【実施例】
【0106】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を作製および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために発表され、本発明者らが自分達の発明とみなすものの範囲を限定することを意図しない。使用する数値(例えば、量、温度など)に関しては正確性を徹底するよう努力を払ったが、いくつかの実験上の誤差およびずれは考慮されるべきである。別段の定めがない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度の単位は摂氏温度であり、圧力は、大気圧またはほぼ大気圧である。
【0107】
実施例1
pTE084の構築
ヒトFcγRI(hFcγRI;Genbankアクセッション番号M21091)をコードするpCAE100に由来する1,436bpのXba I断片をpRG821のXba I部位に連結することによって、pTE084を構築した。連結の結果として得られる望ましいプラスミド中のhFcγRIの配置を、Not I、Pst I、Eco RI、およびStu Iを用いた制限酵素マッピングによって検査した。pTE084は、hFcγRI、すなわちヒトIgGのFcドメインに対する高親和性細胞表面受容体を高レベルで発現させるために設計した。これは、2つの独立した発現カセットを含む。一方のカセットは、CMV-MIEプロモーターによって駆動されるhFcγRI遺伝子であり、2つ目のカセットは、G418に対する耐性を与えるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(npt)遺伝子であり、SV40後期プロモーターによって駆動される。
【0108】
hFcγRIを発現するCHO K1派生物の構築
製造業者の提案に従ってLipofectamine(商標)(Life Technologies; Rockville, MD)を用いて、CHO K1細胞(4×10
6個)にpTE084をトランスフェクトした。これらの細胞を、500μg/ml G418(Life Technologies)を含む培地(10%ウシ胎児血清、90%ハムF-12、2mM L-グルタミン;試薬はすべてLife Technologies, Rockville, MDから入手)中に15日間入れた。G418選択から生き残った細胞をトリプシン処理し、プールし、FITC結合ヒトIgG Fc断片(FITC-hFc; Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて染色した。簡単に説明すると、10cm培養皿上で増殖させた細胞を、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Life Technologies)で1回洗浄した。各プレートに、0.25%トリプシン(Life Technologies)3mlを添加した。細胞がプレートから離れるまで、プレートを回転させた。離れた細胞を含む各プレートに、培地10mlを直ちに加えた。次いで、1,000×gで4分間の遠心分離によって、細胞を回収した。上清を除去した後、培地で希釈した4mlの2μg/ml FITC-hFc中に細胞を再懸濁した。次いで、細胞をプラットホーム振盪機上に置き、室温で1時間、染色した。未結合FITC-hFcを除去するために、PBS 20mlで2回、細胞を洗浄した。細胞上のFITC-hFc標識の程度を、MOFLO(商標)細胞選別機(Cytomation; Fort Collins, CO)を用いてフローサイトメトリーによって測定した。FITC-hFcによって、モックトランスフェクトされた親CHO K1細胞は染色されなかったが、G418耐性のpTE084をトランスフェクトされたプールでは蛍光の分布が生じた。フローサイトメトリーによって、選択されたプールの最も蛍光が強い上位1%の細胞を、細胞1個/ウェルの密度で96ウェルプレートに入れた。9日後、96ウェルプレート中の細胞クローン88個を24ウェルプレート中に増殖させた。3日後、個々のウェル中の細胞をPBS 1mlで1回洗浄し、0.5mlの2μg/ml FITC-hFcで1時間染色し、PBS 1mlで2回洗浄し、蛍光顕微鏡下で細胞表面染色について検査した。最も蛍光が強いクローン33個を選択し、増殖させ、次いでフローサイトメトリーによってスクリーニングした。
【0109】
IgGを添加することによって、発現細胞と非発現細胞間での分泌タンパク質の細胞間拡散を妨害した:hFcγRIクローン細胞株の細胞はすべて、細胞表面hFcγRIを発現するため、それらは皆、IgGまたはIgGのFcドメインからなる融合タンパク質に結合する能力を有している。hFcγRIは様々な種に由来するIgGに結合するため(van de Winkel and Anderson, 1991)、ヒトIgG1(hIgG1)Fcタグを含むタンパク質(4SC622)がhFcγRI発現細胞に結合するのを妨害する能力について、動物IgGのパネルを試験した。4SC622は、hIL-4Rγ細胞外ドメインに融合されたIL-2Rγ細胞外ドメインからなるキメラ分子であり、次いでhIgG1-Fcドメインに融合されている。本実験において、RGC1の培養物、すなわち、pTE084を安定にトランスフェクトされたCHO K1細胞より選択されたhFcγRI発現細胞株を、37℃の組織培養インキュベーター中、様々な種に由来する1mg/ml IgGの存在下または非存在下で18時間、1μg/mlの4SC622と共にインキュベートした。
【0110】
FITC-hFcを用いた細胞染色について概説されている手順に従って、4SC622のhIL-2Rγ構成要素に特異的なフィコエリトリン結合マウスIgG1モノクローナルAG184(PE-AG184)(BD Pharmingen; San Diego, CA)を用いて、洗浄した細胞を染色した後に、4SC622の細胞表面結合をフローサイトメトリーによって測定した。
【0111】
hIgGは、RGC1の表面で発現されたhFcγR1に4SC622が結合するのを完全に妨害することが判明した。ラット、ウサギ、およびイヌ科動物に由来するIgGもまた、結合を効果的に妨害したのに対し、ウシおよびヒツジに由来するIgGは妨害しなかった。外部から添加されたラットIgGが、外部から添加されたhIgG1 Fcタグ付きタンパク質(4SC622)が細胞表面hFcγRIに結合するのを妨害できることから、ラットIgGは様々なレベルでhIgG1 Fcタグ付きタンパク質を発現する細胞間の移動も妨害できることが示唆される。これを試験するために、緑色蛍光タンパク質(EGFP)の存在または非存在によって区別できる2種の細胞株をRGC1から作製した。簡単に説明すると、RGC1細胞にEGFPで印を付けるために、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーターによって駆動されるヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子をコードするPTE073 0.5mgおよびCMV-MIEプロモーターによって駆動されるEGFP遺伝子をコードするpRG816-EGFP 5mgをRGC1細胞2×10
6個に同時トランスフェクトした。200μg/mlヒグロマイシンB(Sigma; St. Louis, MO)を2週間用いて、トランスフェクトされた細胞を選択した。フローサイトメトリーによって緑色蛍光細胞を単離した。EGFPおよびhFcγRIを発現する1つのクローンRGC2を、細胞混合実験において使用した。これらの実験において使用したもう1つの細胞株RGC4は、プラスミドpEE14.1-622をRGC1に安定にトランスフェクションすることによって作製した。pEE14.1-622は、4SC622の発現がCMV-MIEプロモーターによって駆動されるプラスミドであり、類似体メチオニンスルホキシミン(MSX)に対する耐性を与え安定な組込み事象の選択を可能にするグルタミンシンセターゼミニ遺伝子を含む。RGC4細胞は、細胞表面にhFcγRIを発現し、hIgG1 Fcタグ付きタンパク質4SC622を分泌する。50%のRGC2細胞および50%のRGC4細胞を含む混合細胞を入れた1つのプレートを1mg/mlのラットIgGと共に18時間インキュベートした後にPE-AG184を用いて染色し、その後、フローサイトメトリーによって検査した。RGC2細胞のEGFP蛍光から、PE-AG184蛍光の増加によって示されるように、RGC2細胞もまた、外部から添加された4SC622(1μg/ml)に結合することが示される。RGC4は、EGFPゲート中で蛍光を発しなかった。意義深いことには、外部から添加されたラットIgGによって、細胞表面4SC622について陽性に染色されたRGC4細胞の比率は減少しなかったことから、hFcγRIへの4SC622の結合は、それらのタンパク質が細胞表面へ移行する間に起こることが示唆された。RGC2細胞およびRGC4細胞を混合した場合、RGC4細胞から分泌された4SC622タンパク質は、培地中に蓄積し、RGC2細胞の大半に結合した。しかしながら、1mg/mlラットIgGを添加すると、4SC622に結合するRGC2細胞の比率が有意に減少したことから、ラットIgGが、分泌されたhIgG1 Fcタグ付きタンパク質が発現細胞から非発現細胞へと移動するのを妨害することが実証された。
