特許第6856293号(P6856293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6856293
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】リバーシブル燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20210329BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20210329BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20210329BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20210329BHJP
   H01M 4/80 20060101ALN20210329BHJP
   H01M 8/083 20160101ALN20210329BHJP
【FI】
   H01M10/28 Z
   H01M10/30 Z
   H01M4/24 J
   H01M4/62 C
   H01M4/24 Z
   !H01M4/80 C
   !H01M8/083
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-559005(P2020-559005)
(86)(22)【出願日】2019年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2019044905
【審査請求日】2020年11月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−112036(JP,A)
【文献】 特開2002−231235(JP,A)
【文献】 特開2013−020955(JP,A)
【文献】 特開2009−043547(JP,A)
【文献】 特開2005−243602(JP,A)
【文献】 特開2004−014346(JP,A)
【文献】 特開2016−207535(JP,A)
【文献】 特開2017−228351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00−10/39
H01M 4/00− 4/62
H01M 8/00− 8/02
H01M 8/08− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を含む負極と、
二酸化マンガンを含む正極と、
水酸化ニッケルを含む中間電極と、
前記各電極間に介在しイオンは通すが電子は通さないセパレータとを備え、
前記正極の電極容量が、前記負極および前記中間電極の電極容量よりも大きく、
前記負極における酸化反応と前記中間電極における還元反応により、前記中間電極が放電され、
前記正極における還元反応と前記中間電極における酸化反応により、前記中間電極が充電されるリバーシブル燃料電池。
【請求項2】
前記負極が水素ガスに接触しており、前記正極が酸素ガスに接触している請求項1に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項3】
前記負極が前記水素吸蔵合金、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する請求項1または2に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項4】
前記負極の前記導電助剤がカーボンを有する請求項3に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項5】
前記負極の集電体が金属多孔体である請求項4に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項6】
前記正極が前記二酸化マンガン、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する請求項1または2に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項7】
前記正極の前記導電助剤がオキシ水酸化コバルトを有する請求項6に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項8】
前記正極の前記導電助剤がさらにオキシ水酸化ニッケルを有する請求項7に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項9】
前記正極の集電体が金属多孔体である請求項7に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項10】
前記中間電極がガス不透過性を有している請求項1〜9のいずれか一項に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項11】
各々が前記負極と、前記中間電極と、前記正極とを有する複数の電極スタックと、
前記電極スタックの間に配された隔離シートとを備える請求項1または2に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項12】
前記負極の電極容量が、前記中間電極の電極容量よりも大きい請求項1に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項13】
トランスと、
第1端子と、第2端子と、前記第1端子および第2端子のいずれか一方に選択的に接続され、かつ、前記トランスの第1端部に接続される共通端子とを有する切換スイッチと、
