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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856215
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】視力検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   A61B3/028
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-74622(P2017-74622)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-175021(P2018-175021A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医工連携事業化推進事業、「視機能を評価し機能回復を促す機器の開発・事業化」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】505210115
【氏名又は名称】国立大学法人旭川医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 永
(72)【発明者】
【氏名】石子 智士
(72)【発明者】
【氏名】呂 智子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃敏
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−152568(JP,A)
【文献】 米国特許第06045515(US,A)
【文献】 特開2015−223196(JP,A)
【文献】 特開平06−046992(JP,A)
【文献】 特開平06−254050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視標を呈示する視標呈示手段と、
前記視標呈示手段が呈示した視標に対する被検者の応答を入力する入力手段と、
前記応答の正誤に基づいて、視力値が異なる新視標を選択する選択手段と、
前記新視標を用いて、前記視標呈示手段と前記入力手段と前記選択手段を繰り返し動作させる繰り返し手段と、
複数回の応答の各々の正誤結果を一覧表示する表示手段を備えており、
前記表示手段は、前記視標呈示手段が呈示した視標の視力値ごとに、前記正誤結果を呈示順序に従って表示することを特徴とする視力検査装置。
【請求項2】
前記表示手段は、視力値を一方の軸とし、呈示順序を他方の軸とするグラフ上に、複数回の前記正誤結果を一覧表示する請求項1に記載の視力検査装置。
【請求項3】
前記グラフ上に、前回呈示時の正誤結果と今回呈示時の正誤結果を接続する接続線を重ね表示する請求項2に記載の視力検査装置。
【請求項4】
前記グラフ上に、各正誤結果に対応する視標を重ね表示する請求項2又は3に記載の視力検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は視力検査装置を開示する。特に、被検者の応答の正誤の時系列変化を表示して視力値の決定過程を記録化・正確化する表示装置を備えた視力検査装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
視標(例えばランドルト環)を呈示する視標呈示手段と、呈示した視標に対する被検者の応答(例えば、切れ目が右又は左といった応答)を入力する入力手段を備えた視力検査装置が知られている。その応答が正しいか又は誤っているかによって、次に呈示する新視標を選択し、視標呈示手段によって新指標を呈示すると共に、入力手段と選択手段を繰り返し動作させる視力検査装置も知られている。この種の視力検査装置では、応答が正しければ高い視力値に対応する指標を選択して呈示し、応答が誤っていれば低い視力値に対する視標を選択して呈示する。
【0003】
また、視力値の決定過程を支援するために、正誤の結果を一覧表示する表示装置が開発されている。例えば、特許文献1では、視力値を一方の軸とし、同一視力値に属する視標群を他方の軸に沿って配列したグラフ上に、正誤結果を一覧表示する。
【0004】
