特許第6856486号(P6856486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タチエスの特許一覧

<>
  • 特許6856486-車両用シート 図000002
  • 特許6856486-車両用シート 図000003
  • 特許6856486-車両用シート 図000004
  • 特許6856486-車両用シート 図000005
  • 特許6856486-車両用シート 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856486
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   B60N2/58
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-189683(P2017-189683)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64351(P2019-64351A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 豪也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博子
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/170675(WO,A1)
【文献】 特開2010−246645(JP,A)
【文献】 特開2013−104161(JP,A)
【文献】 特開2017−020154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0175935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの表皮を構成する第1表皮部材と、その第1表皮部材に連結される第2表皮部材と、それら第1表皮部材および第2表皮部材を縫合して連結する縫糸と、を有するトリムカバーを備える車両用シートにおいて、
前記第1表皮部材または前記第2表皮部材の少なくとも一方は、一方向に延設される第1糸と、
その第1糸と直交する方向に延設され、前記第1糸よりも表面に多く現れる第2糸と、
前記第1糸および前記第2糸を有する前記第1表皮部材または前記第2表皮部材の前記第1糸および前記第2糸よりも裏面側に少なくとも一部が配設され、前記第2糸の延設方向に延設される裏糸と、を備え、
前記裏糸は、カバーファクターが320から380に設定され、
前記縫糸は、繊度が650Tから1700Tに設定され、縫い目の間隔が3mmから4mmの間に設定されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記第2糸のカバーファクターが1310以上に設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第2糸の糸密度は、前記裏糸の糸密度に対して6倍以下の値に設定されることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第2糸は、前記裏糸の繊度に対して、1/2以上の値に設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記第1糸は、前記第2糸の繊度よりも小さい値の繊度の糸を2本以上で撚り合わせて形成され、それら撚り合わせた状態の前記第1糸の繊度が、前記第2糸の繊度と同一または、前記第2糸の繊度よりも大きく設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記裏糸を有する前記第1表皮部材または前記第2表皮部材には、前記裏糸を有する前記第1表皮部材または前記第2表皮部材の剛性よりも剛性の高い弾性部材が配設され、前記縫糸は、前記弾性部材を介して前記第1表皮部材と前記第2表皮部材とを縫合することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、トリムカバーの意匠性を確保しつつ、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一方向に延設される第1糸に対して、その第1糸と直交する他方向に延設される第2糸を織物表面に多く現れるように構成する繻子織の織物を使用したトリムカバーを備える車両用シートがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246645号公報(段落0014,0015など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に繻子織の織物は織物表面が滑らかに形成されるため、織物表面に凹凸を形成することが難しく、織物表面の形状を変形させてトリムカバーの意匠性を向上させにくいという問題点がある。なお、織物を製造したあとの別工程で織物表面に凹凸を形成する加工(例えば、エンボス加工)を施すことで織物表面に凹凸を形成できるが、この場合には織物製造とは別の加工工程が必要となり、製造コストが増加するため理想的でない。
【0005】
