(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記顕色剤が2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(フェニルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−乳酸及び2−O−(フェニルアミノカルボニル)−乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の感熱記録材料。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱記録材料は常温で無色ないし淡色の塩基性染料と有機顕色剤と、を感熱ヘッド、熱ペン等の熱エネルギー(ジユール熱)を加えることにより発色記録が得られるようにした感熱記録材料はすでに広く実用化されている。
【0003】
その感熱記録材料に求められる性能として、未印字部の白色度と種々の環境条件における未印字部の白色度、印字部の発色濃度とその印字部の保存安定性などが挙げられる。
印字部の保存安定性とは、印字画像が高湿度の環境下に置かれた場合、水が付着した場合、油類が付着した場合又は可塑剤が付着した場合等にも消失しない性能を意味する。
【0004】
感熱記録材料によって形成される印字の前記要求性能は、感熱記録材料の主成分である染料、顕色剤、増感剤に拠るところが大きく、とりわけ、顕色剤の影響が大きい。この為、上記の要求性能を満足する顕色剤として、フェノール系化合物、スルホニル尿素化合物など石油化学由来の合成化合物が提案されてきた。その中でもフェノール系化合物が数多く開発され、実用化されている。
【0005】
しかしながら、フェノール系化合物の一部には内分泌攪乱物質の疑義があり、その使用が抑制される傾向がある。例えば、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)はポリエステル用原料として又感熱紙用顕色剤などで多量に使用されていたが、改正前の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律では、第二および第三監視化学物質として、改正後の同法律では優先評価化学物質として認定され、EU REACH関連でECHAはSVHC候補にも指定しており、更に内分泌攪乱物質の疑いからその使用がEU、米国、カナダ国、日本国等では既に自粛されている。
【0006】
ビスフェノールS(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)は染色体異常などの疑義から改正前の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律では、指定化学物質に登録され、第二監視化学物質として、規制されていた。しかし、ビスフェノールSが安価であることから、現状では最も多く使用されているのが実情である。
【0007】
先行技術としては、スルホニルウレア化合物等の非フェノール系顕色剤として、4,4’−ジアミノジフェニルアルカンなどの合成化合物を原料として用いるなどの提案がある(特許文献1)。また、ヒドロキシカルボン酸の水酸基の水素をアシル基で置換した化合物の顕色剤としてO−ベンゾイル乳酸等の使用が提案されている(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料である。
【0018】
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により該染料と接触して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が下記一般式(1)で表される2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体の少なくとも一種であることを特徴とする。本発明の感熱記録材料の感熱記録層は、前記塩基性染料と前記一般式で表される顕色剤とをそれぞれ水中で微細な粒子に粉砕分散した後、両者を混合し、これとバインダー、増感剤、充填剤、滑材、その他各種添加剤等を添加して得た塗工液を調製し、これを紙、プラスティックフィルム、加工紙等の支持体上に塗工して形成される。
【0019】
本発明の感熱記録材料において、前記顕色剤が下記一般式(1)で表される2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体の少なくとも一種である。
【0020】
【化2】
(式(1)中、R1はメチル基又はフェニル基を表し、R2はアリール基又はアラルキル基を表す。)
【0021】
アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、メシチレン基、エチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのC1〜C8のアルキル基で置換されたフェニル基、イソプロペニル基などのアルケニル基で置換されたアルケニルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、α,α−ジメチルベンジル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、及びトリル基、ジメチルフェニル基、メシチレン基、エチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのC1〜C8のアルキル基で置換されたベンジル基、イソプロペニル基などのアルケニル基で置換されたアルケニル置換α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(1)で表される2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体は、塩基存在下、2−ヒドロキシカルボン酸誘導体とイソシアネート化合物との反応から容易に製造することができる。
前記一般式で表される化合物の構成成分である2−ヒドロキシカルボン酸誘導体としては乳酸、マンデル酸が挙げられ、これらはL−体、D−体、DL−体のいずれであってもよい。
【0023】
イソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、p−トリルイソシアネート、m−トリルイソシアネート、o−トリルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェネチルイソシアネート、3−フェニルイソシアネート、3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
本発明の感熱記録体における顕色剤として好ましい2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体として、2−O−(フェニルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(p−トリルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(o−トリルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(1−ナフチルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(ベンジルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(フェネチルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(フェニルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(p−トリルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(o−トリルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(1−ナフチルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(ベンジルアミノカルボニル)−乳酸、2−O−(フェネチルアミノカルボニル)−乳酸等が挙げられる。
これら2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体の1種あるいは2種以上を併用して用いても良い。
【0025】
好ましい化合物として、具体的には、2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体が2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−O−(フェニルアミノカルボニル)−マンデル酸、2−〇−(m−トリルアミノカルボニル)−乳酸及び2−〇−(フェニルアミノカルボニル)−乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが良好である。
【0026】
本発明において、本発明の効果を阻害することのない範囲で、既存の顕色剤と併用してもよい。
