(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ワイヤハーネスは、複数の電線を金属製パイプに挿通させ、ブラケットなどによって車体の複数箇所に固定されて車体に配索される。このため、車体への配索に手間を要し、配索作業性の改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配索作業性に優れたワイヤハーネス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記(1)〜(2)
を特徴としている。
(1) 車体に配索されるワイヤハーネスであって、
電線と、前記電線が挿通された状態で屈曲する金属製のパイプと、前記車体に組み付けられることになる配管と、前記パイプと前記配管とを共締めする固定部材と、を備え、
前記パイプは、
屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有し、当該パイプの延在方向における複数箇所において前記配管の屈曲に合わせて同じ向きに屈曲する複数の屈曲部を有し、且つ、前記複数の前記屈曲部同士の間において前記配管の延びる形状に合わせて延びることにより、前記配管に沿う形状を有し、
当該ワイヤハーネスは、
前記パイプと前記配管とが前記固定部材によって束ねられて密接するように一体化した状態にて前記車体に一括して組み付け可能な組立体であ
り、
前記固定部材は、前記パイプ及び前記配管の周囲を一括して覆う、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
(2) 前記パイプを前記車体の導電部に固定する導電性を有する結束部材を、更に備え
る、
ことを特徴とする(1)に記載のワイヤハーネス。
【0007】
上記(1)の構成のワイヤハーネスによれば、車体に組み付けられる配管に沿わせて容易に一体化させることができる。そして、この配管に一体化させた状態で配管を車体に組み付けることで、車体に対して容易に配索することができる。
また、パイプが屈曲されて配管に沿う形状に形成され、その形状を自ら保持しているので、少ない固定箇所で配管へ固定することができ、固定部材の数量を削減して低コスト化及び固定作業性の向上が図れる。
しかも、パイプが屈曲後の形状を自ら保持可能な高い剛性を有するので、配管の剛性を下げることができ、配管のコストを抑えることができる。
また、金属製のパイプによって電線が覆われることになるため、電線に対して適正にシールド機能を付与できる。具体的には、電線から放たれる電磁ノイズを遮断しつつ、電線が車両の床下に配索される場合における飛び石などによる外部からの衝撃から電線を保護できる。
更に、電線が挿通されたパイプが固定部材によって配管に固定されて一体化されているので、配管を車体に組み付けると同時にワイヤハーネスの配索作業が完了する。したがって、ワイヤハーネスの配索作業性を大幅に向上させることができる。
上記(
2)の構成のワイヤハーネスによれば、導電性を有する結束部材によってパイプを車体の導電部に固定することで、パイプが遮断した電磁ノイズを、パイプ自身を通過させた後に結束部材を経て車体の導電部に向けて放出できる。よって、例えば、コネクタ等に電磁ノイズの放出のための専用の機構(アース機構・シェル機構)を設ける必要がない。その結果、ワイヤハーネスの部品点数を削減でき、ワイヤハーネスの製造を容易化しつつ低コスト化できる。
【0008】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、下
記(3)を特徴としている。
(3) 前記ワイヤハーネスは、
電線と、前記電線が挿通された状態で屈曲する金属製のパイプと、前記車体に組み付けられることになる配管と、前記パイプと前記配管とを共締めする固定部材と、を有し、
当該製造方法は、
電線が挿通された金属製のパイプを屈曲させる工程であって、前記パイプの延在方向における複数箇所において前記配管の屈曲に合わせて同じ向きに屈曲する複数の屈曲部を設けることにより、前記配管に沿う形状を有するように、前記パイプを屈曲させる工程と、
屈曲させた前記パイプと前記配管とを前記固定部材によって共締めして密接するように一体化
し且つ前記固定部材によって前記パイプ及び前記配管の周囲を一括して覆う工程と、を備える、
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。
【0009】
上記(
