特許第6856489号(P6856489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6856489-インダクタ用接着剤及びインダクタ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856489
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】インダクタ用接着剤及びインダクタ
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20210329BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210329BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210329BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J11/04
   C09J11/06
   H01F27/24 Q
   H01F27/24 H
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-196583(P2017-196583)
(22)【出願日】2017年10月10日
(62)【分割の表示】特願2017-518179(P2017-518179)の分割
【原出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-31019(P2018-31019A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-68283(P2016-68283)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増井 良平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 駿介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英之
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/011383(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/084843(WO,A1)
【文献】 特開平11−273958(JP,A)
【文献】 特開昭63−164409(JP,A)
【文献】 特開2009−158712(JP,A)
【文献】 特開2011−198953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタに用いられるインダクタ用接着剤であり、
熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、無機フィラーと、スペーサ粒子とを含み、
前記スペーサ粒子が、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であり、
前記スペーサ粒子の平均粒子径が20μm以上、200μm以下であり、
前記スペーサ粒子の粒子径のCV値が、10%以下であり、
前記接着剤100重量%中、前記無機フィラーの含有量が30重量%を超え、75重量%以下である、インダクタ用接着剤。
【請求項2】
前記接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱して硬化物を得たときに、得られる硬化物のガラス転移点温度が120℃以上、210℃以下である、請求項1に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項3】
前記接着剤30mgを第1のスライドガラスに載せ、前記接着剤上に第2のスライドガラスを載せた後、前記第2のスライドガラス上に50gの重りを載せて、20分間放置したときに、平面視にて、前記スペーサ粒子の個数が2個/mm以上、1000個/mm以下である、請求項1又は2に記載に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項4】
前記熱硬化性化合物100重量部に対して、前記熱硬化剤の含有量が0.01重量部以上、10重量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項5】
前記接着剤の25℃での粘度が10Pa・s以上、150Pa・s以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項6】
前記接着剤100重量%中、前記スペーサ粒子の含有量が1重量%以上、15重量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項7】
前記接着剤100重量%中の前記無機フィラーの含有量の、前記接着剤100重量%中の前記スペーサ粒子の含有量に対する比が3以上、60以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項8】
前記無機フィラーの平均粒子径の、前記スペーサ粒子の平均粒子径に対する比が0.00005以上、0.1以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項9】
前記スペーサ粒子の10%K値が980N/mm以上、4900N/mm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項10】
インダクタにおけるフェライトコアの接着に用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤。
【請求項11】
フェライトコアと、
前記フェライトコアを接着している接着部とを備え、
