(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービン用高温部品では、冷却空気は、内側の圧力と外側の圧力(ガスパス静圧)との差の平方根に大凡比例して流れる。
ここで、ガスタービン用高温部品の外側(ガスパス側)には圧力分布が有る。このため、特許文献1が開示するように、冷却空気供給孔の分布や、多孔質層の厚さ及び気孔率が一定であれば、ガスパス静圧が高い領域で冷却空気の流量が少なく、ガスパス静圧が低い領域で冷却空気の流量が多くなる。このため、多孔質層において冷却空気の流量に不所望の分布が生じてしまう。具体的には、部品が動翼や静翼の場合、腹面側と背面側とを比較すると、腹面側のガスパス静圧が背面側のガスパス静圧よりも高く、腹面側で冷却空気の流量が少なくなり、腹面側が背面側よりも過熱され易い。また、部品が動翼や静翼の場合、前縁側と後縁側とを比較すると、後縁側のガスパス静圧が前縁側のガスパス静圧よりも低く、後縁側で冷却空気の流量が多くなる。これにより、後縁側から必要以上に冷却空気が流れ、ガスタービンの性能低下を招く虞がある。
また、ガスタービン用高温部品に作用する熱負荷には分布がある。例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側の方が、下流側よりも熱負荷が大きい。この熱負荷の分布によっても、部品が局所的に過熱される虞がある。また、熱負荷の大きさによっては、多孔質層を配置する必要がなかったり、冷却空気による冷却が必要でない場合もある。
【0005】
一方、ガスタービンの翼の後縁部には、翼の内部を冷却した冷却ガスを翼の後縁から流出させるために、冷却ガスの排出流路が設けられている。このような冷却ガスの排出流路を翼の後縁部に設けるために、翼の後縁部の厚さを厚くする必要があり、翼形状の設計の自由度が低下しているという問題があった。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、局所的な過熱や、冷却ガスの局所的な流量過剰によるガスタービンの性能低下が防止されるガスタービン用高温部品、及び、ガスタービンを提供することにある。
また、上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、翼の後縁部の厚さにかかわらずに、翼の内部を冷却した冷却ガスを翼の後縁から流出させることが可能なガスタービンの翼、及び、ガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用高温部品は、
本体部と、
前記本体部の少なくとも一部として、又は、前記本体部の少なくとも一部の上に設けられ、冷却ガスが通過可能な多孔質部と、を備え、
前記本体部又は前記多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、前記多孔質部の配置又は前記多孔質部における前記冷却ガスの通過流量に分布をもたせるように構成されている。
【0008】
上記構成(1)によれば、本体部又は多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、多孔質部の配置又は多孔質部における冷却ガスの通過流量に分布をもたせるように構成されているので、本体部や多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記多孔質部は、前記本体部の少なくとも一部の上に設けられ、
前記本体部には、前記多孔質部に前記冷却ガスを供給するための複数の冷却ガス供給孔が設けられ、
前記多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、前記複数の冷却ガス供給孔の分布が決定されている。
【0010】
上記構成(2)によれば、多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、冷却ガス供給孔の分布が決定されているので、簡単な構成にて、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記構成(1)又は(2)において、
前記多孔質部は、前記本体部の少なくとも一部の上に設けられ、
前記本体部には、前記多孔質部に前記冷却ガスを供給するための複数の冷却ガス供給孔が設けられ、
前記多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、前記複数の冷却ガス供給孔の各々の断面積が決定されている。
【0012】
上記構成(3)によれば、多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、複数の冷却ガス供給孔の各々の断面積が決定されているので、簡単な構成にて、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(3)の何れか一つにおいて、
前記本体部には、前記複数の冷却ガス供給孔のうち少なくとも1つと前記多孔質部との間に、前記冷却ガス供給孔よりも断面積が大きい空洞が設けられている。
【0014】
上記構成(4)によれば、冷却ガス供給孔よりも大きな断面積を有する空洞が冷却ガス供給孔と多孔質部との間に設けられているので、多孔質部の広い領域に冷却ガスを供給することができる。この結果として、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(4)の何れか一つにおいて、