【0112】
実施例2:細胞表面の蛍光は、4SC622の発現レベルと相関している
pEE14.1-622をRGC1細胞(4×10
6個)にトランスフェクトし、10%の透析済みウシ胎児血清、90%グルタミン不含ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、1×GS補充物質(supplement)、および25μM MSX(試薬はすべて、JRH Biosciences, Lenexa, KSから入手した)からなる培地中で2週間選択した後に、安定なトランスフェクタントのプールを得た。免疫染色する18時間前に、ラットIgGを1mg/mlになるまで培地に添加した。これらの細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、実施例1のFITC-hFc染色に関して説明した手順に従って、室温で1時間、1.5μg/mlのFITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG (H+L)F(ab')
2断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて染色した。次いで、フローサイトメトリーによって細胞染色を解析した。選択されたプールが、4SC622発現レベルが広範囲に渡る細胞を含むことが、蛍光分布から示唆された。免疫蛍光に関して上位3%(R3グループ(bracket))、7〜11%(R5グループ)、および15〜19%(R7グループ)の細胞を3つの別個のプールに選別し、9日間増殖させた。製造業者の推奨に従い、免疫に基づくPandexアッセイ法(Idexx; Westbrook, ME)によって、3日間増殖させた後の培地中の細胞数および4SC622レベルを測定することにより、各プールの細胞当たりの平均4SC622産生を測定した。Pandexアッセイ法において、ヤギ抗ヒトIgG、g鎖特異的抗体(Sigma)でコーティングされたフルオリコン(fluoricon)ポリスチレンアッセイ用粒子を用いて4SC622を培地から捕捉し、FITC結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Sigma)を用いて、ビーズが結合した4SC622を検出した。較正のために、公知の量の精製4SC622をアッセイ法に含めた。上位3%プール、7〜11%プール、および15〜19%プールの細胞は、それぞれ1.42、0.36、および0.22pg/細胞/日の4SC622を産生することが判明した。したがって、細胞表面4SC622染色と単位当たりの(specific)タンパク質産生の間には相関があった。この結果から、FITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG (H+L)F(ab')
2断片によって最も明るく染色された細胞を単離することによって、4SC622を高レベルで発現する個々の細胞を得ることができることが示唆される。
【0113】
実施例3:RGC1からの(in)発現クローンの単離:IL-4トラップ
分泌タンパク質を高レベルで産生するクローン細胞株を作製する際の効率を本発明者らの方法論に基づいて直接的に明らかにするために、4SC622を産生するクローン細胞株をRGC1から作製した。pEE14.1-622をRGC1細胞(4×10
6個)にトランスフェクトし、25μM MSXを用いて2週間選択して、安定なトランスフェクタントのプールを得た。MSX耐性細胞をプールし、1mg/mlヒトIgGと共に18時間インキュベートした後、PE-AG184を用いて染色した。細胞表面4SC622染色のフローサイトメトリー解析によって測定した際の上位5%ゲートから細胞6個を単離し、増殖させた。それら6個のクローン株からの4SC622産生を測定し、選択コロニーを手作業で選び(hand-picking)続いて希釈によってクローニングし増幅させることによって得られたクローンからの4SC622産生と比較した。1つのRGC1由来クローン、すなわちRGC4は、12pg/細胞/日の4SC622を産生した。このレベルは、2,700個のクローンを手作業で選び解析することによって単離した最良の4SC622生産者のレベルと同様である。したがって、コロニーを手作業で選ぶことと比べると、本発明で概説する方法論は、高レベル(high)の生産者をスクリーニングおよびクローニングする際の効率がはるかに高いことが分かる。
【0114】
VEGFトラップ
プラスミドpTE080およびpTE081は、VEGFトラップ、hVEGF-R1R2、およびhVEGF-R1R3の遺伝子をコードする。hVEGF-R1R2は、hVEGFR2の第2のIgドメインに融合されたhVEGFR1の第1のIgドメインからなるキメラ分子であり、次いでhIg1FCドメインに融合されている。hVEGF-R1R3は、hVEGFR3の第2のIgドメインに融合されたhVEGFR1の第1のIgドメインからなるキメラ分子であり、次いでhIgG1-Fcドメインに融合されている。これらのプラスミドにおいて、VEGFトラップの遺伝子はCMV-MIEプロモーターによって駆動され、かつMSXに対する耐性を与えるグルタミンシンセターゼミニ遺伝子が、安定な組込み事象の選択のために発現させられる。これらのプラスミドのいずれかをRGC1細胞にトランスフェクトし、25μM MSXを含む培地中で2週間増殖させて、プラスミドが安定に組み込まれた細胞を選択した。0.1μg/mlのIgG2aおよびマウスIgG3と共にMSX耐性細胞を18時間インキュベートした後に、1.5μg/mlのFITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色した。細胞を1時間染色し、次いで、フローサイトメトリーに先立ってPBSで2回洗浄した。蛍光が最上位1%の中に入っていた細胞のプールから、単細胞を96ウェル組織培養プレート中に選別した。各ウェル中の細胞を増殖させ、Pandexアッセイ法によってそれらの生産力を測定した。手作業で選別された最高レベルで発現するMSX耐性コロニーと比べて、hVEGF-R1R2およびhVEGF-R1R3の両方を発現するRGC由来クローンの方が、単位当たり生産力(specific productivities)がより高く、より少数のクローンをスクリーニングすることによって単離された。表1を参照されたい。
【0115】
(表1)
【0116】
実施例4:細胞表面に結合したhIgG1 Fcタグ付きタンパク質は、RGC1によって内部移行される
hFcγRIは、細胞表面に結合したリガンドの内部移行を誘導することが公知である。RGC1細胞が細胞表面に結合した4SC622を内部移行できるかどうかを解析するために、1μg/ml 4SC622をRGC1細胞に1時間添加し、次いで、PE-AG184による4SC622免疫染色およびフローサイトメトリー解析のために細胞を直ちに処理した。93%の細胞が、細胞表面4SC622について陽性に染色された。あるいは、1μg/ml 4SC622をRGC1細胞に1時間添加し、次いで、細胞を洗浄し、4SC622を含まない培地中でPE-AG184と共に18時間、インキュベートした。4SC622の免疫染色後のフローサイトメトリー解析により、9%の細胞が細胞表面に4SC622を保持していることが示された。表面に結合した4SC622の喪失をさらに明らかにするために、RGC1および親CHO K1細胞の培地に精製4SC622タンパク質を添加し、次いで、培地中の4SC622のレベルをある期間に渡って測定した。10cmプレート中の培地に2μg/mlまで添加された4SC622は、3日間のインキュベーション後のRGC1馴化培地において、CHO K1対照と比べて有意に少なかった。これらの結果から、培地中の4SC622の濃度は、細胞表面にhFcγRIが存在することによって低下することが示される。これらの結果から、培地から4SC622が枯渇するのは、hFcγRI-4SC622複合体の内部移行の結果であったことが示唆される。受容体-リガンド複合体のこの内部移行によって、18時間のブロッキング段階の間にブロッキングIgGの存在下で非発現細胞からすべての4SC622を効果的に除去することが容易になり得る。
