(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号出力部は、前記変化率演算部が算出した前記変化率が、所定の時間内の出力指示値の変化量が第1変化量以上の第1指示に対する前記原子炉の出力変化であるステップ応答が発生した場合における前記中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の前記第1閾値よりも大きいとき、及び前記変化率演算部が算出した前記変化率が、前記所定時間継続して、前記所定の時間内の出力指示値の変化量が前記第1変化量未満の第2指示に対する前記原子炉の出力変化であるランプ応答が発生した場合における前記中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の前記第2閾値よりも大きいときに、前記トリップ信号を出力する、
請求項1又は2に記載の高速炉の原子炉保護装置。
前記第1指示は、第1時間内に前記出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示であり、前記第2指示は、前記第1時間よりも長い第2時間内に前記出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示である、
請求項3に記載の高速炉の原子炉保護装置。
前記信号出力部は、前記変化率演算部が算出した前記変化率が前記第1閾値よりも大きい場合、及び、前記変化率演算部が算出した前記変化率が、前記原子炉において想定される最大の出力変化を示す前記ステップ応答が発生した場合において前記中性子束のレベルの上昇率が前記第1閾値から所定範囲内となる時間である前記所定時間継続して前記第2閾値よりも大きい場合に、前記トリップ信号を出力する、
請求項3又は4に記載の高速炉の原子炉保護装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速炉においては、原子炉に所定のレベルを超える異常が発生した場合に異常の拡大を防ぐために、安全保護系の検出器からの信号を受けて高速炉の原子炉保護装置の作動により、炉心内の中性子を吸収する制御棒と制御棒駆動装置で構成される原子炉停止系で炉心の核分裂を直ちに停止させる。原子炉の異常を検出するパラメータには中性子束、温度、流量等がある。従来の高速炉においては、そのうちの1つとして、炉心燃料の温度が過度に上昇することを防ぐために、制御棒の位置偏差が閾値を超えたことを条件として制御棒を直ちに炉心に挿入して原子炉を停止する保護動作が行われており、制御棒の位置を検出する位置検出器が確実な作動が期待される安全保護系として設けられている。
【0005】
ところで、安全保護系では信頼性を高めるために、あるチャネルの故障や試験等のための取外しを想定してもその機能を失わないように、同一種類の検出器を電路を含めて複数チャネル分設けることが求められる。安全保護系として構成することにより、設備物量が増大するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、安全保護系における信頼性を維持しつつ、安全保護系に係る設備を削減することができる高速炉の原子炉保護装置及び原子炉保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る高速炉の原子炉保護装置は、高速炉の原子炉の出力領域における中性子束のレベルを特定し、特定した前記中性子束のレベルに基づいて、前記中性子束のレベルの変化率を算出する変化率演算部と、前記変化率演算部が算出した前記変化率が第1閾値よりも大きい場合、及び前記変化率演算部が算出した前記変化率が所定時間継続して前記第1閾値よりも低い第2閾値よりも大きい場合に、前記原子炉の保護動作を行うためのトリップ信号を出力する信号出力部と、を備える。
【0008】
前記信号出力部は、前記変化率演算部が算出した前記変化率が前記第1閾値よりも大きいか否かを判定する第1判定部と、前記変化率演算部が算出した前記変化率が前記第2閾値よりも大きいか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部による判定結果が、前記所定時間継続して前記変化率が前記第2閾値よりも大きいことを示している場合に、当該判定結果を出力する遅延出力部と、前記第1判定部から出力される出力値と、前記遅延出力部から出力される出力値との論理和を出力する論理和回路と、を有していてもよい。
