(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非晶質ポリエステル系樹脂Aは、前記第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール(a)とポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール単位(b)とのモル比((a)/(b))が40/60以上90/10以下である、請求項1に記載のトナー用結着樹脂組成物。
前記結晶性樹脂が、エチレングリコールを50モル%以上100モル%以下含むアルコール成分と、炭素数10以上14以下のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上100モル%以下含むカルボン酸成分との重縮合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂組成物。
請求項1〜4のいずれかに記載の結着樹脂組成物を含有する混合物を80℃以上160℃以下の範囲内の温度で溶融混練する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[トナー用結着樹脂組成物]
本発明のトナー用結着樹脂組成物(以下、単に「結着樹脂組成物」ともいう)は、非晶質樹脂及び結晶性樹脂を含有する。
非晶質樹脂は、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含むアルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)との重縮合物であるポリエステル系樹脂A(以下、単に「ポリエステル系樹脂A」ともいう)を含む。
結晶性樹脂は、エチレングリコールを50モル%以上100モル%以下含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル系樹脂C(以下、単に「ポリエステル系樹脂C」ともいう)を含む。
そして、非晶質樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、65/35以上95/5以下である。
以上の構成によれば、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性に優れるトナーが得られる結着樹脂組成物、及び当該結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナー、及びその製造方法が提供される。
【0009】
その理由は定かではないが以下のように考えられる。
非晶質ポリエステル樹脂Aに、PETを導入することによって、PETの解重合が速やかに進行し、ポリマー構造が均一になることで耐久性が向上すると考えられる。
また、低温定着性も一段と向上することが見出された。これは、PET骨格のエチレングリコール部分とポリエステル系樹脂C中のエチレングリコール部分の親和性が高いため、ポリエステル系樹脂A中で、ポリエステル系樹脂Cが微分散化することで、電子写真方式による印刷における定着工程において、ポリエステル系樹脂Cによるポリエステル系樹脂Aの可塑化が速やかに進行し、溶融させやすくなるためと考えられる。
また、本発明のトナーは、経時的な低温定着性の悪化を抑制できる。一般的に非晶質樹脂と非相溶な結晶性樹脂を含むトナーは、保管中に結晶性樹脂のドメインを固定化できずに、結晶化が進行するにつれて結晶性樹脂ドメインのサイズが徐々に拡大しやすい。その結果、結晶性樹脂と非晶質樹脂との界面が相対的に減少し、トナー定着時に結晶性樹脂の溶融とともに周囲の非晶質樹脂を溶融しにくくなることで、低温定着性が悪化する。しかしながら本発明のトナーは、非晶質樹脂として特定のポリエステル系樹脂Aと、結晶性樹脂として特定のポリエステル系樹脂Cの組み合わせを選択することで、ポリエステル系樹脂Aとポリエステル系樹脂Cの界面の親和性が高く、且つ、相溶せず、結晶性ポリエステル樹脂のドメインサイズの経時変化が起こりにくいため、低温定着性の優れた経時安定性を示すと考えられる。
【0010】
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂とは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂を含む。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂がウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂がエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル樹脂、及びポリエステル成分と付加重合系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂が挙げられる。なお、単に「ポリエステル樹脂」とは、未変性のポリエステル樹脂を意味する。
【0011】
樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち、「軟化点/吸熱の最高ピーク温度」で定義される結晶性指数によって表される。一般に、この結晶性指数が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満では結晶性が低く非晶質部分が多い。本発明において、「結晶性樹脂」とは、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下である樹脂をいい、「非晶質樹脂」とは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満の樹脂をいう。
上記の「吸熱の最高ピーク温度」とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度のことを指す。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
【0012】
<非晶質樹脂>
〔ポリエステル系樹脂A〕
非晶質樹脂は、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性に優れるトナーを得る観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、カルボン酸成分と、ポリエチレンテレフタレートの重縮合物であるポリエステル系樹脂Aを含む。
【0013】
(アルコール成分)
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールは、好ましくは炭素数3以上6以下である。
第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールが好ましく、1,2−プロパンジオールがより好ましい。
【0014】
ポリエステル系樹脂Aのアルコール成分において、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの量は、アルコール成分に対して、トナーの低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは100モル%である。
【0015】
ポリエステル系樹脂Aのアルコール成分は、上述の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外の、他の脂肪族ジオール(以下、「他の脂肪族ジオール」ともいう)、芳香族アルコール、3価以上のアルコールを含有していてもよい。
他の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
芳香族アルコールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0016】
(カルボン酸成分)
ポリエステル系樹脂Aのカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
なお、本明細書中、ポリエステル系樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び、各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
【0017】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
これらの中でも、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、テレフタル酸を含むことがより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、カルボン酸成分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。
【0018】
3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸又はその無水物を含むことが好ましい。
