視覚または触覚的に指または手のひらの接近方向を案内してもよい。
【0027】
前記技術的課題を達成するために、本発明の他の実施形態は、2つ以上の身体的特徴の認証が可能な多重生体認証装置であって、指紋認証手段と、前記指紋認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、手のひらを撮影できる手のひら静脈認証手段と、前記指紋認証手段及び手のひら静脈認証手段から所定の間隔をおいて離隔して位置し、ユーザの虹彩及び顔画像をそれぞれ撮影する虹彩認証手段及び顔認証手段とを含み、前記指紋認証手段、手のひら静脈認証手段、虹彩認証手段及び顔認証手段は、1つのハウジングに収納されてモジュール化されていることを特徴とする多重生体認証装置を提供する。
【0028】
本実施形態において、前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、隣接して位置し、同一のパンチルトドライバにより駆動されてもよい。
【0029】
本実施形態において、前記指紋認証手段は、それぞれ別個の指紋撮影が可能な複数の指紋認証カメラを有してもよい。
【0030】
本実施形態において、前記複数の指紋認証カメラは、隣接して配置され、前記手のひら静脈認証手段は、前記複数の指紋認証カメラの下側に配置され、前記虹彩認証手段及び前記顔認証手段は、前記手のひら静脈認証手段の一側面に隣接して配置されてもよい。
【0031】
本実施形態において、前記ハウジングの全部または一部は、可視光を一部遮断するカラー光学樹脂(color optical resin)層と、前記カラー光学樹脂層の上面に設けられるハーフミラーコーティング(half−mirror coating)層と、前記カラー光学樹脂層の下面に設けられるアンチリフレクションコーティング(anti−reflection coating)層とを含んでもよい。
【0032】
前記技術的課題を達成するために、本発明のさらに他の実施形態は、ホストシステムを有する多重生体認証装置と、前記ホストシステムから識別されたユーザを選別して出入りさせるゲートとを含む出入システムであって、前記ホストシステムは、ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受ける生体データ入力部を有することを特徴とする出入システムを提供する。
【0033】
本実施形態において、前記ホストシステムは、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられてもよい。
【0034】
本実施形態において、前記ホストシステムは、指紋データ、虹彩データ、静脈データ、網膜データ、顔画像データ、掌形データのうちの2つ以上の生体データを用いて身体的特徴の認証が可能であってもよい。
【0035】
前記技術的課題を達成するために、本発明のさらに他の実施形態は、2つ以上の身体的特徴の認証が可能な多重生体認証装置であって、指紋認証手段、手のひら静脈認証手段、虹彩認証手段及び顔認証手段のうちの2つ以上の手段を含み、前記2つ以上の手段は、1つのハウジングに収納されてモジュール化されており、前記ハウジングは、ユーザから生体情報を受信する側に配置される上部部材と、前記上部部材と直接または他の部材を介して間接的に結合する下部部材とを含み、前記上部部材は、可視光を一部遮断するカラー光学樹脂(color optical resin)層と、前記カラー光学樹脂層の上面に設けられるハーフミラーコーティング(half−mirror coating)層と、前記カラー光学樹脂層の下面に設けられる第1のアンチリフレクションコーティング(anti−reflection coating)層とを含むことを特徴とする多重生体認証装置を提供する。
【0036】
本実施形態において、前記上部部材の外側から前記上部部材を通過して前記上部部材の内側に入射する可視光の入射量aと、前記上部部材の内側から前記上部部材により反射して前記上部部材の内側に入射する可視光の反射量bの比(b/a)は、30%以下であってもよい。
【0037】
本実施形態において、前記上部部材は、前記カラー光学樹脂層と前記ハーフミラーコーティング層間に設けられる第2のアンチリフレクションコーティング層をさらに含んでもよい。
【0038】
本実施形態において、前記ハーフミラーコーティング層の上面に硬化コーティング層または指紋防止コーティング層がさらに設けられてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施形態は、独立した生体認証技術を融合することにより、複数の生体認証及び識別を同時に行うことのできる多重生体認証装置及びそれを含む出入システムを提供することができる。また、審美的に優れ、ユーザに優しいユーザインタフェースをもたらす多重生体認証装置及びそれを含む出入システムを提供することができる。
【0040】
本発明の実施形態によれば、生体データの登録及び識別過程における時間の浪費や不便を減らし、生体認証過程における心理的違和感を減らすことができる。特に、生体情報認証率が高く、かつその内部装置がユーザには見えないのでユーザの違和感や不快感が低減した多重生体認証装置を提供することができる。
【0041】
