(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856360
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】固体電解質センサの製造方法及び固体電解質センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/407 20060101AFI20210329BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
G01N27/407
G01N27/409 100
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-227592(P2016-227592)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-84483(P2018-84483A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】常吉 孝治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 総子
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−160006(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0174167(US,A1)
【文献】
特開平08−114573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成された固体電解質のセンサ素子の筒状部の少なくとも一部を筒状のホルダの内部に位置させ、
ガラス製リングと、該ガラス製リングのガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成された二つの外側リングとを、前記ガラス製リングが二つの前記外側リングで挟み込まれた状態で、前記ホルダの内周面と前記筒状部の外周面との間にクリアランスが存在する状態で挿入し、
加熱によって前記ガラス製リングを軟化させつつ、前記ホルダの両端側からそれぞれ押し棒部材で二つの前記外側リングそれぞれを押圧し、押圧によりスライドする二つの前記外側リングを介して作用する押圧力によって前記ガラス製リングを押し広げるように変形させて、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面の双方にクリアランスなく密着させることによりガラスの封止層とすると共に、該封止層の両側に二つの前記外側リングそれぞれの少なくとも一部を埋設または接着させるものであり、
前記封止層に少なくとも一部が埋設または接着された二つの前記外側リングそれぞれと、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面との間には、クリアランスが残存する
ことを特徴とする固体電解質センサの製造方法。
【請求項2】
筒状のホルダと、
有底筒状に形成されており、筒状部の少なくとも一部が前記ホルダの内部に位置している固体電解質のセンサ素子と、
環状であり、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面の双方にクリアランスなく密着しているガラスの封止層と、
該封止層の両側にそれぞれ一部が埋設または接着されており、前記封止層のガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成されている二つの外側リングと、を具備し、
二つの前記外側リングそれぞれと、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面との間には、クリアランスが存在している
することを特徴とする固体電解質センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質をセンサ素子としてガス濃度を検出する固体電解質センサの製造方法、及び、該製造方法により製造される固体電解質センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体電解質(イオン電導性セラミックス)をセンサ素子として、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気などのガス濃度を検出する固体電解質センサが種々提案されており、本出願人も過去に複数の提案を行っている。固体電解質センサは、同一イオンの濃度差により電位差が生じる濃淡電池の原理を使用したものであり、固体電解質を挟んだ二つの空間で検出対象ガスの濃度が異なる場合に、固体電解質に生じる起電力を測定する。一方の空間のガス濃度が既知であれば、ネルンストの式により、測定された起電力とセンサ素子の温度から、他方の空間におけるガス濃度を知ることができる。
【0003】
従って、固体電解質センサでは、固体電解質によって二つの空間が仕切られている必要がある。従来の固体電解質センサでは、筒状の支持部材(ホルダ)の一端にセンサ素子を固定し、ホルダとセンサ素子との全体を有底筒状とすることにより、二つの空間を仕切っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところが、センサ素子とホルダとの間を完璧に気密に封止することは、このとのほか難しく、ごく僅かな空隙が残存し易いのが実情である。センサ素子とホルダとの間にごく僅かでも空隙が存在すると、検出対象ガスの濃度が既知である空間のガス(基準ガス)と測定ガス(測定雰囲気のガス)とが混合してしまい、正確な測定ができない。特に、測定ガスと基準ガスとで検出対象ガスの濃度差が大きい場合は、ガスの混合による検出結果への影響が大きい。また、検出対象ガスが水素の場合、分子のサイズが小さいため、空隙のサイズが極めて小さい場合であっても通過し易く、ガスの混合による検出結果への影響が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−174832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、固体電解質のセンサ素子を挟んだ二つの空間のガスの混合が抑止されている固体電解質センサの製造方法、及び該製造方法により製造される固体電解質センサの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる固体電解質センサの製造方法(以下、単に「製造方法」と称することがある)は、