前記第1端子と前記負極の間に配され、前記負極への電流の流入を阻止する第1ダイオードと、
前記第2端子と前記正極の間に配され、前記正極からの電流の流出を阻止する第2ダイオードと、をさらに備え、
前記中間電極が前記トランスの第2端部に接続されている請求項1に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項14】
前記切換スイッチの切換周波数が0.01〜500Hzである請求項13に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項15】
水素吸蔵合金を含む負極と、
二酸化マンガンを含む正極と、
水酸化ニッケルを含む中間電極と、
前記各電極間に介在しイオンは通すが電子は通さないセパレータとを備え、
前記正極の電極容量が、前記負極および前記中間電極の電極容量よりも大きく、
前記負極における還元反応と前記中間電極における酸化反応により、前記負極から水素ガスが発生し、
前記正極における酸化反応と前記中間電極における還元反応により、前記正極から酸素ガスが発生するリバーシブル燃料電池。
【請求項16】
前記負極が水素吸蔵合金、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する請求項15に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項17】
前記負極の前記導電助剤がカーボンを有する請求項16に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項18】
前記正極が二酸化マンガン、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する請求項15に記載のリバーシブル燃料電池。
【請求項19】
前記正極の前記導電助剤がオキシ水酸化コバルトを有する請求項18に記載のリバーシブル燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電時に供給される電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵し、貯蔵した化学エネルギーを、電気エネルギーに再変換して利用することができるリバーシブル燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池および燃料電池は、高効率でクリーンなエネルギー源である。近年、世界的に、このような二次電池および燃料電池を電源とする電気自動車、燃料電池自動車、電車の開発が進んでいる。
【0003】
燃料電池は、高いエネルギー変換効率を有し、環境負荷の少ない電源として注目されている。燃料電池は、蓄電することはできない。しかし、燃料電池と水の電気分解によって水素を製造する水素製造装置等とを組み合わせることによって、一種の電力貯蔵システムを構築することは可能である。このような電力貯蔵システムは、リバーシブル燃料電池と呼ばれている(特許文献1および特許文献2参照)。このような、燃料電池と水素製造装置とを組み合わせたリバーシブル燃料電池は、発電していないときには、自然エネルギーあるいは夜間電力を用いて発電の逆反応である水の電気分解が行われる。このようにリバーシブル燃料電池を用いた発電システムは、自らの燃料を製造する。
【0004】
一方、二次電池は、電動工具等の大電流放電を必要とする電気および電子機器用の電源として用いられている。特に、最近では、エンジンおよび電池で駆動されるハイブリッド自動車用の電池として、ニッケル水素二次電池およびリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0005】
通常の二次電池は、電気エネルギーの供給を受けることにより充電され、電気を蓄えることができる。特許文献3には、ガスを用いて充電ができる二次電池が開示されている。また、特許文献4には、正極に水酸化マンガンを使用し、負極に水素吸蔵合金を使用した燃料電池と二次電池を組み合わせた燃料電池蓄電池が開示されている。
【0006】
燃料電池は、燃料ガスの供給を受けて電気に変換する発電設備であり、一般に自ら燃料ガスを生成する能力がない。しかし、特許文献5には、余剰電力を用いて燃料ガスの生成が可能な燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−348694号公報
【特許文献2】特開2005−65398号公報
【特許文献3】特開2010−15729号公報
【特許文献4】特開2010−15783号公報
【特許文献5】WO2013/145468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二次電池は、蓄電することが可能である。また、出力特性に優れていて負荷追従性が良好である。しかし、負極及び正極の活物質の量は、電池の容積に依存する。このため、電池に蓄えることのできる電気容量には限界がある。そして、二次電池は、エネルギー密度を大幅に高めることは困難である。
【0009】
一方、燃料電池は、外部から供給される水素ガスあるいは酸素ガスを用いて発電(放電)する。このため、燃料電池は、二次電池が有するような、エネルギー密度の限界に関する問題は生じない。しかし、従来の燃料電池は、ガス拡散電極という気体と液体と固体が同時に接触する線を反応の空間にしているため、反応空間が少なく、反応速度が遅い。これを解決するために白金のような高価な触媒が必要であるなどの課題を抱えている。
【0010】
