(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<表面保護フィルムの全体構造>
ここに開示される表面保護フィルムは、一般に、粘着シート、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称される形態のものであり、特に光学部材(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部材や、ハードコートフィルムなどのタッチパネルディスプレイに用いられる光学部材など)の加工時や搬送時に光学部材の表面を保護する表面保護フィルムとして好適である。前記表面保護フィルムにおける粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、ここに開示される表面保護フィルムは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0020】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、活性水素含有官能基を有するポリマー(A)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)、錫を活性中心とする化合物(C)0.001〜0.4質量部、及び、鉄を活性中心とする化合物(D)0.001〜0.4質量部を含有することを特徴とする。架橋触媒として、特定割合の錫を活性中心とする化合物(C)(以下、「錫触媒(C)」と称する場合がある。)と鉄を活性中心とする化合物(D)(以下、「鉄触媒(D)」と称する場合がある。)を併用することで、粘着剤組成物のポットライフが十分長く、粘着剤組成物の硬化処理直後、及び、エージング処理後の架橋性(架橋度)が高く、鉄触媒(D)に起因する粘着剤層の色相変化(鉄触媒(D)中の金属錯体に基づく着色)が抑えられ、粘着剤層の色相変化が抑えられ、粘着剤層の貼付保存後の粘着力上昇を防止できる粘着剤組成物を得ることができ、好ましい。
【0021】
(活性水素含有官能基を有するポリマー(A))
本発明の粘着剤組成物は、活性水素含有官能基を有するポリマー(A)を含有することを特徴とし、前記ポリマー(A)の活性水素含有官能基が、水酸基及び/又はカルボキシル基であることが好ましい。前記ポリマー(A)の活性水素含有官能基が、後述するイソシアネート系架橋剤(B)と反応可能であり、前記活性水素含有官能基を、主鎖または側鎖上に有するポリマーであることにより、イソシアネート系架橋剤と効率的に反応が進行することとなり、好ましい。
【0022】
また、本発明の粘着剤組成物は、前記ポリマー(A)が、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、シリコーン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。中でも、粘着剤設計の自由度の観点から、前記ポリマー(A)が、活性水素含有官能基を有するアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
【0023】
前記活性水素含有官能基を有するアクリル系ポリマーは、後述するイソシアネート系架橋剤(B)と反応可能な水酸基やカルボキシル基などの活性水素を含有する官能基を、主鎖または側鎖上に有するアクリル系ポリマーである。このような活性水素含有官能基を有するアクリル系ポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、活性水素を含有する官能基モノマー(以下、「活性水素含有官能基モノマー」と称する場合がある。)とを単量体成分とし、その共重合により得ることができる。
【0024】
本発明において活性水素含有官能基を有するアクリル系ポリマーを構成する主モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数4〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。その具体例としては、たとえば、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0025】
これら炭素数4〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良いが、全体としての含有割合は単量体成分中70〜99.9質量%であることが好ましく、80〜99.5質量%であることがより好ましく、85〜99質量%であることがさらに好ましい。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合が70質量%未満であると、後述する官能基含有モノマーやその他のモノマーの含有量が増大し、アクリル系ポリマーのガラス転移温度が上昇して流動性が低下し、十分な粘着面積を得られず被着体の固定ができなくなる場合がある。また架橋の程度(ゲル分)の調整が困難となる場合がある。一方、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が99.9質量%を超えると、官能基含有モノマーの含有割合の低下により架橋形成が不十分となり、粘着剤組成物の凝集力が得られない場合がある。
【0026】
前記活性水素含有官能基モノマーは、イソシアネート化合物等の架橋剤と反応可能である水酸基やカルボキシル基などの活性水素を含有する官能基を有している活性水素含有官能基モノマーを用いる。その具体例としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の、水酸基含有モノマーがあげられる。
【0027】
またその他の活性水素含有官能基モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;
N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;などがあげられる。
【0028】
これら活性水素含有官能基モノマーは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよいが、全体としての含有割合は単量体成分中0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜15質量%であることがさらに好ましい。前記活性水素含有官能基モノマーの含有割合が0.1質量%未満であると、架橋形成が不十分となり、粘着剤組成物の凝集力が得られず、被着体(例えば、光学部材)の固定時に表面保護フィルムがズレたり、表面保護フィルムを剥がす際に糊残りを生じる場合がある。一方、前記活性水素含有官能基モノマーの含有割合が30質量%を超えると、アクリル系ポリマーの凝集力が大きくなるため流動性が低下し、十分な粘着面積を得られず被着体の固定ができなくなってしまう場合がある。
【0029】
本発明において、上述した炭素数4〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび活性水素含有官能基モノマー以外のその他のモノマーを、単量体成分として用いても良い。このようなその他のモノマーとしては、炭素数4〜12以外のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをあげることができる。本発明に用いられる炭素数4〜12以外のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0030】
