【文献】
Hisayoshi Sugiyama,Packet Switched Power Network with Decentralized Control Based on Synchronized QoS Routing,ICTA 2012,米国,2012年11月13日,pp.147-152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
<暗電流による電力消費を防止するための技術>
<システムの構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−1の構成例を
図1に示す。
図1に示した電力供給システム10−1は、車両において、車載バッテリ等の電源電力をワイヤハーネス等の伝送路を経由して負荷となる各種電装品に供給するために利用される。また、この電力供給システム10−1は、例えば特許文献2などにより公知の電力パケット伝送技術を利用できる。
【0019】
図1に示した電力供給システム10−1は、電力パケットミキサ11、および電力パケットルータ(ルータA)12を備えている。また、電力パケットミキサ11の電力パケット出力ポート11cと、電力パケットルータ12の電力パケット入力ポート12aとの間は、ワイヤハーネスとして構成される電力伝送路16Aで接続されている。
【0020】
また、電力パケットミキサ11の各電力入力ポート11a、11bは、それぞれ電力伝送路16B、16Cを経由して車載バッテリ(電源1)13A、(電源2)13Bと接続されている。また、電力パケットルータ12の各電力出力ポート12b、12c、12dは、それぞれ電力伝送路16D、16E、16Fを経由して負荷14A、14B、14Cと接続されている。これらの負荷14A〜14Cは、車両に搭載される様々な電装品に相当する。
【0021】
ここで、電力パケットミキサ11の入力に接続する車載バッテリ13A、13B等の複数の電源については、電圧が同一であってもよいし、電圧が互いに異なるものであってもよい。電圧が異なる場合の構成例を
図25に示す。
図25に示した例では、車載バッテリ13Aの電圧が12[V]、車載バッテリ13Bの電圧が48[V]の場合を想定している。勿論、これ以外の電圧であってもよい。
図25の例では、電力パケットミキサ11は、車載バッテリ13Aから供給される12[V]の電源電力に基づいて電圧が12[V]の電力パケットPPL(30)を生成し、車載バッテリ13Bから供給される48[V]の電源電力に基づいて電圧が48[V]の電力パケットPPH(30)を生成する。したがって、
図25に示すように、電力伝送路16A上に互いに電圧の異なる電力パケットPPL、およびPPHが例えば交互に現れる場合もある。
【0022】
また、電力パケットルータ12には複数の蓄電部15A、15Bが接続されている。なお、電力パケットミキサ11の入力側に接続する電源の数や種類については必要に応じて変更できる。また、電力パケットルータ12の出力側に接続する負荷の数や種類についても必要に応じて変更できる。更に、電力パケットルータ12の出力側に他の電力パケットルータ12を直列に接続することも可能である。
【0023】
基本的な機能として、電力パケットミキサ11は、電力入力ポート11a、11bから供給される電力に基づいて電力パケットを生成し、この電力パケットを電力伝送路16Aに送り出す機能を有している。電力パケットミキサ11が生成する電力パケット30は、例えば
図4に示すように構成される。この電力パケット30のペイロード32により、上流側の電力が電力パケット単位で下流側に伝送される。したがって、電力パケットミキサ11は送出する電力量をペイロード長とパケットの個数により容易に管理できる。
【0024】
なお、
図25に示したように、互いに電圧が異なる車載バッテリ13Aおよび13Bを電力パケットミキサ11の入力に接続する場合には、例えば電圧に応じて電力パケット30のペイロード32の時間長を調節し、電力パケット30の一個あたりの電力量が一定になるように制御することが想定される。ペイロード32の長さを調整しない場合には、電力パケット30毎に電力を把握するために電圧の違いを識別する必要がある。
【0025】
また、電力パケットルータ12は、基本的な機能として、電力パケット入力ポート12aに入力される電力パケットを取り込み、この電力パケットの電力を蓄電部15A、15Bに一時的に蓄電する。そして、蓄電部15A、15Bに蓄電した電力を負荷側に供給する。
【0026】
また、本実施形態では、電力パケットミキサ11は、電力の供給元である複数の車載バッテリ13A、13Bを区別して管理すると共に、これらを区別するための情報を、送出する各電力パケットに含める。したがって、電力パケットルータ12も受け取った電力パケットのそれぞれについて電力の供給元を区別できる。そして、電力パケットルータ12は、例えば車載バッテリ13Aから供給された電力を蓄電部15Aのみに蓄電し、車載バッテリ13Bから供給された電力を蓄電部15Bのみに蓄電する。
【0027】
更に、本実施形態においては、特徴的な機能として、電力パケットミキサ11が
図1に示した機能11dを備え、電力パケットルータ12が各機能12e、12f、12gを備えている。
【0028】
すなわち、電力パケットルータ12は機能12eとして、各蓄電部15A、15Bが蓄電している電力量を監視する。また、電力パケットルータ12は機能12fとして、各蓄電部15A、15Bが蓄電している電力量が閾値以下の場合に、配電要求を電力パケットミキサ11に送る。この配電要求は、例えば電力伝送路16Aの空いているタイミングを利用して、電力パケット入力ポート12aから電力パケット出力ポート11cに向けて送ることができる。
【0029】
また、電力パケットミキサ11は機能11dとして、電力パケットルータ12からの配電要求を確認し、要求された電力量相当分だけ電力パケットを生成し、この電力パケットを電力パケット出力ポート11cに送出する。電力パケットルータ12は機能12gとして、電力パケットミキサ11から送出された各電力パケットを受電して蓄電部15A、15Bに蓄電する。
【0030】
<システムの動作>
図2(a)および
図2(b)に示した電力パケットミキサおよび電力パケットルータの動作例について以下に説明する。
【0031】
電力パケットルータ12内の制御部(図示せず)は、前記機能12eとして、車載バッテリ13Aから供給された電力を蓄電している蓄電部15Aの現在の蓄電量Paと、車載バッテリ13Bから供給された電力を蓄電している蓄電部15Bの現在の蓄電量Pbとをそれぞれ読み取る(S11)。
【0032】
そして、蓄電量Paとその閾値PthaとをステップS12で比較して、「Pa<Ptha」の条件を満たす場合にのみステップS15に進む。また、蓄電量Pbとその閾値PthbとをステップS13で比較して、「Pb<Pthb」の条件を満たす場合にのみステップS14に進む。
【0033】
そして、電力パケットルータ12内の制御部は、前記機能12fとして「Pa<Ptha」の条件を満たす場合は配電要求「Pa_req」を電力パケットミキサ11に送る(S15)。また、「Pb<Pthb」の条件を満たす場合は配電要求「Pb_req」を電力パケットミキサ11に送る(S14)。
【0034】
一方、電力パケットミキサ11内の制御部(図示せず)は、電力パケットルータ12からの配電要求「Pa_req」又は「Pb_req」を受信したか否かを判定し(S16)、いずれかの要求(リクエスト)を受信した場合に次のステップS17に進む。そして、受信した配電要求が「Pa_req」、「Pb_req」のいずれであるかをS17で識別し、配電要求「Pa_req」の場合はS19に進み、配電要求「Pb_req」の場合はS18に進む。
【0035】
ステップS19では、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Aから供給される電力を利用して電力パケットを生成し、この電力パケットを電力伝送路16Aを経由して電力パケットルータ12に送る。この電力パケットには、車載バッテリ13Aが供給元であることを表す情報が付加される。なお、配電要求に対して電力パケットミキサ11が1回の処理で送出する電力パケットの数については、受信した配電要求毎に1つ、又は事前に定めた一定数としてもよいし、配電要求の一部分として電力パケットルータ12側が指定してもよい。
【0036】
ステップS18では、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Bから供給される電力を利用して電力パケットを生成し、この電力パケットを電力伝送路16Aを経由して電力パケットルータ12に送る。この電力パケットには、車載バッテリ13Bが供給元であることを表す情報が付加される。
【0037】
つまり、
図1に示した電力供給システム10−1においては、電力パケットミキサ11は、電力パケットルータ12からの要求に従って、必要な時に必要な量の電力のみを、つまりオンデマンドで電力パケットルータ12に供給する。
【0038】
そのため、電力パケットルータ12からの要求が発生しない限り、電力伝送路16Aに電力が供給されず、一般的な電力供給システムのように出力側に常時電力を供給するわけではないので、暗電流による電力消費が発生しない。したがって、例えば車両が長時間駐車しているような状況において、バッテリ上がりが生じるのを抑制することが可能になる。
【0039】
ここで、
図45を用いて、電力パケットミキサ11内の制御部(図示せず)による動作例をより詳細に説明する。
【0040】
まず、PA_Flag、PB_Flag、PA、PBはいずれも0になっている。PA_Flag、PB_Flagは、それぞれ配電停止フラグであり、車載バッテリ13A、13Bからの電力供給が不可の場合に、これらの配電停止フラグは1となる。また、PA、PBは、車載バッテリ13A、13Bからそれぞれ供給された積算電力量を表している。
【0041】
電力パケットミキサ11は、電力送信停止フラグがいずれも0の場合に(S601)、電力パケットルータ12から配電要求「Pa_req」又は「Pb_req」を受信したか否かを判定し(S602)、いずれかの要求(リクエスト)を受信した場合に次のステップS604に進む。そして、受信した配電要求が「Pa_req」、「Pb_req」のいずれであるかをS604で識別し、配電要求「Pa_req」の場合はS609に進み、配電要求「Pb_req」の場合はS605に進む。一方、ステップS601において、PA_Flag、あるいはPB_Flagのいずれかの電力送信停止フラグが1の場合には、運転者に対し警告信号を発したり警告表示を行う(S613)。これらの警告は、エンジンがONになったと判定されると(S614)終了する。また、ステップS602におけるリクエスト信号受信の判定は、エンジンがONになったと判定されると(S603)終了する。
【0042】
ステップS609では、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Aから供給される電力を利用して電力パケットを生成し、この電力パケットを電力伝送路16Aを経由して電力パケットルータ12に送る。この電力パケットには、車載バッテリ13Aが供給元であることを表す情報が付加される。なお、配電要求に対して電力パケットミキサ11が1回の処理で送出する電力パケットの数については、受信した配電要求毎に1つ、又は事前に定めた一定数としてもよいし、配電要求の一部分として電力パケットルータ12側が指定してもよい。
【0043】
そして、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Aから送電された積算電力量PAに、今回の電力パケットの送出分に相当する電力量Paを加え(S610)、車載バッテリ13Aから供給可能な電力量の上限PA_maxと比較し(S611)、積算電力量PAが電力量の上限PA_maxを超えているならば、車載バッテリ13Aからの電力供給を停止するフラグPA_flagを1とし、車載バッテリ13Aに対する配電要求を禁止する(S612)。
【0044】
一方、ステップS605では、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Bから供給される電力を利用して電力パケットを生成し、この電力パケットを電力伝送路16Aを経由して電力パケットルータ12に送る。この電力パケットには、車載バッテリ13Bが供給元であることを表す情報が付加される。
【0045】
そして、電力パケットミキサ11内の制御部は、車載バッテリ13Bから送電された積算電力量PBに、今回の電力パケットの送出分に相当する電力量Pbを加え(S606)、車載バッテリ13Bから供給可能な電力量の上限PB_maxと比較し(S607)、積算電力量PBが電力量の上限PB_maxを超えているならば、車載バッテリ13Aからの電力供給を停止するフラグPB_flagを1とし、車載バッテリ13Bに対する配電要求を禁止する(S608)。
【0046】
<「ワイヤハーネス診断」の技術>
<システムの構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−2の構成例を
図3に示す。
図3に示した電力供給システム10−2は、車両において、車載バッテリ等の電源電力をワイヤハーネス等の伝送路を経由して負荷となる各種電装品に供給するために利用される。また、この電力供給システム10−2は、例えば特許文献2などにより公知の電力パケット伝送技術を利用できる。
【0047】
図3に示した電力供給システム10−2は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ21、電力パケットルータ22、および配電管理ECU(電子制御ユニット)26を備えている。
【0048】
電力パケットミキサ21の複数の電力入力ポート21aには、複数のn個の電源23−1〜23−nが、電力伝送路29Bを介してそれぞれ接続されている。電源23−1〜23−nの各々は、例えば車載のメインバッテリ、サブバッテリ、その他の補助電源などに相当する。また、n個の電源23−1〜23−nの出力電圧については、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0049】
電力パケットミキサ21の電力パケット出力ポート21bと電力パケットルータ22の電力パケット入力ポート22aとの間は1つの電力伝送路29Aを介して互いに接続されている。電力パケットルータ22の複数の電力出力ポート22bには、電力伝送路29Cを介して複数の負荷24−1〜24−nが接続されている。負荷24−1〜24−nの各々は、車両上の様々な電装品に相当する。また、電力パケットルータ22の電力出力ポート22bには、他の電力パケットルータ22を直列に接続することもできる。
【0050】
電力伝送路29A、29B、29Cは、例えば車両に搭載されたワイヤハーネスを構成する各電線やバスバーに相当する。また、配電管理ECU26と、電力パケットミキサ21および電力パケットルータ22との間は、互いに通信が可能な状態で接続されている。この通信には、専用の通信線が利用されてもよく、電力伝送路29Aが利用されてもよい。
【0051】
電力パケットミキサ21は、基本的な機能として、電源23−1〜23−nから供給される電力から電力パケット30を生成し、この電力パケット30を電力伝送路29Aに出力する。また、電力パケットルータ22は電力パケットミキサ21が送出した電力パケット30を受け取ってこの電力を一時的に内部で蓄積すると共に、この電力を必要に応じて負荷24−1〜24−nの各々に供給する。
【0052】
配電管理ECU26は、電力パケットミキサ21、および電力パケットルータ22との間で通信を行い、システム全体の配電状態を管理する。配電管理ECU26が通信でやり取りする情報の中には、電力パケットルータ22が送出する配電要求27A、受電情報27Bと、配電管理ECU26が送出する送電指示28Aと、電力パケットミキサ21が送出する送電情報28Bとが含まれる。
【0053】
<電力パケット30の構成例>
電力パケット30の構成例を
図4に示す。
図4に示した電力パケット30は、ヘッダ31とペイロード32とで構成されている。また、ヘッダ31の中には、同期信号31a、宛先(配電経路)情報31b、送電電力情報(送電量を表すデータ)31cが含まれている。ペイロード32は、実際に送電する電力に相当する。例えば、電圧および電流が一定の場合を想定すると、ペイロード32の時間長に応じた電力を1つの電力パケット30で送電することができる。
【0054】
<電力パケットミキサ21の構成例>
電力パケットミキサ21の構成例を
図5に示す。
図5に示した電力パケットミキサ21の内部には、入力選択部35、パケット生成部36、出力ポート選択部37、制御部38、および通信インタフェース部(I/F)39が備わっている。
【0055】
入力選択部35は、複数の電力入力ポート21aのいずれかを選択し、選択した電源から電力を取り込む。パケット生成部36は、電力入力ポート21aのいずれかから取り込んだ電力から電力パケット30を生成する。出力ポート選択部37は、複数の電力パケット出力ポート21bのいずれかを選択し、選択したポートに電力パケット30を送出する。制御部38は、次に説明するように、電力パケットミキサ21の全体の動作を制御する。
【0056】
<電力パケットミキサ21の動作例>
電力パケットミキサ21の動作例を
図6に示す。すなわち、制御部38が
図6の制御を実施する。
【0057】
制御部38は、配電管理ECU26から送電指示28Aの情報を受領すると(S21)、この送電指示28Aに基づき、入力選択部35で電源入力を選択し、パケット生成部36で電力パケット30を生成するように制御する(S22)。また、制御部38は出力ポート選択部37を制御して、生成した電力パケット30を所定の電力パケット出力ポート21bに送出する(S23)。また、制御部38は、送電情報28Bを通信ポート21cを介して配電管理ECU26へ通知する(S24)。
【0058】
<電力パケットルータ22の構成例>
電力パケットルータ22の構成例を
図7に示す。
図7に示した電力パケットルータ22の内部には、ヘッダ分離解析部41、蓄電部42、パケット生成部43、出力ポート選択部44、制御部45、および通信インタフェース部46が備わっている。
【0059】
ヘッダ分離解析部41は、電力パケット入力ポート22aの各々に入力された電力パケット30を処理してそのヘッダ31を分離し、ヘッダ31の内容の解析を実施する。蓄電部42は、電力パケット入力ポート22aの各々に入力された電力パケット30のペイロード32のタイミングで、この電力を充電し一時的に蓄積する。
【0060】
パケット生成部43は、電力パケット30の生成が必要な時に、蓄電部42が蓄積している電力から新たな電力パケット30を生成する。出力ポート選択部44は、蓄電部42が蓄積している電力、又はパケット生成部43が生成した電力パケット30を、電力出力ポート22bのいずれかに選択的に出力する。制御部45は、次に説明するように、電力パケットルータ22の全体の制御を実施する。
【0061】
<電力パケットルータ22の動作例>
電力パケットルータ22の動作例を
図8に示す。すなわち、制御部45が
図8の制御を実施する。
【0062】
制御部45は、電力パケットルータ22が電力パケット入力ポート22aで電力パケット30を受信した場合に(S31)、この電力パケット30のヘッダ31をヘッダ分離解析部41を用いて解析する(S32)。
【0063】
この解析により、制御部45はヘッダ31に含まれる宛先情報31bの宛先と、自ルータに接続されている各負荷24−1〜24−nとを照合する(S33)。そして、照合の結果、自ルータに接続された負荷宛の場合には、ペイロード32の電力を蓄電部42に充電するとともに蓄電部42の電力を所定の電力出力ポート22bへ出力する(S34,S39)。