【0009】
前記信号出力部は、前記変化率演算部が算出した前記変化率が、所定の時間内の出力指示値の変化量が第1変化量以上の第1指示に対する前記原子炉の出力変化であるステップ応答が発生した場合における前記中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の前記第1閾値よりも大きいとき、及び前記変化率演算部が算出した前記変化率が、前記所定時間継続して、前記所定の時間内の出力指示値の変化量が前記第1変化量未満の第2指示に対する前記原子炉の出力変化であるランプ応答が発生した場合における前記中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の前記第2閾値よりも大きいときに、前記トリップ信号を出力してもよい。
【0010】
前記第1指示は、第1時間内に前記出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示であり、前記第2指示は、前記第1時間よりも長い第2時間内に前記出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示であってもよい。
【0011】
前記信号出力部は、前記変化率演算部が算出した前記変化率が前記第1閾値よりも大きい場合、及び、前記変化率演算部が算出した前記変化率が、前記原子炉において想定される最大の出力変化を示す前記ステップ応答が発生した場合において前記中性子束のレベルの上昇率が前記第1閾値から所定範囲内となる時間である前記所定時間継続して前記第2閾値よりも大きい場合に、前記トリップ信号を出力してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に係る高速炉の原子炉保護方法は、コンピュータが実行する、高速炉の原子炉の出力領域における中性子束のレベルを特定するステップと、特定された前記中性子束のレベルに基づいて、前記中性子束のレベルの変化率を算出するステップと、算出された前記変化率が第1閾値よりも大きい場合、及び算出された前記変化率が所定時間継続して前記第1閾値よりも低い第2閾値よりも大きい場合に、前記原子炉の保護動作を行うためのトリップ信号を出力するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全保護系における信頼性を維持しつつ、安全保護系に係る設備を削減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[高速炉の概要]
図1は、本実施形態に係る高速炉の原子炉保護装置1の概要を示す図である。高速炉の原子炉保護装置1は、原子炉に所定のレベルを超える異常が発生した場合に異常の拡大を防ぐために、原子炉の保護動作を開始させるためのトリップ信号を出力し、原子炉停止系に原子炉の緊急停止を行わせる装置である。高速炉の原子炉保護装置1は、例えば、コンピュータである。
【0016】
高速炉の原子炉保護装置1は、中性子束検出器2から、出力領域における中性子束のレベルを示す中性子束信号を取得すると、取得した中性子束信号に基づいて、単位時間当たりの中性子束のレベルの変化量である変化率を算出する。高速炉の原子炉保護装置1は、算出した変化率が第1閾値よりも大きい場合、及び算出した変化率が所定時間継続して第1閾値よりも低い第2閾値よりも大きい場合に、原子炉の保護動作を行うためのトリップ信号をトリップ制御装置3に出力する。トリップ制御装置3は、トリップ信号が入力されると、原子炉停止系に原子炉の緊急停止を行わせる装置である。
【0017】
このようにすることで、高速炉の原子炉保護装置1は、原子炉の出力目標値を想定される範囲内で瞬時に大きく変化させた場合、及び一定の勾配で緩やかに変化させた場合のいずれにおいても、原子炉の保護動作が行われることを抑制しつつ、異常な出力変化に対して早期に保護動作を開始させることができる。
【0018】
また、従来の高速炉では、制御棒の異常な引抜きによる出力の上昇を検知するために、制御棒間の位置の偏差が閾値を超えたことを条件としてトリップ信号を出力するのに対し、高速炉の原子炉保護装置1は、出力領域における中性子束のレベルの変化率に基づいてトリップ信号を出力する。このように、制御棒の位置偏差を用いる代わりに中性子束のレベルの変化率を用いることによっても、従来の高速炉と同様に、制御棒の異常な引抜きによる出力の上昇を検知することができる。これにより、高速炉の原子炉保護装置1は、従来の高速炉に設けられている制御棒の位置を検出する位置検出器をトリップ信号の出力用すなわち安全保護系として設置する必要がないので、位置検出器の設置数を例えば1つにすることができる。