本発明の効果は、これらに限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載されている発明の構成から推論できるあらゆる効果が含まれるものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】ユーザがゲートを通過するために多重生体認証装置に接近して認証が行われている状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による多重生体認証装置におけるホストシステムの構成図である。
図3】本発明の一実施形態による多重生体認証装置の分解斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による多重生体認証装置の結合斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による多重生体認証装置のハウジングの概略断面図である。
図6図5のハウジングにおける光の入射及び反射を示す説明図である。
図7図5のハウジングにコーティング層が追加された状態を示す概略断面図である。
図8】本発明の他の実施形態による多重生体認証装置の結合斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して本発明について説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現され得るので、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面において、本発明を明確に説明するために説明に関係のない部分は省略し、明細書全体を通して類似の部分には類似の符号を付した。
【0044】
明細書全体を通して、ある一部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているという場合、それには「直接連結」されているものだけでなく、その間にさらに他の部材を介して「間接的に連結」されているものも含まれる。また、ある一部分がある構成要素を「含む」という場合、それは特に断らない限り他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味するものである。
【0045】
本発明に用いられる用語は、単に特定の実施形態について説明するために用いられるものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現には、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本発明における「含む」、「有する」などの用語は、明細書に記載されている特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらの組み合わせが存在することを示すためのものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解すべきである。
【0046】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、説明の便宜のために、ゲート(出入セキュリティゲート)を通過するために用いられる多重生体認証装置について説明するが、これに限定されるものではなく、セキュリティに関するあらゆるシステムに適用することができる。
【0047】
図1は、ユーザがゲートを通過するために多重生体認証装置に接近して認証が行われている状態を示す図である。ここで、多重生体認証装置100は、2つ以上の身体的特徴の認証が可能なホストシステムを含む装置であり、それについての詳細は後述する。
【0048】
図1に示すように、本発明による多重生体認証装置100は、ユーザ1の身体が非接触状態で接近すると、ユーザ1の識別を行うことのできる装置である。また、ユーザ1が外部から非接触状態で接近しながら多重生体認証装置100を眺めると、ユーザ1の識別が行われる。
【0049】
多重生体認証装置100によるユーザ認証及び識別過程を通過すると、ユーザ1はゲート700を通過することができる。ゲート700は、スイング(swing)ドア、スライディングドアなどの様々な形態で実現され、その構造及び形状は特に限定されるものではない。図1に示す案内ガイド180については後述する。
【0050】
本発明において、ユーザの身体が「非接触状態で接近」するとは、ユーザの身体、例えば指や手のひら、または顔が多重生体認証装置100から離隔した位置から、多重生体認証装置100に近接する位置に接近するものの、ユーザの身体が多重生体認証装置100に接触していないことを意味する。すなわち、本発明による多重生体認証装置100が提供するユーザエクスペリエンス(user experience)には、認証や識別を行うためにユーザの身体を多重生体認証装置100に必ず接触させたり、ユーザの指や手のひらをスロット内で回転(swing)させたりする動作が含まれない。
【0051】
ユーザ1がゲート700を通過するためには、ユーザ1が多重生体認証装置100によりユーザ自身であると認証されなければならない。そのために、ユーザ1は、自分の生体情報を多重生体認証装置100に提供し、多重生体認証装置100は、ユーザ1から取得した生体データを予め登録されているユーザ1の生体データと比較して識別を行う。
【0052】