【0064】
また、上記照合の結果、受信した電力パケット30の宛先が、自ルータを経由した他ルータに接続される負荷宛の場合には、蓄電部42の電力から制御部45がパケット生成部43を制御して所定ルータ宛の新たな電力パケット30を生成する(S36)。そして、この電力パケット30を所定の出力ポートから出力し(S37)、所定ルータの入力ポートへ与える。
【0065】
また、制御部45は、電力パケットルータ22が受信した電力パケット30により蓄電部42へ充電した充電量を計測し(S34)、ペイロード32に対応する積算受電電力値を含む受電情報27Bを生成してこれを配電管理ECU26へ通知する(S38,S40)。
【0066】
また、制御部45は、自ルータの電力出力ポート22bに接続されている各負荷24−1〜24nの駆動電力と、蓄電部42の充電状態とに基づいて配電が必要か否かを識別し、必要な時に配電管理ECU26へ配電要求27Aの情報を通知する。例えば、各負荷へ電源電力を供給する必要があるときに(「給電要求」あり)、この要求電力量と、蓄電部42の蓄電量とを比較し(S42)、「蓄電量<要求電力量」の条件を満たす時に、制御部45が配電要求27Aの情報を配電管理ECU26に通知する(S43)。
【0067】
<配電管理ECU26の構成例>
配電管理ECU26の構成例を
図9に示す。
図9に示した配電管理ECU26は、制御部26aおよび通信インタフェース部26bを内蔵している。通信インタフェース部26bの通信ポート26c、および26dは、それぞれ電力パケットミキサ21、および電力パケットルータ22と接続される。
【0068】
<配電管理ECU26の動作例>
配電管理ECU26の動作例を
図10に示す。すなわち、配電管理ECU26内の制御部26aが、
図10の動作を制御する。
【0069】
配電管理ECU26内の制御部26aは、電力パケットルータ22から配電要求27Aの情報が通知されると(S58)、これに基づいて送電指示28Aの情報を生成し(S59)、生成した送電指示28Aの情報を電力パケットミキサ21に通知する(S60)。
【0070】
また、配電管理ECU26内の制御部26aは、電力パケットミキサ21からの送電情報28Bを受領すると(S51)、受電情報受領待ちタイマを起動する(S52)。更に、配電管理ECU26内の制御部26aは、受電情報受領待ちタイマのタイムアウトまでに、電力パケットルータ22から積算受電電力値を含む受電情報27Bを受領しない場合(S54)、又は電力パケットルータ22から受領した受電情報27B内の積算受電電力値と、電力パケットミキサ21からの送電情報28Bとの比較の結果に不整合があった場合(S55,S56)、配電経路に断線、短絡等の異常が生じていると判定する(S57)。そして、同一配電経路による配電を行わないようにする。
【0071】
<電力供給システム10−2の利点>
ワイヤハーネス等の短絡などを診断する際に、一般的な技術を採用する場合には、伝送線路の異常検出のために新たな機器を追加したり、複雑な信号処理が必要になる。また、断線や短絡(デッドショート)等の異常を検出できないケースも考えられる。しかし、上述の制御を実施する電力供給システム10−2においては、新たな機器を追加したり、複雑な信号処理を実施しなくても、断線や短絡(デッドショート)等を含む配電経路の異常を確実に検出できる。
【0072】
つまり、電力パケットミキサ21が実際に送電した電力と、電力パケットルータ22が実際に受電した電力とを配電管理ECU26が比較した結果により判定するので、異常の発生を確実に検出できる。
【0073】
また、配電管理ECU26は全ての送電タイミングを認識可能であるので、伝送路(ワイヤハーネス)が断線やデッドショート状態となり、受電側で電力パケット30のヘッダ31が正常に受信されない場合であっても、伝送路の異常を検出できる。
【0074】
<電力供給システム10−2の変形例>
図3に示した電力供給システム10−2は電力パケットルータ22が1台だけの場合を想定しているが、複数台の電力パケットルータ22を例えば直列に接続することにより、様々な経路を選択的に使用することが可能になる。その場合には、配電経路の異常を検知した時に、異常が発生していない別の経路を電力パケット30が通るように、配電管理ECU26が経路を自動的に切り替えることが考えられる。例えば、
図10に示したステップS57の後で、配電管理ECU26が、配電経路の変更を指示するための送電指示情報を電力パケットミキサ21あるいは各電力パケットルータ22に通知するように制御すればよい。
【0075】
<不足する電源電力を融通するための技術>
<システムの構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−3の構成例を
図11に示す。
図11に示した電力供給システム10−3は、車両において、車載バッテリ等の電源電力をワイヤハーネス等の伝送路を経由して負荷となる各種電装品に供給するために利用される。また、この電力供給システム10−3は、例えば特許文献2などにより公知の電力パケット伝送技術を利用できる。
【0076】
図11に示した電力供給システム10−3は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ21B、3台の電力パケットルータ22B−1、22B−2、22B−3、および配電管理ECU(電子制御ユニット)26Bを備えている。なお、以下において、3個の電力パケットルータ22B−1〜22B−3を区別して説明する必要がないときは、電力パケットルータ22Bとして説明する。また、他の構成要素についても、区別して説明する必要がないときは、“−1”、“−2”などの枝番を省略して説明する。また、他の実施形態においても同様である。
【0077】
電力パケットミキサ21Bの複数の電力入力ポートには、複数のn個の電源23−1〜23−nが、電力伝送路29Bを介してそれぞれ接続されている。電源23−1〜23−nの各々は、例えば車載のメインバッテリ、サブバッテリ、その他の補助電源などに相当する。ここで、n個の電源23−1〜23−nの出力電圧については、同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0078】
電力パケットミキサ21Bの3つの電力パケット出力ポートと3台の各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の電力パケット入力ポート22aとの間は、それぞれ電力伝送路29Aを介して互いに接続されている。
【0079】
電力パケットルータ22B−1の複数の電力出力ポート22bには、電力伝送路29C−1を介して複数の負荷24−Aが接続されている。また、電力パケットルータ22B−2の複数の電力出力ポート22bには、電力伝送路29C−2を介して複数の負荷24−Bが接続されている。電力パケットルータ22B−3の複数の電力出力ポート22bには、電力伝送路29C−3を介して複数の負荷24−Cが接続されている。負荷24−A〜24Cの各々は、車両上の様々な電装品に相当する。
【0080】
また、電力パケットルータ22B−1の電力出力ポート22bの1つと、隣接する電力パケットルータ22B−2の電力パケット入力ポート22aの1つとの間が、電力伝送路29D−1を介して互いに接続されている。更に、電力パケットルータ22B−3の電力出力ポート22bの1つと、隣接する電力パケットルータ22B−2の電力パケット入力ポート22aの1つとの間が、電力伝送路29D−2を介して互いに接続されている。
【0081】
電力伝送路29D−1は、電力パケットルータ22B−2における電力が不足する場合に、電力パケットルータ22B−1の電力を融通するための経路として利用される。同様に、電力伝送路29D−2は、電力パケットルータ22B−2における電力が不足する場合に、電力パケットルータ22B−3の電力を融通するための経路として利用される。勿論、電力融通の他に、断線等の異常が発生した場合の迂回経路として利用することも可能である。
【0082】
電力伝送路29A、29B、29C、29Dは、例えば車両に搭載されたワイヤハーネスを構成する各電線やバスバーに相当する。また、配電管理ECU26Bと、電力パケットミキサ21Bおよび各電力パケットルータ22Bとの間は、互いに通信ができるように、例えば専用の通信線を介して接続されている。なお、電力伝送路29Aを利用して通信することも可能である。
【0083】
電力パケットミキサ21Bは、基本的な機能として、電源23−1〜23−nから供給される電力に基づいて電力パケット30Bを生成し、この電力パケット30Bを電力伝送路29A−1、29A−2、29A−3のいずれかに出力する。
【0084】
また、各電力パケットルータ22B−1、22B−2、22B−3は電力パケットミキサ21Bが送出した電力パケット30Bを受け取ってこの電力を一時的に内部で蓄積すると共に、この電力を必要に応じて負荷24−A、24−B、24−Cの各々に供給する。また、後で詳細に説明するが、各電力パケットルータ22B−1、22B−2、22B−3が、本実施形態では電力の融通も必要に応じて実施する。
【0085】
配電管理ECU26Bは、電力パケットミキサ21B、および各電力パケットルータ22Bとの間で通信を行い、システム全体の配電状態を管理する。配電管理ECU26Bが通信でやり取りする情報の中には、電力パケットルータ22Bが送出する配電要求27A、受電情報27Bと、配電管理ECU26Bが送出する送電指示28Aと、電力パケットミキサ21Bが送出する送電情報28Bとが含まれる。
【0086】
<電力パケット30Bの構成例>
電力パケット30Bの構成例を
図12に示す。
図12に示した電力パケット30Bは、ヘッダ31Bとペイロード32とで構成されている。また、ヘッダ31Bの中には、同期信号31a、宛先(配電経路)情報31b、送電電力情報(送電量を表すデータ)31c、および電力種別情報31dが含まれている。ペイロード32は、実際に送電する電力に相当する。例えば、電圧および電流が一定の場合を想定すると、ペイロード32の時間長に応じた電力を1つの電力パケット30Bで送電することができる。電力種別情報31dは、通常の電力と融通専用の電力とを区別するために利用される。
【0087】
<電力パケットミキサ21Bの構成および動作>
電力パケットミキサ21Bの構成は、
図5に示した電力パケットミキサ21とほぼ同じである。また、電力パケットミキサ21Bの動作は
図6に示した電力パケットミキサ21の動作と同様である。
【0088】
<電力パケットルータ22Bの構成例>
電力パケットルータ22Bの構成例を
図13に示す。
図13に示した電力パケットルータ22Bの内部には、ヘッダ分離解析部41、通常蓄電部42A、融通蓄電部42B、パケット生成部43、出力ポート選択部44、制御部45B、および通信インタフェース部46が備わっている。
【0089】
ヘッダ分離解析部41は、電力パケット入力ポート22aの各々に入力された電力パケット30Bを処理してそのヘッダ31Bを分離し、ヘッダ31Bの内容の解析を実施する。
【0090】
通常蓄電部42Aおよび融通蓄電部42Bは、電力パケット入力ポート22aの各々に入力された電力パケット30Bのペイロード32のタイミングで、この電力を充電し一時的に蓄積する。通常蓄電部42Aは通常給電を行う場合に使用され、融通蓄電部42Bは融通電力の給電を行う場合に専用に使用される。なお、通常蓄電部42Aと融通蓄電部42Bが同じ蓄電部により構成され、当該蓄電部に通常給電用の電力と融通電力とが蓄電されるようにしてもよい。
【0091】
パケット生成部43は、電力パケット30Bの生成が必要な時に、通常蓄電部42A、又は融通蓄電部42Bが蓄積している電力に基づいて新たな電力パケット30Bを生成する。出力ポート選択部44は、通常蓄電部42A、融通蓄電部42Bのいずれかが蓄積している電力、又はパケット生成部43が生成した電力パケット30Bを、電力出力ポート22bのいずれかに選択的に出力する。制御部45Bは、次に説明するように、電力パケットルータ22Bの全体の制御を実施する。
【0092】
<電力パケットルータ22Bの動作例>
各電力パケットルータ22Bの基本的な動作は、
図8に示した電力パケットルータ22の動作と同様である。但し、次に説明する点が異なる。
【0093】
電力パケットルータ22Bは、電力パケット入力ポート22aで受信した電力パケット30Bのヘッダ31Bに含まれる宛先情報31b、および電力種別情報31dを照合する。照合の結果、受信した電力パケット30Bが自ルータ宛で且つ通常給電電力の場合には、ペイロード32の電力を通常蓄電部42Aに充電するとともに所定の出力ポートへ出力する。また、前記照合の結果、受信した電力パケット30Bが自ルータ宛で且つ融通電力の場合には、ペイロード32の電力を融通蓄電部42Bに充電する。また、電力パケットルータ22Bは、自ルータ宛の電力パケット30Bを受電すると、種別や受電電力量等を含む受電情報27Bを配電管理ECU26Bへ通知する。
【0094】
また、電力パケットルータ22Bは、配電管理ECU26から電力融通の指示情報を受信すると、融通蓄電部42Bに蓄積されている電力に基づき、所定ルータ宛の電力パケット30Bを生成し所定の出力ポートから所定ルータの入力ポートへ出力する。これと同時に、電力パケットルータ22Bは配電管理ECU26Bへ、融通蓄電部42Bの充電残量を含む送電情報を通知する。また、電力パケットルータ22Bは、出力ポートに接続される各負荷の駆動電力と通常蓄電部42A、融通蓄電部42Bの充電状態とに基づき、必要に応じて配電管理ECU26へ配電要求27Aを通知する。
【0095】
<配電管理ECU26Bの構成>
配電管理ECU26Bの構成は、
図9に示した配電管理ECU26の構成と同様である。
配電管理ECU26Bの通信インタフェース部26bの通信ポート26cは電力パケットミキサ21Bと接続され、通信ポート26dは、各電力パケットルータ22Bと接続されている。
【0096】
<配電管理ECU26Bの動作例>
配電管理ECU26Bの動作例を
図14に示す。すなわち、配電管理ECU26B内の制御部26aが、
図14の動作を制御する。
図14の動作について以下に説明する。
【0097】
配電管理ECU26Bは、複数の電力パケットルータ22Bのいずれかから配電要求27Aの情報を通知された場合に(S78)、電力パケットミキサ21Bと電力パケットルータ22Bの間の全ての配電経路について異常がなければ、送電指示28Aの情報を生成し(S80)、電力パケットミキサ21Bに対して送電指示28Aの情報を通知する(S81)。
【0098】
また、配電管理ECU26Bは、電力パケットミキサ21Bからの送電情報28Bを受領すると(S71)、受電情報受領待ちタイマを起動する(S72)。更に、配電管理ECU26Bは、受電情報受領待ちタイマのタイムアウトまでに、電力パケットルータ22Bからの受電情報27Bが受領されない場合、配電経路に断線、短絡等の異常が生じていると判定し(S76)、同一配電経路による配電を行わないようにする(S77)。
【0099】
また、配電管理ECU26Bは、電力パケットルータ22Bから配電要求27Aの情報を受領した時に、電力パケットミキサ21Bと電力パケットルータ22Bの間の全ての配電経路で異常が確認されている場合には次のように処理する。すなわち、「電力融通指示情報」を生成し(S82)、配電要求27Aを送出した特定の電力パケットルータ22Bとの間で配電経路を構築可能な他の電力パケットルータ22Bに対して「電力融通指示情報」を通知する(S83)。
【0100】
また、配電管理ECU26Bは、電力パケットルータ22Bから送信される受電情報27Bに基づいて、送信元の電力パケットルータ22B内の融通蓄電部42Bにおける充電量を認識する。そして、配電管理ECU26Bは認識した充電量に基づき、必要に応じて、電力パケットミキサ21Bに対して、電力パケットルータ22Bに対する電力融通用電力の送電指示情報を通知する。
【0101】
<システム全体の動作>
つまり、
図11に示した電力供給システム10−3においては、複数の電力パケットルータ22Bのそれぞれが、バッファとして内蔵している融通蓄電部42Bに常時蓄電すると共に、この蓄電している電力量をルータ自身で把握している。そして、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3のいずれかにおいて電力量の不足が生じた場合や、電力量不足の発生が見込まれるような状況において、該当する電力パケットルータ22Bが配電要求27Aの情報を配電管理ECU26Bに通知する。この配電要求27Aの情報に基づき、融通蓄電部42Bに十分な電力を蓄電している電力パケットルータ22Bに対して、配電管理ECU26Bが「電力融通指示情報」を通知する。
【0102】
したがって、例えば電力パケットルータ22B−2で電力不足が発生した場合に、電力伝送路29D−2を経由して、電力パケットルータ22B−3の電力を電力パケットルータ22B−2に転送し、電力を融通することができる。また、電力伝送路29D−1を経由して、電力パケットルータ22B−1の電力を電力パケットルータ22B−2に転送し、電力を融通することもできる。
【0103】
また、このような電力の融通は、例えば、電力伝送路29A等で断線が発生し、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の入力への電力供給が途絶えた場合に、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間で互いに電力を融通することにより、重要な負荷に対する電力供給を一定時間だけ継続することが可能になる。したがって、例えば衝突した車両が安全に停止するまでの間は、重要な負荷に電力を供給できる。
【0104】
また、上記のように負荷の種類に応じた優先制御を実施する場合には、各電力パケットルータ22Bに接続される複数の負荷のそれぞれに優先度を事前に割り当てておく。また、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の中で、より高い優先度の負荷が接続された特定の電力パケットルータ22Bの電力パケット入力ポート22aには、より多くの電力パケットミキサ21Bや電力パケットルータ22Bの出力ポートが接続されるように構成する。
【0105】
例えば、
図11に示した電力供給システム10−3においては、電力パケットルータ22B−2の電力パケット入力ポート22aに、電力パケットルータ22B−1、および22B−2の出力を、それぞれ接続してある。したがって、電力パケットルータ22B−2の出力に接続されている重要度の高い負荷24−Bに対して、3つの電力パケットルータ22B−1〜22B−3から優先的に電力を供給できる。
【0106】
また、電力伝送路29A−1〜29A−3のうちいずれかが断線した場合に、断線していない電力伝送路と、電力伝送路29D−1,29D−2とを経由して目的の電力パケットルータに電力を供給することができる。例えば、電力伝送路29A−1が断線した場合、電力パケットミキサ21Bから電力パケットルータ22B−1へは、電力伝送路29A−2、電力パケットルータ22B−2、および電力伝送路29D−1を経由して電力パケットを伝送できる。
【0107】
<ルータや電装品(負荷)を増設可能にするための技術>
<負荷及びルータを後付けする必要性の説明>
自動車においては、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転システム)、ナビゲーションシステム、エンジン制御系等の技術発展に伴い、車両に搭載される電子デバイス及びそれらを駆動するために要求される電力量が増加の一途であり、電源のパワーアップ及び効率改善が必要になる。そのため、自動車における多電源化、例えば電圧が異なる複数種類(12[V]、48[V]の組み合わせ等)のバッテリの搭載、大出カオルタネータ、回生ブレーキ、エナジーハーベストなどが予見されている。