これに対し、本願出願人は、上述の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、第2糸よりも織物の裏面側に第2糸よりも繊度が大きい(糸の太さが太い)裏糸を第2糸に沿って配置して、裏糸で第2糸を織物表面側に押し出すことで、織物表面に凹凸を形成してトリムカバーの意匠性を向上させる構成に想到した(本願出願時において未公知)。
【0006】
しかしながら、裏糸を有する繻子織の織物では、その繻子織の織物と他の表皮部材とを縫い合わせて、それらを一体のトリムカバーとして構成する場合に、繻子織の織物と他の表皮部材とを裏糸の延設方向と直交する方向に沿って縫い合わせると、2点の縫い目(縫い合わせる糸を通した部分)の間(1ピッチ分の縫糸の間)に何本かの裏糸が通される。よって、各縫い目の間に各裏糸の間の隙間が配置されることとなる。そのため、繻子織の織物と他の表皮部材との縫い合わせ面が互いに離れる方向に力が作用すると、各裏糸の間の隙間を埋めるように第1糸、第2糸、及び、裏糸が縫糸に沿って1ピッチ分の縫糸の中央部分に寄せ集められて、縫い目付近の第2糸が少なくなることで、縫い目付近でトリムカバーにシワが形成されるという問題点が新たに見つかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、トリムカバーの意匠性を確保しつつ、トリムカバーにシワが形成されることを抑制できる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、シートの表皮を構成する第1表皮部材と、その第1表皮部材に連結される第2表皮部材と、それら第1表皮部材および第2表皮部材を縫合して連結する縫糸と、を有するトリムカバーを備えるものであり、第1表皮部材または第2表皮部材の少なくとも一方は、一方向に延設される第1糸と、その第1糸と直交する方向に延設され、第1糸よりも表面に多く現れる第2糸と、第1糸および第2糸を有する第1表皮部材または第2表皮部材の第1糸および第2糸よりも裏面側に少なくとも一部が配設され、第2糸の延設方向に延設される裏糸と、を備え、裏糸は、カバーファクターが320から380に設定され、縫糸は、繊度が650Tから1700Tに設定され、縫い目の間隔が3mmから4mmの間に設定される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の車両用シートによれば、第1表皮部材または第2表皮部材の少なくとも一方は、一方向に延設される第1糸と、その第1糸と直交する方向に延設され、第1糸よりも表面に多く現れる第2糸と、第1糸および第2糸を有する第1表皮部材または第2表皮部材の第1糸および第2糸よりも裏面側に少なくとも一部が配設され、第2糸の延設方向に延設される裏糸と、を備え、裏糸は、カバーファクターが320から380に設定され、縫糸は、繊度が650Tから1700Tに設定され、縫い目の間隔が3mmから4mmの間に設定されるので、縫糸の各縫い目の間に配設される各裏糸の間の隙間を少なくできる。これにより、第1表皮部材および第2表皮部材が互いに離れる方向に力が作用する場合に、第1糸、第2糸、及び、裏糸が各裏糸の間の隙間を埋めるように移動して、第1糸、第2糸、及び、裏糸が各縫い目(縫い合わせる糸を通した部分)の間の中央付近に寄せ集められることを抑制できる。その結果、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0010】
また、裏糸のカバーファクターが380以下に設定されるので、裏糸を配設することによる製造コストが増加することを抑制できる。
【0011】
さらに、縫糸の縫い目の間隔は、3mm以上に設定されるので、第1表皮部材と第2表皮部材とを縫い合わせる場合のタクトタイムが増加しすぎることを抑制しつつ、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0012】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、第2糸のカバーファクターが1310以上に設定されるので、各第2糸の配置間隔を密にできる。従って、第1表皮部材と第2表皮部材とが互いに離れる方向に力が入力された場合に、その力で移動する第2糸を隣りの第2糸に当接させて、第2糸が移動することを隣りの第2糸により規制できる。その結果、各裏糸の間の隙間に第2糸が移動することを抑制して、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0013】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、第2糸の糸密度は、裏糸の糸密度に対して6倍以下の値に設定されるので、第2糸の繊度が小さく(太さが細く)なって、各裏糸の間の隙間に第2糸が入り込みやすくなることを抑制できる。その結果、各裏糸の間の隙間に第2糸が移動することを抑制して、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0014】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、第2糸は、裏糸の繊度に対して、1/2以上の値に設定されるので、各裏糸の間の隙間に第2糸が入り込むことを抑制しやすくできる。従って、第1表皮部材と第2表皮部材とが互いに離れる方向に力が入力された場合に、第2糸が各裏糸の間の隙間に移動することを抑制できる。その結果、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0015】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、第1糸は、第2糸の繊度よりも小さい値の繊度の糸を2本以上で撚り合わせて形成され、それら撚り合わせた状態の第1糸の繊度が、第2糸の繊度と同一または、第2糸の繊度よりも大きく設定されるので、第1糸の強度を確保しつつ、第2糸に対して第1糸を織物表面に目立たせにくくして、第2糸による意匠性を確保しやすくできる。
