特許第6856597号(P6856597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856597
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスシステム
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20210329BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   H02G3/16
   B60R16/02 620S
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-185121(P2018-185121)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-58096(P2020-58096A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直之
(72)【発明者】
【氏名】篠ヶ谷 翔也
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−007712(JP,U)
【文献】 特開2009−193839(JP,A)
【文献】 特開2001−186631(JP,A)
【文献】 特開平01−212641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準系回路線によって構成される標準系サブハーネスと、選択回路線によって構成されるオプション系サブハーネスとを有するワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスに選択的に追加される仕様を実現するための回路線の一部を構成する回路網を有する接続ユニットと、
を備え、
前記ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスの幹線に前記標準系サブハーネス及び前記オプション系サブハーネスが一体に束ねられ、
前記接続ユニットは、前記オプション系サブハーネスのうち前記ワイヤハーネスの幹線から分岐した部分である分岐した前記オプション系サブハーネスの前記選択回路線が、前記回路網に接続される、
ことを特徴とするワイヤハーネスシステム。
【請求項2】
前記ワイヤハーネスは、車両のボディ上に配置され、
前記接続ユニットは、前記ワイヤハーネスの幹線の上側に積層される、
ことを特徴とする請求項1記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項3】
前記接続ユニットは、筐体をさらに有し、
前記筐体は、前記回路網を内部に収容し、且つ、前記ワイヤハーネスの幹線に積層されたときの該幹線に対向する前記筐体の一面は、前記幹線を避けて前記ボディに支持される
ことを特徴とする請求項2記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスは、前記ワイヤハーネスの幹線から分岐した前記オプション系サブハーネスの先端部にハーネス側コネクタが設けられ、
前記接続ユニットは、前記回路網にユニット側コネクタが設けられ、前記筐体の側面に形成された嵌合孔を挿通されて前記ハーネス側コネクタと前記ユニット側コネクタが嵌合する、
ことを特徴とする請求項3記載のワイヤハーネスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の回路線によってそれぞれ構成される複数のサブハーネスを有するワイヤハーネスを含むワイヤハーネスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスシステムでは、例えば系統ごとにそれぞれ用意される複数のサブハーネスを束ねた集合体として構成されるのが一般的である。束ねられるサブハーネスは、そのワイヤハーネスの要求仕様に応じて種々に用意される。
【0003】
具体的には、車両の車種、そのグレード、さらに車両の顧客(運転者)の要望に応じて選択されるオプション装備(音響システム、パワーウィンドウシステムなど)などに対応して、車両に搭載される電装品が多種多様である。そのため、その多種多様な電装品に接続される電源線、アース線、信号線及び通信線を構成する回路線などが様々に異なる。このような回路線の異なりに対応するように、エンジンやモータなどの駆動系システム単位でその駆動系システムをそれぞれ稼働させるために、標準的に搭載される回路線(標準系回路線)をまとめたものが標準系サブハーネスとして設けられる。さらに、選択的に搭載されるオプション装備などをそれぞれ稼働させるために、選択的に追加搭載される回路線(選択回路線)をまとめたものがオプション系サブハーネスとして設けられる。