【0019】
さらに、中性子束のレベルの変化率は、従来の高速炉においても設けられており、信頼性を高めるために複数チャネルある中性子束検出器2から出力された中性子束信号に基づいて算出することができることから、高速炉の原子炉保護装置1は、新たに検出器を原子炉に設ける必要がない。したがって、高速炉の原子炉保護装置1は、制御棒の位置を検出する位置検出器を安全保護系として構成する必要がないので、安全保護系における信頼性を維持しつつ、安全保護系に係る設備を削減することができる。
以下、高速炉の原子炉保護装置1の構成について説明する。
【0020】
[高速炉の原子炉保護装置1の構成例]
続いて、高速炉の原子炉保護装置1の構成について説明する。
【0021】
図2は、本実施形態に係る原子炉保護装置1の構成を示す図である。
図2に示すように、原子炉保護装置1は、変化率演算部111と、信号出力部112とを備える。
【0022】
変化率演算部111は、高速炉の原子炉の出力領域における中性子束のレベルを特定する。具体的には、まず、変化率演算部111は、高速炉の原子炉に設けられている中性子束検出器2から、出力領域における中性子束のレベルを示す中性子束信号を受信する。
【0023】
変化率演算部111は、特定した中性子束のレベルに基づいて、単位時間当たりの中性子束のレベルの変化量すなわち変化率を算出する。例えば、変化率演算部111は、第1の時間において特定した中性子束のレベルと、第2の時間において特定した中性子束のレベルとの差分を、第1の時間と第2の時間との差分で除算することにより、中性子束のレベルの変化率を算出する。第2の時間は、例えば第1の時間に単位時間の倍数を加算した時間である。
【0024】
信号出力部112は、例えば論理回路により構成される。信号出力部112は、第1判定部113と、第2判定部114と、遅延出力部としてのオンディレータイマ115と、論理和回路116とを備える。信号出力部112は、原子炉の通常運転時において発生するステップ応答及びランプ応答のいずれにおいてもトリップ信号が出力されず、異常が発生している可能性が高い場合においてのみトリップ信号が出力されるように、トリップ信号の出力条件を制御する。出力条件の詳細については後述する。
【0025】
ステップ応答は、所定の時間内に原子炉の出力指示値の変化量が第1変化量以上の第1指示に対する原子炉の出力変化である。第1指示は、第1時間内に出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示である。ステップ応答は、例えば、電力系統において瞬間的に要求電力が変化した場合に行われる出力変更により発生する。ステップ応答においては、中性子束のレベルが変化する期間はランプ応答時よりも短いが、ランプ応答時よりも急峻に中性子束のレベルが変化する。
【0026】
ランプ応答は、所定の時間内に原子炉の出力指示値の変化量が第1変化量未満の第2指示に対する原子炉の出力変化である。第2指示は、第1時間よりも長い第2時間内に出力指示値が出力目標値に達するように入力される指示である。ランプ応答は、例えば、1日の日中と夜間に電力需要の違いがあるため、電力需要が大幅に変動する時間に合わせて行われる出力変更により発生する。ランプ応答においては、中性子束のレベルがステップ応答時よりも緩やかに変化するが、ステップ応答時よりも長期間にわたって中性子束のレベルが変化する。
【0027】
図3は、本実施形態に係る原子炉の出力変化がステップ応答又はランプ応答を示す場合の中性子束のレベルの変化量の解析結果を示す図である。
図3に示すグラフにおいて、横軸は、原子炉出力の変化発生からの経過時間であり、縦軸は、中性子束のレベルの変化量である。
【0028】
図3において、実線は、原子炉出力が最大付近である場合に出力がステップ応答を示す時の上昇率が最大の場合の中性子束のレベルの変化量を示している。また、破線は、原子炉出力がランプ応答を示す時の上昇率が最大の場合の中性子束のレベルの変化量を示している。なお、通常運転時には、
図3に示すステップ応答及びランプ応答に対応する出力指示を超過することなく、
