(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856568
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】姿勢安定性評価のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20210329BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/11 120
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-41674(P2018-41674)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2019-13730(P2019-13730A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年5月7日
【審判番号】不服2020-7626(P2020-7626/J1)
【審判請求日】2020年6月3日
(31)【優先権主張番号】201721024012
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512070816
【氏名又は名称】タタ・コンサルタンシー・サーヴィシズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オイシー・マズムダール
(72)【発明者】
【氏名】キングシュク・チャクラヴァルティー
(72)【発明者】
【氏名】デバトリ・チャッテルジー
(72)【発明者】
【氏名】アニルッダ・シンハ
(72)【発明者】
【氏名】アブヒジット・ダス
【合議体】
【審判長】
福島 浩司
【審判官】
▲高▼見 重雄
【審判官】
森 竜介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−502771(JP,A)
【文献】
CHAKRAVARTY,Kingshuk et al.,Quantification of balance in single limb stance using kinect,2016 IEEE INTERNATIONAL CONFERENCE ON ACOUSTICS, SPEECH AND SIGNAL PROCESSING(ICASSP),2016年,854−858
【文献】
MALIK,Owais A.,An Adaptive Interval Type−2 Fuzzy Logic Framework for Classification of Gait Patterns of Anterior Cruciate Ligament Reconstructed Subjects,2014 IEEE International Conference on Fuzzy Systems(FUZZ−IEEE),2014年,1068−1075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの姿勢安定性評価のためのプロセッサ実装方法であって、
姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力を収集するステップと、
前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するステップと、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成するステップと、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記姿勢安定性評価システムによって、前記ユーザの姿勢安定性を評価するステップと
を含み、
前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が前記それぞれのカテゴリに該当すると決定する前記ステップが、前記姿勢安定性評価システムによって、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、リアルタイムに収集された前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較するステップを含み、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域に対応するメンバーシップ関数の前記範囲が、前記ユーザについて動的に決定され、
メンバーシップ関数の前記範囲を動的に決定する前記ステップが、
前記ユーザに関する入力を収集するステップであって、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含む、ステップと、
と、
前記入力を学習モデルと比較するステップと、
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
姿勢安定性評価システムであって、
プロセッサと、
複数の命令を含むメモリモジュールとを備え、前記複数の命令が、前記プロセッサに、
ユーザによって実施されている動作を監視させ、前記姿勢安定性評価システムの入出力(I/O)モジュールによって、前記ユーザによって実施されている動作に関する入力を収集させ、
