特許第6856295号(P6856295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6856295
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0232 20140101AFI20210329BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   H01L31/02 D
   H01L31/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-502631(P2021-502631)
(86)(22)【出願日】2020年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2020039130
【審査請求日】2021年1月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】磯村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−320081(JP,A)
【文献】 特開2011−119484(JP,A)
【文献】 特開2017−92179(JP,A)
【文献】 特開2011−91128(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第109461778(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0232、31/08−31/119
H01L 27/144−27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1面に第1半導体層と光吸収層と第2半導体層をこの順に積層させて形成された受光部を有し、前記半導体基板の前記第1面に対向する第2面側に前記受光部の中心線と同心に形成された集光レンズを有する半導体受光素子において、
前記第2半導体層の表面に、前記光吸収層側が凹面状に形成された第1反射部を備え、
前記集光レンズは、前記中心線の近傍の窓部と、前記窓部の外側に環状に且つ前記光吸収層側が凹面状に形成された第2反射部を備え、
前記窓部から前記受光部に入射して前記光吸収層を透過した光が、前記第1反射部によって反射されて前記光吸収層を再度透過し、前記光吸収層を再度透過した光の一部が前記第2反射部によって反射されて前記受光部に再入射するように構成したことを特徴とする半導体受光素子。
【請求項2】
前記第1反射部の曲率半径は、前記第1反射部で反射された光が前記光吸収層と前記集光レンズの間に集光した後広がって前記第2反射部に入射するように設定されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記第1反射部で反射された光が前記第2反射部に入射する入射点において、入射する光線と前記第2反射部の法線が重なる又は接近するように前記第2反射部の曲率半径が設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられる半導体受光素子に関し、特に素子容量を小さくし、且つドリフト時間を短縮することにより高速動作可能な半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光通信分野では、光ファイバケーブルを介して通信される情報量の増加に対応するために、伝送速度を高速化する技術の開発が進められている。伝送速度を高速化するために、受光した光信号を電気信号(光電流)に変換する受光素子を高速動作させることが要求されている。
【0003】
受光素子としては、面入射型の半導体受光素子が広く利用されている。面入射型の半導体受光素子は、半導体基板の第1面側に光吸収層を有する受光部を備え、第1面側又は第1面に対向する第2面側に配置された光ファイバケーブルから出射された光が、受光部に光吸収層の厚さ方向に入射される。この半導体受光素子を高速動作させるために、素子容量及び素子抵抗の低減と、受光部の光吸収層で生成した電荷(キャリア)のドリフト時間の短縮が要求されている。
【0004】
素子容量の低減には、受光部の面積を小さくすることが必要である。例えば40GHz程度の周波数帯域で使用される面入射型半導体受光素子では、要求される受光部の直径は10μm程度になる。しかし、受光部が小型化されると受光量が減少するので、受光感度が低下する。