「有底筒状に形成された固体電解質のセンサ素子の筒状部の少なくとも一部を筒状のホルダの内部に位置させ、
ガラス製リング
と、該ガラス製リングのガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成された二つの外側リング
とを、前記ガラス製リングが二つの前記外側リングで挟み込まれた状態で、前記ホルダの内周面と前記筒状部の外周面との間に
クリアランスが存在する状態で挿入し、
加熱によって前記ガラス製リングを軟化させつつ、前記ホルダの両端側からそれぞれ押し棒部材で二つの前記外側リング
それぞれを押圧し、押圧
によりスライドする二つの前記外側リングを介して作用する押圧力によって前記ガラス製リングを
押し広げるように変形させて、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面の双方に
クリアランスなく密着させることによりガラスの封止層とすると共に、該封止層の両側に二つの前記外側リングそれぞれの少なくとも一部を埋設または接着させる
ものであり、
前記封止層に少なくとも一部が埋設または接着された二つの前記外側リングそれぞれと、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面との間には、クリアランスが残存する」ものである。
【0008】
本製造方法では、ガラス製リングを加熱により軟化・変形させて、ホルダの内周面と有底筒状のセンサ素子の筒状部の外周面との双方に密着させることにより、両面の間の空隙を環状に封止するガラスの封止層を形成する。加熱により軟化したガラスは接着性が高いため、ホルダの内周面ともセンサ素子の外周面とも良好に密着する。
【0009】
特に、本製造方法では、加熱により軟化したガラスに、ホルダの両端側から押し棒部材を介して押圧力を作用させている。そのため、押圧力によって変形したガラスが、ホルダの内周面及びセンサ素子の外周面の双方(以下、「内外周面」と称することがある)と良好に接触し、ホルダの内周面とセンサ素子の外周面との間の空隙(以下、「内外周面間の空隙」と称することがある)を気密に封止するガラスの封止層を形成する。これにより、センサ素子を挟んだ二つの空間が気密な封止層によって区画されるため、二つの空間のガスの混合が効果的に抑止される。
【0010】
ここで、ガラス製リングに対して両側から押圧力を作用させるための押し棒部材を、仮に直接にガラス製リングに押し付けたとすると、押し棒部材がガラスにくっついてしまう。つまり、加熱している最中に押し棒部材をホルダの外部に引き出そうとすれば、軟化しているガラスが押し棒部材に付着したまま引き出されてしまう。一方、ガラスを冷却してから押し棒部材を引き出そうとしても、軟化したガラスに押し棒部材が接着した状態でガラスが硬化してしまうため、ガラスから押し棒部材を引き離すことができない。
【0011】
これに対し、本製造方法では、外側リングでガラス製リングを挟み、押し棒部材からの押圧力を、外側リングを介してガラス製リングに作用させる。この外側リングは、ガラス製リングのガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成されているため、押し棒部材が外側リングに接着することはない。そのため、加熱している最中であっても冷却後であっても、問題なく押し棒部材をホルダの外部に引き出すことができる。ここで、「ガラス製リングのガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料」としては、セラミックス、ステンレス鋼、ガラス製リングのガラスより軟化点が高いガラス、を例示することができる。
【0012】
一方、外側リングは、押し棒部材によってガラス製リングに向って押されるため、加熱により軟化したガラスに少なくとも一部が埋設または接着され、ガラスが硬化することによりガラスの封止層と一体化する。つまり、外側リングは、本製造方法により製造された固体電解質センサに、ガラスの封止層と共に残存する。
【0013】
次に、本発明にかかる固体電解質センサは、
「筒状のホルダと、
有底筒状に形成されており、筒状部の少なくとも一部が前記ホルダの内部に位置している固体電解質のセンサ素子と、
環状であり、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面の双方に
クリアランスなく密着しているガラスの封止層と、
該封止層の両側にそれぞれ一部が埋設または接着されており、前記封止層のガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成されている二つの外側リングと、を具備
し、
二つの前記外側リングそれぞれと、前記ホルダの内周面及び前記筒状部の外周面との間には、クリアランスが存在している」ものである。
【0014】
これは、上記の製造方法により製造される固体電解質センサである。ガラス製リングが軟化して変形することにより形成されたガラスの封止層が、内外周面に密着して内外周面間の空隙を気密に封止しているため、センサ素子を挟んだ二つの空間が気密な封止層で区画されており、二つの空間のガスの混合が効果的に抑止されている。
