【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、周囲センサシステムが搭載された車両のための、当該車両が走行しようとする少なくとも1つの経路区間の走行可能性を表す評価信号を形成するための方法を記載する。前記評価信号は、前記周囲センサシステムによって検出される周囲データに基づいて決定される。本方法の核心部分は、前記評価信号をさらに、
・前記少なくとも1つの経路区間の幾何形態を表す高度マップからの少なくとも1つの周囲情報に基づいて、及び/又は、
・前記車両のピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値に基づいて、
決定することにある。
【0007】
本発明に係る方法は、周囲センサシステムによって記録された周囲データに加えて周囲又は車両に関する別の重要な情報も考慮している、少なくとも1つの経路区間の走行可能性に関する評価信号を作成することが可能となるという利点を提供する。こうすることにより、経路区間の走行可能性に関する高信頼性の判断が可能となる。周囲データとは、周囲センサシステムによって記録可能な全てのデータであると理解される。周囲センサシステムは、例えば1つ又は複数のカメラ、及び/又は、ステレオビデオカメラ、及び/又は、レーダセンサ、及び/又は、超音波センサ、及び/又は、ライダ、及び/又は、自動車産業で使用される他の一般的なセンサから構成することができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの経路区間の幾何形態を表す高度マップの周囲情報が考慮され、この周囲情報には高度情報が含まれる。こうすることにより、経路区間の走行可能性を、評価信号によってさらにより高信頼性に表すことが可能となる。さらには、周囲データを周囲情報とリンクさせることができ、これによって周囲データの信頼性をチェックすることができる。例えば、使用しているセンサの検出範囲を、道路形状/路面凹凸を考慮して評価することができ、どの範囲で測定が可能であるか、及び、どの範囲では説得力のある測定値/周囲データを供給することが不可能であるかを確認することができる。本発明に係る方法のこれに代わる1つの実施形態では、周囲データが、車両のピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値とリンクされる。周囲データと少なくとも1つの運動値とを組み合わせることにより、周囲センサシステムの検出範囲をより正確に特定することができ、こうすることによっても、経路区間の走行可能性のより高信頼性の評価を実施することが可能となる。車両は、加速又は減速する場合にはピッチ運動を実施し、カーブを走行する場合にはロール運動を実施することができる。これらの運動により、周囲センサシステムの視界/検出範囲が変化する。この変化した検出範囲を評価して、どの範囲で測定が可能であるか、及び、どの範囲では周囲センサシステムが説得力のある周囲データを供給することが不可能であるのかを確認することができる。
【0009】
本発明によればさらに、少なくとも1つの経路区間の幾何形態に関する周囲情報と、ピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値とが、評価信号の形成時に考慮されるという、本方法の1つの実施形態が記載される。この場合には、運動値を使用することによって追加的に周囲情報の妥当性を検証することが可能となる。さらには、周囲情報と運動値との組み合わせにより、周囲センサシステムの正確な検出範囲を特定して、評価信号の形成時に考慮することができる。
【0010】
本方法の有利な1つの実施形態では、前記車両の少なくとも1つの周囲情報及び/又は前記少なくとも1つの運動値は、前記周囲データの導出元となる、前記周囲センサシステムの検出範囲に影響を与える。
【0011】
この実施形態は、追加的に考慮される周囲情報及び/又は運動値によって、周囲センサシステムの検出範囲に影響を与えることができ、これによって周囲データを相応に変更することが可能となる、又は、周囲データを改めて解釈する必要があるという利点を有する。周囲センサシステムによって検出され、評価信号を形成するために使用された特定の範囲が、経路区間の高信頼性の評価のためには不適当であることが周囲情報から判明すると、この追加的な情報に基づいて、周囲センサシステムから導出された周囲データを変更することが可能である。例えば前方に存在する道路区間上でカメラによって障害物が検出されなかった場合には、ここから導出される周囲データは、当該経路区間が自由に走行可能であるという判断を下す可能性がある。しかしながら、前方に存在する区間がカメラによって視認不可能な急峻な下り勾配を有しているということが分かる追加的な周囲情報があれば、この追加的な情報によって、周囲データに影響を与えることが可能となり、これによってこの周囲データが、当該経路区間が自由に走行可能であるという判断を下すのではなく、この特定の範囲では当該周囲データの説得力のある評価/説得力のある評価信号の形成が不可能であるということを示すようにする。
【0012】
車両がロール運動及び/又はピッチ運動を実施していることが、少なくとも1つの運動値から判明した場合には、この運動値も同様にして、周囲センサシステムの検出範囲と、ひいてはこの検出範囲から導出される周囲データとに影響を与えることができる。例えば、複数の異なる時点に複数の異なる画像領域が検出されるように、カメラの検出範囲を車両の固有運動によって変更することが可能である。運動値を考慮することにより、例えばいくつかの画像領域を、経路区間の評価のためには信頼できないと分類することができる。なぜなら、これらの領域は、車両が特定のピッチ運動及びロール運動をしている場合にのみ検出可能であって、継続的に監視することはできないからである。運動値を追加することによって、周囲データを現在の走行状況に適合させることが可能となる。