【0117】
実施例5:hFcγRIが誘導発現されるCHO K1細胞株の構築
hFcγRIを使用するフローサイトメトリーに基づく自己分泌トラップ(FASTR(商標))法は、高発現クローンの迅速な単離を可能にする。しかしながら、hFcγRIがFcタグ付きタンパク質の代謝回転をもたらす場合、操作されたhFcγRI発現細胞によって実現される分泌タンパク質産生は、産生期間中にhFcγRI発現を阻害できるならば、より多くなると考えられる。このために、hFcγRIの発現がテトラサイクリンまたは類似体ドキシサイクリンによって誘導されるCHO K1細胞株を構築した。この系では、CHO K1細胞を最初に操作してテトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)を発現させ、TetRによって活性が調節されるプロモーターの転写制御下にhFcγRIを置いた。2つの直列型のTetRオペレーター(TetO)をpTE084のCMV-MIEプロモーター/エンハンサーのすぐ下流に配置してpTE158を作製した。pTE158におけるCMV-MIEプロモーターからのhFcγRIの転写は、テトラサイクリンも他の何らかの適切な誘導因子もない場合、TetRによって妨害された。誘導因子の存在下では、TetRタンパク質はTetOに結合することができず、hFcγRIの転写が起こった。
【0118】
pcDNA6/TR、すなわちブラストサイジンに対する耐性を与え、TetRの発現がCMV-MIEプロモーターから始まるプラスミド(Invitrogen; Carlsbad, CA)を、CHO K1細胞にトランスフェクトした。2.5μg/mlブラストサイジン(Invitrogen)を用いて2週間選択した後、安定なトランスフェクタントをプールした。次いで、このプールに、pTE158、すなわちG418に対する耐性を与え、hFcγRIの発現がCMV-MIE/TetOハイブリッドプロモーターに依存しているプラスミドをトランスフェクトした。pcDNA6/TRおよびpTE158を連続的にトランスフェクトされた細胞を、400μg/ml G418および2.5μg/mlブラストサイジンを用いて12日間選択し、次いでプールした。1μg/mlドキシサイクリンの添加によって、このプールを2日間誘導し、次いでFITC-hFcで染色して、hFcγRIを発現する細胞を同定した。hFcγRIを発現する細胞の上位5%をプールとして回収し、ドキシサイクリンの非存在下で6日間増殖させ、hFcγRIの存在についてFITC-hFcで再び染色した。hFcγRIに関して染まらなかった細胞を回収し、1μg/mlドキシサイクリンを含む培地中で3日間増殖させた。次いで、hFcγRIの存在についてプールを染色し、フローサイトメトリーによって単離した。最も高レベルのhFcγRIを発現した細胞(上位1%)を、1ウェル当たり細胞1個となるように96ウェルプレートに選別した。これらの細胞はおそらく、FcγR1の低い非誘導性発現レベルおよびFcγR1の高い誘導性レベルを有する細胞を含んでいた。増殖後、20個のクローンにおけるドキシサイクリンによるhFcγRIの誘導を、FITC-hFcによる免疫染色およびフローサイトメトリーによって確認した。さらに特徴を明らかにするために1つのクローンを選択し、RGC10と名付けた。
【0119】
ドキシサイクリンの非存在下では、RGC10は検出可能なレベルのhFcγRIを発現しなかったのに対し、1μg/mlのドキシサイクリンで3日間誘導された細胞では高レベルのhFcγRIが観察された。ドキシサイクリンによる誘導後、RGC10細胞の平均蛍光量は増加し、1,000倍を超えた。
【0120】
実施例6:RGC10からの4SC622産生細胞株の単離
RGC10細胞にpEE14.1-622をトランスフェクトし、25mM MSXを用いて2週間選択した後、MSX耐性細胞をプールした。培地に1μg/mlドキシサイクリンを3日間添加することによって、hFcγRIの発現を誘導した。ドキシサイクリンを含む培地に1mg/mlラットIgGを18時間添加した後、FITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。最も高レベルの4SC622を発現した細胞(上位1%)を、1ウェル当たり細胞1個となるように96ウェルプレートに選別した。ドキシサイクリンによってhFcγRI発現を誘導しない場合、FITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色することによって細胞表面に結合した4SC622を検出することはできない。ドキシサイクリンの非存在下で、60個のクローンを増殖させた。最も高レベルの(highest)13個の生産者の単位当たり生産力をPandexアッセイ法によって測定した。クローン1C2の単位当たり生産力は17.8pg/細胞/日であった。この値は、調節されていないhFcγRI細胞株RGC1を用いて以前に単離した最良の4SC622細胞株において観察された12pg/細胞/日よりも有意に優れていた。
【0121】
実施例7:Sp2/0骨髄腫細胞を操作して、細胞表面捕捉タンパク質を発現させることができる
本実施例において、自己分泌トラップ法がCHO以外の細胞株に応用可能であることを実証するために、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞株を操作してhFcγRIを安定に発現させた。レトロウイルス感染によって、hFcγRIの遺伝子を骨髄腫細胞に導入した。プラスミドpLXRN(Clontech; Palo Alto, CA)、すなわち関心対象の遺伝子を上流のMoloneyマウス肉腫ウイルス長末端反復配列(MoMuSV LTR)プロモーターから発現させることができるレトロウイルスDNAベクターを用いて、hFcγRI遺伝子をコードするレトロウイルスを作製した。ヒトFcγRI遺伝子をコ―ドするpTE084由来の1,363bp Xho I断片をpLXRNのXho I部位にクローニングした。hFcγRI cDNA発現がMoMuSV LTRに依存しているプラスミドを選択し、pTE255と名付けた。
【0122】
製造業者のガイドラインにほぼ従って、hFcγRIを発現させるための向汎性レトロウイルスを作製した。パッケージング細胞株GP-293、すなわちウイルスタンパク質gagおよびpolを安定に発現するHEK293ベースの細胞株(Clontech; Palo Alto, CA)に、各10mgのpVSV-GおよびpTE255を同時トランスフェクトした。プラスミドpVSV-Gは、感染性粒子に広宿主域を与えるウイルスエンベロープタンパク質VSV-Gの発現を可能にする。
【0123】
Sp2-hFcγRI-4の構築
向汎性hFcγRIレトロウイルスを用いて、Sp2/0-Ag14骨髄腫細胞(American Type Culture Collection; Manassas, VA)1×10
7個を細胞1個当たり感染性粒子約10個の多重度で感染させた。感染後3日目に、細胞を1時間染色し、次いで、フローサイトメトリーによる解析に先立ってPBSで2回洗浄した。結合したFITC-hFcによって示されるhFcγRI発現細胞を、フローサイトメトリーによってプールとして回収した。このプールを13日間増殖させ、次いでFITC-hFcで再び染色し、hFcγRI発現細胞をフローサイトメトリーによってプールとして回収した。選別したこれらの細胞を、4.5g/lブドウ糖および4mMグルタミンを含む10%ウシ胎児血清90%ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で3週間培養し、FITC-hFcで染色し、平均蛍光量が集団の上位1%である細胞を単細胞選別によってクローニングした。増殖後、前述したようにして、24個のクローンをhFcγRIの発現についてフローサイトメトリーによって検査し、さらに特徴を明らかにするために、1つのクローン、Sp2-hFcγRI-4を選択した。
【0124】
4SC622タンパク質を発現するSp2-hFcγRI-4細胞の単離
pTE209、すなわちCMV-MIEプロモーターからの4SC622の構成的発現を可能にし、ヒグロマイシンに対する耐性を与えるプラスミドを、Sp2-hFcγRI-4細胞(1×10