ユーザ1は、多重生体認証装置100に自分の生体情報を提供するために、例えば自分の指または手のひらを多重生体認証装置100に接近させながら多重生体認証装置100を眺める。すなわち、ユーザ1がこのような行為を行う間に、多重生体認証装置100内に装着されているホストシステム1000の生体データ入力部1100は、ユーザ1の生体データを取得する。ホストシステム1000については、図2を参照してより詳細に説明するので、ここではその機能のみ概略的に説明する。
【0053】
ホストシステム1000の生体データ入力部1100は、外部から接近してくるユーザ1の指または手のひらから生体データ(指紋データまたは手のひら静脈(palm vein)データ)を取得することができる。また、生体データ入力部1100は、外部から接近しながら眺めるユーザ1の虹彩または顔から生体データ(虹彩データまたは顔画像データ)を取得することができる。
【0054】
すなわち、生体データ入力部1100は、ユーザ1の生体データのうちの2つ以上を取得することができる。例えば、生体データ入力部1100は、指紋データ、静脈データ(例えば、手のひら静脈データ)、虹彩データ及び顔画像データのうちの2つ以上を取得することができる。
【0055】
通常、ユーザ1の生体データを取得するのにかかる時間は、顔認証が最も速く、次に虹彩認証または指紋認証が中程度であり、静脈認証が最も遅い。しかしながら、このように各生体データを取得するのにかかる時間の差は非常に小さいので、ユーザ1は、各生体データがほぼ同時に認証されると感じる。
【0056】
一方、ホストシステム1000の生体データ識別部1300は、前述したように取得したユーザ1の生体データと、予め登録されているユーザ1の生体データを比較して識別を行う。ここで、生体データ識別部1300は、取得した2つ以上の生体データを同時に識別することができる。当然ながら、予め登録されているユーザ1の各生体データの種類や量によって識別にかかる時間に差が生じる。また、生体データ識別部1300は、各生体データのうち先に識別が完了した生体データからセキュリティ管理者が確認できるように、ディスプレイなどによって外部に表示することもできる。
【0057】
多重生体認証装置100は、複数の生体データの入力を受けるので、様々な出入許容条件を設定することができる。例えば、2つ以上の生体データのうち先に認証及び識別が完了したいずれかの生体データに基づいて出入を許容するようにしてもよい。この場合、出入を速く許容することができる。
【0058】
それとは異なり、2つ以上の生体データの全ての認証及び識別が完了してから出入を許容するようにしてもよい。この場合、セキュリティ条件が強化され、誤認証による出入許容やセキュリティ事故の確率が低くなる。
【0059】
前述した2つのケースを適宜組み合わせた出入許容条件の設定も可能である。例えば、データの正確性、安定性、セキュリティ性が高い静脈(手のひら静脈)や虹彩による認証及び識別が完了した場合は、それらの1つの生体データのみに基づいて出入を許容するようにしてもよく、それとは異なり、データの正確性、安定性が比較的低い顔画像による認証及び識別が完了した場合は、他の生体データ、例えば指紋や虹彩による認証/識別も共に要求し、セキュリティ性を向上させる方法も可能である。それ以外にも、セキュリティ要求レベルや識別速度などを考慮して、様々な出入許容条件を設定することができる。
【0060】
次に、本発明の実施形態によるホストシステム1000の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態による多重生体認証装置におけるホストシステムの構成図である。
【0061】
図2に示すように、本発明による多重生体認証装置100のホストシステム1000は、生体データ入力部1100と、生体データ登録部1200と、生体データ識別部1300とを含む。また、ホストシステム1000は、ID表示部1400と、制御部1500とをさらに含む。
【0062】
生体データ入力部1100は、ユーザ1の生体データを取得する。生体データは、例えば指紋データ、虹彩データ、静脈データ、網膜データ、顔画像データまたは掌形データであり、生体データ入力部1100には、前記生体データのうちの2つ以上が入力される。
【0063】
生体データ入力部1100は、顔認証手段1110と、虹彩認証手段1120と、指紋認証手段1130と、手のひら静脈認証手段1140とを有する。
【0064】
指紋認証手段1130は、物理的に多重生体認証装置100の上面上側に位置する。手のひら静脈認証手段1140は、指紋認証手段1130から所定の間隔をおいて離隔して位置する。また、虹彩認証手段1120及び顔認証手段1110は、手のひら静脈認証手段1140の一側において、ユーザの親指と人差し指の間に対応する領域に位置する。
【0065】
さらに、指紋認証手段1130は、各指紋データを取得する複数の指紋認証カメラを有し、それら複数の指紋認証カメラは、隣接して配置される。手のひら静脈認証手段1140は、複数の指紋認証カメラの下側に配置され、虹彩認証手段1120及び顔認証手段1110は、手のひら静脈認証手段1140の一側面に隣接して配置される。これについては図3に示すが、詳細は後述する。
【0066】
