(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
毛髪を染毛(染色)するための毛髪染毛剤(毛髪染毛料)としては、染色の固定等といった染毛効果が優れる等の理由から、酸化染料を用いた染毛剤が広く利用されており、一般に、合成染料であるパラ−フェニレンジアミン系やアミノフェノール系の酸化染料を染料成分として含む酸化染毛剤等が広く用いられていた。
【0003】
毛髪に酸化染毛剤を塗布した場合、酸化染料が毛髪の内部まで浸透して、酸化剤により酸化重合されるミソハギ科ヘナインド染料を生成し、かかるヘナインド染料が発色することになる。かかるヘナインド染料は多彩な色調を表現できるが、毛髪の内部で酸化重合してかさ高くなるため、毛髪から色が抜けにくく染毛後の色持ちに優れる一方、染色できる色の種類が限定されるという問題があった。
【0004】
加えて、酸化染料は、皮膚に付着した場合には皮膚が染色されることや、場合によっては皮膚障害を引き起こすことがあった。そして、酸化染料は、生態系に悪影響を及ぼす環境ホルモンを含むという指摘や、発がん性物質や発アレルギー性物質等であるという点も指摘されており、酸化染料を含んだ酸化染毛剤は、例えば、欧州等においては規制対象となっていた。
【0005】
以上に挙げた酸化染毛剤に対し、中性染料、非イオン性染料や塩基性染料は比較的手や頭皮を汚すことなく染毛を行うことが可能である。近年、染毛剤の染料成分として、酸化染料よりも安全性が高い染料、例えば、塩基性染料等が使用されている。
【0006】
塩基性染料は、毛髪表面のケラチンタンパク質のアニオン性基とイオン結合することによって染着し、酸化染料に比べて安全性が高いとされている。また、酸化染料と比較すると色のバリエーションが豊富である。しかしながら、塩基性染料は、分子量が大きいために毛髪の深い部分にまでは浸透しにくく、また結合力の弱いイオン結合によりケラチンタンパク質に染着されるために、染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことにより色落ちしやすいという問題があった。
【0007】
よって、塩基性染料を含む染毛剤は、一般に、永久染毛剤としてではなく、半永久染毛剤として、2〜3週間程度の色持ちを目的としたヘアマニキュアや、1週間に数回用いることにより色を付与し続けるカラーリンスやカラートリートメントとして、あるいはヘナポリフェノールやインディゴポリフェノールをベースカラーとして染色する場合の微量の補色として用いられていた。
【0008】
また、半永久染毛剤の一種として、カチオン性の塩基性染料やノニオン性のHC染料等が使用されることがあった。HC染料は電荷を持たないためイオン結合をすることはできないが、分子径が小さいため毛髪の内部まで浸透、染着することができる。一方、分子径が小さいため、染色には比較的時間がかかるという問題があった。
【0009】
塩基性染料やHC染料を含有する染毛剤を用いた場合、前記したように、毛髪への染色力は酸化染料と比較しては十分ではなく、染色が固定されず経時的な色落ちが酷く、その結果として染色を長期間維持できない(色持ちが悪い)ことになり、塩基性染料等を使用した場合の染色力の向上及び染毛の持続期間の長期化が望まれていた。そして、塩基性染料やHC染料を用いた染毛剤の染色効果を改善するための手法として、種々の検討がなされていた(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る毛髪の染毛方法の一態様について説明する。本発明に係る毛髪の染毛方法(以下、単に「染毛方法」とする場合もある。)は、染毛対象者の毛髪に塩基性染料及びHC染料を含む染毛剤を塗布し、所定の時間放置する第1工程と、前記第1工程の後に、前記染毛剤を塗布された前記毛髪をリンスする第2工程と、前記第2工程の後に、前記毛髪にきび酢組成物の水溶液を塗布する第3工程と、前記第3工程の後に、前記毛髪に酸化剤を塗布する第4工程と、を基本構成として含む。
【0021】
(I)第1工程:
第1工程は、染毛対象者の毛髪に塩基性染料及びHC染料を含む染毛剤を塗布し、所定の時間放置する工程である。染毛剤とは、ベースカラーとなる染料(染料成分)を含有する液剤であり、本発明の染毛方法にあっては、染料として、塩基性染料及びHC染料を含む。かかる塗布は、毛髪に対してまんべんなく行われることが好ましい。なお、本発明において、染色される「毛髪」には「白髪」も含むものである。
【0022】
塩基性染料は、分子内にアミノ基、または置換アミノ基を有し、水溶液中で陽イオンになる染料であり、従来から塩基性染料として知られたものを特に限定なく用いることができる。塩基性染料は、水溶液中で陽イオンになるために、毛髪表面のケラチンタンパクのマイナス部分とイオン結合することにより染着する。
【0023】