3)の構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、金属製のパイプによって電線が覆われてシールド機能が付与され、しかも、容易に車両へ配索することが可能なワイヤハーネスを得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配索作業性に優れたワイヤハーネス及びその製造方法を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス(以下「ワイヤハーネス100」という。)をハイブリッド車両20に配索した状態を示している。以下、ハイブリッド車両20は、単に「車両20」とも称呼される。
【0015】
車両20は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、車体21の後方に配置されたバッテリ22、車体21の前方に配置されたパワー・コントロール・ユニット23、発電電動機(MG)24、及び、内燃機関25を備えている。
【0016】
バッテリ22とパワー・コントロール・ユニット23とは、シールドパイプ(パイプ)10の内側に挿通された電線(後述する電線16。
図3を参照。)によって電力を授受可能であるように接続されている。換言すると、バッテリ22とパワー・コントロール・ユニット23とは、シールドパイプ10に通された電線によって接続されている。
【0017】
車両20は、マスタシリンダ2から延びる金属製のブレーキ配管(配管)1を有している。ブレーキ配管1は、車両20の前後方向に沿って車体21に組付けられ、車両20の各車輪4に設けられたディスクブレーキのキャリパ3に繋げられている。ブレーキ配管1には、ブレーキオイルが充填されており、各キャリパ3には、運転者がブレーキ操作することで、ブレーキオイルによって油圧が付与される。これにより、各車輪4が制動される。ブレーキ配管1は、その中間部が車体21の床下を通過するように車体21に組付けられており、シールドパイプ10は、このブレーキ配管1に一体化されて車両20に配索されている。
【0018】
図2は、本実施形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
図2に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス100は、ブレーキオイルが通される2本のブレーキ配管1と、それぞれ電線が通された2本のシールドパイプ10とを有している。
【0019】
2本のブレーキ配管1及び2本のシールドパイプ10は、それぞれ互いに並列にされている。ブレーキ配管1は、車体21に沿わせるために、複数箇所に屈曲部1Aを有した立体形状とされている。シールドパイプ10は、ブレーキ配管1の屈曲部1Aと同一箇所に屈曲部10Aを有した立体形状とされている。これにより、シールドパイプ10は、立体形状とされたブレーキ配管1に沿う形状に形成されている。
【0020】
ブレーキ配管1と、このブレーキ配管1に沿わされたシールドパイプ10とは、複数のクランプやクリップ等の固定部材40によって共締めされている。固定部材40は、ブレーキ配管1及びシールドパイプ10の長手方向に間隔をあけた複数箇所に取り付けられている。これにより、固定部材40によって一体化されたブレーキ配管1とシールドパイプ10とからワイヤハーネス100が構成されている。
【0021】
図3は、ワイヤハーネスに用いられる電線およびシールドパイプの概略斜視図である。
図4は、ワイヤハーネスの結束部材による固定構造を説明する図であって、
図4(a)は、固定箇所の斜視図、
図4(b)は
図4(a)におけるA−A断面図である。
【0022】
図3に示すように、シールドパイプ10は、電線16を内部に挿通可能な管形状を有する金属製のパイプである。シールドパイプ10の内側(中空部)には、電線16が挿通されている。電線16は、複数の導体16a及び導体16aを覆う絶縁体16bを有している。このシールドパイプ10は、屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有している。
【0023】
シールドパイプ10を構成する金属材料は、特に制限されず、アルミニウム、アルミニウム合金あるいはステンレス等が用いられ得る。シールドパイプ10としては、アルミニウムやアルミニウム合金を用いることで軽量化が図れる。なお、シールドパイプ10として、ステンレスを用いれば、透磁率の高さに起因して電磁遮蔽の効果を高めることができ、しかも、耐蝕性を高めることができる。