【0108】
反面、燃料である石油の価格高騰や二酸化炭素排出による環境問題の背景より、自動車の低燃費化の要求は非常に高いことから、燃費を悪化させる車両重量の増加は避けなくてはならない。電力パケット伝送システムは、複数の電源からの電力を時分割(パケット化)によって伝送することで、最小限な配線数で多電源化を実現できる可能性がある。つまり、車両重量の増加を防止できる。また、例えば複数種類の電圧が共存する環境における配線数の増加を抑制できる。
【0109】
しかし、一般的な電力パケット伝送システムの場合には、システム全体の構成が事前に決定されているので、例えば車両の仕様変更などに伴い、システムの負荷として、新たな電装品を追加したり、接続する電装品の種類を変更するような場合に対応できない。つまり、新たな電装品を追加したり、接続する電装品の種類を変更するような場合には、システム全体を設計し直す必要があるので、仕様変更に伴う設計コストが増えてしまう。
【0110】
本実施形態の電力供給システム10−4は、後述するように、電力パケット伝送の技術を採用すると共に、新たな負荷の追加を容易にするための機能を提供できる。
【0111】
<電力供給システム10−4の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−4の構成例を
図15に示す。なお、
図15に示した電力供給システム10−4は基本的な構成例を表しており、必要に応じて電源、機器の追加や変更を行うことができる。また、電力パケット30Cの構成例を
図16に示す。
【0112】
図15に示した電力供給システム10−4は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ51、複数の電力パケットルータ52−1〜52−3、および配電管理ECU56を備えている。
【0113】
電力パケットミキサ51の複数の電力入力ポート51aには、電圧が12[V]の車載バッテリ(電源1)53−1と、電圧が48[V]の車載バッテリ(電源2)53−2とが、電力伝送路55Bを介してそれぞれ接続されている。また、電力パケットミキサ51の複数の電力パケット出力ポート51bに、複数の電力パケットルータ52−1、52−2が電力伝送路55Aを介してそれぞれ接続されている。なお、複数の車載バッテリ53−1、および53−2の出力する電圧が同じであってもよい。
【0114】
電力パケットルータ52−1の電力出力ポート52bに、電力パケットルータ52−3と、複数の負荷54−1、54−2とが電力伝送路55Cを介して接続されている。つまり、電力パケットルータ52−1と電力パケットルータ52−3とが直列に接続されている。各負荷54−1、54−2は車載の各種電装品に相当する。
【0115】
電力パケットルータ52−3の電力出力ポート52bに、複数の負荷54−5、54−6が電力伝送路55Dを介して接続されている。また、電力パケットルータ52−2の電力出力ポート52bに、複数の負荷54−3、54−4が電力伝送路55C−2を介して接続されている。負荷54−7は、このシステムに新たに追加するために用意されたものであり、
図1の例では電力パケットルータ52−2の電力出力ポート52bの空いているポートに接続することを想定している。
【0116】
なお、各電力伝送路55A、55B、55C、55Dは、それぞれの電力容量に対応した送電用の電線、あるいはバスバーであり、例えばワイヤハーネスの一部分として構成される。
【0117】
配電管理ECU56は、電力パケットミキサ51の通信ポート51cと所定の通信線を介して接続されている。また、配電管理ECU56の入力に、入力機器57およびスイッチ類58が接続されている。入力機器57およびスイッチ類58は、ユーザ等の入力操作を受付可能にするために設けてある。配電管理ECU56は、このシステムにおいて送電制御やパケット伝送のスケジュール構築の機能を担う。
【0118】
電力パケットミキサ51は、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21と同じように構成され、基本的な機能として、車載バッテリ53−1、53−2等から供給される電力に基づいて電力パケット30Cを生成し、この電力パケット30Cを電力パケット出力ポート51bに送出する機能を有している。
【0119】
また、各電力パケットルータ52−1〜52−3は、例えば
図7に示した電力パケットルータ22と同じように構成され、基本的な機能として、電力パケット入力ポート52aに入力された電力パケット30Cを受け取る機能を有している。更に、受け取った電力パケット30Cの電力を内部で蓄電して必要に応じて負荷側に供給する機能や、中継用の電力パケット30Cを生成して下流側の他の電力パケットルータ52に送出する機能を有している。
【0120】
また、本実施形態における配電管理ECU56、電力パケットミキサ51、電力パケットルータ52の各々は、電力パケット30Cの経路情報を格納するための図示しない記憶手段(例えば不揮発性メモリ)を内蔵している。これらの各記憶手段が保持している経路情報は、電力パケットミキサ51と、各電力パケットルータ52−1〜52−3との間のデータ通信により共有される。このデータ通信は、電力伝送路55A等を用いて行うことができる。そして、電力パケットミキサ51の下流側の接続状態が変化した場合には、経路情報が逐次更新される。
【0121】
電力パケットミキサ51は、複数の車載バッテリ53の電源電力を、電源数よりも少数の伝送路で伝送するために、行き先または電圧振幅の異なる電力パケット30Cを生成し、それぞれの電力パケット30Cを時分割多重方式で電力パケットルータ52−1〜52−3に向けて電力伝送路55Aに送出する。
【0122】
電力パケット30Cは、
図16に示すように、ヘッダ31Cとペイロード32とで構成されている。また、ヘッダ31Cには同期信号、宛先、経路情報、送電電力、タイミング情報等が含まれている。
【0123】
各電力パケットルータ52−1〜52−3は、受信した電力パケット30Cのヘッダ31Cからその情報タグを読み取り、その情報に基づいて各負荷に電力を分配する。つまり、受信した電力パケット30Cのペイロード32における電力は、宛先の負荷毎に分配する。各負荷54に送られる電力パケット30Cの電力は断続的に発生する。したがって、パケットが届かない時間中の電力供給を補償するために、電解コンデンサ等をバッファ、すなわち蓄電部として使用するか、または二次電池を各電力パケットルータ52に接続する。
【0124】
蓄電部の容量については、システムが使用する電力パケット30Cの時間周期が長くなるのに比例して必要容量が増加する。したがって、容量が大きいほど汎用的に使用できる。蓄電部として使用するバッファまたは二次電池は各電力パケットルータ52に内蔵してもよい。
【0125】
<電力供給システム10−4の基本的な動作>
電力供給システム10−4内の各電力パケットルータ52は、電力パケット入力ポート52aで受信した電力パケット30Cのヘッダ31Cに含まれる宛先情報を照合する。照合の結果、自ルータに接続される負荷宛の電力パケット30Cである場合は、ペイロード32の電力を蓄電部に充電するとともに、この電力を所定の出力ポートへ出力する。照合の結果、自ルータを中継した他ルータに接続される負荷宛の電力パケット30Cの場合には、それ自身の蓄電部に蓄電した電力に基づき、所定ルータ宛の中継用の電力パケット30Cを新たに生成して、これを所定の出力ポートに出力して、所定ルータの入力ポートへ与える。
【0126】
各電力パケットルータ52は、受信した各電力パケット30Cのペイロード32に対応した受電情報を、電力パケットミキサ51を介して配電管理ECU56へ通知する。また、各電力パケットルータ52は、電力出力ポート52bに接続される各負荷の駆動電力と蓄電部の充電状態に基づいて、必要に応じて配電管理ECU56へ配電要求を行う。
【0127】
<電力供給システム10−4の特徴的な機能>
図15に示した電力供給システム10−4は、電力の主伝送路である電力伝送路55A、55C、55D等に対して、各電力パケットルータ52およびそれらに接続される各負荷を簡易に増設可能にするための機能を備えている。その機能のために、電力パケットミキサ51と各電力パケットルータ52との間でデータ通信を行い、接続した負荷の認証を実施する。電力パケットミキサ51と各電力パケットルータ52との間でデータ通信を行う場合には、例えば、通信用の伝送路として電力伝送路55A等を利用する双方向通信や、無線通信を利用する。
【0128】
例えば、
図15に示した電力供給システム10−4に対して、7番目の新たな負荷54−7を電力パケットルータ52−2の電力出力ポート52bに接続して、このシステムに追加する場合には、負荷54−7が新規で物理的に接続されたことを電力パケットルータ52−2が自動的に検知し、このシステムへの論理的な接続に必要な処理を、電力パケットミキサ51、電力パケットルータ52、配電管理ECU56が自動的に実施する。
【0129】
なお、各電力パケットルータ52の出力に接続することが想定される各負荷54については、その種類や特性を表す「デバイスディスクリプタ」等の情報を保持していないことが想定される。したがって、新規に接続された各負荷の種類や特性を何らかの方法で特定する必要がある。本実施形態においては、ユーザ等の操作者が必要な入力操作を行うことにより、接続された各負荷の種類や特性を特定している。但し、後述するように、自動的に特定することも可能である。
【0130】
また、電力パケットミキサ51の出力や、各電力パケットルータ52の出力に他の新たな電力パケットルータ52を後付けで追加することも可能である。その場合、電力パケットミキサ51は複数の電力パケット出力ポート51bを備え、これらを利用して、複数の電力パケットルータ52のそれぞれに対して電力パケット30Cの送出を行うことができる。
【0131】
例えば、操作者がシステムの電源をオンに切り替えた場合のように、電力パケットミキサ51が起動した時に、電力パケットミキサ51は電力パケット出力ポート51bの各々の接続状態を確認し、新規に接続された電力パケットルータ52が存在する場合には、該当する電力パケットルータ52に対して電力リソースの再分配(再スケジュール)の準備を行う。
【0132】
例えば、電力パケット出力ポート51bの各信号端子を抵抗器を介して所定の電源ラインにプルアップしておくことにより、USB(Universal Serial Bus)規格のデバイスと同じように、各出力ポートへのデバイス接続の有無を自動的に検出できる。プルアップ用の電源電圧としては、例えば3.3[V]以下の低い電圧を用いるのがよい。
【0133】
この電力供給システム10−4に新規に電力パケットルータ52が接続された場合には、この電力パケットルータ52からの信号により、負荷が接続されていることが電力パケットミキサ51に通知された時には、後述のように電力リソースの再分配(再スケジュール)を行う。
【0134】
各電力パケットルータ52は、後付けで負荷を追加することを可能にするために、次に説明する機能を備える。電力パケットルータ52は、起動時にそれ自身の電力出力ポート52bの負荷接続状態を確認し、新規に接続された負荷の種類や駆動電力の情報収集を行う。新規の接続を確認した電力パケットルータ52は、接続された新規のデバイスの種類や仕様の情報を特定するために、例えばタッチパネル等(ディスプレイを兼ねる)の入力装置を通じて操作者に入力を求める。
【0135】
その後、電力パケットミキサ51と電力パケットルータ52との間の双方向通信により情報の交換を行い、電力パケットミキサ51が電力容量や供給タイミングの観点から新たな負荷を加えたシステムの成立性の判断及び、電力リソース分配のスケジュールの再調整を行う。
【0136】
電力パケットミキサ51と電力パケットルータ52との間で必要とされる双方向通信では、電力パケットミキサ51から電力パケットルータ52に向かう方向のデータ通信の場合には電力パケット30Cのヘッダ31C等の情報タグを利用できる。
【0137】
また、電力パケットルータ52から電力パケットミキサ51に向かう方向のデータ通信の場合には、例えば周波数分割多重方式等を用いて電力パケット30Cのクロックの基本周波数と異なる周波数に信号を乗せて通信を行うことが考えられる。また、電力伝送路55A等を利用せずに、電力パケットミキサ51と電力パケットルータ52との間で無線通信を行ってもよい。
【0138】
<新規デバイス接続時の電力供給システムの動作手順の例>
電力供給システム10−4の各部の動作手順の例を
図17に示す。但し、ここでは次に示す「前提条件」の下で動作することを想定している。
【0139】
<前提条件>
電力パケットミキサ51の下流へのデバイス(電力パケットルータ52や負荷54)の取付け/取外しは電源オフの状態で行われ、電源オン時にデバイスの接続の確認を行う。
【0140】
電力パケットミキサ51の後段に接続されるのは電力パケットルータ52のみとする。よってデバイスが自身の正体を知らせるための「デバイスディスクリプタ」等の送受信は必要とせず、ルータや負荷が「デバイスディスクリプタ」等を保持する必要は無い。
【0141】
電力パケットルータ52の後段に接続されるのは負荷54、又は他の電力パケットルータ52のみに限定される。電力パケットルータ52は、電源オン時に自身の出力ポートの接続を確認し、接続されている負荷54の情報を電力パケットミキサ51に知らせる。
【0142】
電力パケットルータ52が新規のデバイスを検出したときには、それを電力パケットミキサ51に知らせる。また、接続されたデバイスが負荷54であった場合には、電力パケットミキサ51が操作者に対してタッチパネル入力装置兼ディスプレイ、すなわち入力機器57、スイッチ類58などから負荷の仕様情報の入力を求める。また、電力パケットミキサ51は同時にデバイスに対し電力パケットルータ52に組付いたアドレスを付与する。例えば、
図15に示したように、新規の負荷54−7が、2番目の電力パケットルータ52−2の3番目の電力出力ポート52bに接続された場合には、アドレスとして「2−3」を付与する。
【0143】
操作者によって入力されたデバイスの仕様情報と配電管理ECU56が持つ図示しないデータテーブル(デバイス種類に応じた駆動パターン等を保有)を基に、電力パケットミキサ51と各電力パケットルータ52とが連動して、システムの成立性判断及び電力パケットの伝送スケジュールの再構築を行う。また、電力パケットミキサ51は、配電管理ECU56との連携による処理を行うことを前提としている。
【0144】
<手順の説明>
1.操作者の操作によりシステムの電源が投入される(S91)。
2.電力パケットミキサ51は、複数ある自身の出力ポートの接続を確認し、接続されている各電力パケットルータ52を検出する(S92,S93)。
3.電力パケットミキサ51の制御により電力パケットルータ52への電源供給(の許可)を行い、電力パケットルータ52の電源が投入される(S94,S95)。
4.電力パケットルータ52は複数ある自身の電力出力ポート52bの接続を確認し、新規デバイスを検出する(S96,S97)。
5.電力パケットルータ52は新規デバイスの情報入力とアドレスの付与を電力パケットミキサ51に要求する(S98)。
6.電力パケットミキサ51は、タッチパネル等で操作者へ新規デバイスの仕様等の情報入力(S100)を求める(S99)。同時に新規デバイスのアドレスを設定し(S101)、電力パケットルータ52と共有する(S102)。
7.電力パケットミキサ51は操作者が入力したデバイスの種類や仕様を基に電力パケット伝送システムの成立性を判断した上でパケット伝送スケジュールの構築を行い(S103)、ルータと共有する(S104)。
8.以上の手順により新規デバイスが利用可能となる。なお、ここでの新規デバイスは常時給電用であり、操作者のスイッチや他の機器との連動が必要な場合、追加の設定や駆動毎の再スケジュールが必要となる。
【0145】
なお、以下に示すように変更してもよい。
電力パケットミキサ51の下流へのデバイス(ルータ、負荷)の取付け/取外しは電源オン状態で行ってもよい。この場合、電力パケットミキサ51や電力パケットルータ52は定期的に自身の接続ポートのチェックを行い、接続を確認したときに配電管理ECU56にて成立性判断、再スケジュールを行い、任意のタイミングで切り換えを行う。
【0146】
電力パケットミキサ51に接続される配電管理ECU56にストレージ機能を配備し、予め接続が想定される各種負荷54の仕様例や、消費電力の時間軸的な推移データ等を収容するデータベースを構築しておく。また、操作者が指定したデバイスの種類や、消費電力を追加情報として利用する。これらの情報を利用することにより、接続された新規デバイスの駆動頻度や駆動パターンを推定することが可能になる。また、このような推定ができる環境においては、接続されたデバイスの種類、消費電力を推定するプログラムを自動実行し、操作者の入力操作(S100)を不要にすることも可能である。
【0147】
電力リソース分配のスケジュールの再調整を行う際、電力パケットミキサ51に接続された電源53−1、53−2の容量が十分でない場合、負荷54の削減または電源の増設等を促すアラートを出すなどの機能を実装することが考えられる。また、この機能において製造者、販売者がコントロールできる部分、例えばライトやパワーウインドその他の必要不可欠な負荷、ADASシステムの構成部品などに割当られる電力量と、ユーザがコントロールできる部分(オーディオのスピーカ増設など)とで分けて上限の供給量から振り分けを行うことで、供給可能な電力量を把握、制限できる。これにより、ユーザによる過剰なカスタマイズ等による予期せぬバッテリ上がりやバッテリの酷使による早期の劣化などを未然に防ぐことができる。また、突入電流や高負荷時を見据えてシステムがある程度のマージンを確保しつつ事前にバッテリ上がりの恐れをなくすことが可能になる。また、配電管理ECU56の機能を電力パケットミキサ51に実行させることにより、
図1に示すように電力供給システムが配電管理ECUを備えない構成としてもよい。この場合、入力機器57やスイッチ類58は、電力パケットミキサ51に接続するようにする。
【0148】
以上説明したように、
図15に示した電力供給システム10−4においては、各電力パケットルータ52が接続された各負荷54を認識する機能を備えているので、これを利用して新たな負荷54を後付けすることが可能になる。つまり、電力パケットルータ52は起動時に電力出力ポート52bに接続されている負荷54をスキャンするので、どんな負荷が接続されているかを確認できる。そのため、電力出力ポート52bに後付けした負荷54−7についても、電力パケットルータ52および電力パケットミキサ51が認識できる。
【0149】
<負荷54−7を取り外す場合>
一方、
図15に示した電力供給システム10−4において、電力パケットルータ52−2の電力出力ポート52bから負荷54−7を取り外す場合に各部で実行される動作の手順は以下の通りである。
【0150】
1.負荷54−7の取り外しによる電力出力ポート52bの電圧変化を電力パケットルータ52−2が検知し、これをトリガとして次の処理に進む。
2.電力パケットルータ52−2は、取り外された負荷54−7に対する駆動電力の供給を停止するように、停止要求を電力パケットミキサ51に送る。
3.電力パケットミキサ51は、電力パケットルータ52−2からの停止要求に従い、負荷54−7に対する駆動電力の送電を停止する。
【0151】
<バッテリ上がりを防止するための優先制御の技術>
前述のように、
図15に示した電力供給システム10−4においては、負荷などを必要に応じて追加することができる。しかし、設計時の想定以上に負荷が増えると、電力の需要と供給能力とのバランスが適度な状態から逸脱し、電力の供給能力が不足してバッテリ上がりが生じる可能性がある。そこで、本実施形態の電力供給システム10−5においては、ミキサ及びほかのルータ間で電力の供給量と需要を調整する。また、電力供給量が電力需要より小さい場合に、各負荷に優先順位を付けて優先制御を実施する。