図3に示すステップ応答及びランプ応答以下の上昇率のステップ応答及びランプ応答が示される。
【0029】
図3に示されるように、ステップ応答では、中性子束のレベルは、時間T1まで中性子束のレベルが急激に上昇し、その後、時間T2となるまでに緩やかに上昇していることが確認できる。また、
図3では、ランプ応答では、中性子束のレベルが一定の変化量で上昇していることが確認できる。
【0030】
図4は、
図3に示すステップ応答又はランプ応答により原子炉出力が変化した場合の中性子束のレベルの変化率を示す図である。
図4に示すグラフにおいて、横軸は、原子炉出力の変化発生からの経過時間であり、縦軸は、中性子束のレベルの変化率である。
【0031】
図4において、実線は、原子炉出力が最大付近である場合に上昇率が最大のステップ応答が発生した場合の中性子束のレベルの変化率を示している。また、破線は、原子炉出力が最大付近である場合に上昇率が最大のランプ応答が発生した場合の中性子束のレベルの変化率を示している。
【0032】
図4では、ステップ応答に対応する出力指示が行われてから時間T1までの間の中性子束のレベルの変化率がR1であり、その後、時間T1から時間T2までの間の中性子束のレベルの変化率がR3であることが確認できる。また、
図4では、ランプ応答に対応する出力指示が行われた場合の中性子束のレベルの変化率がR2であることが確認できる。また、
図4では、変化率R2が一定であり、変化率R1よりも小さいことが確認できる。
【0033】
原子炉の通常運転時においてステップ応答が発生した場合、中性子束のレベルの変化率は、ステップ応答を開始してから時間T1までの間に変化率R2を超えることがあるものの、変化率R1を超えることがない。また、原子炉の通常運転時においてランプ応答が発生した場合、中性子束のレベルの変化率は、変化率R2を超えることがない。
【0034】
そこで、信号出力部112は、ステップ応答が発生した場合、及びランプ応答が発生した場合の両方の場合においても、トリップ信号が出力されず、異常が発生している可能性が高い場合においてのみトリップ信号が出力されるように、以下の出力条件によりトリップ信号を出力する。
【0035】
すなわち、信号出力部112は、変化率演算部111が算出した中性子束のレベルの変化率が第1閾値よりも大きい場合、及び変化率演算部111が算出した中性子束のレベルの変化率が所定時間継続して第1閾値よりも低い第2閾値よりも大きい場合に、原子炉の保護動作を行うためのトリップ信号を出力する。
【0036】
具体的には、第1判定部113は、変化率演算部111が算出した変化率が第1閾値よりも大きいか否かを判定する。第1判定部113は、変化率演算部111が算出した変化率が第1閾値よりも大きいと判定すると、1を出力し、変化率演算部111が算出した変化率が第1閾値以下であると判定すると、0を出力する。
【0037】
第2判定部114と、オンディレータイマ115とは、第1判定部113と並列に実行される。第2判定部114は、変化率演算部111が算出した変化率が第2閾値よりも大きいか否かを判定する。第2判定部114は、変化率演算部111が算出した変化率が第2閾値よりも大きいと判定すると、1を出力し、変化率演算部111が算出した変化率が第2閾値以下であると判定すると、0を出力する。
【0038】
オンディレータイマ115は、第2判定部114による判定結果が、所定時間継続して変化率が第2閾値よりも大きいことを示している場合に、当該判定結果を出力する。すなわち、オンディレータイマ115は、第2判定部114から所定時間継続して1が出力されている場合に1を出力し、所定時間継続して1が出力されていないか又は0が出力されている場合に0を出力する。
【0039】
論理和回路116は、第1判定部113から出力される出力値と、オンディレータイマ115から出力される出力値との論理和を出力する。すなわち、論理和回路116は、第1判定部113及びオンディレータイマ115の少なくともいずれかが1を出力したことに応じて1を出力し、そうでない場合に0を出力する。
【0040】
ここで、信号出力部112は、第1閾値を変化率R1とし、第2閾値を変化率R2とする。さらに、信号出力部112は、ステップ応答により原子炉の出力が上昇する場合に、第2閾値を超えてもトリップ信号が出力されないように、変化率演算部111が算出した中性子束のレベルの変化率が変化率R2を超えても時間T1が経過するまでは、トリップ信号が出力されないように制御する。