3価以上の多価カルボン酸の量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、カルボン酸成分に対して、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
【0019】
(ポリエチレンテレフタレート)
PETは、原料組成物として含まれることで、PETの末端官能基と、アルコール成分又はカルボン酸成分が縮合し、ポリエステル樹脂のポリマー鎖中に取り込まれる。また、PETが原料組成物中に含まれる場合、PETが解重合し、エチレングリコール、テレフタル酸、又は分解したポリマー鎖が生じる可能性があるが、これらは、ポリエステル樹脂の原料成分となり得る。
PETは、エチレングリコールと、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル等との重縮合により、常法に従って製造されたものを用いることができる。
【0020】
PETの固有粘度(以下「IV値」ともいう)は、トナーの耐久性をより向上させる観点から、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.55以上であり、そして、トナーの低温定着性、及び低温定着性の経時安定性をより向上させる観点から、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.68以下、更に好ましくは0.65以下、更に好ましくは0.62以下である。IV値は分子量の指標となる。ポリエチレンテレフタレートのIV値は、重縮合時間等により調整することができる。
IV値の測定は、例えば、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)混合溶媒に0.4g/dLの濃度にて試料を溶解し、ウベローデ型粘度計にて測定を行い、以下の式に従って算出することができる。
【数1】
〔式中、kはハギンズの定数であり、Cは試料溶液の濃度(g/dL)であり、η=(t
1/t
0)−1であり、t
0は溶媒のみの落下秒数であり、t
1は試料溶液の落下秒数である。kは0.33とする。〕
【0021】
ポリエチレンテレフタレートの市販品としては、例えば、「RAMAPET L1」(Indorama Ventures社製、IV値:0.60)、「RAMAPET N2G」(Indorama Ventures社製、IV値:0.75)、「TRN―NTJ」(帝人株式会社製、IV値:0.53)、「TRN―RTJC」(帝人株式会社製、IV値:0.64)が挙げられる。
【0022】
ポリエステル系樹脂A中、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール単位の量は、アルコール成分及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール単位の合計量に対して、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下である。
【0023】
アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0024】
ポリエステル系樹脂Aは、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール(a)とポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール単位(b)とのモル比((a)/(b))は、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、好ましくは75/25以下である。
【0025】
〔ポリエステル系樹脂Aの製造方法〕
ポリエステル系樹脂Aは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートとを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、助触媒及び重合禁止剤を用いて、120℃以上250℃以下の温度で重縮合することで得られる。重縮合温度は、120℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、例えば、カルボン酸成分とアルコール成分とポリエチレンテレフタレートの総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0026】
助触媒としては、例えば、ピロガロール化合物が挙げられる。ピロガロール化合物は、互いに隣接する3個の水素原子が水酸基で置換されたベンゼン環を有するものであり、例えば、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、没食子酸が好ましい。
重縮合反応における助触媒の使用量は、反応性の観点から、重縮合反応に供されるアルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートとの総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
【0027】
〔ポリエステル系樹脂Aの物性〕
ポリエステル系樹脂Aの軟化点は、耐久性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
【0028】
ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度は、耐久性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0029】
ポリエステル系樹脂Aの酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは6mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0030】
ポリエステル系樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料組成物の種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
【0031】
非晶質樹脂におけるポリエステル系樹脂Aの含有量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして好ましくは100質量%である。
【0032】
トナー用結着樹脂組成物中、ポリエステル系樹脂Aの含有量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、非晶質樹脂及び結晶性樹脂の合計量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0033】
<結晶性樹脂>
〔ポリエステル系樹脂C〕
ポリエステル系樹脂Cは、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性に優れるトナーを得る観点から、結晶性樹脂であり、エチレングリコールを50モル%以上100モル%以下含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル系樹脂Cを含む。
【0034】
(アルコール成分)
ポリエステル系樹脂Cのアルコール成分において、エチレングリコールの含有量は、トナーの低温定着性をより向上させる観点から、アルコール成分中、50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、好ましくは100モル%である。
【0035】
ポリエステル系樹脂Cのアルコール成分は、上述のエチレングリコール以外の、他の脂肪族ジオール(以下、「他の脂肪族ジオール」ともいう)、芳香族アルコール、3価以上のアルコールを含有していてもよい。これらの例示は、上述のポリエステル系樹脂Aと同様である。
【0036】
(カルボン酸成分)
ポリエステル系樹脂Cのカルボン酸成分において、好ましくは炭素数10以上14以下のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を含有する。α,ω−脂肪族ジカルボン酸としては、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数10以上14以下のα,ω−脂肪族ジカルボン酸の含有量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして好ましくは100モル%である。
炭素数10以上14以下のα,ω−脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸、ドデカン二酸がより好ましく、セバシン酸が更に好ましい。
【0037】
ポリエステル系樹脂Cのカルボン酸成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のα,ω−脂肪族ジカルボン酸以外の、他の脂肪族ジカルボン酸(以下、「他の脂肪族ジカルボン酸」ともいう)、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸を含有していてもよい。