【0013】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号は、前記経路区間の走行可能性に関する確率情報を含む。
【0014】
複数のデータ及び/又は情報及び/又は運動値を評価するにあたり、これらが経路区間の走行可能性に関する不確実性を有している可能性があるので、評価信号を形成するために確率情報又は確率値を使用することも有利である。場合によってそれぞれ異なる確率を有し得る複数の利用可能なデータ及び/又は情報及び/又は運動値を組み合わせることによって、場合によっては、評価すべき経路区間の走行可能性に関する確率を表す1つの全体的な確率値を決定することもできる。どのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を用いて確率を決定するか、又は、どのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を用いずに確率を決定するかは、用途及び/又は状況及び/又は周囲状況に応じて変更することができる。考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値は、例えば周囲データ、又は、周囲情報、又は、運動値、又は、他の車両又は道路形状に関する情報、又は、走行可能性に関する経路区間の評価のために考慮の対象となる及び/又は本明細書で挙げられるその他全ての考えられる入力変数、とすることができる。
【0015】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号の決定は、前方を走行する車両の軌跡を用いて実施される。
【0016】
この実施形態は、前方を走行する車両の走行挙動を、評価信号に考慮することが可能となるという利点を有する。所有する周囲センサシステムによって検出できない可能性がある領域又はまだ検出できない可能性がある領域を、前方を走行する車両の挙動に基づいて評価することができる。前方を走行する車両の制動挙動及び/又は加速挙動も、評価に考慮することができる。さらに考えられることには、前方を走行する車両の走行軌跡をマップデータと比較して、計画された軌跡と実際に走行可能な軌跡との間で起こり得る衝突を確認することが可能である。前方を走行する車両を継続的に監視することにより、前方を走行する車両が走行したエリアを、オープンスペースとして、ひいては走行可能な経路区間として解釈することができる。
【0017】
本発明の別の1つの実施形態では、前記評価信号の決定を、前記周囲データの評価時に識別された車線標示を用いて実施する。
【0018】
この実施形態は、車線標示に基づいて、経路区間の走行可能性のより良好な評価が可能となるという利点を提供する。一方では、2つの車線標示の間の領域(道路又は車道)を、潜在的に走行可能であるとして仮定することができ、2つの車線標示の外側の領域を、潜在的に走行不可能であるとして仮定することができる。他方では、検出された車線標示までの領域は、通常であればさほど大きなオブジェクトによって覆われてはいないので、走行可能である。なぜなら、そうでなければ、車線標示が検出されることはあり得ないからである。なお、この車線標示の検出は、例えばカメラを用いて実施される。カーブ走行の場合にも、このようにして、経路区間の走行可能性に関する評価信号の形成時における利点が得られる。
【0019】
本発明の別の1つの有利な実施形態では、前記評価信号の決定は、デジタル道路マップを用いて実施され、前記デジタル道路マップは、評価すべき前記経路区間上にあるインフラストラクチャ設備に関する情報、及び/又は、評価すべき前記経路区間の道路形状に関する情報を含む。
【0020】
この実施形態は、評価すべき経路区間の正確な道路形状と、存在する可能性があるインフラストラクチャ設備とが既知であるという利点を有する。こうすることにより、周囲センサシステムの検出範囲が、どの位置では評価すべき経路区間全体を含んでいないのかということを、場合によって事前に確認しておくことができる。従って、当該経路区間の走行可能性の相応の評価、又は、周囲データの信頼性の評価も、事前に実施しておくことができる。さらには、周囲センサシステムによって直接的に検出できない領域、例えば斜面、視認不可能なカーブ、トンネル、アンダーパス等におけるオープンスペースを低減することができる。インフラストラクチャ設備とは、交通に対して、又は、道路利用者の視界、すなわち周囲センサシステムの視界に対して影響を及ぼし得る全ての建築物、工事現場、及び、標識であると理解することができる。例えばトンネル、橋、アンダーパス、騒音対策用建築物、車道間の生垣、工事現場の看板、及び、建設車両がある。例えば車両が視認不可能なカーブに接近すると、この情報を評価に考慮すること、及び/又は、場合によっては周囲データ/周囲センサシステムの検出範囲に影響を与えることが可能である。評価すべき経路区間上にあるトンネルに関する情報によって、例えばこの経路区間の走行可能性に関して、この経路区間の横方向の明確な境界線を画定することが可能となり、他方では、トンネルへの進入時、トンネルの通行時、又はトンネルからの退出時における視認性の変化を考慮することが可能となり、これによって、場合によっては周囲データ/検出範囲に影響を与えることが可能である。
【0021】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値が、それぞれ異なる大きさで重み付けされる。
【0022】