【0152】
<電力供給システム10−5の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−5の構成例を
図18に示す。
図18に示した電力供給システム10−5は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ61、および複数の電力パケットルータ62−1〜62−3を備えている。電力パケットミキサ61の電力入力ポート61aには、車載バッテリ(電源)63が接続されている。また、電力パケットミキサ61の複数の電力パケット出力ポート61bには、それぞれ電力パケットルータ62−1〜62−3が接続されている。
【0153】
また、電力パケットルータ62−1の電力出力ポート62bには、複数の負荷64−A〜64−Dが接続されている。また、電力パケットルータ62−2の電力出力ポート62bには、複数の負荷64−2A、64−2Bが接続されている。また、電力パケットルータ62−3の電力出力ポート62bには、複数の負荷64−3A、64−3Bが接続されている。
【0154】
電力パケットミキサ61および電力パケットルータ62−1〜62−3の基本的な構成および動作については、
図5に示した電力パケットミキサ21、および
図7に示した電力パケットルータ22と同様である。
【0155】
また、
図18に示した例では、各負荷64−A、64−B、64−C、64−Dには、それぞれ優先度「7」、「1」、「4」、「2」が事前に割り当ててある。また、各負荷64−2A、64−2Bには、それぞれ優先度「3」、「8」が事前に割り当ててある。各負荷64−3A、64−3Bには、それぞれ優先度「6」、「5」が事前に割り当ててある。
【0156】
図18に示した電力供給システム10−5においては、電力供給能力の大きさおよび電力需要の大きさを電力パケットミキサ61が常時算出し、これらのバランスが適正な範囲を逸脱していないか監視している。そして、「電力供給能力<電力需要」の状態を検知すると、電力パケットミキサ61が負荷の優先制御を実施する。
【0157】
例えば、電力供給対象の負荷を、優先度が「1〜5」の範囲内のみに限定し、それ以外の負荷への電力供給を一時的に停止する。したがって、その場合には、
図18に示した負荷64−B、64−C、64−D、64−2A、64−3Bに対しては電力供給が継続されるが、優先度の低い負荷64−A、64−2B、64−3Aに対する電力供給は停止する。
【0158】
このような優先制御により、電力需要を削減できるので「電力供給能力≧電力需要」の状態を維持することができる。そのため、バッテリ上がりを防止できる。しかも、優先度の高い負荷に対する電力供給状態を維持できるので、重要なシステムに対する悪影響を抑制できる。
【0159】
具体例としては、車両において、ワイパ、デフォッガー、空調機器、ヘッドライト/フォグライト等の同時駆動を行う場合が想定される。このような高負荷運転環境等のワーストケースを想定したマージンを設定し、電源の電力供給能力とつき合わせて電力供給のスケジューリングを行った場合には、エンタメ系に費やせる電力枠が窮屈になるという問題が生じる。しかし、上記のような優先制御を実施する場合には、そのような問題が生じにくい。また、上記のような優先制御を実施する場合には、必ずしもすべての負荷の合計駆動電力と最大供給能力とを一致させる必要が無くなり、バッテリコスト等を抑えることが可能になる。
【0160】
なお、電力供給システムのネットワークトポロジーについては、
図18に示したようなツリー型に限らず、スター型、リング型、バス型その他でもよい。
【0161】
また、上記の電力供給システム10−5においては、電力パケットミキサ61が電力供給能力の大きさや電力需要の大きさを算出しているが、
図11に示したような配電管理ECU26Bを備えるようにし、配電管理ECU26Bが電力供給の大きさや電力需要の大きさを算出し、これらのバランスが適正な範囲を逸脱していないか監視するようにしてもよい。また、後述する電力供給システム10−11のように、電力パケットミキサ61あるいは配電管理ECU26Bが、車両の状況に応じて各負荷の優先度を適宜補正するようにしてもよい。
【0162】
電力供給システム10−5の構成においては、主伝送路(幹線)に対して簡易に負荷を追加したり、ネットワークを拡大(増設)することが可能である。したがって、電力パケット伝送システムによる電力ネットワークのメリット(省線化、軽量化、車両への搭載性)を維持しつつプラットフォームを車両(製品)のグレードに依らない形に統一することが可能(汎用性の向上)である。
【0163】
<ワイヤハーネスの省線化のための技術>
本発明の実施形態における電力供給システムの2種類の構成例を
図19(a)および
図19(b)にそれぞれ示す。
【0164】
車両上で利用される電力供給システムに上述のような電力パケット伝送技術を採用することにより、例えば電圧等が異なる様々な種類の電源からの電力を共通の電力伝送路を利用して負荷側に伝送することが可能になる。したがって、ワイヤハーネスの省線化に寄与することになる。しかし、実際の車両においては、車両上の様々な箇所に配置された負荷に対し、様々な方向から電源線が配索される状況が想定されるので、ワイヤハーネスを省線化する効果があまり得られない可能性がある。
【0165】
例えば、
図5に示した電力パケットミキサ21は上流側の電源から電力を受け取って電力パケットを生成し、電力伝送路の下流側に送出する機能だけしか有していない。また、
図7に示した電力パケットルータ22は、電力伝送路の上流側の電力パケットミキサ21から送出された電力パケットを受け取って下流側に供給する機能だけしか有していない。つまり、電力パケットを双方向に伝送することはできない。
【0166】
したがって、前述のような構成の電力パケットミキサ21や電力パケットルータ22を用いて電力供給システムを構成する場合には、複数の負荷が分散して配置されている状況において、例えば
図19(b)に示した電力供給システム10−7のように構成される。
【0167】
図19(b)に示した電力供給システム10−7は、2台の電力パケットミキサ71B−1、71B−2と、2台の電力パケットルータ72B−1、72B−2とを備えている。そして、電力パケットミキサ71B−1の近傍に電力パケットルータ72B−2が配置され、電力パケットルータ72B−2の出力側に2つの負荷74−3、74−4が接続されている。また、電力パケットミキサ71B−2の近傍に電力パケットルータ72B−1が配置され、電力パケットルータ72B−1の出力側に2つの負荷74−1、74−2が接続されている。
【0168】
また、電力パケットミキサ71B−1の出力と、電力パケットルータ72B−1の入力との間が電力伝送路76を介して接続され、電力パケットミキサ71B−2の出力と、電力パケットルータ72B−2の入力との間が電力伝送路77を介して接続されている。
【0169】
つまり、この電力供給システム10−7においては、往路の電力伝送路76と復路の電力伝送路77とをそれぞれ配置しなければならないので、ワイヤハーネスの電線数を削減できない。また、電力パケットミキサ71Bの数が増える可能性がある。
【0170】
そこで、本実施形態では、
図19(a)に示した電力供給システム10−6のように構成する。この電力供給システム10−6は、1台の複合電力パケットミキサ71と、2台の複合電力パケットルータ72−1、72−2とを備えている。
【0171】
複合電力パケットミキサ71は、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21の機能の他に、
図7に示した電力パケットルータ22の一部の機能を備えた複合装置である。つまり、複合電力パケットミキサ71は電力パケットを生成して送出する機能の他に、電力パケットを受け取る機能を備えており、電力パケットを双方向に伝送するために利用できる。
【0172】
また、複合電力パケットルータ72は、例えば
図7に示した電力パケットルータ22の機能の他に、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21の一部の機能を備えた複合装置である。つまり、複合電力パケットルータ72は、電力パケットを受け取る機能の他に、電力パケットを生成して送出する機能も備えているため、電力パケットを双方向に伝送するために利用できる。
【0173】
図19(a)に示した電力供給システム10−6においては、複合電力パケットミキサ71、複合電力パケットルータ72−1、72−2のそれぞれが双方向の電力パケット伝送に対応している。したがって、複合電力パケットミキサ71と複合電力パケットルータ72−1との間を単一の双方向電力伝送路75−1で接続し、複合電力パケットミキサ71と複合電力パケットルータ72−2との間を単一の双方向電力伝送路75−2で接続してある。また、複合電力パケットルータ72−1の出力側に2つの負荷74−1、74−2を接続し、複合電力パケットルータ72−2の出力側に2つの負荷74−3、74−4を接続してある。
【0174】
つまり、
図19(a)に示した電力供給システム10−6においては、
図19(b)の電力供給システム10−7と比べて電力伝送路の数が削減されている。したがって、双方向電力伝送路75−1、75−2に相当するワイヤハーネスの電線数を削減できる。また、ルータやミキサの総数も削減できるので、機器の大型化を避けることができ、電力パケット伝送技術の搭載にかかるコストを低減できる。特に、負荷の種類や総数が増えて、これらの負荷が車両上の様々な箇所に分散して配置され、それら負荷に電力を供給する電源線が方々から配索されているような状況において、顕著な効果が期待できる。
【0175】
<不足する電源電力を融通するための技術−2>
<電力供給システム10−8の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−8の構成例を
図20に示す。
図20に示した電力供給システム10−8は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ81と、複数の電力パケットルータ82−1〜82−4とを備えている。電力パケットミキサ81の基本的な構成および動作は、
図5に示した電力パケットミキサ21と同様である。また、各電力パケットルータ82−1〜82−4の基本的な構成および動作は
図7に示した電力パケットルータ22、あるいは
図13に示した電力パケットルータ22Bと同様である。
【0176】
電力パケットミキサ81の入力側には電力伝送路85−2を介して車載バッテリ83が接続されている。また、電力パケットミキサ81の出力側のポートは、電力伝送路85−1を介して電力パケットルータ82−1の入力側に接続されている。
【0177】
また、電力パケットルータ82−1の出力側には、4つの電力パケットルータ82−1〜82−4のそれぞれを通るリング状の電力伝送路が形成されている。すなわち、電力伝送路85−3が電力パケットルータ82−1、82−2の間を接続し、電力伝送路85−4が電力パケットルータ82−2、82−4の間を接続し、電力伝送路85−5が電力パケットルータ82−4、82−3の間を接続し、電力伝送路85−6が電力パケットルータ82−3、82−1の間を接続している。
【0178】
また、電力パケットルータ82−1、82−2、82−3、82−4の出力側それぞれには、複数の負荷84−1、84−2、84−3、84−4が接続されている。
【0179】
<電力融通の必要性>
図20に示した電力供給システム10−8のような状況において、各負荷84−1〜84−4がどのように使われるかは、車両の運転状況やユーザの利用状況次第で大きく変化する。したがって、各電力パケットルータ82−1〜82−4の蓄電部に各時点で蓄電されている瞬時的な蓄電電力も互いに異なる。
【0180】
そして、例えばワイヤハーネスの断線により、電力伝送路85−1の経路が遮断されると、車載バッテリ83からの電力を各電力パケットルータ82−1〜82−4に供給できなくなる。各電力パケットルータ82−1〜82−4は、それぞれ蓄電部を備えているので、電力伝送路85−1が遮断された場合でも、しばらくの間は負荷84−1〜84−4に電力を供給できる。
【0181】
しかし、各電力パケットルータ82−1〜82−4が蓄電している電力量は、その時の状況に応じて変化するので、重要度の高い負荷に対する電力供給が短時間で停止する可能性もある。したがって、電力伝送路85−1が遮断された場合に、優先順位の高い負荷の機能を、例えば車両が安全に停止するまでの間は維持するようなシステムが必要になる。
【0182】
<電力供給システム10−8における特別な機能>
図20に示した複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の各々は、お互いの間でデータ通信するための機能を有している。また、複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の少なくとも1つ、電力パケットミキサ81、又はこれらを管理する装置(図示せず)が、電力伝送路85−1の断線を検出するための機能を有している。
【0183】
また、電力伝送路85−1の断線が検出された場合に、複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の各々が蓄積している電力を有効に活用して優先度の高い負荷に対する電力供給を維持するための機能、つまり、複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の各々が必要に応じて電力を互いに融通する機能を有している。この機能は、例えば
図7の制御部45、あるいは
図13の制御部45Bによって実現される。
【0184】
<電力供給システム10−8の動作例>
図20に示した電力供給システム10−8は、電力伝送路85−1に断線が生じた場合に次のように動作する。
【0185】
1.例えば電力パケットミキサ81、又は電力パケットルータ82−1〜82−4のいずれかが断線の発生と断線した位置を検知する。
2.電力パケットミキサ81は、断線を検知すると、インジケータ89等を用いてこの異常を運転者に報知する。
3.複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の中で、互いに電力伝送路の接続状態が維持されているもの同士の間で通信を行い、それぞれの蓄電状況等を表す情報を共有する。
4.複数の電力パケットルータ82−1〜82−4の中で、事前に高い優先順位が割り当てられた負荷84が接続されている特定のルータの蓄電量が十分か否かを識別し、電力が不足している場合は、他のルータが電力を融通する。
【0186】
例えば、
図20に示した電力供給システム10−8において、電力パケットルータ82−3に接続されている負荷84−3の優先順位が高い場合に、電力パケットルータ82−3の蓄積している電力量が負荷84−3の駆動に不十分である場合を想定する。この場合は、例えば十分な電力を蓄積している電力パケットルータ82−1や他の電力パケットルータ82−4が、電力パケットルータ82−3に宛てた電力パケットを送出し、電力を融通する。この融通により、電力伝送路85−1が遮断されたままであっても電力パケットルータ82−3の蓄電部には十分な電力が充電されることになり、優先度の高い負荷84−3を少なくとも一定時間の間は駆動できる。
【0187】
なお、電力パケットルータ82−1〜82−4が互いに通信を行い電力を融通する代わりに、電力供給システム10−8が
図11に示したような配電管理ECU26Bを備え、配電管理ECU26Bが各電力パケットルータ82−1〜82−4の蓄電量を記憶しておき、必要に応じて電力パケットルータ82−1〜82−4に対し電力融通の指示を行うようにしてもよい。特に電力供給システム10−8が有する電力パケットルータの数が多い場合には、配電管理ECU26Bにより電力融通を一元管理できるので、電力パケットルータ同士で電力融通のための通信を行う必要がなくなり、システムの複雑化を抑制できる。
【0188】
<「故障診断」の技術>
車両用の電力供給システムにおいては、例えばワイヤハーネスを構成する各電線の被覆のはがれや、端子嵌合部における半嵌合などが発生する可能性があり、その影響で発生するチャタリングショート等は検知しにくく、システム全体に影響を与える可能性がある。そこで、電力伝送経路における電線等の劣化を検知し、不具合を未然に防ぐシステムが必要になる。なお、一般的な診断技術では、伝送線路の異常を検出するために新たな機器が必要であったり、断線や短絡(デッドショート)等を検出できないケースが考えられる。
【0189】
そこで、本実施形態における「故障診断」は、電力パケットルータが受信する電力パケット内のヘッダに含まれる異常検出用のパルスに関して、電圧値等の物理信号波形の変化から伝送路の異常を検出する。
【0190】
<電力供給システム10−9の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−9の構成例を
図21に示す。
図21に示した電力供給システム10−9は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ91と、複数の電力パケットルータ92−1〜92−4とを備えている。電力パケットミキサ91の基本的な構成および動作は、
図5に示した電力パケットミキサ21と同様である。また、各電力パケットルータ92−1〜92−4の基本的な構成および動作は
図7に示した電力パケットルータ22と同様である。
【0191】
電力パケットミキサ91の入力側には、互いに異なる電圧(48[V]、12[V])を供給する複数の車載バッテリ93−1、93−2が電力伝送路95−2を介して接続されている。また、電力パケットミキサ91の出力側のポートは、電力伝送路95−1を介して電力パケットルータ92−1の入力と接続されている。なお、複数の車載バッテリ93−1、93−2の出力電圧が同じであってもよい。
【0192】
また、電力パケットルータ92−1の出力側には、4つの電力パケットルータ92−1〜92−4のそれぞれを通るリング状の電力伝送路が形成されている。すなわち、電力伝送路95−3が電力パケットルータ92−1、92−2の間を接続し、電力伝送路95−4が電力パケットルータ92−2、92−4の間を接続し、電力伝送路95−5が電力パケットルータ92−4、92−3の間を接続し、電力伝送路95−6が電力パケットルータ92−3、92−1の間を接続している。
【0193】
また、電力パケットルータ92−1、92−2、92−3、92−4の出力側それぞれには、複数の負荷94−1、94−2、94−3、94−4が接続されている。
【0194】
<電力パケット30Dの構成例>
電力供給システム10−9において、電力パケットミキサ91等が送出する電力パケットは、ヘッダ31D、およびペイロード、フッターとで構成されている。更に、
図21中に示したように、ヘッダ31Dの中には、時間幅が短い劣化診断用パルス31Daが割り当ててある。
【0195】
この劣化診断用パルス31Daは、広帯域の信号成分を含んでいるためワイヤハーネスの劣化を診断するのに適している。例えば、経年劣化の影響により、ワイヤハーネスの各電線に次のような劣化が発生する可能性が考えられる。
【0196】
1.錆が発生する。
2.電線が伸びる。
3.電線表面の絶縁被覆がはがれる。
4.端子が抜けかかる。
5.端子の嵌合部が半嵌合状態になる。
【0197】
