特許第6856463号(P6856463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856463射出成形装置、インサート成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856463
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】射出成形装置、インサート成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/14 20060101AFI20210329BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B29C33/14
   B29C45/14
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-130972(P2017-130972)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-14068(P2019-14068A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】山守 勝也
(72)【発明者】
【氏名】室賀 信俊
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−034154(JP,A)
【文献】 特開2002−355860(JP,A)
【文献】 実開昭52−047565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に凹んだ凹部が形成された第1型と、前記凹部に嵌まる凸部が形成された第2型とを有し、前記凹部と前記凸部との間で成形が行われるキャビティを形成するとともに、前記第1型と前記第2型との開閉方向が水平方向に設定された金型を備え、
前記凹部の底面に接触するように前記凹部にインサート品を配置した後、前記キャビティ内に樹脂を射出させることで、前記インサート品と、射出した樹脂との一体品を成形する射出成形装置であって、
前記凹部に前記インサート品を配置した際に、前記インサート品の重力方向の下端を保持する保持部と、
前記保持部を、前記キャビティ内への樹脂の射出途中で後退させる制御部とを備えることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記凹部の底面は、下側にいくにつれて前記凹部の開口側の方向に向かうように重力方向に対して斜めに設けられることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記インサート品は、板状であり、その板表面が前記凹部の底面に接触するように前記凹部に配置され、
前記保持部は、前記インサート品の板表面の外周辺のうちの下辺を保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記保持部はピン形状であり、ピンの側面で前記インサート品を保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記一体品は、車両の前面又は後面に、加飾部としての前記インサート品が露出するように取り付けられる部品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記一体品は、車両用レーダーのカバーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項7】
前記一体品は、前記インサート品が前面に配置され、前記インサート品の背後に、射出した樹脂により形成された射出成形部分を有したことを特徴とする請求項5又は6に記載の射出成形装置。
【請求項8】
前記射出成形部分は、前記インサート品の背面全体に接触した背面部と、その背面部の外周から後方に延設された側壁部とを有し、前記背面部と前記側壁部とで囲まれた空間を形成することを特徴とする請求項7に記載の射出成形装置。
【請求項9】
前記キャビティ内への樹脂の射出入口が前記背面部の位置に設定されたことを特徴とする請求項8に記載の射出成形装置。
【請求項10】
前記キャビティ内への樹脂の射出入口が前記射出成形部分のサイド位置に設定されたことを特徴とする請求項8に記載の射出成形装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の射出成形装置を用いて前記一体品を製造することを特徴とするインサート成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形を行う射出成形装置及びインサート成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、インサート成形に関し、金型内に配置したインサート品を保持ピンで保持し、インサート成形品に保持ピンの穴が残らないようにするため、射出途中で保持ピンを後退させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−207749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金型の開閉方向が水平方向(重力方向に直角な方向)に設定された横型成形において、金型内の所定位置に配置されたインサート品が、樹脂の射出前に所定位置からずれてしまうことがある。