【0016】
請求項6記載の車両用シートによれば、請求項1から5のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、裏糸を有する第1表皮部材または第2表皮部材には、裏糸を有する第1表皮部材または第2表皮部材の剛性よりも剛性の高い弾性部材が配設され、縫糸は、弾性部材を介して第1表皮部材と第2表皮部材とを縫合するので、第1表皮部材と第2表皮部材とが互いに離れる方向に力が作用した場合に、裏糸および第2糸が各裏糸の間の隙間を埋めて寄せ集められることを弾性部材の剛性により抑制できる。その結果、縫糸の縫い目部分でトリムカバーにシワが形成されることを抑制できる。
【0017】
また、第2糸を第1糸に対して織物表面に多く表した織物(繻子織の織物)では、2方向の糸を格子状に交錯させる織物(平織の織物)に比べて、織物が柔軟になるため、その分、車両用シートの剛性を確保しにくくなるところ、弾性部材により車両用シートの剛性を高くして、車両用シートのクッション性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明の一実施形態における車両用シートの斜視正面図であり、(b)は、シートバックの正面図である。
図2】(a)は、図1(b)のIIa部を部分的に拡大したトリムカバーの部分拡大正面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるトリムカバーの断面模式図である。
図3】(a)は、経糸の正面図であり、(b)は、緯糸の正面図であり、(c)は、裏糸の正面図である。
図4】(a)は、図2(b)のIVa−IVa線におけるトリムカバーの断面模式図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるトリムカバーの断面模式図である。
図5】裏糸のカバーファクター及び縫糸の縫い目の間隔に対するトリムカバーの表面のシワの有無を図示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態における車両用シート1について説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態における車両用シート1の斜視正面図であり、図1(b)は、シートバック3の正面図である。
【0020】
なお、以下の説明では、図1(b)に示す状態の車両用シート1に対して、紙面左側を右方側として、紙面右側を左方側として、紙面上側を上方側として、紙面下側を下方側として、紙面奥側を後方(背面)側として、紙面手前側を前方(正面)側としてそれぞれ説明する。さらに、図中の矢印F−B,U−D,L−Rは、車両用シート1の前後方向,上下方向,左右方向をそれぞれ示している。
【0021】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車、鉄道車両)に搭載されるシートである。車両用シート1は、着座者が着座するシートクッション2と、着座者の背もたれとなるシートバック3と、着座者の頭部を支えるヘッドレスト4と、を主に備える。
【0022】
シートバック3は、軟質ウレタンフォームの合成樹脂発泡体により一体に形成されたシートパッド(図示せず)と、そのシートパッドの表面に覆設されるトリムカバー30と、を主に備える。
【0023】
トリムカバー30は、シートバック3の正面側に配設され、左右方向(矢印L−R方向)において4個に分割された第1表皮部材31、第2表皮部材32、第3表皮部材33、第4表皮部材34と、シートバック3の側面に配設される第5表皮部材35と、を主に備える。
【0024】
第1表皮部材31から第4表皮部材34は、左側(矢印L方向側)から右側(矢印R方向側)に向かって順に第3表皮部材33、第1表皮部材31、第2表皮部材32、第4表皮部材34の順に配置され、隣り合う表皮同士が連結される。
【0025】
なお、本実施形態では、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、それぞれ繻子織(朱子織)の織物から構成されており、第3表皮部材33、第4表皮部材34、及び、第5表皮部材35は、それぞれ編物から構成される。
【0026】
次いで、図2を参照して、トリムカバー30の第1表皮部材31及び第2表皮部材32について説明する。図2(a)は、図1(b)のIIa部を部分的に拡大したトリムカバー30の部分拡大正面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるトリムカバー30の断面模式図である。
【0027】