塩基性染料としては、例えば、ベーシックブルー7(C.i.42595)、ベーシックブルー16(C.I.12210)、ベーシックブルー22(C.I.61512)、ベーシックブルー26(C.I.44045)、ベーシックブルー75、ベーシックブルー99(C.I.56059)、ベーシックブルー117、ベーシックバイオレット10(C.I.45170)、ベーシックバイオレット14(C.I.42515)、ベーシックブラウン16(C.I.12250)、ベーシックブラウン17(C.I.12251)、ベーシックレッド2(C.I.50240)、ベーシックレッド12(C.I.48070)、ベーシックレッド22(C.I.11055)、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76(C.I.12245)、ベーシックレッド118(C.I.12251:1)、ベーシックオレンジ31、ベーシックイエロー28(C.I.48054)、ベーシックイエロー57(C.I.12719)、ベーシックイエロー87、ベーシックブラック2(C.I.11825)等が挙げられるが、特にこれらには限定されない。これらの塩基性染料は、その1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
染毛剤は、ベースカラーの染料成分の主成分として塩基性染料を含有することが好ましい。全染料成分の塩基性染料の含有量としては、染料成分全体に対して50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上とすることがさらに好ましく、80質量%以上とすることが特に好ましい。このように、染料成分の主成分として塩基性染料を用いることにより、色のバリエーションが豊富となるとともに、人体への安全性の高い染毛を実現することができる。なお、全染料成分における塩基性染料以外の染料成分は、後記するHC染料や、あるいはHC染料及びそれに加えて使用される他の染料成分となる。
【0025】
次に、HC(Hair Color)染料は、一般に、分子径が小さい染料であるために毛髪の内部に浸透して水素結合や分子間引力によって染着し、毛髪に対してより深みのある発色を付与することができる。
【0026】
HC染料としては、例えば、HCブルーNo.2、HCブルーNo.4、HCブルーNo.5、HCブルーNo.6、HCブルーNo.8、HCブルーNo.9、HCブルーNo.10、HCブルーNo.11、HCブルーNo.12、HCブルーNo.13、HCオレンジNo.1、HCオレンジNo.2、HCオレンジNo.3、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCレッドNo.7、HCレッドNo.8、HCレッドNo.10、HCレッドNo.11、HCレッドNo.13、HCレッドNo.14、HCレッドNo.16、HCバイオレットNo.1、HCバイオレットNo.2、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCイエローNo.6、HCイエローNo.7、HCイエローNo.9、HCイエローNo.10、HCイエローNo.11、HCイエローNo.12、HCイエローNo.13、HCイエローNo.14、HCイエローNo.15等が挙げられるが、特にこれらには限定されない。これらのHC染料は、その1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
塩基性染料、HC染料以外の染料成分としては、例えば、ポリフェノール染料等の従来公知の染料を使用することができる。なお、人体の安全性の観点からは、前記した問題等があるため、酸化染料はできる限り使用しないことが好ましい。
【0028】
前記の染料を含む染毛剤は、染料を毛髪に浸透しやすくするという観点から、塩基性(アルカリ性)であることが好ましい。例えば、pHとして、第1工程で染毛剤を塗布された後の毛髪のpHが7.5〜12.0程度の塩基性を示すことが好ましく、7.5〜9.5程度の塩基性を示すことがより好ましく、pHが8.0〜9.0程度の塩基性を有することがさらに好ましく、pHが8.0〜8.5程度の塩基性を有することが特に好ましい。pHをかかる範囲とすることにより、毛髪内部のより深い部分に染料を浸透させることができ、その結果、染色の色持ちを長くすることができる。
【0029】
染毛剤をこのようなpHとして、塩基性に調整するために、染毛剤にアルカリ剤(還元剤、アルカリ性還元剤等と呼ばれることがある。)を添加することが好ましい。アルカリ剤は、毛髪表面のキューティクルを開いて毛髪を膨潤させる効果を有するため、染料が毛髪内部に浸透しやすくなって、染色の固定化効果が向上する。アルカリ剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、システアミン、チオグリコール酸ないしはチオグリコール酸アンモニウム等のアルカリ剤や、アンモニア、各種のアルカノールアミン、アンモニウム塩、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸及びそれらの塩等が挙げられるが、特にこれらには限定されない。これらは、その1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらの中では、特に、アセチルシステイン、システアミン、チオグリコール酸あるいはチオグリコール酸アンモニウム等のアルカリ剤や、アセチルシステイン、システアミン及びチオグリコール酸ないしはチオグリコール酸アンモニウムを組み合わせたアルカリ剤を用いた場合には染料が毛髪により浸透しやすくなる傾向がある。