前記接着部の材料が、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインダクタ用接着剤である、インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタに用いられるインダクタ用接着剤に関する。また、本発明は、上記インダクタ用接着剤を用いたインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、テレビ、及びデジタルカメラ等の電子機器には、インダクタが用いられている。特に大電流化に対応したインダクタでは、フェライトコア等のコア材が、隙間を隔てて配置されている。従来、この隙間(接着部)には、粒子を含まない接着剤や、ガラスビーズ等の粒子を含む接着剤が用いられている。しかし、粒子を含まない接着剤では、接着部の厚みを制御することが困難である。ガラスビーズ等の粒子を含む接着剤でも、接着部の厚みが均一になりにくく、更に歩留まり、生産性、及び信頼性が低くなることがある。
【0003】
上記接着剤の一例として、下記の特許文献1には、非磁性の粒子(粒体)を含む接着剤が開示されている。実施例では、上記粒子として、ガラスビーズが用いられている。
【0004】
下記の特許文献2には、CV値が10%以下であるスペーサ粒子を含む接着剤が開示されている。実施例では、上記粒子として、樹脂粒子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−235462号公報
【特許文献2】WO2010/104125A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のような従来の接着剤では、接着部の厚み(ギャップ部の間隔)を高精度に制御できないことによって、接着性が低くなることがある。さらに、接着剤を用いて形成された接着部(ギャップ部)において、耐湿性が低いことがある。
【0007】
また、熱衝撃を受ける長期信頼性試験を行った際に、フェライトコアにクラックが生じたり、インダクタンスが初期に比べて低下したりして、インダクタの性能が悪化することがある。
【0008】
従来の接着剤では、高い接着性と、高い耐湿性とを両立することが困難である。さらに、従来の接着剤では、長期信頼性が悪くなる。
【0009】
本発明の目的は、耐湿性を高くすることができ、かつ高湿下に晒されても、接着性の低下を抑えることができるインダクタ用接着剤を提供することである。また、本発明の目的は、上記インダクタ用接着剤を用いたインダクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、インダクタに用いられるインダクタ用接着剤であり、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、無機フィラーと、スペーサ粒子とを含み、前記スペーサ粒子が、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であり、前記スペーサ粒子の平均粒子径が20μm以上、200μm以下であり、前記スペーサ粒子の粒子径のCV値が、10%以下であり、前記接着剤100重量%中、前記無機フィラーの含有量が30重量%を超え、75重量%以下である、インダクタ用接着剤(以下、「インダクタ用接着剤」を「接着剤」と記載することがある)が提供される。
【0011】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱して硬化物を得たときに、得られる硬化物のガラス転移点温度が120℃以上、210℃以下である。
【0012】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤30mgを第1のスライドガラスに載せ、前記接着剤上に第2のスライドガラスを載せた後、前記第2のスライドガラス上に50gの重りを載せて、20分間放置したときに、平面視にて、前記スペーサ粒子の個数が2個/mm以上、1000個/mm以下である。
【0013】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物100重量部に対して、前記熱硬化剤の含有量が0.01重量部以上、10重量部以下である。
【0014】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤の25℃での粘度が10Pa・s以上、150Pa・s以下である。
【0015】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤100重量%中、前記スペーサ粒子の含有量が1重量%以上、15重量%以下である。
【0016】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤100重量%中の前記無機フィラーの含有量の、前記接着剤100重量%中の前記スペーサ粒子の含有量に対する比が3以上、60以下である。
【0017】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記無機フィラーの平均粒子径の、前記スペーサ粒子の平均粒子径に対する比が0.00005以上、0.1以下である。
【0018】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記スペーサ粒子の10%K値が980N/mm以上、4900N/mm以下である。
【0019】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記インダクタ用接着剤は、インダクタにおけるフェライトコアの接着に用いられる。
【0020】
本発明の広い局面によれば、フェライトコアと、前記フェライトコアを接着している接着部とを備え、前記接着部の材料が、上述したインダクタ用接着剤である、インダクタが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るインダクタ用接着剤は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、無機フィラーと、スペーサ粒子とを含み、上記スペーサ粒子が、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であり、上記スペーサ粒子の平均粒子径が20μm以上、200μm以下であり、上記スペーサ粒子の粒子径のCV値が、10%以下であり、上記接着剤100重量%中、上記無機フィラーの含有量が30重量%を超え、75重量%以下であるので、耐湿性を高くすることができ、かつ高湿下に晒されても、接着性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るインダクタ用接着剤を用いたインダクタを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