余剰電力により燃料ガスが生成可能である特許文献5に記載の燃料電池は、正極に二酸化マンガンを使用し、負極に水素吸蔵合金を使用しているため、燃料電池としての端子電圧は0.6Vと小さく、必ずしも発電効率が良いとは言えない。
【0011】
また、系統に接続して不足電力を補う場合は、インバータを設置して燃料電池の出力を交流に変換する必要があり、設備費が嵩むといった問題がある。
【0012】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、エネルギー密度が高く、負荷追従性に優れ、発電効率が高く、交流変換設備を必要としないリバーシブル燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した目的を達成するために、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、水素吸蔵合金を含む負極と、二酸化マンガンを含む正極と、水酸化ニッケルを含む中間電極と、前記各電極間に介在しイオンは通すが電子は通さないセパレータとを備え、前記負極における酸化反応と前記中間電極における還元反応により、前記中間電極が放電され、前記正極における還元反応と前記中間電極における酸化反応により、前記中間電極が充電される。
【0014】
この構成において、中間電極は正極と負極の間に配置されている。なお、リバーシブル燃料電池とは燃料ガスと電気エネルギーを可逆的に変換することができる蓄電が可能な燃料電池のことをいう。水素ガスにより充電された負極と、酸素ガスにより充電された正極が中間電極を介して酸化還元反応を行うことにより、当該リバーシブル燃料電池は発電する。
【0015】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記負極が水素ガスに接触しており、前記正極が酸素ガスに接触している。この構成において、電池内部または外部から供給された水素ガスおよび酸素ガスにより、それぞれ、負極および正極が化学的に充電される。二酸化マンガンは反応速度が遅いが、二酸化マンガンは常に酸素ガスに接触して充電されているので、反応速度の遅さをカバーしている。
【0016】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記負極が前記水素吸蔵合金、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する。本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記負極の前記導電助剤がカーボンを有する。また、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記負極の集電体が金属多孔体である。金属多孔体であるので水素ガスとの接触面積が広く、反応速度向上に寄与する。
【0017】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記正極が前記二酸化マンガン、導電助剤、および、結着剤の造粒混合物を有する。また、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記正極の前記導電助剤がオキシ水酸化コバルトを有する。更に、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記正極の前記導電助剤がさらにオキシ水酸化ニッケルを有する。また、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記正極の集電体が金属多孔体である。
【0018】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記中間電極がガス不透過性を有している。水素ガスに面した負極と酸素ガスに面した正極の間に配された中間電極はガス不透過性を有するので、水素ガスと酸素ガスが電池内部で接触することがない。
【0019】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、各々が前記負極と、前記中間電極と、前記正極とを有する複数の電極スタックと、前記電極スタックの間に配された隔離シートとを備える。この構成において、負極と中間電極と正極で構成される電極スタックの間に絶縁性およびイオン不透過性を有する隔離シートを配置して、電極反応を電極スタック毎に行う。すなわち、電極スタックの数を変更することにより本リバーシブル燃料電池の容量を調節することができる。
【0020】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記正極の電極容量が、前記負極および前記中間電極の電極容量よりも大きい。この構成において、大容量の正極に安価な二酸化マンガンを用いることにより、経済性に優れたリバーシブル燃料電池を構成することができる。また、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記負極の電極容量が、前記中間電極の電極容量よりも大きい。
【0021】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、トランスと、第1端子と、第2端子と、前記第1端子および第2端子のいずれか一方に選択的に接続され、かつ、前記トランスの第1端部に接続される共通端子とを有する切換スイッチと、前記第1端子と前記負極の間に配され前記負極への電流の流入を阻止する第1ダイオードと、前記第2端子と前記正極の間に配され前記正極からの電流の流出を阻止する第2ダイオードとをさらに備え、前記中間電極が前記トランスの第2端部に接続されている。
【0022】