上記のようなワイヤハーネスの劣化が生じると、伝送路の電気的特性が悪化するので、特に高周波成分を含むパルス幅の短い劣化診断用パルス31Daのような信号は、伝送中の損失が増大する。その結果、例えば電力パケットミキサ91が電力伝送路95−1に送出した電力パケット30Dにおける劣化診断用パルス31Daの電圧の振幅(Vd1)と、電力パケットルータ92−1が受信する電力パケット30Dにおける劣化診断用パルス31Daの電圧の振幅(Vd2)との間に変化が発生する。したがって、このような劣化診断用パルス31Daの電圧変化、あるいは波形変化を検出することにより、ワイヤハーネスの「故障診断」を行うことができる。
【0198】
なお、
図21に示した電力供給システム10−9においては、出力電圧の異なる複数の車載バッテリ93−1、93−2が電力パケットミキサ91の入力に接続されているので、電力伝送路95−1に出力される電力パケット30Dの電圧もタイミングの違いによって2種類またはそれ以上に変化する可能性がある。しかし、ヘッダ31Dの部分については、その電圧(振幅)が変化しないように、車載バッテリ93−1、93−2の出力のうち、予め定めた一方の電圧に基づいて作成される。したがって、劣化診断用パルス31Daの送信側における電圧は一定である。
【0199】
<「故障診断」の具体例>
例えば
図21に示した電力伝送路95−1を診断対象とする場合には、電力パケットルータ92−1が、電力伝送路95−1から受信した電力パケット30Dのヘッダ31Dから劣化診断用パルス31Daを抽出し、劣化診断用パルス31Daの電圧値(Vd2)を計測する。具体的には、劣化診断用パルス31Daの電圧のピーク値、あるいは平均値を検出する。この電圧値(Vd2)を、例えば事前に定めた正常値と比較することにより、電力伝送路95−1における故障の有無を診断できる。
【0200】
また、例えば電力パケットミキサ91が送出する電力パケット30Dにおける劣化診断用パルス31Daの電圧値(Vd1)を表す情報を当該電力パケット30Dのヘッダ31Dに含めて送信してもよい。その場合は、例えば電力パケットルータ92−1が、受信した電力パケット30Dのヘッダ31Dから電圧値(Vd1)の情報を抽出し、電圧値(Vd1)と電圧値(Vd2)との差分の電圧を事前に定めた閾値と比較して、電力伝送路95−1における故障の有無を診断できる。
【0201】
また、例えば劣化診断用パルス31Daとして、パルス幅の小さいパルスと、それよりもパルス幅の大きいパルスとを組み合わせることも考えられる。その場合には、パルス幅の小さいパルスの電圧と、パルス幅の大きいパルスの電圧との差分や比率に基づいて、電力伝送路95−1における故障の有無を診断することも可能である。つまり、パルス幅の小さい信号の方が伝送路の劣化の影響を受けやすいので、パルス幅の異なる複数の信号の電圧の違いに基づいて、故障の有無を診断できる。
【0202】
また、電力供給システム10−9が
図3と同様に配電管理ECU26を備える場合には、電力パケットミキサ91が劣化診断用パルス31Daの電圧値(Vd1)を表す情報を送電情報28Bに含めて送信し、電力パケットルータ92−1が、受信した電力パケット30Dの劣化診断用パルス31Daの電圧値(Vd2)を表す情報を受電情報27Bに含めて送信し、配電管理ECU26が、電圧値(Vd1)と電圧値(Vd2)との差分の電圧を事前に定めた閾値と比較して、電力伝送路95−1における故障の有無を診断するようにしてもよい。
【0203】
また、電力供給システム10−9は、
図14と同様の動作を行ってもよい。すなわち、配電管理ECU26Bが、電圧値(Vd1)の情報を含む送電情報28Bを受信してから、受電情報受領待ちタイマのタイムアウトまでに、電力パケットルータ92−1から、電圧値(Vd2)の情報を含む受電情報27Bが受領されない場合、配電経路に断線、短絡等の異常が生じていると判定し(S76)、同一配電経路による配電を行わないようにする(S77)。たとえば、
図21に示した電力供給システム10−9においては、4つの電力パケットルータ92−1〜92−4の間の電力伝送路がリング状に接続されているので、この箇所では必要に応じて複数の経路を選択できる。したがって、例えば電力伝送路95−3で伝送路の故障が発生した場合には、故障診断の結果を反映し、電力伝送路95−6に自動的に切り替えて電力パケット30Dを伝送することも考えられる。
【0204】
本実施形態の電力供給システム10−9においては、特別な配線や機器を使用する事なく、断線や短絡(デッドショート)等を含む配電経路の異常を確実に検出可能である。しかも、実際に配電しているワイヤハーネス自体の異常を直接検出できる。
【0205】
<負荷毎の優先度を考慮して配電するための技術>
<電力供給システム10−11の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−11の構成例を
図22に示す。
【0206】
図22に示した電力供給システム10−11は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ111、電力パケットルータ112、および配電管理ECU116を備えている。 電力パケットミキサ111の基本的な構成および動作は、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21と同様である。また、電力パケットルータ112の基本的な構成および動作は、例えば
図7に示した電力パケットルータ22と同様である。また、配電管理ECU116の基本的な構成および動作は、例えば
図9に示した配電管理ECU26と同様であり、本実施形態においては例えばボディECUにより構成されている。
【0207】
電力パケットミキサ111の入力側には、複数の車載バッテリ(電源)113が電力伝送路115−2を介して接続されている。また、電力パケットミキサ111の出力と電力パケットルータ112の入力との間は、電力伝送路115−1を介して接続されている。また、電力パケットルータ112の出力側には複数の負荷114−1、114−2が接続されている。なお、複数の車載バッテリ(電源)113が出力する電圧については、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0208】
したがって、車載バッテリ113から供給される電源電力に基づいて、電力パケットミキサ111で例えば電力パケット117−1、117−2、117−3を順次に生成し、電力伝送路115−1を経由して電力パケットルータ112に送ることができる。また、電力パケットルータ112は各負荷114−1、114−2に必要な電力を供給することができる。
【0209】
図22に示した例では、配電管理ECU116は、複数の車載バッテリ113の充電量を監視する機能を有している。また、配電管理ECU116は電力パケットミキサ111と接続され、電力パケットミキサ111に対して給電制御を実施することができる。
【0210】
<負荷毎の優先度に応じた配電の必要性>
図22に示した電力供給システム10−11のような環境において、何らかの原因により車載バッテリ113の充電量が不足する場合がある。そして、車載バッテリ113の充電量が不足する場合には、各負荷114−1、114−2を駆動するために必要とされる全ての電力パケットを、電力パケットミキサ111が電力パケットルータ112に供給できない状態になる。したがって、各負荷114−1、114−2の動作が停止する。
【0211】
一方、車両上には実際には様々な種類の負荷が存在しているので、重要度の高い負荷と、重要度の低い負荷とがある。また、各負荷の重要度が高いか否かは走行環境や車両状態に応じて変化する。そして、車載バッテリ113の充電量が不足する場合には、重要度の高い負荷に対する電力の供給も停止する。したがって、車載バッテリ113の充電量が不足する場合であっても、重要度の高い負荷に対する電力供給ができる限り停止しないように、一部の負荷に対して優先的に電力を供給することが必要になる。
【0212】
<電力供給システム10−11の特徴的な動作>
図22に示した電力供給システム10−11においては、複数の負荷114−1、114−2の各々について優先度の高低を配電管理ECU116が管理している。この優先度は事前に定めた固定的なものではなく、その時の状況に応じて変化する。
【0213】
すなわち、配電管理ECU116は、予め用意された給電優先度テーブルの内容と、その時の状況を表す情報、例えば、車両の走行状態の違い、乗員の状態、気温、明暗などの車外環境の違いとに基づいて、各負荷114−1、114−2の優先度の高低を動的に決定する。例えば、
図22に示した例では、一方の負荷114−1の優先度が高く、他方の負荷114−2の優先度が低い状況を表している。
【0214】
配電管理ECU116は、車載バッテリ113の充電量の監視の結果に基づき、車載バッテリ113の充電量が不足する状態(蓄電残量が低下した状態)を検知すると、負荷114−1、114−2に対する優先制御を実行する。
【0215】
例えば、電力パケットルータ112が送出する配電要求に応じて、
図22に示すように負荷114−1宛ての電力パケット117−1、117−3、および負荷114−2宛ての電力パケット117−2が電力パケットミキサ111から順次に送出される状態において、配電管理ECU116の優先制御により、優先度の低い負荷114−2宛ての電力パケット117−2の出力が停止、又は抑制される。また、例えば停止した電力パケット117−2の分だけ、電力パケット117−3の電力を増やし、増やした電力を電力パケットルータ112宛てに送電する。
【0216】
電力パケットミキサ111が送出する各電力パケット117−1〜117−3は、例えば
図4に示した電力パケット30と同じように、ヘッダ31およびペイロード32により構成される。また、ヘッダ31には、同期信号31a、宛先情報31b、送電電力情報31cが含まれている。宛先情報31bにより、各電力パケット117−1〜117−3の宛先を指定することができる。また、送電電力情報31cにより、各宛先に送電した電力量を電力パケットルータ112に知らせることができる。
【0217】
電力パケットミキサ111は、配電管理ECU116から受領する送電指示情報に基づき生成した電力パケットを所定の出力ポートへ送出する。
【0218】
電力パケットルータ112は、入力ポートで受信した電力パケットのヘッダに含まれる宛先情報を照合する。照合の結果、自ルータに接続される負荷宛の場合は、ペイロードの電力を蓄電部に充電するとともに蓄電部の電力を所定の出力ポートへ出力する。照合の結果、自ルータを中継した他ルータに接続される負荷宛の場合は、蓄電部の電力から所定ルータ宛の電力パケットを生成し所定の出力ポートに出力し、所定ルータへ転送する。電力パケットルータ112は、出力ポートに接続される負荷の駆動電力と蓄電部の充電状態とに基づいて、必要に応じ配電管理ECU116へ配電要求情報を通知する。
【0219】
配電管理ECU116は、電力パケットルータ112から配電要求情報の通知を受けると、車載バッテリ113の充電量と要求電力とを比較し充電量が上回る場合、電力パケットミキサ111に対し送電指示情報を通知する。
【0220】
また、配電管理ECU116は、車載バッテリ113の充電量が要求電力を下回る場合、配電要求元の車載負荷の優先度よりも低い優先度が割当てられた車載負荷宛の送電指示を禁止し、配電電力を確保したうえで、電力パケットミキサ111に対し配電要求元の車載負荷に対する送電指示情報を通知する。配電要求元の車載負荷の優先度よりも低い優先度が割当てられた車載負荷宛の送電指示が行われていない場合、配電管理ECU116は配電要求元車載負荷に対する送電指示は行わない。
【0221】
各車載負荷に割当てられる優先度は、例えば電力パケットルータ112からの配電要求情報により通知され配電管理ECU116により管理される。または、配電管理ECU116が、各負荷の種別と車両状態(走行状態、乗員状態、車外環境(気温、明暗)等)とに基づいて、各負荷の優先度を決定し管理する。
【0222】
図22に示した電力供給システム10−11においては、車載バッテリ113等の電源の供給可能な電力が不足するような場合に、各負荷114−1、114−2に対する優先制御を実施することができる。しかも、給電量や給電タイミングを制御するために特別な回路を追加する必要がない。また、電力パケットにより各車載負荷宛の給電を個別に制御可能であり、システム異常時に配電を許容する車載負荷を限定する事ができるため、重要負荷への配電を最大限継続させることが可能となる。
【0223】
なお、電力供給システム10−11は、
図18に示した電力供給システム10−5と同様、配電管理ECU116の代わりに電力パケットミキサ111によって優先度の決定や管理を行うようにしてもよい。
【0224】
<複数負荷宛ての電力をまとめて送電する技術>
<電力供給システム10−12の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−12の構成例を
図23(a)に示す。また、互いに異なる動作において各部の伝送路に出力される電力パケットの変化例を
図23(b)および
図23(c)に示す。
【0225】
図23(a)に示した電力供給システム10−12は、主要な構成要素として、電力パケットミキサ121、複数の電力パケットルータ122−1〜122−3、および配電管理ECU126を備えている。
【0226】
電力パケットミキサ121の基本的な構成および動作は、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21と同様である。また、各電力パケットルータ122−1〜122−3の基本的な構成および動作は、例えば
図7に示した電力パケットルータ22と同様である。また、配電管理ECU126の基本的な構成および動作は、例えば
図9に示した配電管理ECU26と同様である。
【0227】
電力パケットミキサ121の入力側には車載バッテリ(電源)123が接続されている。また、電力パケットミキサ121の複数の出力ポートには、複数の電力パケットルータ122−1、122−2の入力ポートが電力伝送路127−2、127−5を介して接続されている。
【0228】
電力パケットルータ122−1の複数の出力ポートには、電力伝送路127−3を経由して、電力パケットルータ122−3、および複数の負荷124−1、124−2が接続されている。電力パケットルータ122−2の複数の出力ポートには、電力伝送路127−6を経由して複数の負荷124−5、124−6が接続されている。電力パケットルータ122−3の複数の出力ポートには、電力伝送路127−4を経由して複数の負荷124−3、124−4が接続されている。また、配電管理ECU126は、電力パケットミキサ121との間で通信できるように接続されている。
【0229】
<一般的な動作の説明>
図23に示した電力供給システム10−12が一般的な動作を実施する場合における各電力伝送路127−1〜127−6の状態が
図23(b)に示されている。なお、電力伝送路127−1は、電力パケットミキサ121の全ての出力ポートに接続される電力伝送路の状態に相当する。
【0230】
図23(b)に示した例では、電力伝送路127−1上に、6個の電力パケットP1、P2、P3、P4、P5、P6が時間的にほぼ連続した状態で順番に現れている。ここで、各電力パケットP1〜P6は、それぞれ異なる負荷(LOAD)124−1〜124−6宛てのパケットである。
【0231】
すなわち、負荷124−1宛ての電力パケットP1および、負荷124−2宛ての電力パケットP2の電力は、電力伝送路127−1から、電力伝送路127−2、127−3を経由して宛先まで送られる。
【0232】
また、負荷124−3宛ての電力パケットP3、および負荷124−4宛ての電力パケットP4の電力は、電力伝送路127−1から、電力伝送路127−2、127−3、127−4を経由して宛先まで送られる。また、負荷124−5宛ての電力パケットP5、および負荷124−6宛ての電力パケットP6の電力は、電力伝送路127−1から、電力伝送路127−5、127−6を経由して宛先まで送られる。
【0233】
<一般的な動作における課題>
図23(b)に示した従来方式のようにミキサにて接続されたすべての負荷に向けたパケットを生成するとペイロード分の時間が冗長となり、電力伝送路を効率よく利用できない。また、各電力パケットのヘッダの時間帯は送電に利用できない。
【0234】
<特徴的な制御>
上記のような問題を解消するために、
図23(a)に示した電力供給システム10−12においては、次に説明するような制御を実施する。
【0235】
1.電力伝送路の負荷が多くなったような場合(
図23(b)の状態に相当)に、上流側の電力パケットミキサ121は、宛先が異なる複数の電力パケットを纏めて1つの電力パケットを生成する。
2.下流側の各電力パケットルータ122や電力パケットミキサ121は、受信した電力パケットのヘッダ情報に基づいて、1つの電力パケットを宛先毎の複数の電力パケットに分離し、分離した電力パケット毎に処理を実行する。
【0236】
上記のように宛先が異なる複数の電力パケットを1つに纏めることにより、伝送路に送出されるヘッダの所要時間を減らすことが可能になり、効率的な伝送が可能になる。
【0237】
<特徴的な動作の具体例>
図23に示した電力供給システム10−12が上記の特徴的な制御を実施する場合における各電力伝送路127−1〜127−6の状態が
図23(c)に示されている。また、
図23(c)に示した例では、
図23(b)に示した例と同様に、負荷124−1〜124−6宛ての6個の電力パケットP1、P2、P3、P4、P5、P6を時間的にほぼ連続した状態で電力パケットミキサ121から送出する必要がある場合を想定している。
【0238】
図23(c)に示した例では、電力パケットミキサ121は、共通の電力伝送路127−2を通過する4個の電力パケットP1、P2、P3、P4を纏めた結果として、電力パケットルータ122−1宛ての電力パケットPR1を生成し、これを電力伝送路127−1に送出している。
【0239】
また、電力パケットPR1の送出が終了した後で、電力パケットミキサ121は、共通の電力伝送路127−5を通過する2個の電力パケットP5、P6を纏めた結果として、電力パケットルータ122−2宛ての電力パケットPR2を生成し、これを電力伝送路127−1に送出している。
【0240】
電力パケットミキサ121が送出した電力パケットPR1は、電力伝送路127−2を経由して電力パケットルータ122−1に到達する。これを受け取った電力パケットルータ122−1は、パケットヘッダの情報に基づき、電力パケットPR1に含まれている4個の電力パケットP1、P2、P3、P4を互いに分離して処理する。したがって、分離された電力パケットP1、P2の電力がそれぞれ宛先の負荷124−1、124−2に供給される。
【0241】
また、電力パケットルータ122−1は、分離した電力パケットP3、P4を纏めて、電力パケットルータ122−3を宛先とする電力パケットPR3を生成し、出力する。また、電力パケットルータ122−3は、電力パケットPR3を受け取って、これを分解し、電力パケットP3、P4をそれぞれ抽出し、これらを個別に処理する。したがって、電力パケットP3、P4の電力が、それぞれ宛先の負荷124−3、124−4に供給される。
【0242】
電力パケットミキサ121が送出した電力パケットPR2は、電力伝送路127−5を経由して電力パケットルータ122−2に到達する。これを受け取った電力パケットルータ122−2は、パケットヘッダの情報に基づき、電力パケットPR2に含まれている2個の電力パケットP5、P6を互いに分離して処理する。したがって、分離された電力パケットP5、P6の電力がそれぞれ宛先の負荷124−5、124−6に供給される。
【0243】
つまり、
図23に示した電力供給システム10−12においては、配電系上流において複数負荷宛の電力をまとめて電力パケット化し、下流においてヘッダー情報を基にそれぞれの負荷宛の電力パケットに再構築して送電する。
【0244】