この実施形態は、評価信号の決定時に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値の信頼性に応じて、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値の適切な重み付けを実施することが可能となるという利点を提供する。データ及び/又は情報及び/又は運動値とは、評価に考慮される全ての特性、情報、手段、及びデータであると理解することができる。例えば、周囲データ、周囲センサシステムの任意の信号、周囲情報、マップデータ、幾何形態データ、前方を走行する車両に関する情報、道路標示、視界、ピッチ角及びロール角、運動値、及び、車両の他の特性である。全てのデータ及び/又は情報及び/又は運動値が同じ信頼性を有するとは限らないので、経路区間の走行可能性に関する評価信号を、個別的な重み付けによって最適化することが可能である。
【0023】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値の前記重み付けは、前記データ及び/又は情報及び/又は運動値の評価に基づいて実施される。
【0024】
この実施形態は、取得したデータ及び/又は情報及び/又は運動値に基づいて、及び、取得したデータ及び/又は情報及び/又は運動値の共通の評価によって、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値の信頼性を推定することが可能となるという利点を提供する。例えば、周囲情報が読み出され、この周囲情報によって、急峻な下り勾配又は急峻な上り勾配が原因で周囲センサシステムによってもはや経路区間を検出できないということ、又は、周囲センサシステムが経路区間の走行可能性の誤った評価につながるおそれのあるデータを供給する可能性があることが示唆される場合には、特定の経路区間の評価信号を決定するために、周囲データの重み付けを小さくすることができる。この実施形態によれば、状況に適合した最も説得力のあるデータ及び/又は情報及び/又は運動値をより大きく重み付けして、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値に基づいて、経路区間のための最適な評価信号を決定することができる。相応にして、信頼できないと分類されたデータ及び/又は情報及び/又は運動値を、より小さく重み付けすることもできる。
【0025】
本方法の有利な1つの実施形態では、前記走行可能性に関する評価信号によって評価すべき前記経路区間の少なくとも一部は、前記周囲センサシステムによって直接的には検出不可能である。
【0026】
この実施形態は、評価すべき経路区間が、必ずしも周囲センサシステムによって検出可能でなくてもよいという大きな利点を有している。こうすることによって、周囲センサシステムによって検出できない、又は、周囲センサシステムによって一部しか検出できない、特別な経路区間を評価することができる。評価すべき経路区間に関してできるだけ多くのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を使用することによって、視認不可能な又は一部しか視認不可能な経路区間の評価が可能となり、ひいては、このような経路区間に関する評価信号を形成することが可能となる。
【0027】
本発明によればさらに、評価信号を形成し、前記評価信号に基づいて、警告信号を形成する、及び/又は、前記評価信号に基づいた、運転者に対する走行タスクの引き受けの要請を形成する、及び/又は、前記評価信号に基づいて、車両の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータを制御する、装置が開示される。本装置は、前記評価信号が、本発明に係る方法によって形成されることを特徴とする。
【0028】
本装置は、本発明に係る方法を実施することによって評価信号を形成することができる。本装置は、評価信号に基づいて警告信号を形成し、これによって運転者又は他の道路使用者に対して警告することができ、及び/又は、評価信号に基づいて運転者に対する走行タスクの引き受けの要請を形成し、これによって車両のコントロールを引き受けるよう運転者に要請することができる。有利には本装置によって、運転者に対して危険な走行状況への注意を早期に促すことができ、これに応じて運転者は、経路区間の相応の評価信号が存在する場合、又は、予め規定された確率での走行可能性を保証できない場合に、例えば視認不可能なカーブ又は上り勾配の手前で車両の速度を低減することによって反応することができる。確率が何以下になるとこのような警告信号及び/又は運転者による引き受けの要請が出力されるかについては、車両個別に及び/又は運転者個別に設定することが可能である。
【0029】
これに代えて又はこれに加えて、本装置は、評価信号に基づいてアクチュエータを制御することもでき、これによって車両の走行推進力への介入が実施される。従って、本装置は、事故の危険性が増加した場合に車両の走行推進力に介入することができ、こうすることによって事故が防止され、又は、事故の可能性が低減される。アクチュエータの制御のために、運転者の介入が必ずしも必要というわけではない。実施形態に応じて例えば、速度の低減、場合によっては静止するまでの速度の低減、又は、ステアリング操作、又は、その他の運転操作を、対応するアクチュエータの制御によって実施することができる。
【0030】
本装置はさらに、周囲センサシステムによって直接的には検出できない経路区間に関する評価信号を形成することができる。経路区間の相応の評価信号に基づき、事故の危険性が増加したと仮定する必要がある場合に、当該経路区間上において安全性対策を実施することも可能である。以上をまとめると、本装置は、安全性の向上に寄与する。
【0031】
さらには、本発明に係る方法の全てのステップを実施するように構成されたコンピュータプログラムが、特許請求の範囲に記載されている。