特許第6856312号(P6856312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856312キサンチンオキシダーゼを阻害するのに用いられる新規酢酸菌およびグルコンアセトバクター菌株並びにそれらの代謝物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856312
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】キサンチンオキシダーゼを阻害するのに用いられる新規酢酸菌およびグルコンアセトバクター菌株並びにそれらの代謝物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20210329BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20210329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210329BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20210329BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61K35/74 A
   A61P19/06
   A61P43/00 111
   C12N1/20 A
   A23L31/00
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-164217(P2015-164217)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-65039(P2016-65039A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2018年8月16日
(31)【優先権主張番号】14/465,094
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM28893
(73)【特許権者】
【識別番号】506062779
【氏名又は名称】フード インダストリー リサーチ アンド ディベロップメント インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シャオ−ジェン チェン
(72)【発明者】
【氏名】イェン−リン チェン
(72)【発明者】
【氏名】シュン−イン スウ
(72)【発明者】
【氏名】カイ−ピン チェン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ−ミン リャオ
(72)【発明者】
【氏名】イ−ジェン イェ
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102370859(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101597583(CN,A)
【文献】 特開2008−214215(JP,A)
【文献】 特開2008−056695(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2013−0099653(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第2013−0004456(KR,A)
【文献】 Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2013, Vol.61 No.30 p.7276-7283
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/74
A23L 31/00
A61P 19/06
A61P 43/00
C12N 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌の培養物を含む、被験者の尿酸レベルを低下させるための組成物であって
前記酢酸菌は、受託番号DSM28893で寄託された酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01であり、
前記酢酸菌の培養物は、前記酢酸菌をマンニトール、酵母エキスおよびペプトンを含む培地で培養してシード培養液を調製し、前記シード培養液をグルコース、大豆ペプトンおよび酵母抽出物を含む培地で培養することを含む製造方法により得られたものである、組成物。
【請求項2】
有効な量で前記被験者に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記被験者は痛風または高尿酸血症に罹患している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記被験者に投与される前に、前記培地から前記酢酸菌を除去される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記除去前の培養密度が1×10〜1×10細胞/mLである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
経口投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
食品成分をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
食品である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
酢またはドリンク剤である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
凍結乾燥された粉末である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
酢酸菌の培養物を含む、キサンチンオキシダーゼを阻害するための組成物であって
前記酢酸菌は、受託番号DSM28893で寄託された酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01であり、
前記酢酸菌の培養物は、前記酢酸菌をマンニトール、酵母エキスおよびペプトンを含む培地で培養してシード培養液を調製し、前記シード培養液をグルコース、大豆ペプトンおよび酵母抽出物を含む培地で培養することを含む製造方法により得られたものである、組成物。
【請求項13】