なお、図2(a)では、経糸41の一部が破線で図示される。また、図2(b)では、上下方向(矢印U−D方向)における緯糸42によるトリムカバー30の表面形状がトリムカバー30の表面に沿って仮想線S1の符号が付されて2点鎖線で図示され、各裏糸43の間に形成される隙間が隙間Kの符号を付して2点鎖線で図示される。さらに、詳しい説明は後述するが、トリムカバー30は、経糸41及び緯糸42を裏糸43から離間させてその表面に水平方向(矢印L−R方向)に沿って凹凸が形成されるところ、図2(b)では、経糸41及び緯糸42が裏糸43と隙間を隔てずに配置された状態が図示される。
【0028】
図2に示すように、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、上下方向(矢印U−D方向)に延設される経糸41と、その経糸41と直交する方向(矢印L−R方向)に延設され、経糸41よりも表面に多く現れる緯糸42と、その緯糸42の延設方向に延設される裏糸43と、それら経糸41、緯糸42、及び、裏糸43の裏面に配設される弾性部材44と、を主に備える。なお、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43は、ポリエステル繊維から形成される糸である。
【0029】
経糸41及び緯糸42は、経糸41と緯糸42とが各12本ずつで完全組織となる織物(12枚繻子織物)であり、1本の経糸41が12本の緯糸42に対して表面側で1回交錯するように構成されている。よって、織物表面に緯糸42が多く現れるので、滑らかで光沢のある織物表面を形成できる。
【0030】
また、経糸41と緯糸42との交錯点は、隣り合わない位置にそれぞれ形成されるので、経糸41と緯糸42との交錯を認識させにくくすることができる。これにより、緯糸42による織物表面の意匠性を向上できる。
【0031】
なお、本実施形態では、経糸41と緯糸42とが各12本ずつで完全組織となる12枚繻子織物について説明するが、経糸41と緯糸42とが他の本数で完全組織となる繻子織物であってもよい。例えば、経糸41と緯糸42とを各5本ずつで完全組織とする5枚繻子織物であっても、経糸41と緯糸42とを各8本ずつで完全組織とする8枚繻子織物であってもよい。
【0032】
裏糸43は、織物表面に凹凸を形成する糸であり、緯糸42及び経糸41の繊度(太さ)よりも高い繊度の糸に設定され、緯糸42の延設方向に延設されて主に経糸41の背面側に配設される。また、裏糸43は、経糸41と部分的に交錯することで、経糸41及び緯糸42と一体の織物として構成される。
【0033】
なお、詳しい説明は後述するが、裏糸43と経糸41との各交錯点の間の裏糸43の距離は、裏糸43と経糸41との各交錯点の間の緯糸42の距離に対して短く設定される。これにより、緯糸42をトリムカバー30の表面側に押し出すことができ、緯糸42の配置を前後方向(矢印F−B方向)にずらして、織物表面に凹凸を形成できる(図4(a)参照)。
【0034】
弾性部材44は、トリムカバーの剛性を高める部材であり、軟質ウレタンフォームの合成樹脂発泡体から形成され、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43を織り込んで一体にした織物の背面側に接着して配設される。なお、本実施形態における弾性部材44は、0.020〜0.035g/cmの密度に設定され、上記した経糸41、緯糸42、及び、裏糸43で構成される繻子織の織物よりも剛性が高く設定される。
【0035】
次いで、図3を参照して、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43について詳しく説明する。図3(a)は、経糸41の正面図であり、図3(b)は、緯糸42の正面図であり、図3(c)は、裏糸43の正面図である。
【0036】
経糸41は、2本の第1撚糸41aと第2撚糸41bとを撚り合わせて構成される。第1撚糸41aと第2撚糸41bとは、共に繊度が84T(デシテックス(dtex))に設定され、それら第1撚糸41aと第2撚糸41bとを合わせた経糸41の繊度が168Tに設定される。言い換えると、第1撚糸41aと第2撚糸41bとは、略同一の太さA(図3(a)参照)に設定され、それら第1撚糸41a及び第2撚糸41bにより構成される経糸41の太さB(図3(a)参照)は、第1撚糸41a又は第2撚糸41bの太さAの2倍に設定される(B=A×2)。2本の第1撚糸41aと第2撚糸41bとを撚り合わせることで、経糸41の強度および弾性を向上して、経糸41が破損することを抑制できる。なお、本実施形態では、第1撚糸41aと第2撚糸41bとが、左撚り(Z撚)に形成されるが、これに限ったものではなく、反対の右撚り(S撚)に形成されていてもよい。
【0037】
また、経糸41の糸密度は、130本/インチに設定されており、経糸41のカバーファクター(CF)は、1685に設定される。なお、本実施形態で示すカバーファクターの値は、織物(第1表皮部材31及び第2表皮部材32)の特性を特定するものではなく、各糸(経糸41、緯糸42、及び、裏糸43)の特性を特定するものであり、(繊度(T))1/2×(糸密度(本/インチ))で求められる値である。
【0038】