【0004】
そして近年、自動運転技術や外部環境検知技術などの車両への情報技術(IT:Information Technology)の活用が急速に進展しており、このIT化に伴って標準系回路線及び選択回路線の両方が増加傾向にある。すなわち、ワイヤハーネスを車両に搭載する際、事前に用意しなければならないサブハーネスの品種(種類)が非常に増加している。
【0005】
そこで、このようなサブハーネスの品種の増大を抑制しようとするものとして、複数のサブハーネスをそれぞれ回路基板に接続し、回路基板上の回路パターンを通じて各サブハーネスの回路線を互いに接続することによって、回路基板と複数のサブハーネスとでワイヤハーネスシステムを構築するものが知られる(例えば、特許文献1参照)。このワイヤハーネスシステムでは、標準系サブハーネス及びオプション系サブハーネスの両方に対して分岐などの回路を回路基板内に設けることが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−230873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、上記特許文献1のワイヤハーネスシステムでは、回路基板を用いることで標準系サブハーネス及びオプション系サブハーネスの両方に分岐を設ける必要がなくなる。そのため、サブハーネスの形状が分岐のない簡素なものとなり、システム全体の標準化が可能となる。
【0008】
ところで、車両の顧客ごとの趣味嗜好が非常に細かくなり、より一層多種多様になってきている。所定の車両の車種やグレードによって選択的に追加される選択回路線の増加が顕著な場合もある。そのため、選択回路線によって構成されるオプション系サブハーネスだけでも標準化してその品種を少なくしたいとの要望も今後想定される。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、選択回路線によって構成されるオプション系サブハーネスに関し事前に用意しなければならない品種を少なくすると共に、ワイヤハーネスの組付けを簡素にして作業効率を向上させることができるワイヤハーネスシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)標準系回路線によって構成される標準系サブハーネスと、選択回路線によって構成されるオプション系サブハーネスとを有するワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスに選択的に追加される仕様を実現するための回路線の一部を構成する回路網を有する接続ユニットと、
を備え、
前記ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスの幹線に前記標準系サブハーネス及び前記オプション系サブハーネスが一体に束ねられ、
前記接続ユニットは、前記オプション系サブハーネスのうち前記ワイヤハーネスの幹線から分岐した部分である分岐した前記オプション系サブハーネスの前記選択回路線が、前記回路網に接続される、
ことを特徴とするワイヤハーネスシステム。
(2)前記ワイヤハーネスは、車両のボディ上に配置され、
前記接続ユニットは、前記ワイヤハーネスの幹線の上側に積層される、
ことを特徴とする(1)記載のワイヤハーネスシステム。
(3)前記接続ユニットは、筐体をさらに有し、
前記筐体は、前記回路網を内部に収容し、且つ、前記ワイヤハーネスの幹線に積層され
たときの該幹線に対向する前記筐体の一面は、前記幹線を避けて前記ボディに支持される
ことを特徴とする(2)記載のワイヤハーネスシステム。
(4)前記ワイヤハーネスは、前記ワイヤハーネスの幹線から分岐した前記オプション系サブハーネスの先端部にハーネス側コネクタが設けられ、
前記接続ユニットは、前記回路網にユニット側コネクタが設けられ、前記筐体の側面に形成された嵌合孔を挿通されて前記ハーネス側コネクタと前記ユニット側コネクタが嵌合する、
ことを特徴とする(3)記載のワイヤハーネスシステム。
【0011】
上記(1)のワイヤハーネスシステムの構成によれば、選択回路線同士の接続の有無、これら選択回路線の分岐などの接続の切り替えを接続ユニットの回路網の変更によって容易に実現することができる。これにより、オプション系サブハーネスにおいて種々の選択回路線の接続状態が必要になった場合でもオプション系サブハーネスの構成を簡素にして標準化することができる。従って、オプション系サブハーネスに関し事前に用意しなければならない品種を少なくすると共に、ワイヤハーネスの組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