【0005】
一方、ドリフト時間の短縮には、受光部の光吸収層の厚さを薄くすることが必要である。例えば40GHz程度の周波数帯域で使用される半導体受光素子では、光吸収層の厚さを1μm以下にすることが要求される。光吸収層が薄いので、光をキャリアに変換する量子効率が低下し、受光感度が低下する。その上、光吸収層を薄くすると素子容量が大きくなる。
【0006】
上記のように、高速化しながら受光感度の低下を軽減することは容易ではない。そこで、例えば特許文献1のように、高速化のために受光部の面積を小さくしたときに受光感度の低下を軽減するために、半導体基板に一体的に形成された集光レンズを有する半導体受光素子が知られている。光が広がるため受光部に到達できない光も集光レンズで集光して受光部に入射させるので、面積が小さい受光部でも受光感度の低下が軽減される。
【0007】
また、高速化のために光吸収層を薄くしたときの受光感度の低下も軽減するために、特許文献2のように、集光レンズで集光して受光部に入射させ、光吸収層を透過した光を反射させて光吸収層を再度透過させ、この光を集光レンズの中央部表面に形成された金属反射膜によって受光部に向けて反射させる半導体受光素子が知られている。光が光吸収層を複数回透過して量子効率が向上するので、受光感度の低下が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−105585号公報
【特許文献2】特開平6−77518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1では、光吸収層を薄くした場合に受光感度の低下を防ぐことができないので、受光感度の低下の軽減と高速化の両立が困難である。また、特許文献2のように、集光レンズの中央部表面に形成された金属反射膜は、入射光を集光レンズ全域に入射させる場合に光強度が強い光軸及びその近傍の光を遮ってしまうので、受光感度の向上が限定的になり、却って受光感度が低下する虞もある。
【0010】
本発明の目的は、高速化に伴う受光感度の低下を軽減することができる半導体受光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明の半導体受光素子は、半導体基板の第1面に第1半導体層と光吸収層と第2半導体層をこの順に積層させて形成された受光部を有し、前記半導体基板の前記第1面に対向する第2面側に前記受光部の中心線と同心に形成された集光レンズを有する半導体受光素子において、前記第2半導体層の表面に、前記光吸収層側が凹面状に形成された第1反射部を備え、前記集光レンズは、前記中心線の近傍の窓部と、前記窓部の外側に環状に且つ前記光吸収層側が凹面状に形成された第2反射部を備え、前記窓部から前記受光部に入射して前記光吸収層を透過した光が、前記第1反射部によって反射されて前記光吸収層を再度透過し、前記光吸収層を再度透過した光の一部が前記第2反射部によって反射されて前記受光部に再入射するように構成したことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、窓部から受光部に入射して光吸収層を透過した光は、第1反射部で反射されて光吸収層を再度透過する。そして、光吸収層を再度透過した光の一部が、第2反射部で反射されて受光部に再入射する。従って、窓部から入射した光は受光部の光吸収層を2回透過し、そのうちの一部は第2反射部によって反射されて光吸収層を再び透過することができる。それ故、量子効率が向上するので、半導体受光素子の高速化のために光吸収層を薄くした場合の受光感度の低下を軽減することができる。
【0013】
請求項2の発明の半導体受光素子は、請求項1の発明において、前記第1反射部の曲率半径は、前記第1反射部で反射された光が前記光吸収層と前記集光レンズの間に集光した後広がって前記第2反射部に入射するように設定されたことを特徴としている。
上記構成によれば、集光されて光吸収層を透過した光は、高速化のために受光部と共に小型化された第1反射部によって、窓部の外側の第2反射部に向かって広がるように反射される。それ故、窓部から入射した光は第1反射部で反射され、第1反射部で反射された光の一部が第2反射部で反射されるので、窓部から入射した光が光吸収層を複数回透過して量子効率が向上し、受光感度の低下を軽減することができる。
