特許第6856369号(P6856369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856369
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】オープンエリアの識別
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20210329BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210329BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20210329BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20210329BHJP
【FI】
   B60W40/06
   G08G1/16 C
   G08G1/16 E
   G01C21/26 A
   B60W50/14
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-235086(P2016-235086)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-100716(P2017-100716A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】10 2015 224 192.0
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アヒム ファイアーアーベント
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク マウハー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ピンク
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−069274(JP,A)
【文献】 特開2003−159958(JP,A)
【文献】 特開2000−057497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
G01C 21/00−21/36
G01C 23/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲センサシステムが搭載された車両(101,201,301,401)のための、当該車両(101,201,301,401)が走行しようとする少なくとも1つの経路区間の走行可能性を表す評価信号(504a,603a)を形成するための方法であって、
前記評価信号(504a,603a)を、前記周囲センサシステムによって検出される周囲データ(511a,601a)に基づいて形成する、
方法において、
前記評価信号(504a,603a)をさらに、
・前記少なくとも1つの経路区間の幾何形態を表す高度マップからの少なくとも1つの周囲情報(512a,602a)に基づいて、及び/又は、
・前記車両のピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値(513a,622a)に基づいて、
形成し、
前記評価信号(504a,603a)は、前記経路区間の走行可能性に関する確率情報を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車両の前記少なくとも1つの周囲情報(512a,602a)及び/又は前記少なくとも1つの運動値(513a,622a)は、前記周囲データ(511a,601a)の導出元となる、前記周囲センサシステムの検出範囲に影響を与える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価信号(504a,603a)を、前方を走行する車両(302)の軌跡を用いて形成する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価信号(504a,603a)を、前記周囲データ(511a,601a)の評価時に識別された車線標示を用いて形成する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記評価信号(504a,603a)を、デジタル道路マップを用いて形成し、
前記デジタル道路マップは、評価すべき前記経路区間上にあるインフラストラクチャ設備に関する情報、及び/又は、評価すべき前記経路区間の道路形状に関する情報を含む、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価信号(504a,603a)に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値(511a,512a,513a,601a,602a,622a)を、それぞれ異なる大きさで重み付けする、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記評価信号(504a,603a)に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値(511a,512a,513a,601a,602a,622a)の前記重み付けを、前記データ及び/又は情報及び/又は運動値(511a,512a,513a,601a,602a,622a)の評価に基づいて実施する、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記走行可能性を表す前記評価信号(504a,603a)によって評価すべき前記経路区間の少なくとも一部は、前記周囲センサシステムによって直接的には検出不可能である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