【0024】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、2本のシールドパイプ10の各々の内部(中空部)には、電線16が1本ずつ挿通されている。換言すると、2本の電線16の各々と一対一に対応するように、2本のシールドパイプ10が設けられている。このようにシールドパイプ10に電線16が1本ずつ挿通されることにより、2本の電線16が互いに接触しないように隔離される。このため、電線16間における熱干渉を抑制できる。なお、ワイヤハーネス100が有する電線16及びシールドパイプ10は、必ずしも2本である必要はなく、ワイヤハーネス100の回路構成に応じて3本以上であってもよい。
【0025】
2本のシールドパイプ10は、所定位置に設けられた導電性を有する結束部材15により、束ねられながら車体21のアース対象(導電部)Eに固定されている。結束部材15は、シールドパイプ10が遮蔽した電磁ノイズを外部に放出するためのアース部材として機能する。具体的には、結束部材15が、シールドパイプ10と車体21のアース対象Eとの双方に当接するような形状を有していれば、結束部材15を2本のシールドパイプ10と共にボルトBによってアース対象Eに締結することにより、2本のシールドパイプ10を束ねながら確実に接地(アース)させることができる。なお、シールドパイプ10はその全体が金属によって形成されているため、
図2に例示した位置だけでなく、任意の位置において接地を図ることができる。
【0026】
次に、上記構成のワイヤハーネス100の製造方法について説明する。
図5は、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法を説明する図であって、
図5(a)から
図5(d)は、それぞれの工程における概略斜視図である。
【0027】
図5(a)に示すように、予め電線16を挿通させた直管形状の2本のシールドパイプ10を用意する。
【0028】
図5(b)に示すように、並列に配置した2本のシールドパイプ10を、車両20に組み付けるブレーキ配管1に沿う形状に形成する。具体的には、予め決められた箇所でシールドパイプ10を屈曲させて屈曲部10Aを形成し、ブレーキ配管1に沿わせることが可能な立体形状に形成する。
【0029】
屈曲部10Aを有するシールドパイプ10の形成の仕方としては、例えば、直管形状の金属製のパイプを、ベンダー等によって屈曲させる機械的な成形手法が用いられ得る。また、直管形状の金属製のパイプを、屈曲部10Aに対応した形状を有する金型内に固定し、パイプの内側(中空部)から金型に向けて液圧を加えて屈曲部10Aを成形する手法(いわゆる液圧成形法)で形成してもよい。
【0030】
図5(c)に示すように、予め屈曲部1Aを有する立体形状に形成されているブレーキ配管1に対して、
図5(d)に示すように、ブレーキ配管1に沿う立体形状に形成したシールドパイプ10を沿わせて位置合わせする。
【0031】
その後、ブレーキ配管1とシールドパイプ10とを複数の固定部材40によって共締めして一体化させ、ブレーキ配管1とシールドパイプ10とからなるワイヤハーネス100とする(
図2参照)。
【0032】
ここで、参考例に係るワイヤハーネスについて説明する。
図6は、参考例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【0033】
図6に示すように、参考例に係るワイヤハーネス50では、ポリアミド(PA)やポリプロピレン(PP)などの合成樹脂から形成された外装部材60に電線16が挿通されている。このワイヤハーネス50では、外装部材60の剛性が低いため、屈曲した立体形状を維持することが困難である。このため、このワイヤハーネス50では、それぞれの屈曲箇所の近傍を固定部材40によって固定しなければならず、部品点数の増大によってコストが嵩み、しかも、固定作業に手間を要する。また、参考例では、シールド機能を持たせるために、電線16として、例えば、外周を覆う編組を備えたシールド電線を用い、さらに、端部のコネクタ等でアースを確保することとなる。
【0034】
本実施形態に係るワイヤハーネス100によれば、屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有するシールドパイプ10が、電線16が挿通された状態で屈曲され、車体21に組み付けられるブレーキ配管1に沿う形状に形成されているので、ブレーキ配管1に沿わせて容易に一体化させることができる。そして、このブレーキ配管1に一体化させた構造とすることで、ブレーキ配管1を車体21に組み付けると同時にワイヤハーネス100の配索作業が完了する。したがって、ワイヤハーネス100の配索作業性を大幅に向上させることができる。