【0014】
請求項3の発明の半導体受光素子は、請求項1又は2の発明において、前記第1反射部で反射された光が前記第2反射部に入射する入射点において、入射する光線と前記第2反射部の法線が重なる又は接近するように前記第2反射部の曲率半径が設定されたことを特徴としている。
上記構成によれば、第1反射部で反射された光が第2反射部で反射されたときに、この第2反射部で反射された光を元の第1反射部の反射点に一致又は接近させて第1反射部に入射させることができる。従って、光吸収層を透過した光を第2反射部で反射させて光吸収層に再入射させることができ、半導体受光素子の高速化のために光吸収層を薄くした場合の受光感度の低下を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体受光素子によれば、高速化に伴う受光感度の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る半導体受光素子を集光レンズ側から見た平面図である。
図2図1のII−II線に対応する入射光の入射経路を示す断面図である。
図3図2の集光レンズと第1反射部と第2反射部の関係の説明図である。
図4】第2反射部に入射する光線に直交する直線と第2反射部の接線の関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図1図2に示すように、半導体受光素子1は、半導体基板2として例えばn−InP基板の第1面2a側に受光部3を有する。第1面2aに対向する第2面2b側には、受光部3の中心線CLと同心に形成された集光レンズ4を有する。半導体基板2の第1面2aに、第1半導体層5としてn−InP層、光吸収層6としてInGaAs層、第2半導体層7としてp−InP層がこの順に積層されている。半導体基板2、第1半導体層5、第2半導体層7は、光通信に使用される赤外光に対して透明である。
【0019】
受光部3は、例えばエッチングによって第2半導体層7、光吸収層6、第1半導体層5を1つの円柱状又は円錐台状に形成し、この第2半導体層7の表面7a(光吸収層6と反対側の面)を部分球面状に形成したフォトダイオードである。第2半導体層7、光吸収層6、第1半導体層5を1つの正多角柱状又は正多角錐状に形成した後、第2半導体層7の表面7aを部分球面状に形成して受光部3を形成することもできる。
【0020】
部分球面状の表面7aは、外縁部分を除いて誘電体膜8a(例えばSiN膜、SiO2膜)によって覆われている。そして、第2半導体層7の表面7aと誘電体膜8aを覆うように、金属膜8b(例えばTi膜とAu膜の積層膜)が選択的に堆積されて、光吸収層6側が凹面状の反射面になった第1反射部8が形成されている。
【0021】
金属膜8bは、第2半導体層7の表面7aの外縁部分に接続され、半導体受光素子1の電極(アノード電極)になっている。表面7aの外縁部分以外では、金属膜8bと第2半導体層7との間に誘電体膜8aを備えているので、金属膜8bと第2半導体層7との界面における合金化による凹凸の発生が防止され、滑らかな反射面が形成されている。受光部3の側面は、保護膜(例えばSiN膜、SiO2膜)によって覆われていてもよい。
【0022】
受光部3から離隔した半導体基板2の第1面2a側の所定の領域には、例えばエッチングによって露出させた第1半導体層5に接続する電極11(カソード電極)が形成されている。電極11は半導体基板2の第2面2bにおける集光レンズ4から離隔した部位に形成されていてもよい。図示を省略するが、半導体受光素子1は第1面2a側が実装基板に固定され、且つアノード電極とカソード電極が実装基板上の対応する配線に夫々接続され、受光部3で変換された光電流が半導体受光素子1の外部に取り出される。
【0023】
集光レンズ4は、第2面2b側から第1面2a側に向かって半導体基板2をエッチングすることによって、受光部3の中心線CLと同心に形成された凸レンズである。この集光レンズ4の表面を含む半導体基板2の第2面2bには、入射光の反射防止用の反射防止膜12(例えばSiN膜)が形成されている。
【0024】
集光レンズ4の中心線CLの近傍には、光が入射する窓部14を有する。この窓部14は、曲率半径r2の部分球面状に形成されている。窓部14の曲率半径r2は第1反射部8の曲率半径r1よりも大きく設定され、例えばr1=50μm、r2=90μmである。