前記姿勢安定性評価システムのSLS持続時間測定モジュールによって、前記入力に基づいて、前記ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間に対応する値を決定させ、
前記姿勢安定性評価システムの身体関節振動決定モジュールによって、前記入力に基づいて、前記ユーザの身体関節振動に対応する値を決定させ、
前記姿勢安定性評価システムの動揺領域決定モジュールによって、前記入力に基づいて、前記ユーザの身体動揺領域に対応する値を決定させ、
前記姿勢安定性評価システムの安定性インデックス生成モジュールによって、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定させ、
前記安定性インデックス生成モジュールによって、前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記ユーザについての姿勢安定性インデックススコアを生成させ、
前記姿勢安定性評価システムの安定性評価モジュールによって、前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記ユーザの姿勢安定性を評価させる
ように構成され、
前記安定性インデックス生成モジュールが、リアルタイムに収集される前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較することによって、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域が前記それぞれのカテゴリに該当すると決定するように構成され、
前記安定性インデックス生成モジュールが、
前記I/Oモジュールを使用して、前記ユーザに関する入力を収集し、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含むこと、
前記入力を学習モデルと比較すること、および
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定すること
によって、前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域に対応するメンバーシップ関数の前記範囲を動的に決定するように構成される、姿勢安定性評価システム。
【請求項3】
1つまたは複数の命令を含む1つまたは複数の非一時的機械可読情報記憶媒体であって、前記1つまたは複数の命令が、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されるとき、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する入力を収集させ、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定させ、
前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の前記決定したカテゴリに基づいて、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザについて姿勢安定性インデックススコアを生成させ、
前記姿勢安定性インデックススコアに基づいて、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記ユーザの姿勢安定性を評価させ、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されるとき、前記ユーザの前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域がそれぞれのカテゴリに該当すると決定するための前記1つまたは複数の命令がさらに、リアルタイムに収集される前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域の値を、対応するメンバーシップ関数の範囲と比較させ、
前記1つまたは複数の命令が、前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されるとき、
前記ユーザに関する入力を収集し、前記入力は前記ユーザの年齢および前記ユーザの地理的位置を含むこと、
前記入力を学習モデルと比較すること、および
前記収集した入力に合致する前記SLS持続時間、前記身体関節振動、および前記身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を決定すること
によってメンバーシップ関数の前記範囲の動的決定を引き起こす、1つまたは複数の非一時的機械可読情報記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照および優先権
本願は、2017年7月7日にインドで出願されたインド完全明細書(発明の名称:METHOD AND SYSTEMS FOR POSTURAL STABILITY ASSESSMENT)出願第(201721024012)号の優先権を主張する。
本明細書の開示は、一般には健康監視および評価システムに関し、より詳細には、ユーザの姿勢安定性評価を実施し、評価した姿勢安定性を定量化することに関する。
【背景技術】
【0002】
姿勢不安定性は、老人人口に関連する、脳卒中、痴呆、パーキンソン病(PD)などの神経障害を有する多くの患者における顕著な症状の1つである。姿勢不安定性は転倒の主な前兆でもあり、老人人口の約35%が毎年転倒しており、転倒予測が、老人健康監視についての著しく影響を及ぼすパラメータとなる。脳卒中後のリハビリテーション治療は、脳卒中患者の約83%が姿勢不安定性を患い、転倒の危険が高くなる。