周囲センサシステムが搭載された車両(101,201,301,401)のための、当該車両(101,201,301,401)が走行しようとする少なくとも1つの経路区間の走行可能性を表す評価信号(504a,603a)を形成し、当該車両(101,201,301,401)を制御するための装置であって、
前記周囲センサシステムによって検出される周囲データ(511a,601a)に基づいて評価信号(504a,603a)を形成し、
前記評価信号(504a,603a)に基づいて、警告信号を形成する、及び/又は、前記評価信号(504a,603a)に基づいた、運転者に対する走行タスクの引き受けの要請を形成する、及び/又は、
前記評価信号(504a,603a)に基づいて、前記車両(101,201,301,401)の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータを制御する、
装置において、
前記評価信号(504a,603a)を、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法によって形成する、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法の全てのステップを実施するために構成されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、経路区間の走行可能性を評価するための方法、装置、及び、コンピュータプログラムを含む。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102011081614号明細書(DE 10 2011 081 614 A1)には、車両が走行中の経路区間を分析するための方法が記載されている。同方法では、ある1つのステップにおいて、車両の外部の装置から送信され、車両のインタフェースを介して受信されたデータを表している画像データを使用して、車両が走行中の経路区間における、危険箇所の特定が実施される。
【0003】
国際公開第2014/074588号(WO 2014/074588)では、車両が位置する現下の道路の軌跡情報を受信する方法が提案される。さらには、同じルートを走行中の他の車両の軌跡が識別され、受信したデータと識別された軌跡とに基づいて、軌跡情報の信頼性が低下したかどうかが判定される。軌跡情報の信頼性が低下したとの判定が下されると、新しい軌跡が計画され、この新しい軌跡に沿って車両が制御される。
【0004】
独国特許出願公開第102014203965号明細書(DE 10 2014 203 965 A1)では、車両が現在走行中の道路に関する車線又は車道の特定を実施するための方法及びシステムが提供される。車両が現在走行中の道路の車道に関して、特定が実施される。車両が現在走行中の道路の隣に位置する隣接車線に関して、識別が実施される。隣接車道の走行可能性に関して、決定が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011081614号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/074588号
【特許文献3】独国特許出願公開第102014203965号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、周囲センサシステムが搭載された車両のための、当該車両が走行しようとする少なくとも1つの経路区間の走行可能性を表す評価信号を形成するための方法を記載する。前記評価信号は、前記周囲センサシステムによって検出される周囲データに基づいて決定される。本方法の核心部分は、前記評価信号をさらに、
・前記少なくとも1つの経路区間の幾何形態を表す高度マップからの少なくとも1つの周囲情報に基づいて、及び/又は、
・前記車両のピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値に基づいて、
決定することにある。
【0007】
本発明に係る方法は、周囲センサシステムによって記録された周囲データに加えて周囲又は車両に関する別の重要な情報も考慮している、少なくとも1つの経路区間の走行可能性に関する評価信号を作成することが可能となるという利点を提供する。こうすることにより、経路区間の走行可能性に関する高信頼性の判断が可能となる。周囲データとは、周囲センサシステムによって記録可能な全てのデータであると理解される。周囲センサシステムは、例えば1つ又は複数のカメラ、及び/又は、ステレオビデオカメラ、及び/又は、レーダセンサ、及び/又は、超音波センサ、及び/又は、ライダ、及び/又は、自動車産業で使用される他の一般的なセンサから構成することができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも1つの経路区間の幾何形態を表す高度マップの周囲情報が考慮され、この周囲情報には高度情報が含まれる。こうすることにより、経路区間の走行可能性を、評価信号によってさらにより高信頼性に表すことが可能となる。