【0015】
また、本構成では、ガラスの封止層を形成する際に、ガラス製リングに対して押圧力を作用させるために必要であった外側リングが、封止層と一体化された状態で残存している。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、固体電解質のセンサ素子を挟んだ二つの空間のガスの混合が抑止されている固体電解質センサの製造方法、及び該製造方法により製造される固体電解質センサを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a),(b)本発明の一実施形態である製造方法を説明する図である。
【
図2】(c),(d)
図1に引き続き、製造方法を説明する図である。
【
図3】(a)
図1(b)におけるA範囲の拡大図であり、(b)
図2(c)におけるB範囲の拡大図である。
【
図4】
図1〜
図3の製造方法により製造される固体電解質センサを縦方向に中央で切断した断面図である。
【
図5】(a)変形例の製造方法を説明する図であり、(b)
図5(a)の製造方法により製造される固体電解質センサを縦方向に中央で切断した断面図である。
【
図6】(a)〜(d)固体電解質センサにおけるセンサ素子とホルダとの位置関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態である固体電解質センサ1の製造方法について、
図1乃至
図3を用いて説明する。ここでは、気相中のガス濃度を測定する固体電解質センサの製造方法に、本発明を適用した場合を例示する。
【0019】
本実施形態の製造方法は、ホルダ20に対して、固体電解質のセンサ素子10、ガラス製リング30、及び、外側リング40をセットするセット工程と、加熱によりガラス製リング30を軟化させて変形させる軟化・変形工程と、軟化したガラスを硬化させる冷却工程とを具備している。
【0020】
より具体的に説明すると、ホルダ20は円筒状であり、アルミナ等のセラミックスで形成されている。センサ素子10は有底円筒状であり、その筒状部10sは円筒状である。センサ素子10の底部10b(閉端)には、内部空間側の表面に内側電極11が設けられていると共に、外部空間側の表面に外側電極12が設けられている。
【0021】
セット工程では、センサ素子10の筒状部10sの少なくとも一部が、ホルダ20の内部に位置するように位置決めをする。ホルダ20は、軸方向を上下方向として設置し、センサ素子10を支持棒50に載置して下方から支持する。支持棒50は、センサ素子10の筒状部10sの外径とほぼ等しい外径の円柱部材または円筒部材である。ここでは、センサ素子10の開端10eを下方に向けた状態でセンサ素子10を支持棒50に載置し、筒状部10sの一部と開端10eとがホルダ20の内部に位置すると共に、底部10bがホルダ20の上端から外部に突出するように、ホルダ20とセンサ素子10との位置関係を調整する場合を例示している。
【0022】
そして、ホルダ20の内周面とセンサ素子10の筒状部10sの外周面との間の空隙S(内外周面間の空隙S)に、一対の押し棒部材60a,60bのうち、下方から押圧力を作用させる押し棒部材60aを設置する。押し棒部材60a,60bは、内径が筒状部10sの外径より大きく、外径がホルダ20の内径より小さい円筒部材である。
【0023】
押し棒部材60aの上端に、二つの外側リング40で挟み込まれた状態のガラス製リング30を載置する。ガラス製リング30及び外側リング40は、共に内径が筒状部10sの外径より大きく、外径がホルダ20の内径より小さい環状である。ガラス製リング30は、形成されるガラスの封止層31に所望される厚さに応じて、複数を重ね合わせて使用しても良い。以上により、ホルダ20に対してセンサ素子10、ガラス製リング30、及び、外側リング40がセットされた状態となる(
図1(a)参照)。
【0024】
なお、本実施形態では、外側リング40はセラミックス製である。セラミックスであればガラスの軟化点では軟化・溶融しないため、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コーディエライトに例示されるセラミックスを、特に限定なく使用することができる。
【0025】
軟化・変形工程では、加熱によりガラス製リング30を軟化させた状態で、内外周面間の空隙Sに、他方の押し棒部材60bを上方から挿入し、押し下げる(
図1(b)参照)。これにより、軟化したガラス製リング30に、外側リング40を介して押し棒部材60bから押圧力が作用する。ここでは、ホルダ20、支持棒50、押し棒部材60aが同一面上に載置される場合を図示により例示しているが、この場合、反作用によって下方の押し棒部材60aからも、外側リング40を介してガラス製リング30に押圧力が作用する。なお、ホルダ20及び支持棒50を他の部材によって保持することにより、ホルダ20の下方に空間を設け、下方の押し棒部材60aを上方に押し上げるように移動させても良い。ガラス製リング30を加熱しつつ押し棒部材60a,60bによって押圧力を作用させた状態を、所定の時間保持する。
【0026】
軟化したガラス製リング30に対して外側リング40を介して上下から押圧力が作用することにより、ガラス製リング30は外側に押し広げられるように変形し、ホルダ20の内周面及び筒状部10sの外周面の双方に密着する(
図2(c)及び
図3(b)参照)。これと同時に、押し棒部材60a,60bによってそれぞれガラス製リング30に向かって押圧された二つの外側リング40の一部が、軟化したガラス製リング30の両側に、上下から埋設される。なお、図では、軟化したガラス製リング30の変形を模式的に表している。また、外側リング40の端部のみがガラスに埋設されている様子を図示しているが、ガラス製リング30の軟化の程度によっては、二つの外側リング40が接するほどガラスに潜り込んだ状態となる場合や、ほとんど埋設されずに外側リング40がガラスに接着している状態となる場合等がある。