また本発明において用いることが出来るその他のモノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン等の環状(メタ)アクリルアミド;
(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)等の非環状(メタ)アクリルアミド;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等のN−ビニル環状アミド;
アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の、アミノ基を有するモノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等の、マレイミド骨格を有するモノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド等の、イタコンイミド系モノマー;等の窒素原子含有モノマー等があげられる。
【0031】
その他のモノマーとして採用し得るモノマーの他の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有するモノマー;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、アルコキシ基を有するモノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の、シアノ基を有するモノマー;
スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のα−オレフィン;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、イソシアネート基を有するモノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の、複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;
フッ素(メタ)アクリレート等の、ハロゲン原子を有するモノマー;
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の、アルコキシシリル基を有するモノマー;
シリコーン(メタ)アクリレート等の、シロキサン結合を有するモノマー;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール等の、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;等があげられる。
【0032】
また、その他のモノマーとして、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーを用いてもよい。
【0033】
これらその他のモノマーは単独で使用してもよいし、組み合わせて用いてもよいが、全体としての含有割合は単量体成分中29.9質量%以下であることが好ましく、19.5質量%以下であることがより好ましく、14質量%以下であることがさらに好ましい。その他のモノマーの含有割合が29.9質量%を超えると、炭素数4〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が低下し、アクリル系ポリマーのガラス転移温度が上昇して流動性が低下し、十分な粘着面積を得られず被着体の固定ができなくなる場合がある。
【0034】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が10万〜300万であることが好ましく、20万〜200万であることがより好ましく、30万〜150万であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が10万未満であると、粘着剤層の凝集力が低下する傾向があり、被着体(例えば、光学部材)の固定時に表面保護フィルムがズレたり、表面保護フィルムを剥がす際に糊残りを生じる場合がある。一方、重量平均分子量(Mw)が300万を超えると、高分子の絡み合いによる効果で凝集力が大きくなって流動性が低下する傾向にあり、十分な粘着面積を得られず被着体の固定ができなくなる場合がある。本発明においてアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られた、標準ポリスチレン換算の値をいう。
【0035】
また、本発明に用いられるアクリル系ポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)が0℃以下(通常−100℃以上)であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が0℃より高い場合、凝集力が大きくなって流動性が低下し、十分な粘着面積を得られず被着体の固定ができなくなってしまう場合がある。なお、アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。本発明におけるアクリル系ポリマーのガラス転移温度は、動的粘弾性装置を用いた測定方法や、FOXの式による計算値などを用いることができる。
【0036】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーの重合方法は特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できる。また、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体などいずれでもよい。
【0037】
前記活性水素含有官能基を有するウレタン系ポリマーは、後述するイソシアネート系架橋剤(B)と反応可能な水酸基やカルボキシル基などの活性水素を含有する官能基を、主鎖または側鎖上に有するウレタン系ポリマーである。前記ウレタン系ポリマーとしては、好ましくは、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂(ウレタン系ポリマー)からなるものが挙げられる。
【0038】
前記活性水素含有官能基を有するシリコーン系ポリマーは、後述するイソシアネート系架橋剤(B)と反応可能な水酸基やカルボキシル基などの活性水素を含有する官能基を、主鎖または側鎖上に有するシリコーン系ポリマーである。前記シリコーン系ポリマーとしては、好ましくは、シリコーン樹脂(シリコーン系ポリマー、シリコーン成分)をブレンドまたは凝集させることにより得られるものが挙げられる。
【0039】
(イソシアネート系架橋剤(B))
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(B)を含有することを特徴とする。前記架橋剤(B)としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0040】