前記多孔質部の気孔率は、前記多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有する。
【0016】
上記構成(5)によれば、多孔質部の気孔率は、多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有するので、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(5)の何れか一つにおいて、
前記多孔質部の厚さは、前記多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有する。
【0018】
上記構成(6)によれば、多孔質部の厚さは、多孔質部に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有するので、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記構成(1)乃至(6)の何れか一つにおいて、
前記本体部又は前記多孔質部は、動翼、静翼、分割環及び燃焼器のうち何れか一つの少なくとも一部を構成している。
【0020】
上記構成(7)によれば、ガスタービン用高温部品としての動翼、静翼、分割環又は燃焼器において、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0021】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの翼は、
翼部の少なくとも後縁部を構成し、冷却ガスが通過可能な多孔質部を備え、
前記多孔質部は、前記翼部の内部から前記多孔質部を通じて前記翼部の後縁から前記冷却ガスが流出するように、気孔率の分布を有する。
【0022】
上記構成(8)によれば、翼部の後縁部を多孔質部によって構成し、多孔質部を通じて冷却ガスを流すことで、翼部の後縁部が薄肉であっても、翼部の後縁から冷却ガスを排出することができる。この際、翼部の後縁から冷却ガスが流出するように多孔質部の気孔率に分布をもたせることで、冷却ガスが翼部の後縁に到達する前に後縁部の背面側や腹面側から冷却ガスが全て流出することを防止することができ、後縁から冷却ガスを排出することができる。
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上記構成(1)乃至(7)の何れか一つに記載のガスタービン用高温部品を備える。
【0023】
上記構成(9)によれば、ガスタービン高温用部品において、多孔質部が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止されるので、ガスタービンをより高温で運転可能である。これにより、より高効率のガスタービンを実現可能である。
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
上記構成(8)に記載のガスタービンの翼を備える。
【0024】
上記構成(10)によれば、後縁部の後縁から冷却ガスを排出可能であり、ガスタービンの翼の設計の自由度が向上する。この結果として、高効率の形状を有するガスタービンの翼を実現可能であり、もって、高効率のガスタービンを実現可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、局所的な過熱や、冷却ガスの局所的な流量過剰によるガスタービンの性能低下が防止されるガスタービン用高温部品、及び、ガスタービンが提供される。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、翼の後縁部の厚さにかかわらずに、翼の内部を冷却した冷却ガスを翼の後縁から流出させることが可能なガスタービンの翼、及び、ガスタービンが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスタービン用高温部品が適用されたガスタービン1の構成を概略的に示す図である。
図1に示したように、ガスタービン1は、圧縮機(圧縮部)3と、燃焼器(燃焼部)5と、タービン(タービン部)7とを備えている。圧縮機3は、大気を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を生成する。燃焼器5には、燃料とともに圧縮機3から圧縮空気が供給され、燃焼器5は、燃料を燃焼させることにより高温高圧の燃焼ガスを生成する。タービン7は、燃焼ガスを利用して回転軸9を回転させる。回転軸9は、圧縮機3に接続されるとともに、例えば発電機(不図示)に接続され、回転軸9が出力したトルクによって圧縮機3が駆動されるとともに発電機が発電する。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係るガスタービン用高温部品10として、タービン7に適用可能な1つの静翼11を概略的に示す斜視図である。複数の静翼11は、回転軸9の周方向に配列された状態で、タービン7のハウジング(車室)12に対し固定される。静翼11は、翼部13と、翼部13の両側に配置されるプラットホーム15,17を有し、プラットホーム15,17間に燃焼ガスの流路(ガスパス)が規定される。従って、ガスパスに面するプラットホーム15,17の表面及び翼部13の表面が燃焼ガスに曝される。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係るガスタービン用高温部品10として、タービン7に適用可能な1つの動翼19を概略的に示す斜視図である。