顔認証手段1110は、顔画像データを認識するものであり、例えば、図3に示す顔認証カメラ400により撮影された画像データを認識する手段である。すなわち、顔認証手段1110は、顔認証カメラ400自体であってもよく、それとは異なり、顔認証カメラ400を含むモジュールであってもよい。例えば、顔認証手段1110は、顔認証カメラ400と、その顔認証カメラ400により撮影された画像データを処理するプロセッサ(図示せず)とを含むモジュールであってもよい。
【0067】
虹彩認証手段1120は、虹彩データを認識するものであり、例えば、図3に示す虹彩認証カメラ500により撮影された虹彩データを認識する手段である。すなわち、虹彩認証手段1120は、虹彩認証カメラ500自体であってもよく、それとは異なり、虹彩認証カメラ500を含むモジュールであってもよい。例えば、虹彩認証手段1120は、虹彩認証カメラ500と、その虹彩認証カメラ500により撮影された画像データを処理するプロセッサ(図示せず)とを含むモジュールであってもよい。
【0068】
指紋認証手段1130は、指紋データを認識するものであり、例えば、図3に示す複数の指紋認証カメラ200により撮影された指紋データを認識する手段である。すなわち、指紋認証手段1130は、各指紋データを取得する複数の指紋認証カメラ200であってもよく、それとは異なり、複数の指紋認証カメラ200を含むモジュールであってもよい。例えば、指紋認証手段1130は、指紋認証カメラ200と、その指紋認証カメラ200により撮影された画像データを処理するプロセッサ(図示せず)とを含むモジュールであってもよい。
【0069】
手のひら静脈認証手段1140は、手のひら静脈データを認識するものであり、例えば、図3に示す手のひら静脈認証カメラ300により撮影された手のひら静脈データを認識する手段である。すなわち、手のひら静脈認証手段1140は、手のひら静脈認証カメラ300自体であってもよく、それとは異なり、手のひら静脈認証カメラ300を含むモジュールであってもよい。例えば、手のひら静脈認証手段1140は、手のひら静脈認証カメラ300と、その手のひら静脈認証カメラ300により撮影された画像データを処理するプロセッサ(図示せず)とを含むモジュールであってもよい。
【0070】
本実施形態においては、説明の便宜のために、生体データ入力部1100が顔認証手段1110と、虹彩認証手段1120と、指紋認証手段1130と、手のひら静脈認証手段1140とを含むものについて説明するが、これに限定されるものではなく、生体データ入力部1100が他の生体認証手段を有してもよい。例えば、生体データ入力部1100は、指静脈認証手段、網膜認証手段または掌形認証手段を有してもよい。
【0071】
また、図2に示すように、生体データ登録部1200には、ユーザ1の生体データが予め登録されている。
【0072】
生体データ識別部1300は、生体データ入力部1100から取得した生体データと、生体データ登録部1200に予め登録されているユーザ1の生体データを比較して識別を行う。
【0073】
ID表示部1400は、生体データ識別部1300が識別したユーザ1の生体データに対する識別結果をIDで表示する。このようなID表示部1400の識別結果は、セキュリティ管理者またはユーザ1が確認する。
【0074】
制御部1500は、生体データ入力部1100、生体データ登録部1200、生体データ識別部1300及びID表示部1400に接続されており、これらが各動作を行うように指示する役割を果たす。
【0075】
以下、本発明による多重生体認証装置100を用いた生体データの登録、認証及び識別過程について説明する。
【0076】
まず、ユーザまたは管理者は、多重生体認証装置100にユーザ1の生体データを登録しなければならない。ユーザ1の生体データ登録は、基本的にユーザ1の特徴を抽出して保存する行為である。このようにして取得したユーザ1の全ての生体データは、生体データ登録部1200に保存される。生体データ登録部1200に登録されているユーザ1の全ての生体データは、データの保存のために、生体データ保存データベース2000にバックアップされる。多重生体認証装置100のホストシステム1000と生体データ保存データベース2000は、有線または無線で接続される。生体データ保存データベース2000についての詳細は後述する。
【0077】
次に、ユーザ1がゲートを通過するためには、ユーザ本人であることを証明しなければならない。そのために、ユーザ1は生体データ入力部1100に自分の生体データを入力する。
【0078】
生体データ入力部1100にユーザ1の生体データが入力されると、生体データ識別部1300は、入力されたユーザ1の生体データと、生体データ登録部1200に登録されているユーザ1の生体データを比較してユーザ本人かどうかを識別する。ここで、生体データ識別部1300は、1対1マッチングにより本人であることを確認する認証(verification)を行うこともでき、1対Nマッチングにより大勢の人の中からユーザ1を探し出す識別(identification)を行うこともできる。すなわち、厳密には認証と識別は別個のものであり、応用領域によって選択的に用いられるものである。しかしながら、本発明における「認証」または「識別」とは、生体データを用いて本人であることを確認するか、または探し出す過程をまとめて意味するものであり、広義に解釈されるものである。ただし、本実施形態においては、生体データ識別部1300が1人のユーザと複数のユーザをマッチングする1対Nマッチングにより識別を行うものとして説明した。
