(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒートポンプ熱源機の製造時またはメンテナンス時に、吐出側圧力センサが圧縮機の吸込側に、吸込側圧力センサが圧縮機の吐出側に誤って取り付けられる場合がある。このような吐出側圧力センサと吸込側圧力センサの誤取付は、これらの圧力センサが同一仕様で構成されているときに生じ易い。
【0005】
このような誤取付の場合には、圧縮機の回転数が過度に増大して制御されてしまう。このため、ヒートポンプ熱源機の加熱運転時には、圧縮機が過回転されることで吐出圧力が過大になり、且つ運転効率が低下する恐れがある。また、ヒートポンプ熱源機の冷房運転時には、圧縮機の過回転により蒸発器での冷媒の蒸発が過大になって、この冷媒と熱交換する水が凍結する恐れがある。
【0006】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、圧縮機の吐出圧力と吸込圧力とをそれぞれ検出する吐出側圧力センサと吸込側圧力センサとの誤取付を正確に判定できるヒートポンプ熱源機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態におけるヒートポンプ熱源機は、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が順次接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを備え、前記圧縮機と前記凝縮器との間に、前記圧縮機の吐出圧力を検出する吐出側圧力センサが設置され、前記蒸発器と前記圧縮機との間に、前記圧縮機の吸込圧力を検出する吸込側圧力センサが設置され、前記吐出側圧力センサと前記吸込側圧力センサとがそれぞれ検出した検出値に基づいて前記圧縮機の回転数を制御する制御装置が設けられたヒートポンプ熱源機において、前記制御装置は取付異常判定手段を有し、この取付異常判定手段は、前記吐出側圧力センサの検出値が、前記吸込側圧力センサの検出値から所定値を引いた値未満である状態が一定時間継続したときに、前記吐出側圧力センサと前記吸込側圧力センサとが誤って取り付けられたと判定するものであ
り、前記所定値が、前記圧縮機の運転時における前記吐出圧力と前記吸込圧力との差圧のうち最も低い差圧である圧縮機運転時最低差圧であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、圧縮機の吐出圧力と吸込圧力とをそれぞれ検出する吐出側圧力センサと吸込側圧力センサとの誤取付を正確に判定できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係るヒートポンプ熱源機における加熱運転時の冷凍サイクル等を示す説明図である。また、
図2は、
図1のヒートポンプ熱源機における冷却運転時の冷凍サイクル等を示す説明図である。これらの
図1及び
図2に示すヒートポンプ熱源機10は、圧縮機12、四方弁13、凝縮器(水熱交換器14または空気熱交換器15)、膨張弁16、蒸発器(空気熱交換器15または水熱交換器14)、四方弁13、及びアキュムレータ17が冷媒配管18により順次接続されて、冷媒Aが循環する冷凍サイクル11を有する。
【0011】
つまり、冷凍サイクル11は、四方弁13の加熱運転切換位置では、
図1に示すように、圧縮機12、四方弁13、凝縮器としての水熱交換器14、膨張弁16、蒸発器としての空気熱交換器15、四方弁13及びアキュムレータ17が、冷媒配管18により順次接続されて、冷媒Aが環状に循環するよう構成される。また、冷凍サイクル11は、四方弁13の冷却運転切換位置では、
図2に示すように、圧縮機12、四方弁13、凝縮器としての空気熱交換器15、膨張弁16、蒸発器としての水熱交換器14、四方弁13及びアキュムレータ17が順次接続されて、冷媒Aが環状に循環するよう構成される。
【0012】
ここで、圧縮機12は、冷媒Aを圧縮して高温高圧状態として吐出する。この圧縮機12の吐出圧力範囲は例えば0.5MPa〜4.2MPaであり、吸込圧力範囲は例えば0.15MPa〜2.0MPaである。また、本実施形態に用いられる冷媒Aは、例えばR410AまたはR32等である。更に、膨張弁16は、冷媒Aを減圧して低温低圧状態とする。
【0013】
水熱交換器14は、冷媒Aと水Bとの間で熱交換を行なうものであり、水配管19を介して図示しない負荷に接続される。水熱交換器14と負荷との間で水配管19により水Bが循環する間に、この水Bが加熱または冷却される。空気熱交換器15は、この空気熱交換器15の近傍に配置された送風ファン(不図示)により導かれた空気と冷媒Aとの間で熱交換を行なう。また、四方弁13は、冷凍サイクル11における冷媒Aの流れを切り換えるものであり、前述の如く、加熱運転時と冷却運転時とで冷媒Aの流れを切り換える。