【0003】
脳卒中の重症度を推定し、治療プランを定義し、リハビリテーションプログラムの進行を監視するために、安定性の測定または定量化が必要となる。姿勢不安定性はPDの主要な徴候のうちの1つである。不安定性により、静的バランスと動的バランスの両方が漸進的に低下し、その結果、再発性の転倒となる。
【0004】
神経障害を有する多数の人口および全老人人口における姿勢不安定性および転倒に関連する問題に鑑みて、多くの姿勢安定性評価システムが市場に導入されてきた。これらの姿勢安定性評価システムの大部分は、姿勢安定性を実施することができるが、評価の様々な段階において手動の介入を必要とする。さらに、既存のシステムは、システムを操作するために訓練を受けた人のサービスを必要とし、出力を解釈するために医学的な資格のある人を必要とする。さらに、安定性評価の領域内の既存のシステムは、事前定義された質問をユーザに与え、質問に対するユーザ応答を収集および解析することによって静的に動作する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、本発明者らが従来型システムにおいて認識する前述の技術的問題のうちの1つまたは複数に対する解決策として技術的改良を提示する。たとえば、一実施形態では、姿勢安定性評価システムが提供される。システムは、プロセッサと、複数の命令を含むメモリモジュールとを含み、複数の命令は、プロセッサに、ユーザによって実施されている動作を監視させ、姿勢安定性評価システムの入出力(I/O)モジュールによって、ユーザによって実施されている動作に関する少なくとも1つの入力を収集させるように構成される。さらに、姿勢安定性評価システムのSLS持続時間測定モジュールが、少なくとも1つの入力に基づいて、ユーザの片脚立ち(SLS)持続時間に対応する値を決定する。次いで、姿勢安定性評価システムの身体関節振動決定モジュールが、少なくとも1つの入力に基づいて、ユーザの身体関節振動に対応する値を決定する。さらに、姿勢安定性評価システムの動揺領域決定モジュールが、少なくとも1つの入力に基づいて、ユーザの身体動揺領域に対応する値を決定する。次いで、姿勢安定性評価システムの安定性インデックス生成モジュールが、ユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域が少なくとも1つのそれぞれのカテゴリに該当すると決定し、SLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域の決定した少なくとも1つのカテゴリに基づいて、ユーザについての姿勢安定性インデックススコアをさらに生成する。次いで、姿勢安定性評価システムの安定性評価モジュールが、姿勢安定性インデックススコアに基づいてユーザの姿勢安定性を評価する。
【0006】
別の態様では、ユーザの姿勢安定性評価のためのプロセッサ実装方法が提供される。この方法では、姿勢安定性評価を実施するために、最初に、姿勢安定性評価のために監視されているユーザの片脚立ち(SLS)持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に関する少なくとも1つの入力が、姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して収集される。さらに、姿勢安定性評価システムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、ユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域が少なくとも1つのそれぞれのカテゴリに該当すると決定する。さらに、SLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域の決定した少なくとも1つのカテゴリに基づいて、姿勢安定性評価システムによって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、姿勢安定性インデックススコアがユーザについて生成される。さらに、姿勢安定性インデックススコアに基づいて、ユーザの姿勢安定性が姿勢安定性評価システムによって評価される。
【0007】
上記の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0008】
本開示に組み込まれ、本開示の一部を構成する添付の図面は、例示的実施形態を示し、説明とともに、開示される原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による、ユーザの姿勢安定性評価を実施するための姿勢安定性評価システムのブロック図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して姿勢安定性評価を実施するプロセスに含まれるステップを示す流れ図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して、監視されているユーザのSLS持続時間、身体関節振動、身体動揺領域についてのメンバーシップ関数を識別するプロセスに含まれるステップを示す流れ図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して、ユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を動的に決定するプロセスに含まれるステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しながら例示的実施形態が説明される。