図23(a)に示した電力供給システム10−12においては、複数の電力パケットを1つの電力パケットに纏めて送出するので、パケット毎に送出されるヘッダの情報タグ分の時間を、電力供給用のペイロードに費やすことができる。例えば、全てのパケットが同じビット数の情報タグを使う場合を仮定すると、一般的な制御の場合と比較して、送電電力増加が見込める。
【0245】
<伝送する電力を時分割制御する技術>
<電力供給システム10−13の構成例>
本発明の実施形態における電力供給システム10−13の構成例を
図24に示す。
図24に示した電力供給システム10−13はリングトポロジーを形成している。すなわち、主要な構成要素である電力パケットミキサ131−1、131−2、電力パケットルータ132−1、132−2、132−3、132−4がリング状に接続された電力伝送路を介して互いに接続されている。また、配電管理ECU136が通信線137−1、137−2を介して電力パケットミキサ131−1、131−2と接続されている。
【0246】
各電力パケットミキサ131−1、131−2の基本的な構成および動作は、例えば
図5に示した電力パケットミキサ21と同様である。また、各電力パケットルータ132−1〜132−4の基本的な構成および動作は、例えば
図7に示した電力パケットルータ22と同様である。また、配電管理ECU136の基本的な構成および動作は、例えば
図9に示した配電管理ECU26と同様である。
【0247】
電力パケットミキサ131−1の入力には、複数の車載バッテリ133−1、133−2が接続されている。電力パケットミキサ131−2の入力には、複数の車載バッテリ133−3、133−4が接続されている。なお、複数の車載バッテリ133−1、133−2、133−3、133−4の出力する電圧については、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0248】
電力パケットルータ132−1の複数の出力ポートには複数の負荷134−1が接続されている。電力パケットルータ132−2の複数の出力ポートには複数の負荷134−2が接続されている。電力パケットルータ132−3の複数の出力ポートには負荷134−3が接続されている。電力パケットルータ132−4の複数の出力ポートには複数の負荷134−4が接続されている。
【0249】
<リングトポロジーのシステムにおける課題>
例えば
図24に示した電力供給システム10−13においては、リング状に接続されている共通の電力伝送路上に、複数の電力パケットミキサ131−1、131−2が同時に電力パケットを送出する可能性がある。そして、送出された複数の電力パケットが共通の電力伝送路上で衝突する場合がある。
【0250】
<電力供給システム10−13の特徴的な制御>
図24に示した電力供給システム10−13は、送出された複数の電力パケットが共通の電力伝送路上で衝突するのを回避するために、次のような特別な制御を実施する。
【0251】
1.ネットワークの全体を管理する電力管理ノード、つまり配電管理ECU136が、複数のタイムスロットを連結して構成したパケット伝送フレームを生成する。
2.このパケット伝送フレームの先頭スロットに、後続の各スロットに割り当てられた電力の割り当て情報を格納する。
3.ネットワーク上の各電力パケットミキサ131、電力パケットルータ132は、ネットワーク上に現れたパケット伝送フレームの先頭スロットの情報に基づき、電力パケットの送受信のタイミングを検知する。
【0252】
パケット伝送フレームを構成する各タイムスロットについては、各電力パケットミキサ131、電力パケットルータ132が送出する電力パケットのタイミングが同時にならないように割り当てを行う。
【0253】
例えば、4つのタイムスロットT1、T2、T3、T4で1つのパケット伝送フレームを構成し、各タイムスロットT2、T3、T4に、それぞれ1番目、2番目、3番目の電力パケットミキサ131のパケット伝送を割り当てて、この割り当ての内容を先頭のタイムスロットT1に格納するように、配電管理ECU136が制御する。
【0254】
また、配電管理ECU136が割り当てたパケット伝送フレームおよび各スロットの情報は、各電力パケットミキサ131が送出する電力パケットのヘッダにおける情報タグに格納することが可能である。
【0255】
各電力パケットミキサ131および電力パケットルータ132は、割り当てられたタイミングにてパケット送出を行うことで情報タグが劣化してしまうことを防ぐことができる。したがって、
図24に示したようなリングトポロジーの電力供給システム10−13を構成する場合であっても、複数の電力パケットが共有のネットワーク上で衝突するのを防止できる。
【0256】
なお、配電管理ECU136は、例えば操作者の電源スイッチON操作や、新規負荷の接続の際に、タイムスロットの構成を最適な状態に組み替えることができる。各電力パケットミキサ131と電力パケットルータ132との間で必要とされる通信機能については、電力パケットの情報タグを利用して実現することが可能である。それ以外に、周波数分割多重方式等を用いて電力パケットのクロックの基本周波数と異なる周波数に信号を乗せて通信を行うことや、無線通信を用いてもよい。
【0257】
また、上述の電力供給システム10−13においては、リングトポロジーを有する場合を例に説明しているが、電力供給システム10−13がツリー型やスター型など他のトポロジーを採用してもよい。
【0258】
<電力の非接触給電のための技術>
<非接触給電の必要性の説明>
車両上においては、様々な箇所に存在する様々な種類の負荷に対して電源電力を供給する必要がある。そのため、例えば負荷に電源電力を供給するワイヤハーネスの配索経路が、ドアの接続部のような可動部を経由したり、難配索部位を経由することが避けられない場合がある。したがって、ワイヤハーネスの接触不良や断線が生じやすくなったり、配索作業が困難になるという課題がある。また、このようなワイヤハーネスの配索により、車両形態の自由度や意匠が制限されることになる。ワイヤハーネスを非接触給電で置き換えることができれば、様々な可動部や難配索部位を通過するワイヤハーネスが不要になるので、上記の課題を解決できる。
【0259】
<電力供給システムの構成例−14>
非接触給電技術を含む電力供給システムの構成例−14を
図26に示す。
図26に示した電力供給システム10−14は、前述の電力供給システムと同じように、電力パケットミキサ11および電力パケットルータ12を備えている。電力パケットミキサ11の入力には、12[V]の電源電圧を出力する車載バッテリ13Aと、48[V]の電源電圧を出力する車載バッテリ13Bとが接続されている。なお、複数の車載バッテリ13A、13Bの電圧を同一にしてもよい。
【0260】
電力パケットミキサ11および電力パケットルータ12の基本的な構成および動作は前述の実施形態と同様である。すなわち、電力パケットミキサ11は、車載バッテリ13A、13Bから供給される直流電源電力に基づいて電力パケット30を生成する。生成された電力パケット30は、電力伝送路16Aを経由して電力パケットルータ12の入力に供給される。
【0261】
電力パケットルータ12は、入力された電力パケット30のヘッダ31から宛先などの情報を取得すると共に、ペイロード32から電力を取り出して、例えば
図1に示す蓄電部15A,15Bに蓄電する。また、蓄電した電力を負荷に対して供給する。
【0262】
図26に示した例では、負荷14Aは電力パケットルータ12の0番目の出力ポートに有線で直接接続されているが、他の負荷14B、および14Cは、非接触給電技術を利用して接続されている。なお、電力パケットルータ12の出力に非接触給電技術で接続する負荷の数nは必要に応じて増減できる。
【0263】
また、本実施形態では、複数の負荷に選択的に電力を供給するため、n個の出力ポート部各々に出力スイッチ17が備わっている。すなわち、交流出力回路としての出力スイッチ17を所定の条件に従って周期的にオンオフすることにより、所望の周波数の交流電力を出力できる。
【0264】
電力パケットルータ12の1番目〜n番目の各出力ポートには、それぞれ1番目〜n番目の送電回路18−1〜18−nが接続されている。1番目の送電回路18−1は、互いに直列に接続されたインダクタL
11と、キャパシタC
11とで構成されている。なお、これらを並列に接続した回路に変更することも可能である。送電回路18−1のインダクタL
11およびキャパシタC
11は共振回路を形成している。すなわち、インダクタL
11およびキャパシタC
11の時定数に対応する特定の共振周波数f
0において回路のインピーダンスが極値になる。2番目〜n番目の送電回路も送電回路18−1と同様である。共振周波数f
0については、1番目〜n番目の送電回路18−1〜18−nの全てについて共通にする場合もあるし、それぞれ独立した周波数に定める場合もある。
【0265】
一方、送電回路18−1〜18−nのそれぞれと対向する位置に、非接触の状態で、1番目〜n番目の受電回路19−1〜19−nがそれぞれ配置されている。1番目の受電回路19−1は、互いに直列に接続されたインダクタL
12と、キャパシタC
12とで構成されている。なお、これらを並列に接続した回路に変更することも可能である。受電回路19−1のインダクタL
12およびキャパシタC
12は共振回路を形成している。すなわち、インダクタL
12およびキャパシタC
12の時定数に対応する特定の共振周波数f
0において回路のインピーダンスが極値になる。2番目〜n番目の受電回路も受電回路19−1と同様である。
【0266】
また、1番目の送電回路18−1における共振周波数
f0と、1番目の受電回路19−1における共振周波数
f0とが共通の周波数になるように設計される。電力パケットルータ12が共振周波数f
0と同じ周波数の交流電力を送電回路18−1に供給すると、送電回路18−1側のインダクタL
11と、受電回路19−1側のインダクタL
12との間の電磁誘導によりこれらが結合する。したがって、非接触で結合した回路の一次側のインダクタL
11から二次側のインダクタL
12に対して交流電力が伝達される。
【0267】
電力パケットルータ12が出力スイッチ17をスイッチングするタイミングを制御することにより、送電回路18−1〜18−nに供給する交流電力の周波数を、送電回路18−1〜18−nの共振周波数f
0と一致させることができる。例えば、電力パケットルータ12が送電回路18−1および受電回路19−1の共振周波数f
0と一致する周波数の交流電力を送電回路18−1に供給することにより、この交流電力を送電回路18−1から受電回路19−1に対して高効率で非接触給電することが可能になる。2番目〜n番目の送電回路および受電回路についても同様である。各送電回路18−1〜18−nおよび各受電回路19−1〜19−nの共振周波数f
0が全て同一の場合には、電力パケットルータ12は共通の共振周波数f
0と一致する周波数を用いて交流電力を出力スイッチ17で生成し、各送電回路18−1〜18−nに供給できる。
【0268】
受電回路19−1の出力に負荷14Bが接続されている。したがって、受電回路19−1が受電した電力を負荷14Bに供給することができる。受電回路19−nに接続された負荷14Cについても同様である。また、非接触給電が不要な負荷14Aについては、送電回路や受電回路は使用せず、
図26に示すように有線で電力パケットルータ12の出力ポートに接続する。
【0269】
電力パケットルータ12が各送電回路18−1〜18−nを適切に制御するために必要な共振周波数f
0の情報は、予め電力パケットミキサ11に保持しておくか、又は前述の配電管理ECU26に保持しておくことが想定される。そして、配電管理ECU26又は電力パケットミキサ11から電力パケットルータ12に対して、共振周波数f
0の情報を提供する。
【0270】
<非接触給電の変形例>
図26に示した電力供給システム10−14においては、出力スイッチ17を適切に制御することで所望の周波数の交流電力を得ている。しかし、以下に示すように電力パケットミキサ11又は電力パケットルータ12が特別な制御を実施する場合には、出力スイッチ17による制御は不要になる。
【0271】
例えば、電力パケットミキサ11が電力パケット30を電力伝送路16Aに送出する際に、電力パケット30毎の時間長や送出間隔が、送電回路18−1〜18−nの共振周波数f
0と一致するように、電力パケット30を分割してから送出することが想定される。この場合には、電力パケットルータ12の内部では、電力伝送路16Aから周期的に受け取った電力パケット30により、共振周波数f
0と一致する交流電力が生成される。この交流電力を電力パケットルータ12が送電回路18−1〜18−nにそのまま供給すれば、送電回路18−1〜18−nの交流電力を、受電回路19−1〜19−nに非接触で給電することができる。
【0272】
なお、電力パケットミキサ11が送出する電力パケット30を共振周波数f
0と一致するように分割する処理については、電力パケット30の全体について実施してもよいし、ペイロード32だけについて実施してもよい。また、電力パケット30を分割する処理を電力パケットルータ12の内部で行ってもよい。
【0273】
<点滅するランプを駆動するための技術>
<背景の説明>
一般的に、車両上には右左折の合図を出す方向指示器として、サイドターンシグナルランプが装備されている。また、ハザードランプも装備されている。これらのランプは動作時に一定の周期で点滅制御する必要がある。
【0274】
このようなランプを制御するために一般的には
図27に示すようなランプ制御回路が用いられている。
図27に示したランプ制御回路は、コラムスイッチ302、ハザードスイッチ303、ECU(電子制御ユニット)304、フラッシャASSY310、および左右のサイドターンシグナルランプ305、306を備えている。フラッシャASSY310は互いに独立した2つのリレー311、312を内蔵している。
【0275】
すなわち、車載バッテリ301の電力が、フラッシャASSY310内のリレー311、312の接点を経由して、それぞれサイドターンシグナルランプ305、306に供給される。リレー311、312のオンオフを周期的に繰り返すことで、サイドターンシグナルランプ305、306を点滅させることができる。
【0276】
ECU 304は、コラムスイッチ302およびハザードスイッチ303の状態を常時モニタリングしており、コラムスイッチ302又はハザードスイッチ303がオンになると、フラッシャASSY310内のリレー311、312を制御し、サイドターンシグナルランプ305、306を点滅させる。
【0277】
一方、近年では一般的な方向指示器およびハザードランプの他に、例えばESS(Emergency Stop signal System)の機能のように、方向指示器やハザードランプの点滅周期とは異なる点滅周期で点滅制御を行わせる要望もある。なお、ESSは、緊急制動用の点滅周期でランプを点滅制御するものである。しかし、機械式リレーのようなランプ制御回路を用いると、点滅周期に限界があり、また、部品点数の削減も難しい。
【0278】
前述の電力パケットを利用してランプ制御回路を構成することにより、回路構成を複雑化することなく、ESS等の機能を追加することが容易になる。
【0279】
<電力パケットを利用したランプ制御回路の構成例>
電力パケットを利用したランプ制御回路の構成例を
図28に示す。
図28に示したランプ制御回路は、電力パケットミキサ323、電力パケットルータ327、バッテリ321、322、コラムスイッチ302、ハザードスイッチ303、左右のサイドターンシグナルランプ328、329、および負荷330を備えている。なお、複数のバッテリ321、322の電圧は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0280】
図28の構成においては、電力パケットミキサ323の入力にコラムスイッチ302およびハザードスイッチ303が接続されている。また、電力伝送路326を介して電力パケットミキサ323と電力パケットルータ327とが接続されている。電力パケットルータ327の複数の出力ポートには、左右のサイドターンシグナルランプ328、329、および負荷330が接続されている。
【0281】
電力パケットミキサ323は、基本的にはバッテリ321、322から供給される直流の電源電力に基づいて前述の電力パケット30を生成し、電力伝送路326に供給する。コラムスイッチ302およびハザードスイッチ303は、運転者の手動操作によりオンオフし、方向指示器およびハザードランプの点灯(点滅)指令信号を生成する。
【0282】
電力パケットミキサ323は、コラムスイッチ302又はハザードスイッチ303からランプの点灯指令信号を受信すると、電力パケットルータ327に対して電力パケット30の送電を開始する。送電する各電力パケット30のヘッダ31には、宛先の負荷(328,329,330)を特定する情報が含まれている。
【0283】
電力パケットルータ327は、電力パケットミキサ323から受け取った電力パケット30のヘッダ31の内容を参照して電力供給先の負荷およびその種類を特定する。例えば、宛先の負荷がサイドターンシグナルランプ328又は329の電力パケット30を電力パケットルータ327が受け取った場合には、電力パケットルータ327はこの電力パケット30の電力を蓄電部15A,15Bを通すことなく、直接サイドターンシグナルランプ328又は329へ供給する。
【0284】
図28に示したランプ制御回路において、電力パケットミキサ323からの電力の伝送は電力パケット30を用いた時分割伝送である。したがって、電力パケットミキサ323は、サイドターンシグナルランプ328又は329宛ての電力パケット30を、例えば一定の時間間隔で繰り返し送出することができる。この場合、電力パケットルータ327が受け取った電力パケット30をそのままサイドターンシグナルランプ328又は329へ供給することにより、電力パケット30が送出される一定の時間間隔で、サイドターンシグナルランプ328又は329が点滅することになる。
【0285】
つまり、電力パケットルータ327が特別な点滅制御を実施することなく、サイドターンシグナルランプ328又は329の点滅動作を実現できる。更に、電力パケットミキサ323が電力パケット30の送出間隔を変更すれば、サイドターンシグナルランプ328および329の点滅周期を変更できる。したがって、
図28に示した回路構成を変更しなくても、例えばESSのランプ点滅機能を付加することが容易に実現できる。
【0286】
なお、短い時間周期でのランプ点滅を可能にするために、電力パケット30のペイロード32を複数に分割する場合もある。また、電力パケット30のヘッダ31には、宛先を特定する情報の他に、シグナルランプ専用の電力である旨の情報が電力パケットミキサ323により書き込まれる。また、図示しないが、各電力パケット30のペイロード32の最後尾にフッタが付加される。このフッタに、ランプの点滅終了を指示する終了情報が電力パケットミキサ323により書き込まれる。電力パケットルータ327は、フッタの終了情報に従って該当するランプへの電力供給を終了し、点滅動作を終了する。
【0287】
<電力パケットミキサの具体的な動作例>
図28のランプ制御回路における電力パケットミキサの動作例を
図29に示す。
図29の動作について以下に説明する。
【0288】
電力パケットミキサ323は、コラムスイッチ302からの信号と、ハザードスイッチ303からの信号を常時モニタリングしている(S301,S302)。そして、コラムスイッチ302からのサイドターンリクエスト信号「Column_Flag」がオン(1)になると、次のステップS303で左サイドターン点灯リクエスト信号「LAMP_L」を参照し、左右のいずれのランプ点灯要求かを識別する。
【0289】