複数の動翼19は、回転軸9の周方向に配列された状態で回転軸9に対して固定される。動翼19は、翼部21と、翼部21の片側に配置されるプラットホーム23と、プラットホーム23から翼部21とは反対側に突出する翼根部25とを有する。翼根部25が回転軸9に埋設されることにより、動翼19が回転軸9に固定される。プラットホーム23は、回転軸9を覆うように配置され、プラットホーム23の翼部21側の表面がガスパスを規定する。従って、ガスパスに面するプラットホーム23の表面及び翼部21の表面が燃焼ガスに曝される。燃焼ガスは、複数の動翼19の翼部21に衝突し、回転軸9を回転させる。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態に係るガスタービン用高温部品10として、タービン7に適用可能な1つの分割環27を概略的に示す斜視図である。複数の分割環27は、回転軸9の周方向に配列された状態で、タービン7のハウジング12に対し固定される。分割環27は、回転軸9の径方向にて動翼19の外側に配置され、周方向に配列された複数の分割環27は、周方向に配列された複数の動翼19を囲む。分割環27は、動翼19を囲む囲繞壁を構成する壁部29と、壁部29をハウジング12に固定するための係合部31,33とを有する。動翼19側の壁部29の表面(凹曲面)がガスパスを規定し、ガスパスに面する壁部29の表面が燃焼ガスに曝される。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27a)を概略的に示す縦断面図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27b)を概略的に示す縦断面図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27c)を概略的に示す縦断面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27d)を説明するための図であり、(a)は分割環27(27d)を概略的に示す縦断面図であり、(b)は、分割環27(27d)における多孔質部の気孔率の分布を概略的に示すグラフである。
図9は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27e)を概略的に示す縦断面図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27f)を概略的に示す縦断面図である。
図11は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27g)を概略的に示す縦断面図である。
図12は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27h)を説明するための図であり、(a)は分割環27(27h)を概略的に示す縦断面図であり、(b)は、分割環27(27h)における気孔率の分布を概略的に示すグラフである。
図13は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27i)を概略的に示す縦断面図である。
図14は、本発明の一実施形態に係る分割環27(27j)を概略的に示す縦断面図である。
【0033】
図15は、本発明の一実施形態に係る動翼19(19a)を説明するための図であり、(a)は翼部21の概略的な横断面図であり、(b)は、燃焼ガスの流れ方向における、翼部21の腹面外側の静圧の分布、翼部21の背面外側の静圧の分布、及び、翼部21の内側の静圧の分布を概略的に示すグラフであり、(c)は、燃焼ガスの流れ方向における、腹面側の多孔質部における気孔率の分布、及び、背面側の多孔質部における気孔率の分布を概略的に示すグラフである。
図16は、本発明の一実施形態に係る動翼19(19b)を説明するための図であり、(a)は翼部21の概略的な横断面図であり、(b)は、燃焼ガスの流れ方向における、翼部21の腹面外側の熱負荷の分布、及び、翼部21の背面外側の熱負荷の分布を概略的に示すグラフであり、(c)は、燃焼ガスの流れ方向における、腹面側の多孔質部における気孔率の分布、及び、背面側の多孔質部における気孔率の分布を概略的に示すグラフである。
図17は、本発明の一実施形態に係る動翼19(19c)を概略的に示す横断面図である。
図18は、本発明の一実施形態に係る静翼11の翼部13の一部を概略的に示す部分斜視図である。
【0034】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用高温部品10は、
図5〜
図18に示したように、本体部40と、多孔質部42とを有する。
本体部40は、ガスタービン用高温部品10を形作る基本的な骨格を構成しており、例えば、Ni基合金等の耐熱性金属や、セラミックス基複合材(CMC:Ceramic Matrix Composites)等によって構成される。CMCは、例えばSiCやAl
2O
3等のセラミックス繊維と、セラミックス繊維を覆う例えばSiCやAl
2O
3等のセラミックスマトリックスとによって構成される。なお、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとの間には、例えばBN等の中間層が設けられる。
【0035】
