(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、シリンジサポート、およびこのようなシリンジサポートを有する改善された自動注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1によるシリンジサポート、および請求項12による自動注射器によって達成される。
【0007】
本発明の例示的な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0008】
本開示の一態様は、自動注射器のハウジングに対して、シリンジの軸方向位置を支持するためのシリンジサポートに関する。シリンジサポートは、シリンジサポートから遠位方向に突出する突出部と、この突出部に軸方向に接合して、シリンジをハウジング内で遠位方向へ軸方向に付勢するよう適用される可撓部(flexible portion)とを含む。
【0009】
シリンジサポートは、ハウジング内でのシリンジの確実な配置をもたらす。特に、シリンジはハウジング内で、故障および破損しにくく配置され、かつ公差補償を可能にする。シリンジサポートは、シリンジがさらに確実に前方止め具に対して前方へ付勢され、それによって、針が常に完全な挿入深さに挿入されることを保証する。特に、シリンジは、皮膚に穴を開ける力で後方に移動しない。さらに、シリンジサポートによって、製造公差によって異なる長さを有するシリンジを、同じハウジング内に配置できる。
【0010】
例示的な実施形態において、可撓部は、異なる長さを有するシリンジに対処するように適用される。換言すると、可撓部は、異なるシリンジの長さを補償することによって、確実な配置をもたらす。特に、可撓部は、最大5%、特に3%のシリンジの長さのばらつきを(variation)補償するように適用される。たとえば、シリンジサポートは、長さ50mmのシリンジの±1.5mmのシリンジ長に対処する。
【0011】
シリンジを自動注射器のハウジングの中に入れる最終組み立て時に、シリンジがハウジング内に挿入され、最終組み立て位置に移動された後で、コンプライアントバックストップ(compliant backstop)とも呼ばれる可撓部が軸方向に偏向し、それによってシリンジに軸力を加え、シリンジを前方へ付勢して、収納中、輸送中、落下および使用中におけるその軸方向運動を防止する。可撓部は、シリンジ、および自動注射器、特にハウジング両方の公差に対処するようにサイズが決められ、その一方で落下中のシリンジの動きを制限して、偶発的なシリンジの離脱(de−booting)を防止する。可撓部の剛性は、シリンジのフランジに過度の圧力を加えて、たとえばガラスを破損させる危険のないように、収納中、輸送中、落下および使用中のシリンジを拘束するのに要する最小の力をもたらすように適合される。
【0012】
例示的な実施形態において、可撓部は、ウェブの形態、フレクシャビーム(flexure beam)の形態、またはばねアームの形態で設計される。さらに可撓部は、蛇行形、アコーディオン形、迷路形(labyrinth−shaped)、U形、V形、W形、またはS形の設計である。特に、可撓部は、余裕のある位置に維持され、かつ異なるシリンジ長を補償するようシリンジの止め具を形成するために、アコーディオン形または迷路形の設計である。さらに可撓部は、破損の危険を避ける、または少なくとも最小にするために、異なる長さのシリンジによって組み立て中に圧力を受けることがある。たとえば組み立て中に、シリンジはその遠位端で、シリンジキャリアによって運ばれかつ保持され、ここでシリンジの近位端すなわちフランジは、シリンジキャリアの近位端を突出し、そのためフランジと係合した可撓部は偏向して、軸方向に後方にさらに圧力を受け、それによってシリンジの長さは補償される。
【0013】
さらに、可撓部は弾性材料から形成される。可撓部は、適切な圧縮強さ、ならびに曲げ強さを提供するように設計される。特に、可撓部は、プラスチックなどの対応する弾性材料から形成され、および/または水平ウェブおよびリブ、ならびに垂直ウェブおよびリブなどの対応する構造設計によって形成される。さらに、突出部は可撓部よりも強度が高く、たとえば突出部のプラスチックは可撓部のプラスチックよりも強度が高い。
【0014】
また、弾性の可撓部は、弾性材料の複数の折り曲げ円弧(bent arc)の形態にあることができ、複数の折り曲げ円弧のうちの少なくとも1つはシリンジサポートに取り付けられ、複数の折り曲げ円弧の外側自由端はシリンジのフランジと並置される。可撓部は遠位方向へ軸方向に延びる。
【0015】
例示的な実施形態において、可撓部はシリンジサポートの遠位に位置する。それによって遠位の可撓部は、シリンジを所定の位置に保つ。遠位の可撓部の遠位端は、自由端である。遠位の可撓部の反対側の近位端は、突出部と接合する。さらに、2つ以上の可撓部が、シリンジのフランジの外周の周りに配置され、それによってシリンジは所定の位置に確実に保持される。