図では、参照番号の最左端の桁が、参照番号が最初に現れる図を特定する。好都合であればどこでも、同一の部分または同様の部分を参照するために、図面全体にわたって同一の参照番号が使用される。開示される原理の例および特徴が本明細書で説明されるが、開示される実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、修正、適合、および他の実装が可能である。以下の詳細な説明は例示的なものにすぎないと見なされるものとし、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
【0011】
ここで、同様の参照文字が各図全体にわたって一貫して対応する特徴を表す、図面、より具体的には
図1から
図4を参照すると、好ましい実施形態があり、これらの実施形態が、以下の例示的システムおよび/または方法の文脈において説明される。
【0012】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、ユーザの姿勢安定性評価を実施するための姿勢安定性評価システムのブロック図を示す。姿勢安定性評価システム100は、入出力(I/O)モジュール101、片脚立ち(SLS)持続時間測定モジュール102、身体関節振動測定モジュール103、動揺領域決定モジュール104、安定性インデックス生成モジュール105、および安定性評価モジュール106を含む。
【0013】
I/Oモジュール101は、姿勢安定性評価システム100と少なくとも1つの外部エンティティとの間の通信を容易にするために、少なくともチャネルに適切な通信プロトコルサポートを提供するように構成される。本明細書での「外部エンティティ」はユーザまたは外部システムであり得る。たとえば、I/Oモジュール101によって提供される適切なインターフェースを使用して、1人または複数のユーザが姿勢安定性評価システム100と対話し得る。別の例では、データ転送および/または任意のそのような動作のために、外部システムが姿勢安定性評価システム100に接続して通信し得る。I/Oモジュール101は、姿勢安定性評価システム100の構成要素間の通信のために適切な通信チャネルを提供するようにさらに構成され得る。I/Oモジュール101は、1つまたは複数のユーザによって実施されている動作を監視するための適切なオプションを提供し、ユーザによって実施されている1つまたは複数の動作に関する1つまたは複数の入力を収集するようにさらに構成される。I/Oモジュール101は、ユーザを監視することによって、姿勢安定性評価のために必要な1つまたは複数の入力を収集するようにさらに構成される。たとえば、I/Oモジュール101は、ユーザアクションを監視し、必要な入力を収集するように、姿勢安定性評価システム100に内部または外部で関連付けられるKinect(登録商標)システムを使用し得る。たとえば、姿勢安定性データ評価のために、I/Oモジュール101は、監視されている各ユーザの25個の関節の時空情報を監視および記録するように構成され得る。I/Oモジュール101は、さらなる処理のためにデータを調整するように、入力として収集されたデータの必要な前処理を実施するようにさらに構成され得、データの調整は、(たとえば、限定はしないが、ノイズ内容の除去、適切なフォーマットへのデータの変換などの動作を実施することによって)さらなる処理のために適したデータを準備することを指す。
【0014】
SLS測定モジュール102は、I/Oモジュール101からユーザ特有の入力データを収集し、収集したデータを処理し、ユーザについてのSLS持続時間を決定するように構成される。ここで、SLS持続時間は、監視されているユーザが標準SLSテストによって要求される動作を実施した時間枠を示す。たとえば、SLS持続時間は、引き上げた脚の足首座標の変動を監視することによって決定される。たとえば、監視およびデータ収集のためにKinect(登録商標)が使用されるとき、Kinect(登録商標)から得られた骨格関節が3D世界座標(x,y,z)によって表され、「x」は左/右変動を表し、「y」は地面に対する上/下変動を表し、「z」はKinnect(登録商標)に対する対象のto/from変動を表す。引き上げた脚の足首y座標の変化(たとえば、左脚が引き上げられる)「YAnkleLeft」は、対象が脚を地面の上に引き上げるときの厳密なタイミングについての意味のある情報を与え得る。同様に、右脚の移動も追跡され得る。
【0015】
身体関節振動決定モジュール103は、I/Oモジュール101によって収集されたユーザ特有の入力データを収集し、収集したデータを処理し、ユーザが姿勢安定性評価のために必要な1つまたは複数の特定の動作を実施していた間の1つまたは複数のタイプの身体関節振動を表す値を決定するように構成される。たとえば、ユーザがSLS運動の部分として一肢で立っている間、ユーザは、平衡を維持するために振動する。身体関節、特に股関節は、不安定性の効果を補正して姿勢を維持することに最大限寄与する。身体関節振動を推定するために、股関節中心のx,y,z方向の加速が解析される。フーリエ変換などの適切な技法を使用して、股関節中心の平均振動数が計算され、SLSの各セグメント(すなわち、両脚、片脚とその後に続く両脚)間の相対振動数変動が振動インデックスを与える。