【0079】
生体データ登録部1200に保存されているデータは、ユーザ1の複数の生体データの全てを登録したデータであり、生体データ入力部1100には、ユーザ1の複数の生体データのうち所定の数以上のデータが入力される。
【0080】
より詳細には、生体データ入力部1100からユーザ1の生体データが入力されると、生体データ識別部1300は、この生体データと、生体データ登録部1200に登録されている複数のユーザの生体データを識別する。ここで、生体データ入力部1100に入力されるユーザ1の生体データは、複数の生体データである。すなわち、ユーザ1の生体データは、虹彩データ、顔画像データ、指紋データ及び手のひら静脈データのうちの2つ以上である。よって、生体データ識別部1300は、生体データ入力部1100に入力されるユーザ1の生体データの数に応じて、生体データ登録部1200に登録されている複数の生体データとそれぞれ識別を行う。
【0081】
例えば、生体データ入力部1100に入力されるユーザ1の生体データが虹彩データまたは指紋データである場合、生体データ識別部1300は、生体データ登録部1200に登録されている複数のユーザの虹彩データまたは指紋データを用いてそれぞれ識別を行う。当然ながら、設定によっては、生体データ入力部1100に入力されるユーザ1の生体データが1つまたは3つ以上である場合、生体データ識別部1300は、入力されるユーザ1の生体データの数に合わせて、生体データ登録部1200に登録されている複数の生体データとそれぞれ識別を行う。
【0082】
このような識別の実行結果は、本ホストシステム1000のID表示部1400によって表示される。このID表示部1400は、ユーザ1の複数の生体データのうち完了した生体データの識別結果から順に表示する。
【0083】
例えば、生体データ識別部1300が虹彩データ、顔画像データ及び指紋データの識別を行うと仮定する。ここで、生体データの識別が顔画像データ、指紋データ、虹彩データの順に完了した場合、ID表示部1400は、顔画像データ、指紋データ、虹彩データの順に識別結果を表示する。
【0084】
一方、前述した3つの識別結果(虹彩、顔、指紋)の全ては成功せずに1つまたは2つだけ成功したとしても、設定によってはユーザ1の識別に成功したと表示するようにしてもよい。また、3つの識別結果が全て成功しないか、または3つの識別結果のうち一部の識別に成功しなかった場合、設定によってはユーザ1の識別に失敗したと表示するようにしてもよい。このように様々な出入条件を設定できることは前述した通りである。
【0085】
また、図2に示すように、本実施形態によるホストシステム1000は、生体データ登録部1200に登録されているデータがバックアップされる生体データ保存データベース2000をさらに含んでもよい。人為的な過失や、ハードウェアの不具合、ソフトウェアの不具合、盗難、コンピュータウイルス、サイバーテロ、災害などの問題が生じた場合、生体データ登録部1200に登録されているユーザ1の生体情報が損失することがある。よって、生体データ登録部1200のデータは、生体データ保存データベース2000に定期的にバックアップされるように設定する。
【0086】
このように生体データ登録部1200のデータがバックアップされる生体データ保存データベース2000には、タンパープロテクション(tamper protection)機能が用いられる。すなわち、ホストシステム1000が多重生体認証装置100から分離されると、生体データ登録部1200に登録されているデータが全て削除される。逆に、ホストシステム1000が前記コントローラに再接続されると、生体データ保存データベース2000にバックアップされていたデータが生体データ登録部1200に復元される。これは、ホストシステム1000がゲート700のコントローラから分離されるか、あるいは再接続される場合も同様に適用される。
【0087】
よって、本発明によるホストシステム1000を含む多重生体認証装置100が盗難などの理由で紛失しても、個人情報である生体データの流失を防止することができる。すなわち、本発明による多重生体認証装置100の内部に存在するホストシステム1000が多重生体認証装置100から分離されるか、またはゲート700のコントローラから分離されると、生体データ登録部1200に登録されているデータが全て削除されるので、ユーザの生体データが流出するという問題を事前に防止することができる。また、分離された多重生体認証装置100のホストシステム1000が再びゲート700のコントローラに接続されると、生体データ保存データベース2000にバックアップされていたデータが全て生体データ登録部1200に復元されるので、過失または修理、管理などのために多重生体認証装置100をゲート700から分離した後で再接続する場合も、生体データを再入力する手間が省ける。
【0088】
次に、図面を参照して、本発明による多重生体認証装置の具体的な実施形態について説明する。図3は、本発明の一実施形態による多重生体認証装置の分解斜視図であり、図4は、本発明の一実施形態による多重生体認証装置の結合斜視図である。
【0089】
図面には、内部が中空であり、球状のハウジングを有する多重生体認証装置100を示す。しかしながら、本発明による多重生体認証装置100は、球状のハウジングに限定されるものではなく、様々な形状のハウジングを有する。