キサンチンオキシダーゼを有する被験者に経口投与される、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2014年8月21日に出願された米国出願番号14/465094号の優先権を主張する。その出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、酢酸菌、およびそれらの発酵代謝産物によるキサンチンオキシダーゼ活性の阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
尿酸は、体内のプリン代謝の最終産物である。血中の尿酸の高いレベルは、関節、腎臓および他の臓器における尿酸結晶の形成および堆積につながる。血中の尿酸濃度が7mg/dLよりも高い場合は高尿酸血症であるとみなされる。
【0004】
高尿酸血症は、痛風、高血圧、心血管疾患、糖尿病、および腎臓病と関連する一般的な代謝障害である。1993年から2008年にかけて台湾で行われた疫学調査では、男性患者と女性患者はそれぞれ21.6%と9.57%の割合で高尿酸血症を示した。
【0005】
キサンチンオキシダーゼは、尿酸の合成における重要な酵素である。その結果、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害は、尿酸の産生を減少させることができる。実際には、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であるウリカーゼは、血中の尿酸濃度を低下させるのに効果的である。ウリカーゼは、ヒトでは見られない酵素である。一般的には、組換哺乳類タンパク質として単離され、静脈内注入によって投与される。それなりに、製造するのに高価であり、管理が困難であり得る。
【0006】
アロプリノールもキサンチンオキシダーゼ阻害剤である。この化合物は、より低い血清尿酸値に臨床的に投与される。しかし、アロプリノールは、特定の場合に致死性のあるアレルギー反応、胃腸の不快感、白血球減少症および血小板減少症、肝炎、腎症、および6−メルカプトプリン毒性などの副作用を持っている。
【0007】
高尿酸血症のための既存の治療の欠点に鑑みて、多くのバイオ医薬品企業が新しい尿酸降下薬の開発に焦点を当てた。例えば、Izumidaらがジャーナル抗生物質(J. Antibiotics)50:916−918には、海洋細菌アグロバクテリウムアウランチアカム(Agrobacterium aurantiacum)から、尿酸値を下げることができる化合物、すなわちヒドロキシアカロン(hydroxyakalone)を単離した。
【0008】
他の微生物種も、尿酸を低下させる能力を有することが示されている、例えば、酢酸菌アセチ(Acetobacter aceti)、酢酸菌パステウリアナス(Acetobacter pasteurianus)、酢酸菌ペルオキジダンス(Acetobacter peroxydans)、クルイベロミセス・フラジリス、枯草菌、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ペントサス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・オリス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびサッカロマイセス・セレビシエ、の菌株。参考として、米国特許出願公開2010/0316618、2011/0014168および2013/0330299、欧州特許出願公開2457576および1649863、中国特許出願公開CN102370859、そして、韓国特許出願公開KR20130099653およびKR20130004456が挙げられる。
【0009】
容易に製造され、安全に投与することができ、天然源からの新しいキサンチンオキシダーゼ阻害剤を開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
この必要性に応え、被験者における尿酸レベルを低下させるための方法が開示されている。前記方法は、培地中で酢酸菌を培養して組成物を形成し、尿酸のレベルを低下させるのに有効な量で組成物を被験者に投与する工程を含む。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイ(Gluconacetobacter hansenii)または酢酸菌パステウリアナス(Acetobacter pasteurianus)である。
【0011】
また、キサンチンオキシダーゼを阻害するための方法も開示されている。前記方法は、培地中で酢酸菌を培養して組成物を形成し、キサンチンオキシダーゼを前記組成物と接触させる工程を含む。ここでも、前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスである。
【0012】
また、被験者における尿酸レベルを低下させるための組成物を製造する方法もまた、本発明の範囲内のものである。
【0013】
前記方法は、培地に酢酸菌を接種し、前記培地中で前記酢酸菌を培養する工程を含む。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスである。
【0014】
また、被験者における尿酸レベルを低下させるための組成物も提供される。前記組成物は、酢酸菌の代謝物を含む。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスである。
【0015】
また、被験者における尿酸レベルを低下させるための医薬組成物および食品も開示されている。
【0016】
前記医薬組成物は、酢酸菌の代謝物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とが含まれている。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスである。
【0017】
前記食品は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスの代謝物を含む酢、ドリンク剤、ヨーグルト、飲料、アイスクリーム、サワーミルク、ビオザイム、またはチーズである。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、下記の説明、図面および実施例において記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、いくつかの実施形態の詳細な説明から、また特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書に引用される全ての刊行物および特許文献は、その全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、酢酸菌菌株のキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示す棒グラフである。
図2図2は、異なる培地で増殖させた酢酸菌パステウリアナス株AHU02のキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示す棒グラフである。