【0027】
本発明の感熱記録材料において、常温で無色ないし淡色の塩基性染料としてトリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、スピロ系、フルオレン系、チアジン系化合物が挙げられ、従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。
例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,3−ビス(P−メチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノベンゾ[α]フルオラン、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−n−ヘキシルオキシフェニル−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(2−メチル−1−n−オクチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン、
【0028】
3−(N−エチル−N−p−トルイジノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−(3−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ]6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−2−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2,2−ビス{4−[6’−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−3’−メチルスピロ[フタリド−3,9’−キサンテン]−2’−イルアミノ]フェニル}プロパンおよび3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、
【0029】
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ピロリジノ−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ジベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−(N−メチル−p−トルイジノ)−7−メチルフルオラン、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3,3’−ビス(1−n−アミル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(N−メチル−N−イソアミルアミノ)−7−フェノキシフルオラン、3,3’−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3’−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3’−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)−7−(N−フェニル−N−メチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ピロリジノ−7−ジベンジルアミノフルオラン
などからも選ぶことができ、本発明はこれらに限定されるものではなく、又2種類以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の増感剤として従来公知の増感剤を併用することができる。
例えば、ステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、p−トルエンスルホンアミド、ステアリン酸、ベヘン酸やパルミチン酸などのカルシウム、亜鉛あるいはアルミニウムなどの脂肪酸金属塩、p−ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、2−ベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(p−トリルオキシ)エタン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,3−ビス(フェノキシ)プロパン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸p−メチルベンジル、m−ターフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。
【0031】
更に、本発明は従来公知の保存安定剤を併用することができる。
例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4、6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチルm−クレゾール)、1,1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、トリス(2,6−ジメチル−4−tert−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−チオビス(3−メチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’−ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−(2−メチルグリシルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸グリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’―ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム塩または多価金属塩、ビス(4−エチレンイミンカルボニルアミノフェニル)メタン等が挙げられ、これらの保存安定剤は、感熱記録材料の印字部の保存安定性に寄与する。
【0032】
また、助剤としては、例えばジオクチオルコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、グリオキザール、ホウ酸、ジアルデヒドスターチ、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤、消泡剤、着色染料、蛍光染料、および顔料等が挙げられる。
【0033】
本発明で感熱記録層に使用されるバインダーとしては、重合度200〜1900の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレンーブタジエン共重合体ならびにエチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラールポリスチロールおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クロマン樹脂などが挙げられる。これらのバインダーは単独または2種以上を使用でき、溶剤に溶解して使用するほか、水または他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用することもできる。
【0034】
感熱記録層に配合される顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等が挙げられる。
【0035】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、バインダー、顔料およびその他の添加剤の種類や使用量は、感熱記録層に要求される品質性能に応じて適宜決定される。
【0036】
本発明における感熱記録層において、顕色剤として前記一般式(1)で表される2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体の含有量は、発色濃度の観点から、感熱記録層の塩基性染料1質量部に対して、0.3〜5質量部が好ましく、更には0.4〜3質量部がより好ましい。
【0037】
更に、増感剤はロイコ染料1部に対し0.2〜4質量部、バインダーは全固形分中5〜50質量%が適当である。支持体としては、紙、再生紙、合成紙、プラスティックフィルム、不織布、金属箔等が使用可能である。また、これらを組み合せた複合シートも使用可能である。
【0038】
また、保存安定性を高める目的で有機顔料を含有する高分子物質からなるオーバーコート層を設けても良い。さらにサーマルヘッドヘの粕付着を防止、印字画質向上、感度を向上させる目的で有機顔料、無機顔料や中空微粒子などを含有するアンダーコート層を設けても良い。
【0039】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤および必要により保存安定剤等は、例えば水を分散媒体として、ボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌粉砕機によって平均粒子径が2μm以下になるように微分散され使用される。