【0090】
本発明による多重生体認証装置100またはホストシステム1000は、1つのモジュールまたはハウジングに収納されるように備えられる。ここで、「1つのモジュールまたはハウジングに収納」されるとは、複数の生体データを認識する手段がそれぞれ別個のモジュールまたはハウジングに収納され、生体データの認証がそれぞれ別個の装置で行われるか、あるいは生体データの認証手段の設定や位置調整が個別に行われるのではないことを意味する。すなわち、複数の生体データを認識する手段が1つの装置内に設けられてモジュール化されていることを意味する。ここで、モジュールまたはハウジングは、一体型に設けられてもよく、それとは異なり、複数の外被(または部材)が結合されたものであってもよい。
【0091】
換言すると、指紋認証手段、手のひら静脈認証手段、虹彩認証手段及び顔認証手段は、1つのハウジングに収納されてモジュール化されてもよく、その技術的意味は前述した通りである。
【0092】
図3に示すように、本発明による多重生体認証装置100は、6つの外被が結合されて形成される。すなわち、多重生体認証装置100の外被は、前面部材110、背面部材120、両側に位置する2つの側面部材130、上部部材140及び下部部材150からなる。このような6つの部材を結合することにより、内部が中空の球状のハウジングが設けられる。
【0093】
2つの側面部材130は、背面部材120から着脱可能に設置される。システム管理者は、側面部材130を開放することにより、多重生体認証装置100の内部でのホストシステム1000または生体認証モジュールの装着やメインテナンスを容易に行うことができる。
【0094】
上部部材140は、ユーザの利便性(接近性)を考慮して、垂直方向から所定の角度で傾いた領域に取り付けられる。よって、ユーザ1が指または手のひらを多重生体認証装置100に向かって接近させる際に、より楽な姿勢を維持することができる。また、上部部材140は、ハーフミラー(half mirror)で形成される。上部部材140の構造については後述する。
【0095】
下部部材150は、中心部位に第1の貫通孔151を有する。この第1の貫通孔151は、多重生体認証装置100とゲート700のコントローラを接続するために設けられる。前面部材110及び背面部材120は、全体的に球状のハウジング形状を示す。下部部材150を除く前面部材110、背面部材120、両側面部材130、上部部材140は、リング状の固定部材160によって固定される。
【0096】
また、垂直方向から所定の角度で傾いた領域に位置する上部部材140の一側には、複数の第2の貫通孔141、142が設けられる。このような複数の第2の貫通孔141、142には、それぞれ指紋認証カメラ200が挿入される。複数の第2の貫通孔141、142は、第2−1の貫通孔141と、第2−2の貫通孔142とからなる。第2−1の貫通孔141に挿入される第1の指紋認証カメラ210は、親指を除く他の指のうち所定の数の指の指紋を撮影し、第2−2の貫通孔142に挿入される第2の指紋認証カメラ220は、親指を除く他の指のうち第1の指紋認証カメラ210が撮影できない指の指紋を撮影する。
【0097】
例えば、第1の指紋認証カメラ210がユーザ1の第2指の指紋、第3指の指紋及び第4指の指紋を撮影する場合、第2の指紋認証カメラ220は、ユーザ1の第5指の指紋を撮影する。それとは異なり、第1の指紋認証カメラ210がユーザ1の第2指の指紋だけ撮影し、第2の指紋認証カメラ220がユーザ1の第3指、第4指、第5指の指紋を撮影するようにしてもよい。あるいは、第1の指紋認証カメラ210と第2の指紋認証カメラ220がユーザ1の指紋をそれぞれ2つずつ撮影するようにしてもよい。すなわち、指紋認証カメラ200がユーザ1の親指を除く残りの4本の指の指紋を同時に撮影するようにしてもよい。ここで、指紋認証カメラ200によるユーザ1の指紋の撮影は、ユーザ1の指が多重生体認証装置100に接触しない非接触(touchless)方式で行われる。同様に、手のひら静脈認証カメラ300によるユーザ1の手のひら静脈データの撮影も、ユーザ1の手のひらが多重生体認証装置100に接触しない非接触方式で行われる。
【0098】
ユーザが外部から上部部材140を見る方向を基準に、指紋認証カメラ200の下部には、所定の間隔をおいて手のひら静脈認証カメラ300が位置する。自分の生体データを多重生体認証装置100の生体データ入力部1100に入力させるために、ユーザ1は自分の手のひらを多重生体認証装置100に接近させるが、ユーザ1が自分の指を多重生体認証装置100の指紋認証カメラ200に接近させると、ユーザ1の手のひらは手のひら静脈認証カメラ300に対向する位置に自動的に整列される。また、手のひら静脈認証カメラ300の一側の上部と下部には、虹彩認証カメラ500と顔認証カメラ400がそれぞれ位置する。虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400は、ユーザ1の親指と人差し指の間でユーザ1の虹彩と顔をそれぞれ撮影する。本明細書においては、虹彩認証カメラ500が顔認証カメラ400の上方に位置するが、これに限定されるものではなく、顔認証カメラ400と虹彩認証カメラ500の位置が交換されてもよい。一方、虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400の代わりに他の生体認証カメラ(例えば、網膜認証カメラ)が位置するようにしてもよい。