さらには、周囲データを周囲情報とリンクさせることができ、これによって周囲データの信頼性をチェックすることができる。例えば、使用しているセンサの検出範囲を、道路形状/路面凹凸を考慮して評価することができ、どの範囲で測定が可能であるか、及び、どの範囲では説得力のある測定値/周囲データを供給することが不可能であるかを確認することができる。本発明に係る方法のこれに代わる1つの実施形態では、周囲データが、車両のピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値とリンクされる。周囲データと少なくとも1つの運動値とを組み合わせることにより、周囲センサシステムの検出範囲をより正確に特定することができ、こうすることによっても、経路区間の走行可能性のより高信頼性の評価を実施することが可能となる。車両は、加速又は減速する場合にはピッチ運動を実施し、カーブを走行する場合にはロール運動を実施することができる。これらの運動により、周囲センサシステムの視界/検出範囲が変化する。この変化した検出範囲を評価して、どの範囲で測定が可能であるか、及び、どの範囲では周囲センサシステムが説得力のある周囲データを供給することが不可能であるのかを確認することができる。
【0009】
本発明によればさらに、少なくとも1つの経路区間の幾何形態に関する周囲情報と、ピッチ角及び/又はロール角を表す少なくとも1つの運動値とが、評価信号の形成時に考慮されるという、本方法の1つの実施形態が記載される。この場合には、運動値を使用することによって追加的に周囲情報の妥当性を検証することが可能となる。さらには、周囲情報と運動値との組み合わせにより、周囲センサシステムの正確な検出範囲を特定して、評価信号の形成時に考慮することができる。
【0010】
本方法の有利な1つの実施形態では、前記車両の少なくとも1つの周囲情報及び/又は前記少なくとも1つの運動値は、前記周囲データの導出元となる、前記周囲センサシステムの検出範囲に影響を与える。
【0011】
この実施形態は、追加的に考慮される周囲情報及び/又は運動値によって、周囲センサシステムの検出範囲に影響を与えることができ、これによって周囲データを相応に変更することが可能となる、又は、周囲データを改めて解釈する必要があるという利点を有する。周囲センサシステムによって検出され、評価信号を形成するために使用された特定の範囲が、経路区間の高信頼性の評価のためには不適当であることが周囲情報から判明すると、この追加的な情報に基づいて、周囲センサシステムから導出された周囲データを変更することが可能である。例えば前方に存在する道路区間上でカメラによって障害物が検出されなかった場合には、ここから導出される周囲データは、当該経路区間が自由に走行可能であるという判断を下す可能性がある。しかしながら、前方に存在する区間がカメラによって視認不可能な急峻な下り勾配を有しているということが分かる追加的な周囲情報があれば、この追加的な情報によって、周囲データに影響を与えることが可能となり、これによってこの周囲データが、当該経路区間が自由に走行可能であるという判断を下すのではなく、この特定の範囲では当該周囲データの説得力のある評価/説得力のある評価信号の形成が不可能であるということを示すようにする。
【0012】
車両がロール運動及び/又はピッチ運動を実施していることが、少なくとも1つの運動値から判明した場合には、この運動値も同様にして、周囲センサシステムの検出範囲と、ひいてはこの検出範囲から導出される周囲データとに影響を与えることができる。例えば、複数の異なる時点に複数の異なる画像領域が検出されるように、カメラの検出範囲を車両の固有運動によって変更することが可能である。運動値を考慮することにより、例えばいくつかの画像領域を、経路区間の評価のためには信頼できないと分類することができる。なぜなら、これらの領域は、車両が特定のピッチ運動及びロール運動をしている場合にのみ検出可能であって、継続的に監視することはできないからである。運動値を追加することによって、周囲データを現在の走行状況に適合させることが可能となる。
【0013】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号は、前記経路区間の走行可能性に関する確率情報を含む。
【0014】
複数のデータ及び/又は情報及び/又は運動値を評価するにあたり、これらが経路区間の走行可能性に関する不確実性を有している可能性があるので、評価信号を形成するために確率情報又は確率値を使用することも有利である。場合によってそれぞれ異なる確率を有し得る複数の利用可能なデータ及び/又は情報及び/又は運動値を組み合わせることによって、場合によっては、評価すべき経路区間の走行可能性に関する確率を表す1つの全体的な確率値を決定することもできる。どのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を用いて確率を決定するか、又は、どのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を用いずに確率を決定するかは、用途及び/又は状況及び/又は周囲状況に応じて変更することができる。考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値は、例えば周囲データ、又は、周囲情報、又は、運動値、又は、他の車両又は道路形状に関する情報、又は、走行可能性に関する経路区間の評価のために考慮の対象となる及び/又は本明細書で挙げられるその他全ての考えられる入力変数、とすることができる。