【0012】
上記(2)のワイヤハーネスシステムの構成によれば、接続ユニットはワイヤハーネスの近傍に配置されることになるため、オプション系サブハーネスの長さを短くする共に、接続ユニットを限られた車両空間内にコンパクトに設置することができる。
【0013】
上記(3)のワイヤハーネスシステムの構成によれば、接続ユニットの筐体の内部で回路網を保護して収納する共に、接続ユニットを車両のボディに対し安定的に設置することができる。
【0014】
上記(4)のワイヤハーネスシステムの構成によれば、オプション系サブハーネスの先端に設けられたハーネス側コネクタ、及び接続ユニットの嵌合孔に挿通したユニット側コネクタが着脱自在に嵌合するため、オプション系サブハーネスの選択回路線を回路網に容易に接続させることができ、ワイヤハーネスの組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のワイヤハーネスシステムによれば、接続ユニットは、ワイヤハーネスに選択的に追加される仕様を実現するための回路線の一部を構成する回路網を有し、ワイヤハーネスの幹線から分岐したオプション系サブハーネスの選択回路線が接続ユニットの回路網に接続される。このため、選択回路線同士の接続の有無、これら回路線の分岐などの接続の切り替えを接続ユニットの回路網の変更によって容易に実現することができる。これにより、オプション系サブハーネスにおいて種々の選択回路線の接続状態が必要になった場合でもオプション系サブハーネスの構成を簡素化して標準化することができる。従って、オプション系サブハーネスに関し事前に用意しなければならない品種を少なくすると共に、ワイヤハーネスの組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る第1実施形態のワイヤハーネスシステムを説明する斜視図である。
図2図2は、図1に示す接続ユニットを天地逆転にした状態を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示す接続ユニットを幹線に積層して設置した状態を示す斜視図である。
図4図4は、本発明に係る第2実施形態のワイヤハーネスシステムを説明する斜視図である。
図5図5は、図4に示す接続ユニットを天地逆転にした状態を示す斜視図である。
図6図6は、図4に示す接続ユニットを幹線に積層して設置した状態を示す斜視図である。
図7図7は、本発明に係る第3実施形態のワイヤハーネスシステムを説明する斜視図である。
図8図8は、図7に示す接続ユニットを天地逆転にした状態を示す斜視図である。
図9図9は、図7に示すオプション系サブハーネスの先端に設けられるハーネス側コネクタを説明する斜視図である。
図10図10は、図7に示す接続ユニットを幹線に積層して設置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のワイヤハーネスシステムに関する具体的な複数の実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1図3を参照して、本発明に係る第1実施形態のワイヤハーネスシステム1について説明する。図1は、本実施形態のワイヤハーネスシステム1を説明する斜視図である。図2は、図1に示す接続ユニット30を天地逆転にした状態を示す斜視図である。図3は、図1に示す接続ユニット30を幹線11,12に積層して設置した状態を示す斜視図である。
【0020】
<ワイヤハーネスシステムの全体構成>
まず、本実施形態のワイヤハーネスシステム1の全体構成について説明する。
【0021】
図1及び図3に示すように、本実施形態のワイヤハーネスシステム1は、自動車などの車両に搭載されるものである。ワイヤハーネスシステム1は、第1及び第2幹線11,12として車両ボディ(ボディ)B上に配置されるワイヤハーネス10と、ワイヤハーネス10の第1及び第2幹線11,12の上側に積層して配置される接続ユニット30とを含んで構成される。また、車両ボディB上にはスタッドボルトSが立設されており、このスタッドボルトSが車両の電気的な接地として機能する。
【0022】