【0016】
動揺領域決定モジュール104は、収集した入力データから身体動揺を評価し、質量中心(CoM)の動揺を決定するように構成される。任意の適切な技法(たとえば、統計的に等価なシリアルチェーン(SESC))が、CoMを決定するために動揺領域決定モジュール104によって使用され得る。SESCモデルは、シリアルチェーンによって任意のリンクのCoMの位置を突き止め、チェーン内のリンクは、その幾何学的構成および質量分布によって定義される。肩中心および股関節中心が、それぞれシリアルチェーンの始点および終点と見なされる。このチェーンの中点は、身体CoMであると推定され、推定CoMの射影は身体動揺と等価である。動揺領域は、任意の適切なアルゴリズムを使用して計算され得る。たとえば、凸閉包アルゴリズムが使用され得る。凸閉包法では、点集合の三角測量がまず計算される。注目の点は、推定CoMのx座標およびz座標である。多角形のこれらの座標(x1;z1):::(xn;zn)が行列式内に配置され、行列式のクロス乗積が動揺領域を生成する。
【0017】
安定性インデックス生成モジュール105は、決定したSLS持続時間、身体関節振動、および動揺領域に関する情報を収集し、それらをともに処理して、姿勢安定性インデックススコアを生成するように構成され、姿勢安定性インデックススコアは、ユーザの姿勢安定性のレベルを表し、潜在的な健康リスクがあればそれをさらに示し得る。安定性インデックス生成モジュール105は、一定の事前定義された規則に基づいて、SLS持続時間、身体関節振動、および動揺領域に関する情報を処理する。このプロセスの間、安定性インデックス生成モジュール105は、SLS持続時間、身体関節振動、および動揺領域の決定した値を、対応するメンバーシップ関数範囲と比較し、それに応じて、各パラメータの決定した値にそれぞれ適合する1つのメンバーシップ関数を決定する。ここで、「メンバーシップ関数」とは、様々なカテゴリの下のSLS持続時間、身体関節振動、および動揺領域の各々の分類を指す(各カテゴリは値の範囲に関して定義される)。例示的分類が以下で与えられる。
SLS持続時間:不十分:8から25秒、平均:20から40秒、良好:35から85秒、優秀:80から120秒。
身体関節(股関節)振動:不十分:0から5、平均:5から15、良好:15から35、優秀:30から50。
CoM動揺領域:不十分:16から25、平均:8から16、良好:4から8、優秀:0から4。
【0018】
一実施形態では、安定性インデックス生成モジュール105は、解析されている人についての範囲を動的に決定する。安定性インデックス生成モジュール105は、範囲を動的に決定するために、限定はしないが、ユーザの身体的健康に影響を及ぼす、ユーザの年齢、ユーザの地理的位置などのパラメータを考慮し、そのような特徴に対応する値を、範囲を選択するための基準を指定する学習モデルと比較し得る。各パラメータの値を、対応するメンバーシップ関数範囲と比較することによって、安定性インデックス生成モジュール105は、ユーザについての合致するメンバーシップ関数を決定する。SLS持続時間、身体関節振動、および動揺領域の各々の平均が、良好、不良、平均、優秀のうちの1つに分類される。別の実施形態では、安定性インデックス生成モジュール105は、ユーザが有する1つまたは複数の病気に基づいて、ユーザについてのメンバーシップ関数の範囲、たとえば、脳卒中を患うすべてのユーザについてのメンバーシップ関数の範囲を動的に決定する。同様に、別の特定の病気を患うすべてのユーザについて、範囲は異なる値のセットとなる。このシナリオでは、ユーザが患っている1つまたは複数の病気に関する情報が、ユーザについてのメンバーシップ関数の範囲を決定する目的で、安定性インデックス生成モジュール105によって、I/Oモジュール101を通じて、入力のうちの1つとして収集される。同様に、脳卒中、痴呆などの神経バランス障害、関節炎などの筋骨格バランス障害、および老人ケア。次いで、これらのメンバーシップ関数が規則と組み合わされ、姿勢安定性スコアが生成される。一実施形態では、任意の適切な技法(たとえば、ファジィ論理)が使用され、メンバーシップ関数と規則が組み合わされ得る。使用される規則のいくつかの例は以下の通りである。
規則1:SLS持続時間が優秀であり、振動インデックスが良好であり、動揺領域が良好である場合、安定性は優秀である(スコア75から100)
規則2:SLS持続時間が良好であり、振動インデックスが平均であり、動揺領域が良好である場合、安定性は良好である(スコア50から75)
規則3:SLS持続時間が平均であり、振動インデックスが良好であり、動揺領域が平均である場合、安定性は平均である(スコア25から50)
規則4:SLS持続時間が不十分であり、振動インデックスが不十分であり、動揺領域が平均である場合、安定性は不十分である(スコア0から25)
【0019】
メンバーシップ関数と規則の組合せを使用して、ユーザについての姿勢安定性インデックススコアが決定される。次いで、決定された姿勢安定性インデックススコアの値が安定性評価モジュール106への入力として提供される。安定性評価モジュール106は、入力として受信した姿勢安定性インデックススコアを解釈し、適切な提案/勧告を生成するように構成され得、次いで提案/勧告は、ユーザへの出力として提供される。一実施形態では、姿勢安定性インデックススコアの解釈は、安定性評価モジュール106によって、静的または動的に構成される情報に基づいて実施される。たとえば、姿勢安定性インデックススコアの値が20である場合、安定性は不十分であり、ユーザは、適切な健康診断などが勧告され得る。