また、前記イソシアネート化合物(2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物)を併用して用いる場合には、両化合物の配合比(質量比)としては、[2官能のイソシアネート化合物]/[3官能以上のイソシアネート化合物](質量比)が、0.1/99.9〜50/50で配合することが好ましく、0.1/99.9〜20/80がより好ましく、0.1/99.9〜10/90がさらに好ましく、0.1/99.9〜5/95がより好ましく、0.1/99.9〜1/99が最も好ましい。前記範囲内に調整して配合することにより、粘着性と耐反発性に優れた粘着剤層となり、好ましい態様となる。
【0041】
本発明において、前記架橋剤(B)の含有量は、前記ポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部であり、更に好ましくは2〜8質量部である。前記架橋剤(B)の含有量が0.1質量部未満であると、架橋形成が不十分となり、粘着剤層の凝集力が得られず、被着体の固定時に表面保護フィルムがズレたり、表面保護フィルムを剥がす際に糊残りを生じる場合がある。一方、前記架橋剤(B)の含有量が20質量部を超えると、架橋が進み過ぎて凝集力が大きくなるため流動性が低下し、十分な粘着面積を得られず、被着体の固定ができなくなってしまう場合がある。
【0042】
本発明の粘着剤組成物は、前記イソシアネート系架橋剤(B)のほか、必要に応じその他の架橋剤を含んでいても良い。その他の架橋剤としては、例えばエポキシ系架橋剤、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物等が用いられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記エポキシ系架橋剤としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0044】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン等があげられる。前記アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU(相互薬工社製)、商品名TAZM(相互薬工社製)、商品名TAZO(相互薬工社製)等があげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、チタン、ニッケル、ジルコニウムなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、アセチルアセトンなどがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0046】
これら前記架橋剤(B)以外の架橋剤を併用する場合、その使用量は本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、前記架橋剤(B)との総量が、前記ポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部であり、更に好ましくは2〜8質量部である。
【0047】
(錫を活性中心とする化合物(C))
本発明の粘着剤組成物は、活性水素含有官能基を有するポリマー(A)100質量部に対して、錫を活性中心とする化合物(C)0.001〜0.4質量部を含有することを特徴とする。前記錫を活性中心とする化合物(C)(錫触媒(C))を配合することにより、後述する鉄触媒(D)のみを使用した場合と比較して、粘着剤層の色相変化を抑えることができ、また、貼付保存後の粘着力上昇を抑制することとなり、再剥離性に優れ、好ましい態様となる。前記錫触媒(C)としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫メトキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2−エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。これら錫触媒(C)は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0048】
前記粘着剤組成物は、前記ポリマー(A)100質量部に対して、前記錫触媒(C)0.001〜0.4質量部を含有し、好ましくは0.002〜0.3質量部であり、より好ましくは0.003〜0.2質量部であり、更に好ましく0.004〜0.1質量部である。前記錫触媒(C)の含有量が0.001質量部未満では、エージング処理後の架橋性(架橋度)が不十分となる場合がある。一方、0.4質量部を超えると、粘着剤組成物(配合液)の保存時の粘度上昇を抑えることが困難となり、粘着剤組成物のポットライフが十分に得られず、粘着剤組成物(配合液)の経時安定性が悪くなる場合がある。
【0049】
(鉄を活性中心とする化合物(D))
本発明の粘着剤組成物は、活性水素含有官能基を有するポリマー(A)100質量部に対して、鉄を活性中心とする化合物(D)0.001〜0.4質量部を含有することを特徴とする。前記鉄を活性中心とする化合物(D)(鉄触媒(D))を配合することにより、錫触媒(C)のみを使用した場合と異なり、硬化処理直後の架橋性(架橋度)の高く、ポットライフの十分長い粘着剤組成物が得られることとなり、好ましい態様となる。前記鉄触媒(D)としては、鉄キレート化合物を好適に用いることができ、例えば、一般式Fe(X)(Y)(Z)として表わすことができる。鉄キレート化合物は(X)(Y)(Z)の組み合わせにより、Fe(X)
3、Fe(X)
2(Y)、Fe(X)(Y)
2、Fe(X)(Y)(Z)のいずれかで表される。鉄キレート化合物Fe(X)(Y)(Z)において(X)(Y)(Z)はそれぞれFeに対する配位子であって、例えば、X、YまたはZがβ−ジケトンの場合、β−ジケトンとして、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、5−メチル−ヘキサン−2,4−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、ノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、1−フェニル−ブタン−1,3−ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸等があげられる。
【0050】
X、YまたはZがβ−ケトエステルの場合、β−ケトエステルとして、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸−n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸−n−ブチル、プロピオニル酢酸−sec−ブチル、プロピオニル酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等があげられる。
【0051】
本発明においては鉄キレート化合物以外の鉄触媒を用いることもでき、たとえば鉄とアルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基との化合物を用いることもできる。鉄とアルコキシ基との化合物の場合、アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシル基、フェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、1−ベンジルナフチルオキシ基等があげられる。
【0052】