ワイヤハーネス10の第1幹線11は、車両ボディB上で車両前後方向に延びて配索される。ワイヤハーネス10の第2幹線12は、第1幹線11に対し略直角に交差して車両左右(幅)方向に延びて配索される。すなわち、本実施形態のワイヤハーネス10は、全体的に略クロス状に配索されており、第1及び第2幹線11,12が交差する交差部13を有する。ワイヤハーネス10の交差部13では、第1及び第2幹線11,12が後述するその回路線21,23単位で編組され嵩張らないように設けられる。また、ワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部はテープTで巻回され被覆される。
なお、ワイヤハーネス10の交差部13を基準にして、第1幹線11において車両前側に位置する部分をワイヤハーネス10の前側部10Aともいう。同様に、車両後側に位置する部分をワイヤハーネス10の後側部10B、そして第2幹線12において車両左側に位置する部分をワイヤハーネス10の左側部10C、車両右側に位置する部分をワイヤハーネス10の右側部10Dともいう。
【0023】
また、ワイヤハーネス10は、複数の標準系回路線21によって構成される標準系サブハーネス20と、複数の選択回路線23によって構成されるオプション系サブハーネス22とを有する。ワイヤハーネス10の第1及び第2幹線11,12それぞれに標準系サブハーネス20及びオプション系サブハーネス22が一体に束ねられており、第1及び第2幹線11,12はこれらサブハーネス20,22を含む集合体として構成される。
【0024】
ワイヤハーネス10の後側部10Bにおいて、2本のオプション系サブハーネス22が第2幹線12から分岐する。このオプション系サブハーネス22の先端部には、後述する接続ユニット30のユニット側コネクタ39に嵌合するハーネス側コネクタ24が設けられる。ハーネス側コネクタ24は、雄型コネクタであり、電気絶縁性の合成樹脂などによって扁平な箱状に形成される。ハーネス側コネクタ24の一端の側面にはオプション系サブハーネス22の選択回路線23が接続される。また、接続ユニット30のユニット側コネクタ39と嵌合する他端の側面には導電性の複数の被接続部(不図示)が設けられ、各被接続部はオプション系サブハーネス22の選択回路線23それぞれに電気的に接続される。また、ワイヤハーネス10の後側部10Bにおいてワイヤハーネス10のアース線14も同様に分岐しており、アース線14の先端には接地端子15が設けられる。アース線14の接地端子15は丸形端子であり、その内径でスタッドボルトSに嵌通され電気的に接地される。
【0025】
接続ユニット30は、略箱形状の筐体31と、この筐体31の内部に収容される回路網38とを含んで構成される。筐体31は電気絶縁性の合成樹脂などからなり、またその表面には蓋体32が着脱自在に設けられる。蓋体32を外すことで筐体31の内部の回路網38に対し保守又は取替などを適宜行うことが可能である。また、接続ユニット30の車両後側の側面には、2つの嵌合孔33が車両左右方向に並んで形成され、この各嵌合孔33にはユニット側コネクタ39が外部に露出しないようにそれぞれ内嵌される。ユニット側コネクタ39は電気絶縁性の合成樹脂などによって略箱形状に形成され、ユニット側コネクタ39の一端の側面は車両後方に開放して形成されており、導電性の複数の接続部40が露出して設けられる。接続ユニット30のユニット側コネクタ39にオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ24が嵌合することで、ユニット側コネクタ39の接続部40とハーネス側コネクタ24の被接続部とが電気的に接続する。
次に、各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
<標準系サブハーネス及びオプション系サブハーネス>
次に、標準系サブハーネス及びオプション系サブハーネスについてさらに説明する。
【0027】
図1図3に示すように、標準系サブハーネス20は、複数の標準系回路線21を有して構成される。また、オプション系サブハーネス22は、複数の選択回路線23を有して構成される。複数の標準系回路線21又は選択回路線23それぞれにおいて少なくとも1つは電源電力を供給するための回路線であり、また少なくも他の1つは接地を取るためのアース線であり、また少なくともさらに他の1つは信号を伝送するための信号線又は通信線である。
【0028】
これら標準系回路線21又は選択回路線23それぞれは、撚り線などの導体の周囲を電気絶縁性の合成樹脂などで被覆される。標準系回路線21において、その導体の太さや被覆の厚さ、さらにはその材料は車両の車種やグレードなどの仕様によって変化する電流値や電圧値に応じて決定される。また、選択回路線23において、その長さなどはオプション系サブハーネス22の仕様に応じて決定される。