また、特許文献2には、実用視力の測定経過を表示する表示装置が開示されている。特許文献2では、測定された通常視力の視力値を表示すると共に、通常視力の視力値に基づいて測定された実用視力の測定経過について、経過時間を一方の軸とし、呈示した視標の視力値を他方の軸に沿って表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−46992号公報
【特許文献2】特開2003−088501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の表示装置は、被検者に呈示された視標の視力値ごとに正誤を一覧表示する。このため、検査者は、呈示された視標の視力値ごとの正誤については把握できる一方、複数の視標の呈示順序を把握することができない。例えば、同一の視力値に属する視標について複数回呈示され、その応答結果に正答と誤答が含まれている場合に、検査開始直後に正答であったのか、検査終了前に正答であったのか等の測定の経過を把握することができない。このため、被検眼の視力値やその他の被検眼の状態を正確に把握するために必要な情報を充分に取得することができない。また、特許文献2の表示装置は、決定された視力値の時間変化を表示するものであり、被検眼の視力値の決定に必要な情報を取得することができない。
【0007】
本明細書は、被検者の応答の正誤の時系列変化を表示して視力値の決定過程を記録化・正確化する視力検査装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する視力検査装置は、視標を呈示する視標呈示手段と、視標呈示手段が呈示した視標に対する被検者の応答を入力する入力手段と、応答の正誤に基づいて、視力値が異なる新視標を選択する選択手段と、新視標を用いて、視標呈示手段と入力手段と選択手段を繰り返し動作させる繰り返し手段と、複数回の応答の各々の正誤結果を一覧表示する表示手段を備えている。表示手段は、視標呈示手段が呈示した視標の視力値ごとに、正誤結果を呈示順序に従って表示する。
【0009】
上記の視力検査装置は、被検者に呈示した視標に対する応答の各々の正誤結果を、視標の視力値ごとに呈示順序に従って表示する。このため、視力値ごとの視標呈示回数や、視力値ごとの正誤の割合を視覚的に把握しやすい。さらに、視力値ごとの応答の正誤結果が、視標の呈示順序に従って表示される。このため、視力値ごとの応答の正誤の順序を視覚的に容易に把握することができ、被検眼の視力値や状態を容易かつ正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る視力検査装置の構成を示すブロック図。
図2】実施例に係る視力検査装置が被検眼の視力値を測定する処理の一例を示すフローチャート。
図3】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、開始視力値入力欄に最初の視標の視力値を入力した状態を示す。
図4】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、最初の視標に対する応答待機状態であることを表示した状態を示す。
図5】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、最初の視標に対する応答結果(正答)を表示した状態を示す。
図6】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、最初の視標に対する応答結果と共に、2回目に呈示される視標に対する応答待機状態であることを表示した状態を示す。
図7】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、先に呈示された視標に対する応答結果と共に、3回目に呈示される視標に対する応答待機状態であることを表示した状態を示す。
図8】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、先に呈示された視標に対する応答結果と共に、4回目に呈示される視標に対する応答待機状態であることを表示した状態を示す。
図9】タッチパネルに表示される表示画面の一例を示す図であって、検査が終了した状態を示す。
図10】タッチパネルに表示される表示画面の他の一例を示す図であって、応答の正誤と共に呈示された視標及び視力値ごとの正答率を表示した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1)本明細書が開示する視力検査装置では、表示手段は、視力値を一方の軸とし、呈示順序を他方の軸とするグラフ上に、複数回の正誤結果を一覧表示してもよい。このような構成によると、視力値ごとの正誤結果をより視覚的に容易に把握することができる。