鉄とハロゲン原子との化合物の場合、ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等があげられる。
【0053】
鉄とアシルオキシ基との化合物の場合、アシルオキシ基として、2−エチルヘキシル酸、オクチル酸、ナフテン酸、樹脂酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、アスパラギン酸、α−ケトグルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリシンやヒスチジン等のアミノ酸等を主成分とする脂肪族系有機酸や安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸等を主成分とする芳香族脂肪酸)等があげられる。
【0054】
本発明においては、これら鉄触媒(D)のうち、反応性、硬化性の点でβ−ジケトンを配位子として持つ鉄キレート化合物が好ましく、特にトリス(アセチルアセトナート)鉄を用いることが好ましい。これら鉄触媒(D)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明において、本発明の粘着剤組成物は、前記ポリマー(A)100質量部に対して、前記鉄触媒(D)0.001〜0.4質量部を含有し、好ましくは0.002〜0.3質量部であり、より好ましくは0.003〜0.2質量部であり、更に好ましく0.004〜0.1質量部である。前記鉄触媒(D)の含有量が0.001質量部未満では、硬化処理直後の架橋性(架橋度・硬化性)が不十分で外圧による粘着剤層の外観不良(粘着剤層の凹み)が生じやすくなる場合がある。一方、0.4質量部を超えると、粘着剤層の色相変化が生じ、光学部材に貼り合わせた状態で、検査を行うことが困難となり、好ましくない。
【0056】
(ケト−エノール互変異性を起こす化合物(E))
本発明の粘着剤組成物は、ケト−エノール互変異性を起こす化合物(E)(以下、「互変異性化合物(E)」と称する場合がある。)を含むことができる。互変異性化合物(E)とは、ケト(ケトン、アルデヒド)とエノールの間の互変異性を起こす化合物のことであり、前記鉄触媒(D)に対して、キレート化剤として作用する化合物である。前記互変異性化合物(E)を使用することにより、架橋剤配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。特に、架橋剤として前記イソシアネート系架橋剤(B)を使用する場合、前記互変異性化合物(E)を含有させることが特に有意義である。この技術は、例えば、前記粘着剤組成物が、有機溶剤溶液又は無溶剤の形態である場合に好ましく適用され得る。
【0057】
前記互変異性化合物(E)としては、各種のβ−ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert−ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert−ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。かかるケト−エノール互変異性を生じる化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
前記互変異性化合物(E)の含有量は、前記ポリマー(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部含有することが好ましく、より好ましくは1〜5質量部含有されることがより好ましい。前記互変異性化合物(E)の含有量が0.5質量部未満では十分なポットライフが得られないという不具合が生じることがあり、10質量部を超えると粘度上昇を抑えることは可能となるが、粘着剤層の凝集力が不足する場合がある。これは硬化処理後に粘着剤層に残存する前記互変異性化合物が可塑剤として働き、凝集力を低下させているためと推測される。
【0059】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0060】
<粘着剤層及び表面保護フィルム>
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物を架橋してなることが好ましい。前記ポリマー(A)の構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より粘着力安定性、再剥離性、低汚染性、及び、耐熱性に優れた粘着剤層及び表面保護フィルムを得ることができる。
【0061】
本発明の表面保護フィルムは、支持体の少なくとも片面に、前記粘着剤層を形成してなることが好ましい。前記表面保護フィルムは、前記粘着剤層を支持体の少なくとも片面に形成してなるものであるが、その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、セパレータに粘着剤組成物を、塗布・乾燥した後、セパレータ上の架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体に転写することも可能である。
【0062】
また、支持体上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物(溶液)を支持体に塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を支持体上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持体上に塗布して表面保護フィルムを作製する際には、支持体上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0063】
また、本発明の粘着剤層の形成方法としては、表面保護フィルム(粘着シート)の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法などがあげられる。
【0064】
本発明の粘着剤層の厚みは、通常、1〜100μm、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と粘着性のバランスを得やすいため、好ましい。
【0065】
<支持体>
前記支持体としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフルオロエチレンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルムなどがあげられる。
【0066】
本発明における支持体の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜75μm程度である。
【0067】
前記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
【0068】
本発明の表面保護フィルムは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の表面保護フィルムは、シート状、テープ状、フィルム状などの任意の形態を有することができる。またその使用目的に応じ適宜な形態に切断、打ち抜き加工等を施されていても良い。
【0069】
<セパレータ>
本発明の表面保護フィルムは、必要に応じて、粘着剤層表面を保護する目的でセパレータを貼り合わせることが可能である。
【0070】