【0020】
メモリモジュール107は、姿勢安定性評価に関連する任意のデータを記憶するように構成され得る。一実施形態では、静的または動的に決定される、ユーザまたは特定の人口についての様々なパラメータのメンバーシップ関数に関する情報が、メモリモジュール107内に記憶される。同様に、姿勢安定性評価を実施するために使用されるべきすべての規則も、メモリモジュール107内に記憶される。さらに、各ユーザについて実施される姿勢安定性評価に関するすべての情報(入力、出力など)も、参照のために履歴データとしてデータベース内に記憶され得る。学習モデルもメモリモジュール107内に記憶される。メモリモジュール107は、要件に従って揮発性または不揮発性であり得る。
【0021】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して姿勢安定性評価を実施するプロセスに含まれるステップを示す流れ図である。姿勢安定性評価が実施されるべきユーザを監視することによって、ユーザが姿勢安定性評価(たとえばSLSテスト)のために必要な特定の(手動の)動作を実施している間、必要な入力が収集され、入力は評価のためにさらに使用され得る。
【0022】
次いで、そのように収集された入力が姿勢安定性評価システム100によって処理され、ユーザについてのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域を表す値が決定される(202)。識別された値は姿勢安定性評価システム100によってさらに処理され、これらの値が特定のメンバーシップ関数に属する(または合致する)と識別される(204)。姿勢安定性評価システム100は、識別されたメンバーシップ関数および少なくとも1つの規則に基づいて、ユーザについての姿勢安定性インデックススコアをさらに生成する(206)。姿勢安定性評価システム100は、生成した姿勢安定性インデックススコアに基づいて、ユーザの姿勢安定性をさらに評価する。
図2の様々な動作は、同一の順序または異なる順序で実施され得る。さらに、方法200の動作のうちの1つまたは複数が省略され得る。
【0023】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して、監視されているユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域についてのメンバーシップ関数を識別するプロセス内に含まれるステップを示す流れ図である。姿勢安定性評価システム100は、ユーザを監視することによって収集された(301)リアルタイム入力を処理することによって、SLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域のCoMの値(それぞれ302、306、および310)を決定する。次いで、そのように決定された値が、それぞれのメンバーシップ関数範囲と比較され(それぞれ304、308、312)、SLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域のCoMの各々のメンバーシップ関数の範囲が、姿勢安定性評価システム100によってユーザについて決定される。比較によって、姿勢安定性評価システム100は、ユーザについて、SLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域のCoMの各々に合致するメンバーシップ関数を識別する(314)。
図3の様々な動作は、同一の順序または異なる順序で実施され得る。さらに、方法300の動作のうちの1つまたは複数が省略され得る。
【0024】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、姿勢安定性評価システムを使用して、ユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域のメンバーシップ関数の範囲を動的に決定するプロセスに含まれるステップを示す流れ図である。姿勢安定性評価システム100は、限定はしないが、ユーザの年齢、ユーザの地理的位置などのユーザ特有のパラメータを、ユーザについてのメンバーシップ関数の範囲を動的に決定するための入力として収集する(402)。次いで、これらの値が、範囲を選択するための基準を指定する学習モデルと比較される(404)。合致する基準が見つかると、その特定の基準に対してマッピングされるメンバーシップ関数の範囲が、ユーザについてのメンバーシップ関数の範囲として選択される。
図4の様々な動作は、同一の順序または異なる順序で実施され得る。さらに、方法400の動作のうちの1つまたは複数が省略され得る。
【0025】
記載の説明は、当業者が実施形態を作成および使用することを可能にするように本明細書の主題を説明する。主題の実施形態の範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い浮かぶ他の修正形態を含み得る。そのような他の修正形態は、特許請求の範囲の文字通りの言い回しと異ならない同様の要素を有する場合、または特許請求の範囲の文字通りの言い回しとわずかに異なる等価な要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0026】