【0013】
(特徴2)本明細書が開示する視力検査装置では、グラフ上に、前回呈示時の正誤結果と今回呈示時の正誤結果を接続する接続線を重ね表示してもよい。このような構成によると、視力値ごとの視標の呈示順序だけでなく、複数回の正誤結果全体について、視標の呈示順序を容易に把握することができる。このため、視力検査の経過をより容易に把握することができる。なお、前回呈示時の正誤結果と今回呈示時の正誤結果を接続する接続線に代わり、各正誤結果に対応する呈示順序を数字で重ね表示してもよい。また、表示された1つの正誤結果を選択することによって、その正誤結果の前後に応答された正誤結果が把握できるように表示してもよい。
【0014】
(特徴3)本明細書が開示する視力検査装置では、グラフ上に、各正誤結果に対応する視標を重ね表示してもよい。このような構成によると、各正誤結果と視標の種類との関係を視覚的に把握することができる。このため、例えば、被検眼の見えにくい方向を把握することができ、被検眼について視力値以外の他の状態を評価することができる。なお、各正誤結果は、グラフ上に検査回ごとに四角い枠で表示してもよく、視標はその四角い枠内に重ね表示してもよい。
【実施例】
【0015】
以下、本実施例に係る視力検査装置10について説明する。図1に示すように、視力検査装置10は、視標呈示部12と、タッチパネル14と、制御部16を備えている。
【0016】
視標呈示部12は、モニタ(図示省略)を備えており、モニタを被検者に見せることで被検者に対して視標を呈示する。視力測定時には、モニタに表示される視標が被検眼から所定の距離となる位置に、視標呈示部12を配置する。視標呈示部12が呈示する視標としては、ランドルト環が用いられ、呈示されるランドルト環の切れ目方向は、4方向となっている。なお、視標呈示部12の構成については、上記の構成に限定されるものではなく、公知の視力検査装置に用いられているものを用いることができる。例えば、視標呈示部は、筐体内に視標が表示されるように構成されていてもよい。この場合には、視標呈示部は、筐体に設けられる検査窓から被検者(すなわち、被検眼)に対して視標を呈示する。また、本実施例では、視標としてランドルト環が用いられているが、視標呈示部12が呈示する視標の種類は、特に限定されるものではない。例えば、Eチャートやスネレン視標等を用いてもよく、公知の視力検査装置に用いられているものを用いることができる。なお、視標呈示部12は、「視標呈示手段」の一例である。
【0017】
タッチパネル14は、呈示される各視標に対する被検者の応答結果や、視力検査に関する各種の情報を検査者に提供する表示装置であると共に、検査者からの指示や情報を受け付ける入力装置である。図3は、タッチパネル14に表示される表示画面の一例を示している。図3に示すように、タッチパネル14には、呈示視標表示欄32と、開始ボタン34と、終了ボタン36と、開始視力値入力欄38と、決定視力値表示欄40と、応答結果入力ボタン42と、グラフ欄44が表示される。
【0018】
呈示視標表示欄32には、視標呈示部12に呈示されている視標の種類(すなわち、所定の方向(例えば、4方向)のいずれかに切れ目があるランドルト環)とその視力値が表示される。視標呈示部12に呈示される視標が変更されると、呈示視標表示欄32には変更された視標の種類とその視力値が表示される。
【0019】
開始ボタン34を押すと検査が開始され、後述するように、視力検査装置10は、設定された検査終了条件を満たすと検査を終了する。終了ボタン36を押すことによって、検査終了条件を満たす前に検査を終了することができる。
【0020】
開始視力値入力欄38は、開始ボタン34と隣接する位置(図3では、開始ボタン34の右側)に配置されている。開始視力値入力欄38に検査開始時の視力値を入力することによって、最初に呈示する視標の視力値が指示される。開始視力値入力欄38に入力された視力値は、後述する制御部16の記憶部18に記憶される。決定視力値表示欄40は、終了ボタン36と隣接する位置(図3では、終了ボタン36の右側)に配置されている。決定視力値表示欄40には、検査によって決定される被検眼の視力値が表示される。
【0021】