【0031】
染毛剤中のアルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、前記したように、第1工程で
染毛剤を塗布された後の毛髪のpHが好ましくは7.5〜12.0(より好ましくは7.5〜9.5程度、さらに好ましくは8.0〜9.0程度、特に好ましくは8.0〜8.5程度。)となるように前記染毛剤に含有させることが好ましく、例えば、染毛剤全体に対して0.01〜2.0質量%とすることが好ましく、0.1〜1.5質量%とすることがさらに好ましく、0.1〜1.0質量%とすることが特に好ましい。アルカリ剤は、例えば、後記するようなクリーム基剤等をマトリックスとしたアルカリ剤組成物に配合された構成として、かかるアルカリ剤組成物を染毛剤に添加するようにしてもよい。
【0032】
染毛剤は、例えば、塩基性染料、HC染料等の染料、必要によりアルカリ剤(還元剤、アルカリ性還元剤)等を所望の比率で配合し、従来から染毛剤成分の媒体として用いられているようなクリーム基剤等の液状媒体に混合してペースト状に、または、水溶液に調製して、毛髪に塗布されることが一般的である。
【0033】
染毛剤として用いるためのクリーム基材は、特に制限はないが、例えば、セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、インステアリルアルコール、ミネラルオイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、トリグリセリル等の油脂成分とポリオキシエチレンラウリルエーテル、ラウリン酸ソルビタン、セテス−2、オレス−10、セトレス−20等の乳化剤等を適宜配合して得られるようなクリーム基剤等を使用することができる。これらのクリーム基剤は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
染毛剤中に含有される染料成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、塩基性染料とHC染料の合計として、染毛剤全体に対して0.5〜10.0質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることが特に好ましい。なお、染毛剤には、前記したクリーム基材のほか、染毛剤等に用いられる従来公知の成分等を、本発明の目的及び効果を妨げない範囲で適宜添加することができる。
【0035】
第1工程において染毛剤が塗布された毛髪は、所定の時間放置される。放置される時間(放置時間)は、毛髪に付与される色の好みや、使用される染料の種類や含有量等により適宜調整すればよいが、作業工程等の観点から、20〜60分間とすることが好ましく、25〜40分間とすることが特に好ましい。かかる放置も相俟って、塩基性染料及びHC染料は、毛髪に付着ないしは浸透する。
【0036】
また、放置の際には、染毛剤を塗布された毛髪に遠赤外線を照射することが好ましい。遠赤外線を毛髪に照射することにより、放置時間を短くすることができる等、作業の効率化を図ることができる。遠赤外線照射の際の毛髪表面の温度としては、特に制限はないが、毛髪を損傷したり、人体に過度な負担を与えない等の観点から、20〜40℃とすることが好ましく、25〜35℃とすることが特に好ましい。かかる遠赤外線の照射は、毛髪に対してまんべんなく行われることが好ましい。
【0037】
(II)第2工程:
第2工程は、染毛剤が塗布された毛髪をリンスする工程であり、毛髪から余分な染毛剤を洗い流す(リンスする)工程である。リンスは、毛髪に付着した余分な染毛剤を洗い流すことができれば、特にその方法は限定されない。
【0038】
第2工程におけるリンスは、毛髪がまんべんなく染色されていることを確認した後、余分な染毛剤を洗い流すことができればその方法としては特に制限はないが、例えば、シャンプー剤等の洗浄剤を用いずに、水あるいは微温湯で染毛剤等を洗い流すことが好ましい。また、染毛剤を洗い流した後は、一般には、いわゆるタオルドライが行われることが好ましい。
【0039】
(III)第3工程:
第3工程は、第2工程の後に、毛髪にきび酢組成物の水溶液を塗布する工程である。かかる塗布は、毛髪に対してまんべんなく行われることが好ましい。
【0040】
きび酢(「さとうきび酢」とよばれることもある。)は、さとうきび抽出物(搾汁液、黒糖等。)を糖質原料として、発酵により得られた食酢である。きび酢は、例えば、奄美大島において古来より調製されてきており、さとうきびを圧搾し、搾汁を得て、得られた搾汁液を天然の酵母及び酢酸菌により自然発酵させて得られるのが一般的である。なお、本発明において、「きび酢組成物」とは、特に記載した場合を除き、きび酢から得られた濃縮物、乾燥物ないしは粗精製物、きび酢(あるいはきび酢から得られた前記した濃縮物等。)に所定の添加物(特に制限はないが、例えば、増粘剤、多価アルコール、低級アルコール、界面活性剤、香料、pH調整剤等の通常化粧料や毛髪料に添加される成分、食酢に添加される成分等で、本発明の奏する効果に影響を与えない成分等が挙げられる。以下同じ。)を添加したもの等を含む。