緯糸42は、繊度167T(太さC)の糸から形成され、経糸41の繊度(168T(太さB))と近似する値に設定される(C≒B)。また、緯糸42の糸密度は、105本/インチに設定されており、緯糸42のカバーファクター(CF)は、1356に設定される。
【0039】
上述したように、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、緯糸42がトリムカバー30の表面に多く現れるように構成される繻子織の織物であるので、緯糸42の繊度が167Tに設定され、緯糸42のカバーファクターが1310(糸密度102本/1インチ)以上に設定されることで、各緯糸42の配置間隔を緻密にすることができ、トリムカバー30の表面の意匠性を確保できる。
【0040】
また、経糸41を緯糸42よりも細い第1撚糸41a及び第2撚糸41bで構成することで、トリムカバー30の表面に現れる経糸41を認識しにくくすることができる。その結果、トリムカバー30の意匠性を向上できる。
【0041】
さらに、経糸41は、第1撚糸41aと第2撚糸41bとを撚り合わせて構成されるので、第1撚糸41aと第2撚糸41bとを緯糸42の延設方向(矢印L−R方向)に旋回させることができる。よって、緯糸42の延設方向に対して第1撚糸41aと第2撚糸41bとの延設方向を平行に近づけることができるので、トリムカバー30の表面に現れる経糸41を認識しにくくすることができる。その結果、トリムカバー30の意匠性を向上できる(図1(a)参照)。
【0042】
裏糸43は、2本の第3撚糸43aと第4撚糸43bとを撚り合わせて構成される。第3撚糸43aと第4撚糸43bとは、共に繊度が167Tに設定され、それら第3撚糸43aと第4撚糸43bとを合わせた裏糸43の繊度が334Tに設定される。言い換えると、第3撚糸43aと第4撚糸43bとは、略同一の太さD(図3(c)参照)に設定され、それら第3撚糸43a及び第4撚糸43bにより構成される裏糸43の太さE(図3(c)参照)は、第3撚糸43a又は第4撚糸43bの太さDの2倍に設定される(E=D×2)。また、裏糸43の糸密度は、21本/インチに設定されており、裏糸43のカバーファクター(CF)は、384に設定される。
【0043】
次いで、図4を参照して、トリムカバー30の表面形状、及び、第1表皮部材31と第2表皮部材32とを縫い合わせた状態におけるトリムカバー30について説明する。図4(a)は、図2(b)のIVa−IVa線におけるトリムカバー30の断面模式図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるトリムカバー30の断面模式図である。
【0044】
なお、図4(a)では、縫糸50の一部が破線で図示され、水平方向(矢印L−R方向)における緯糸42によるトリムカバー30の表面形状がトリムカバー30の表面に沿って仮想線S2の符号が付させて2点鎖線で図示される。また、図4(b)では、図2(b)と同様に上下方向(矢印U−D方向)における緯糸42によるトリムカバー30の表面形状がトリムカバー30の表面に沿って仮想線S1の符号が付されて2点鎖線で図示され、各裏糸43の間の隙間に隙間Kの符号が付されて2点鎖線で図示される。
【0045】
まず、図4(a)を参照して、トリムカバー30の表面形状について説明する。図4(a)に示すように、裏糸43は、各経糸41との各交錯点P3(図4(a)参照)の間の裏糸43の長さ(距離)T1(図4(a)参照)は、裏糸43と経糸41との各交錯点P3の間の緯糸42の長さ(距離)T2(図4(a)参照)よりも短く設定される(T2>T1)。これにより、経糸41及び緯糸42を裏糸43から離間させて(経糸41及び緯糸42と裏糸43との間に隙間を形成して)、緯糸42をトリムカバー30の表面側に押し出しつつ湾曲させることができる。また、各裏糸43と各経糸41との交錯点P3は、上下方向において同一の位置に形成される。よって、トリムカバー30は、その表面形状が水平方向(矢印L−R方向)において凹凸が連続する波形状に形成される(仮想線S2参照)。
【0046】
なお、各交錯点P3の間の裏糸43の長さT1、及び、各交錯点P3の間の緯糸42の長さT2は、適宜変更可能である。例えば、1箇所目の各交錯点P3の間では、T1が6mmに、T2が8mmに設定され、その1箇所目の各交錯点P3の間と隣り合う位置の2箇所目の各交錯点P3の間では、T1が3mmに、T2が4mmに設定されてもよい。これによれば、裏糸43により緯糸42がトリムカバー30の表面側に押し出される距離を各交錯点P3の間で異なる距離に設定できる。その結果、緯糸42がトリムカバー30の表面側へ押し出されることによるトリムカバー30の凹凸形状(波形状)を複雑にすることができ、トリムカバー30の意匠性を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態では、各交錯点P3の位置で裏糸43に1本の経糸41が交錯する場合について説明したが、各交錯点P3の位置で裏糸43に2本以上の経糸41が交錯してもよい。
【0048】
次に、図4(a)及び図4(b)を参照して、第1表皮部材31と第2表皮部材32とを縫い合わせた状態について説明する。図4(a)及び図4(b)に示すように、第1表皮部材31は、第2表皮部材32との連結(縫合)側の縁部にトリムカバー30の裏面側に向かって折り曲げた折返部31aを備える。第2表皮部材32は、第1表皮部材31との連結(縫合)側の縁部にトリムカバー30の裏面側に向かって折り曲げた折返部32aを備える。