応答結果入力ボタン42には、正答ボタン(図3では、左側に配置される「○」で示されるボタン)と、誤答ボタン(図3では、右側に配置される「×」で示されるボタン)が配置されている。被検者の応答が正答である場合、検査者は正答ボタンを押し、被検者の応答が誤答である場合、検査者は誤答ボタンを押す。応答結果入力ボタン42によって入力された応答結果は、呈示された視標の種類(すなわち、ランドルト環の切れ目方向)及びその視力値と共に、記憶部18に記憶される。
【0022】
グラフ欄44には、被検者の応答結果が棒グラフによって表示される。グラフの横軸は視力値となっており、縦軸は視標が呈示された回数となっている。グラフ欄44には、1回の視標の呈示ごとに所定の大きさの四角(以下、「ボックス」ともいう)を表示し、視力値ごとの応答結果が呈示順に積み上げられて表示される。例えば、視標が呈示されてから被検者の応答結果が入力されるまでの間(以下、「応答待機状態」ともいう)は、呈示された視標の視力値に、ボックスが白色で表示される。そして、被検者の応答が正答であることが入力された場合には、ボックスが白色から緑色に変更され、誤答であることが入力された場合には、ボックスが白色から赤色に変更される。このように、グラフ欄44には、応答待機状態と、正答と、誤答が区別して表示される。なお、グラフ欄44には、応答待機状態と、正答と、誤答が区別されて表示されればよく、表示態様については限定されない。本明細書では、図4図10に示すように、応答待機状態を示す場合にはボックスを白色で図示し、正答を示す場合にはボックスを濃淡の薄いドット(以下、薄いドットともいう)で図示し、誤答を示す場合にはボックスを濃淡の濃いドット(以下、濃いドットともいう)で図示する。
【0023】
なお、本実施例の視力検査装置10はタッチパネル14を備えているが、このような構成に限定されない。応答結果等の表示と入力が可能な構成であればよく、例えば、モニタと入力装置(例えば、マウスやキーボード等)を備えていてもよい。また、本実施例では、被検者の応答については正誤のみを入力しているが、このような構成に限定されない。被検者の応答の正誤を検出可能な構成であればよく、例えば、被検者の回答を入力してもよい。この場合には、入力された回答と正答が一致するか否かを判定することによって、応答の正誤を検出することができる。被検者の回答を入力する例としては、例えば、ジョイスティックを用いてランドルト環の切れ目方向を入力する方法を挙げることができる。また、被検者の回答を入力する場合には、検査者を介することなく、被検者自身が入力してもよい。なお、タッチパネル14は、「入力手段」及び「表示手段」の一例である。
【0024】
制御部16は、例えば、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータによって構成することができる。制御部16には、記憶部18と、視標選択部20が設けられている。記憶部18には、例えば、開始視力値入力欄38に入力された視力値と、呈示された視標とそれに対応する被検者の応答結果と、検査によって決定された被検眼の視力値等が記憶される。また、呈示された視標とそれに対応する被検者の応答結果については、呈示された順序に従い時系列に沿って記憶部18に記憶される。また、記憶部18には、検査終了条件が記憶されている。検査終了条件は、同一の視力値の視標についての誤答率や、同一の視力値の視標において連続して誤答した回数等に基づいて設定することができる。検査終了条件は、タッチパネル14から入力することによって変更することができる。
【0025】
また、制御部16は、コンピュータがプログラムを実行することで、視標選択部20として機能する。視標選択部20は、記憶部18に記憶される、開始視力値入力欄38に入力された視力値や、呈示された視標とそれに対応する被検者の応答結果等の情報に基づいて、視標呈示部12に呈示する視標を選択する。具体的には、視標選択部20は、開始視力値入力欄38に入力された視力値から、最初に呈示する視標を選択する。このとき選択される視標は、視力値については入力された視力値であり、ランドルト環の切れ目方向についてはランダムに選択される。また、視標選択部20は、2回目以降に呈示される視標を、その直前に呈示された視標に対する被検者の応答の正誤に基づいて選択する。例えば、呈示された視標に対する被検者の応答が正答であった場合、その視標の視力値より高い視力値の視標を選択し、呈示された視標に対する被検者の応答が誤答であった場合、その視標の視力値より低い視力値の視標を選択する。いずれの場合も、ランドルト環の切れ目方向はランダムに選択される。なお、視標選択部20は、「選択手段」の一例である。
【0026】