多孔質部42は、本体部40の少なくとも一部として、又は、本体部40の少なくとも一部の上に設けられている。例えば、多孔質部42が本体部40の少なくとも一部として設けられる場合、多孔質部42は、ガスタービン用高温部品10の壁の一部を構成する。また例えば、多孔質部42が本体部40の少なくとも一部の上に設けられる場合、多孔質部42は、ガスタービン用高温部品10の外面を覆う被覆層を構成する。
多孔質部42は微小な気孔(不図示)を有しており、冷却ガスが、気孔を通じて多孔質部42を通過可能である。つまり、多孔質部42は微細冷却構造を有している。冷却ガスは例えば空気である。多孔質部42は、例えば、NiAl等の発泡金属(多孔質金属)、多孔質性のイットリウム安定化ジルコニア等のセラミックス、又は、多孔質性のCMC等によって構成されている。多孔質部42は、例えば、3Dプリンタによって作製されたものであってもよい。
そして、ガスタービン用高温部品10は、本体部40又は多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、多孔質部42の配置又は多孔質部42における冷却ガスの通過流量に分布をもたせるように構成されている。
【0036】
多孔質部42の少なくとも一部は、ガスタービン用高温部品10において、燃焼ガスが流れるガスパス側に配置される。ガスタービン用高温部品10は、多孔質部42によってガスパスと分離された内部空間44を有し、内部空間44には、ガスパスを流れる燃焼ガスよりも高圧の冷却ガスが供給される。多孔質部42は、内部空間44を区画する本体部40が冷却されることによる内面冷却若しくはインピンジメント冷却、又は、内部空間44における冷却ガスの静圧とガスパスにおける燃焼ガスの静圧の圧力差に応じて、冷却ガスが多孔質部42を通過するトランスピレーション冷却若しくはマイクロチャネル冷却によって、冷却される。
ここで、ガスタービン用高温部品10、即ち本体部40又は多孔質部42に作用する熱負荷や圧力差は一様に作用するのではなく、分布を有する。
そこで、上記構成では、ガスタービン用高温部品10が、本体部40又は多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、多孔質部42の配置又は多孔質部42における冷却ガスの通過流量に分布をもたせるように構成されているので、本体部40や多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0037】
幾つかの実施形態では、
図5〜
図11及び
図13〜18に示したように、多孔質部42は、本体部40の少なくとも一部の上に設けられている。つまり、多孔質部42は、本体部40の少なくとも一部を覆うように層状に形成され、断熱膜を構成している。
本体部40には、多孔質部42に冷却ガスを供給するための複数の冷却ガス供給孔46が設けられている。冷却ガス供給孔46は、内部空間44と多孔質部42とを流体的に接続している。
そして、ガスタービン用高温部品10では、
図5、
図6及び
図14に示したように、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、複数の冷却ガス供給孔46の分布が決定されている。
【0038】
上記構成によれば、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、冷却ガス供給孔46の分布が決定されているので、簡単な構成にて、多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0039】
例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する熱負荷が高くなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、冷却ガス供給孔46の数が多くなるように(冷却ガス供給孔46の密度が高くなるように)、冷却ガス供給孔46が形成される。
また例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する圧力差が小さくなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、冷却ガス供給孔46の数が多くなるように、冷却ガス供給孔46が形成される。
更に例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図15(b)に示したように、ガスパスの静圧に分布があり、圧力差に分布がある。具体的には、腹面側の圧力差は、腹面側では流れ方向にて中間部で最も小さくなり、背面側では流れ方向中間部で最も大きくなる。そこで、このような圧力差の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、圧力差が小さくなるほど冷却ガス供給孔46の数が多くなるように、冷却ガス供給孔46の数を決定してもよい。
【0040】
また更に、例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図16(b)に示したように、熱負荷に分布がある。具体的には、腹面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分で徐々に上昇し、更にそれよりも下流の部分では後縁まで徐々に減少する。背面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分では後縁まで徐々に増加する。そこで、このような熱負荷の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、熱負荷が大きくなるほど冷却ガス供給孔46の数が多くなるように、冷却ガス供給孔46の数を決定してもよい。