この構成において、リバーシブル燃料電池は、第1端子と、第2端子と、前記第1端子および第2端子のいずれか一方に選択的に接続される共通端子とを有する切換スイッチと、アノードが前記負極に接続されカソードが前記第1端子に接続された第1ダイオードと、カソードが前記正極に接続されアノードが前記第2端子に接続された第2ダイオードと、前記共通端子と前記中間電極の間に配されたトランスとを備えている。この構成によれば、インバータを用いることなく交流電力を取り出すことができる。
【0023】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、前記切換スイッチの切換周波数が0.01〜500Hzである。この構成において、交流電力の周波数が10〜60Hzであることがより好ましい。
【0024】
本発明に係るリバーシブル燃料電池は、水素吸蔵合金を含む負極と、二酸化マンガンを含む正極と、水酸化ニッケルを含む中間電極と、前記各電極間に介在しイオンは通すが電子は通さないセパレータとを備え、前記負極における還元反応と前記中間電極における酸化反応により、前記負極から水素ガスが発生し、前記正極における酸化反応と前記中間電極における還元反応により、前記正極から酸素ガスが発生する。
【0025】
以上のように、本発明に係るリバーシブル燃料電池によれば、外部から供給される水素ガスおよび酸素ガスを用いて発電できると共に、別個に水素ガスおよび酸素ガスを蓄える貯蔵室を設けて、余剰電力等の電気エネルギーを燃料ガスとして貯蔵し、電気エネルギーに再変換して利用することが可能となる。このため、本リバーシブル燃料電池は、外部に取り出すことができる電気エネルギーは、電極材料に含まれる活物質の量に依存しないので高エネルギー密度化を図ることが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、従来の密閉型二次電池においては過充電時に熱として廃棄されていたエネルギーを化学エネルギーに変換して再利用できるので、エネルギー利用効率が向上する。
更に、本発明に係るリバーシブル燃料電池は、二次電池の電極反応を介して電気エネルギーを入出力するので、従来の燃料電池と比較して、充電が可能となるとともに負荷変動に対する追従性が大幅に改善される。しかもこのようなリバーシブル燃料電池を、ガス供給のための追加の部材・装置を要しない簡単な構造を採用することによって、安価に製造・提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のリバーシブル燃料電池は、エネルギー密度が高く、反応速度に優れている。また、本発明のリバーシブル燃料電池は、電気分解により発生する酸素ガスおよび水素ガスを大気圧に放出することなく高圧の状態で保存するのでガス発生効率に優れている。また、本発明のリバーシブル燃料電池は、端子電圧が高いので発電効率に優れている。更に、高価なインバータを必要としないので安価なリバーシブル燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のリバーシブル燃料電池に係る電池ユニットの構造を模式的に示す図である。
図2】電池ユニットのバリエーションについてその構成を模式的に示す図である。
図3】電池ユニットの発電時の反応サイクルを説明するためのチャートである。
図4】電池ユニットの発電時の動作を説明するための電気接続図である。
図5】電池ユニットの発電時の切換スイッチの動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変更が可能である。
【0030】
まず、実施形態に係るリバーシブル燃料電池の主要な構成要素である電極について説明し、その後にリバーシブル燃料電池について詳細な説明を行う。
【0031】
<負極の活物質>
負極の活物質として用いられる水素吸蔵合金は、水素の吸蔵・放出が行えるものであれば特に限定されない。例えば、希土類系合金であるAB5型、ラーベス相合金であるAB2型、チタン−ジルコニウム系合金であるAB型、マグネシウム系合金であるA2B型などの合金系が挙げられる。
【0032】
このうち、水素貯蔵容量、充放電特性、自己放電特性およびサイクル寿命特性の観点から、AB5型の希土類−ニッケル合金である、MmNiCoMnAlのミッシュメタルを含んだ5元系合金であることが好ましい。
【0033】
<正極の活物質>
正極の活物質は、二酸化マンガンが好ましい。二酸化マンガンは安価で環境への負荷が小さいという特徴がある。なお、高容量化を達成しやすいことから、正極の活物質は、嵩密度が大きなもの、例えば球状のものが好ましい。
【0034】
<中間電極の活物質>
中間電極の活物質は水酸化ニッケルが好ましい。なお、高容量化を達成しやすいことから、中間電極の活物質は、嵩密度が大きなもの、例えば球状のものが好ましい。
【0035】
<結着剤>
結着剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)を含む。活物質、結着剤および導電助剤等の電極材料の合計を100質量%とした場合、各電極に配合される結着剤の質量比は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0036】
<導電助剤>
導電助剤は、導電性を有する粉末であればよい。この導電助剤は、例えば、黒鉛粉末、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどの、カーボン粉末が好ましい。もしくはオキシ水酸化コバルトが好ましい。活物質、結着剤および導電助剤等の電極材料の合計を100質量%とした場合、各電極に配合される導電助剤の質量比は、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0037】