前記セパレータを構成する材料としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0071】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは8〜100μm、より好ましくは10〜50μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。
【0072】
ここに開示される表面保護フィルムは、支持体、及び、粘着剤層に加えて、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。前記他の層としては、帯電防止層や粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)などが挙げられる。
【0073】
本発明の光学部材は、前記表面保護フィルムにより保護されることが好ましい。前記表面保護フィルムは、粘着剤層の貼付保存後の粘着力上昇を防止でき、再剥離性に優れるため、加工、搬送、出荷時等の表面保護用途(表面保護フィルム)に使用できるため、前記光学部材(偏光板など)の表面を保護するために、有用なものとなる。また、表面保護フィルムを構成する粘着剤層の色相変化が抑えられているため、光学部材に表面保護フィルムを貼り合わせた状態で、検査を行うことが可能であり、品質向上に寄与できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0075】
<アクリル系ポリマー1の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)96.2質量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.8質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー1溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー1の重量平均分子量(Mw)は、54万であり、ガラス転移温度(Tg)は、−68℃であった。
【0076】
<アクリル系ポリマー2の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98.5質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー2溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー2の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、ガラス転移温度(Tg)は、−70℃であった。
【0077】
<アクリル系ポリマー3の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98.48質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5質量部、アクリル酸(AA)0.02質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー3溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー3の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、ガラス転移温度(Tg)は、−70℃であった。
【0078】
<アクリル系ポリマー4の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98.494質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5質量部、アクリル酸(AA)0.006質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー4溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー4の重量平均分子量(Mw)は、47万であり、ガラス転移温度(Tg)は、−70℃であった。
【0079】
<アクリル系ポリマー5の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90.893質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)9.089質量部、アクリル酸(AA)0.018質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー5溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー5の重量平均分子量(Mw)は、64万であり、ガラス転移温度(Tg)は、−67℃であった。
【0080】
<実施例1>
〔アクリル系粘着剤溶液の調製〕
上記アクリル系ポリマー1溶液(40質量%)を酢酸エチルで25質量%に希釈し、この溶液400質量部(固形分100質量部)に、架橋剤として、3官能イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製、コロネートL)5.33質量部(固形分4質量部)、架橋触媒として錫触媒であるジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)、鉄触媒であるトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)、アセチルアセトン3質量部を加えて、混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0081】
〔表面保護フィルムの作製〕
上記アクリル系粘着剤溶液を、帯電防止処理層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、ダイヤホイルT100G38、厚さ38μm)の帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で20秒間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、表面保護フィルムを作製した。
【0082】
<実施例2>
実施例1で使用したアクリル系ポリマー1の代わりに、アクリル系ポリマー2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0083】
<実施例3>
実施例1で使用したアクリル系ポリマー1の代わりに、アクリル系ポリマー3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0084】
<実施例4>
実施例1で使用したアクリル系ポリマー1の代わりにアクリル系ポリマー4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0085】
<実施例5>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに3質量部(固形分0.03質量部)、トリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)の代わりに、0.5質量部(固形分0.005質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0086】