(インダクタ用接着剤)
本発明に係るインダクタ用接着剤(以下、接着剤と略記することがある)は、インダクタに用いられる。本発明に係る接着剤は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、無機フィラーと、スペーサ粒子とを含む。本発明に係る接着剤では、上記スペーサ粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である。本発明に係る接着剤では、上記スペーサ粒子の平均粒子径は20μm以上、200μm以下である。本発明に係る接着剤では、上記スペーサ粒子の粒子径のCV値は、10%以下である。本発明に係る接着剤100重量%中、上記無機フィラーの含有量は30重量%を超え、75重量%以下である。
【0025】
本発明では、上記の構成が備えられているので、耐湿性を高くすることができる。例えば、接着剤により形成された接着部が吸水しにくく、高湿下に晒されても、接着性の低下を抑えることができる。さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、接着部の厚みの均一性を高めることができ、優れた接着性を発現することができ、インダクタンスのばらつきを抑えることができる。さらに、本発明では、耐熱衝撃性を高めることができ、インダクタの耐熱衝撃性(長期信頼性)を高めることができる。インダクタが高温下又は低温下に晒されたり、冷熱サイクル下に晒されたりしても、インダクタンスの変化を小さくすることができる。
【0026】
さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、接着剤の過度の濡れ拡がりを抑えることができ、接着剤の塗布性も高くなる。
【0027】
上記スペーサ粒子の平均粒子径は、20μm以上、200μm以下である。接着性をより一層高める観点からは、上記スペーサ粒子の平均粒子径は、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下である。
【0028】
接着性をより一層高める観点からは、上記無機フィラーの平均粒子径の、上記スペーサ粒子の平均粒子径に対する比(無機フィラーの平均粒子径/スペーサ粒子の平均粒子径)は好ましくは0.1以下、より好ましくは0.01以下である。耐湿性をより一層高める観点からは、上記比(無機フィラーの平均粒子径/スペーサ粒子の平均粒子径)は好ましくは0.00005以上、より好ましくは0.0005以上である。
【0029】
上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。上記無機フィラー及び上記スペーサ粒子の平均粒子径は、例えば、任意の無機フィラー50個又は任意のスペーサ粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0030】
上記スペーサ粒子の粒子径のCV値は、10%以下である。接着性をより一層高める観点からは、上記スペーサ粒子の粒子径のCV値は、好ましくは1%以上であり、好ましくは5%以下である。
【0031】
上記CV値(変動係数)は下記式で表される。
【0032】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:スペーサ粒子の粒子径の標準偏差
Dn:スペーサ粒子の粒子径の平均値
【0033】
塗布性を効果的に高め、接着部の厚みの均一性をより一層高め、接着性をより一層高め、かつボイドの発生をより一層抑える観点からは、上記接着剤の25℃での粘度は、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは15Pa・s以上であり、好ましくは150Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下、更に好ましくは70Pa・s以下、特に好ましくは40Pa・s以下、最も好ましくは35Pa・s以下である。
【0034】
上記粘度(η25)は、例えば、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)等を用いて、25℃及び5rpmの条件、及びスパイラル粘度計(マルコム社製「PCU−02V」)を用いて、25℃及び10rpmの条件で測定可能である。接着剤中のスペーサ粒子の粒子径が20μm以下である場合には、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)が好適に用いられる。接着剤中のスペーサ粒子の粒子径が20μmを超える場合には、スパイラル粘度計(マルコム社製「PCU−02V」)が好適に用いられる。
【0035】
耐熱衝撃性をより一層高める観点からは、上記接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱して硬化物を得たときに、得られる硬化物のガラス転移点温度は好ましくは120℃以上、好ましくは210℃以下である。なお、本発明に係る接着剤を硬化させる際に、120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱する条件以外の条件で加熱してもよい。
【0036】
耐湿性、ギャップ制御性、インダクタンスのバラツキ及び耐熱衝撃性の各性能を効果的に高める観点からは、上記接着剤30mgを第1のスライドガラスに載せ、上記接着剤上に第2のスライドガラスを載せた後、上記第2のスライドガラス上に50gの重りを載せて、20分間放置したときに、平面視にて、上記スペーサ粒子の個数は好ましくは2個/mm以上、好ましくは1000個/mm以下である。この平面視での観察では、第1,第2のスライドガラス間の接着剤の観察が行われる。
【0037】
耐湿性、ギャップ制御性、インダクタンスのバラツキ及び耐熱衝撃性の各性能を効果的に高める観点から、上記接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱して硬化物を得たときに、得られる硬化物の線膨張率は、好ましくは60ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。