【0016】
また、可撓部は突出部と一体で形成され、それによって、シリンジが組み立てられるか、または後方へ動くとき、可撓部は突出部に対して軸方向に後方へ偏向する。特に、可撓部は、製造を容易にするためにシリンジサポートと一体で成形され、たとえばプラスチックからの射出成形によって、射出成形金型で作られる場合がある。
【0017】
さらにシリンジサポートは、シリンジのフランジと相互作用する可撓部と接合される、いくつかの突出部を含み、シリンジが組み立てられるとき、およびハウジング内の所定の位置にあるときに、長さの補償、すなわちより短いシリンジの後方への軸方向の動きを減衰させ、かつ制限する。さらに、可撓部がシリンジのフランジの外周の周りに配置され、それによってシリンジは所定の位置に確実に保持される。
【0018】
別の実施形態において、少なくとも2つの可撓部が、シリンジサポートの遠位に配置される。この少なくとも2つの可撓部は、互いに反対側に配置される。3つ以上の可撓部が提供され、シリンジサポートに対称に配置される場合がある。可撓部は、シリンジのハウジングに対する後方への確実な軸方向の支持、および配置を提供するように適用される。これによって、破壊の危険が減少する。
【0019】
本開示の別の態様によると、自動注射器は上述のシリンジサポート、およびハウジングを含み、ハウジングはこのようなシリンジサポートを含む。
【0020】
組み立てられた状態において、可撓部とシリンジのフランジとは互いに接触し、互いに押圧し合い、それによってシリンジは確実に位置される。
【0021】
例示的な実施形態において、可撓部は突出部の遠位に取り付けられる。特に、可撓部は遠位方向へ付勢される。
【0022】
例示的な実施形態において、シリンジサポートは、たとえば剛性アームなど、少なくとも2つの剛性突出部を含み、各剛性アームは1つの可撓部を含む。特に、2つの剛性アームは、近位の外側ハウジング部、たとえば近位端から内側に延びてハウジングに入る、内側アームとして形成される。
【0023】
特に、ハウジングは前方部材および後方部材を含み、可撓部は後方部材に配置される。後方部材は近位端を含み、そこから剛性アームが内側に延びる。このように、可撓部は剛性アームの遠位端に配置される。
【0024】
さらにハウジングは、ハウジングの近位アパーチャよりも大きい近位端を含む。それによって、後方部材の近位端は前方部材の近位アパーチャの縁部に静止して、ハウジングを近位で閉じる。
【0025】
さらに、本発明の適用範囲は、以降の詳細な記載から明白となろう。しかし、詳細な記載および特定の例は、本発明の例示的な実施形態を示すが、例示として与えられるにすぎないことを理解されたい。なぜなら、当業者にはこの詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内で、様々な変形および変更が明白となるからである。
【0026】
本発明は、以下で本明細書に与えられる詳細な説明、および添付の図面から、より完全に理解されよう。添付の図面は単なる例示として与えられ、したがってこれらは本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全ての図において、対応する部材には同じ参照記号が示される。
【0029】
図1は、組み立て後の状態にある自動注射器1の、例示的な実施形態の部分的な概略斜視図である。
【0030】
自動注射器1は、スリーブ形状の前方部材2.1および後方部材2.2を有するハウジング2を含む。代替として、ハウジング2は、一体化されたハウジング(図示せず)として形成される場合もある。
【0031】
ハウジング2は、たとえばガラスシリンジなどのシリンジ3を保持するように適用される。シリンジ3は、液体薬剤Mを含み、かつ遠位端に配置された針4を有する、充填済みシリンジであってもよい。別の例示的な実施形態において、シリンジ3は、薬剤Mを含んで(たとえば、ねじ、スナップ、摩擦などにより)取り外し可能な針と係合する、カートリッジであってもよい。示される例示的な実施形態において、シリンジ3はハウジング2内で保持され、その近位端で、以下でさらに記載されるシリンジサポート15によって支持される。
【0032】
自動注射器1は、針4に連結される保護ニードルシース5をさらに含む。たとえば、保護ニードルシース5は、取り外し可能に針4と連結される。保護ニードルシース5は、ゴム、および全体または部分的にプラスチックのシェルから構成される、ゴム製ニードルシースまたは剛性ニードルシースであってもよい。
【0033】
止め具6が、シリンジ3を近位方向Pに封止するため、かつシリンジ3内に含まれる薬剤Mを針4を通して変位させるために、配置される。
【0034】
自動注射器1は、スリーブ状のニードルシュラウド(needle shroud)7をさらに含む。例示的な実施形態において、ニードルシュラウド7はハウジング2と伸縮自在に連結されており、ハウジング2に対して伸張して針4が覆われる位置と、ハウジング2に対して後退して針4が露出される位置との間で、可動である。さらに、シュラウドばね8が、ニードルシュラウド7をハウジング2に対して遠位方向Dへ付勢するよう配置される。