<実施例6>
実施例1で使用したトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)の代わりに、3質量部(固形分0.03質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0087】
<実施例7>
実施例1で使用したトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)の代わりに、5質量部(固形分0.05質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0088】
<実施例8>
実施例1で使用したトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)の代わりに、8質量部(固形分0.08質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0089】
<実施例9>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、3質量部(固形分0.03質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0090】
<実施例10>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、5質量部(固形分0.05質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0091】
<実施例11>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、8質量部(固形分0.08質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0092】
<実施例12>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、3質量部(固形分0.03質量部)を用い、アセチルアセトン3質量部に代えて9質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0093】
<実施例13>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、8質量部(固形分0.08質量部)を用い、アセチルアセトン3質量部に代えて9質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0094】
<実施例14>
実施例1で使用したアクリル系ポリマー1の代わりにアクリル系ポリマー5を用い、架橋剤として、3官能イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製、コロネートL)5.33質量部(固形分4質量部)の代わりに、2.72質量部(固形分2質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0095】
<実施例15>
実施例14で使用した3官能イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(東ソー社製、コロネートL)2.72質量部(固形分2質量部)の代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(三井化学社製、コロネートHX)2質量部(固形分2質量部)を用いた以外は、実施例14と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0096】
<比較例1>
実施例1で使用したトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)を用いない以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0097】
<比較例2>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)の代わりに、50質量部(固形分0.5質量部)を用い、トリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)を用いない以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0098】
<比較例3>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)を用いない以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0099】
<比較例4>
実施例1で使用したジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1質量%酢酸エチル溶液)2質量部(固形分0.02質量部)を用いず、トリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、ナーセム第2鉄、1質量%酢酸エチル溶液)1質量部(固形分0.01質量部)に代わりに、50質量部(固形分0.5質量部)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、表面保護フィルムを作製した。
【0100】
<アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定>
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム;東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム;東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6ml /min
注入量:10μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF注入試料濃度:0.2質量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算により算出した。
【0101】
<ガラス転移温度(Tg)の理論値>
実施例および比較例で得られたアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0102】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの質量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
文献値:
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ヒドロキエチルアクリレート(HEA):−15℃
4−ヒドロキブチルアクリレート(4HBA):−32℃
アクリル酸(AA):106℃
【0103】
なお、文献値として、「アクリル樹脂の合成・設計と新用途展開」(中央経営開発センター出版部発行)及び「Polymer Handbook」(John Wiley & Sons)を参照した。
【0104】
<ポットライフの測定>