【0015】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号の決定は、前方を走行する車両の軌跡を用いて実施される。
【0016】
この実施形態は、前方を走行する車両の走行挙動を、評価信号に考慮することが可能となるという利点を有する。所有する周囲センサシステムによって検出できない可能性がある領域又はまだ検出できない可能性がある領域を、前方を走行する車両の挙動に基づいて評価することができる。前方を走行する車両の制動挙動及び/又は加速挙動も、評価に考慮することができる。さらに考えられることには、前方を走行する車両の走行軌跡をマップデータと比較して、計画された軌跡と実際に走行可能な軌跡との間で起こり得る衝突を確認することが可能である。前方を走行する車両を継続的に監視することにより、前方を走行する車両が走行したエリアを、オープンスペースとして、ひいては走行可能な経路区間として解釈することができる。
【0017】
本発明の別の1つの実施形態では、前記評価信号の決定を、前記周囲データの評価時に識別された車線標示を用いて実施する。
【0018】
この実施形態は、車線標示に基づいて、経路区間の走行可能性のより良好な評価が可能となるという利点を提供する。一方では、2つの車線標示の間の領域(道路又は車道)を、潜在的に走行可能であるとして仮定することができ、2つの車線標示の外側の領域を、潜在的に走行不可能であるとして仮定することができる。他方では、検出された車線標示までの領域は、通常であればさほど大きなオブジェクトによって覆われてはいないので、走行可能である。なぜなら、そうでなければ、車線標示が検出されることはあり得ないからである。なお、この車線標示の検出は、例えばカメラを用いて実施される。カーブ走行の場合にも、このようにして、経路区間の走行可能性に関する評価信号の形成時における利点が得られる。
【0019】
本発明の別の1つの有利な実施形態では、前記評価信号の決定は、デジタル道路マップを用いて実施され、前記デジタル道路マップは、評価すべき前記経路区間上にあるインフラストラクチャ設備に関する情報、及び/又は、評価すべき前記経路区間の道路形状に関する情報を含む。
【0020】
この実施形態は、評価すべき経路区間の正確な道路形状と、存在する可能性があるインフラストラクチャ設備とが既知であるという利点を有する。こうすることにより、周囲センサシステムの検出範囲が、どの位置では評価すべき経路区間全体を含んでいないのかということを、場合によって事前に確認しておくことができる。従って、当該経路区間の走行可能性の相応の評価、又は、周囲データの信頼性の評価も、事前に実施しておくことができる。さらには、周囲センサシステムによって直接的に検出できない領域、例えば斜面、視認不可能なカーブ、トンネル、アンダーパス等におけるオープンスペースを低減することができる。インフラストラクチャ設備とは、交通に対して、又は、道路利用者の視界、すなわち周囲センサシステムの視界に対して影響を及ぼし得る全ての建築物、工事現場、及び、標識であると理解することができる。例えばトンネル、橋、アンダーパス、騒音対策用建築物、車道間の生垣、工事現場の看板、及び、建設車両がある。例えば車両が視認不可能なカーブに接近すると、この情報を評価に考慮すること、及び/又は、場合によっては周囲データ/周囲センサシステムの検出範囲に影響を与えることが可能である。評価すべき経路区間上にあるトンネルに関する情報によって、例えばこの経路区間の走行可能性に関して、この経路区間の横方向の明確な境界線を画定することが可能となり、他方では、トンネルへの進入時、トンネルの通行時、又はトンネルからの退出時における視認性の変化を考慮することが可能となり、これによって、場合によっては周囲データ/検出範囲に影響を与えることが可能である。
【0021】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価信号に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値が、それぞれ異なる大きさで重み付けされる。
【0022】
この実施形態は、評価信号の決定時に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値の信頼性に応じて、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値の適切な重み付けを実施することが可能となるという利点を提供する。データ及び/又は情報及び/又は運動値とは、評価に考慮される全ての特性、情報、手段、及びデータであると理解することができる。例えば、周囲データ、周囲センサシステムの任意の信号、周囲情報、マップデータ、幾何形態データ、前方を走行する車両に関する情報、道路標示、視界、ピッチ角及びロール角、運動値、及び、車両の他の特性である。全てのデータ及び/又は情報及び/又は運動値が同じ信頼性を有するとは限らないので、経路区間の走行可能性に関する評価信号を、個別的な重み付けによって最適化することが可能である。
【0023】
本方法の別の1つの実施形態では、前記評価に考慮されるデータ及び/又は情報及び/又は運動値の前記重み付けは、前記データ及び/又は情報及び/又は運動値の評価に基づいて実施される。
【0024】