7個)にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、10%FCS、90%D-MEM、および400μg/mlヒグロマイシンを含む培地中に14日間入れた。ヒグロマイシン耐性細胞を1mg/mlウサギIgGと共に18時間インキュベートした後、FITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色した。細胞を1時間染色し、次いで、フローサイトメトリーによる解析に先立ってPBSで2回洗浄した。標識された細胞をフローサイトメトリーによってプールとして回収し、次いで5日間培養し、前述のようにして選別した。次いで、増殖させたプールに由来する、最も多くのFITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片に結合した細胞、すなわち上位1%の集団を単細胞選別によってクローニングした。10個のクローンの4SC622産生をELISAによって解析したところ、10個のクローンはすべて4SC622を発現することが判明した。クローン5H11は、0.5pg/細胞/日の4SC622を産生した。これらのデータから、自己分泌トラップ法によって、4SC622を分泌するクローンが、Sp2-hFcγRI-4細胞へのpTE209の安定なトランスフェクションに由来する不均一な細胞プールから効率的に単離されることが示された。
【0125】
4SC622およびhFcγRIの両方を発現する骨髄腫細胞の表面に4SC622が自己由来で提示されることを確認するために、クローン5H11を1mg/mlウサギIgGと共に18時間インキュベートし、次いで、FITC結合抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色し、クローン5H11が細胞表面4SC622を提示することを認めた。ウサギIgGによって相互移動(cross-feeding)が妨害されている条件下で分泌タンパク質が提示されたことから、4SC622の自己提示が実証された。これらのデータから、前述の自己分泌トラップ法がCHO細胞に限定されておらず、骨髄腫および他の細胞型にも同様に拡大適用され得ることが示された。
【0126】
実施例8:プロテインGキメラタンパク質は、細胞表面捕捉タンパク質として機能し得る
hFcγRI以外の細胞表面捕捉タンパク質に自己分泌トラップ法を応用できることを実証するために、プロテインGを発現する細胞株を構築した。プロテインGはストレプトコッカス(Streptococcus)株G148に由来し、ヒトおよびマウスのすべてのIgGサブクラスに結合し、したがって、抗体またはIgG Fc融合タンパク質を発現する組換え細胞の単離に役に立つ。プロテインG IgG Fc結合ドメインが、ヒトおよびマウスのすべてのIgGサブクラスに結合できる細胞表面捕捉タンパク質として使用され得ることを実証するために、本発明者らは、hFcγRIの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合されたプロテインGのFc結合ドメインからなるキメラタンパク質を発現するCHO株を構築した。プロテインGのFc結合ドメインは、55アミノ酸長の相同な反復配列を3つ含み(Guss et al., (1986) EMBO 5:1567およびSjobring et al., (1991) J. Biol. Chem. 266:399)、各反復配列は1つのIgG Fcに結合することができる。CHO細胞におけるこのキメラタンパク質の発現を向上させるために、本発明者らは、マウスROR1遺伝子由来のシグナル配列がプロテインG(アクセッション番号X06173)のFc結合ドメイン、すなわちアミノ酸303〜497(SEQ ID NO: 1)に融合されている合成DNAを構築した。この合成DNAは、オリゴヌクレオチドアニーリング、ギャップ充填、およびPCR増幅の組合せによって作製した。次いで、hFcγRI(アクセッションM21091)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメイン、すなわちアミノ酸279〜374(SEQ ID NO: 2)をコードするDNAに、PCRによってこの合成DNAを融合させた。プロテインG/hFcγRIキメラタンパク質をコードする得られたDNAをpTE158のCMV-MIEプロモーターの下流にクローニングして、hFcγRIをコードする遺伝子を置換して、プラスミドpTE300を得た。
【0127】
無血清培地中で増殖するように順応させたCHO K1細胞株RGC14にpTE300をトランスフェクトし、3日後、pTE300の安定な組込みを選択するために、400μg/ml G418を培地に添加した。選択開始後2週目に、細胞をFITC-hFcで染色して、hFcγRIを発現する細胞を同定した。これらの細胞をフローサイトメトリーによって解析し、hFcγRIを発現する細胞をプールとして回収した。これらの細胞を10日間増殖させ、hFcγRIを発現する細胞の集団をフローサイトメトリーによって再び単離した。これらの細胞を再び増殖させ、FITC-hFcで染色し、高レベルのプロテインG/hFcγRIキメラタンパク質を発現する単細胞をフローサイトメトリーによって単離した。FITC-hFc結合について陽性に染色された単細胞を、10%ウシ胎児血清、90%ハムF12、および400μg/ml G418から構成される培地中に選別した。2週間のインキュベーション後、FITC結合抗ウシIgG F(ab')
2断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて染色することによって、培地中に存在するウシIgGへの結合に関して48個のクローンを検査した。1つのクローン、すなわちこの抗体で陽性に染色されるRGC18を、さらに特徴を明らかにするために選択した。
【0128】
RGC18からの発現クローンの単離:RGC18細胞(6×10
6個)にpTE209をトランスフェクトし、400μg/mlヒグロマイシン中で18日間増殖させることによって、プラスミドの組込みに関して選択した。ヒグロマイシン耐性細胞を1mg/mlウサギIgGと共に18時間インキュベートした後、FITC結合ポリクローナル抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色した。細胞を1時間染色し、次いで、フローサイトメトリーによる解析に先立ってPBSで2回洗浄した。最も蛍光が強い細胞(上位5%)を単細胞選別によって単離し、3週間増殖させた。4SC622分泌に関して10個のクローンを検査した。試験したクローンはすべて4SC622を高レベルで分泌し、最も優れたクローンであるRGC19は、単位当たり生産力が6.4pg/細胞/日であった。この結果から、自己分泌トラップ法によって、4SC622を発現する細胞が、RGC18へのpTE209の安定なトランスフェクションに由来する不均一な細胞プールから効率的に単離されることが実証された。さらに、これらのデータから、プロテインGの断片は、シグナル配列および膜貫通ドメインを含むように操作することができ、細胞表面捕捉タンパク質として機能できることがはっきりと実証された。
【0129】
プロテインG/hFcγRIキメラタンパク質および4SC622の両方を発現するRGC19細胞の表面に4SC622が自己由来で提示されることを確認するために、RGC19を1mg/mlウサギIgGと共に18時間インキュベートし、次いで、FITC結合抗ヒトIgG(H+L)F(ab')
2断片を用いて染色し、フローサイトメトリーによって解析した。ウサギIgGによって相互移動が妨害されているこれらの条件下でRGC19細胞が細胞表面4SC622を有することが判明したことから、4SC622の自己提示が示唆された。ウサギ IgGは、RGC18細胞に外因性4SC622タンパク質が結合するのを効果的に妨害したが、4SC622を発現する細胞の細胞表面での4SC622の提示は妨害しなかった。これらのデータから、プロテインG/hFcγRIキメラタンパク質の特性が細胞表面捕捉タンパク質としてのhFcγRIの特性と類似していることが実証され、自己分泌トラップ法では細胞表面捕捉タンパク質として他のタンパク質を使用できることが示唆された。
【0130】
実施例9:RGC10からの抗体産生細胞の単離
組換え抗体を発現するCHO細胞株の単離のために自己分泌トラップ法が有用であることを実証するために、本発明者らは、KD5ハイブリドーマに由来する可変軽鎖遺伝子および可変重鎖遺伝子をコードするDNAをクローニングした。KD5は、ヒトTie-2受容体に特異的なモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマである。
【0131】
500ngのマウス脾臓ポリA+RNA(Clontech, Palo Alto, CA)から、マウスIgG定常領域遺伝子配列をクローニングした。ランダムヘキサマー50ngを用いて開始されるRT-PCR用SuperScript第一鎖合成システム(First-Strand Synthesis System)(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、一本鎖cDNAを合成した。プライマー