[負極]
活物質として水素吸蔵合金、導電助剤としてカーボンブラック、および、結着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、その配合割合は質量比で100:15:10とした。粉末状の上記負極材料を混合した後、造粒したものをペースト状に混練して、このペーストを2枚の集電体の間にサンドイッチ状に配置して、乾燥後にローラープレスで集電体を圧延して負極を製作した。なお、集電体としは、発泡状もしくは繊維状のニッケル金属多孔体が好ましく、本実施形態ではニッケルフォームを用いたが、ガス透過性を有するものであればこれに限定されない。ガス透過性があれば水素ガスとの接触面積が増加して反応速度に寄与する。
【0038】
[正極]
活物質として二酸化マンガン、導電助剤としてオキシ水酸化コバルト、および、結着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、その配合割合は質量比で100:5:5とした。粉末状の上記正極材料を混合した後、造粒したものをペースト状に混練して、このペーストを2枚の集電体の間にサンドイッチ状に配置して、乾燥後にローラープレスで集電体を圧延して正極を製作した。なお、集電体としは、発泡状もしくは繊維状のニッケル金属多孔体が好ましく、本実施形態ではニッケルフォームを用いたが、ガス透過性を有するものであればこれに限定されない。ガス透過性があれば酸素ガスとの接触面積の増加が望める。なお、導電助剤として、更にオキシ水酸化ニッケルを加えてもよい。
【0039】
造粒を行うことにより固気液三相反応面を作ることができて、反応速度が速くなる。燃料電池における反応速度が遅いという従来からの問題を、電極材料に造粒処理を施すことにより克服することができる。
【0040】
[中間電極]
活物質として水酸化ニッケル、導電助剤としてカーボンブラック、結着剤としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を用い、その配合割合は質量比で100:15:10とした。粉末状の上記中間電極材料を混合してペースト状に混練して、このペーストを集電体の両面に塗工して、乾燥後にローラープレスで集電体を圧延して中間電極を製作した。なお、集電体としてニッケルメッキしたパンチング鋼板を用いたが、エキスパンドメタルであってもよい。形状は箔状もしくは板状であってもよく、材質は白金であってもよい。このようにして製作された中間電極はガス不透過性を有しているので、中間電極を介して水素ガスと酸素ガスが接触することはない。なお、集電体に設けられた孔はイオンの透過を可能にする。
【0041】
[電極容量比]
活物質の電極容量比は質量比で、中間電極1に対して、負極2、正極10としたが負極はこれより大きくてもよい。正極の容量を大きくしたのは、正極の活物質である二酸化マンガンの反応速度が他の電極の活物質のそれよりも小さいのを補償するためである。正極の容量比は、負極のそれより大きければ、10より小さくてもよい。
【0042】
[電解液]
本発明で用いられる電解液は、水電解で通常用いられているアルカリ水溶液であれば特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ物質を一種単独もしくは二種以上を水に溶かしたものが好適である。電池の出力特性の観点から、電解液は水酸化カリウム水溶液であることが好ましい。電解液におけるアルカリ物質の濃度は、1〜10mol/Lであることが好ましく、3〜8mol/Lがより好ましい。
【0043】
[セパレータ]
本発明で用いられるセパレータは、電子は通さず、イオンを透過させ、ガスを通過しにくいものが好ましい。セパレータの形状としては、微多孔膜、織布、不織布、圧粉体が挙げられ、このうち、出力特性と作製コストの観点から不織布が好ましい。セパレータの材料としては、特に限定されないが、耐アルカリ性、耐酸化性、耐還元性を有することが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0044】
セパレータの厚さは5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲がより好ましい。厚さが5μm未満であるとレアショートの可能性が大きくなり、500μm以上であると電気抵抗が大きくなり、熱損失が増加する。本実施形態においては厚さ120μmのポリプロピレン製の不織布を採用した。
【0045】
[隔離シート]
本発明で用いられる隔離シートは、絶縁性を有しており、電子もイオンも透過させず、ガスも通過しない。隔離シートの材質としては、ポリプロピレンとし、シート状に加工したものを用いたが、例えば、ポリエチレン、66ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂であってもよい。
【0046】
本発明に係るリバーシブル燃料電池の主要構成要素である電池ユニットについて図1を用いて説明する。
電池ユニット20は、水素および酸素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して利用するリバーシブル燃料電池に関し、正極11と、中間電極13と、負極12と、正極11−中間電極13間に介在するセパレータ14と、負極12−中間電極13間に介在するセパレータ14と、これら電極群を収納する密閉容器(図示せず)とを主要な構成要素として備えている。
【0047】