【0038】
上記接着剤は、インダクタにおけるフェライトコアの接着に好適に用いられる。
【0039】
以下、上記インダクタ用接着剤の他の詳細を説明する。
【0040】
熱硬化性化合物:
上記接着剤に含まれる熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物は、加熱により硬化可能な化合物である。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
耐湿性及び接着性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0042】
耐湿性、接着性及び耐熱性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。
【0043】
上記芳香族骨格としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。耐湿性、接着性及び耐熱性をより一層高める観点からは、上記芳香族骨格は、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格又はフルオレン骨格であることが好ましく、ナフタレン骨格であることがより好ましい。上記芳香族骨格は、ベンゼン骨格又はナフタレン骨格であってもよい。耐湿性、接着性及び耐熱性をより一層高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、ナフタレン骨格を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0044】
耐湿性及び接着性をより一層高める観点からは、上記接着剤100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。
【0045】
耐湿性及び接着性をより一層高める観点からは、上記接着剤100重量%中、上記ナフタレン骨格を有する熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは15重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは30重量%以下である。
【0046】
熱硬化剤:
上記熱硬化剤は、上記熱硬化性化合物を熱硬化させる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、チオール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、熱カチオン開始剤及び熱ラジカル発生剤等がある。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0048】
上記チオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0049】
本発明の効果が効果的に発現することから、上記チオール硬化剤の溶解度パラメーターは、好ましくは9.5以上であり、好ましくは12以下である。上記溶解度パラメーターは、Fedors法にて計算される。例えば、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネートの溶解度パラメーターは9.6、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネートの溶解度パラメーターは11.4である。
【0050】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0051】
上記熱カチオン開始剤としては、ヨードニウム系カチオン硬化剤、オキソニウム系カチオン硬化剤及びスルホニウム系カチオン硬化剤等が挙げられる。上記ヨードニウム系カチオン硬化剤としては、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。上記オキソニウム系カチオン硬化剤としては、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート等が挙げられる。上記スルホニウム系カチオン硬化剤としては、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0052】
上記熱ラジカル発生剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び有機過酸化物等が挙げられる。上記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド及びメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。
【0053】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下、特に好ましくは50重量部以下、最も好ましくは10重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、接着剤を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ接着部の耐熱性がより一層高くなる。
【0054】
スペーサ粒子:
スペーサ粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。本発明では、上記スペーサ粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である。上記スペーサ粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。上記コアが有機コアであってもよい。上記シェルが無機シェルであってもよい。接着部に応力が加わったときに、応力を緩和でき、接着性を高く維持する観点からは、金属粒子を除くスペーサ粒子が好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子がより好ましい。本発明の効果により一層優れることから、本発明では、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子が用いられる。