を用いたPCRによって、このcDNAからマウスκ軽鎖定常DNA配列(アクセッション番号Z37499)を増幅した。プライマー
を用いたPCRによって、このcDNAからマウスIgG2a定常領域DNA配列(アクセッション番号AJ294738)も増幅した。TOPO TA Cloningキット(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて、これらのPCR産物をpCR2.1-TOPO中にクローニングし、定常領域の配列を確認した。
【0132】
RT-PCRによってKD5ハイブリドーマmRNAからKD5可変領域遺伝子を増幅し、Amersham-Pharmacia Biotech(Piscataway, NJ)社製の重鎖可変領域および軽鎖可変領域プライマーミックスを用いて、pCR2.1-TOPO中にクローニングした。プライマー
を用い、pCR2.1-TOPOにクローニングした可変領域を鋳型として用いて、可変重鎖遺伝子をPCR増幅し、BspMIで消化し、プライマー
を用いて増幅した、BsaIによって消化したIgG2a定常重鎖遺伝子PCR断片に連結した。次いで、この断片をpRG882のBspMI部位およびNotI部位に連結した。得られたプラスミドpTE317は、mROR1シグナル配列に融合されたKD5組換え重鎖遺伝子をCMV-MIEプロモーターから発現させることができた。プライマー
を用い、pCR2.1-TOPOにクローニングした可変領域を鋳型として用いて、可変軽鎖遺伝子をPCR増幅し、BsmBIで消化し、プライマー
を用いて増幅した、BsaIによって消化したκ定常軽鎖遺伝子PCR断片に連結した。次いで、この断片をpRG882のBspMI部位およびNotI部位に連結した。得られたプラスミドpTE316は、mROR1シグナル配列に融合されたKD5組換え軽鎖遺伝子をCMV-MIEプロモーターから発現させることができた。
【0133】
KD5重鎖遺伝子をコードするpTE317由来の1450bp EcoRI-NotI断片を、ヒグロマイシンに対する耐性を与え、UbCプロモーターに対して組換え遺伝子の発現を可能にするベクターpRG980のEcoRI部位およびNotI部位中にクローニングして、プラスミドpTE322を得た。同様に、KD5軽鎖遺伝子をコードするpTE316由来の750bp EcoRI-NotI断片を、ピューロマイシンに対する耐性を与え、UbCプロモーターに対して組換え遺伝子の発現を可能にするベクターpRG985のEcoRI部位およびNotI部位中にクローニングして、プラスミドpTE324を得た。RGC10細胞(5×10
6個)に3μgのpTE322および3μgのpTE322をトランスフェクトし、10%ウシ胎児血清ならびにピューロマイシン20μgおよび400μg/mlヒグロマイシンを添加したF12培地中で14日間増殖させることによって、プラスミドの組込みに関して選択した。培地に1μg/mlドキシサイクリンを3日間添加することによって、hFcγRIの発現を誘導した。二重耐性細胞を1mg/mlウサギIgGと共に18時間インキュベートした後、FITC結合ヤギポリクローナル抗マウスIgG(Fcγ)F(ab')
2断片(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)を用いて染色した。細胞を1時間染色し、次いで、フローサイトメトリーによる解析に先立ってPBSで2回洗浄した。最も蛍光が強い細胞(上位5%)をプールとして単離し、10日間増殖させ、その後、プロトコールを繰り返した。ただし、最も蛍光が強い上位1%の細胞をプールとして単離した。このプールを10日間増殖させ、次いで、最も蛍光が強い上位0.1%の細胞を単細胞として96ウェルプレート中に単離した。ELISAによってクローンの抗体発現を解析し、解析した53個のクローンから7個のクローンを選択した。これらのクローンの単位当たり生産力の平均は35pg/細胞/日であり、最も優れたクローンは54pg/細胞/日の組換えKD5モノクローナル抗体を発現した。
【0134】
実施例10:CSCP発現レベルに影響されないFASTR(商標)スクリーニング
CSCPの発現レベルが、結合されるsPOIを発現する細胞を単離する能力に有意な影響を及ぼさないことを実証するために、同じCSCPを発現するが高レベルまたは低レベルのいずれかでそれぞれ発現する2種の異なる宿主細胞株における同じsPOIのFASTR(商標)スクリーニングを比較した。
【0135】
FASTR(商標)宿主細胞株RGC10が、pTE158の安定な組込みによるhFcγRIタンパク質の高レベル発現に関して選択され、組み込まれたhFcγRI遺伝子コピーを40個含むことが判明した。安定なトランスフェクションおよび単一コピー遺伝子組込みに関する選択後、hFcγRIタンパク質を低レベルで発現する新しい細胞株RS527をCHO K1から作製した。FASTR(商標)細胞株の全細胞溶解物をウェスタンブロット解析によって測定したところ、RS527細胞は、RGC10細胞よりも有意に少なくhFcγRIタンパク質を発現した。
【0136】
手短に言えば、hFc融合分泌タンパク質Rc1-hFcを発現しヒグロマイシンに対する耐性を与えることができるプラスミドpTE462を、RGC10細胞およびRS527細胞にトランスフェクトした。ヒグロマイシンを2週間用いて、トランスフェクトされた培養物を選択した。本明細書において説明するFASTR(商標)法に従って、ヒグロマイシン耐性細胞を1μg/mlドキシサイクリン(Dox)で誘導し、ウサギIgGを用いて一晩ブロックした。翌日、RGC10/pTE462培養物およびRS527/pTE462培養物を、hFcに特異的なFITC結合抗体によって染色し、次いでフローサイトメトリーによって解析した。低度、中度、および高度の蛍光をそれぞれ有する細胞を表す3つの細胞区分(bin)R4、R5、およびR6を各宿主株から選別し、組織培養で増殖させた。
【0137】
6つの細胞区分のRc1-hFcタンパク質産生レベルを比較するために、各区分について同数の細胞を用いて、6つの培養物を準備した。3日後、馴化培地を回収した。馴化培地中のRc1-hFcタンパク質の力価をELISAによって測定し、各細胞区分の平均蛍光量に対してプロットした。RGC10宿主株およびRS527宿主株の両方において、平均蛍光量(細胞表面に提示されたRc1-hFcの量)と単離された細胞プールのsPOIタンパク質産生レベルとの間に同様の相関が存在した。最も重大なことには、RGC10およびRS527に由来する2つの高度蛍光R6区分のsPOI力価が類似していた。これらのデータから、FASTR(商標)宿主細胞株におけるCSCPの発現レベルは、その宿主を用いて、トランスフェクトされた細胞をsPOI発現レベルに基づいて単離することに有意に影響を及ぼさないことが実証される。
【0138】
実施例11:細胞表面捕捉タンパク質としてのTie2受容体
FcγR1以外の細胞表面捕捉タンパク質(CSCP')を、本明細書において説明する方法において使用することができる。本実施例において、Tie2受容体は、CSCPとして機能し、Tie2受容体の細胞外ドメインに特異的に結合するC1bモノクローナル抗体から作製されるTie特異的ScFv
C1b-Fc融合タンパク質を発現する細胞を単離するのに使用される。ScFv
C1b-Fcに対するCSCPはhFcgRIであり得るが、本実施例では、ScFv
C1b-Fcに対するCSCPとしてTie2も使用できることを実証する。
【0139】
誘導性Tie2 CSCP細胞株を構築するために、最初にTetRプラスミドpcDNA6/TRをCHO K1に安定にトランスフェクトした。次いで、Tie2の細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインからなるタンパク質の誘導発現を可能にするプラスミドpTE259を、ブラストサイジン耐性細胞プールに安定にトランスフェクトした。Tie2に特異的な抗体を用いて染色した後に、フローサイトメトリーによって誘導性細胞クローンを単離した。ScFv
C1b-Fcの発現に関してFASTR(商標)を実施できる可能性を調査するために、RGC54クローンを選択した。
【0140】
hFc融合分泌タンパク質ScFv
C1b-Fcを発現しヒグロマイシンに対する耐性を与えることができるプラスミドpTE988を、RGC54細胞に安定にトランスフェクトした。ヒグロマイシンを2週間用いて、トランスフェクトされた培養物を選択した。ヒグロマイシン耐性細胞をDoxで誘導し、1mg/mlの精製C1b mAbを用いてブロックした。C1bモノクローナル抗体は、ScFv