左のランプ点灯要求があった場合には、電力パケットミキサ323はステップS306で、左サイドターン電力パケット「LAMP_Lp」を電力伝送路326に送出する。この左サイドターン電力パケット「LAMP_Lp」は、当該電力の宛先がサイドターンシグナルランプ328であることを示す情報と、シグナルランプ専用の電力である旨の情報をヘッダ31で保持している。
【0290】
右のランプ点灯要求があった場合には、電力パケットミキサ323はステップS305で、右サイドターン電力パケット「LAMP_Rp」を電力伝送路326に送出する。この右サイドターン電力パケット「LAMP_Rp」は、当該電力の宛先がサイドターンシグナルランプ329であることを示す情報と、シグナルランプ専用の電力である旨の情報をヘッダ31で保持している。
【0291】
一方、ハザードスイッチ303からのハザードリクエスト信号「Hazard_Flag」がオン(1)になると、電力パケットミキサ323は、ステップS302からS304に進む。そして、左右のランプを同時点滅させるために、電力パケットミキサ323は左右サイドターン電力パケット「LAMP_LRp」を電力伝送路326に送出する。
【0292】
この左右サイドターン電力パケット「LAMP_LRp」は、当該電力の宛先がサイドターンシグナルランプ328および329であることを示す情報と、シグナルランプ専用の電力である旨の情報をヘッダ31で保持している。これにより、左右ランプ同時点滅の指示をこのパケットで同時に送ることができる。
【0293】
<電力パケットルータの具体的な動作例>
図28のランプ制御回路における電力パケットルータの動作例を
図30に示す。
図30の動作について以下に説明する。
【0294】
電力パケットルータ327は、電力伝送路326を経由して入力に到着した電力パケット30の種類に応じた動作を実施する。すなわち、電力パケットルータ327は、電力パケット30のヘッダ31を参照することにより、左サイドターン電力パケット「LAMP_Lp」、右サイドターン電力パケット「LAMP_Rp」、左右サイドターン電力パケット「LAMP_LRp」を区別する(S311〜S313)。
【0295】
電力パケットルータ327は、左サイドターン電力パケット「LAMP_Lp」を受け取った場合には、S311からS315に進み、当該パケットの電力を左側のサイドターンシグナルランプ328に供給する。
【0296】
電力パケットルータ327は、右サイドターン電力パケット「LAMP_Rp」を受け取った場合には、S312からS314に進み、当該パケットの電力を右側のサイドターンシグナルランプ329に供給する。
【0297】
電力パケットルータ327は、左右サイドターン電力パケット「LAMP_LRp」を受け取った場合には、S313からS314およびS315に進み、当該パケットの電力を左右のサイドターンシグナルランプ328、329に同時に供給する。
【0298】
なお、
図28に示したランプ制御回路は、ターンシグナルランプやハザードランプの点滅を行うための機能を提供するものであるが、これ以外の負荷を間欠的に駆動するために利用することもできる。例えば、ワイパのモータを間欠駆動するために利用したり、各種ヒータを間欠駆動して発熱量を調整するために利用することもできる。
【0299】
図28に示したランプ制御回路を採用する場合には、例えば
図27に示したフラッシャASSY 310の部品が不要になり、装置構成が簡略化される。しかも、ESSなどの機能を付加する場合であっても、余分な回路の追加は不要であり、例えば電力パケットミキサ323等におけるプログラムの変更だけで対応できる。
【0300】
<負荷が利用する電力と制御系が利用する電力とを別系統で供給するための技術>
_<電源を別系統にする必要性の説明>
例えば
図3に示した電力供給システム10−2において、各負荷24−1〜24−nに供給する電力は、電源23−1〜23−nから供給される電源電力に基づいて、電力パケットミキサ21が電力パケット30として生成する。
【0301】
しかし、実際には負荷24−1〜24−n以外に、電力パケットミキサ21、電力パケットルータ22、および配電管理ECU26がそれぞれ動作するために電源電力が必要になる。したがって、電力パケットミキサ21、電力パケットルータ22、および配電管理ECU26が必要とする電源電力も、電源23−1〜23−nから供給することが想定される。
【0302】
つまり、制御系である電力パケットミキサ21、電力パケットルータ22、および配電管理ECU26の電源、および負荷24−1〜24−nの電源として、電源23−1〜23−nを共通に利用することになる。しかし、その場合には負荷24−1〜24−nが必要とする電力の総和以上の電力を供給する能力を、電源23−1〜23−nに持たせる必要がある。
【0303】
そのため、電源23−1〜23−nの電力容量を増やす必要がある。また、負荷24−1〜24−nの全てが電力を消費しない状況であっても、電源23−1〜23−nの電力が消費されるので、電源23−1〜23−nが蓄積している電力残量の管理が困難になったり、暗電流の問題が生じる可能性もある。
【0304】
したがって、電力パケットミキサ21、電力パケットルータ22、および配電管理ECU26等が必要とする電源電力を、電源23−1〜23−nとは別の専用電源から供給することが想定される。
【0305】
<電力供給システムの構成例−15>
本発明の実施形態における電力供給システムの構成例−15を
図31に示す。
図31に示した電力供給システム10−15の基本的な構成は、
図11に示した電力供給システム10−3と同様である。但し、
図31の構成では制御系へ電源電力を供給する専用電源161が追加されている。専用電源161は、他の電源23−1〜23−nから独立した専用のバッテリ(二次電池)である。
【0306】
図31に示した構成においては、専用電源161の出力は、配電線162を経由して電力パケットルータ22B−1、22B−2、および22B−3の各電源入力端子に接続されている。また、専用電源161の出力は、配電線163を経由して電力パケットミキサ21Bの電源入力端子と接続されている。また、専用電源161の出力は、配電線164を経由して配電管理ECU26Bの電源入力端子と接続されている。
【0307】
なお、電力パケットミキサ21Bおよび配電管理ECU26Bの消費電力が小さい場合には、配電線163および164はあってもよいし、なくてもよい。すなわち、電力パケットミキサ21Bおよび配電管理ECU26Bの消費電力の影響が小さい場合には、負荷と共通の電源23−1〜23−nから電力パケットミキサ21Bおよび配電管理ECU26Bに対して電源電力を供給してもよい。
【0308】
<電力供給システムの構成例−16>
本発明の実施形態における電力供給システムの構成例−16を
図32に示す。
図32に示した電力供給システム10−16は、
図31に示した電力供給システムの変形例である。すなわち、
図32に示した電力供給システム10−16においては、専用電源161を充電する機能を有する環境発電機構165が追加されている。それ以外は
図31の構成と同様である。
【0309】
環境発電機構165の具体例としては、車両のボディ系システムを操作するためのスイッチ駆動時に発生する機械的振動エネルギーを回収して発電するものが想定される。また、車両のボディ表面に配置された太陽光パネルにより収集される光エネルギーを電力に変換するものを採用してもよい。また、車両のボディ表面や車両の構造体に伝導蓄熱される熱エネルギーを回収して発電するものを採用してもよい。
【0310】
_<システム各部の構成>
図31および
図32に示した電力供給システムにおいて、電力パケットミキサ21Bの構成は
図7と同様である。また、
図31および
図32に示した各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の構成は
図13と同様である。また、
図31および
図32に示した配電管理ECU26Bの構成は
図9と同様である。また、
図31および
図32に示した電力パケットミキサ21Bが生成する電力パケット30の構成は
図12と同様である。
【0311】
<システムの動作例>
<電力パケットルータの動作例>
電力パケットルータ22B−1〜22B−3の動作例を
図33に示す。
図33に示した動作において、各ステップS32B、S34Bが変更されている以外は、既に説明した
図8の動作と同様である。
【0312】
図33のステップS32Bでは、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3は、入力に到着した電力パケット30のヘッダ31を解析すると共に、パルス(ペイロード32)電圧の測定を実施する。すなわち、各電力パケット30が電圧の異なる複数の電源電力に基づいて電力パケットミキサ21Bで生成される場合には、例えば
図25に示したように電圧の異なるPPH、PPL等の電力パケット30が異なるタイミングで各電力パケットルータ22B−1〜22B−3に入力される。したがって、各電力パケット30の電圧の違いを把握するために、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3はS32Bでパルスの電圧を測定する。
【0313】
図33のステップS34Bでは、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3は、自ルータ宛ての電力パケット30のペイロード32の電力を蓄電部に充電する。ここで充電される受電電力量の値については、S32Bで測定したパルス電圧とペイロード32の長さとに基づいて算出できる。
【0314】
<配電管理ECUの動作−1>
図31に示した通常の負荷24−A、24−B、24−C等に対する給電を指示するための配電管理ECU26Bの動作は、
図14に示した動作と同じである。
【0315】
<配電管理ECUの動作−2>
配電管理ECUの動作例を
図34に示す。
図34は、
図31、
図32に示した専用電源161に対する送電指示のための配電管理ECU26Bの動作を表している。
図34の動作について以下に説明する。
【0316】
配電管理ECU26Bは、起動後に専用電源161の電力残量を間欠的にモニターする(S431)。そして、検出した電力残量が所定値を下回った場合には、負荷を駆動するための電源23−1〜23−nから不足分の電力を電力パケット30により供給するように制御する。すなわち、専用電源161が必要とする電力の送電を指示するための送電指示情報をS433で配電管理ECU26Bが生成し、この送電指示情報を配電管理ECU26BがS434で電力パケットミキサ21Bに通知する。
【0317】
この場合、電力パケットミキサ21Bが指示に従って電力パケット30を配電線163に送出する。専用電源161は、配電線163を介して電力パケット30を受け取り、不足分の電力を電力パケット30のペイロード32から取り込む。なお、
図34の各ステップS435〜S441については
図14と同様である。
【0318】
したがって、配電管理ECU26Bが
図34に示した動作を実行することにより、専用電源161の電力残量が所定以上に維持されるように管理できる。この場合は、負荷を駆動するための電源23−1〜23−nの電力を、通常の負荷24−A〜24−C以外が消費することになる。その場合でも、電源23−1〜23−nから流出する電力の消費量は電力パケットミキサ21Bが送出した電力パケット30の数などに基づいて正確に把握できる。
【0319】
<配電管理ECUの動作−3>
配電管理ECUの動作例を
図35に示す。
図35は、
図31に示した電力パケットミキサ21Bの入力へ専用電源161から給電するための配電管理ECU26Bの動作を表している。
図35の動作について以下に説明する。
【0320】
配電管理ECU26Bは、電力パケットミキサ21Bに対して送電指示情報を通知する直前に、専用電源161から電力パケットミキサ21Bへの給電を開始するように制御する。また、電力パケットルータ22Bからの受電情報を確認した後で、専用電源161から電力パケットミキサ21Bへの給電停止を制御する。
【0321】
すなわち、配電管理ECU26Bが電力パケットルータ22Bからの給電要求情報を受領した時に、
図35のS418からS418Bの処理に進み、配電管理ECU26Bが電力パケットミキサ21Bに対して給電オン制御を実施する。これにより、専用電源161から電力パケットミキサ21Bへの給電が開始される。
【0322】
また、配電管理ECU26Bは、電力パケットルータ22Bから受電情報を受領し電力パケットルータ22Bによる配電の正常終了を
図35のS415で検知すると、S415Bの処理に進み、配電管理ECU26Bは電力パケットミキサ21Bに対して給電オフ制御を実施する。これにより、専用電源161から電力パケットミキサ21Bへの給電が終了する。これ以外の配電管理ECU26Bの動作については、
図14に示した動作と同様である。
これにより、電力パケットミキサ21Bは電力パケット30を生成するときのみ駆動するので、専用電源161の蓄電量低下を抑制できる。
【0323】
<配電管理ECUの動作−4>
配電管理ECUの動作例を
図36に示す。
図36は、
図31に示した電力パケットミキサ21Bの入力へ電源23−1〜23−nから給電するための配電管理ECU26Bの動作を表している。
図36の動作について以下に説明する。
【0324】
配電管理ECU26Bは、専用電源161の電力残量が低下した時に、電力パケットミキサ21Bの入力へ電源23−1〜23−nから給電を開始するように制御する。また、電力パケットルータ22Bからの受電情報を確認した後で、電力パケットミキサ21Bへの給電停止を制御する。
【0325】
すなわち、配電管理ECU26Bが専用電源161における電力残量の不足を
図36のS432で検知した時に、
図36のS432Bの処理に進み、配電管理ECU26Bが電力パケットミキサ21Bに対して給電オン制御を実施する。これにより、電源23−1〜23−nから電力パケットミキサ21Bへの給電が開始される。
【0326】
また、配電管理ECU26Bは、電力パケットルータ22Bから受電情報を受領し電力パケットルータ22Bによる配電の正常終了を配電管理ECU26Bが
図36のS439で検知すると、S439Bの処理に進み、配電管理ECU26Bは電力パケットミキサ21Bに対して給電オフ制御を実施する。これにより、電源23−1〜23−nから電力パケットミキサ21Bの入力への給電が終了する。これ以外の配電管理ECU26Bの動作については、
図34に示した動作と同様である。
これにより、電力パケットミキサ21Bは専用電源161への充電が必要になったときに駆動するので専用電源161の蓄電量低下を抑制できるとともに、蓄電量不足を防止できる。
【0327】
<電力融通の最適化の技術>
例えば、
図11に示した電力供給システム10−3においては、電力パケットルータ22B−1が出力する電力パケット30を、配電線(電力伝送路)29D−1を経由して電力パケットルータ22B−2の入力へ供給することができる。また、電力パケットルータ22B−3が出力する電力パケット30を、配電線(電力伝送路)29D−2を経由して電力パケットルータ22B−2の入力へ供給することもできる。つまり、電力パケットミキサ21Bが十分な電力を供給できない場合であっても、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間で蓄積した電力を融通することができる。なお、融通用電力は、
図13に示したように通常給電用の蓄電部とは別の融通蓄電部に蓄電されてもよいし、1つの蓄電部に通常給電用の電力と融通電力とが蓄電されるようにしてもよい。他の実施例についても同様である。
【0328】
ここで、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間で電力の融通を適切に制御することにより、車両全体として、より信頼性の高い電力供給が実現する。例えば、上流側の車載バッテリや、電力パケットミキサ等が故障したり、上流側の配電経路において断線が生じたような場合であっても、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間の電力融通により、重要な負荷が動作するために必要な電源電力を確保できる。
【0329】
_<電力融通動作の例−1>
電力融通動作の例−1を
図37に示す。
図37に示した動作は、例えば
図11に示した配電管理ECU26Bの動作として実現できる。また、例えば複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間で通信ができる場合には、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の制御として、
図37の動作を実現できる。あるいは、電力パケットミキサ21Bがこの制御を実施してもよい。
【0330】
図37のステップS511では、例えば配電管理ECU26Bが、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3から受領した情報に基づいて、ルータ毎の蓄積電力量を把握する。
【0331】
図37のステップS512では、例えば配電管理ECU26Bが、S511で把握したルータ毎の蓄積電力量に基づいて、蓄積電力量を均等化するための制御を実施する。すなわち、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の中で、蓄積電力量の多いルータから蓄積電力量の少ないルータに宛てて電力パケット30を送出し、電力を融通するように制御する。
【0332】
図37に示した処理を例えば定期的に繰り返し実施することにより、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の蓄積電力量を均一化することができる。したがって、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3は、蓄積電力量の不足が発生する前に、必要な電力を確保できる。これにより、負荷24−A〜24−Cの各々をいつでも動作させることが可能になる。
【0333】
<電力融通動作の例−2>
電力融通動作の例−2を
図38に示す。
図38に示した動作は、例えば
図11に示した配電管理ECU26Bの動作として実現できる。また、例えば複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の間で通信ができる場合には、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3の制御として、
図38の動作を実現できる。あるいは、電力パケットミキサ21Bがこの制御を実施してもよい。
【0334】
図38のステップS521では、例えば配電管理ECU26Bが、各電力パケットルータ22B−1〜22B−3から受領した情報に基づいて、ルータ毎の蓄積電力量を把握する。
【0335】
図38のステップS522では、例えば配電管理ECU26Bが、電力パケットルータ22B−1〜22B−3のそれぞれに接続されている負荷(補機)の重要度に応じて、これらのルータ間の優先度の高低あるいは優先順位を決定する。
【0336】
図38のステップS523では、例えば配電管理ECU26Bが、電力パケットルータ22B−1〜22B−3の蓄積電力量を均等化するための制御を実施する。この均等化の際に、S522で決定した複数のルータ間の優先順位に基づいて、優先順位の低いルータから、重要な負荷がつながっているルータに対して多めに電力を融通する。
【0337】
すなわち、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の中で、優先順位の低いルータよりも優先順位の高いルータの蓄積電力量が多くなるように配慮しつつ各ルータの蓄積電力量を均等化する。そして、電力を融通するために、蓄積電力量の多いルータは電力パケット30を他のルータ宛てに送出する。