【0055】
上記スペーサ粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。上記スペーサ粒子が樹脂粒子であると、接着部に応力が加わったときに、応力を緩和でき、接着性を高く維持することができる。
【0056】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。スペーサ粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0057】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0058】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0059】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0060】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0061】
上記スペーサ粒子が金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、スペーサ粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0062】
接着性及び接着信頼性をより一層高める観点からは、上記スペーサ粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は、好ましくは980N/mm以上、より好ましくは1200N/mm以上であり、好ましくは4900N/mm以下、より好ましくは3000N/mm以下である。
【0063】
上記スペーサ粒子の上記10%K値は、以下のようにして測定できる。
【0064】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、最大試験荷重90mNを30秒かけて負荷する条件下でスペーサ粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
【0065】
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:スペーサ粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:スペーサ粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:スペーサ粒子の半径(mm)
【0066】
耐湿性及び接着性をより一層高め、かつ接着部の厚みの均一性をより一層高める観点からは、上記接着剤100重量%中、上記スペーサ粒子の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは5重量%を超え、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。
【0067】
無機フィラー:
上記無機フィラーの材料としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0068】
耐湿性をより一層高める観点からは、上記無機フィラーは、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、接着部の熱膨張率がより一層低くなり、接着信頼性がより一層高くなる。
【0069】
耐湿性をより一層高める観点からは、上記無機フィラーは、カップリング剤による表面処理物であることが好ましい。
【0070】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。接着性をより一層高める観点からは、上記無機フィラーは、シランカップリング剤による表面処理物であることが好ましい。
【0071】
上記シランカップリング剤としては、フェニルシラン、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。耐湿性をより一層高める観点からは、フェニルシランが好ましい。
【0072】
上記接着剤100重量%中、上記無機フィラーの含有量は30重量%を超え、75重量%以下である。耐湿性をより一層高める観点からは、上記接着剤100重量%中、上記無機フィラーの含有量は好ましくは35重量%を超え、より好ましくは40重量%以上である。接着性をより一層高める観点からは、上記無機フィラーの含有量は好ましくは70重量%以下、より好ましくは65重量%以下、更に好ましくは60重量%以下である。
【0073】
上記接着剤100重量%中、上記無機フィラーの含有量が35重量%を超えると、耐湿性がかなり高くなる。
【0074】
接着性及び耐湿性の双方をバランスよく高める観点からは、上記接着剤100重量%中の上記無機フィラーの含有量の、上記接着剤100重量%中の上記スペーサ粒子の含有量に対する比(無機フィラーの含有量/スペーサ粒子の含有量)は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは60以下、より好ましくは30以下である。
【0075】
他の成分:
上記接着剤は、光硬化性成分を含んでいてもよく、光硬化性化合物と、光重合開始剤とを含んでいてもよい。
【0076】
接着性をより一層高める観点からは、上記接着剤は、カップリング剤を含むことが好ましい。
【0077】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。接着性をより一層高める観点からは、上記接着剤は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0078】
上記シランカップリング剤としては、フェニルシラン、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0079】
接着性をより一層高める観点からは、上記接着剤100重量%中、上記カップリング剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0080】