【0035】
しかも、シールドパイプ10が屈曲されてブレーキ配管1に沿う形状に形成され、その形状を自ら保持しているので、少ない固定箇所でブレーキ配管1へ固定することができ、固定部材40の数量を削減して低コスト化及び固定作業性の向上を図ることができる。
【0036】
また、シールドパイプ10が屈曲後の形状を自ら保持可能な高い剛性を有するので、ブレーキ配管1の剛性を下げることができ、ブレーキ配管1のコストを抑えることができる。
【0037】
さらに、金属製のシールドパイプ10によって電線16が覆われることになるため、電線16に対して適正にシールド機能を付与できる。具体的には、電線16から放たれる電磁ノイズを遮断しつつ、電線16が車両20の床下に配索される場合における飛び石などによる外部からの衝撃から電線16を保護できる。
【0038】
また、導電性を有する結束部材15によってシールドパイプ10を車体21の導電部からなるアース対象Eに固定することで、シールドパイプ10が遮断した電磁ノイズを、シールドパイプ10自身を通過させた後に結束部材15を経て車体21のアース対象Eに向けて放出できる。よって、例えば、コネクタ等に電磁ノイズの放出のための専用の機構(アース機構・シェル機構)を設ける必要がない。その結果、ワイヤハーネス100の部品点数を削減でき、ワイヤハーネス100の製造を容易化しつつ低コスト化できる。
【0039】
また、本実施形態に係るワイヤハーネス100の製造方法によれば、電線16が挿通された金属製のシールドパイプ10を屈曲させ、車体21に組み付けられるブレーキ配管1に沿う形状に形成し、屈曲させたシールドパイプ10を、車体21への組付け前のブレーキ配管1に沿わせ、長手方向へ間隔をあけて固定部材40によってブレーキ配管1とシールドパイプ10とを共締めして一体化する。これにより、金属製のシールドパイプ10によって電線16が覆われてシールド機能が付与され、しかも、容易に車両20へ配索することが可能なワイヤハーネス100を得ることができる。
【0040】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
例えば、シールドパイプ10を沿わせる配管としては、ブレーキ配管1に限らず、冷却水等を通す配管でもよい。
【0042】
また、シールドパイプ10自体が高い剛性を有するので、シールドパイプ10を沿わせる配管としては、金属製に代えて剛性の低い樹脂製としてもよい。
【0043】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネス及びその製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車体(21)に配索されるワイヤハーネス(100)であって、
電線(16)と、
前記電線(16)が挿通された金属製のパイプ(シールドパイプ10)と、
を備え、
前記パイプ(シールドパイプ10)は、
屈曲後の形状を自ら保持可能な剛性を有し、
前記電線(16)が挿通された状態で屈曲され、前記車体(21)に組み付けられる配管(ブレーキ配管1)に沿う形状に形成されている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
[2] 前記配管(ブレーキ配管1)をさらに有し、
前記電線(16)が挿通された前記パイプ(シールドパイプ10)が前記配管(ブレーキ配管1)に沿わされ、長手方向へ間隔をあけて固定部材(40)によって前記配管(ブレーキ配管1)と前記パイプ(シールドパイプ10)とが共締めされて一体化されている
ことを特徴とする[1]に記載のワイヤハーネス。
[3] 前記パイプ(シールドパイプ10)を前記車体(21)の導電部(アース対象E)に固定する導電性を有する結束部材(15)を、更に備える
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のワイヤハーネス。
[4] 車体(21)に配索されるワイヤハーネス(100)の製造方法であって、
電線(16)が挿通された金属製のパイプ(シールドパイプ10)を屈曲させ、前記車体(21)に組み付けられる配管(ブレーキ配管1)に沿う形状に形成し、
屈曲させた前記パイプ(シールドパイプ10)を、前記車体(21)への組付け前の前記配管(ブレーキ配管1)に沿わせ、
長手方向へ間隔をあけて固定部材(40)によって前記配管(ブレーキ配管1)と前記パイプ(シールドパイプ10)とを共締めして一体化する
ことを特徴とするワイヤハーネスの製造方法。