【0025】
窓部14の外側部分15の曲率半径r3は、窓部14の曲率半径r2よりも大きく、且つ窓部14から離れるにつれて徐々に大きくなるように設定されている。この外側部分15には金属膜16(例えばTi膜とAu膜の積層膜)が選択的に堆積され、窓部14を囲む環状且つ光吸収層6側が凹面状の第2反射部17が形成されている。
【0026】
光ファイバケーブルの出射端に相当する中心線CL上の点Iから出射された光は、例えば光線IL1,IL2で示すように発散角2θ(全角)を有して広がりながら空気中を進行し、集光レンズ4の窓部14から半導体受光素子1に入射する。半導体受光素子1の受光部3に入射する光は、集光レンズ4によって集光されて光吸収層6を透過し、第1反射部8で反射されて光吸収層6を再度透過する。
【0027】
第1反射部8は窓部14よりも曲率半径が小さい凹面状に形成されており、第1反射部8で反射された光は、光吸収層6と集光レンズ4の間に集光した後広がって集光レンズ4に到達する。集光レンズ4に到達した光うちの一部が、第2反射部17に入射する。
【0028】
第2反射部17に入射した光は、反射光線RL1,RL2で示すように第2反射部17によって半導体基板2の第1面2a側に向かって反射され、受光部3に再入射する。受光部3に再入射して光吸収層6を透過した光は、第1反射部8で反射されて光吸収層6をもう1回透過する。従って、窓部14から入射した光は光吸収層6を2回透過し、そのうちの一部の光が光吸収層6をさらに2回透過するので、量子効率が向上する。それ故、高速化のために光吸収層6を薄くした場合に、光吸収層6の厚さを実質的に補って、受光感度の低下を軽減することができる。
【0029】
図3は、集光レンズ4と第1反射部8と第2反射部17の関係の説明図である。集光レンズ4における曲率半径r2の部分球面状の窓部14を円弧R2で表し、曲率半径r2の円弧R2の中心を中心線CL上の点Oとする。また、第1反射部8の曲率半径r1の部分球面状の反射面を円弧R1で表し、曲率半径r1の円弧R1の中心をC1とする。点Oと中心C1を通る中心線CLに一致させた軸をy軸とし、点Oを通りy軸に直交する軸をx軸とし、点Oを原点とする。
【0030】
光吸収層6は、x軸と平行であり、中心C1と円弧R1(第1反射部8)の間に位置し、光吸収層6の中心をy軸が通る。また、第2反射部17の反射面を曲線R3で表し、円弧R2を延長した円弧R2aを二点鎖線で表している。集光レンズ4と第1反射部8と第2反射部17はy軸を中心とした対称な形状なので、光線IL1を例にして説明する。
【0031】
y軸上で集光レンズ4から距離hだけ離隔した点I(0,r2+h)から、光軸がy軸に一致するように光吸収層6に向けて光が出射され、光線IL1で示すように発散角θ(半角)を有して集光レンズ4の窓部14(円弧R2)に入射する。光線IL1の入射点を点P(x0,y0)とする。直線OPとy軸がなす角をαとし、直線OP(点Pにおける窓部14の法線)と線分IP(光線IL1)がなす角をγとする。このとき点P(x0,y0)とγとθは下記(1)〜(4)式のように表される。
(1)x0=r2×sin(α)
(2)y0=r2×cos(α)
(3)γ=θ+α
(4)θ=sin-1(x0/(x02+(r2+h−y0)21/2
【0032】
点Pから半導体基板2内に屈折して入射した光は、光吸収層6を透過して円弧R1上の点Q(x1,y1)に入射する。円弧R1の中心C1をy軸上の点C1(0,−t)とする。直線OPと線分PQがなす角をβとし、直線C1Q(点Qにおける第1反射部8の法線)と線分PQがなす角をδとする。点Qにおいて、y軸に直交する直線L1と円弧R1の接線T1がなす角をφとする。また、空気に対する半導体基板2の屈折率をnとする。このとき、βとδとφは下記(5)〜(7)式のように表される。
(5)β=sin-1(sin(γ)/n)
(6)δ=φ+α−β
(7)φ=−tan-1(x1/(y1+t))
【0033】
円弧R1上の点Qに入射した光は、半導体基板2の第2面2bに向けて反射され、第2反射部17の反射面を表す曲線R3上の点Sに入射する。直線L1と線分QSがなす角をσとする。このときσは下記(8)式のように表される。
(8)σ=π/2+α−β+2φ
【0034】