塗布性を効果的に高め、接着部の厚みの均一性をより一層高め、接着性をより一層高め、かつボイドの発生をより一層抑える観点からは、上記接着剤は、チキソトロピー付与剤を含むことが好ましい。
【0081】
上記チキソトロピー付与剤としては、金属粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミニウム等の無機粒子等が挙げられる。
【0082】
塗布性を効果的に高め、接着部の厚みの均一性をより一層高め、接着性をより一層高め、かつボイドの発生をより一層抑える観点からは、上記接着剤100重量%中、上記チキソトロピー付与剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0083】
上記接着剤は、必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0084】
(インダクタ)
本発明に係るインダクタは、フェライトコアと、上記フェライトコアを接着している接着部とを備える。本発明に係るインダクタでは、上接着部の材料が、上述したインダクタ用接着剤である。上記接着部は、上記インダクタ用接着剤の硬化物である。上記接着部は、上記インダクタ用接着剤を硬化させることにより形成される。
【0085】
上記接着部の対向し合う両側の表面上に、上記フェライトコアが配置されていることが好ましい。上記接着部により、上記フェライトコアに隙間があることが好ましい。
【0086】
図1は、本発明の一実施形態に係るインダクタ用接着剤を用いたインダクタを模式的に示す断面図である。
【0087】
図1に示すインダクタ1は、フェライトコア11と、フェライトコア12と、接着部13とを備える。インダクタ1は、複数のフェライトコア(フェライトコア11及びフェライトコア12)を含む。インダクタ1は、トランス部品用のコイル鉄芯を含む。フェライトコア11は、E型のフェライトコアである。フェライトコア12は、I型のファライトコアである。E型のフェライトコア11の3つの凸部のうち、外側の2つの凸部の先端と、I型のフェライトコア12の側面とが対向しており、隙間を隔てている。この隙間に、接着部13が配置されている。この接着部13の材料が、上述したインダクタ用接着剤である。本実施形態では、接着部13の厚みは、接着剤13に含まれるスペーサ粒子の粒子径と同等である。スペーサ粒子は、フェライトコア11とフェライトコア12との双方に接している。
【0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0089】
以下の材料を用意した。
【0090】
熱硬化性化合物1:レゾルシノール型エポキシ化合物、共栄社化学製「エポライトTDG−LC」
熱硬化性化合物2:ビスフェノールF型エポキシ化合物、DIC製「EXA−830CRP」
熱硬化性化合物3:ナフタレン型エポキシ化合物、DIC社製「HP−4032D」
熱硬化性化合物4:ビスフェノールA型エポキシ化合物、DIC製「EXA−850CRP」
熱硬化性化合物5:ナフタレン型エポキシ化合物、DIC社製「HP−4710」
熱硬化性化合物6:フルオレン型エポキシ化合物、大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG−100」
【0091】
熱硬化剤1:イミダゾール硬化促進剤、日本曹達社製「TEP−2E4MZ」
熱硬化剤2:イミダゾール硬化促進剤、四国化成工業社製「2MZA−PW」
【0092】
カップリング剤:シランカップリング剤、信越化学工業社製「KBM−573」
【0093】
チキソトロピー付与剤:トクヤマ社製「PM−20L」
【0094】
無機フィラー1:シリカ、平均粒子径1μm、アドマテックス社製「SE4050−SPE」
無機フィラー2:シリカ、平均粒子径3.8μm、龍森社製「EXR−4」
【0095】
スペーサ1:平均粒子径20μm、CV値5%、10%K値3600N/mm、積水化学工業社製「SP−220」、樹脂粒子
スペーサ2:平均粒子径150μm、CV値7%、10%K値2000N/mm、積水化学工業社製「SP−L150」、樹脂粒子
スペーサ3:平均粒子径50μm、CV値5%、10%K値3800N/mm、積水化学工業社製「SP−250」、樹脂粒子
スペーサ4:平均粒子径200μm、CV値7%、10%K値3900N/mm、積水化学工業社製「GS−L200」、樹脂粒子
【0096】
(実施例1)
(1)インダクタ用接着剤の調製
表1の組成に従って、スペーサ以外の各材料を、自転公転ミキサーにて撹拌混合することで、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物に、スペーサ粒子を表1の組成に従って配合し、自転公転ミキサーを用いて撹拌混合することでインダクタ用接着剤を作製した。
【0097】
(2)インダクタの作製
得られたインダクタ用接着剤を10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)に充填し、シリンジの先端に精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端内径:スペーサ粒子径が100μm未満の場合、0.3mm、スペーサの粒子径が100μm以上の場合 0.6mm)を取り付け、ディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製「SHOT MASTER300」)を用いて、I型コアに塗布し、E型コアと貼り合せた後、リフロー炉にて硬化させ、インダクタを得た。
【0098】
(3)耐湿性評価用サンプルの作製
得られたインダクタ用接着剤を10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)に充填し、シリンジの先端に精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端内径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製「SHOT MASTER300」)を用いて、縦3mm横3mm厚み0.3mmのインダクタと同質のフェライト片5個と縦20mm横20mm厚み0.3mmのインダクタと同質のフェライト片1個とを貼り合わせた後、リフロー炉にて硬化させ、耐湿性評価用サンプルを得た。