図3図3は、一定期間において異なる容量の培地で増殖させた酢酸菌パステウリアナス株AHU02のキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
上述したように、培地中で酢酸菌を、すなわちグルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスを培養して組成物を形成する工程を含む、被験者における尿酸レベルを低下させるための方法が開示されている。前記酢酸菌は、それぞれ、受託番号DSM28893およびDSM28894で寄託された酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01およびAHU02から選択することができる。また、前記酢酸菌パステウリアナス菌株は菌株AHU03およびAHU04であってもよい。特定の実施形態では、前記酢酸菌は、受託番号DSM28902で寄託されたグルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06である。
【0021】
培養工程は、培地中で行われる。前記培地は、M1A培養液、米エキス、ソルガムエキス、グレープジュース、およびプラムジュースであってもよいが、これらに限定されない。前記培地は、リンゴジュースを含まないものである。特定の実施形態において、前記方法は、培養後および組成物を投与する前に、培地から前記酢酸菌を除去する工程を含む。
【0022】
前記組成物は、酢やドリンク剤であってもよい。特定の実施形態において、前記方法は、前記組成物を凍結乾燥して粉末を形成する工程を含む。
【0023】
実施形態において、組成物は、被験者に経口投与される。特定の実施形態において、被験者は、痛風または高尿酸血症に罹患している。
【0024】
投与される組成物の量は、被験者における尿酸レベルを低下させるのに有効な量である。当業者は、例えば、被験者の血液中の尿酸の濃度の変化を測定することによって、有効量を容易に決定することができる。
【0025】
キサンチンオキシダーゼを阻害する方法も提供される。上記のような方法では、培地中で酢酸菌を培養して組成物を形成することが必要である。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスであってもよい。一つの実施形態では、前記酢酸菌は酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01、AHU02、AHU03、およびAHU04から選択される。別の実施形態では、前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06である。
【0026】
上述したように、培養工程は、培地中で行われる。前記培地は、M1A培養液、米エキス、ソルガムエキス、グレープジュース、およびプラムジュースであってもよいが、これらに限定されない。前記培地は、リンゴジュースを含まないものである。特定の実施形態において、前記方法は、培養後および組成物をキサンチンオキシダーゼと接触させる前に、培地から前記酢酸菌を除去する工程を含む。
【0027】
一つの実施形態において、接触工程は、インビトロで行ってもよい。例えば、キサンチンオキシダーゼの調製は、前記組成物と一緒に一つの容器内で行ってもよい。別の実施形態において、接触工程は、キサンチンオキシダーゼを有する被験者に組成物を経口投与することによって達成される。
【0028】
上述のように、被験者の尿酸レベルを低下させるための組成物を製造する方法は、特に、培地に酢酸菌を接種する工程を含む。前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスである。一つの実施形態において、前記酢酸菌は酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01、AHU02、AHU03、およびAHU04から選択される。特定の一つの実施形態では、前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06である。
【0029】
前記方法はまた、培地中で前記酢酸菌を培養して組成物を形成する工程を含む。前記培地は、M1A培養液、米エキス、ソルガムエキス、グレープジュース、およびプラムジュースであってもよいが、これらに限定されない。前記培地は、リンゴジュースを含まないものである。
【0030】
特定の実施形態において、前記方法は、培養後および組成物を投与する前に、培地から前記酢酸菌を除去する工程を含む。好ましい実施形態では、前記除去工程の前の前記酢酸菌の培養密度が1×10〜1×10細胞/mLである。
【0031】
培地中で前記酢酸菌を培養して得られた組成物は、低温殺菌、放射線照射、オートクレーブ、および濾過等の方法によって滅菌してもよいが、これらの方法に限定されない。例えば、組成物を0.2μmのフィルターを通して濾過することにより滅菌することができる。特に好ましい実施形態では、滅菌液体培養液は、濾過や遠心分離で細菌を除去してから、次いで濃縮される。
【0032】
このように形成された組成物は、酢やドリンク剤としての食品であってもよい。さらなる実施形態において、前記組成物は、ヨーグルト、飲料、アイスクリーム、サワーミルク、ビオザイム(発酵した果実または野菜から抽出された酵素混合物)、またはチーズであってもよい。一つの特定の実施形態では、前記方法は、前記組成物を凍結乾燥して粉末を形成する工程を含む。
【0033】
被験者における尿酸レベルを低下させるための組成物もまた、開示されている。前記組成物は、グルコン酢酸菌ハンセニイまたは酢酸菌パステウリアナスの代謝産物を含む。上記のように、前記酢酸菌は酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01、AHU02、AHU03、およびAHU04から選択されうる。一つの実施形態において、前記酢酸菌は、グルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06である。前記組成物は、粉末の形態であってもよい。
【0034】
上述の組成物は、1つまたは複数の食品成分、例えば、着色剤、酸性度調節剤、固化防止剤、酸化防止剤、増量剤、担体、乳化剤、風味増強剤、艶出し剤、防腐剤、安定剤、甘味料、増粘剤、栄養添加剤、および香味剤、を含むことができる。
【0035】
特定の実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0036】
本明細書で使用される用語「担体」または「賦形剤」は、それ自体は治療薬ではなく、(i)被験者への治療薬の送達のために、(ii)製剤に添加しその取扱いまたは貯蔵特性を改善するために、および/または(iii)投与単位の組成物を、経口投与に適するカプセルまたは錠剤などの離散粒子を容易に形成するために、担体、希釈剤、補助剤、またはビヒクルとして使用される任意の物質を意味する。