なお、熱負荷が低い多孔質部42の領域が存在する場合、
図6に示したように、当該領域に冷却ガスを供給するための冷却ガス供給孔46を設けなくてもよい。換言すれば、熱負荷が高い多孔質部42の領域にのみ冷却ガスを供給するように、冷却ガス供給孔46を設けてもよい。具体的には、燃焼ガスの流れ方向にて上流側にのみ冷却ガス供給孔46を設けてもよい。
また、内面冷却やインピンジメント冷却による冷却のみで十分である場合、即ちガスタービン用高温部品10を内側から冷却するのみで、本体部40や多孔質部42の温度を許容温度以下に保つことができる場合には、冷却ガス供給孔46を省略してもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、
図7に示したように、多孔質部42は、本体部40の少なくとも一部の上に設けられている。つまり、多孔質部42は、本体部40の少なくとも一部を覆うように層状に形成され、断熱膜を構成している。
本体部40には、多孔質部42に冷却ガスを供給するための複数の冷却ガス供給孔46が設けられている。冷却ガス供給孔46は、内部空間44と多孔質部42とを流体的に接続している。
そして、ガスタービン用高温部品10では、
図7に示したように、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、複数の冷却ガス供給孔46の各々の断面積(流路面積)、換言すれば等価直径が決定されている。
【0042】
上記構成によれば、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、複数の冷却ガス供給孔46の各々の断面積が決定されているので、簡単な構成にて、多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する熱負荷が高くなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、冷却ガス供給孔46の断面積が大きくなるように、冷却ガス供給孔46が形成される。
また例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する圧力差が小さくなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、冷却ガス供給孔46の断面積が大きくなるように、冷却ガス供給孔46が形成される。
更に例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図15(b)に示したように、ガスパスの静圧に分布があり、圧力差に分布がある。具体的には、腹面側の圧力差は、腹面側では流れ方向にて中間部で最も小さくなり、背面側では流れ方向中間部で最も大きくなる。そこで、このような圧力差の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、圧力差が小さくなるほど冷却ガス供給孔46の断面積が大きくなるように、冷却ガス供給孔46の断面積を決定してもよい。
【0043】
また更に、例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図16(b)に示したように、熱負荷に分布がある。具体的には、腹面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分で徐々に上昇し、更にそれよりも下流の部分では後縁まで徐々に減少する。背面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分では後縁まで徐々に増加する。そこで、このような熱負荷の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、熱負荷が大きくなるほど冷却ガス供給孔46の断面積が大きくなるように、冷却ガス供給孔46の断面積を決定してもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、
図11及び
図13に示したように、本体部40には、複数の冷却ガス供給孔46のうち少なくとも1つと多孔質部42との間に、冷却ガス供給孔46よりも断面積が大きい空洞48が設けられている。空洞48は多孔質部42に隣接している。
上記構成によれば、冷却ガス供給孔46よりも大きな断面積を有する空洞48が冷却ガス供給孔46と多孔質部42との間に設けられているので、多孔質部42の広い領域に冷却ガスを供給することができる。この結果として、多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0045】
空洞48は、例えば、冷却ガス供給孔46と同軸の円柱形状や角柱形状を有している。或いは、空洞48は、多孔質部42に沿って延在する溝形状若しくはチャネル形状を有していてもよい。
幾つかの実施形態では、空洞48の断面積が可及的に大きくなるように、空洞48が形成される。
幾つかの実施形態では、隣り合う空洞48を隔てる壁が可及的に薄くなるように空洞48が形成される。
【0046】
幾つかの実施形態では、
図10に示したように、多孔質部42は、本体部40に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて配置されている。