図2図8を参照して、視力検査装置10が被検眼の視力値を測定する処理について説明する。図2は、視力検査装置10が被検眼の視力値を測定する処理の一例を示すフローチャートである。図2に示すように、まず、制御部16は、視標呈示部12に最初の視標を呈示させる(S12)。最初の視標の呈示は、以下の手順で行われる。まず、検査者は、最初に呈示する視標の視力値を開始視力値入力欄38に入力する。例えば、図3に示すように、検査者は開始視力値入力欄38に「0.03」と入力する。開始視力値入力欄38に入力された視力値は、記憶部18に記憶される。次に、検査者は、開始ボタン34を押す。すると、制御部16は、開始視力値入力欄38に入力された視力値の視標を視標呈示部12に呈示する。すなわち、視標呈示部12には、視力値が0.03である視標が呈示される。
【0027】
視標呈示部12に視標が呈示されると、制御部16は、最初の視標に対する応答待機状態であることを示す表示をグラフ欄44に表示する(S14)。図4に示すように、制御部16は、グラフ欄44の「0.03」に応答待機状態を示す白色のボックスを表示させる。また、制御部16は、視標呈示部12が呈示している視標の種類とその視力値を、呈示視標表示欄32に表示する。図4では、呈示視標表示欄32に切れ目方向が左のランドルト環と、その視力値である「0.03」が表示される。
【0028】
次に、制御部16は、最初に呈示された視標に対する被検者の応答を記憶部18に記憶させる(S16)。被検者の応答は、以下の手順で記憶される。視標呈示部12に視標が呈示されると、被検者は呈示された視標に対して応答する。そして、検査者は、被検者の応答が正答であった場合には応答結果入力ボタン42の正答ボタンを押し、誤答であった場合には誤答ボタンを押す。制御部16は、検査者によって入力された応答結果を記憶部18に記憶させる。
【0029】
次に、制御部16は、グラフ欄44に応答結果を表示する(S18)。制御部16は、記憶部18に記憶された最初の視標に対する応答の正誤に基づいて、グラフ欄44の応答待機状態を示す表示を、正答又は誤答を示す表示に変更する。例えば、最初の視標に対する被検者の応答が正答であった場合、図5に示すように、「0.03」に表示される白色のボックスを薄いドットで示すボックスに変更する。
【0030】
次に、制御部16の視標選択部20は、記憶部18に記憶された最初の視標に対する応答の正誤に基づいて、次に呈示する視標(以下、新指標ともいう)を選択する(S20)。ステップS16で記憶部18に記憶された最初の視標に対する被検者の応答が正答であった場合、視標選択部20は、最初の視標より視力値の高い視標を選択する。一方、ステップS16で記憶部18に記憶された最初の視標に対する被検者の応答が誤答であった場合、視標選択部20は、最初の視標より視力値の低い視標を選択する。図5では、最初に呈示された視標に対する被検者の応答が正答であったため、視標選択部20は、0.03より高い視力値である0.04の視標を選択する。そして、制御部16は、ステップS20で選択された新視標を視標呈示部12に呈示させる(S22)。
【0031】
視標呈示部12に新視標が呈示されると、制御部16は、新視標に対する応答待機状態であることを示す表示と共に、前回の応答結果(すなわち、最初の視標に対する応答結果)を示す表示と新指標の応答待機状態を示す表示を接続する接続線をグラフ欄44に表示する(S24)。図6に示すように、制御部16は、グラフ欄44の「0.04」に応答待機状態を示す白色のボックスを表示する。また、制御部16は、「0.03」に表示される薄いドットで示すボックス(最初の視標に対する応答結果を示す表示)と、「0.04」に表示される白色のボックスを接続する接続線45をグラフ欄44に表示する。さらに、制御部16は、視標呈示部12が呈示している視標の種類とその視力値を、呈示視標表示欄32に表示する。図6では、呈示視標表示欄32に切れ目方向が右のランドルト環と、その視力値である「0.04」が表示される。
【0032】
次に、制御部16は、新指標に対する被検者の応答を記憶部18に記憶させる(S26)。なお、ステップS26の処理は、ステップS16の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。そして、制御部16は、グラフ欄44に新指標に対する被検者の応答結果を表示する(S28)。制御部16は、記憶部18に記憶された新視標に対する応答の正誤に基づいて、グラフ欄44の応答待機状態を示す表示を、正答又は誤答を示す表示に変更する。例えば、新視標に対する被検者の応答が正答であった場合、「0.04」に表示される白色のボックスを薄いドットで示すボックスに変更する(図7参照)。