この点、特許文献1の技術は、金型の開閉方向が重力方向に平行な方向に設定された縦型成形に関する技術であるので、この技術を横型成形にそのまま適用することはできない。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、横型成形において、金型内に配置されたインサート品の位置ずれを抑制できる射出成形装置、及びインサート成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の射出成形装置は、
水平方向に凹んだ凹部が形成された第1型と、前記凹部に嵌まる凸部が形成された第2型とを有し、前記凹部と前記凸部との間で成形が行われるキャビティを形成するとともに、前記第1型と前記第2型との開閉方向が水平方向に設定された金型を備え、
前記凹部の底面に接触するように前記凹部にインサート品を配置した後、前記キャビティ内に樹脂を射出させることで、前記インサート品と、射出した樹脂との一体品を成形する射出成形装置であって、
前記凹部に前記インサート品を配置した際に、前記インサート品の重力方向の下端を保持する保持部と、
前記保持部を、前記キャビティ内への樹脂の射出途中で後退させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、金型(第1型)の凹部に配置されたインサート品の下端が保持部で保持されるので、樹脂の射出前にインサート品が凹部から脱落する等、所定位置からずれてしまうのを抑制できる。また、保持部は射出途中で後退するので、インサート成形品に、保持部による穴があいてしまうのを抑制できる。また、保持部が後退した後は、射出途中の樹脂によって、インサート品が所定位置からずれてしまうのを抑制できる。
【0008】
本発明において、前記凹部の底面は、下側にいくにつれて前記凹部の開口側の方向に向かうように重力方向に対して斜めに設けられるとすることができる。これによって、インサート品を重力方向に対して若干寝かせた状態で配置させることができ、凹部内でインサート品が倒れてしまうのを抑制できる。また、凹部の底面が、重力方向に対して斜めに設けられると、その斜めの底面に沿ってインサート品の位置ずれが起こる場合があるが、本発明のように、インサート品の下端を保持部で保持し、この保持を射出途中で解除することで、インサート品の位置ずれを抑えつつ、成形品に保持部の穴があいてしまうのを抑制できる。
【0009】
また、本発明において、前記インサート品は、板状であり、その板表面が前記凹部の底面に接触するように前記凹部に配置され、
前記保持部は、前記インサート品の板表面の外周辺のうちの下辺を保持することができる。
【0010】
このように、板状のインサート品を凹部内に立てて配置させる場合には、インサート品の位置ずれが起こりやすいが、本発明のように、板状インサート品の下辺を保持部で保持し、この保持を射出途中で解除することで、インサート品の位置ずれを抑えつつ、成形品に保持部の穴があいてしまうのを抑制できる。
【0011】
また、本発明において、前記保持部はピン形状であり、ピンの側面で前記インサート品を保持することができる。このように保持部をピン形状とすることで、成形品に保持部の痕が残ったとしても、その痕を目立たなくできる。また、ピンの側面でインサート品を保持することで、その保持を安定させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記一体品は、車両の前面又は後面に、加飾部としての前記インサート品が露出するように取り付けられる部品とすることができる。また、前記一体品は車両用レーダーのカバーとすることができる。この場合、前記一体品は、前記インサート品が前面に配置され、前記インサート品の背後に、射出した樹脂により形成された射出成形部分を有する。この射出成形部分は、前記インサート品の背面全体に接触した背面部と、その背面部の外周から後方に延設された側壁部とを有し、前記背面部と前記側壁部とで囲まれた空間を形成する。このように、車両の前面又は後面に取り付けられる部品(例えば車両用レーダーのカバー)に本発明を適用すると好適である。
【0013】
また、本発明において、前記キャビティ内への樹脂の射出入口が前記背面部の位置に設定されたとすることできる。これによれば、射出途中でインサート品の保持を解除したときに、そのインサート品の背面に接触するように射出樹脂が流れていることで、この射出樹脂による圧力でインサート品の位置ずれを抑制できる。
【0014】
また、本発明において、前記キャビティ内への樹脂の射出入口が前記射出成形部分のサイド位置に設定されたとしても良い。
【0015】