【0041】
本発明で使用されるきび酢組成物の原料としてのきび酢は、さとうきび(サトウキビ)抽出物(搾汁液、黒糖等。)を主たる糖質原料とし、酵母及び酢酸菌により発酵させて得られたものであればよく、従来公知のきび酢を用いることができる。また、きび酢組成物を得るための濃縮、乾燥等の手段は、特に限定されず、食品分野等で用いられる通常の手段を適用することができる。本発明にあって、きび酢組成物としては、例えば、きび酢濃縮物またはきび酢乾燥物、きび酢(あるいはきび酢から得られた前記した濃縮物等。)に所定の添加物を添加したもの等を好ましく用いることができる。また、きび酢そのものをそのままきび酢組成物として用いてもよい。
【0042】
原料であるさとうきびを発酵されて得られるきび酢ないしはそれを用いたきび酢組成物には、例えば、(1)シリンガアルデヒド、(2)イソバニラ酸、(3)p−ヒドロキシ−アセトフェノン、(4)3,4−ジヒドロキシアセトフェノン、(5)2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、(6)シリンジ酸、(7)trans−p−クマル酸、(8)trans−フェルラ酸、(9)3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル 1)−1−プロパノン、(10)3−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−1−プロパノン、(11)2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ)フェニル−3−ヒドロキシメチル−5−(3−ヒドロキシ)プロペニル−7−メトキシクマラン、(12)デヒドロ−ジコニフェリルアルコール、(13)1−O−p−クマロイルグリセリド、といった13種のポリフェノール類を含むものと考えられる。これらの存在により、塩基性染料及びHC染料で調色された色に影響を与えずに、毛髪に染料された色を好適に毛髪に対して定着させることができると考えられる。
【0043】
また、きび酢ないしはそれを用いたきび酢組成物には、ヒドロキシ類アミノ酸が組成物全体に対して所定の範囲(例えば、0.5〜2.0質量%であるが、かかる範囲には限定されない。)含有されると考えられる。かかるヒドロキシ類アミノ酸の存在や前記したポリフェノール類等その他の成分が相互に作用することにより、塩基性染料及びHC染料による染色が固定され、色落ちを抑制することができ、第4工程での酸化剤の塗布も相俟って、毛髪に対して長期間の色持ちを維持する。また、毛髪がアミノ酸を含むことにより、染料成分による染色に加えて、染色に際して毛髪に保湿効果が高いしなやかな髪質へと変化させることを並行して行うことができ、毛髪や人体への負担が著しく少ない染毛を実施することができる。なお、従来の酸化染料ないしは酸化染毛剤を用いたものを含め同様の染色方法は、一般に染色後に別工程によるトリートメント等でコンディション調整を行うことはあるが、このようにして1工程(きび酢組成物の水溶液の塗布)により毛髪の染色と毛質のコンディション調整が並行して行われる例は他にないと考えられる。加えて、本工程できび酢組成物の水溶液を毛髪に塗布することで、かかるきび酢組成物の水溶液が吸収した頭皮や毛根に作用し、抜け毛防止等にも繋がるとともに、新たに生えてくる毛髪についても活力等を与えることが期待できる。
【0044】
きび酢組成物は、従来公知のきび酢ないしきび酢組成物を使用することができ、市販品としては、例えば、「奄美大島加計呂麻島産さとうきび100% かけろまきび酢」((株)奄美自然食本舗)等をきび酢組成物として使用することができるが、特にこれには限定されない。
【0045】
きび酢組成物は、水(通常の水道水のほか、精製水、イオン交換水、逆浸透膜水、アルカリイオン水(前記の水を使用した際のpH調整として使用してもよい。)等を含む。)により希釈され、きび酢組成物の水溶液として毛髪に塗布される。希釈の割合は、きび酢組成物におけるきび酢を構成する諸成分等の濃度(含有量)、きび酢の濃縮度合いや市販されるきび酢組成物ないしはきび酢を使用する場合はその種類、染毛対象の髪の毛の状態(ダメージ度や年齢、髪の毛の色等。)等(以下、単に「きび酢組成物におけるきび酢を構成する諸成分等の濃度(含有量)等」とする場合もある。)に応じて適宜決定すればよいが、例えば、きび酢組成物を、体積としてきび酢組成物の体積の3〜10倍(希釈倍率としては4〜11倍)の量の水で希釈してきび酢組成物の水溶液(以下、単に「きび酢水溶液」とする場合もある。)とすることが好ましく、きび酢組成物を、3〜5倍(希釈倍率としては4〜6倍)の量の水で希釈してきび酢水溶液とすることが特に好ましい。希釈の割合をかかる範囲にすることにより、染料を毛髪に好適に固定、定着させ、その結果、染色力(染色の固定力)が向上し、色持ちを長期間維持することになる。