【0033】
次に、制御部16は、検査開始から複数回呈示された視標に対する被検者の応答結果が、検査終了条件に該当するか否かを判定する(S30)。検査終了条件は、記憶部18に予め記憶されている。被検者の応答結果が検査終了条件に該当しない場合(ステップS30でNOの場合)には、ステップS20に戻り、ステップS20〜ステップS30の処理を繰り返す。一方、被検者の応答結果が検査終了条件に該当する場合(ステップS30でYESの場合)には、制御部16は、決定視力値表示欄40に被検眼の視力値を表示し、視力値の測定を終了する。
【0034】
図6図8を参照して、ステップS20〜ステップS30を繰り返す処理について具体的に説明する。ここでは、検査終了条件を、「同一の視力値について4回以上応答し、かつ、誤答率が60%以上となった場合」とする。
【0035】
2回目に呈示された視標(すなわち、最初の視標に対する応答結果に基づいて、次に呈示される視標)に対する応答が正答であった場合、ステップS30において、制御部16は上記の検査終了条件に該当するか否かを判定する。ここでは、同一の視力値について4回以上応答していないため(図6参照)、制御部16は上記の検査終了条件に該当しないと判定する。そして、ステップS20に戻り、視標選択部20は新指標(3回目に呈示する視標)を選択する。このとき、2回目に呈示された視標に対する被検者の応答が正答であったため、視標選択部20は0.04より高い視力値である0.05の視標を選択し、制御部16は視標呈示部12に新指標を呈示させる。そして、図7に示すように、制御部16は、グラフ欄44の「0.05」に応答待機状態を示す白色のボックスを表示すると共に、「0.04」に表示される薄いドットで示すボックスと、「0.05」に表示される白色のボックスを接続する接続線46を表示する。
【0036】
3回目に呈示する視標に対して被検者が応答し、その応答が誤答であると、制御部16は、図7の白色のボックスを濃いドットで示すボックスに変更する(図8参照)。そして、再びステップS30に進み、制御部16は上記の検査終了条件に該当するか否かを判定する。ここでは、同一の視力値について4回以上応答していないため(図7参照)、制御部16は上記の検査終了条件に該当しないと判定する。そして、再びステップS20に戻り、視標選択部20は新指標(4回目に呈示する視標)を選択する。3回目に呈示された視標に対する被検者の応答は誤答であったため、視標選択部20は0.05より低い視力値である0.04の視標を選択し、制御部16は視標呈示部12に新指標を呈示させる。そして、図8に示すように、制御部16は、グラフ欄44の「0.04」に応答待機状態を示す白色のボックスを、先の応答結果を示す薄いドットで示すボックス(2回目に呈示された視標に対する応答結果)の上に積み上げて表示する。加えて、「0.05」に表示される濃いドットで示すボックスと、「0.04」に積み上げて表示される白色のボックスを接続する接続線47を表示させる。このようにして、ステップS20〜ステップS30の処理を、上記の検査終了条件に該当するまで繰り返す。なお、制御部16は、「繰り返し手段」の一例である。
【0037】
図9は、検査が終了した状態の表示画面の一例である。図9では、グラフ欄44の「0.05」に5回分の応答結果が表示されており、その誤答率が60%となっている。したがって、「同一の視力値について4回以上応答し、かつ、誤答率が60%以上」となったため、制御部16は、決定視力値表示欄40に「0.04」と表示し、検査を終了している。図9に示すように、グラフ欄44には、複数回分(詳細には、13回分)の応答の正誤が視力値ごとに一覧表示されている。このため、複数回の応答結果について、呈示された視標の視力値ごとに、応答回数とその正誤を容易に把握することができる。また、グラフ欄44には、複数回分の応答の正誤が表示されていると共に、各応答結果とその直前の応答結果が接続線によって接続されている。このため、各応答についての正誤とその呈示の順序を視覚的に容易に把握することができる。このため、例えば、同じ視力値の視標を呈示した場合であっても、検査の前半で誤答率が高いのか、検査の後半で誤答率が高いのか等の検査の経過を視覚的に把握し易くすることができる。また、視力値ごとの応答回数が多い場合(棒グラフの高さが高い場合)や、呈示される視標の視力値の幅が大きい場合(グラフの横の広がりが大きい場合)には、検査中の被検眼の視力が不安定であったことが把握できる。