本発明のインサート成形品の製造方法は、本発明の射出成形装置を用いて前記一体品を製造することを特徴とする。これによって、一体品の製造の際に、インサート品の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】車両の正面図である。
図2】レドームの斜視図である。
図3図2のIII−III線でレドームを切ったときの断面図である。
図4】型開き状態の射出成形装置の断面図であって、固定型の凹部内にインサート品が配置され、そのインサート品の下端が保持ピンで保持された状態を示した図である。
図5】型締め状態の射出成形装置の断面図であって、射出途中に保持ピンを後退した後の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1に示す車両100には、レーダー装置4(図2図3参照)が搭載されている。このレーダー装置4は、車両100の前方に、例えばミリ波を送信し、送信したミリ波に対する反射波を受信することで車両100の前方の走行車両、障害物等を検出する装置である。
【0018】
レーダー装置4は、車両100のフロントグリル101の中央位置において、カバーとしてのレドーム1に前面側が覆われるように設けられる。レドーム1は、レーダー装置4を覆って保護するための部品であって、図2図3に示すように、フロントグリル101の中央に露出するように設けられるレンズ部2と、そのレンズ部2の背後に設けられフロントグリル101の裏側に隠れるように設けられるベース部材3とを備えている。
【0019】
レンズ部2は、レドーム1の最前面に位置する部材であって、正面視で略四角形の板状に形成されている。そして、レンズ部2は、一方の板表面が前方に露出し、他方の板表面である背面がベース部材3の背面部31(図3参照)に支持され、レンズ部2の外周辺を構成する4辺のうち対向する位置関係にある2辺が車両左右方向に延び、残りの2辺が車両上下方向に延びるように、設けられる。
【0020】
また、レンズ部2は、レーダー装置4が送受信する信号(ミリ波)を透過可能な材料、具体的には例えばポリカーボネート等の透明樹脂で形成されている。また、レンズ部2を構成する透明樹脂部には、車両100のエンブレム等の加飾部が例えば蒸着により形成されている。加飾部も、レーダー装置4が送受信する信号(ミリ波)が透過可能な材料にて形成されている。
【0021】
ベース部材3は、レンズ部2の背後においてレンズ部2と一体に形成されている。ベース部材3は、レンズ部2とは異なる材料で形成されており、具体的には例えばAES(アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン)樹脂等の不透明樹脂で形成されている。なお、ベース部材3も、レーダー装置4が送受信する信号(ミリ波)が透過可能な材料で形成されている。
【0022】
ベース部材3は、図3に示すように、レンズ部2の背面全体に接触するように設けられる板状の背面部31と、その背面部31の外周から、レーダー装置4が位置する後方に延設された側壁部32とを有する。背面部31は、レンズ部2の形状に合わせて、略四角形の板状に形成される。背面部31の一方の板表面はレンズ部2の背面に接合され、他方の板表面は、背面部31と側壁部32とで囲まれた空間20に面している。
【0023】
側壁部32は、背面部31の上端に接続された上壁部と、背面部31の左端に接続された左壁部と、背面部31の右端に接続された右壁部と、背面部31の下端に接続された下壁部とを有する。これら上下左右の各側壁部のうち隣り合う側壁部同士が端部で接続されている。これにより、前側が背面部31で覆われ、かつ上下左右が側壁部32で覆われ、かつ後ろ側が開いた空間20を形成している。この空間20にレーダー装置4が配置されている。なお、レンズ部2が本発明のインサート品に相当し、ベース部材3が本発明の射出成形部分に相当する。
【0024】
レドーム1は、レンズ部2をインサート品としたインサート成形により製造されている。以下、このインサート成形を行う射出成形装置の構成について説明する。
【0025】
図4図5に、レドーム1をインサート成形するための射出成形装置10の断面図を示している。なお、図4図5では、インサート品としてのレンズ部2が金型5内にセットされた状態を示している。
【0026】
射出成形装置10は、金型が水平方向に開閉する横型の射出成形装置として構成されている。詳しくは、射出成形装置10は、図5に示すように、水平方向に開閉する金型5を備えている。金型5は、型締め、型開きの際に位置が変化しない固定型51と、位置が変化する可動型52と有する。固定型51には、図4に示すように、水平方向に凹んだ凹部511が形成されている。凹部511は、成形の際に、レンズ部2が配置される底面511aを有する。その底面511aは、下側にいくにつれて凹部511の開口側の方向に向かうように、重力方向に向いた線201に対して若干傾斜した角度に設けられている。
【0027】
また、凹部511は、底面511aの下端に繋がる壁面である下面511bを有する。この下面511bは、凹部511の開口に近づくほど下方に位置するように、水平方向に向いた線202に対して若干傾斜した角度に設けられている。