【0027】
なお、ガラス製リング30及び外側リング40は、内外周面間の空隙Sに挿入されることから、内外周面とのクリアランスは不可避であるが、外側リング40と内外周面とのクリアランスは、押し棒部材60a,60bにより押圧された際に、外側リング40が抵抗なく空隙S内をスライドできる大きさに設定することが望ましい。一方、ガラス製リング30と内外周面とのクリアランスは、軟化した状態で押圧されたガラス製リング30が、変形によって内外周面と十分に密着できる大きさに設定する。
【0028】
冷却工程では、押し棒部材60bをホルダ20から引き出すことにより、或いは、押し棒部材60a,60bの双方をホルダ20から引き出すことにより押圧力を除き、冷却する。これにより、軟化・変形したガラス製リング30が内外周面の双方に密着した状態で硬化し、ガラスの封止層31が形成される。冷却後、支持棒50を外す(
図2(d)参照)。
【0029】
以上の工程により、
図4に示す構成の固体電解質センサ1が製造される。すなわち、筒状のホルダ20と、有底筒状に形成されており、筒状部10sの少なくとも一部がホルダ20の内部に位置している固体電解質のセンサ素子10と、環状であり、ホルダ20の内周面及び筒状部10sの外周面の双方に密着しているガラスの封止層31と、封止層31の両側にそれぞれ一部が埋設または接着されており、封止層31のガラスの軟化点では軟化・溶融しない材料で形成されている二つの外側リング40と、を具備している固体電解質センサ1である。
【0030】
外側リング40は、ガラス製リング30のガラスが軟化する温度で加熱され押圧されても変形しないため、封止層31の両側に埋設または接着されている外側リング40と内外周面との間には、当初に設定されたクリアランスがそのまま残存する。そのため、軟化・変形工程において外側リング40が真っ直ぐ押された場合、製造された固体電解質センサ1では、外側リング40はホルダ20の内周面にも筒状部10sの外周面にも当接していない。
【0031】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、ガラス製リング30を加熱により軟化させた状態で、両端面側から押圧力を作用させ変形させて内外周面の双方に密着させることにより、内外周面間の空隙Sを気密に封止するガラスの封止層31を形成することができる。これにより、センサ素子10を挟んだ二つの空間が気密な封止層31によって区画されるため、二つの空間のガスの混合が効果的に抑止され、正確にガス濃度を測定できる固体電解質センサ1を製造することができる。
【0032】
そして、押し棒部材60a,60bからの押圧力を、軟化・変形しない外側リング40を介してガラス製リング30に作用させているため、押圧力を除く際に、軟化したガラスと接着することなく押し棒部材60a,60bを引き出すことができる。
【0033】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0034】
例えば、上記の実施形態では、センサ素子10の筒状部10sの一部と開端10eとがホルダ20の内部に位置し、底部10bがホルダ20の外部に位置している固体電解質センサ1、及びその製造方法を例示した。これに限定されず、
図5(a),(b)に示すように、センサ素子10の全体、すなわち筒状部10s、開端10e、及び底部10bがホルダ20の内部に位置している固体電解質センサ1b、及びその製造方法とすることができる。
図5(a)では、底部10bを下方に向けた状態で、センサ素子10を支持棒50に載置する場合を図示しているが、開端を下方に向けた状態のセンサ素子10を支持棒50に載置しても良い。また、ホルダ20とセンサ素子10との位置調整のために、図示のようにスペーサ55を使用することができる。
【0035】
固体電解質センサにおけるセンサ素子10とホルダ20との位置関係を、
図6にまとめて示す。
図6(a)は、
図1乃至
図4を用いて説明した固体電解質センサ1と同様に、センサ素子10において筒状部10sの一部と開端10eとがホルダ20の内部に位置し、底部10bがホルダ20の外部に位置する場合であり、
図6(b)は、
図5を用いて説明した固体電解質センサ1bと同様に、開端10e及び底部10bを含めセンサ素子10の全体が、ホルダ20の内部に位置する場合である。その他、
図6(c)に示すように、筒状部10sの一部と底部10bとがホルダ20の内部に位置し、開端10eがホルダ20の外部に位置する態様や、
図6(d)に示すように、筒状部10sの一部のみがホルダ20の内部に位置し、底部10b及び開端10eの双方がホルダ20の外部に位置する態様とすることもできる。
【0036】
これらの構成の何れであっても、センサ素子10を挟んだ二つの空間Sp1,Sp2を、封止層31で気密に区画することができる。ここで、
図6(a)〜
図6(d)は、空間Sp2を測定雰囲気とし、測定用の開口90にホルダ20を挿入してセンサ素子10の外周面及び内周面の一方を測定雰囲気と接触させ、空間Sp1に基準ガスを導入する場合を図示している。
【0037】
なお、
図6(a)及び
図6(d)の例では、センサ素子10において内側電極11及び外側電極12が設けられている底部10bがホルダ20から突出しているため、応答性の高い検出が期待できる一方、
図6(b)の例では、センサ素子10の全体がホルダ20によって保護されている利点がある。また、
図6(c)の例では、センサ素子10の内部空間の測定ガスが、測定雰囲気(空間Sp2)における気流などの影響を受けにくい利点がある。
【符号の説明】
【0038】
1,1b 固体電解質センサ
10 センサ素子
10e 開端
10s 筒状部
20 ホルダ
30 ガラス製リング
31 封止層
40 外側リング
60a,60b 押し棒部材