この実施形態は、取得したデータ及び/又は情報及び/又は運動値に基づいて、及び、取得したデータ及び/又は情報及び/又は運動値の共通の評価によって、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値の信頼性を推定することが可能となるという利点を提供する。例えば、周囲情報が読み出され、この周囲情報によって、急峻な下り勾配又は急峻な上り勾配が原因で周囲センサシステムによってもはや経路区間を検出できないということ、又は、周囲センサシステムが経路区間の走行可能性の誤った評価につながるおそれのあるデータを供給する可能性があることが示唆される場合には、特定の経路区間の評価信号を決定するために、周囲データの重み付けを小さくすることができる。この実施形態によれば、状況に適合した最も説得力のあるデータ及び/又は情報及び/又は運動値をより大きく重み付けして、これらのデータ及び/又は情報及び/又は運動値に基づいて、経路区間のための最適な評価信号を決定することができる。相応にして、信頼できないと分類されたデータ及び/又は情報及び/又は運動値を、より小さく重み付けすることもできる。
【0025】
本方法の有利な1つの実施形態では、前記走行可能性に関する評価信号によって評価すべき前記経路区間の少なくとも一部は、前記周囲センサシステムによって直接的には検出不可能である。
【0026】
この実施形態は、評価すべき経路区間が、必ずしも周囲センサシステムによって検出可能でなくてもよいという大きな利点を有している。こうすることによって、周囲センサシステムによって検出できない、又は、周囲センサシステムによって一部しか検出できない、特別な経路区間を評価することができる。評価すべき経路区間に関してできるだけ多くのデータ及び/又は情報及び/又は運動値を使用することによって、視認不可能な又は一部しか視認不可能な経路区間の評価が可能となり、ひいては、このような経路区間に関する評価信号を形成することが可能となる。
【0027】
本発明によればさらに、評価信号を形成し、前記評価信号に基づいて、警告信号を形成する、及び/又は、前記評価信号に基づいた、運転者に対する走行タスクの引き受けの要請を形成する、及び/又は、前記評価信号に基づいて、車両の走行推進力に介入する少なくとも1つのアクチュエータを制御する、装置が開示される。本装置は、前記評価信号が、本発明に係る方法によって形成されることを特徴とする。
【0028】
本装置は、本発明に係る方法を実施することによって評価信号を形成することができる。本装置は、評価信号に基づいて警告信号を形成し、これによって運転者又は他の道路使用者に対して警告することができ、及び/又は、評価信号に基づいて運転者に対する走行タスクの引き受けの要請を形成し、これによって車両のコントロールを引き受けるよう運転者に要請することができる。有利には本装置によって、運転者に対して危険な走行状況への注意を早期に促すことができ、これに応じて運転者は、経路区間の相応の評価信号が存在する場合、又は、予め規定された確率での走行可能性を保証できない場合に、例えば視認不可能なカーブ又は上り勾配の手前で車両の速度を低減することによって反応することができる。確率が何以下になるとこのような警告信号及び/又は運転者による引き受けの要請が出力されるかについては、車両個別に及び/又は運転者個別に設定することが可能である。
【0029】
これに代えて又はこれに加えて、本装置は、評価信号に基づいてアクチュエータを制御することもでき、これによって車両の走行推進力への介入が実施される。従って、本装置は、事故の危険性が増加した場合に車両の走行推進力に介入することができ、こうすることによって事故が防止され、又は、事故の可能性が低減される。アクチュエータの制御のために、運転者の介入が必ずしも必要というわけではない。実施形態に応じて例えば、速度の低減、場合によっては静止するまでの速度の低減、又は、ステアリング操作、又は、その他の運転操作を、対応するアクチュエータの制御によって実施することができる。
【0030】
本装置はさらに、周囲センサシステムによって直接的には検出できない経路区間に関する評価信号を形成することができる。経路区間の相応の評価信号に基づき、事故の危険性が増加したと仮定する必要がある場合に、当該経路区間上において安全性対策を実施することも可能である。以上をまとめると、本装置は、安全性の向上に寄与する。
【0031】
さらには、本発明に係る方法の全てのステップを実施するように構成されたコンピュータプログラムが、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】2つの車両と、急峻な下り勾配を有する道路とを示す図である。
図2】2つの車両と、急峻な上り勾配を有する道路とを示す図である。
図3】2つの車両と、道路上の障害物とを示す図である。
図4】3つの車両を示す図であり、ここでは1つの車両が道路の窪地内に位置している。
図5】本方法の例示的なシーケンスを示す図である。
図6】本方法の例示的なシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例
図6には、特許請求の範囲に記載された本方法の例示的なシーケンスが示されている。ステップ601では、周囲センサシステムによって周囲データ601aが記録される。本実施例では、カメラが車両の前方の領域を撮影する。
【0034】
ステップ602では、経路区間の幾何形態に関する周囲情報602aが、当該経路区間に関する高度情報が含まれたマップを用いて取得される。
【0035】