他の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸の例は、上述のポリエステル系樹脂Aと同様である。
【0038】
アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0039】
ポリエステル系樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させることで得られる。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応時の温度は190℃以上250℃以下が好ましい。
【0040】
重縮合反応は、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行ってもよい。
エステル化触媒としては、例えば、錫触媒、チタン触媒が挙げられる。錫触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、2−エチルヘキサン酸錫(II)が挙げられるが、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)等のSn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。チタン触媒としては、例えば、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートが挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0041】
エステル化助触媒としては、例えば、没食子酸が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0042】
〔ポリエステル系樹脂Cの物性〕
ポリエステル系樹脂Cの軟化点は、トナーの耐久性及び低温定着性の経時安定性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、トナーの低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0043】
ポリエステル系樹脂Cの融点は、トナーの低温定着性の経時安定性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、トナーの低温定着性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
【0044】
ポリエステル系樹脂Cの酸価は、トナーの耐久性をより向上させる観点から、好ましくは0mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0045】
結晶性樹脂におけるポリエステル系樹脂Cの含有量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、そして好ましくは100質量%である。
【0046】
トナー用結着樹脂組成物中、ポリエステル系樹脂Cの含有量は、トナーの低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性をより向上させる観点から、非晶質樹脂及び結晶性樹脂の合計量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0047】
結着樹脂組成物において、非晶質樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性に優れるトナーを得る観点から、65/35以上、好ましくは75/25以上、より好ましくは85/15以上であり、そして、トナーの低温定着性の経時安定性及び耐久性の観点から、95/5以下、より好ましくは94/6以下、更に好ましくは92/8以下である。
結着樹脂組成物は、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の結着樹脂として用いられる。
【0048】
[トナー]
トナーは、上記の結着樹脂組成物を含有する。
上記の結着樹脂組成物の含有量は、トナーに含まれる結着樹脂中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下、そして好ましくは100質量%である。
【0049】
トナーは、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよく、好ましくは着色剤、離型剤、荷電制御剤を含有する。
【0050】
<着色剤>
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾイエローが挙げられる。
トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0051】
<離型剤>
離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0053】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0054】
<荷電制御剤>
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、スチレン−アクリル系樹脂が挙げられる。
ニグロシン染料としては、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN−01」、「ボントロンN−04」、「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)が挙げられる。4級アンモニウム塩化合物としては、例えば「ボントロンP−51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)が挙げられる。ポリアミン樹脂としては、例えば「AFP−B」(オリヱント化学工業株式会社製)が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば「PLZ−2001」、「PLZ−8001」(以上、四国化成工業株式会社製)が挙げられる。スチレン−アクリル系樹脂としては、例えば「FCA−701PT」(藤倉化成株式会社製)が挙げられる。
【0055】
負帯電性荷電制御剤としては、例えば、含金属アゾ染料、ベンジル酸化合物の金属化合物、サリチル酸化合物の金属化合物、銅フタロシアニン染料、4級アンモニウム塩、ニトロイミダゾール誘導体、有機金属化合物が挙げられる。
含金属アゾ染料としては、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS−31」、「ボントロンS−32」、「ボントロンS−34」、「ボントロンS−36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T−77」(保土谷化学工業株式会社製)が挙げられる。ベンジル酸化合物の金属化合物としては、例えば、「LR−147」、「LR−297」(以上、日本カーリット株式会社製)が挙げられる。サリチル酸化合物の金属化合物としては、例えば、「ボントロンE−81」、「ボントロンE−84」、「ボントロンE−88」、「ボントロンE−304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN−105」(保土谷化学工業株式会社製)が挙げられる。4級アンモニウム塩としては、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)が挙げられる。有機金属化合物としては、例えば「TN105」(保土谷化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0056】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0057】
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、凝集融着法等の任意の方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、非晶質樹脂、結晶性樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0058】
トナーの製造方法は、好ましくは、上記の結着樹脂組成物を含有する混合物を80℃以上160℃以下の範囲内の温度で溶融混練する工程を含む。溶融混練温度は、80℃以上、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
本発明の結着樹脂組成物は、非晶質樹脂と結晶性樹脂との親和性は高いが互いに相溶し難く、非晶質樹脂中に微分散状態で存在し得る結晶性樹脂の結晶性も良好であるため、上述の溶融混練する工程によって結着樹脂を結晶化することができる。
【0059】
トナーの製造方法は、好ましくは、溶融混練により得られた混合物を、粉砕及び分級しトナー粒子を得る工程を含む。当該粉砕及び分級は、公知の方法により行うことができる。