【0046】
ここで、「希釈倍率が○倍」とは、水での希釈により、合計のきび酢水溶液の量が、きび酢組成物の量の○倍になることを指し、例えば、希釈倍率が5倍とは、体積として、きび酢組成物を1に対して、水を4とし(きび酢組成物/水=1/4)、合計のきび酢水溶液の量がきび酢組成物の量の5倍となることを指す。
【0047】
希釈の割合は、きび酢組成物におけるきび酢を構成する諸成分等の濃度(含有量)等に大きく左右されるので、前記した希釈の割合は、あくまでも目安として行えばよく、前記の範囲には制限されず、きび酢組成物が本発明の効果を奏するために有効に作用する量を選択すべく、前記の髪の毛の状態等により前記の範囲を外れて適宜変更、調整することは問題ない。
【0048】
きび酢組成物の原液については、適用しても前記の効果は期待できる一方、酸度が高い場合があるため頭皮にダメージ(かぶれたりする等。)を与えたり、また、きび酢(きび酢組成物)特有の臭いがあるため、前記したように、きび酢組成物を水で希釈したきび酢水溶液とすることが望ましく、かかるきび酢水溶液の使用が適する。
【0049】
きび酢水溶液のpHとしては、例えば、pHの範囲を2.0〜4.0とすることが好ましく、2.8〜3.6とすることがより好ましく、3.0〜3.5とすることがさらに好ましく、3.2〜3.5とすることが特に好ましい。pHをかかる範囲にすることにより、本発明の効果を奏するための酸性度が適度となり、染料を毛髪に好適に固定、定着させることができ、その結果、染色力(染色の固定力)が向上し、色持ちを長期間維持することになると考えられる。なお、本発明にあって、pHの測定は、市販のpHメーター(pH測定器)やpH試験紙等の測定手段で測定すればよい。
【0050】
(IV)第4工程:
第4工程は、第3工程の後に、毛髪に酸化剤を塗布する工程である。第3工程まででは、きび酢組成物の水溶液の塗布により、酸化重合が進行しつつあるが、きび酢水溶液を塗布した後、過酸化水素や臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)等に代表される酸化剤水溶液を毛髪にまんべんなく塗布することにより、酸化重合がより進行して、毛髪への染色の定着が進み、経時的な色落ちが抑制されることになる。一方、酸化剤を塗布しない(第4工程を行わない)場合は、酸化重合の進行が不十分であるため毛髪への染色定着が理想的に進行せず、その結果、毎日の洗髪(シャンプー等)での色落ちや、毛髪が乾いた状態から発汗等で衣服や枕カバー等へ色落ち(色落ちした染料成分の付着等。染毛後半月くらい経った辺りから。)が発生する場合がある。他の工程も含め、色落ちした染料成分は、毛髪の外観のほか、シャンプー後の泡や衣類等に付着することにより確認される。
【0051】
本発明にあっては、きび酢組成物中のポリフェノール類が空気中の酸素により酸化重合し、ケラチンタンパク質のアニオン性基に固定された塩基性染料等を覆う被膜を形成し、かかる被膜により、経時的な色落ちが抑制されるものと考えられ、酸化剤は酸化重合をより進行させ、毛髪への染色定着を進行させ、経時的な色落ちの抑制に役立つ。
【0052】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)、過ホウ酸ナトリウム、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。酸化剤としては、過酸化水素や臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)の少なくとも1種を使用することが好ましく、酸化重合反応の効率がよく、工程の短縮化等を考慮して過酸化水素を使用することが特に好ましい。
【0053】
酸化剤は水溶液として使用されるが、その濃度(酸化剤の含有量)は必要とされる酸化の程度や、酸化剤の種類等に応じて適宜決定すればよく、例えば、過酸化水素であれば、概ね0.5〜5.0質量%とすることがより好ましく、1.5〜2.5質量%とすることが特に好ましいが、この範囲には特には限定されない。また、臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)であれば、概ね1.0〜10.0質量%とすることがより好ましく、3.0〜6.0質量%とすることが特に好ましいが、この範囲には特には限定されない。
【0054】
なお、第4工程において酸化剤が塗布された毛髪は、所定の時間放置される。放置される時間(放置時間)は、使用されるきび酢組成物の種類や含有量等により適宜調整すればよいが、概ね4〜15分間とすることが好ましく、4〜10分間とすることが特に好ましい。
【0055】
所定の時間放置された毛髪は、好ましくは染毛定着を目視等で確認した上で、仕上げのシャンプー等を施してきび酢組成物及び酸化剤等を洗い流す後工程が施されるのが一般的である。これらを洗い流した後は、タオルドライ及び通風乾燥(ドライヤー乾燥)等が行われる。このようにして、毛髪の染毛処理が完了する。