C1b-Fcの可変領域の供給源であった。翌日、細胞プールを、hFcに特異的なFITC結合抗体によって染色し、次いでフローサイトメトリーによって解析した。高度、中度、および低度の蛍光をそれぞれ有する細胞を表す3つの細胞区分R6、R7、およびR8を選別し、組織培養で増殖させた。各区分について同数の細胞を用いて3つの培養物を準備して、ELISAによって測定してScFv
C1b-Fcタンパク質産生を明らかにした。平均蛍光量(細胞表面のTie2に結合するScFv
C1b-Fcの量)と単離された細胞プールのScFv
C1b-Fcタンパク質産生レベルとの間に相関が存在した。
【0141】
これらのデータから、hFcγRI以外のCSCPがCSCPとして働き得ることが示され、また、その細胞質内ドメインを除去することによって任意の受容体をCSCPに変換できることが示唆される。また、これらのデータから、抗原をCSCPにできること、および抗原特異的な抗体関連分子を発現する細胞をFASTR(商標)スクリーニングするのに使用できることも実証される。
【0142】
実施例12:低親和性を有するCSCP:sPOIペアを用いた効果的なFASTR(商標)スクリーニング
アンギオポエチン(angiopoetin)-1は、Tie2受容体に対するリガンドである。アンギオポエチン-1受容体結合ドメインおよびhFcを含むキメラタンパク質(FD1-hFc)は、BIAcore(商標)によって測定した場合に親和定数174nMでTie2に結合する。FD1-hFcおよびTie2をsPOIおよびCSCPとしてそれぞれ選択して、FASTR(商標)スクリーニングのためにCSCPとsPOIの間に最低限の親和性が必要であるかを判定した。
【0143】
細胞ラベル(decoration)実験において、外部から添加されたFD1-hFcは、Tie2を介してRGC54細胞に特異的に結合した。Tie2とFD1-hFcの間の親和性がFASTR(商標)スクリーニングを可能にするのに十分であるかを判定するために、hFc融合分泌タンパク質FD1-hFcを発現しヒグロマイシンに対する耐性を与えることができるプラスミドpTE942を、RGC54細胞に安定にトランスフェクトした。ヒグロマイシンを2週間用いて、トランスフェクトされた培養物を選択した。ヒグロマイシン耐性細胞をDoxで誘導し、マウスIgG1 Fcを含む1mg/mlの精製FD1-mFcを用いてブロックした。翌日、細胞プールを、hFcに特異的なFITC結合抗体によって染色し、次いでフローサイトメトリーによって解析した。高度、中度、および低度の蛍光をそれぞれ有する細胞を表す3つの細胞区分R6、R7、およびR8を回収した。各区分について同数の細胞を用いて培養物を準備して、ELISAによって測定して馴化培地におけるFD1-hFcタンパク質産生レベルを明らかにした。平均蛍光量(細胞表面に結合したTie2に結合するFD1-Fc)と単離された細胞プールのFD1-hFcタンパク質産生レベルとの間に相関があった。蛍光量の最も多い区分が、FD1-hFcを最も多く産生した。
【0144】
これらのデータから、低親和性(174nM KD)のCSCP:sPOIペアを効果的なFASTR(商標)スクリーニングに使用できることが実証される。重要なことには、FD1-Fc:Tie2結合の解離t
1/2は2分より短いことから、親和性が測定可能な任意のCSCP:sPOIペアがFASTR(商標)スクリーニングにおいて役に立ち得ることが示唆される。さらに、この実験からもまた、FcγRI受容体ではないものも、そのリガンドを発現する細胞を単離するためのCSCPとして使用され得ることが示される。
【0145】
実施例12:ScFvに膜貫通ドメインを融合させることによって、機能的CSCPを作製する
CSCPは、sPOIに対して測定可能な親和性を有している任意の細胞表面結合タンパク質であることができる。これを実証するために、PDGF受容体由来の膜貫通ドメインを、マウスκ鎖特異的モノクローナル抗体HB58由来の可変領域を含むScFvに融合することによって、完全に合成のCSCPを構築した。このキメラタンパク質(ScFv
HB58-TM
PDGFR)を発現するFASTR(商標)宿主を構築し、これを用いて、アンギオポエチン(angiopoeitin)-2 FDドメイン特異的P12抗体を発現する細胞を単離した。
【0146】
CHO K1に由来するRS655細胞株は、ScFv
HB58-TM
PDGFRを構成的に発現する。ScFv
HB58-TM
PDGFRを発現する細胞は、P12 mAb、FD2-hFc、およびFITC結合抗hIgGと共に逐次的にインキュベーションすることによって染色することができる。すなわち、HB58 ScFvによって細胞表面に捕捉されたP12を、FD2に対するその親和性に基づいて検出し、次にhFcタグの認識によってFD2を検出した。RS656細胞は、eYFPの遺伝子をコードするプラスミドを安定にトランスフェクションした後のRS655細胞に由来した。RS656細胞のほぼ100%がeYFP陽性であり、大半(76%)は、FD2-hFcへの結合によって検出したところ、ScFv
HB58-TM
PDGFRの発現を維持していた。
【0147】
P12抗体の重鎖および軽鎖を発現しピューロマイシンに対する耐性を与えることができるプラスミドpTE693を、RS655細胞に安定にトランスフェクトした。トランスフェクトされた培養物を、ピューロマイシンを用いて2週間選択して、P12 mAb発現に関して不均一な細胞(RS655/pTE693)のプールを得た。
【0148】
ScFv
HB58-TM
PDGFRがCSCPとして機能し得、非生産者から抗体産生細胞を分離するのを容易にし得るかを判定するために、同数のRS656細胞およびRS655/pTE693細胞を混合し、同時培養した。RS655/pTE693細胞から発現されたP12が拡散し、RS656細胞の表面のScFv
HB58に結合できた場合、黄色の細胞の大きな集団もまた、FD2-hFc結合に関して陽性であった。しかしながら、RS656の表面のScFv
HB58が過剰なマウスIgGと結合した場合、黄色ではない細胞のみがFD2-hFc結合に関して陽性であったことから、発現細胞が非発現細胞から効果的に分離されたことが実証された。
【0149】
これらのデータから、ScFvを細胞膜にターゲティングすることによってScFvを機能的CSCPにできることが実証される。また、このデータから、FASTR(商標)により、分泌抗体を発現する細胞を、抗体の抗原を用いて検出できることが示される。
【0150】
実施例13:T細胞受容体可変領域を含む関心対象のタンパク質
TCR-Fcである関心対象のタンパク質を発現する細胞株の高発現クローンを単離するための、フローサイトメトリーに基づく自己分泌トラップ(FASTR(商標))法は、関心対象の抗体を発現する細胞株の調製に類似した様式で準備される。hFcγRに結合した関心対象のTCR-Fcを表面に提示する細胞をスクリーニングすることによって、高発現クローンを同定する。
【0151】
これらの例において、細胞表面捕捉分子として誘導性FcγR1を含むCHO K1細胞株RGC10が使用される。直接的にインフレームで、またはTCR可変領域とヒトFc領域の間のリンカー配列と共に、TCR可変領域をヒトFc領域にインフレームでクローニングすることによって、RGC10が組換えTCR-Fc'を発現するようにさせる。
【0152】
Fcが結合したTCR α可変ドメインおよびFcが結合したTCR β可変ドメインを含む二量体である関心対象のタンパク質を作製するために、RGC10に次の2つのベクターをトランスフェクトする:ヒトFc配列を有するTCR α可変ドメイン融合タンパク質を発現できる第1のベクター、および同じヒトFc配列を有するTCR βドメイン融合タンパク質を発現できる第2のベクター。各ベクターは、TCR可変領域に対して5'側のリーダー配列(例えば、分泌シグナル配列)および薬物耐性遺伝子である選択マーカーを含む。各ベクターのトランスフェクション後、適切な薬物選択により、そのベクターを含む細胞を選択する。この選択の結果、第1のベクターおよび第2のベクターの両方を有しているRGC10細胞株が得られる。β可変ドメインに対する抗体、α可変ドメインに対する抗体、およびFcドメインに対する抗体の内の1種または複数種を用いて、関心対象のタンパク質を発現する細胞を検出することができる。
【0153】
Fcに融合されたTCR α可変ドメインおよびTCR β可変ドメインの両方を含む二量体である関心対象のタンパク質を作製するために、関心対象のタンパク質をコードする、次のようにして構築される単一のベクターをRGC10にトランスフェクトする:リーダー配列(例えば分泌シグナル配列)、それに続いてリンカーに融合されたTCR β可変ドメイン、次いでリンカーはTCR α可変ドメインに融合され、次いでTCR α可変ドメインはFc配列に融合されている。あるいは、次のようにして単一のベクターを構築することもできる:リーダー配列(例えば分泌シグナル配列)、それに続いてリンカーに融合されたTCR α可変ドメイン、次いでリンカーはTCR β可変ドメインに融合され、次いでTCR β可変ドメインはFc配列に融合されている。β可変ドメインに対する抗体、α可変ドメインに対する抗体、およびFcドメインに対する抗体の内の1種または複数種を用いて、関心対象のタンパク質を発現する細胞を検出することができる。