【0029】
また、標準系回路線21の多くは車両の基本機能、例えばエンジンやモータなどの駆動系システムに関するものであり、全ての車両に標準的に搭載される回路線である。その一方、選択回路線23の多くは車両の追加的(オプション的)機能、例えば音響システムやパワーウィンドウシステムに関するものであり、車両の顧客(運転者)の要望に応じて選択的に追加搭載される回路線である。
【0030】
<接続ユニット>
次に、接続ユニットについてさらに説明する。
【0031】
図1図3に示すように、接続ユニット30は、前述したように略箱形状の筐体31と、この筐体31の内部に収容される回路網38とを含んで構成され、ワイヤハーネス10の幹線11,12の交差部13に積層して配置される。
【0032】
回路網38は、ワイヤハーネス10に選択的に追加仕様を実現するための回路線の一部を構成し、薄板状の回路基板36上に設けられる。具体的には、回路基板36は電気絶縁性の基板本体37を有し、回路網38はこの基板本体37上にプリント基板として形成される。比較的複雑な回路網38を形成する場合、回路網38は多層のプリント基板を用いて回路基板36の基板本体37上に形成される。また、回路基板36上には前述の2つのユニット側コネクタ39が配置されており、ユニット側コネクタ39は筐体31の嵌合孔33を通じて外部に臨む。
【0033】
また、回路網38は、回路基板36の基板本体37の表面、裏面又は厚み方向の層の境界面に貼り付けられる銅箔などの導電性箔状の配線パターンとして形成される。すなわち、回路網38は、その配線パターンで複数の配線を有しており、ユニット側コネクタ39の他端の側面に回路網38の配線を通じて電気的に接続する。2つのユニット側コネクタ39同士もその一部又は全部で回路網38の配線を通じて互いに接続される。また、複数の配線は互いに電気的に分離されるが、その一部の配線は互いに電気的に接続する。複数の配線が平面上で交差する箇所で分離する場合、互いに異なる面又は層に各配線を配置して電気的に分離する。互いに異なる面又は層に配置される配線同士を接続する場合、回路基板36の基板本体37を厚み方向に貫通するスルーホールを用いて電気的に接続する。このように、回路網38を適宜変更することで、オプション系サブハーネス22の選択回路線23同士の接続の有無、これら選択回路線23の分岐などの接続の切り替えを容易に実現することが可能となる。
【0034】
そして、図1図3に示すように、接続ユニット30の筐体31において、第1及び第2幹線11,12に対向する筐体31の一面、すなわち筐体31の裏面には、ワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部をその内部で収納するための収納溝34が略クロス状に形成される。収納溝34の断面は、第1又は第2幹線11,12の断面外形に対し所定の隙間空間を在して円弧状に形成される。また、筐体31の裏面には、スタッドボルトSが挿入するためのボルト挿通孔35が筐体31の高さ方向に沿って形成される。ボルト挿通孔35には回路網38の接地用配線が臨んでおり、スタッドボルトSがボルト挿通孔35に挿入した際、スタッドボルトSの先端はこの接地用配線に接触して電気的に接続する。
なお、筐体31の収納溝34の断面を、収納溝34の開口部の幅が円弧の直径よりも小さくなるように略C字状に形成してもよい。この場合、第1及び第2幹線11,12を安定的に収納溝34の内部に保持することが可能となる。
【0035】
<ワイヤハーネスシステムの設置>
次に、ワイヤハーネスシステムの設置について説明する。
【0036】
図3に示すように、このように構成されたワイヤハーネスシステム1において、ワイヤハーネス10の第2幹線12から分岐したオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ24が接続ユニット30のユニット側コネクタ39にそれぞれ嵌合する。これにより、オプション系サブハーネス22の選択回路線23が回路網38に接続される。また、接続ユニット30の筐体31がワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺を覆うように積層して設置される際、第1及び第2幹線11,12の一部が筐体31の収納溝34の内部に収納される。その結果、接続ユニット30の筐体31は、その裏面において第1及び第2幹線11,12を避けて収納溝34以外の部分で車両ボディBに面接触して安定的に支持される。さらに、接続ユニット30の設置の際、車両ボディBのスタッドボルトSが筐体31のボルト挿通孔35に挿通して、接続ユニット30の回路網38はそのまま接地される。