【0056】
(V)発明の効果:
以上説明した本発明に係る毛髪の染毛方法は、塩基性染料及びHC染料を含む染毛剤を用いて毛髪に染毛を実施するに際して、きび酢組成物を塗布する工程及びその後に酸化剤を塗布する工程を備えているので、人体への負担が小さい等、安全性等が高い染料であるという塩基性染料等を用いることの利点を備えた上で、塩基性染料等の比較的色持ちが悪い染料成分を染毛剤のベースカラーとして用いても、染色の固定力が向上され、色落ちを抑制することができ、その結果として毛髪に対して長期間の色持ちの維持(例えば、少なくとも2ヶ月。)を実現することができる。
【0057】
本発明の染毛方法は、前記したような効果を奏するので、塩基性染料等を染料成分としながら、半ば永久染毛剤の代わりとして用いることができるとともに、きび酢組成物の奏する効果により、染色する毛髪のコンディション調整についても、特に日本人の硬い髪質を保湿効果の高い状態で柔らかさを付与すること等を並行して行うことができる。
【0058】
本発明に係る染毛方法にあっては、まず、第1工程において、塩基性染料が毛髪に浸透して、イオン結合によりケラチンタンパク質のアニオン性基として固定される。そして、第2工程でリンスして余分な染毛剤を洗い流した後、第3工程できび酢組成物の水溶液を塗布した上で、第4工程で酸化剤によりに酸化処理を行う。
【0059】
第3工程で塗布されたきび酢組成物に含まれるポリフェノール類等の成分が、空気中の酸素に触れて酸化重合して、毛髪表面に酸化重合物の被膜を形成させつつある状態となる。第3工程で形成されつつある酸化重合物は、前記した第1工程で形成されたケラチンタンパク質にイオン結合し、また、第4工程により酸化固定されている毛髪表面に付着された塩基性染料等を被覆し、それにより、塩基性染料の脱離が抑制され、毛髪に好適に固定され、色落ちを抑制することができ、毛髪に対して色持ちの維持を長期間もたらすものと考えられる。
【0060】
また、本発明に係る毛髪の染毛方法を実施するために使用される、塩基性染料及びHC染料を含む染毛剤と、きび酢組成物、酸化剤を含む染毛セット(染毛剤セット)として使用してもよい。このようにしてパッケージングして染毛セットとすることにより、前記した本発明に係る染毛方法を簡便かつ容易に実施することができるとともに、染毛に必要な剤をひとまとめにしてコンパクトに収めることができる。なお、きび酢組成物や酸化剤は、水溶液としてもよい。
【0061】
(VI)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0062】
例えば、前記した態様にあっては、第1工程〜第4工程及び後工程をこの順で実施するようにして説明したが、本発明の目的及び効果に影響を与えない範囲において、毛髪の染色に際して実施される従来公知の手段等を、各工程の間や終わった後に行うようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0064】
実施例1及び実施例2、並びに実施例3ないし実施例8、比較例1ないし比較例6:
毛髪の代用品として毛髪束を用い、下記の工程、方法により毛髪束を染色した。なお、毛髪束(毛束ともよばれる。)は、本実施例にあっては、ヤク毛を用いた。
【0065】
[実施例1]
(1)第1工程:
セタノールを主成分とするクリーム基材等に、染め上がりとして茶色となるような染料成分である塩基性染料とHC染料を塩基性染料/HC染料=9/1で混合した染料成分の混合物(染料混合物)が染毛剤A全体の5.0質量%となるように混合した染毛剤A50g(クリーム基剤47.5g、染料混合物2.5g)と、セタノールを主成分とするクリーム基材等をマトリックスとし、アセチルシステインとチオグリコール酸アンモニウムとの混合物であるアルカリ剤をアルカリ剤組成物全体に対して1.0質量%(染毛剤全体に対しては0.5質量%となる。)となるように含有させたアルカリ剤組成物50gとを混合(染毛剤A+アルカリ剤組成物。合計100g)して染毛剤を調製した。次に、調製された染毛剤を毛髪束にまんべんなく塗布した。なお、染毛剤塗布後の毛髪束のpHは、8.5(pH試験紙で測定。)であった。次に、染毛剤が塗布された毛髪束に30分間遠赤外線を照射しながら放置した。このとき、毛髪束の温度は30℃程度であった。
【0066】
(2)第2工程:
毛髪束が茶色にまんべんなく染まっていることを確認した後、リンスとして、毛髪束に付着した余分な染毛剤を微温湯で洗い流した。また、リンス後にタオルドライを施した。
【0067】
(3)第3工程:
きび酢組成物(奄美大島加計呂麻島産さとうきび100% かけろまきび酢((株)奄美自然食本舗))を、体積として5倍の水道水で希釈(きび酢組成物/水=1/5、希釈倍率:6倍)したきび酢組成物の水溶液(きび酢水溶液)を調製した。水溶液のpHは3.35(市販のpHメーター(Hlensix社製)で測定。以下、きび酢水溶液のpHについて同じ。)であった、かかるきび酢水溶液を第2工程後の毛髪束の全体にまんべんなく塗布した。塗布後、毛髪束を所定の時間(2分程度)放置した。