【0154】
TCR α定常ドメインおよび/またはTCR β定常ドメインも含む関心対象のタンパク質を前述のように作製するために、TCR可変ドメイン(αまたはβ)をTCR定常ドメインに融合し(例えば、TCR α可変ドメインをTCR α定常ドメインに融合し、TCRβ可変ドメインをTCRβ定常ドメインに融合する)、TCR 可変+定常ドメインを、直接的にまたはリンカーを介してFcドメインに融合する。β可変ドメインに対する抗体、α可変ドメインに対する抗体、およびFcドメインに対する抗体の内の1種または複数種を用いて、関心対象のタンパク質を発現する細胞を検出することができる。
【0155】
α可変ドメインに対する抗体、β可変ドメインに対する抗体、α定常ドメインに対する抗体、およびβ定常ドメインに対する抗体、ならびにFcドメインに対する抗体の内の1種または複数種を用いて、本明細書において説明した4SC622産生細胞株を単離する際に使用したのと同じ手順により、所望の量のTCR-Fcを発現する細胞を単離する。最も高レベルのTCR-Fcを発現する細胞を、TCR-Fc産生細胞株として選択する。
【0156】
実施例14:複数のIgGアイソタイプおよび二重特異性抗体を単離するための、ScFvをベースとするCSCP
ゲノムの免疫グロブリン重鎖VDJ領域および免疫グロブリンκ鎖VJ領域がヒトオルソログで置換された遺伝子改変マウス(すなわち、Velocimmune(登録商標)マウス;その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,105,348号を参照されたい)を、ヒトIgG4タンパク質のFc断片(hFcもしくは単にFc;SEQ ID NO: 26)またはジペプチド変異を含むヒトΔAdpFcポリペプチド(IMGTによるH95R、Y96F;Fc
*としても公知;SEQ ID NO: 42)のいずれかで免疫化した。これらのマウスからモノクローナル抗体を得、Fc、Fc
*、またはFcおよび/もしくはFc
*を含む抗体に結合する能力についてスクリーニングした。Fcに結合できる3種の抗体(Ab1、Ab2、Ab3)およびFc
*に結合できる3種(Ab4、Ab5、Ab6)を、次の形態:Fc/Fc、Fc/Fc
*(二重特異性抗体であり得る)、およびFc
*/Fc
*の内の1つを有している分子に結合する能力について試験した。
【0157】
Biacore 2000機器において、結合親和性および動力学的定数を明らかにするための測定を行った。抗体(Ab1〜Ab8のそれぞれ)を抗マウスFcセンサー表面(Mab捕捉形式)上に捕捉し、ヒトFc(SEQ ID NO: 26)ホモ二量体、ヒトFc
*ホモ二量体(SEQ ID NO: 42)、またはFc/Fc
*ヘテロ二量体を表面に注入した。Scrubber 2.0曲線当てはめソフトウェアを用いてデータを処理し1:1結合モデルに当てはめることによって、動力学的な結合速度定数(k
a)および解離速度定数(k
d)を決定した。次のように、動力学的速度定数から結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t
1/2)を算出した:K
D(M)=k
d/k
aおよびt
1/2(分)=(ln2/(60
*k
d)。表2に示すように、抗体は、次の3つの異なるカテゴリーに分かれた:Fcに特異的なもの、Fc
*に特異的なもの、およびFcとFc
*の識別を示さないもの(非特異的)。Fc特異的抗体は、ジペプチド変異(H95R、Y96F)を有するヒトFc
*には結合しないため、これらの抗体はアミノ酸His95および/またはTyr96に依存していた。対照的に、Fc
*特異的抗体は野生型ヒトFcには結合しないため、これらの抗体はArg95および/またはPhe96に依存していた。
【0158】
実施例15:Ab2およびAb2由来ScFv-FcγR融合タンパク質を産生する細胞株
Fc特異的Ab2の重鎖および軽鎖の配列を決定した。組換えAb2抗体を製造するために、重鎖をコードする発現ベクタープラスミドを構築し、軽鎖をコードする発現ベクタープラスミドを構築した。どちらのベクターも、CHO細胞における各サブユニットの発現および分泌を可能にする。抗体を発現させるために、両方のプラスミドをCHO-K1細胞にトランスフェクトし、安定な形質転換体を単離した。構成的CMVプロモーターによって、抗体鎖の発現を駆動した。
【0159】
(表2)抗体の親和性−表面プラズモン共鳴研究
【0160】
重鎖配列および軽鎖配列を用いて、抗Fc ScFv表面捕捉分子を作り出した。Ab2由来抗Fc ScFv-FcγR表面捕捉分子をコードする核酸を製造するために、Ab2免疫グロブリン重鎖可変ドメインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 15)およびAb2免疫グロブリン軽鎖可変ドメインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 16)を逆翻訳し、CHO細胞発現のためにコドン最適化した。同様に、ヒトFcγRIのC末端部分も、CHO細胞発現のためにコドン最適化した。コドン最適化したヌクレオチド配列をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し連結して、SEQ ID NO: 19のScFv-FcγR融合タンパク質をコードする連続した核酸配列(SEQ ID NO: 20)を形成させた。
【0161】
標準的PCRおよび制限エンドヌクレアーゼクローニング技術を用いて、ScFv-FcγR-TM-cyto融合タンパク質をコードする核酸を発現ベクターに挿入した。SEQ ID NO: 23に例示した、結果として生じる環状プラスミドは、β-ラクタマーゼをコードする核酸配列および2つのオペロンを含む。1つ目のオペロンは、SV40プロモーターによって駆動される、ネオマイシン耐性マーカーとインフレームで緑色蛍光タンパク質の変異体である黄色蛍光タンパク質(YFP)をコードする核酸配列(例えばSEQ ID NO: 24)を含む。第2のオペロンは、本発明のこの局面の目的のためのベクターの「機能を果たす部分(business-end)」であり、hCMV-IEプロモーターおよびhCMVイントロンによって駆動される、コドン最適化されたScFv-FcγR融合タンパク質をコードする核酸配列(例えばSEQ ID NO: 25)を含む。
【0162】
SEQ ID NO: 23のプラスミドをCHO-K1細胞にトランスフェクトした。SEQ ID NO: 22の直線状構築物を自身のゲノム中に組み込んだ安定な組込み体を単離した。
【0163】
環状プラスミドは、第1のオペロンおよび第2のオペロンに隣接する2つのLox部位を含んでおり、宿主細胞のゲノム中に直線状構築物としてこれらのオペロンを組み込むことを可能にする。第1のLox部位から第2のLox部位に及ぶ直線状構築物は、SEQ ID NO: 22に例示しており、5プライムから3プライムに向かって、以下を含む:SV40プロモーター、ネオマイシン耐性をコードする核酸、IRES、eYFPをコードする核酸、SV40ポリアデニル化配列、hCMV-IEプロモーター、hCMVイントロン、Tetオペレーター配列(ScFv-FcγR-TM-cyto融合タンパク質の制御された発現のため)、mRORシグナル配列をコードする核酸、Ab2 ScFvをコードする核酸、FcγRの膜貫通部分および細胞質内部分をコードする核酸(SEQ ID NO: 21)、ならびにSV40ポリアデニル化配列。
【0164】
実施例16:ScFv-FcγR-TM-cyto表面捕捉標的
組み込まれたSEQ ID NO: 22配列を含むCHO-K1細胞に、様々なサブタイプの抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG4、95R/435R-96F/436F二重置換を有する1つのCH3ドメインを含むがもう1つのCH3ドメインは野生型であるIgG4二重特異性抗体(IgG4 Fc/Fc
*)、およびIgG1 Fc/Fc
*形態のIgG1二重特異性抗体をコードするプラスミドをトランスフェクトした。細胞をドキシサイクリンで処理して、抗体と共に捕捉分子の産生を誘導した。抗体および捕捉分子を同時発現させた後、場合によってはこれらの細胞をhFcブロッキングタンパク質および検出分子(FITC標識抗hFab)で処理した。表3はこれらの結果を要約したものであり、ScFv-FcγR表面捕捉融合タンパク質がIgG4分子、IgG2分子、およびIgG1分子に結合するのに対し、野生型FcγR表面捕捉分子はIgG1に結合するがIgG4にもIgG2にも結合しないことを大まかに示している。
