【実施例】
【0065】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例、比較例で調製した第1剤の成分および配合割合は、表3〜8に示す通りである。表3〜8に記載された成分の単位は質量%であり、毛髪処理剤である第1剤を100質量%として表す。
【0066】
実施例、比較例で使用した第2剤の成分および配合割合は、表1に示す通りである。表1に記載された成分の単位は質量%であり、毛髪処理剤である第2剤を100質量%として表す。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例1〜74、比較例1〜8]
表3〜8に記載の配合割合(質量%)で、各成分を秤量して、混合することにより第1剤(毛髪処理剤)を調製した。なお、pH調整剤は、表3〜8に記載のpHとなる量を使用した。
調製した第1剤および第2剤を用いて、以下の試験を行い、評価を行った。
なお、表1および3〜8に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
臭素酸ナトリウム:臭素酸ナトリウムQ(佐々木化学株式会社製)100質量%
金属封鎖剤:キレストP−SD(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液)(中部キレスト株式会社製)中に40質量%含まれるジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム
pH調整剤(水酸化ナトリウム):苛性ソーダ(東京応化工業株式会社製)100質量%
pH調整剤(リン酸):89%燐酸(日本化学工業株式会社)89質量%
ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン(成分A):プラスサイズL−410W(成分名:ポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン液フェノキシエタノール)(互応化学工業株式会社製)中に30質量%含まれるポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン(ポリクオタニウム−50)
システアミン(成分B):50%システアミン塩酸塩(オリエンタルケミカル株式会社製)中に50質量%含まれるシステアミン塩酸塩をシステアミン濃度に換算した
システイン(成分C):L−システイン(フリー)(日本理化学薬品株式会社製)100質量%
チオグリコール酸(成分D):50%チオグリコール酸アンモン(佐々木化学株式会社製)中に50質量%含まれるチオグリコール酸アンモンをチオグリコール酸濃度に換算した
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(成分E):MEポリマー H40W(ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液)(東邦化学工業株式会社製)中に40質量%含まれるポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ポリクオタニウム−6)
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(成分F):マーコート295(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体液)(日本ルーブリゾール株式会社製)中に37.5質量%含まれる塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム−22)
pH調整剤(28%アンモニア水):アンモニア水(大盛化工株式会社製)(アンモニア濃度28質量%)
メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(成分X−1):プラスサイズL−450(メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体液)(互応化学工業株式会社製)中に40質量%含まれるメタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(ポリクオタニウム−48)
メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(成分X−2):プラスサイズL−440(メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体液)(互応化学工業株式会社製)中に30質量%含まれるメタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム−49)
ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸(成分X−3):H.C.ポリマー1NM(ビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸液)(大阪有機化学工業株式会社製)中に20質量%含まれるビニルピロリドン・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(ポリクオタニウム−11)
ビニルピロリドン・スチレン共重合体(成分X−4):アンタラ430(ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション)(アイエスピー・ジャパン株式会社製)中に40質量%含まれるビニルピロリドン・スチレン共重合体((スチレン/ビニルピロリドン)コポリマー)
【0069】
<評価>
後述の方法で毛束にカール形成処理を施し、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ以下の(1)〜(9)の各項目に記載した評価基準に従って官能評価を行った。
なお、(7)持続性および(9)すすぎ時の指通り以外の項目については、カール形成処理を施した毛束がドライの状態で評価を行った。