【0035】
圧縮ばねの形状の駆動ばね9が、ハウジング2の近位部に、特に後方部材2.2に配置される。プランジャ10は、駆動ばね9の力を止め具6まで送る役割を担う。例示的な実施形態において、プランジャ10は中空であり、駆動ばね9がプランジャ内に配置され、プランジャ10を後方部材2.2に対して遠位方向Dへ付勢する。別の例示的な実施形態において、プランジャ10は中実であってもよく、駆動ばね9はプランジャ10の近位端と係合してもよい。同様に、駆動ばね9はプランジャ10の外径の周りに巻かれて、シリンジ3内に延びてもよい。
【0036】
さらに、自動注射器1は、ハウジング2の遠位端に、特に前方部材2.1の遠位端に取り外し可能に配設されるキャップ11を含む。キャップ11は、キャップ11の取り外しを容易にするためのグリップ機能11.1を含むことができ、たとえばキャップを捩る、および/または引っ張って、ハウジング2から外す。キャップ11は、保護ニードルシース5、ハウジング2、および/またはニードルシュラウド7と係合するように配置される、たとえばバーブ(barb)、フック、狭窄セクション(narrowed section)などのグリップ要素11.2をさらに含んでもよい。たとえば保護ニードルシース5は、キャップ11が取り外されるときに、ニードルシース5もまた針4から取り外されるように、キャップ11に連結される。
【0037】
プランジャ解放機構12は、ニードルシュラウド7を押し下げる前にプランジャ10を解放するのを防止するように、および、ニードルシュラウド7が十分に押し下げられた後でプランジャ10を解放するように配置される。
【0038】
例示的な実施形態において、自動注射器1は、薬剤送達が完了したことを使用者または患者に示すための可聴フィードバックを生成するため、少なくとも1つの可聴インジケータ13をさらに含む。換言すると:可聴インジケータ13は、使用者または患者に、薬剤Mの全ての用量を使い切ったことを示すように適用される。可聴インジケータ13は、たとえば双安定ばね(bistable spring)のように形成され、後方部材2.2に保持される。
【0039】
組み立て中および組み立て後の、シリンジ3の正確な支持を可能にするために、自動注射器1は、シリンジ3をハウジング2内の前方すなわち遠位方向Dに取り付け、かつ保持するよう適用されるキャリア16を含む。
【0040】
シュラウド事前ロック機構14は、キャップ11が所定の位置にあるときに、ニードルシュラウド7の押し下げを防止するよう設置される。それによって、たとえば搬出中または包装中などに落下した場合に、自動注射器1が非意図的に作動するのを防止する。
【0041】
製造公差のため、シリンジ3は一様でない長さLを有する。したがって、シリンジ3のフランジ3.1はキャリア16を近位方向Pへ突き出す。組み立て後、特に収納中、輸送中および通常の使用中に、シリンジ3のハウジング2に対する軸方向位置を支持するため、シリンジサポート15は、異なる長さLを有するシリンジ3に対処するために軸方向に付勢される、1つまたはそれ以上の可撓部15.1を含む。可撓部15.1は、シリンジ3をハウジング2内で遠位方向Dへ軸方向に付勢するよう適用され、シリンジ3の長さLのばらつきを、遠位方向Dへ補償する。特に、シリンジサポート15は、シリンジ3の長さLの最大5%または3%に対処するよう適用される。たとえば、シリンジサポート15は、長さLが50mmであるシリンジ3の長さL±1.5mmに対処する。
【0042】
図2および
図3は、ハウジング2の後方部材2.2の概略図である。後方部材2.2はシリンジサポート15を含む。シリンジサポート15は、シリンジ3の長さLのばらつきを補償するように適用される。特に、シリンジサポート15は、遠位方向Dへ突出する2つの突出部15.3を含み、その前すなわち遠位端には、2つの可撓部15.1を含む。可撓部15.1は、遠位方向Dで軸方向に突出部15.3と接合する。
【0043】
可撓部15.1は、突出部15.3と一体で形成される。示される実施形態において、突出部15.3はハウジング2の一部、すなわち後方部材2.2の一部である。突出部15.3は、ハウジング2の近位端2.4から内側に遠位方向Dへ突出する。
【0044】
示される実施形態において、後方部材2.2は近位端2.4を有する。後方部材2.2の近位端2.4は近位アパーチャ2.6よりも大きく、そのため近位端2.4は前方部材2.1の近位アパーチャ2.6の縁部に静止する。
【0045】
シリンジサポート15の突出部15.3は、ハウジング2の一部、すなわち2つの剛性アーム2.3を形成し、近位端2.4から延ばされ内側に遠位方向Dへ入る。可撓部15.1は、後方部材2.2の遠位端に配置される。
【0046】