【0037】
適切な担体または賦形剤は、医薬製剤または食品を製造する当該技術分野で知られている。
【0038】
担体または賦形剤は、例えば、緩衝液、希釈剤、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、潤滑剤、流動促進剤、不快な味や臭いを隠すまたは中和するために添加した物質、調味料、着色剤、香料、及び組成物の外観を改善するために添加した物質、として含んでもよいが、これらに限らない。
【0039】
許容される担体または賦形剤は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸、炭酸マグネシウム、タルク、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストリン、マンニトールのナトリウムおよびカルシウム塩、ソルビトール、ラクトース、スクロース、デンプン、セルロース系材料(例えば、アルカン酸およびセルロースアルキルエステルのセルロースエステル)、低融点ワックス、カカオバター、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化ナトリウムまたは他の塩、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは粉末、ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール)、および他の薬学的に許容される物質を含む。前記担体は、治療薬の薬理学的活性を破壊することがなく、また薬剤の治療量を送達するのに十分な用量で投与した場合に非毒性である。
【0040】
別の実施形態において、前記組成物は、前記酢酸菌の代謝物以外に、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、およびサッカロミセス属等のプロバイオティク微生物を含めることもできるが、これらに限らない。例えば、乳酸菌ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、乳酸菌ペントサス(Lactobacillus pentosus)、乳酸菌ガセリ(Lactobacillus gasseri)、乳酸菌オリス(Lactobacillus oris)、ビフィズス菌ロンガム(Bifidobacterium longum)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の一つ以上を組成物中に含ませてもよい。特定の態様において、前記組成物は、上記のプロバイオティク微生物と、酢酸菌の代謝物との一つ以上を含み、前記酢酸菌は酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01、AHU02、AHU03、AHU04、およびグルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06から選択される。
【0041】
当業者は、さらに詳述することがなくても、本明細書の開示に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。
【0042】
したがって、以下の具体例は、単に説明的なものとして解釈すべき、いかなる様式でも本開示の残りの部分を制限するものではない。
【実施例】
【0043】
実施例1:酢酸菌によるキサンチンオキシダーゼの阻害活性
51個の酢酸菌の菌株を個々にM1Aプレート(2.5%マンニトール、0.5%酵母エキス、0.3%ペプトン、2%寒天)に接種し、プレートを30℃で2日間培養しコロニーを形成した。
【0044】
次のようにキサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定を行った。
【0045】
まず、各菌株の10μLを、M1Aプレートからこすり取り96ウェルプレートのウェルに添加した。その後150μLの50mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、80μLの150μMキサンチンを各ウェルに加えた。290nmの(ODbefore)の初期吸光度の値は、各ウェルに10μLのキサンチンオキシダーゼ(0.1U)を追加する前に測定した。25℃でプレートを30分間培養した後、290nmで(ODafter)で吸光度を再び測定した。各サンプルのキサンチンオキシダーゼ阻害活性は、以下の式に従って計算した。
【0046】
【数1】
【0047】
結果を図1に示す。51個の異なる酢酸細菌株を検討した中で、7株だけはキサンチンオキシダーゼを30%以上阻害した。特に、酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01は73.6%のキサンチンオキシダーゼ活性を阻害した。
【0048】
本出願人は、ブダペスト条約の条項の下で2014年6月5日に、酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01およびAHU02を、国際寄託当局ライプニッツ研究所DSMZ−ドイツ微生物・細胞培養コレクション(International Strain Depositary Leibniz Institute DSMZ−German Collection of Microorganisms and Cell Culture)インホフェン街7B,D−38124ブラウンシュヴァイク ドイツに、寄託した。酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01とAHU02はそれぞれ、受託番号DSM28893およびDSM28894を割り当てられた。また、出願人は、2014年6月5日に受託番号DSM28902でグルコン酢酸菌ハンセニイ菌株AHU06を上記寄託当局に寄託した。
【0049】
実施例2:酢酸菌によるキサンチンオキシダーゼ阻害に対する培地の影響
酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02をM1Aプレートに接種し、4日間30℃で培養した。各プレートを、7mLの無菌M1Aシード培養液で洗浄した。250mLの三角フラスコ内でシード培養液を含む細胞(1mL)を各種50mLの培地に接種した。接種した培地は、7日間30℃で、125rpmで振とうしながら培養した。各培地のサンプルは、キサンチンオキシダーゼ阻害について上記のように分析を行った。結果を図2に示す。
【0050】
酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02は、キサンチンオキシダーゼ阻害活性の最高レベルを示し、60%阻害に達した。