第2反射部17の曲率半径r3は、窓部14の曲率半径r2よりも大きく、且つ窓部14から離れるにつれて徐々に大きくなる。曲線R3上の点Sにおける第2反射部17の曲率半径r3の中心C3をy軸上の点C3とする。点Qで反射されて点Sに入射する光は、点Sで半導体基板2の第1面2aに向けて反射される。
【0035】
仮想的に曲率半径r2の部分球面状のレンズに第2反射部17に相当する仮想反射部を設けた場合、この仮想反射部が曲率半径r2の円弧R2aで表される。この場合、円弧R2aが線分QSと交差する点Sa(x2,y2)に入射した光は、直線OSa(仮想反射部の点Saにおける法線)に対して対称に反射されるので、反射光線RL1aで示すように光吸収層6に再入射させることができない。
【0036】
ここで、点Saにおける入射光線を表す線分QSaに直交する直線を直線Mとし、点Saにおける円弧R2aの接線を接線T2aとする。そして、図4に、直線OPとy軸がなす角αに対して、x軸に対する直線Mの傾斜角と点Saにおける接線T2aの傾斜角を示す。αが大きい程、即ち点Pがy軸(中心線CL)から離れる程、直線Mの傾斜角及び点Saにおける接線T2aの傾斜角が大きくなり、これらの角度の差も大きくなる。そして角度の差が大きくなる程、図3に示すように反射光線RL1aは点Saで入射方向から大きくずれた方向に反射されることになる。
【0037】
直線Mの傾きをm1とし、接線T2aの傾きをm2aとすると、傾きm1,m2aは下記(9),(10)式のように表される。
(9)m1=−1/tan(σ)
(10)m2a=−x2/y2
【0038】
円弧R1上の点Q(x1,y1)は下記(11),(12)式の関係を満たす。
(11)x12+(y1+t)2=r12
(12)y1−y0=(x1−x0)×tan(π/2−α+β)
【0039】
円弧R2a上の点Sa(x2,y2)は下記(13),(14)式の関係を満たす。
(13)x22+y22=r22
(14)y2−y1=(x2−x1)×tan(σ)
【0040】
以上の(1)〜(14)式の関係から、点P(x0,y0)とα、r1、r2、h、tを与えると、他の角β、γ、δ、θ、φ、σが定まり、点Q(x1,y1)と点Sa(x2,y2)が定まる。そして、直線C3S(点Sにおける第2反射部17の法線)が点Saを通る線分QSに重なる又は接近するように、直線QSa上に第2反射部17の曲率半径r3(線分C3S)を曲率半径r2よりも大きく設定した点Sを定めることができる。曲線R3は、窓部14に入射する光に対して上記のように定めた複数の点によって構成され、窓部14に近い点から順に曲率半径r3を徐々に大きくして曲線R3を定め、外側部分15が窓部14から滑らかに連なるようにすることができる。
【0041】
点Sにおける第2反射部17の接線T3の傾きを直線Mの傾きm1に近づけると、直線C3Sが線分QSに接近し、接線T3の傾きを直線Mの傾きm1に一致させた(接線T3を直線Mと平行にした)場合には、直線C3Sが線分QSに重なる。従って、点Sにおける第2反射部17の接線T3の傾きを入射光に直交する直線Mの傾きm1に一致又は近づけて設定することによって、点Sにおける曲率半径r3を設定することができる。そして、窓部14に入射する光に対して上記のように曲率半径r3を設定した複数の点によって曲線R3を定めることができる。
【0042】
半導体受光素子1の第2反射部17は、中心線CLを含む断面が上記のように定められた曲線R3で表される反射面を有する。これにより、点Saで反射光線RL1aのように反射されるはずだった光を点Sで反射させて、反射光線RL1で示すように光吸収層6に再入射させることができる。直線C3Sを線分QSに重ねた場合には、反射光線RL1は元の反射点Qに入射するので、確実に光吸収層6に再入射させることができ、点Qで反射して光吸収層6にもう1回入射させることができる。
【0043】
第2反射部17はy軸に対称なので、光線IL2についても光線IL1と同様に、反射光線RL2で示すように光吸収層6に再入射させることができる。
【0044】
上記のように第2反射部17は、中心線CLを含む断面が上記のように定められた曲線R3で表される反射面を有する。それ故、第2反射部17は、中心線CLから離れていても、窓部14に入射して第1反射部8で反射された光のうちの一部を反射光線RL1,RL2のように光吸収層6に再入射させることができる。そして、光吸収層6に再入射した光が第1反射部8で反射されて光吸収層6にもう1回入射するので、光吸収層6の厚さが実質的に4倍になって量子効率が向上し、光吸収層6を薄くした場合でも受光感度の低下を軽減することができる。尚、中心線CLに一致する光とその近傍の光は、第1反射部8で反射されると窓部14に到達して、半導体受光素子1の外部に出てゆく。