ステップ603では、周囲データ601aと周囲情報602aとが使用され、経路区間の走行可能性に関する評価信号603aが形成される。この場合、周囲情報602aは特に、評価すべき経路区間が周囲センサシステム、この例ではカメラによって検出可能/視認可能であるかを評価するために使用される。図1には、道路103の下り勾配が原因で、前方を走行する車両102が他の車両101の前方監視センサシステムの検出範囲105から逸脱したという例示的状況が図示されている。道路103が引き続き平坦104に延在することを前提にすると、車両102の検出範囲105からの逸脱は、他の車両101の運転支援システムによって、当該車両101の前方の経路は自由に走行可能であり、そこでは他の車両102は突然もはや存在しなくなったと解釈されてしまうおそれがある。新しい本方法は、周囲情報602aを用いて、前方に存在する経路区間の走行可能性に関する評価信号603aの決定時に、道路103の下り勾配を考慮することが可能である。こうすることにより、前方に存在する経路区間上にいる車両102が突然消失してしまったと誤って仮定することがなくなる。前方を走行する車両102は、道路の幾何形態が原因で、周囲センサシステム/前方監視センサシステムによる検出がもはや不可能であり、場合によっては危険状況が存在する可能性があるので、当該経路の走行可能性は、相応にして、周囲センサシステムによって完全に検出できる経路区間よりも悪く評価される。
【0036】
周囲センサシステム又は前方監視センサシステムは、例えばカメラ、ステレオビデオカメラ、レーダ、ライダ、及び/又は、超音波センサのような、全ての一般的なセンサ及び検出装置とすることができる。
【0037】
ステップ602において幾何形態情報を取得する代わりに、又はこれに加えて、ステップ622において、車両のピッチ角及び/又はロール角を表す運動値622aを検出することも可能である。
【0038】
この運動値622aは、ステップ603において周囲データ601aとリンクされ、経路区間の走行可能性を表す評価信号603aが決定される。このリンクによって例えば、周囲センサシステムの検出範囲に関してより正確な判断を下すことが可能となり、ひいては、周囲データ601aからより多くの情報を取得することが可能となる。例えば、図2の車両201が加速した場合には、車両のピッチ角が変化する可能性があり、これによって検出範囲205が一時的に変化し、全体として、前方に存在する経路区間のより広い領域が検出される可能性がある。車両201が減速する場合にも、ピッチ角の変化に基づいて検出範囲205が変化する。車両のカーブ走行時又はその他の変動時にも、ロール角の変化によって検出範囲205が変化する。運動値622aと周囲センサシステムとをリンクさせることにより、周囲センサシステムによって記録された周囲データ601aを、より良好に解釈することが可能となり、従って、より良好且つより効率的に利用することが可能となる。
【0039】
本発明の1つの実施形態では、車両101,201,301,401のピッチ運動又はロール運動/運動値622aとは関係なしに検出可能のまま維持される検出範囲105,205,305,405だけを評価することも可能である。このようにすると、これらの角度の大きさに応じて、検出範囲105,205,305,405が格段に縮小される。しかしながら、それと同時に、この検出範囲105,205,305,405が、周辺センサによってより長期間にわたって検出可能であることを保証することができる。
【0040】
これに代わる1つの実施形態では、ステップ603において、評価信号603aを決定するために、周囲情報602aと運動値622aの両方を使用することができる。この場合、運動値622aは、道路幾何形態/周囲情報の妥当性を検証するために使用することができる。例えば、実際に車両101,201,301,401が下り勾配又は上り勾配を有する斜面に位置しているかどうかを、ピッチ角を表す運動値622aに基づいて確認することができる。これに加えて、図1に図示されているような車両101が、道路103の前方に下り勾配が存在する場合、及び、危険状況が切迫している場合に、前方を走行する車両102をできるだけ引き続き検出可能にするために、ピッチ角を表す運動値622aの意図的な遅延及び測定によって、検出範囲105を若干拡大させることが考えられる。従って、検出範囲105の拡張/拡大のために、少なくとも1つのアクチュエータの制御を実施することもできる。
【0041】
評価信号603aは、形成された後、任意の別の装置604に転送及び/又は送信することができる。この装置604は、既に、走行推進力に影響を与えるアクチュエータ及び/又は警告システムとすること、及び/又は、任意の制御ユニット604とすることが可能である。この任意の制御ユニット604は、評価信号603aを処理し、この評価信号603aに基づいて、アクチュエータ及び/又は警告システム及び/又は別の制御ユニットを制御するものである。
【0042】
図5には、本方法の別の1つの例示的な実施形態が図示されている。ステップ501では、複数のデータ及び/又は情報511a,512a,513aが読み出される511,512,513。例えば、周囲データ511a、特にカメラ画像と、経路区間の幾何形態に関する周囲情報512aと、ピッチ角及び/又はロール角を表す運動値513aとを読み出すことができる。
【0043】
ステップ502では、これらのデータ及び/又は情報511a,512a,513aが統合され、読み出されたデータ及び/又は情報511a,512a,513aに基づいて、これらのデータ及び/又は情報511a,512a,513aが評価される。例えば、評価すべき経路区間に関する周囲情報602aに基づいて、図1又は図2のように、下り勾配又は上り勾配が周囲センサシステムの検出範囲105,205を制限していることを確認することができる。
【0044】