【0068】
(4)第4工程:
所定の時間放置した毛髪束の全体に対して、酸化剤として、1.9%(質量%)過酸化水素水溶液をまんべんなく塗布した。塗布後、毛髪束を所定の時間(5分程度)放置した。
【0069】
(5)後工程:
毛髪束を所定の時間放置した後、第4工程の後の後工程として、目視により染毛定着が確認された毛髪束に対してシャンプー洗いを施した。また、シャンプー洗いにより流した毛髪束には、タオルドライ及び通風乾燥(ドライヤー乾燥。以下同じ。)等を実施した。
【0070】
[実施例2]
実施例1において、第4工程で使用する酸化剤として、過酸化水素水溶液の代わりに4.0%(質量%)臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)水溶液を使用した以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0071】
[実施例3]
実施例1において、第3工程での水道水での希釈を、体積として5倍の水道水での希釈から3倍の水道水での希釈(きび酢組成物/水=1/3、希釈倍率:4倍)とした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。きび酢水溶液のpHは3.24であった。
【0072】
[実施例4]
実施例3において、第4工程で使用する酸化剤として、過酸化水素水溶液の代わりに4.0%(質量%)臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)水溶液を使用した以外は、実施例3と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0073】
[実施例5]
実施例1において、第3工程での水道水での希釈を、体積として5倍の水道水での希釈から7倍の水道水での希釈(きび酢組成物/水=1/7、希釈倍率:8倍)とした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。きび酢水溶液のpHは3.40であった。
【0074】
[実施例6]
実施例5において、第4工程で使用する酸化剤として、過酸化水素水溶液の代わりに4.0%(質量%)臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)水溶液を使用した以外は、実施例5と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0075】
[実施例7]
実施例1において、第3工程での水道水での希釈を、体積として5倍の水道水での希釈から10倍の水道水での希釈(きび酢組成物/水=1/10、希釈倍率:11倍)とした以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。きび酢水溶液のpHは3.46であった。
【0076】
[実施例8]
実施例7において、第4工程で使用する酸化剤として、過酸化水素水溶液の代わりに4.0%(質量%)臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)水溶液を使用した以外は、実施例7と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、第3工程を行わなかった以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0078】
[比較例2]
実施例2において、第3工程を行わなかった以外は、実施例2と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0079】
[比較例3]
実施例1において、第3工程及び第4工程を行わなかった以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0080】
[比較例4]
実施例1において、第3工程におけるきび酢水溶液の塗布の代わりに、特許第5606590号公報の[実施例4]に開示される茶パウダー水溶液を塗布し、第4工程を行わなかった以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0081】
[比較例5]
実施例1において、第4工程を行わなかった以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪を染色した。
【0082】
[比較例6]
実施例1において、第3工程におけるきび酢水溶液の塗布の代わりに、特許第5606590号公報の[実施例4]に開示される茶パウダー水溶液を塗布した以外は、実施例1と同様な方法を用いて、毛髪束を染色した。
【0083】