【0028】
一方、可動型52には、図5に示すように、型締めの際に凹部511に嵌まる凸部521が形成されている。型締めしたときに凹部511、凸部521の間にキャビティ53が形成される。このキャビティ53は、図2図3に示すレドーム1の形状に形成されている。なお、固定型51が本発明の第1型に相当し、可動型52が本発明の第2型に相当する。
【0029】
また、射出成形装置10は、成形の際に凹部511に配置されたレンズ部2を保持するための保持ピン6を備えている。保持ピン6は、凹部511の底面511aと下面511bとの境界位置において軸方向に移動可能に設けられている。詳しくは、保持ピン6の先端が、凹部511の壁面から突出した突出位置と、凹部511の壁面と同一面位置に後退した後退位置との間で移動可能となっている。保持ピン6の個数は何個でも良いが、例えば2個とすることができる。保持ピン6を複数設ける場合には、複数の保持ピン6は、凹部511の底面511aと下面511bとの境界線に沿って(図4の紙面に直角な方向に沿って)配置される。なお、保持ピン6が本発明の保持部に相当する。
【0030】
射出成形装置10は、保持ピン6を上記突出位置と後退位置との間で駆動する駆動部7を備えている。この駆動部7は、例えばシリンダーと、そのシリンダー内に配置されたピストンとを備えて、油圧によりピストンを作動させる油圧駆動部として構成される。この場合、ピストンの先端は、保持ピン6の根元に接続される。
【0031】
また、射出成形装置10は、駆動部7を制御する制御部8を備えている。制御部8は、例えば、駆動部7のピストンに作用させる油圧を制御することで、シリンダー内におけるピストンの位置を制御し、ひいては保持ピン6の突出量を制御するように構成されている。なお、駆動部7及び制御部8が本発明の制御部に相当する。
【0032】
また、射出成形装置10は、キャビティ53内への樹脂の射出入口となるゲート54(図5参照)を備えている。ゲート54は、可動型52の凸部521の先端面の位置に設けられている。言い換えると、ゲート54は、凹部511に配置されたレンズ部2の背面(凹部511の底面511aに接触しないほうのレンズ部2の板表面)に対峙する位置に設けられている。図5では、ゲート54が、凸部521の、上下方向(重力方向に平行な方向)におけるほぼ中間位置に設けられた例を示している。ゲート54は、例えばピンゲートとされ、ゲート54の延設方向が可動型52の移動方向(つまり水平方向)に設定されている。また、ゲート54の個数は1個でも良いし、複数個でも良い。ゲート54を複数設ける場合には、複数のゲート54は、例えば、図5の紙面に直角な方向に沿って配置される。
【0033】
次に、射出成形装置10を用いてレドーム1の成形(製造)する方法を説明する。先ず、レンズ部2を準備する。レンズ部2の製造方法はどのような方法でも良いが、例えば射出成形によりレンズ部2の形状を有した透明樹脂体を形成した後、その透明樹脂体に、蒸着等によりエンブレム等の加飾部を形成することで、レンズ部2を得る。
【0034】
次に、図4に示すように、金型5が開いた状態で、固定型51の凹部511にレンズ部2を配置する。このとき、レンズ部2の表面21が凹部511の底面511aに接触するように、レンズ部2を凹部511に配置する。つまり、レンズ部2は、表面21が凹部511の底面511aに支持されるように、凹部511内に立てるように配置される。なお、凹部511にレンズ部2を配置したときのレンズ部2の下端に位置する外周辺22は、図2に示すレドーム1の使用状態におけるレンズ部2の4つの外周辺2a〜2dのうちの予め定められた外周辺(例えば下辺2a)である。
【0035】
また、制御部8は、駆動部7を制御して、凹部511にレンズ部2を配置させる前から予め保持ピン6を突出させておく。そして、凹部511にレンズ部2を配置したときに、レンズ部2の下端22の一部を、保持ピン6の先端側の側面に接触させることで、レンズ部2が凹部511内の所定位置からずれないようにする。
【0036】
なお、本実施形態では、凹部511へのレンズ部2の配置は作業者が行うが、ロボットにより自動で行っても良い。
【0037】
その後、可動型52を水平方向に固定型51の方に移動させて、金型5の型締めを行う。このとき、保持ピン6は突出させたままとする。
【0038】
その後、ゲート54から、ベース部材3(図2図3参照)を成形するための溶融樹脂をキャビティ53内に射出させることで、ベース部材3を成形する。上記したように、ゲート54は、レンズ部2の背面に対峙した位置に設けられるので、ゲート54から射出した溶融樹脂は、レンズ部2の背面と、可動型52の凸部521の先端面との間の隙間(つまり、ベース部材3の背面部31を成形するための隙間)を流れた後、凹部511の上下壁面と凸部521の上下壁面との間の隙間(つまり、ベース部材3の側壁部32を成形するための隙間)を流れる。
【0039】