各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
なお、カール形成処理を施す毛束は、予め一般人の髪の傷み具合を再現するために、ダメージ処理を行った。
【0070】
(ダメージ処理)
毛束(約30cm、10gの人毛)(製品名BS−B3A、ビューラックス社製)を、表2に記載の配合割合で調製したダメージ処理用水溶液に60℃で、10分間浸漬して、ダメージを与えた。その後ダメージ処理用水溶液から取り出した毛束を水洗し、乾燥させた。
前記ダメージ処理を行った毛束を均等に4束に分けた後、後述のカール形成処理に使用した。
【0071】
【表2】
【0072】
(カール形成処理)
毛束をロッド(製品名ニューエバーロッドY−3、安元化成株式会社製)に巻き付けた。毛束に各実施例および比較例で製造した第1剤(毛髪処理剤)10gを均一に塗布し、室温(25℃)で15分放置した。次いで毛束を水洗し、第1剤(毛髪処理剤)を洗い流してから、第2剤10gを毛束に均一に塗布した。塗布してから7分後に、第2剤10gを再び毛束に塗布して、7分放置した。次いで毛束を水洗した。毛束をロッドから取り外して、水洗した後、ドライヤーで毛束を乾燥させた。
【0073】
<評価項目および評価基準>
(1)カール形成力(リッジ)
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束のカール形成力を目視により評価した。なお、カールが形成されS字状にくせがついた毛髪の山の部分をリッジといい、リッジは毛髪処理剤のカール形成力を示す基準となる。
カール形成力が高いほど、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成される。一方、カール形成力が低くなるにつれて、ゆるいリッジのないカールになってしまう。さらにカール形成力が低くなるとカールは形成されなくなる。
4点 非常にくっきりとしたリッジのあるカールを形成。
3点 くっきりとしたリッジのあるカールを形成。
2点 ゆるやかなカールを形成。
1点 ほとんどカールが形成されない。
【0074】
(2)弾力
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束の弾力は、カールを引っ張った後の戻り具合を目視により評価した。
弾力のあるカールは引っ張ってのばしてもすぐ元のカール状態に戻りやすく、一方、弾力のないカールは引っ張ってのばすと元の状態に戻りにくく、カールの状態がゆるくなってしまう。
4点 カールの戻りが非常に良い。
3点 カールの戻りが良い。
2点 カールの戻りがあまりない。
1点 カールの戻りがなく、のびてしまう。
【0075】
(3)まとまり
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束のまとまりを目視と手触りで評価した。
まとまりがあるほど、カールがきれいに見え、毛先のおさまりが良くパサつきが少ない。まとまりがないカールは、カールがばらついておりきれいに見えなく、毛先もおさまりが悪い。
4点 非常に毛先のおさまりが良くまったくパサついていない。
3点 毛先のおさまりが良く、パサつきが少ない。
2点 毛先のおさまりが悪く、少しパサついている。
1点 カールがばらついており、パサついている。
【0076】
(4)指通り
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束の指通りを、手触りで評価した。
指通りが良いほど、指を通した時の抵抗がなく引っかからない。指通りが悪いほど、ひっかかりやすく抵抗がある。
4点 非常に指通りが良く、全く引っかからない。
3点 指通りが良く、引っかかりが少ない。
2点 指通りが悪く、少し引っかかる。
1点 非常に指通りが悪く、指が通らない。
【0077】
(5)やわらかさ
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束のやわらかさを手触りで評価した。
カールがやわらかいほどハリや硬さがなくなめらかな手触りで、やわらかさのないカールほどハリや硬さがでてごわつきを感じやすい。
4点 非常にやわらかく、なめらかな手触り。
3点 やわらかく、なめらかな手触り。
2点 ハリや硬さがあり、少しごわつきを感じる。
1点 非常に硬く、ごわつく。
【0078】
(6)ツヤ
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束のツヤを目視で評価した。
ツヤがあるカールほど、毛束が整っておりきれいなカールに見え光の反射が強い。ツヤのないカールは光の反射がなくカールもきれいに見えない。
4点 光の反射が非常に強く、カールがきれいに見える。
3点 光の反射が強く、カールがきれいに見える。
2点 光があまり反射せず、カールがきれいに見えない。
1点 光が全く反射せず、カールがきれいに見えない。
【0079】
(7)持続性
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束の、持続性を以下の方法で評価した。
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束を、シェルパD−1シャンプー(株式会社アリミノ製)を使用して、7回洗浄した。シャンプーを用いて7回洗浄することにより、カール形成処理から1週間後の毛髪を再現した。
7回洗浄した後の毛束を、シャンプー前(カール形成処理直後)の毛束と比較することにより、カールの持続性を評価した。
持続性の高いものは、繰り返しシャンプーしてもカールがだれにくく、シャンプー前の毛束と比べた際の変化が小さい。持続性の低いものは、シャンプーを繰り返していくごとにカールがゆるくなりだれてしまう。
4点 非常に持続性が高く、カール形成処理直後からの変化がない。
3点 持続性が高く、カール形成処理直後からの変化が小さくカールがほとんど残っている。
2点 持続性が低く、カール形成処理直後からの変化が大きくカールがゆるやかになっている。