さらに後方部材2.2は、後方部材2.2を前方部材2.1に取り付けるための、2つのハウジングロックアーム17.1を有するハウジングロック17を含む。ハウジングロックアーム17.1は、シリンジサポート15の近位に位置する。後方部材2.2を前方部材2.1に確実に固定するために、ハウジングロック17は、付勢された状態において突出部15.3の外径よりも大きい外径を有する。
【0047】
後方部材2.2を前方部材2.1に組み立てるために、ハウジングロックアーム17.1が前方部材2.1の対応するスロット2.7に達して外側に偏向して掛止するまで、ハウジングロックアーム17.1は内側に偏向可能である。ハウジングロックアーム17.1は、後方部材2.2の近位セクションに配置され、径方向外側に付勢される。
【0048】
さらに、後方部材2.2の近位端2.4は、シリンジサポート15の近位端15.6を形成し、突出部15.3の外形よりも大きい外径を有する。
【0049】
可撓部15.1は、弾性のばね部として設計される。可撓部15.1は、軸方向の偏向に対して累進的なばね特性曲線を有し、それによって、可撓部15.1における累進的に増加するばねの力が、組み立てられたシリンジ3の増加する長さLによって発生する。したがって、可撓部15.1は、シリンジ3の軸方向の偏向によるシリンジ3の長さLのばらつきを補償する。
【0050】
各可撓部15.1の一方の端部は、対応する突出部15.3に取り付けられている。反対側の遠位端は自由端である。可撓部15.1は、たとえばプラスチックなどの弾力性のある材料から形成することができる。
【0051】
示される実施形態において、可撓部15.1は、少なくとも1つのウェブによって連結された、軸方向に配置される少なくとも2つのチャンバ15.2と共に、迷路形で設計されている。可撓部15.1の遠位端は、少なくとも2つの支持リブ15.5を有する。支持リブ15.5は、シリンジ3がシリンジキャリア16に組み付けられ、かつフランジ3.1がシリンジキャリア16を近位方向Pに突き出すときに、シリンジ3のフランジ3.1を取り付ける(
図10参照)。
【0052】
図4は、分離された単一部材として形成されるシリンジサポート15’、および分離された単一部材として形成される後方部材2.2の、代替の実施形態を示す。シリンジサポート15’は近位の支持端部15.6を有し、そこから、可撓部15.1を含む剛性突出部15.3が遠位に突き出る。近位の支持端部15.6およびハウジング2、特に前方部材2.1または後方部材2.2は、たとえばハウジング2のナット内またはクリップ内でリムを固定することによって、シリンジサポート15’をハウジング2の所定の位置に維持および保持するように、相対的に適用される。
【0053】
分離された後方部材2.2は、解放可能に後方部材2.2を前方部材2.1に連結してハウジング2を形成するための、ハウジングロック17のみを含む。
【0054】
図5は、後方部材2.2の概略の長手方向断面図である。
図5は、シリンジサポート15の一部である1つの可撓部15.1を有する、後方部材2.2を示す。可撓部15.1は、後方部材2.2の遠位セクションに配置され、シリンジ3を遠位方向Dへ軸方向に付勢する。
【0055】
ハウジングロックアーム17.1は、後方部材2.2を前方部材2.1に取り付ける。ハウジングロックアーム17.1は、後方部材2.2に近位で配置され、径方向外側に付勢される。ハウジングロックアーム17.1は、前方部材2.1と共に後方部材2.2を所定の位置に維持する。
【0056】
図6は、シリンジサポート15を含む後方部材2.2の概略側面図である。組み立て中に後方部材2.2を誘導するため、および組み立て後および使用中に後方部材2.2を支持するために、後方部材2.2は内部スタンプ(stamp)2.5を含む。内部スタンプ2.5は、駆動ばね9(
図1参照)の組み立ておよび配置を、さらに支持する。
【0057】
図7A〜
図7Cは、シリンジサポート15の可撓部15.1の、異なる実施形態の概略図である。可撓部15.1は、遠位方向Dへ軸方向に付勢される。
【0058】
図7Aは、考えられる実施形態を示す。可撓部15.1は、2つのウェブ15.4によって連結される2つのチャンバ15.2を含み、蛇腹(bellow)のように設計される。
【0059】
可撓部15.1の外面、すなわち突出部15.3に取り付けられた近位面と、自由端の遠位端とは平坦である。
【0060】
さらに可撓部15.1の平坦な遠位端には、2つのリブ15.5が位置する。2つのリブ15.5は、組み立て後の状態でシリンジのフランジ3.1を押圧し、シリンジ3の、ハウジング2に対する遠位方向Dへの軸方向の確実な支持および配置を提供する。
【0061】
同じハウジング2内で、一様でない長さLを有するシリンジ3を組み立てるために、可撓部15.1が、シリンジのフランジ3.1に軸方向の力を提供するように、かつシリンジ3を遠位方向Dへ軸方向に付勢するように適用される。ここで、可撓部15.1すなわち蛇腹は軸方向に偏向され、かつ圧力を加えられ、それによってシリンジ3の一様でない長さLは補償され、収納中、輸送中、落下および使用中の、シリンジ3の軸方向の動きが防止される。