このように微分散された分散液に、必要により顔料、バインダー、助剤等を混合撹拌することで感熱記録層塗料を調整される。
このようにして得られた感熱記録層塗料を、乾燥後の塗布量が1.5〜12g/m
2程度、より好ましくは3〜7g/m
2程度になるように、支持体上に塗布し、乾燥することで形成される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0041】
下記に実施例で用いた2−O−置換ヒドロキシカルボン酸誘導体の合成例を例示する。
【0042】
合成例1:2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸
温度計、攪拌機、滴下ロートを付した四ツ口フラスコに(D)−マンデル酸33.5g、酢酸エチル250gを仕込み攪拌した。この懸濁溶液にトリエチルアミン22.2gを滴下して透明溶液を得た。内温を18℃にした後、内温18〜20℃に保持しながら滴下ロートよりm−トリルイソシアネート26.6gを滴下した。滴下終了後、反応液を18〜20℃で4時間攪拌を続けた後、1昼夜静置した。析出した結晶を濾別し、得られた結晶を酢酸エチルに懸濁し、5%塩酸で酸性化して2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を有機層に抽出した。分液後、有機層を水洗し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチル溶液をろ過した後、酢酸エチルを減圧化に留去した。濃縮残渣にトルエンを加え結晶化した。結晶を濾別し乾燥して白色結晶の2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を38.8g得た。融点129〜132℃であった。
【0043】
合成例2:2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(DL)−マンデル酸
合成例1の(D)−マンデル酸に代えて(DL)−マンデル酸を用いた以外、合成例1と同様の操作により2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(DL)−マンデル酸の白色結晶を得た。融点160〜162℃であった。
【0044】
合成例3:2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸
合成例1のm−トリルイソシアネートに代えてフェニルイソシアネートを用いた以外、合成例1と同様の操作により2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸の白色結晶を得た。融点138〜146℃であった。
【0045】
合成例4:2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(L)−乳酸
合成例1の(D)−マンデル酸に代えて(L)−乳酸を用いた以外、合成例1と同様の操作により2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(L)−乳酸の白色結晶を得た。融点99であった。
【0046】
合成例5:2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(L)−乳酸
合成例4のm−トリルイソシアネートに代えてフェニルイソシアネートを用いた以外、合成例4と同様の操作により2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(L)−乳酸の白色結晶を得た。融点135℃であった。
【0047】
下記操作により感熱記録材料を作製した。
【0048】
[アンダーコート用塗料の作成]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN−1055:中空率:55% 固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部および水20部を混合して、アンダーコート用塗料を作成した。
【0049】
(実施例1)
[感熱記録用塗料の作成]
A液(染料分散液の調製)
3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン 10部
10%ポリビニルアルコール水溶液 10部
水 16.7部
【0050】
B液(顕色剤分散液の調製)
2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸 20部
10%ポリビニルアルコール水溶液 20部
水 33.3部
【0051】
C液(増感剤分散液の調製)
1,2−ビス(m−トリルオキシ)エタン 15部
10%ポリビニルアルコール水溶液 15部
水 25部
【0052】
上記A液、B液およびC液の分散液をサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、下記割合で分散液を混合して塗布液とした。
A液(染料剤分散液) 36.7部
B液(顕色剤分散液) 73.3部
C液(増感剤分散液) 55.0部
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH−42 20部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルP−605)10部、酸化澱粉の10%溶解物20部、ステアリン酸亜鉛分散液:(商品名:ハイドリンZ−8−36)15部および水20部からなる組成分を混合して感熱記録用塗料を作製した。
【0053】
[感熱記録材料の作成]
支持体として坪量が53gの上質紙(酸性紙)にアンダーコート用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が6g/m
2となるように塗布および乾燥し、その後、感熱塗料が乾燥後の面積当たりの質量が3.5g/m
2になるように塗布乾燥した。
このシートをス−パーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が900〜1200sになるように処理して感熱記録材料を作成した。
【0054】
[感熱記録性試験(発色試験)]
作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH−PMD)を用い、
表1に記載の印加エネルギーで印加した。それぞれの記録部の印字濃度はマクベス反射濃度計RD−914で測定した。
【0055】
この実施例による感熱記録材料の上記試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0056】
(実施例2)
実施例1のB液の2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(D,L)-マンデル酸に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0057】
(実施例3)
実施例1のB液の2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0058】
(実施例4)
実施例1のB液の2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(L)−乳酸に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0059】
(実施例5)
実施例1のB液の2−O−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を2−O−(フェニルアミノカルボニル)−(L)−乳酸に代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この実施例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0060】
[比較例1]
実施例1のB液のO−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸をビスフェノールSに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この参照例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0061】
[比較例2]
実施例1のB液のO−(m−トリルアミノカルボニル)−(D)−マンデル酸を4,4’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンに代える以外は実施例1と同様の操作をおこなった。この参照例による感熱記録体の各種試験結果は、表1に記載の通りであった。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例および表より明らかなように、2−O―置換ヒドロキシカルボン酸誘導体によって作成される感熱記録体は、良好な動的発色感度および印字濃度を示した。