粘着剤溶液を調整し、容量1mLのガラス製サンプル瓶に密封し、室温で8時間放置した。その後、目視にて粘着剤溶液の流動性を観察し、「ポットライフ」を判断した。判断の基準は下記のとおりである。
○:サンプル瓶を倒立させた時、粘着剤溶液が流動する。
×:サンプル瓶を倒立させた時、粘着剤溶液が流動しない。
【0105】
<触媒によるイソシアネート基の反応率>
FT−IR測定器(パーキンエルマー社製、型式「Frontier FT―IR」)を用いて、ATR(Attenuated Total Reflection)法にて、粘着剤層表面のIRピークを測定した。「イソシアネート基のIRピーク強度」としては、2275cm
−1のピーク強度を用いた。
なお、前記イソシアネート基とは、イソシアネート系架橋剤(イソシアネート化合物)に由来するものである。ここでの評価では、イソシアネート基のIRピーク強度の変化により、イソシアネート基が架橋反応により使用される(消失する)割合(反応率)を評価するものである。
表面保護フィルムを作製した直後(粘着剤組成物を硬化処理した直後)に、粘着剤層表面の「IRピーク強度(作製直後)」を測定し、更に、室温(23℃)で7日間エージングした後に「IRピーク強度(室温7日後)」を測定した。
「触媒によるイソシアネート基の反応率(作製直後)」は、下記の式から算出した。
「触媒によるイソシアネート基の反応率(作製直後)」=100×{(触媒を用いない以外は同一の粘着剤層のIRピーク強度)−(粘着剤層のIRピーク強度(作製直後))}/(触媒を用いない以外は同一の粘着剤層のIRピーク強度)
「触媒によるイソシアネート基の反応率(室温7日後)」は、下記の式から算出した。
「触媒によるイソシアネート基の反応率(室温7日後)」=100×{(触媒を用いない以外は同一の粘着剤層のIRピーク強度)−(粘着剤層のIRピーク強度(室温7日後))}/(触媒を用いない以外は同一の粘着剤層のIRピーク強度)
【0106】
なお、前記触媒によるイソシアネート基の反応率(作製直後)としては、好ましくは、10以上であり、より好ましくは、20以上、特に好ましくは25以上である。前記触媒による反応率(作製直後)が前記範囲内であれば、外圧に起因する粘着剤の外観不良(粘着剤表面の凹み)の発生が低減できるため、好ましい。
【0107】
また、前記触媒によるイソシアネート基の反応率(室温7日後)としては、好ましくは、80以上であり、より好ましくは、85以上、特に好ましくは90以上である。前記触媒による反応率(室温7日後)が前記範囲内であれば、未反応で残存するイソシアネート系架橋剤と被着体との反応による粘着力上昇が抑制できるため、好ましい。
【0108】
<色相b値>
各例に係る表面保護フィルムを室温で7日間エージングした後、幅50mm、長さ50mmのサイズにカットし、表面保護フィルムの粘着剤層表面からセパレータを剥離した後、高速積分球式透過率測定器(村上色彩技術研究所社製、型式「DOT−3C」)にて、「b値」を測定した。b値はハンターLab値を指す。
なお、前記b値としては、好ましくは、2.00以下であり、より好ましくは、1.50以下であり、更に好ましくは、1.00以下である。前記b値が前記範囲内であれば、粘着剤層の色相の変化が、光学部材用に使用する際に実用上問題のないレベル(粘着剤層が黄色や赤色に着色することのない)であり、好ましい。
【0109】
<粘着力の測定>
各例に係る表面保護フィルムを室温で7日間エージングした後、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、表面保護フィルムの粘着剤層表面からセパレータを剥離した後、ガラス板に貼り合わせた偏光板(日東電工社製、トリアセチルセルロース系偏光板、幅:70mm、長さ:100mm)の表面にハンドローラーにて仮圧着した後、小型ラミネータ(0.25MPaの圧力、0.3m/minの速度)にて圧着し評価用サンプルを作製した。
上記サンプルを室温(23℃)の環境下に30分間放置した後、万能式引張試験機にて、剥離角度180°、引張速度30m/minとなるように剥離し、「初期の粘着力」(N/25mm)として、測定した。
また、上記サンプルを70℃の環境下に1日放置した後(エージング処理後)、万能式引張試験機にて、剥離角度180°、引張速度30m/minとなるように剥離し、「貼付保存後の粘着力」(N/25mm)を測定した。測定は、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0110】
前記初期の粘着力としては、好ましくは、0.1〜7.0N/25mmであり、より好ましくは、0.1〜5.0N/25mmであり、更に好ましくは、0.1〜4.0N/25mmである。前記粘着力が前記範囲内であれば、仮固定性、再剥離性に優れ、好ましい。
【0111】
前記貼付保存後の粘着力としては、好ましくは、0.3〜10.0N/25mmであり、より好ましくは、0.3〜8.0N/25mmであり、更に好ましくは、0.3〜4.0N/25mmである。前記粘着力が前記範囲内であれば、貼付保存後であっても、粘着力の上昇が抑えられ、再剥離性に優れ、好ましい。
【0112】
なお、表1中の略語は以下のとおりである。
<架橋剤(B)>
C/L:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(東ソー社製、商品名「コロネートL」)
C/HX:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)
<錫触媒(C)及び鉄触媒(D)>
OL−1:ジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、商品名「エンビライザーOL−1」)
ナーセム第2鉄:トリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製、商品名「ナーセム第2鉄」)
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表2より、実施例の全てにおいて、粘着剤組成物のポットライフが十分長く、粘着剤組成物の硬化処理直後(作製直後・乾燥処理後)、及び、エージング処理後であっても、触媒によるイソシアネート基の反応率が高いことが確認でき、高い架橋性(架橋度)の粘着剤層が得られ、粘着剤層を貼付保存した場合であっても、粘着力の上昇も抑えられ、再剥離性に優れ、粘着剤層の色相変化も防止でき、光学部材に貼付した状態でも検査可能であることが確認できた。
【0116】
一方、表2より、比較例1においては、鉄触媒(D)を配合しなかったため、硬化処理直後(乾燥処理後)の架橋性(架橋度)が不十分となり、触媒によるイソシアネート基の反応率が小さく、架橋剤(B)との反応が十分に進行していないことが確認された。また、比較例2では、錫触媒(C)を所定量より多く配合し、鉄触媒(D)を配合しなかったため、粘着剤溶液中での架橋反応が進行し、ポットライフが短いことが確認された。また、比較例3では、錫触媒(C)を配合しなかったため、室温エージング後にイソシアネート架橋剤と被着体との反応が進行し、貼付保存後の粘着力が高く、粘着力上昇防止性や再剥離性に劣ることが確認された。比較例4では、錫触媒(C)を配合せず、鉄触媒(D)を所定量より多く配合したため、赤色の着色原因となる鉄触媒に起因する色相変化に係るb値が非常に高く、光学部材用の表面保護フィルムとして実用レベルにはないことが確認された。