上記構成によれば、本体部40に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて多孔質部42が配置されているので、ガスタービン用高温部品10に占める多孔質部42の比率を小さくしながら、本体部40を熱から保護することができる。
例えば、多孔質部42は、
図10に示したように、燃焼ガスの流れ方向にて上流側にのみ設けられる。
【0047】
幾つかの実施形態では、
図8、
図11、
図12、
図13、
図15及び
図16に示したように、多孔質部42の気孔率は、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有する。
上記構成によれば、多孔質部42の気孔率は、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有するので、多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する熱負荷が高くなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42の気孔率が大きくなるように、例えば段階的に大きくなるように、多孔質部42(42a〜42e)が形成される。
また例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する圧力差が小さくなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42の気孔率が大きくなるように、例えば段階的に大きくなるように、多孔質部42(42a〜42e)が形成される。
更に例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図15(b)に示したように、ガスパスの静圧に分布があり、圧力差に分布がある。具体的には、腹面側の圧力差は、腹面側では流れ方向にて中間部で最も小さくなり、背面側では流れ方向中間部で最も大きくなる。そこで、このような圧力差の分布に応じて、
図15(c)に示したように、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、圧力差が小さくなるほど多孔質部42の気孔率が大きくなるように、例えば段階的に大きくなるように、多孔質部42の気孔率の分布を決定してもよい。
【0048】
また更に、例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図16(b)に示したように、熱負荷に分布がある。具体的には、腹面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分で徐々に上昇し、更にそれよりも下流の部分では後縁まで徐々に減少する。背面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分では後縁まで徐々に増加する。そこで、このような熱負荷の分布に応じて、
図16(c)に示したように、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、熱負荷が大きくなるほど多孔質部42の気孔率が大きくなるように、例えば段階的に大きくなるように、多孔質部42の気孔率の分布を決定してもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図9及び
図17に示したように、多孔質部42の厚さは、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有する。
上記構成によれば、多孔質部42の厚さは、多孔質部42に作用する熱負荷及び圧力差の分布のうち一方又は両方に応じて、分布を有するので、多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する熱負荷が高くなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42の厚さが薄くなるように、例えば段階的に薄くなるように、多孔質部42が形成される。
また例えば、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42に作用する圧力差が小さくなる。そこで、燃焼ガスの流れ方向にて上流側ほど、多孔質部42の厚さが薄くなるように、例えば段階的に薄くなるように、多孔質部42が形成される。
更に例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図15(b)に示したように、ガスパスの静圧に分布があり、圧力差に分布がある。具体的には、腹面側の圧力差は、腹面側では流れ方向にて中間部で最も小さくなり、背面側では流れ方向中間部で最も大きくなる。そこで、このような圧力差の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、圧力差が小さくなるほど多孔質部42の厚さが薄くなるように、例えば段階的に薄くなるように、多孔質部42の厚さの分布を決定してもよい。
【0050】
また更に、例えば、ガスタービン用高温部品10が静翼11や動翼19といった翼の場合、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、