【0099】
(実施例2〜16、比較例1、2)
配合成分の種類及び配合量を表1,2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、インダクタ用接着剤、インダクタ、及び耐湿性評価用サンプルを得た。
【0100】
(評価)
(1)粘度
接着剤中のスペーサ粒子の粒子径が20μm以下である場合には、接着剤の25℃での粘度(η25)を、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、25℃及び5rpmの条件で測定した。
【0101】
接着剤中のスペーサ粒子の粒子径が20μmを超える場合には、接着剤の25℃での粘度(η25)を、スパイラル粘度計(マルコム社製「PCU−02V」)を用いて、25℃及び10rpmの条件で測定した。
【0102】
(2)塗布性
塗布性の評価は、ディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製「SHOT MASTER300」)を用いて行った。塗布条件は、精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、ノズル先端内径0.3mm)、吐出条件(温度25℃、吐出圧0.3Mpa)にて固定し、ガラス基板上に塗布することで、塗布性を評価した。塗布性を下記の基準で判定した。
【0103】
[塗布性の判定基準]
○○:かすれやダレが無く塗布できた
○:わずかにかすれやダレが生じた
△:塗布切れはないが大きなかすれやダレが生じた
×:塗布切れが生じるか、又は全く塗布できなかった
【0104】
(3)粒子分散性(個/mm
接着剤30mgを第1のスライドガラスに載せ、接着剤上に第2のスライドガラスを載せた後、上記第2のスライドガラス上に50gの重りを載せて、20分間放置した。放置後に、光学顕微鏡を用いて、平面視にて、1mm当たりのスペーサ粒子の個数を測定した。
【0105】
(4)ガラス転移点温度(Tg)の測定
接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱し、硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物のtanδを、粘弾性測定機(アイティー計測制御社製)を用いて、昇温速度10℃/分、及びつかみ幅20mm及び5Hzの条件で測定した。Tanδのピーク時の温度をガラス転移温度とした。
【0106】
(5)線膨張率
接着剤を120℃で20分間加熱した後、170℃で15分間加熱し、硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物の線膨張率をTMA/SS6000(Seiko Instruments社製)を用いて、昇温速度5℃/minで室温(25℃)から250℃まで加熱する条件で測定した。
【0107】
(6)耐湿性
得られた耐湿性評価用サンプルを85℃、湿度85%のオーブンに24時間放置したサンプルと、得られた耐湿性評価用サンプルを常温で放置したサンプルとの接着力を測定した。Dage社製のダイシェアテスター「Dage series 4000」にてダイシェア接着力を測定することで、耐湿性を評価した。耐湿性を下記の基準で判定した。
【0108】
[耐湿性の判定基準]
○○:高温高湿下で放置したサンプルの接着力が、常温で放置したサンプルの接着力の90%以上
○:高温高湿下で放置したサンプルの接着力が、常温で放置したサンプルの接着力の80%以上90%未満
△:高温高湿下で放置したサンプルの接着力が、常温で放置したサンプルの接着力の70%以上80%未満
×:高温高湿下で放置したサンプルの接着力が、常温で放置したサンプルの接着力の70%未満
【0109】
(7)ギャップ制御性
得られたインダクタにおいて、レーザー変位計(KEYENCE社製「KS−1100」)を用いて、硬化後のギャップ間距離及びギャップ間距離のバラツキ3σ(σ;標準偏差)を測定した。ギャップ間距離のバラツキ3σ/硬化後のギャップ間距離の値Xから、ギャップ制御性を評価した。ギャップ制御性を下記の基準で判定した。
【0110】
[ギャップ制御性の判定基準]
○○:値Xが0.1未満
○:値Xが0.1以上0.2未満
△:値Xが0.2以上0.4未満
×:値Xが0.4以上
【0111】
(8)インダクタンスのバラツキ
得られたインダクタ20個のインダクタンスを測定し、バラツキを評価した。インダクタンスのバラツキを下記の基準で判定した。
【0112】
[インダクタンスのバラツキの判定基準]
○○:インダクタンスのCV値が5%未満
○:インダクタンスのCV値が5%以上10%未満
△:インダクタンスのCV値が10%以上15%未満
×:インダクタンスのCV値が15%以上
【0113】
(9)耐熱衝撃性1(長期信頼性)
得られたインダクタを高温125℃で30分、低温−40℃で30分の温度変化を500サイクル与える環境下に放置した。その後、インダクタンスの変化率を測定した。特性変化率は、熱衝撃により接着面に剥離が生じたり、ギャップ間距離に変化が生じたことによるインダクタンスのバラツキ割合を意味する。
【0114】
[耐熱衝撃性1の判定基準]
○○:インダクタンスの初期値からの変化率が10%未満
○:インダクタンスの初期値からの変化率が10%以上20%未満
△:インダクタンスの初期値からの変化率が20%以上30%未満
×:インダクタンスの初期値からの変化率が30%以上
【0115】
(10)耐熱衝撃性2(長期信頼性)
得られたインダクタを高温150℃で30分、低温−50℃で30分の温度変化を500サイクル与える環境下に放置した。その後、インダクタンスの変化率を測定した。
【0116】
[耐熱衝撃性2の判定基準]
○○:インダクタンスの初期値からの変化率が10%未満
○:インダクタンスの初期値からの変化率が10%以上20%未満
△:インダクタンスの初期値からの変化率が20%以上30%未満
×:インダクタンスの初期値からの変化率が30%以上
【0117】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【符号の説明】
【0120】
1…インダクタ
11…フェライトコア(E型)
12…フェライトコア(I型)
13…接着部
図1