【0041】
図5は、信号出力部112がトリップ信号の出力の判定に用いる第1閾値と第2閾値と所定時間との関係を示す図である。
図5における横軸は原子炉出力の変化発生からの経過時間であり、縦軸は中性子束のレベルの変化率である。信号出力部112は、
図5における横軸及び縦軸と太線との間の領域で示される経過時間及び変化率の条件においてはトリップ信号を出力せず、当該領域とは異なる領域である斜線領域で示される経過時間及び変化率の条件においてトリップ信号を出力する。
【0042】
すなわち、信号出力部112は、変化率演算部111が算出した中性子束のレベルの変化率が、ステップ応答が発生した場合における中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の第1閾値(変化率R1)よりも大きい場合、トリップ信号を出力する。また、信号出力部112は、変化率演算部111が算出した中性子束のレベルの変化率が所定時間継続して、ランプ応答が発生した場合における中性子束のレベルの上昇率の上限値以上の第2閾値(変化率R2)よりも大きい場合に、トリップ信号を出力する。ここで、所定時間は、原子炉において想定される最大の出力変化を示すステップ応答が発生した場合において中性子束のレベルの上昇率が第1閾値から所定範囲内となる時間である。
図5に示す例では、所定時間は、時間T0から時間T1までの時間である。
【0043】
[炉心燃料の温度検証]
中性子束レベルの変化率を用いてトリップ信号を出力した場合の炉心燃料の温度変化を解析した。制御棒を複数の異なる速度で引抜いて出力を異常に上昇させた場合において、中性子束レベルの変化率を用いてトリップ信号を出力した場合の炉心燃料の最高温度を解析したところ、最高温度は、いずれも、原子炉において許容し得る燃料の最高温度を下回ることが確認できた。したがって、中性子束レベルの変化率を用いてトリップ信号を出力した場合、制御棒の位置偏差が閾値を超えたことを条件としてトリップ信号を出力する従来の高速炉と同様に、原子炉に異常な出力上昇が発生した場合であっても炉心燃料の温度を適切な範囲に維持できることが確認できた。
【0044】
[本実施形態における効果]
以上のとおり、本実施形態に係る高速炉の原子炉保護装置1は、高速炉の原子炉の出力領域における中性子束のレベルを特定し、特定した中性子束のレベルに基づいて、中性子束のレベルの変化率を算出する。高速炉の原子炉保護装置1は、算出した中性子束のレベルの変化率が第1閾値よりも大きい場合、及び算出した中性子束のレベルの変化率が所定時間継続して第1閾値よりも低い第2閾値よりも大きい場合に、原子炉の保護動作を行うためのトリップ信号を出力する。
【0045】
このようにすることで、高速炉の原子炉保護装置1は、通常運転において想定される範囲内のステップ応答が発生した場合、及びランプ応答が発生した場合の両方の場合においても、原子炉の保護動作が行われることを抑制しつつ、異常な出力上昇に対して早期に保護動作を開始させることができる。
【0046】
また、高速炉の原子炉保護装置1は、出力領域における中性子束のレベルの変化率に基づいてトリップ信号を出力することにより、従来の高速炉と同様に、制御棒の異常な引抜きによる出力の上昇を検知することができる。これにより、高速炉の原子炉保護装置1は、従来の高速炉に設けられている制御棒の位置を検出する位置検出器をトリップ信号の出力用すなわち安全保護系として設置する必要がないので、位置検出器の設置数を、通常動作監視用の1つにすることができる。
【0047】
さらに、中性子束のレベルの変化率は、従来の高速炉においても設けられており、信頼性を高めるために複数チャネルある中性子束検出器2から出力された中性子束信号に基づいて算出することができることから、高速炉の原子炉保護装置1は、新たに検出器を原子炉に設ける必要がない。したがって、高速炉の原子炉保護装置1は、制御棒の位置を検出する位置検出器を安全保護系として構成する必要がないので、安全保護系における信頼性を維持しつつ、安全保護系に係る設備を削減することができる。
【0048】
また、高速炉の原子炉保護装置1は、制御棒の位置を検出する位置検出器を通常動作監視用の1つに減らすことができるので、制御棒の駆動装置の構造を簡素化できるとともに、設計の尤度を広げることができる。
【0049】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。