【0014】
次に、冷凍サイクル11の加熱運転時における冷媒Aの状態変化及び作用等を、
図1を用いて説明する。圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒Aは、四方弁13を通り水熱交換器14で水Bと熱交換して凝縮し、放熱により水Bを加熱する。水熱交換器14にて凝縮した冷媒Aは、膨張弁16にて低温低圧状態に変化して空気熱交換器15に流入する。低温低圧の冷媒Aは、空気熱交換器15で、送風ファンにより導かれた空気(外気)と熱交換して吸熱し蒸発する。この蒸発した冷媒Aは、四方弁13を経てアキュムレータ17に流入した後に圧縮機12に戻される。
【0015】
また、冷凍サイクル11の冷却運転時における冷媒Aの状態変化及び作用等を、
図2を用いて説明する。圧縮機12から吐出された高温高圧の冷媒は、四方弁13を通り空気熱交換器15で、送風ファンにより導かれた空気(外気)と熱交換して放熱し凝縮する。この空気熱交換器15で凝縮した冷媒Aは、膨張弁16にて低温低圧状態に変化して水熱交換器14に流入する。低温低圧の冷媒Aは、水熱交換器14において水Bと熱交換して蒸発し、吸熱により水Bを冷却する。この水熱交換器14で蒸発した冷媒は、四方弁13を通りアキュムレータ17に流入した後に圧縮機12に戻される。
【0016】
図1及び
図2に示すヒートポンプ熱源機10は、更に、吐出側圧力センサ21、吸込側圧力センサ22及び制御装置23を有し、この制御装置23が取付異常判定手段24を備える。
【0017】
吐出側圧力センサ21は、圧縮機12と凝縮器としての水熱交換器14または空気熱交換器15との間、より具体的には圧縮機12の吐出側と四方弁13との間に設置されて、圧縮機12の吐出圧力(即ち圧縮機12から吐出される冷媒Aの圧力)を検出する。また、吸込側圧力センサ22は、圧縮機と蒸発器としての空気熱交換器15または水熱交換器14との間、より具体的には圧縮機12の吸込側と四方弁13との間に設置されて、圧縮機12の吸込圧力(即ち圧縮機12に吸い込まれる冷媒Aの圧力)を検出する。本実施形態において、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22は同一仕様の圧力センサにて構成されている。
【0018】
これらの吐出側圧力センサ21及び吸込側圧力センサ22にて検出された検出値(圧力検出値)は、制御装置23に送信される。この制御装置23は、前述の四方弁13の切換操作を制御すると共に、吐出側圧力センサ21、吸込側圧力センサ22にて検出されたそれぞれの検出値に基づいて圧縮機12の回転数を制御する。
【0019】
つまり、制御装置23は、ヒートポンプ熱源機10の加熱運転時に、吐出側圧力センサ21にて検出された検出値(吐出圧力)と冷媒特性とから、水熱交換器14内での冷媒Aの凝縮温度を推定する。そして、制御装置23は、水熱交換器14内での冷媒Aの凝縮温度が所定範囲に収まるように、圧縮機12の回転数を制御する。
【0020】
また、制御装置23は、ヒートポンプ熱源機10の冷却運転時に、吸込側圧力センサ22にて検出された検出値(吸込圧力)と冷媒特性とから、水熱交換器14内での冷媒Aの蒸発温度を推定する。そして、制御装置23は、水熱交換器14内で冷媒Aの蒸発温度が過大に低下して水熱交換器14内で水Bが凍結しないように、水熱交換器14内での冷媒Aの蒸発温度を適正範囲にすべく、圧縮機12の回転数を制御する。
【0021】
前述の制御装置23の取付異常判定手段24は、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられたことを判定するものである。本来、吐出側圧力センサ21は圧縮機12の吐出側に、吸込側圧力センサ22は圧縮機12の吸込側にそれぞれ取り付けられて設置される。ところが、ヒートポンプ熱源機10の製造時やメンテナンス時に、吐出側圧力センサ21が圧縮機12の吸込側に、吸込側圧力センサ22が圧縮機12の吐出側に誤って取り付けられる場合がある。この誤取付は、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが同一仕様の圧力センサである場合に生じ易い。この場合にも、制御装置23は、誤取付された吐出側圧力センサ21、吸込側圧力センサ22からの検出値に基づいて圧縮機12の回転数を制御することになる。
【0022】