【0051】
これに対して、リンゴジュースで酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02を成長させた後に、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害は検出されなかった。
【0052】
ソルガム、グレープジュース、米エキスとプラムジュースで酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02を培養したところ、15%から50%までの中間レベルの範囲の活性阻害を示した。
【0053】
実施例3:酢酸菌によるキサンチンオキシダーゼ阻害に対する培養の時間および体積の影響
上記の実施例2に記載したように酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02を含むシード培養液を調製した。1Lの三角振とうフラスコ内で、シード培養液を2%v/vで、200、300、および400mLのSPS培地(1%スクロース、1%ペプトン、1%大豆ペプトン、0.2%硝酸ナトリウム)に入れた。3−10日間30℃で、125rpmで振とうしながら培養した。上記実施例1に記載のキサンチンオキシダーゼ阻害の測定を行った。結果を図3に示す。
【0054】
酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02は、300mLまたは400mLの培地中で増殖させた菌株と比べて、200mLの培養容量で増殖させた各時点におけるキサンチンオキシダーゼ阻害活性が最高レベルを示した。培養の際、培養容積が少ない場合にはより効率的に培地が酸素化することが知られている。特定の理論に縛られることではないが、酢酸菌パステウリアナスによるキサンチンオキシダーゼ阻害活性の効率的な生産は、酸素の高いレベルを必要とする可能性が高い。
【0055】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性の最高レベルは、200mLの容積中に酢酸菌パステウリアナス菌株AHU02を3日間培養した後に得られた。このレベルは、培養時間を延ばすにつれて減少し、培養10日後にはおよそ65%まで低下した。300mLおよび400mLの培養物においても、同様にキサンチンオキシダーゼ阻害活性の経時的な低下が観察された。
【0056】
実施例4:酢酸菌によってキサンチンオキシダーゼ阻害活性の産生に対するグルコース濃度の影響
上記の実施例2に記載したように酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01を含むシード培養液を調製した。250mLの三角フラスコに、0.5mLのシード培養液を、それぞれ8%〜16%(w/v)の範囲内の異なる濃度のグルコースを含む50mLの培地に接種した。グルコースの他に、培地は1.5%の大豆ペプトン及び3%の酵母抽出物を含んでいた。30℃で培養物を7日間150rpmで振とうしながら培養した。
【0057】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性は、以下の手順でHPLCによって測定した。反応管に、880μLのキサンチン(50μg/mL、100mM PBS中)と、40μLの50mM PBSまたは40μLの培養液上清と、を予備混合して、そして80μLのキサンチンオキシダーゼ(0.1U)を加えて反応を開始させた。30℃で30分間反応させて、その後等容積の無水エタノールを加えて反応を停止した。反応終了液を、0.22μmのメンブランフィルターでろ過し、反応中のキサンチンの含量をHPLCによって分析した。次のようにサンプルのキサンチンオキシダーゼ阻害活性を計算した:
【0058】
【数2】
【0059】
得られた結果を下記の表1に示す:
【0060】
【表1】
【0061】
aの値は、培地中のグルコースをw/v%で表している。
【0062】
bの値は、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害をパーセントで表している。
【0063】
明確な相関関係は、増殖培地のグルコース含量と、培地で増殖させた酢酸菌パステウリアナスによって生成されるキサンチンオキシダーゼ活性阻害レベルと、の間に存在する。
【0064】
実施例5:実験尿酸血症の治療
酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01を、M1Aプレートに接種し、30℃で2日間培養した。このプレートを、シード培養液として滅菌水7mLで洗浄した。250mLの三角フラスコ中で、シード培養液0.5mLを50mLのカスタム培地(1%の大豆ペプトン、0.2%酵母エキス、3%グルコース、0.2%麦芽エキス、及び3%のフルクトース)に接種し、150rpmで振とうしながら30℃で7日間培養した。次いで、培地を回収し、3000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離後、上清を回収し、凍結乾燥し、動物実験で使用するための固体発酵物を形成するために、凍結乾燥した。
【0065】
ICRマウスを実験動物として使用した。ウリカーゼ阻害剤であるオキソン酸カリウムを、マウスの血清中の尿酸の高いレベルを誘導するために使用した。マウスを1時間絶食させた後、供給管を介して生理食塩水またはオキソン酸カリウム(400mg/kg)を与えた。1時間後、オキソン酸カリウムで処置したマウスに、生理食塩水、アロプリノール(10mg/kg)、または上記のように調製した酢酸菌パステウリアナス菌株AHU01の発酵産物を(マウスあたり150mgまたは200mg、生理食塩水に再懸濁した)を与えた。各実験群および対照群に10匹の動物を使用した。動物は、1時間後に屠殺し、血清中の尿酸のレベルを分析した。結果を下記の表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
aマウス(条件当たりN=10)に生理食塩水または所定の化合物を総体積200μL与えた。
【0068】
その他の実施形態
本明細書に開示された特徴のすべては、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示された各特徴は、同じ等価な、または類似の目的を果たす代替の特徴で置き換えてもよい。従って、特に明記しない限り、開示された各特徴は、等価または類似の特徴の一般的な群の一例に過ぎない。
【0069】
上記の説明から、当業者は容易に本発明の本質的な特徴を確認することができ、また、その精神および範囲から逸脱することなく、種々の用途および条件に適合させるために様々な変更および本発明の修正を行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3