このように、視力値ごとの応答の正誤と共に、その呈示の順序を一覧表示することによって、被検眼の視力だけでなく、被検眼の状態を評価することができる。このため、視力検査装置10による被検眼の視力検査結果を、被検眼の状態や病状を評価する一次診断に用いることができる。また、表示画面から視標の呈示順序を把握できることによって、検査後に被検眼の視力値や状態を評価することができる。このため、検査者が同席することなく、被検者自身が応答の回答を入力した場合であっても、検査終了後に検査者が被検眼の状態を正確に評価することができる。なお、本実施例の上記の検査終了条件は一例であり、被検眼の病状や状態等に合わせて条件を設定することができる。
【0038】
なお、本実施例では、タッチパネル14に、呈示された視標に対する応答の正誤と、呈示順序を示す接続線を表示したが、このような構成に限定されない。例えば、図10に示すように、タッチパネル14には、呈示された視標に対する応答の正誤と、呈示順序を示す接続線と共に、呈示された視標の種類を表示してもよい。すなわち、グラフ欄44には、各応答結果と共に、その応答結果に対応する視標を応答結果に重ねて表示してもよい。このように表示することによって、視力値ごとの応答の正誤と共に、呈示された視標の種類(すなわち、ランドルト環の切れ目方向)を把握することできる。このため、例えば、同一の視力値の視標のうち、どの種類の視標(すなわち、どの切れ目方向のランドルト環)で誤答が多いのか等を把握することでき、被検眼の視力値だけでなく、例えば、乱視等の他の病状や状態を評価することができる。このため、一次診断の精度を向上させることができる。また、グラフ欄44には、視力値ごとのグラフと共に、その視力値の正答率(又は誤答率)を重ねて表示してもよい。このように表示することによって、視力値ごとの正答率(又は誤答率)をより容易に把握することができ、特に、視力値ごとの応答回数が多い場合(棒グラフの高さが高い場合)に、視力値ごとの正答率(又は誤答率)をより容易に把握することができる。
【0039】
なお、本実施例の視力検査装置10では、視標呈示部12に呈示されるランドルト環の切れ目方向は4方向であるが、このような構成に限定されない。例えば、視標呈示部12に呈示されるランドルト環の切れ目方向は、8方向であってもよいし、4方向と8方向を切り換え可能に構成されていてもよい。4方向と8方向を切り換え可能に構成されている場合には、被検眼の状態に合わせて、4方向と8方向を切り換えることができる。例えば、検査開始時には4方向とし、被検眼の視力が安定していると判断される場合に8方向に切り換えでもよいし、検査開始時には8方向とし、被検眼の視力が不安定であると判断される場合に4方向に切り換えでもよい。また、本実施例の視力検査装置10は、各視標に対する応答結果をタッチパネル14から入力しているが、このような構成に限定されない。例えば、各視標に対する応答結果を入力する入力装置は、音声認識によって入力するものであってもよい。
【0040】
また、本実施例では、各応答結果とその直前の応答結果を接続線によって接続しているが、このような構成に限定されない。各応答結果に対応する呈示順序が視覚的に把握可能に表示されればよく、例えば、各応答結果に重ねて呈示順序を数字で表示してもよい。あるいは、グラフ欄44には接続線又は数字が表示されなくてもよい。グラフ欄44には、視力値ごとの応答結果が呈示順序に従って表示されるため、接続線が表示されなくても視標の呈示順序を把握することができる。また、接続線又は呈示順序を示す数字、呈示された視標の種類、正答率や誤答率を示す表示等の各応答結果に重ねて表示する表示(重ね表示)は、表示と非表示を切り換え可能であってもよい。例えば、タッチパネル14に切り換えボタンを設けることによって、上記の重ね表示を表示したり非表示にしたりできるようにしてもよい。また、一覧表示される複数の応答結果の中から1つを選択する(例えば、クリックする)ことによって、選択された応答結果に対応する重ね表示を表示してもよい。
【0041】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
10:視力検査装置
12:視標呈示部
14:タッチパネル
16:制御部
18:記憶部
20:視標選択部
44:グラフ欄44
45、46、47:接続線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10