【0062】
図7Bは、1つのチャンバ15.2、およびチャンバ15.2と突出部15.3とを連結する折り曲げウェブ(bent web)15.4、ならびに遠位端に取り付けられた支持リブ15.5と共に、蛇腹のように設計される可撓部15.1の代替の実施形態を示す。
【0063】
図7Cは、蛇行形に進む折り曲げ屈曲ビーム(bent flexural beam)15.7、ならびに連結ウェブ15.4および支持リブ15.5と共に形成された、蛇行形の可撓部15.1の別の実施形態を示す。
【0064】
さらに可撓部15.1は、複数回折り畳まれたもしくは折り曲げられた円弧もしくは半円弧、またはばねアームの形態で設計することができる。さらに可撓部15.1は、アコーディオン形、迷路形、U形、V形、W形、またはS形の設計とすることができる。
【0065】
シリンジサポート15の可撓部15.1は、上述のように、組み立てられるシリンジ3の長さの公差を補償することができる。
【0066】
図8は、可撓部15.1が後方部材2.2の遠位端に配置された、後方部材2.2の概略側面図である。可撓部15.1の近位端は、突出部15.3に取り付けられ、可撓部15.1の遠位端は軸方向に付勢される自由端として形成されている。
【0067】
図9は、ハウジング2の前方部材2.1および後方部材2.2を示す。前方部材2.1および後方部材2.2は、たとえばハウジングロッキングアーム17.1および対応するスロット2.7によって形成される解放可能な連結によって、互いに連結するよう相対的に適用される。
【0068】
図10は、シリンジサポート15およびシリンジ3を、組み立てられた状態で示す。シリンジ3がシリンジキャリア16(シリンジキャリア16は
図1にのみ示される)に組み付けられたとき、支持リブ15.5はシリンジ3のフランジ3.1を取り付ける。
【0069】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0070】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0071】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0072】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0073】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0074】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0075】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034.MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
【0076】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0077】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0078】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0079】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0080】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)
2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0081】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0082】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0083】
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0084】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0085】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0086】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0087】
当業者は、本明細書に記載された物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または排除)が、本発明の全範囲および趣旨を逸脱することなく成され得ることを理解されたい。本発明は、そのような変更およびその全ての同等物を含包する。