実施例及び比較例の工程をまとめた表を表1に示した。なお、表1において、第1工程は「染色」、第2工程は「リンス」、第3工程は「きび酢組成物等」、第4工程は「酸化剤」と、その工程の特徴を付記しており、「○」は、その工程を実施したことを示し、「×」はその工程を実施しないことを示す。第3工程については、「茶パウダー」は、きび酢組成物の水溶液の代わりに茶パウダー水溶液を用いたことを示す。第4工程の「○」の右の( )内は、使用した酸化剤の種類を示す。「きび酢組成物/水」は、第3工程におけるきび酢組成物と水の体積比(かっこ内は希釈倍率)を示す。
【0084】
(まとめ)
【表1】
【0085】
[試験例1]
前記のようにして染色した毛髪束に対して、下記の方法を用いて「(A)シャンプーによる色落ちの確認」及び「(B)乾燥後の色落ちの確認」を比較・評価した。評価結果を表2に示す。なお、表2では、「3日後」、「3週間(21日)後」、「1月(30日)後」及び「2月(60日)後」について、便宜上、「3日」、「3週間」、「1月」及び「2月」として載せている。また、表2中、「酸化剤」は第4工程で使用した酸化剤の種類、「pH」は、第3工程で使用したきび酢水溶液のpH、をそれぞれ示す。
【0086】
なお、(A)におけるシャンプー及び(B)における乾燥は、試験時間を促進するために、以下の操作で行った。すなわち所定の容器に約32℃のお湯を500cc、シャンプーを5cc入れてシャンプー液を調製した後、染色した毛髪束をかかるシャンプー液の中に入れてシャンプーするに際し、通常の1回あたりのシャンプー時間を3分と仮定して、下記の時間:
・3日後の場合は9分
・3週間後(21日)の場合は63分
・1月(30日)後の場合は90分
・2月(60日)後の場合は180分
のシャンプーを行い、シャンプーの泡の色を確認する評価(シャンプーにおける色落ちの確認)を(A)(ただし、2月後の評価は行わない。)、(A)でシャンプーを施してタオルドライ及び通風乾燥を行った後の毛髪の外観を確認する評価(乾燥後の色落ちの確認)を(B)とした。かかる操作でも、実際に3日後、3週間(21日)後、1月(30日)後及び2月(60日)後の操作としたものと同様な結果となると考えられる。
【0087】
(A)シャンプーにおける色落ちの確認:
シャンプーにおける色落ちを、シャンプー後のシャンプーの泡の色を目視で確認し、色落ちの有無を下記の評点及び内容で評価した。シャンプー及び評価は、染色してから3日後、3週間後、1月後についてそれぞれ行った。
【0088】
(評価基準)
評 点 内 容
3 泡に色がほとんど確認されず、色落ちはほとんどない。
2 泡に色が多少確認され、目に付く色落ちが多少ある。
1 2より、目に付く色落ちがかなりある。
0 1より、目に付く色落ちがある。
【0089】
(B)乾燥後の色落ちの確認:
(A)においてシャンプーを行った後(2月後の評価については除く。)、洗い流した後は、タオルドライ及び通風乾燥を行った後の毛髪の外観を目視で確認し、色落ちの有無を下記の評点及び内容で評価した。シャンプー後のタオルドライ及び乾燥並びに評価は、染色してから3日後、3週間後、1月後、2月後(2月後については、前記のように(A)の評価は行っていないが、本評価のためにシャンプー等を行った。)についてそれぞれ行った。
【0090】
(評価基準)
評 点 内 容
5 退色/色落ちはほとんどない。
4 目につく程度の退色/色落ちがあるが問題はない。
3 4より目につく程度の退色/色落ちがあるが問題はない。
2 3より目につく程度の退色/色落ちがあり、人によっては気にする(問題
とする)可能性がある。
1 2より目につく程度の退色/色落ちがあり、染色時とは異なる色が残り変
色しているため問題がある。
0 完全に色が抜けており問題がある。
【0091】
判定は、(A)については、全てが「2」以上であり、合計が「7」以上のものを「合格」(○)とし、1つでも「1」以下が付いた場合、あるいは合計が「6」以下の場合を「不合格」(×)とした。また、(B)については、全てが「3」以上であり、合計が「13」以上のものを「合格」(○)とし、1つでも「2」以下が付いた場合、あるいは合計が「12」以下の場合を「不合格」(×)とした。総合判定は、(A)及び(B)が両方「合格」のものを「合格」(◎)とし、それ以外のものを「不合格」(×)とした。
【0092】
(評価結果)
【表2】
【0093】
表2に示すように、第3工程できび酢組成物(の水溶液)、第4工程で酸化剤を塗布する実施例1及び実施例2、並びに実施例3ないし実施例8は、(A)、(B)とも問題なく合格し、総合判定も合格であり、本発明に係る毛髪の染色方法が、染色の固定力が向上され、染毛の色持ちについても2月後でも問題なく、色持ちの長期化を図ることができることが確認された。
【0094】
一方、第3工程できび酢組成物(の水溶液)、第4工程で酸化剤を塗布することの少なくとも1工程を行わない比較例1〜比較例6は、染色の固定及び色持ちが悪く、(A)、(B)とも合格することはできず、総合判定も不合格であった。
【0095】
なお、実施例1及び実施例2、並びに実施例3ないし実施例8に代表される、きび酢組成物の水溶液を塗布する第3工程を備えた方法は、きび酢組成物の水溶液を塗布しないものより、染色された毛髪束が柔らかくなっており、染色する毛髪のコンディション調整がなされて、保湿効果の高い状態で柔らかさが付与されていることが確認できた。