【0165】
(表3)ブロッキング分子競合アッセイ法
1 ドキシサイクリンあり
2 ドキシサイクリンなし
【0166】
実施例17:Ab6およびAb6由来ScFv
*-FcγR-TM-cytoを産生する細胞株
Fc
*特異的Ab6の重鎖および軽鎖の配列を決定した。軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO: 41であると決定した。重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO: 40であると決定した。組換えAb6抗体を製造するために、重鎖をコードする発現ベクタープラスミドを構築し、軽鎖をコードする発現ベクタープラスミドを構築した。抗体を発現させるために、両方のプラスミドをCHO-K1細胞にトランスフェクトし、安定な形質転換体を単離し、構成的CMVプロモーターによって発現を駆動した。
【0167】
Ab6由来の抗Fc
*特異的ScFv
*-FcγR表面捕捉分子をコードする核酸を製造するために、Ab6抗体の免疫グロブリン重鎖可変ドメインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 38)およびAb6の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 39)を逆翻訳し、CHO細胞発現のためにコドン最適化した。同様に、ヒトFcγRIのC末端部分(SEQ ID NO: 21)も、CHO細胞発現のためにコドン最適化した。コドン最適化したヌクレオチド配列をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し連結して、抗Fc
* ScFv
*-FcγR融合タンパク質(SEQ ID NO: 43)をコードする連続した核酸配列(SEQ ID NO: 45)を形成させた。
【0168】
標準的PCRおよび制限エンドヌクレアーゼクローニング技術を用いて、ScFv
*-FcγR-TM-cyto融合タンパク質をコードする核酸を発現ベクターに挿入した。SEQ ID NO: 44に例示した、結果として生じる環状プラスミドは、β-ラクタマーゼをコードする核酸配列および2つのオペロンを含む。1つ目のオペロンは、SV40プロモーターによって駆動される、ネオマイシン耐性マーカーとインフレームで緑色蛍光タンパク質の変異体である黄色蛍光タンパク質(YFP)をコードする核酸配列(例えばSEQ ID NO: 46)を含む。第2のオペロンは、本発明のこの局面の目的のためのベクターの「機能を果たす部分」であり、hCMV-IEプロモーターおよびhCMVイントロンによって駆動される、コドン最適化された抗Fc
* ScFv-FcγR融合タンパク質をコードする核酸配列(例えばSEQ ID NO: 47)を含む。
【0169】
SEQ ID NO: 44のプラスミドをCHO-K1細胞にトランスフェクトした。SEQ ID NO: 48の直線状構築物を組み込んだ安定な組込み体を単離した。
【0170】
環状プラスミドは、第1のオペロンおよび第2のオペロンに隣接する2つのLox部位を含んでおり、宿主細胞のゲノム中に直線状構築物としてこれらのオペロンを組み込むことを可能にする。第1のLox部位から第2のLox部位に及ぶ直線状構築物は、SEQ ID NO: 48に例示しており、5プライムから3プライムに向かって、以下を含む:SV40プロモーター、ネオマイシン耐性をコードする核酸、IRES、eYFPをコードする核酸、SV40ポリアデニル化配列、hCMV-IEプロモーター、hCMVイントロン、Tetオペレーター配列(抗Fc
* ScFv
*-FcγR融合タンパク質の制御された発現のため)、mRORシグナル配列をコードする核酸、Ab6由来抗Fc
*特異的ScFv
*をコードする核酸、FcγRの膜貫通ドメインポリペプチドおよび細胞質内ドメインポリペプチドをコードする核酸(SEQ ID NO: 21)、ならびにSV40ポリアデニル化配列。
【0171】
実施例18:二重特異性抗体の選別
抗Fc捕捉および抗Fc*検出
Ab2に由来する抗Fc特異的ScFv-FcγR表面捕捉系を、二重特異性抗体を産生する細胞を検出および富化する能力に関して試験した。CH3ドメインの内の1つに95R/435R-96F/436F置換を含む(Fc
*と呼ばれる)二重特異性抗体を検出する能力を評価するために、hFcをブロッキング分子として用い、FITC標識Ab6抗Fc
*抗体(例えば、SEQ ID NO: 40のHCおよびSEQ ID NO: 41のLCを有するmAb)を検出分子として用いて、Ab2に由来する抗Fc特異的ScFv-FcγR表面捕捉細胞株において様々な抗体を発現させた。Ab2に由来する抗Fc特異的ScFv-FcγR表面捕捉細胞株は、Fc
*特異的Ab6を検出分子として用いて、任意のFc
*/Fc
*単特異性抗体またはFc/Fc 単特異性抗体より優先して二重特異性抗体(Fc/Fc
*)を検出および識別することができた(表4)。FcγRはIgG4に結合することができないか、または非常に低い親和性でIgG4に結合するため、野生型FcγR表面捕捉細胞株は、Fc/Fc
*、Fc
*/Fc
*、およびFc/Fc IgG4種を識別することができなかった。
【0172】
抗Fc*捕捉および抗Fc検出
逆に、Ab6に由来する抗Fc
*特異的ScFv
*-FcγR表面捕捉系を、二重特異性抗体を産生する細胞を検出および富化する能力に関して試験した。CH3ドメインの内の1つに95R/435R-96F/436F置換を含む(Fc
*と呼ばれる)二重特異性抗体を検出する能力を評価するために、hFcをブロッキング分子として用い、置換されていないCH3を認識するAlexa 488標識Ab2抗Fc抗体を検出分子として用いて、Ab6に由来する抗Fc
*特異的ScFv
*-FcγR表面捕捉細胞株において様々な抗体を発現させた。Ab6に由来する抗Fc
*特異的ScFv
*-FcγR表面捕捉細胞株は、Fc特異的Ab2を検出分子として用いて、Fc
*/Fc
*単特異性抗体またはFc/Fc単特異性抗体より優先して二重特異性抗体(Fc/Fc
*)を検出および識別することができた(表4)。FcγR表面捕捉細胞株は、Fc/Fc
*、Fc
*/Fc
*、およびFc/Fc IgG4種を識別することができなかった。
【0173】
(表4)二重特異性抗体の検出−平均蛍光強度(MFI)
1細胞表面捕捉タンパク質
2検出分子
【0174】
実施例19:Fc/Fc
*二重特異性抗体の富化
(Ab2由来)ScFv-FcγR CSCP/(Ab6)抗Fc
*DM系および(Ab6由来)ScFv
*-FcγR CSCP/(Ab2)抗Fc DM系が二重特異性抗体を選別および富化する能力を評価するために、hFcをブロッキング分子として用い、FITC標識抗Fc
*(Ab6)抗体を検出分子として用いて、Fc/Fc
* IgG4モノクローナル抗体(IgG4-mAb-2)および抗Fc ScFv-FcγR融合タンパク質を同時発現する細胞株を、連続的な蛍光活性化細胞選別およびFc/Fc
*種の産生を富化するためにプールした。5番目および6番目の系列のプールに由来するFc/Fc
*を生じる細胞を、合計抗体力価ならびに各抗体形態、すなわちFc/Fc
*、Fc/Fc、およびFc
*/Fc
*の力価について解析した。これらの細胞は、置換されていないCH3ドメイン(「Fc」、すなわち、IMGT位置95番にヒスチジンを含みIMGT位置96番にチロシンを含む)をコードする重鎖と、置換されたCH3ドメイン(「Fc
*」、すなわち、IMGT位置95番にアルギニンを含みIMGT位置96番にフェニルアラニンを含む)をコードする重鎖の両方をコードするため、純粋に数学的なパネットのスクエア解析によると、細胞は理論上、25%のFc/Fc、50%のFc/Fc
*、および25%のFc
*/Fc
*を産生すると予想される。しかしながら、生物学的には、産生される抗体の(富化前の)ほとんどはFc/Fcであると予想され得る。
【0175】
表5に示されるように、選択し、プールし、二重特異性抗体産生を富化させた細胞は、49%ものFc/Fc
*種を産生し、Fc/Fc
*二重特異性抗体の力価は少なくとも約3.2g/Lであった。
【0176】
(表5)Fc/Fc
*二重特異性抗体IgG4-mAb-2の富化
【0177】
前述の本発明は、例示および例としていくらか詳しく説明してきたが、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正を本発明の教示に加え得ることは、当業者には容易に明らかになると考えられる。