【0099】
虹彩認証カメラ500と顔認証カメラ400は、パンチルト(pan−tilt)ドライバ600によって駆動される。すなわち、虹彩認証カメラ500と顔認証カメラ400は、パンチルトドライバ600により駆動されて左右方向または上下方向に移動または回転しながら、ユーザ1の虹彩または顔をそれぞれ撮影する。このような物理的移動により、パンチルトドライバ600が機械的な(非光学的な)ズームイン及びズームアウト機能を実現することができるので、虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400は、ユーザ1の虹彩の大きさまたは顔の大きさを調整するか、またはフォーカシングして撮影することができる。当然ながら、虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400は、光学的なズームイン及びズームアウト機能を有してもよく、故にパンチルトドライバによる非光学的なズームイン/ズームアウト機能と同時にまたは別個に実現されるようにしてもよい。
【0100】
前述したような構成によれば、ユーザ1は、虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400にユーザ1自身の虹彩または顔をそれぞれ接近させて認証を受ける必要がない。すなわち、パンチルトドライバ600により、虹彩認証カメラ500または顔認証カメラ400は、距離に関係なくユーザ1の虹彩または顔を常に一定の大きさで撮影することができる。また、虹彩認証カメラ500と顔認証カメラ400は、隣接して位置するので、同一のパンチルトドライバ600により駆動される。それとは異なり、図示されていないが、虹彩認証カメラ500と顔認証カメラ400がそれぞれ別個のパンチルトドライバにより個別駆動されるようにしてもよい。
【0101】
上部部材140と固定部材160の間には、リング状の光源170が装着される。このような光源170は、装飾的または審美的効果と共に、ユーザ1の指または手のひらを誘導する機能的効果を有する。
【0102】
図4に示すように、多重生体認証装置100の上部部材140の表面には、案内ガイド180が設けられる。案内ガイド180は、ユーザの指または手のひらの接近方向を案内し、例えば、視覚または触覚的に指または手のひらの接近方向を案内する。
【0103】
本発明の実施形態による多重生体認証装置100は、ユーザ1の指または手のひらが外部から非接触状態で接近するとユーザ1の識別が行われる装置であり、またユーザ1が外部から接近しながら多重生体認証装置100を眺めるとユーザ1の識別が行われる装置である。よって、ユーザ1の指及び手のひらが多重生体認証装置100に容易に接近できなければならない。このような接近案内のために、案内ガイド180が設けられる。
【0104】
案内ガイド180は、例えば、光源により指や手のひらの形が表示されるものであるが、これらの形に限定されるものでないことは言うまでもない。また、案内ガイド180は、透明インキによって表示されるようにしてもよい。
【0105】
他の例として、別の色で手のひらの形を表示するか、あるいは突出部/凹部などの構造を設けてもよい。また、空気排出部を設け、ユーザが風を検知して多重生体認証装置100に接近するように誘導してもよい。
【0106】
以下、ハウジングの断面構造について説明する。図5は、本発明の一実施形態による多重生体認証装置のハウジングの概略断面図であり、図6は、図5のハウジングにおける光の入射及び反射を示す説明図であり、図7は、図5のハウジングにコーティング層が追加された状態を示す概略断面図である。
【0107】
本発明の実施形態において、ハウジングの全部または一部は、カラー光学樹脂(color optical resin)層と、ハーフミラーコーティング(half−mirror coating)層と、アンチリフレクションコーティング(anti−reflection coating)層とを含む多層断面構造からなる。
【0108】
図3に示すように、ハウジングは、例えば、6つの部材が結合されて内部が中空の構造で設けられ、このようなハウジングの一部部材、例えば上部部材140は、前述した多層断面構造からなる。図5に示すように、上部部材140は、可視光を一部遮断するカラー光学樹脂層1401と、このカラー光学樹脂層1401の上面に設けられるハーフミラーコーティング層1402と、カラー光学樹脂層1401の下面に設けられるアンチリフレクションコーティング層1403とを含む。ここで、上面とは、ユーザに接する側を意味する。
【0109】
カラー光学樹脂層1401は、入射する可視光を所定量遮断する機能を有し、樹脂(レジン)基材に着色効果が得られる高分子組成物(顔料)を含ませて硬化させるか、あるいは樹脂基材に着色蒸着する方法で成形を行う。
【0110】
ハーフミラーコーティング層1402は、入射する可視光の一部を反射させる機能を有し、誘電体多層薄膜または金属膜コーティングによって形成される。
【0111】
誘電体多層薄膜は、高誘電率層と低誘電率層を積層することにより成形され、例えば、SiO、SiO、ZrO、TiOなどの誘電体酸化物が挙げられる。金属膜は、例えば、Cr薄膜を蒸着することにより成形され、Cr薄膜の上下面に誘電体薄膜を追加してCr薄膜の保護層の役割を果たすようにしてもよい。