図16(b)に示したように、熱負荷に分布がある。具体的には、腹面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分で徐々に上昇し、更にそれよりも下流の部分では後縁まで徐々に減少する。背面側の熱負荷は、流れ方向にて前縁で最も高く、前縁の直下流の部分で最小となり、それよりも下流の部分では後縁まで徐々に増加する。そこで、このような熱負荷の分布に応じて、翼部13,21の背面側及び腹面側の各々で、熱負荷が大きくなるほど多孔質部42の厚さが薄くなるように、例えば段階的に薄くなるように、多孔質部42の厚さの分布を決定してもよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、
図12に示したように、多孔質部42がガスタービン用高温部品10の本体部40全体を構成していてもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、
図13に示したように、多孔質部42上には遮熱層(TBC:Thermal Barrier Coating)50が設けられていてもよい。遮熱層50は、例えば、イットリウム安定化ジルコニア等のセラミックスによって構成され、多孔質部42よりも小さい気孔率を有する。遮熱層50には、冷却ガスを流出させる冷却ガス放出孔52が形成されていてもよい。
【0053】
幾つかの実施形態では、
図14に示したように、本体部40と多孔質部42との間に接着層(中間層)54が設けられていてもよい。接着層54は、本体部40と多孔質部42とを接合するものであり、例えば、リン酸アルミニウムを焼成したものや、MCrAlY合金からなる。ここで、MCrAlY合金のMは、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれる一種又は二種以上を表す。MCrAlY合金は、一例として、Co−32Ni−21Cr−8Al−0.5Yで表される組成を有する。
【0054】
幾つかの実施形態では、
図5〜
図14に示したように、多孔質部42は、少なくとも、分割環27の壁部29の外面側(ガスパス側)に設けられる。
幾つかの実施形態では、
図15〜
図17に示したように、多孔質部42は、少なくとも、動翼19の翼部21の外面側(ガスパス側)に設けられる。
幾つかの実施形態では、
図18に示したように、多孔質部42は、少なくとも、静翼11の翼部13の外面側(ガスパス側)に設けられる。
【0055】
上述した実施形態では、ガスタービン用高温部品10としての動翼19、静翼11又は分割環27の少なくとも一部を本体部40又は多孔質部42が構成していたが、幾つかの実施形態では、ガスタービン用高温部品10は、
図1に示したように、燃焼器5である。この場合、本体部40又は多孔質部42は、燃焼器5の少なくとも一部、例えば燃焼筒又は尾筒(トランジションピース)を構成する。
上記構成によれば、ガスタービン用高温部品10としての燃焼器5において、動翼19、静翼11又は分割環27と同様、本体部40や多孔質部42が局所的に過熱されたり、冷却ガスの通過流量が局所的に過剰になることが防止される。
【0056】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの翼、即ち静翼11又は動翼19は、
図17に示した動翼19のように、翼部21の少なくとも後縁部56を構成し、冷却ガスが通過可能な多孔質部42,58を備えている。
そして、多孔質部42,58は、翼部21の内部から多孔質部58を通じて翼部21の後縁から冷却ガスが流出するように、気孔率の分布を有する。
より詳しくは、多孔質部(内側多孔質部)58は、多孔質部(外側多孔質部)42によって覆われており、多孔質部58の気孔率は、多孔質部42の気孔率よりも大きい。このため、冷却ガスは、多孔質部42よりも多孔質部58を通過し易く、多孔質部58によって、冷却ガスが翼部21の後縁まで導かれる。一方、多孔質部42の厚さは、後縁よりも手前で冷却ガスが流出しないように、後縁部56の上流側において厚くなっている。
【0057】
上記構成によれば、翼部21の後縁部56を多孔質部42,58によって構成し、多孔質部58を通じて冷却ガスを流すことで、翼部21の後縁部56が薄肉であっても、翼部21の後縁から冷却ガスを排出することができる。この際、翼部21の後縁から冷却ガスが流出するように多孔質部42,58の気孔率に分布をもたせることで、冷却ガスが翼部21の後縁に到達する前に後縁部56の背面側や腹面側から冷却ガスが全て流出することを防止することができ、後縁から冷却ガスを排出することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、
図18に示した静翼11のように、内部空間44は複数の分室60に区画され、各分室60に並列に冷却ガスが供給される。そして、圧力差による分室60からの冷却ガスの流出量を、冷却ガス供給孔46の数や断面積、或いは、多孔質部42の気孔率や厚さによって十分に制御できない場合に、分室60への冷却ガスの流路に、絞り62が介挿される。
上記構成によれば、絞り62により、分室60における冷却ガスの静圧を制御することができ、特定の分室60から多量の冷却ガスが流出することを防止することができる。
【0059】
図19は、本発明の一実施形態に係るガスタービン用高温部品10に適用される多孔質部の製造方法の手順の一例を概略的に示すフローチャートである。
【0060】
多孔質部の製造方法は、
図19に示したように、スラリ用意工程S1と、集合体用意工程S3と、スラリ付与工程S5と、乾燥工程S7と、加熱工程S9とを備えている。