正極11、負極12および中間電極13は、正極11−中間電極13間および負極12−中間電極13間にイオンは通すが電子は通さないセパレータ14を配して積層されている。セパレータ14は各電極11、12,13を電気的に短絡するのを防止すると共に、電解液を保持する役割を果たす。セパレータ14をその間に配した各電極は積層されて電極スタック10を構成する。電極の枚数を調節することにより、リバーシブル燃料電池の規模を容易に調節することができる。
【0048】
正極11、負極12および中間電極13は、それぞれ、端部に外部機器との接続端子11t、12tおよび13tを有している。接続端子11t、12t、13tは、それぞれ、電線22a,22b,22cでスイッチユニット21に接続されている。スイッチユニット21には、燃料電池作動モードと燃料ガス発生モードとのモード選択スイッチ(図示せず)が配置されている。
【0049】
負極12は、負極12の電極面に開口した水素流通口18を有している。また、正極11は、正極11の電極面に開口した酸素流通口17を有している。水素流通口18は配管35bにより、水素ガス貯蔵室34に接続されている。酸素流通口17は配管35aにより、酸素ガス貯蔵室33に接続されている。これにより、負極は水素ガスに接触しており、正極は酸素ガスに接触している。
【0050】
正極11と中間電極13と負極12とがセパレータ14を介して積層して電極スタック10を構成するほか、積層した状態で蛇腹状に折りたたんで電極スタック10を構成してもよく、また、積層した状態で渦巻き状に捲回して電極スタック10を構成してもよい。また、電解液はセパレータ14に含浸させてもよく、電解液が満たされた密閉容器に電極スタック10を浸漬してもよい。要するにセパレータ14が電解液を保持していればよい。
【0051】
酸素流通口17には塩濃度調整装置(図示せず)が接続されていて、電池ユニット20の作動により劣化した電解液の品質が保持される。具体的には、燃料電池作動モードで排出された電解液中の水分は、塩濃度調整装置に配置された逆浸透膜により、選択的に系外に排出される。また、燃料ガス発生モードで水分が消費され塩分濃度が高くなった電解液は、塩濃度調整装置から水の補給を受け適正な塩分濃度を維持する。
【0052】
電池ユニット20のバリエーションについて図2を用いて説明する。各電極の間にセパレータ14が配されていることは図1と共通している。正極11−中間電極13−負極12が一つの組になって積層されて電極スタック10を構成する。図2には便宜上2つの電極スタック10が示されているが、その数については特に制限はない。左右2つの電極スタック10の間には隔離シート19が配置されている。隔離シート19は絶縁性を有しているので、2つの電極スタック10は互いに絶縁されている。また、隔離シート19はイオン透過性もなく、ガス透過性もないので2つの電極スタック10は互いに独立した化学反応をする。
【0053】
図2において、複数の正極11の接続端子11tは互いに接続されて電線22aを介してスイッチユニット21に接続され、複数の負極12の接続端子12tは互いに接続されて電線22bを介してスイッチユニット21に接続され、複数の中間電極13の接続端子13tは互いに接続されて電線22cを介してスイッチユニット21に接続されている。
各負極12の水素流通口18は配管35bにより、水素ガス貯蔵室34に接続されており、各正極11の酸素流通口17は配管35aにより、酸素ガス貯蔵室33に接続されている。
【0054】
上記のように構成されたリバーシブル燃料電池の動作について、燃料電池作動モードと燃料ガス発生モードに分けて説明する。
【0055】
(燃料電池作動モード)
燃料電池作動モードは、水素ガス貯蔵室34および酸素ガス貯蔵室33にそれぞれ貯蔵された水素ガスおよび酸素ガスにより発電を行うモードである。すなわち、負極12は水素ガスにより充電状態にあり、正極11は酸素ガスにより充電状態にある。このとき、負極12における酸化反応と、中間電極13における還元反応により、中間電極13が放電する。一方、正極11における還元反応と、中間電極13における酸化反応により、中間電極13が充電される。このとき、電池ユニット20は燃料電池として動作する。図3は燃料電池作動モードにおける各電極の反応サイクルを示したチャートである。水素ガスおよび酸素ガスは、後述する燃料ガス発生モードで蓄えた水素ガスおよび酸素ガスを使用してもよく、他所で製造された水素ガスおよび酸素ガスを使用してもよい。以下、燃料電池作動モードについて、反応式を用いて説明を行う。
【0056】
負極12は水素ガス貯蔵室34に貯えられた水素ガスにより充電することができる。その反応式を(1)式に示す。
2M + H → 2MH (1)
また正極11は酸素ガス貯蔵室33に貯えられた酸素ガスにより充電することができる。その反応式を(2)式に示す。
4MnOOH + O → 4MnO + 2HO (2)
負極12および正極11が充電状態にあれば、電池ユニット20は燃料電池として発電することができる。このことを以下に説明する。
【0057】
(ステップ1)
充電状態にある負極12および中間電極13が放電をする。
反応式で示すと、中間電極13の放電は、負極12における酸化反応と、中間電極13における還元反応により進む。この反応は図3の(*1)で示すサイクルに図示されている。
負極12の反応式は、(3)式となる。
2MH + 2OH- → 2M + 2HO + 2e- (3)
一方、中間電極13の反応式は、(4)式となる。
NiOOH + HO + e- → Ni(OH) + OH- (4)
(3)式において放電した負極12は、水素ガスにより直ちに充電されることは(1)式に示す通りである。
【0058】
このとき、水素吸蔵状態の負極12(MH)の標準電極電位は−0.8Vであり、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)の標準電極電位は+0.48Vであるので、負極12と中間電極13の電位差は、0.48−(−0.8)=1.28Vとなる。