【0060】
(外添剤)
トナーには、転写性を向上させるために、トナー粒子の表面を外添剤により処理することが好ましい。
外添剤としては、例えば、無機微粒子が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、酸化錫粒子、酸化亜鉛粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、疎水化処理された疎水性シリカ粒子が好ましい。
【0061】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中でもヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0062】
外添剤の体積平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは90nm以下である。
【0063】
外添剤の含有量は、保存安定性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0064】
[トナーの物性]
トナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D
50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0065】
トナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0067】
[物性の測定方法]
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0068】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0069】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、25℃から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間維持した。その後、昇温速度10℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの頂点の温度を吸熱の最高ピーク温度とした。結晶性ポリエステルにおいては、吸熱の最高ピーク温度を融点とした。
【0070】
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価については、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992の規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0071】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
【0072】
〔トナーの体積中位粒径(D
50)〕
測定機:「コールターマルチサイザーIII」(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:「マルチサイザーIII バージョン 3.51」(ベックマンコールター社製)
電解液:「アイソトンII」(ベックマンコールター社製)
分散液:「エマルゲン109P」(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させさせて、試料分散液を調製した。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求めた。
【0073】
[樹脂の製造]
製造例A1〜A7
(非晶質ポリエステル樹脂A−1〜A−7の製造)
表1に示すトリメリット酸無水物以外のアルコール成分、カルボン酸成分、PET及びエステル化触媒及び助触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサーを備えた脱水管及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後、220℃まで昇温し、8.0kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂A−1〜A−7を得た。
【0074】
【表1-1】
【0075】
【表1-2】
【0076】
製造例C1〜C5
(結晶性ポリエステル樹脂C−1〜C−5の製造)
表2に示すアルコール成分、カルボン酸成分及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサーを備えた脱水管及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温した後、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、8.0kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂C−1〜C−5を得た。
【0077】
【表2-1】
【0078】
【表2-2】
【0079】
[トナーの製造]
実施例1〜5,7〜9及び比較例1〜3(トナー1〜5,7〜9,51〜53の製造)
表3に示す非晶質樹脂90質量部、結晶性樹脂10質量部、着色剤「Mogul L」(カーボンブラック、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク社製)4質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E−81」(オリヱント化学工業株式会社製)0.85質量部、及び離型剤「三井ハイワックス NP056」(ポリプロピレンワックス、三井化学株式会社製、融点124℃)2質量部をヘンシェルミキサーで10分間混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D
50)が8μmのトナー粒子を得た。
【0080】
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ「NAX−50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン、体積平均粒子径:30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナー1〜5,7〜9,51〜53を得た。得られたトナーを下記の方法に従って評価した。
【0081】
実施例6及び比較例4(トナー6,54の製造)
非晶質樹脂と結晶性樹脂のそれぞれの質量部を表3に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー6,54を得た。得られたトナーを下記の方法に従って評価した。
【0082】
[評価]
〔トナーの低温定着性〕
トナー作成直後について以下の方法により評価を行った。
複写機「AR−505」(シャープ株式会社製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ株式会社製の紙[CopyBond SF−70NA(75g/m
2)]上に、未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から200℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各温度で前記未定着状態の印刷物の定着試験を行った。定着した画像にセロハン粘着テープ「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆株式会社製、幅:18mm、JIS Z1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度(T
1)とした。最低定着温度が低いほどトナーの低温定着性が良好である。
〔低温定着性の経時安定性〕
トナーを温度40℃の恒温槽で3日間保管した後、前記低温定着性の評価と同様の方法で最低定着温度(T
2)を評価した。T
2とT
1の差(T
2−T
1)を算出し、低温定着性の経時安定性を評価した。
【0083】
〔耐久性〕
非磁性一成分現像装置「Micro Line 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、温度35℃、相対湿度50%の環境下にて、0.3%の印字率で300枚/時間の速度で耐刷試験を行った。試験は、当該耐刷試験を継続しつつ、1時間毎にベタ画像を印字し、ブレードフィルミングに起因する白スジの発生がないかを観察して評価し、白スジの発生が確認された時点で中止した。なお、試験は、最長10時間まで行った。白スジの発生が遅いほど、耐久性に優れる。
【0084】
【表3-1】
【0085】
【表3-2】
【0086】
【表3-3】
【0087】
以上、実施例及び比較例を対比することにより、実施例の結着樹脂組成物によれば、低温定着性、低温定着性の経時安定性、及び耐久性に優れるトナーが得られる結着樹脂組成物であることがわかる。