1点 持続性が非常に低く、カール形成処理直後と比較してほとんどカールがなくなっている。
【0080】
(8)ダメージ
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った毛束の、ダメージを手触りによって評価した。
ダメージを受けていない毛髪ほど表面の滑り性が高く、未処理毛に近い状態でウエット時でもハリや弾力が感じられる。ダメージが進むにつれてざらつきやごわつき、パサつきが感じられるようになり、主に毛先部分にちりつきが見られるようになる。また、ダメージが大きいほど毛髪の色が明るくなる傾向が見られる。
4点 ダメージが非常に少ない。
3点 ダメージが少ない。
2点 ダメージが多い。
1点 ダメージが非常に多い。
【0081】
(9)すすぎ時の指通り
第1剤および第2剤を用いてカール形成処理を行った際に、毛束をロッドから取り外して、水洗した際の指通りを評価した。
すすぎ時(水洗した際)の指通りがいい毛束ほど、毛髪のからまりがなく抵抗なく水洗できる。すすぎ時の指通りが悪いと、水洗する際に毛髪がからまりすすぎにくくなる。
4点 すすぎ時の指通りが非常に良い。
3点 すすぎ時の指通りが良い。
2点 すすぎ時の指通りが悪い。
1点 すすぎ時の指通りが非常に悪い。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
実施例1〜74で製造した毛髪処理剤はいずれも、比較例と比べて弾力が良好な評価となった。
【0089】
比較例1〜3で製造した毛髪処理剤は、還元剤として各成分B〜Dから選ばれる1種を含むものの、成分Aを含まないため、カール処理後の毛髪は弾力が弱かった。そのため、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールを形成できず、形成したカールのスタイルを持続することができなかった。さらに、処理後の毛髪はまとまりが悪く、すすぎ時の指通りも悪かった。
【0090】
比較例4で製造した毛髪処理剤は、成分A以外の成分B〜F全てを含むが、カール処理後の毛髪は弾力が弱かった。そのため、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールを形成できず、形成したカールのスタイルを持続することができなかった。
【0091】
比較例5、6および8で製造した毛髪処理剤は、成分Aに代えて、それぞれ成分X−1、X−2またはX−4を使用した。比較例5、6および8ではカール処理後の毛髪は弾力が弱いため、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールを形成できず、形成したカールのスタイルを持続することができなかった。さらに、処理後の毛髪はまとまりが悪く、すすぎ時の指通りも悪かった。
【0092】
比較例7で製造した毛髪処理剤は、成分Aに代えて、成分X−3を使用した。比較例7ではカール処理後の毛髪は弾力が弱いため、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールを形成できず、形成したカールのスタイルを持続することができなかった。さらに、処理後の毛髪は硬くごわついており、すすぎ時の指通りも悪かった。
【0093】
実施例1〜17で製造した毛髪処理剤はいずれも、成分Aおよび成分Bを含みpHが7.0〜8.5の範囲内にある。該実施例ではカール処理後の毛髪は、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成(変形処理)される。また、変形処理後の毛髪は充分な弾力を備え、形成したカールのスタイルが崩れにくい。さらに、処理後の毛髪は、柔らかく、ツヤがあり、指通りも良好である。
【0094】
実施例18〜21で製造した毛髪処理剤はいずれも、成分Aおよび成分Cを含みpHが7.0〜8.5の範囲内にある。該実施例ではカール処理後の毛髪は、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成(変形処理)される。また、変形処理後の毛髪は充分な弾力を備え、形成したカールのスタイルが崩れにくい。さらに、変形処理後の毛髪はまとまりが良好である。
【0095】
実施例22〜25で製造した毛髪処理剤はいずれも、成分Aおよび成分Dを含みpHが7.0〜8.5の範囲内にある。該実施例ではカール処理後の毛髪は、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成(変形処理)される。また、変形処理後の毛髪は充分な弾力を備え、形成したカールのスタイルが崩れにくい。さらに、変形処理後の毛髪は、ツヤが良好である。
【0096】
実施例26〜59で製造した毛髪処理剤は、いずれも成分Aを含み、pHが7.0〜8.5の範囲内にあり、かつ、還元剤(成分B〜D)を2種あるいは3種類含む。還元剤として2種あるいは3種含むことにより、各還元剤を使用したことによる効果(実施例1〜25で発現する効果)を複合的に得ることができる。
【0097】
実施例60〜72は、成分Aおよび成分Bを含みpHが7.0〜8.5の範囲内にあり、かつ成分EおよびFから選択される少なくとも一方を含む。該実施例では、カール処理後の毛髪は、毛髪の損傷を抑えることが可能であり、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成(変形処理)される。また、変形処理後の毛髪は充分な弾力を備え、形成したカールのスタイルが崩れにくい。さらに、処理後の毛髪は、柔らかく、ツヤがあり、指通りも良好である。さらにすすぎ時の指通りも良好である。
【0098】
実施例73および74は、成分A〜Fを含み、pHが7.0〜8.5の範囲内にある。該実施例では、カール処理後の毛髪は、毛髪の損傷を抑えることが可能であり、立体感があり、くっきりとしたリッジのあるカールが形成(変形処理)される。また、変形処理後の毛髪は充分な弾力を備え、形成したカールのスタイルが崩れにくい。さらに、処理後の毛髪は、柔らかく、ツヤがあり、まとまりがよく、指通りも良好である。さらにすすぎ時の指通りも良好である。