【0059】
(ステップ2)
充電状態にある正極11が放電し、中間電極13が充電する。
反応式で示すと、正極11における還元反応と、中間電極13における酸化反応により、中間電極13が充電される。この反応は図3の(*2)で示すサイクルに図示されている。
正極11の反応式は(5)式となる。
MnO + HO + e- → MnOOH + OH- (5)
一方、中間電極13の反応式は、(6)式となる。
Ni(OH) + OH- → NiOOH + HO + e- (6)
(5)式において放電した正極11は、酸素ガスにより直ちに充電されることは(2)式に示す通りである。
ステップ1とステップ2を含めた、正極11、中間電極13および負極12の全反応は(7)式となる。
O → H + 1/2O (7)
【0060】
このとき、充電状態にある正極11(MnO)の標準電極電位は+0.15Vであり、水酸化ニッケル(Ni(OH))の標準電極電位を0Vとすれば、正極11と中間電極13との電位差は、0.15−0=0.15Vとなる。したがって、ステップ1における電位差と合わせて、本発明に係るリバーシブル燃料電池の正極11と負極12間の電位差は、最大で0.15+1.28=1.42Vとなる。この電位差は従来の燃料電池に比べて大きいので、本発明に係るリバーシブル燃料電池は発電効率において従来の燃料電池と比べて優れている。
【0061】
水素吸蔵合金の反応速度は水酸化ニッケルの反応速度よりも遅く、反応速度に差がある。本実施形態のリバーシブル燃料電池において、水素吸蔵合金を活物質とする負極12の電極容量は、水酸化ニッケルを活物質とする中間電極13の電極容量より大きく調製されているので、全体の反応速度は負極12および中間電極13においてバランスがとれたものとなっている。
【0062】
燃料電池作動モードについて図4を用いて各電極の通電方法を説明する。正極11、負極12および中間電極13は、切換スイッチ28を介して、トランス29に接続されている。切換スイッチ28は、第1端子a、第2端子bおよび共通端子cを有する。共通端子cはトランス29の一端に接続され、第1端子aは第1ダイオード26を介して負極12に接続され、第2端子bは第2ダイオード27を介して正極11に接続されている。中間電極13は直接トランス28の他端に接続されている。切換スイッチ28を動作させることにより、共通端子cが第1端子aもしくは第2端子bに選択的に接続される。なお、第1ダイオード26は負極12への電流の流入を阻止する向きに取付けられており、第2ダイオード27は正極11からの電流の流出を阻止する向きに取付けられている。
【0063】
負極12と中間電極13が反応を行うステップ1において、切換スイッチ28は、共通端子cが第1端子aに接続される。正極11と中間電極13が反応を行うステップ2において、切換スイッチ28は、共通端子cが第2端子bに接続される。この切換動作により、リバーシブル燃料電池が生成する電圧の波形の一例を図5に示す。図5において、縦軸は中間電極13を基準にした電位差を示し、横軸は時間を示す。本実施形態では切換動作は60Hzで行った。図5では矩形波で示されているが実際は各電極における反応の進み具合に応じた正弦波に近い波形となる。また、負側のピーク電位は約0.1V,正側のピーク電位は約1.2Vとなる。つまり、リバーシブル燃料電池の発生電圧は1.3V程度となる。
【0064】
上記の説明の通り、トランス29の一次側両端には60Hzの交番電界が作用することになる。トランス29の一次側と二次側は絶縁されているので、トランス29の二次側には直流成分を有さない交流電圧が発生する。すなわち、トランス29から交流電力を取出すことができる。このトランス29は、一次側に有していた直流成分をカットする働きを有すると共に、発生する電圧の大きさを変えることができる。
【0065】
従来の燃料電池では系統に接続するためには直流を交流に変換するインバータを必要としていた。しかし、本実施形態によれば、リバーシブル燃料電池の出力は直流ではなく交流電力となる。インバータの設置を必要とすることがないので簡素で安価な電源とすることが可能となる。
【0066】
(燃料ガス発生モード)
燃料ガス発生モードは、電極反応を利用して水素ガスと酸素ガスが発生するモードである。このモードでは、負極12からは水素ガスが、正極11からは酸素ガスがそれぞれ発生するが、これら水素ガスおよび酸素ガスは、互いに接触することなく、別個に水素ガス貯蔵室34および酸素ガス貯蔵室33にそれぞれ貯蔵される。
燃料ガス発生モードについて、水素ガス発生ステップと酸素ガス発生ステップに分けて、反応式を用いて説明を行う。
【0067】
(ステップ1)
ステップ1は水素発生反応ステップである。負極12に直流電源(図示せず)のマイナス極を接続し、中間電極13にプラス極を接続して負極12の充電を行った場合、負極12の反応式は(8)式となる。
2M + 2HO +2e- → 2MH + 2OH- (8)
なお、式中Mは水素吸蔵合金を表す。そして、負極12が満充電になり水素吸蔵合金が水素を吸蔵しなくなると、(9)式の反応式により負極12から水素が発生する。
このとき、負極12の全反応式は(9)式となる。
2HO + 2e- → 2OH- + H (9)
一方、中間電極13は、水酸化イオンを取り込んで充電され、反応式は(10)式となる。
2Ni(OH) + 2OH- → 2NiOOH + 2HO + 2e-(10)
中間電極13が満充電となると、反応を停止する。
このとき、中間電極13と負極12の全反応式は、(9)式と(10)式から(11)式となる。