スラリ用意工程S1では、スラリの原材料として、溶媒としての水、例えば蒸留水又は脱イオン水と、セラミックス粉末と、気孔生成用粉末と、必要に応じて分散剤と、必要に応じて結着剤とが用意される。そして、原材料が撹拌混合され、スラリが用意される。
セラミックス粉末は、例えば、SiC、Si
3N
4、βSiAlON、AlN、TiB
2、BN、及び、WC等からなる群から選択される一種以上又はその原材料を含む粉末である。
気孔生成用粉末は、例えば、有機材料、カーボン及び黒鉛等からなる群より選択される一種以上を含む粉末である。有機材料の粉末は、例えば、アクリル系、スチレン系又はポリエチレン系等の高分子粉末である。
分散剤は、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリリン酸アミノアルコール中和品、ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、非イオン系界面活性剤、及び、カチオン系界面活性剤等からなる群より選択される一種以上を含む。
結着剤は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、及びパラフィンからなる群より選択される一種以上を含む。
【0061】
集合体用意工程S3では、セラミックス繊維の集合体が用意される。セラミックス繊維の集合体は、セラミックス繊維の束や織物である。セラミックス繊維は、例えば、SiC、SiTiCO、SiZrCO、SiAlCO、及び、Si
3N
4等からなる群より選択される一種以上又はその原材料を含む。
【0062】
スラリ付与工程S5では、セラミックス繊維の集合体にスラリが付与される。この際、セラミックス繊維の隙間にスラリが浸透するように、セラミックス繊維の集合体にスラリが付与される。
例えば、スラリ付与工程S5では、セラミックス繊維の集合体が、大気圧よりも低圧下にてスラリに浸漬される。あるいは、セラミックス繊維の集合体に対し、スラリを塗布した後、ローラがけすることによって、スラリが付与される。
【0063】
乾燥工程S7では、セラミックス繊維の集合体に付与されたスラリが例えば120℃の雰囲気中で乾燥させられ、グリーン体(中間体)が形成される。
加熱工程S9では、グリーン体が例えば1200℃の還元雰囲気下で加熱され、セラミックス粉末が焼結させられるとともに、気孔生成用粉末が消失させられる。
【0064】
上述した多孔質部の製造方法によれば、スラリ用意工程S1でスラリ中に気孔生成用粉末を混合し、加熱工程S9で気孔生成用粉末を消失させることで、多孔質部内に、気孔生成用粉末に対応する気孔を生成することができる。
また、上述した多孔質部の製造方法によれば、スラリに添加する気孔生成用粉末の量を調整することにより、気孔率を制御することができる。
【0065】
図20は、スラリ付与工程S5の一例を説明するための概略的な斜視図である。
図21は、スラリ付与工程S5の一例を説明するための概略的な平面図である。
幾つかの実施形態では、
図20に示したように、複数のディスペンサ64を用いてセラミックス繊維の織物66に対し、スラリ68が並列に付与される。この際、複数のディスペンサ64によって、気孔生成用粉末の含有量が相互に異なるスラリ68を並列に付与する。
そして、
図21に示したように、スラリ68の延在方向に沿ってローラ70をかけ、スラリ68を織物66に浸透させる。
上記構成によれば、気孔生成用粉末の含有量が異なるスラリ68を並列に付与し、スラリ68の延在方向に沿ってローラ70をかけることにより、スラリ68の延在方向と直交する方向にて、気孔率が段階的に変化する多孔質部を製造可能である。
一方、スラリ68の延在方向と直交する方向に沿ってローラ70をかければ、気孔率の変化が滑らかな多孔質部を製造可能である。
【0066】
なお、
図21に示したように、多孔質部42の厚さに応じて、複数の織物66を重ねてもよい。この場合、1つの織物66に対してディスペンサ64によりスラリ68を付与し、ローラ70をかけ、次の織物66を重ね、スラリ68を付与し、ローラ70をかける、という作業を繰り返してもよい。或いは、1つの織物66に対してディスペンサ64によりスラリ68を付与し、次の織物66を重ね、スラリ68を付与する、という作業を繰り返し、最後に一括してローラ70をかけてもよい。
【0067】
図22は、集合体用意工程S3で用意された複数の織物66を示す概略的な斜視図である。幾つかの実施形態では、異なる大きさの複数の織物66が用意され、相互に重ね合わせられる。
上記構成によれば、簡単な構成にて、熱負荷や圧力差に応じて、多孔質部42の厚さを変化させることができる。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態を含む。
特に、ガスタービン用高温部品10として、分割環27を中心に説明したが、分割環27について説明した構成を、燃焼器5、静翼11及び動翼19にも適用可能であり、静翼11について説明した構成を、燃焼器5、動翼19及び分割環27にも適用可能であり、動翼19について説明した構成を、燃焼器5、静翼11及び分割環27にも適用可能である。
また、ガスタービン用高温部品10とは、燃焼ガスの影響により、少なくとも一部が例えば800℃以上の温度まで加熱される部品であり、上述した燃焼器5、静翼11、動翼19、及び、分割環27に限定されることはない。
更に、スラリ付与工程S5で織物66に対し付与するスラリ68のパターンは、
図20及び
図21に示したように並列に限定されることはなく、熱負荷や圧力差の分布に応じて適宜選択可能である。