【0049】
第1表皮部材31と第2表皮部材32とは、第1表皮部材31と第2表皮部材32との表面を互いに突き合わせた状態で、折返部31a及び折返部32aが縫糸50により縫い合わされることで連結(縫合)される。なお、折返部31a及び折返部32aは、第1表皮部材31側から通される縫糸50と、第2表皮部材32側から通される縫糸50と、の2本の縫糸50を所定の間隔(ピッチ3.5±0.5mm)で交錯させることで縫い合わされる。
【0050】
縫糸50は、ポリエステル繊維から形成される糸であり、織物を形成する各糸(経糸41、緯糸42、裏糸43)よりも繊度の高い(太い)糸に設定される。これにより、縫糸50の強度を確保して縫糸50が切断されることを抑制できる。なお、各図面(図2(b)、図4(a)、及び、図4(b))では、理解を容易とするために縫糸50が裏糸43よりも細く図示される。
【0051】
縫糸50は、2本の撚糸を撚り合わせた糸同士をさらに3本でまとめて撚り合わせて(合計6本の撚糸から)形成される。縫糸50は、撚糸の1本分の繊度が167Tに設定されており、それら撚糸を撚り合わせた状態の縫糸50の繊度は、1002Tに設定される。
【0052】
なお、縫糸50は、縫い合わせる部材や縫い合わせる部分に合わせて太さの異なる糸が使用される。例えば、エアバック(図示せず)がシートバック3(図1参照)の内部に配設され、そのエアバックの膨らむ力で破断してほしい部分には、撚糸の数が3本、撚糸一本分の繊度が233T、にそれぞれ設定され、それら撚糸を撚り合わせた状態の縫糸の繊度が1002Tよりも小さい650Tの縫糸50が用いられる。
【0053】
また、縫糸50により意匠を表現するステッチ部分には、撚糸の数が6本、撚糸1本分の繊度が278T、にそれぞれ設定され、それら撚糸を撚り合わせた状態の繊度が1002Tよりも大きい1700Tの縫糸50が使用される。即ち、縫糸50は、繊度650〜1700Tの値の範囲で適宜変更して使用される。
【0054】
以上のように、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、経糸41が、繊度168T、糸密度130本/1インチ、カバーファクター1685の値にそれぞれ設定され、緯糸42が、繊度167T、糸密度105本/1インチ、カバーファクター1356の値にそれぞれ設定され、裏糸43が、繊度334T、糸密度21本/1インチ、カバーファクター383の値にそれぞれに設定され、縫糸50が、繊度1002Tの値に設定され、3.5mmのピッチで縫い合わされる。
【0055】
ここで、繻子織の織物の経糸41と緯糸42との間に単に裏糸43を配置する(経糸41又は緯糸42と織り込む)のみでは、各裏糸43の間隔が広い(裏糸43の糸密度が小さい、裏糸43のカバーファクターが小さい)と、各裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)が大きくなる可能性がある。また、各縫い目P2(縫糸50をトリムカバー30に通した部分(図4(b)参照))の間の間隔が大きいと、各縫い目P2の間に配置される各裏糸43の間の隙間Kが多くなる可能性がある。そのため、第1表皮部材31が矢印F1方向(図4(a)参照)に、第2表皮部材32が矢印F2方向(図4(a)参照)に、それぞれ引っ張られて、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が作用すると、各裏糸43の隙間Kを埋めるように、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43が縫糸50に沿って1ピッチ(隣り合う縫い目P2の間)の縫糸50の中央部P1(図4(b)参照)に寄せ集められて、縫い目P2(図4(b)参照)付近の緯糸42が少なくなることで、縫い目P2付近のトリムカバー30の表面側にシワが形成される恐れがあった。
【0056】
これに対し、本実施形態では、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、裏糸43が、繊度334T、糸密度21本/1インチ、カバーファクター383の値にそれぞれに設定され、縫糸50が、繊度1002Tの値に設定され、3.5mmのピッチで縫い合わされるので、縫糸50の1ピッチの間に配置される各裏糸43の隙間K(図4(b)参照)を少なくできる。
【0057】
よって、第1表皮部材31が矢印F1方向(図4(a)参照)に、第2表皮部材32が矢印F2方向(図4(a)参照)に、それぞれ引っ張られて、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が作用する場合に、各裏糸43の隙間Kを埋めるように1ピッチの縫糸50の中央部P1(図4(b)参照)に向かって移動する経糸41、緯糸42、及び、裏糸43の移動量を少なくできる。これにより、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43が1ピッチの縫糸50の中央部P1に寄せ集まることを抑制できる。その結果、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0058】