2Ni(OH) → 2NiOOH + H (11)
【0068】
(ステップ2)
ステップ2は酸素発生反応ステップである。中間電極13に直流電源のプラス極を接続し、正極11にマイナス極を接続した場合、正極11の反応式は(12)式となる。
MnOOH + OH- → MnO + HO + e- (12)
ここで、正極11は酸素ガスに接触しており満充電状態なので、(13)式の反応式により正極11から酸素が発生する。
2OH- → 2e- + HO + 1/2O (13)
一方、中間電極13の反応式は(14)式となる。
2NiOOH + 2HO + 2e- → 2Ni(OH) + 2OH-(14)
そして、正極11と中間電極13の満充電前の全反応式は、
(12)式と(14)式から(15)式となる。
MnOOH + NiOOH → MnO + Ni(OH) (15)
一方、正極11と中間電極13の全反応式は(13)式と(14)式から(16)式となる。
2MnO + HO → MnOOH + 1/2O (16)
ステップ1とステップ2を含めた、負極12、中間電極13および正極11の全反応式は(17)式となる。
O → H + 1/2O (17)
【0069】
以降、ステップ1を実施することにより負極12からは水素ガスが発生し、発生した水素ガスは水素ガス貯蔵室34に貯えられる。また、ステップ2を実施することにより正極11からは酸素ガスが発生し、発生した酸素ガスは酸素ガス貯蔵室33に貯えられる。
上記水素発生反応ステップの特徴は、酸素発生反応において水を電気分解して生じた水素を水素吸蔵合金に貯えておき、電極の酸化還元反応を利用して水素を取り出すことにある。
【0070】
上記ステップ1とステップ2の反応を交互に繰り返し行うことにより、水素ガスと酸素ガスとを時間差をおいて発生させることができる。時間差を設けることにより、水素と酸素を高い純度を維持した状態で簡単かつ安全に分離・捕集することができる。ここで注目すべきことは、水素および酸素の発生量はそれぞれ(9)式および(16)式で示す通り、水素吸蔵合金および二酸化マンガンの量により規制されるところ、ステップ1とステップ2とを繰り返すことにより、水素および酸素の発生を継続的に行うことができる。つまり、正極11に安価な二酸化マンガンを導入することにより、反応に必要な水酸化ニッケルの量を減らすことが可能となる。
【0071】
燃料ガス発生モードを図1を用いて説明する。スイッチユニット21にはモード選択スイッチ(図示せず)が内蔵されており、接続端子11t、12t、13tは、スイッチユニット21に収納されている直流電源に選択的に接続可能になっている。具体的には、水素発生反応ステップでは、直流電源のマイナス側が負極12に接続され、プラス側が中間電極13に接続される。酸素発生反応ステップでは、直流電源のマイナス側が中間電極13に接続され、プラス側が正極11に接続される。
【0072】
本実施形態に係るリバーシブル燃料電池は、二次電池として電気による充電により電極に蓄えることのできるエネルギーに加えて、過充電時に供給される電気エネルギーを、各ガス貯蔵室33,34にガスとして蓄え、これを電気エネルギーに再変換して利用することが可能である。よって、従来の二次電池とは異なり、リバーシブル燃料電池の電気容量は、活物質の量による制限を受けないので、リバーシブル燃料電池のエネルギー密度は、従来の二次電池と比較して、大幅に向上することが可能となる。しかもガス貯蔵室33および34には、過充電時に、正極11で発生した酸素ガスおよび負極12で発生した水素ガスが、直接貯蔵されるので、ガスの昇圧装置あるいは連通路を追加で設ける必要がなく、簡素な構造とすることができる。
【0073】
さらに、上述のように、リバーシブル燃料電池の放電時には、電池反応に基づき、電気エネルギーが出力される。このため、従来の燃料電池と比較して、負荷に対する追従性およびパワーが、大幅に向上する。これにより、リバーシブル燃料電池は、瞬間的な高出力を要求される負荷変動の大きい用途に使用されることも可能である。この際、リバーシブル燃料電池は、追加の二次電池あるいはキャパシタなどの蓄電デバイスを必要とすることなく、単独で使用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のリバーシブル燃料電池は、産業用および民生用の燃料電池として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 電極スタック
11 正極(11t:接続端子)
12 負極(12t:接続端子)
13 中間電極(13t:接続端子)
14 セパレータ
17 酸素流通口
18 水素流通口
19 隔離シート
20 電池ユニット
21 スイッチユニット
22a,22b,22c 電線
26 第1ダイオード
27 第2ダイオード
28 切換スイッチ
29 トランス
33 酸素ガス貯蔵室
34 水素ガス貯蔵室
【要約】
二次電池は蓄電することが可能であるが、電池に蓄えることのできる電気容量には限界がある。一方、燃料電池は燃料ガスを供給すれば発電が可能であるが、負荷追従性が劣る。本発明に係るリバーシブル燃料電池は、水素吸蔵合金を含んだ負極と、二酸化マンガンを含んだ正極と、水酸化ニッケルを含んだ中間電極を備えており、発電を行うと共に燃料ガスの生成が可能である。本リバーシブル燃料電池は、負極における酸化反応と、中間電極における還元反応により、中間電極が放電され、正極における還元反応と、中間電極における酸化反応により、中間電極が充電されることにより発電が行われる。また、負極と中間電極間の酸化還元反応により負極から水素ガスが発生し、正極と中間電極間の酸化還元反応により正極から酸素ガスが発生する。
図1
図2
図3
図4
図5