取付異常判定手段24は、圧縮機12が運転開始後所定時間(例えば10分間)経過して、圧縮機12の吐出圧力及び吸込圧力が安定した状態で、吐出側圧力センサ21の検出値が、吸込側圧力センサ22の検出値から所定値を引いた値未満である状態が一定時間継続したときに、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられたと判定する。
【0023】
つまり、圧縮機12の吐出圧力及び吸込圧力が安定したときの吐出側圧力センサ21の検出値をPdとし、吸込側圧力センサ22の検出値をPsとする。所定値として、圧縮機12の運転時における吐出圧力と吸込圧力との差圧のうち最も低い差圧である圧縮機運転時最低差圧ΔPを用いる。このとき、取付異常判定手段24は、
Pd<Ps−ΔP…(1)
が一定時間(例えば5分間)継続した場合に、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられたとして取付異常を判定する。取付異常判定手段24は、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22の誤取付による取付異常を判定した場合には、その誤取付である旨を表示装置25に表示させる。
【0024】
式(1)において、吐出側圧力センサ21が圧縮機12の吐出側に、吸込側圧力センサ22が圧縮機12の吸込側に適正に取り付けられている場合、吐出側圧力センサ21の検出値Pdは、吸込側圧力センサ22の検出値Psよりも高くなるが、圧縮機12の運転状態によっては略等しくなる場合がある。この点を考慮して、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22の誤取付を確実に判定するために、式(1)では、吐出側圧力センサ21の検出値Pdと、吸込側圧力センサ22の検出値Psから圧縮機運転時最低差圧ΔPを引いた値とを比較している。この圧縮機運転時最低差圧ΔPは、圧縮機12の吐出圧力及び吸込圧力等に基づいて0.1MPa〜0.4MPaの範囲の値、例えば0.2MPaが用いられる。
【0025】
上述の制御装置23の取付異常判定手段24における判定手順を、
図3のフローチャートを用いて説明する。
取付異常判定手段24は、圧縮機12の運転開始(S1)から、圧縮機12の吐出圧力及び吸込圧力が安定する所定時間(例えば10分間)が経過したか否かを判定する(S2)。
【0026】
ステップS2の所定時間(例えば10分間)が経過した時点で、取付異常判定手段24は、吐出側圧力センサ21の検出値Pdが、吸込側圧力センサ22の検出値Psから圧縮機運転時最低差圧ΔPを引いた値未満であるか否かを判定する(S3)。このステップS3でNoの場合、取付異常判定手段24は、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが適正(正常)に取り付けられていると判定する(S4)。
【0027】
ステップS3でYesの場合、取付異常判定手段24は、ステップS3の状態が一定時間(例えば5分間)継続しているか否かを判定する(S5)。異常判定手段24は、ステップS5において、ステップS3の状態が一定時間(例えば5分間)継続していない場合には再度ステップS3を実行し、継続している場合には、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられたとして取付異常を判定する。(S6)。
【0028】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)
図1〜
図3に示すように、制御装置23の取付異常判定手段24は、吐出側圧力センサ21の検出値Pdが、吸込側圧力センサ22の検出値Psから圧縮機運転時最低差圧ΔPを引いた値未満である状態が一定時間(例えば5分間)継続したときに、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられたとして取付異常を判定する。従って、この取付異常判定手段24の存在によって、ヒートポンプ熱源機10の製造時やメンテナンス時に、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが誤って取り付けられた場合でも、その取付異常である誤取付を正確に判定して対処できる。
【0029】
(2)吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22とが同一仕様の圧力センサにより構成されたので、吐出側圧力センサ21及び吸込側圧力センサ22のコストを低減できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、本実施形態では、吐出側圧力センサ21と吸込側圧力センサ22は、同一仕様の圧力センサの場合を述べたが、異なった仕様の圧力センサであってもよい。