【0338】
図38に示した処理を例えば定期的に繰り返し実施することにより、複数の電力パケットルータ22B−1〜22B−3の蓄積電力量を均一化すると共に、特に重要な負荷がつながっているルータの蓄積電力量を十分に確保できる。したがって、電力パケットルータ22B−1〜22B−3の中で、重要な負荷がつながっているルータの蓄積電力量が不足するのを防止できる。つまり、重要な負荷(補機)をいつでも確実に動作させることが可能になる。
【0339】
<接続された負荷を自動認識するための技術>
<接続された負荷を自動認識する必要性の説明>
例えば
図18に示した電力供給システム10−5においては、電力パケットルータ62−1〜62−3の複数の出力ポートのそれぞれに、様々な種類の負荷や他のルータが最初から接続されていたり、未接続のままであったり、種類の違う負荷が後で接続される可能性がある。このような状況を許容できるようにシステムを構成することにより、例えば車両の仕様変更などへの対応が容易になる。
【0340】
しかし、各出力ポートへ接続される負荷の種類が変化すると、各ルータが供給する電力の容量が不足したり、負荷に対して電力を供給する条件やタイミングが不適切になる可能性も考えられる。また、特定の負荷については接続するポートの位置を予め固定したいという要望もある。また、各出力ポートに負荷が接続されていない場合には、まだ接続されていない負荷のためにルータが必要以上の電力を過剰に確保してしまうため、他のルータの電力確保が困難になる場合も想定される。したがって、システムの動作を最適化するためには、各ルータの出力ポートへの負荷の接続の有無や、接続された負荷の種類を自動的に認識できることが望まれる。
【0341】
_<接続された負荷を自動認識する動作の具体例>
起動時のルータの動作例を
図39に示す。すなわち、例えば
図18に示した電力供給システム10−5に含まれている電力パケットルータ62−1〜62−3の各々が、
図39に示した動作を起動時(例えば主電源がオンになった時)に実行することにより、各々の出力ポート62bの接続状態を自動的に認識する。なお、電力パケットミキサ61が各電力パケットルータ62−1〜62−3に指示を与えて
図39の動作を実行することもできる。
【0342】
また、本実施形態においては、各電力パケットルータ62−1〜62−3の複数の出力ポート62bの中に、1つ又は複数の専用ポートと、それ以外の汎用ポートとが含まれる場合を想定している。専用ポートは、その箇所に接続可能な負荷(電装品などの補機)の種類が予め固定されている。汎用ポートは、必要に応じて複数種類の負荷の接続を許容することができる。
【0343】
また、本実施形態においては、電力パケットミキサ61又は各電力パケットルータ62−1〜62−3が
図39に示したテーブルTBP1、TBP2を保持する場合を想定している。テーブルTBP1は、所定の不揮発性メモリ上に配置され、各専用ポートに接続する負荷の種類を表す定数データを保持している。
【0344】
テーブルTBP2は、データの読み書きが自在なメモリ上に配置され、電力パケットミキサ61又は各電力パケットルータ62−1〜62−3が自動認識した結果として、各出力ポート62bの最新の接続状態(接続の有無)および接続された負荷の種類を表す情報を保持するものである。
【0345】
図39に示した動作について以下に説明する。
各電力パケットルータ62−1〜62−3は、システムの起動時に、各出力ポート62bの状態を順番に検査して負荷等の接続の有無を確認する(S531)。例えば、出力ポート毎に流れる電流や電圧を測定したり、インピーダンスを測定することにより、負荷接続の有無を自動的に識別できる。
【0346】
また、各出力ポート62bのうち前述の専用ポートについて負荷接続を検知した場合には、S532からS533の処理に進み、各電力パケットルータ62−1〜62−3は、テーブルTBP1の登録内容を参照する。そして、各電力パケットルータ62−1〜62−3は、テーブルTBP1に登録されている種類の負荷が当該専用ポートに接続されているものと認識する。そして、認識の結果をテーブルTBP2に反映する。
【0347】
また、各出力ポート62bのうち汎用ポートについて負荷接続を検知した場合には、S534からS535の処理に進み、各電力パケットルータ62−1〜62−3は、当該汎用ポートに流れる電流などのパラメータを検知して、予め定めた複数の閾値と比較することにより、当該汎用ポートに接続されている負荷の種類を推定し特定する。そして、各電力パケットルータ62−1〜62−3は、汎用ポート毎に特定した負荷の種類を表すデータを、テーブルTBP2に反映する。
【0348】
したがって、例えば
図18に示した電力供給システム10−5において、電力パケットミキサ61や各電力パケットルータ62−1〜62−3が各出力ポート62bを制御する際には、起動時に自動的に更新されるテーブルTBP2の内容を参照することにより、適切な制御を実施できる。
【0349】
<電力の効率化伝送のための技術>
_<効率化伝送の課題>
例えば特許文献3に示されているように、イーサネット(登録商標)においてLANケーブルを介して電力を供給する技術PoE(Power over Ethernet(登録商標))を利用すると共に、総合電力損失を減らすための技術が知られている。
【0350】
しかし、PoEを採用する場合には、その仕様上最大12.95Wの電力しか受電できず、それより大きな電力が必要な車の補機類への給電は難しい。また、このような従来技術においては、モータのように負荷電力の変動が大きいものを想定していない。車載用途では、負荷が補器用の小型モータである場合が多く、電力変動が大きく対応が難しい。
【0351】
また、リアルタイムで負荷電力を検知すると、例えばワイパーの間欠動作時など停止中の電力を検知して経路をフィッティングしてしまう可能性がある。そのような状態で大電力が流れた際に損失の増加や、駆動できない可能性がある。最悪の場合は機器の機能に影響を与える可能性が生じる。また、負荷への給電線路だけで効率が決まるため、負荷が少ない場合は選択の余地が少なく効果が薄い。
【0352】
_<効率化伝送の実施形態>
上述のように、車両の補機類への給電を考えた際にPoEの技術を利用すると、電力不足により負荷の駆動が難しい。よって電力パケット伝送システムで対応する。すなわち、例えば
図11に示したような基本構成の電力供給システムを用いて電力の効率化伝送を実現する。なお、伝送する電力パケットの構成については例えば
図4と同様である。
【0353】
__<特徴的な技術>
図11に示したような電力供給システムにおいては、各給電線路のワイヤーハーネスにおける効率や、各電力パケットルータの効率が、負荷電力の大きさの変化に応じて例えば
図40に示すように変化する。
【0354】
そこで、効率的に電力を伝送するために、例えば配電管理ECU26Bの中に、各ワイヤーハーネスの効率情報(抵抗値など)、各ルータ、ミキサの負荷電力に対する効率情報(
図40参照)を入れておく。
【0355】
そして、電力パケットミキサ21Bから各負荷24−A、24−B、24−Cに電力を送電する際に、配電管理ECU26Bが保持している効率情報に基づいて、最も損失の低い経路を使用するように、配電管理ECU26B、電力パケットミキサ21B、又は各電力パケットルータ22B−1、22B−2、22B−3が自動的に制御する。
【0356】
また、配電管理ECU26Bの中に、負荷の変動範囲の情報も入れておく。そして負荷の変動を考慮した接続を配電管理ECU26Bが行う。これにより、負荷電力が増加した時の電力不足を防ぐことができる。
【0357】
__<制御の具体例−1>
電力供給システムの構成および動作の例を
図41に示す。なお、
図41に示した電力供給システムは、例えば
図11に示した電力供給システムの一部分に相当する構成を表している。したがって、
図11の配電管理ECU26Bも利用することができる。
【0358】
図41に示した構成においては、電力パケットミキサ401の下流側に複数の電力パケットルータ402、403が配電線421、422を介して接続されている。また、電力パケットルータ402、403の間が配電線423で接続されている。
【0359】
また、電力パケットルータ402の下流側に配電線424、425を介して、負荷411、412が接続されている。電力パケットルータ403の下流側に配電線426、427を介して、負荷413、414が接続されている。負荷411は、例えば0〜100[W]の範囲内で負荷電力が変動するモータのような補機に相当する。負荷412、413、および414については、それぞれの負荷電力が50、200、および200[W]で一定の場合を想定している。
【0360】
図41に示した構成において、電力パケットルータ402は、負荷電力が変動した場合であっても、配電管理ECU26Bの指示に従って、又は配電管理ECU26Bから取得した情報に基づいて、効率の高い状態が維持されるように制御441を行うことができる。すなわち、
図41の例では、電力パケットルータ402は150〜250[W]の範囲内が効率的であるので、この範囲内を維持するように給電状態を制御する。
【0361】
すなわち、
図41のように、電力パケットルータ402は負荷411、および412に対して、それぞれ0〜100[W]および50[W]の電力を給電する。更に、電力パケットルータ402は電力パケットルータ403に対して100[W]の電力を給電する。したがって、電力パケットルータ402が扱う電力は150〜250[W]の範囲内に維持される。
【0362】
また、電力パケットルータ403は、電力パケットミキサ401から送電される300[W]と、電力パケットルータ402から送電される100[W]との合計400[W]を負荷413、414に給電することができる。したがって、負荷413および414は、それぞれ必要な電力200[W]を消費できる。
【0363】
このように、ミキサー及びルータの負荷電力に対する効率の値に基づいて制御を実施することで、ある瞬間の最大効率に合わせて負荷へ給電するのではなく、負荷変動が考慮された長期的に見て高効率になるような給電経路を選択できる。
【0364】
__<制御の具体例−2>
電力供給システムの構成および動作の例を
図42に示す。なお、
図42に示した電力供給システムは、例えば
図11に示した電力供給システムの一部分に相当する構成を表している。したがって、
図11の配電管理ECU26Bも利用することができる。また、
図42に示した構成においては、電力パケットルータ402の出力から負荷413へ給電するための配電線428が追加されている。それ以外の構成は
図41と同様である。
【0365】
図42に示した構成においては、電力パケットルータ402、又は403が特別な制御442を実施することができる。すなわち、負荷413の入力に2つの配電線428、426が接続されているので、電力パケットルータ402の出力から配電線428を経由して負荷413に電力を供給することもできるし、電力パケットルータ403の出力から配電線426を経由して負荷413に電力を供給することもできる。更に、複数の電力パケットルータ402、403から負荷413に対して同時に給電することもできる。これにより、各ルータの電力を調整し、効率の良い所を使用することが可能になる。
【0366】
__<制御の具体例−3>
電力供給システムの構成および動作の例を
図43に示す。なお、
図43に示した電力供給システムは、例えば
図11に示した電力供給システムの一部分に相当する構成を表している。したがって、
図11の配電管理ECU26Bも利用することができる。
【0367】
図43に示した例では、電力パケットミキサ401の効率のピーク(最良点)が500[W]である場合を想定している。ここで、例えば電力パケットミキサ401がその下流側に供給する電力が600[W]である場合を想定すると、電力パケットミキサ401の効率がピークに比べて低下する。そこで、電力パケットミキサ401は制御431により、600[W]から100[W]引き下げて、500[W]の電力を下流側に給電する。これにより、電力パケットミキサ401の効率をピークの近傍に維持することができる。
【0368】
その結果、
図43のように電力パケットミキサ401が300[W]の電力を配電線422を経由して電力パケットルータ403に供給することになる。但し、電力パケットルータ403の出力には200[W]の電力を消費する負荷413と、200[W]の電力を消費する負荷414とが接続されているので、電力パケットルータ403は全体で400[W]の電力を出力側に供給する必要がある。つまり、電力パケットミキサ401が電力パケットルータ403に供給する300[W]の電力は、電力パケットルータ403が出力する電力400[W]に比べて100[W]だけ不足する。
【0369】
そこで、電力パケットルータ403は、制御432として、不足する100[W]の電力を、電力パケットルータ403内部の蓄電部(バッファ:例えば
図1の15A,15B)に蓄積されている電力を利用してその不足分をまかなうように制御する。
【0370】
つまり、
図43の構成においては、電力パケットルータ403内などに存在する蓄電部の電力を使用することで、ミキサー及びルータの入出力電力を調整し、効率の高い状態を維持したまま、必要な負荷電力で使用し続けるようにする。なお、電力パケットルータ403等の蓄電部に蓄積された電力が減少して負荷の駆動が難しくなった場合には、例えば電力パケットルータ403が配電管理ECU26Bに対して配電要求を送信する。これにより、負荷の駆動を継続することができる。
【0371】
__<制御の具体例−4>
配電管理ECU26Bの動作例を
図44に示す。上述のように電力供給システム各部の効率を最優先に考慮して電力供給経路の制御を行う場合には、効率のよい一部の経路にのみ電流が集中的に流れ、一部の経路で許容電流を超える可能性がある。配電管理ECU26Bが
図44に示した制御を実施することにより、電流が一部の経路にのみ集中するのを抑制できる。
図44の制御について以下に説明する。
【0372】
配電管理ECU26Bは、電力パケットルータ402、403等から各負荷への配電要求をS601で受信すると、各ハーネス(配電線421〜427)、各ルータ、ミキサのそれぞれの電流許容量をS602で算出する。そして、配電管理ECU26Bはそれぞれの電流許容量と、要求された電流とをS603で比較する。
【0373】
つまり、要求された電力を、効率を考慮してそのまま負荷側に供給すると、一部の経路に電流が集中して電流許容量を超える可能性があるので、実際に供給を行う前に、問題が発生しないかどうかをS603、S604で確認する。
【0374】
電流許容量を超えないことを確認できた場合には、配電管理ECU26Bは、最も効率のよい経路を算出し、その経路を利用して要求された電力の給電を実施する(S610)。電流許容量を超えることが予想される箇所がある場合には、S604からS605の処理に進む。
【0375】
ステップS605では、配電管理ECU26Bは、「負荷の優先度」を考慮して配電経路を決める場合に、電流許容量を超えることが予想される箇所がなくなるか否かを確認する。そして、電流許容量を超えることが予想される箇所がなくなる場合はS606に進み、電流許容量を超えることが予想される箇所がなくならない場合はS611に進む。
【0376】
ここで、「負荷の優先度」については、定常的に大電流が流れる負荷を優先するように決定する。また、間欠動作する負荷(例えばワイパのモータ)のように、電流が大きく変動する負荷については、間欠動作の停止時に電流が少なくなるので、優先度を低くするように決定する。
【0377】
ステップS606では、配電管理ECU26Bは、S601の配電要求に対して、「負荷の優先度」を考慮し、且つ各部の効率のよい状態を維持するように、S610とは異なるアルゴリズムを用いて、適切な配電経路を決定する。つまり、定常的に大電流が流れる負荷に対して供給する電流が、効率のよい経路を通過するように、配電経路を定める。また、変動する負荷に供給する電流の経路については、効率を重視せずに決定する。これにより、効率の良い経路に最大限電流を流すことが可能になる。
【0378】
ステップS611では、配電管理ECU26Bは、S610と同様のアルゴリズムを用いて電流の経路を決定するが、電流許容量を超えることが予想される箇所については、高効率経路の選択から除外し、効率を重視しない経路を割り当てる。
【0379】
S610、S606、S611のいずれかで電流供給経路を決定した後、配電管理ECU26Bは、決定された経路各部の電流許容量を算出し(S607)、送電予定の経路毎の電流値が前記電流許容量を超えないことをS608で確認した後で、各電力パケットルータ402、403、および電力パケットミキサ401に対して送電指示を与える(S609)。
【0380】
なお、
図41〜
図44に示したような上述の各制御については、
図32に示した専用電源161の制御に対しても同様に適用できる。
【0381】
_<効率化伝送の利点>
(1)銅線の抵抗損失は長さと断面積に比例する。したがって、配電経路の効率を考慮した制御の結果として、ワイヤーハーネスの断面積が2倍広い、もしく経路長が半分のワイヤーハーネスに切り換えることができれば損失を半分に減らす事ができる。
(2)車載機器を負荷として給電する場合には、出力電力が大きい為、ミキサー及びルータの取り扱える電力を大きくする必要がある。また、電力が大きくなる分、効率に
図41のようなバラつきが発生し易くなる。しかし、PoEとは異なる上述の制御を採用することにより、負荷変動を考慮した高効率な給電が可能となる。
(3)仮に10%の効率改善があるとすると、取り扱う電力が数kWの大電力なので数百Wの損失改善となり絶対値が大きくなる。
(4)大電力に対応し機器の故障を防げるので、安全性が求められる車載用途に適用し易くなる。
【0382】
ここで、上述した本発明に係る電力供給システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 1つ以上の電力供給源(車載バッテリ13A、13B)から供給される電力に基づいて電力パケットを生成する電力パケット生成部(電力パケットミキサ11)と、
前記電力パケット生成部が生成した前記電力パケットを伝送路(電力伝送路16A)を介して受け取り、当該電力パケットの電力を下流側の1つ以上の負荷に供給する電力パケットルータ(12)と、
前記電力パケットルータが必要とする電力に応じた配電要求を前記電力パケットルータから送出する電力要求送出部(12f)と、
送出された前記配電要求に応じた前記電力パケットを前記電力パケット生成部から前記電力パケットルータに与える電力供給制御部(11d)と、を備え、
前記電力パケットルータは、受け取った電力パケットの電力を蓄電する蓄電部(15A、15B)を有し、
前記電力要求送出部は、前記蓄電部の蓄電量が所定の閾値を下回った場合に、前記配電要求を送出し(S14、S15)、
前記電力供給制御部は、前記配電要求により要求された電力量と、前記電力供給源が供給可能な電力量との比較に基づいて電力供給の可否を判定する(S607、S611)、
ことを特徴とする電力供給システム。
【0383】
[2] 前記電力供給システムは、車両に搭載され、
前記電力供給源は、前記車両の外部あるいは発電装置からの電力を蓄電するバッテリであり、
前記電力供給制御部は、前記バッテリへの蓄電が行われている場合には、要求された電力量と給電可能な電力量とを比較した結果に応じて前記電力パケット生成部に電力パケットを生成させる、
ことを特徴とする上記[1]に記載の電力供給システム。
【0384】
[3] 前記電力パケット生成部は、複数の前記電力供給源から電力が供給され、
前記電力パケットルータは、複数の前記電力供給源と少なくとも同じ数の前記蓄電部を有する、
ことを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の電力供給システム。