本明細書の開示の実施形態は、姿勢安定性評価の未解決の問題に対処する。したがって、実施形態は、ユーザのSLS持続時間、身体関節振動、および身体動揺領域に基づく姿勢安定性評価のための機構を提供し、そのシステムを提供する。
【0027】
そのようなプログラム、加えてその中にメッセージを有するコンピュータ可読手段に保護範囲が拡張されることを理解されたい。そのようなコンピュータ可読記憶手段は、プログラムがサーバまたはモバイルデバイスまたは任意の適切なプログラマブルデバイス上で動作するとき、方法の1つまたは複数のステップの実装のためのプログラムコード手段を含む。ハードウェアデバイスは、たとえば、サーバまたはパーソナルコンピュータなどの任意の種類のコンピュータなど、あるいはそれらの任意の組合せを含む、プログラムされ得る任意の種類のデバイスであり得る。デバイスはまた、たとえば、たとえば特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのハードウェア手段、またはハードウェア手段とソフトウェア手段の組合せ、たとえばASICおよびFPGA、または少なくとも1つのマイクロプロセッサと、ソフトウェアモジュールがその中に配置された少なくとも1つのメモリであり得る手段をも含み得る。したがって、手段はハードウェア手段とソフトウェア手段の両方を含み得る。本明細書で説明される方法実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアとして実装され得る。デバイスはまた、ソフトウェア手段をも含み得る。あるいは、実施形態は、たとえば複数のCPUを使用して、相異なるハードウェアデバイス上に実装され得る。
【0028】
本明細書の実施形態は、ハードウェア要素およびソフトウェア要素を備え得る。ソフトウェアとして実装される実施形態は、限定はしないが、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む。本明細書で説明される様々なモジュールによって実施される機能は、他のモジュール、または他のモジュールの組合せとして実装され得る。この説明では、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによる使用、またはそれらに関連する使用のために、プログラムを含み、格納し、通信し、伝播し、または移送し得る任意の装置であり得る。
【0029】
図示されるステップは、示される例示的実施形態を説明することを目指しており、進行中の技術的発展が特定の機能が実施される方式を変更することになることを予想すべきである。これらの例は、限定ではなく、例示のために本明細書で提示される。さらに、機能ビルディングブロックの境界は、説明の都合上、本明細書で任意に定義されたものである。指定の機能およびその関係が適切に実施される限り、代替の境界が定義され得る。代替実施形態(本明細書で説明されるものの同等物、拡張、変形形態、逸脱などを含む)が、本明細書内に含まれる教示に基づいて当業者には明らかとなるであろう。そのような代替実施形態は、開示される実施形態の範囲および精神に含まれる。さらに、「備える」、「有する」、「含有する」、「含む」、および他の同様の形態の語は、意味において等価であり、これらの語のうちのいずれか1つの後に続く項目がそのような項目の網羅的なリストであるという意味ではなく、または列挙された項目だけに限定されるという意味ではないという点で非限定的なものとする。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、文脈が別段に明確に規定しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の参照を含むことも留意されたい。
【0030】
さらに、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体が、本開示に適合する実施形態を実装する際に利用され得る。コンピュータ可読記憶媒体とは、プロセッサによって読取り可能な情報またはデータがその上に記憶され得る任意のタイプの物理メモリを指す。したがって、コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書で説明される実施形態に適合するステップまたはステージをプロセッサに実施させるための命令を含む、1つまたは複数のプロセッサによる実行のための命令を記憶し得る。「コンピュータ可読媒体」という用語は、有形の項目を含み、搬送波および一時的信号を除外する、すなわち非一時的であると理解されたい。例には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスク、および任意の他の既知の物理記憶媒体が含まれる。
【0031】
本開示および例は、例示的なものにすぎないと見なされるものとし、開示される実施形態の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0032】
100 姿勢安定性評価システム
101 入出力(I/O)モジュール
102 片脚立ち(SLS)持続時間測定モジュール
103 身体関節振動測定モジュール
104 動揺領域決定モジュール
105 安定性インデックス生成モジュール
106 安定性評価モジュール
107 メモリモジュール