その後、ステップ503では、読み出された全てのデータ及び/又は情報511a,512a,513aに対して重み付けが実施される531,532,533。この重み付けは、現下に存在する走行状況におけるデータ及び/又は情報511a,512a,513aの信頼性を反映している。この場合、走行状況は、ステップ502におけるデータ及び/又は情報511a,512a,513aの評価によって分析及び/又は評価及び/又は決定される。
【0045】
ステップ504では、重み付けされたデータ及び/又は情報511a,512a,513aに基づいて、経路区間の走行可能性に関する評価信号504aの決定が実施される。この評価信号504aは、図6の方法によれば、別の制御ユニット604に転送することができるか、若しくは、警告信号の形成のため又はアクチュエータの制御のために利用することができる。
【0046】
本方法の1つの実施形態では、ステップ502での評価によって、特定の経路区間の走行可能性に関する評価信号の決定時に、いくつかのデータ及び/又は情報511a,512a,513aが全く考慮されないようにすることもできる。例えば、図1の走行状況において、急峻な下り勾配が原因で前方監視ビデオカメラがもはや経路区間を検出できないということが周囲情報602aによって確認されると、これに対応するカメラデータは、当該経路区間の評価には全く考慮されなくなる。この場合、上記のカメラデータは、確実に検出可能な経路区間(車両101と視界の終端106との間の区間)の評価のためだけに用いられる。このアプローチは、上述した他の任意の全てのセンサデータ及びセンサタイプに転用することも可能であり、カメラデータには限定されていない。
【0047】
別の1つの実施形態では、周囲センサシステムが搭載された車両101,201,301,401に、本発明に係る装置が設けられている。以下では、本発明に係る方法及び本発明に係る装置が使用される、複数の異なる危険な走行状況について説明する。
【0048】
図1では、車両101の前方に他の車両102が位置している。この車両102は、急峻な下り勾配を有する道路103上を走行している。車両102は、初めはまだ車両101の周囲センサシステムによって検出可能であったが、その後、図1では、既に周囲センサシステムの検出範囲105の外に位置している。本発明に係る方法によれば、前方に存在する経路区間に関する評価信号504a,603aが形成される。この評価信号504a,603aに基づいて、車両101では、運転者に対して、切迫した危険状況又は経路の走行可能性の不確実性への注意を促す警告信号が形成される。
【0049】
車両が既に高度に自動化されていて、危険状況の発生時点に車両のコントロールを有している場合にも、車両乗員に対して例えば車両のコントロール/制御の引き受けを要請する警告信号を、車両乗員に対して形成することができる。
【0050】
これに代えて、車両101が、対応するアクチュエータの制御によって自動的に速度を新たな状況に適合させることも可能である。1つの実施例では、介入しなければ、本装置で規定された高い確率で事故が発生し得るということが、評価信号504a,603aから不可避的に判明すると、本装置がアクチュエータを自動的に制御することができ、アクチュエータは、車両を制動し、場合によっては停止するまで制動する。
【0051】
図2では、車両201の前方に他の車両202が位置しており、この車両202は、道路203の上り勾配が原因で周囲センサシステムの検出範囲205から逸脱している。周囲センサシステム、特にレーダセンサ又はライダセンサは、上り勾配の道路103を誤って障害物であるとして解釈する可能性がある。周囲情報602aを考慮することによって、周囲データ601aをこの状況において相応に重み付けすることができ、これによって、経路区間に関して適切な評価信号504a,603aを形成することができる。
【0052】
図3では、車両301と車両302との間に障害物303が配置されており、この障害物303は、車両101の周囲センサシステムの検出範囲305内には位置していない。この実施形態では、周囲データ601aに加えて、前方を走行する車両302の軌跡も記録される。複数の異なる入力変数の評価、又は、複数の異なるデータ及び/又は情報511a,512a,513aの評価によって、前方を走行する車両302の軌跡が非常に大きく重み付けされた。なぜなら、走行状況に基づいて、車道の一部が検出できなかったからである。この場合には、車両301内の装置がアクチュエータを制御し、このアクチュエータが、障害物を迂回するように、車両101を車両302の軌跡に沿って制御する。前方を走行する車両302の前方にある視認不可能な領域も、前方を走行する車両302の走行挙動及び/又は軌跡に基づいて評価することが可能である。
【0053】
図4では、車両402は、窪地を通って走行しており、これによって車両402は、車両401の周囲センサシステムの検出範囲403を逸脱している。その代わりに車両401は、前方を走行する別の車両403を検出する。この状況では、車両401と403との間の領域は、誤って走行可能であると評価される可能性がある。周囲情報602aを使用することにより、前方に存在する経路区間の走行可能性に関する評価信号504a,603aの決定時に、周囲センサシステムのデータを相応に重み付けすることができる。場合によっては、出力される評価信号504a,603aを用いて、運転者に警告を出力すること、又は、アクチュエータの制御を実施することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6