このとき、制御部8は、駆動部7を制御して、溶融樹脂の射出途中となる予め定められたタイミングで、保持ピン6を、レンズ部2の下端22に接触した位置(突出位置)から、凹部511の壁面と同一面位置であってレンズ部2の下端22に接触しない位置(後退位置)に後退させる。保持ピン6を後退させるタイミングは、(1)射出した溶融樹脂によってレンズ部2の保持が可能であり、かつ、(2)保持ピン6の動作によってAir巻き込み等の不良が出ず、かつ、(3)保持ピン6の突出時に保持ピン6の先端側が位置していた空間に溶融樹脂を流し込んで保持ピン6に基づく穴が形成されないタイミングに設定される。このタイミングは、上記(1)〜(3)等を考慮して適宜に定められており、例えば、溶融樹脂が保持ピン6で保持された位置に到達する前のタイミングに定められる。制御部8は、射出開始からの経過時間を計測しており、その経過時間が上記タイミングになった時に、駆動部7を制御して、保持ピン6を後退させる。
【0040】
溶融樹脂の射出を終了した後、射出した樹脂を冷却して固化させる。その後、可動型52を水平方向に固定型51から離れる方向に移動させることで、金型5の型開きを行い、金型5から、成形品(レドーム1)を取り出す。
【0041】
以上、本実施形態によれば、保持ピン6により、射出途中まで、レンズ部2の下端22が金型5内で保持されるので、射出前又は射出途中でレンズ部2が所定位置からずれてしまうのを抑制できる。保持ピン6は射出途中で後退するので、成形品であるレドーム1に保持ピン6の穴があいてしまうのを抑制できる。
【0042】
また、保持ピン6の先端側の側面でレンズ部2が保持されるので、保持ピン6の先端で保持する場合に比べて、保持ピン6の保持を安定させることができる。また、保持ピン6はピン形状(針状)であるので、保持ピン6とレンズ部2との接触範囲を小さくでき、成形品(レドーム1)に保持ピン6の痕が残ったとしても目立たなくすることができる。
【0043】
また、凹部511の底面511aは重力方向に対して若干傾いて設けられ、この傾いた底面511aにレンズ部2の表面21が支持されるので、凹部511に配置されたレンズ部2の上端側が、凹部511の開口側に倒れてしまうのを抑制できる。
【0044】
また、ゲート54は、レドーム1の背面部31の位置に設定されているので、上記(1)〜(3)を満たす、保持ピン6の後退タイミングを設定しやすくできる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであったとしても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、上記実施形態では、凹部が形成された型を固定型、凸部が形成された型を可動型としていたが、凹部が形成された型を可動型、凸部が形成された型を固定型とした金型を用いても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、金型内でインサート品(レンズ部2)を保持する保持部として保持ピンを採用した例を説明したが、ピン形状以外の形状の保持部を採用しても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、車両前方監視用のレーダー装置のカバーに本発明を適用した例を示したが、車両後方監視用のレーダー装置のカバーに本発明を適用しても良い。この場合、カバーとしてのレドームは、車両の後面において、レンズ部が露出するように取り付けられる。
【0048】
また、上記実施形態では、車両用レーダーのカバーに本発明を適用した例を示したが、車両用レーダーのカバーではないが、車両の前面又は後面に取り付けられるエンブレム等の加飾が施されたアクセサリに本発明を適用しても良い。この場合、アクセサリは、図1図2のレドーム1と同様の形状、又はそのレドーム1に対して側壁部32が無い形状に形成される。
【0049】
また、上記実施形態では、レドーム1のベース部材3として背面部31及び側壁部32を有した形状を示したが、側壁部32が無い形状のレドームに本発明を適用しても良い。また、上記実施形態では、正面視で略四角形のレンズ部を例示したが、レンズ部は四角形以外の形状(例えば楕円形)であっても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、背面部31の位置にゲート54を設定した例を示したが、製品(レドーム)の側方(サイド位置)(例えば図3の符号55の位置や符号56の位置や符号57の位置)から樹脂を射出するゲート(サイドゲート、サブマリンゲートなど)が設定された金型を用いても良い。側壁部32を有しないレドーム形状の場合には、符号55の位置にゲートを設定しても良い。ゲートを製品のサイド位置に設定する場合も、射出途中で保持ピンを後退させるタイミングは、「射出した溶融樹脂によってレンズ部の保持が可能であること」等を考慮して適宜に設定すれば良い。
【符号の説明】
【0051】
1 レドーム、2 レンズ部、3 ベース部材、31 背面部、32 側壁部、4 レーダー装置、5 金型、51 固定型、511 固定型の凹部、511a 凹部の底面、511b 凹部の下面、521 可動型の凸部、52 可動型、53 キャビティ、54 ゲート、6 保持ピン、7 駆動部、8 制御部、10 射出成形装置
図1
図2
図3
図4
図5