また、第1表皮部材31及び第2表皮部材32は、裏面に弾性部材44が配設され、その弾性部材44を介して、第1表皮部材31及び第2表皮部材32が縫糸50により縫い合わされるので、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が入力された場合に、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43が各裏糸43の隙間K(図4(b)参照)を埋めるように1ピッチの縫糸50の中央部P1(図4(b)参照)に寄せ集まることを弾性部材44の剛性により抑制できる。その結果、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0059】
さらに、繻子織の織物では、通常平織の織物に比べて織物が柔軟になるため、その分、車両用シート1の剛性を確保しにくくなるところ、弾性部材44により車両用シート1の剛性を高くして、車両用シート1のクッション性能を高めることができる。
【0060】
次いで、図5を参照して、トリムカバー30の表面のシワに関する裏糸43のカバーファクター及び縫糸50の縫い目の間隔の試験結果について説明する。図5は、裏糸43のカバーファクター及び縫糸50の縫い目の間隔に対するトリムカバー30の表面のシワの有無を図示する表である。
【0061】
図5に示す表において、左欄の「縫い目の間隔(mm)」は、縫糸50の縫い目の間隔(縫糸50の1ピッチ)の値であり、上欄の「裏糸のカバーファクター」は、裏糸43のカバーファクター(CF)の値である。なお、表中には、トリムカバー30の表面にシワが認識されなかった場合に「○」が記載される。
【0062】
本試験では、経糸41が、繊度168T、糸密度130本/1インチ、カバーファクター1685の値にそれぞれ設定される。緯糸42は、繊度167T、糸密度105本/1インチ、カバーファクター1356の値にそれぞれ設定される。
【0063】
なお、緯糸42の繊度および糸密度を通常適用する範囲(繊度84〜168T、糸密度102〜108本/1インチ)で変更した第2試験と、縫糸50の繊度を通常適用する範囲(650〜1700T)で変更した第3試験と、を行ったが図5の表と同様の試験結果が得られたので新たに図示しないものとする。
【0064】
図5に示すように、「裏糸のカバーファクター」が310に設定される場合には、「縫い目の間隔」を3.0mm以下に設定することで、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを防ぐことができる。これに対し、「裏糸のカバーファクター」が320以上(図5のFの範囲)の場合には、「縫い目の間隔」を4.0mm以下(図5のJの範囲)に設定することで、トリムカバー30の表面にシワが形成されることを防ぐことができる。これは、各裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)が小さくなることに起因する。
【0065】
即ち、「裏糸のカバーファクター」は値が大きくなるほど、隣り合う裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)が小さくなるため、相対的に1ピッチの縫糸50の間にある各裏糸43の間の隙間Kが少なくなる。これにより、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が作用する場合に、各裏糸43の隙間Kを埋めるように経糸41、緯糸42、及び、裏糸43が1ピッチの縫糸50の中央部P1(図4(b)参照)に向かって移動する移動量を少なくできる。これにより、経糸41、緯糸42、及び、裏糸43が1ピッチの縫糸50の中央部P1に寄せ集まることを抑制できる。その結果、縫い目P2(図4(b)参照)の間隔を小さくしなくてもトリムカバー30の表面にシワが形成されることを抑制できる。
【0066】
なお、「裏糸のカバーファクター」が310以下に設定される場合については、「裏糸のカバーファクター」が310に設定される場合よりも各裏糸の隙間Kが大きくなることから「縫い目の間隔」を3.0mm以下に設定する必要があることが明らかであるためその図示を省略する。
【0067】
また、裏糸43の「裏糸のカバーファクター」は、380以下(図5のGの範囲)に設定されることで、裏糸43を経糸41及び緯糸42に織り込んで緯糸42を表面側に押し出した場合に、裏糸43を配設したことで製造コストが増加しすぎることを抑制できる。即ち、裏糸43の配設コストが増加しすぎることを抑制できる。なお、裏糸43により緯糸42をトリムカバー30の表面側に押し出した場合には、裏糸43と各経糸41との各交錯点P3に向かう方向に裏糸43が引っ張られるため、裏糸43の強度を確保する必要があるところ、裏糸43の繊度を緯糸42の繊度よりも大きく(太さを太く)形成することで、裏糸43の強度を確保することができる。これにより、裏糸43の配設数を多くする必要がなくなり、製造コストが増加することを抑制できる。
【0068】
また、縫糸50の「縫い目の間隔」は、3.0mm以上(図5のHの範囲)に設定される。これにより、縫糸50を縫う工程のタクトタイムが増加しすぎることを抑制できる。
【0069】