【0045】
上記半導体受光素子1の作用、効果について説明する。
半導体受光素子1の窓部14から受光部3に入射して光吸収層6を透過した光は、第1反射部8によって反射されて光吸収層6を再度透過する。この光吸収層6を再度透過した光の一部は、第2反射部17によって反射されて受光部3に再入射する。
【0046】
従って、窓部14から入射した光は、第1反射部8によって受光部3の光吸収層6を2回透過することができる。この光吸収層6を2回透過した光のうちの一部は、第2反射部17によって反射され、光吸収層6を再び透過することができる。それ故、量子効率が向上するので、半導体受光素子1の高速化のために光吸収層6を薄くした場合における受光感度の低下を軽減することができる。
【0047】
第1反射部8の曲率半径r1は、第1反射部8で反射された光が光吸収層6と集光レンズ4の間に集光した後広がって、第2反射部17に入射するように設定されている。従って、光吸収層6を透過した光を、高速化のために受光部3と共に小型化された第1反射部8によって、窓部14の外側の第2反射部17に向けて広げるように反射させることができる。それ故、窓部14から入射した光を第1反射部8で反射し、第1反射部で反射した光の一部を第2反射部17で反射して光吸収層6を複数回透過させることにより量子効率が向上するので、受光感度の低下を軽減することができる。
【0048】
第1反射部8の点Qで反射された光が第2反射部17に入射する入射点Sにおいて、入射する光線(線分QS)と第2反射部17の法線(直線C3S)が重なる又は接近するように第2反射部17の曲率半径r3が設定されている。従って、第1反射部8で反射した光を第2反射部17で反射したときに、この第2反射部17で反射した光を元の第1反射部8の反射点Qに一致又は接近させて入射させることができる。それ故、光吸収層6を透過した光を第2反射部17で反射させて光吸収層6に再入射させることができ、高速化のために光吸収層6を薄くした場合に受光感度の低下を軽減することができる。
【0049】
光ファイバケーブルとして出射端が円錐状に形成されたコニカルファイバから光を入射させて、光強度が強い部分が第2反射部17で反射するように構成すれば、受光感度の低下を一層軽減することができる。尚、半導体基板2や第1、第2半導体層5,7、光吸収層6の材質は、上記に限られるものではなく、受光する光の波長に適した公知の材質を使用して適切なサイズの受光部3を備えた半導体受光素子1を形成することができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 :半導体受光素子
2 :半導体基板
2a :第1面
2b :第2面
3 :受光部
4 :集光レンズ
5 :第1半導体層
6 :光吸収層
7 :第2半導体層
7a :表面
8 :第1反射部
8a :誘電体膜
8b :金属膜
11 :電極
12 :反射防止膜
14 :窓部
15 :外側部分
16 :金属膜
17 :第2反射部
CL :中心線
【要約】
【課題】高速化に伴う受光感度の低下を軽減することができる半導体受光素子を提供すること。
【解決手段】半導体基板(2)の第1面(2a)に第1半導体層(5)と光吸収層(6)と第2半導体層(7)をこの順に積層させて形成された受光部(3)を有し、半導体基板(2)の第1面(2a)に対向する第2面(2b)側に受光部(3)の中心線(CL)と同心に形成された集光レンズ(4)を有する半導体受光素子(1)において、第2半導体層(7)の表面(7a)に、光吸収層(6)側が凹面状に形成された第1反射部(8)を備え、集光レンズ(4)は、中心線(CL)の近傍の窓部(14)と、窓部(14)の外側に環状に且つ光吸収層(6)側が凹面状に形成された第2反射部(17)を備え、窓部(14)から受光部(3)に入射して光吸収層(6)を透過した光が、第1反射部(8)によって反射されて光吸収層(6)を再度透過し、光吸収層(6)を再度透過した光の一部が第2反射部(17)によって反射されて受光部(3)に再入射するように構成した。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4