【0112】
ハーフミラーコーティング層1402は、真空蒸着、スパッタ、蒸発コーティング、スピンコーティングなどの方法で形成されるが、特にこれらの製造方法に限定されるものではない。
【0113】
アンチリフレクションコーティング層1403は、上部部材140の内側に反射する可視光を減少させることにより、ハウジングに内蔵された顔認証カメラ400または虹彩認証カメラ500にカメラ自体が映り込むといった副作用を抑制する。
【0114】
アンチリフレクションコーティング層1403は、例えば、SiO、SiO、Si、TiO、ZrO、A1、MgF、Taまたはそれらの混合物からなる誘電体物質の単一層または複合層フィルムで構成されるが、これらの物質に限定されるものではない。
【0115】
上部部材140は、前述したような多層コーティング層を含むので、ユーザには多重生体認証装置100の内部(特に、カメラ)が見えないようにし、心理的違和感や抵抗感が生じないようにすることができると同時に、光量はある程度減少するが、カメラによる生体情報認証率は大幅に減少しないようにすることができる。
【0116】
上部部材140の外側から上部部材140を通過して上部部材140の内側に入射する可視光の入射量(a)と、上部部材140の内側から上部部材140により反射して上部部材140の内側に入射する可視光の反射量(b)の比(b/a)は、30%以下である。入射量と反射量の比(b/a)が30%を超えると、内部反射により、ハウジングに内蔵されたカメラがユーザ(顔や虹彩など)を撮像する際に内部部材(カメラなど)も共に撮像されるので、生体情報が認証されないか、あるいは認証率が低くなるという問題が生じる。
【0117】
図6に示すように、例えば、上部部材140のカラー光学樹脂層1401が50%の可視光減衰率を有し、ハーフミラーコーティング層1402が20%の可視光反射率を有する場合、上部部材140の外部から内側に入射する可視光の入射量aは30%となり、上部部材140の内側から上部部材140により反射する可視光の反射量(b)は3.6%となる(30%×50%×(20%+4%))。この場合、入射量対反射量の比(b/a)は12%である。
【0118】
一方、上部部材140は、前述したコーティング層以外に、追加コーティング層をさらに含んでもよい。図7に示すように、カラー光学樹脂層1401に位置するアンチリフレクションコーティング層を第1のアンチリフレクションコーティング層1403とすると、カラー光学樹脂層1401とハーフミラーコーティング層1402との間に第2のアンチリフレクションコーティング層1404がさらに設けられてもよい。このような第2のアンチリフレクションコーティング層1404により、可視光の内部反射量(b)がさらに減少する。
【0119】
また、ハーフミラーコーティング層1402の上面には、硬化コーティング層1405または指紋防止コーティング層1406がさらに設けられてもよい。
【0120】
一方、前述した実施形態においては、多重生体認証装置100のハウジングが6つの部材からなるものについて説明したが、このような実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、図8に示すように、上部部材140と下部部材150がそれぞれ半球状になっており、これら上部部材140と下部部材150が直接締結されて1つのモジュールまたはハウジング形態を有するようにしてもよい。その他にも様々な構造が可能である。
【0121】
前述した多重生体認証装置を用いて出入システムを実現することができる。本発明による出入システムは、前述したホストシステムを有する多重生体認証装置と、そのホストシステムから識別されたユーザを選別して出入りさせるゲートとを含む。
【0122】
ここで、ゲートは、スイングドアやスライディングドアのようにユーザの出入りを物理的に統制できる手段であり、その構造及び形状が特に限定されるものでないことは前述した通りである。また、ホストシステムは、ユーザの身体が非接触状態で接近すると、当該身体から複数の生体データの入力を受ける生体データ入力部を有するが、その詳細は前述した通りである。
【0123】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形できることを理解するであろう。よって、前述の実施形態はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。例えば、単一型で説明された各構成要素を分散して実施してもよく、同様に分散したものと説明された構成要素を結合された形態に実施してもよい。
【0124】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態も本発明に含まれるものと解釈すべきである。
【実施例】
【0125】
実施例は、前述した発明を実施するための形態に共に記載されている。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、多重生体認証装置に関し、各種認証システムに適用することができ、反復可能性があるので、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8