従って、裏糸43のカバーファクターが320〜380(図5のF〜Gの間)に設定され、縫糸50の繊度が通常適用する範囲(650〜1700T(第3試験))で、縫糸50の縫い目の間隔(ピッチ)が、3.0〜4.0mm(図5のH〜Jの間)に設定されることで、トリムカバー30の表面にシワが形成されることの抑制と、縫糸50の縫い工程のタクトタイムが増加しすぎることの抑制と、を両立させることができる。また、トリムカバー30の表面の凹凸を大きくして、トリムカバー30の意匠性を確保できる。
【0070】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0071】
上記実施形態で上げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、緯糸42のカバーファクターの値は、1310(糸密度が102本/インチ)〜1400(糸密度が108本/インチ)の間で変更可能である。
【0072】
緯糸42のカバーファクターを1310(糸密度が102本/インチ)以上に設定することで、各緯糸42の配置間隔を緻密にできるので、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が入力された場合に、その力で各裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)を埋める方向に移動する緯糸42をその隣りの緯糸42に当接させて、隙間Kを埋める方向に移動する緯糸42の移動を隣の緯糸42により規制できる。その結果、各裏糸43の隙間Kに緯糸42が移動することを抑制して、縫糸50の縫い目P2(図4(b)参照)部分でトリムカバー30にシワが形成されることを抑制できる。
【0073】
一方、緯糸42のカバーファクターを1400(糸密度108本/インチ)以下に設定することで、緯糸42が密に配置されて織物表面が固くなることを抑制できる。その結果、裏糸43により緯糸42をトリムカバー30の表面側に押し出しやすくすることができ、織物表面の意匠性を確保できる。
【0074】
また、緯糸42の糸密度は、裏糸43の糸密度に対して5〜6倍の範囲で変更可能である。緯糸42の糸密度を裏糸43の糸密度に対して5倍以上に設定することで、緯糸42の剛性を低くして、緯糸42を撓ませやすくすることができる。従って、緯糸42を裏糸43によりトリムカバー30の表面側に押し出しつつ湾曲させる場合に、緯糸42が折れ曲がることを抑制できる。その結果、緯糸42の押し出しによるトリムカバー30の表面の意匠性を確保することができる。
【0075】
一方、緯糸42の糸密度を裏糸43の糸密度に対して6倍以下に設定することで、緯糸42の繊度が小さく(太さが細く)なって各裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)に緯糸42が入り込みやすくなることを抑制できる。その結果、トリムカバー30にシワが形成されることを抑制できる。
【0076】
さらに、緯糸42の繊度は、裏糸43の繊度に対して1/2〜1倍の範囲で変更可能である。緯糸42の繊度を裏糸43の繊度に対して1/2倍以上に設定することで、各裏糸43の間の隙間K(図4(b)参照)に対する緯糸42の繊度を大きくして、隙間Kに緯糸42が入り込むことを抑制しやすくできる。従って、第1表皮部材31と第2表皮部材32とが互いに離れる方向に力が作用する場合に、緯糸42が各裏糸43の隙間Kに移動することを抑制できる。その結果、縫糸50の縫い目P2(図4(b)参照)部分でトリムカバー30にシワが形成されることを抑制できる。
【0077】
一方、緯糸42の繊度を裏糸43の繊度に対して1倍以下に(緯糸42が裏糸43よりも細く)設定することで、裏糸43により緯糸42をトリムカバー30の表面側に押し出した場合に、裏糸43と各経糸41との各交錯点P3に向かう方向に裏糸43を引っ張る力が増大することを抑制できる。その結果、裏糸43が破断することを抑制できる。
【0078】
上記実施形態では、第1表皮部材31〜第4表皮部材34が、左右方向(矢印L−R方向)に分割される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1表皮部材31から第4表皮部材34が、上下方向(矢印U−D方向)に分割されるものであってもよく、第1表皮部材31及び第2表皮部材32のみが、上下方向に分割されるものであってもよい。
【0079】
上記実施形態では、縫合される2枚共に、繻子織の織物から形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、縫合される2枚のうちの1枚が繻子織の織物であればよい。例えば、第1表皮部材31(繻子織の織物)と第3表皮部材33(編物)とを連結する場合に、第1表皮部材31の各糸(経糸41、緯糸42、裏糸43、縫糸50)を上記のように構成することで、第1表皮部材31にシワが形成されることを抑制できる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用シート
30 トリムカバー
31 第1表皮部材(第1表皮部材、第2表皮部材)
32 第2表皮部材(第1表皮部材、第2表皮部材)
33 第3表皮部材(第1表皮部材、第2表皮部材)
34 第4表皮部材(第1表皮部材、第2表皮部材)
41 経糸(第1糸)
42 緯糸(第2糸)
43 裏糸
44 弾性部材
50 縫糸
P2 縫い目
図1
図2
図3
図4
図5