【0037】
<第1実施形態のワイヤハーネスシステムの利点について>
以上説明したように本実施形態のワイヤハーネスシステム1によれば、接続ユニット30は、ワイヤハーネス10に選択的に追加される仕様を実現するための回路線の一部を構成する回路網38を有する。そして、ワイヤハーネス10の第2幹線(幹線)12から分岐したオプション系サブハーネス22の選択回路線23が接続ユニット30の回路網38に接続される。このため、選択回路線23同士の接続の有無、これら選択回路線23の分岐などの接続の切り替えを接続ユニット30の回路網38の変更によって容易に実現することができる。これにより、オプション系サブハーネス22において種々の選択回路線23の接続状態が必要になった場合でもオプション系サブハーネス22の構成を簡素にして標準化することができる。従って、オプション系サブハーネス22に関し事前に用意しなければならない品種を少なくすると共に、ワイヤハーネス10の組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態のワイヤハーネスシステム1によれば、ワイヤハーネス10は車両ボディ(ボディ)B上に配置され、接続ユニット30はワイヤハーネス10の幹線11,12の上側に積層されるため、接続ユニット30はワイヤハーネス10の近傍に配置されることになる。このため、オプション系サブハーネス22の長さを短くすると共に、接続ユニット30を限られた車両空間内にコンパクトに設置することができる。
【0039】
また、本実施形態のワイヤハーネスシステム1によれば、接続ユニット30は筐体31をさらに有する。そして、筐体31は回路網38を内部に収容し、且つ、筐体31の裏面(ワイヤハーネス10の幹線11,12に積層されたときの該幹線に対向する筐体31の一面)は幹線11,12を避けて車両ボディ(ボディ)Bに支持される。このため、接続ユニット30の筐体31の内部で回路網38を保護して収納すると共に、接続ユニット30を車両ボディBに対し安定的に設置することができる。
【0040】
また、本実施形態のワイヤハーネスシステム1によれば、オプション系サブハーネス22の先端に設けられたハーネス側コネクタ24、及び接続ユニット30の嵌合孔33に挿通したユニット側コネクタ39が着脱自在に嵌合する。このため、オプション系サブハーネス22の選択回路線23を回路網38に容易に接続させることができ、ワイヤハーネス10の組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、図4図6を参照して、本発明に係る第2実施形態のワイヤハーネスシステム2について説明する。図4は、本実施形態のワイヤハーネスシステム2を説明する斜視図である。図5は、図4に示す接続ユニット30を天地逆転にした状態を示す斜視図である。図6は、図4に示す接続ユニット30を幹線11,12に積層して設置した状態を示す斜視図である。
なお、上記第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一或いは同等符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0042】
<各構成要素の説明>
図4及び図5に示すように、本実施形態では、接続ユニット30の筐体31の裏面に2つの嵌合孔43が形成される。嵌合孔43は筐体31の車両後側の側面に近接して配置されており、選択回路線23が通過可能なように車両後方に向けても開口して形成される。また、2つの嵌合孔43は車両左右方向で収納溝34を挟んで配置される。ユニット側コネクタ49は、これら嵌合孔43に挿入可能とするため回路基板36の裏面側に配置される。ユニット側コネクタ49は車両下方に開放して設けられており、その複数の接続部50も同様に車両下方に向かって露出する。また、車両ボディBには、車両左右方向に亘ってボディ溝Dが形成されており、このボディ溝Dにハーネス側コネクタ24が互いに対向する側面でそれぞれ嵌合され挟持される。
なお、本実施形態は、アース線14は、オプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ24の一方から引き出されて設けられる。
【0043】
図6に示すように、このように構成されたワイヤハーネスシステム2において、接続ユニット30の筐体31をワイヤハーネス10の幹線11,12に積層して設置する際、その設置と同時にオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ24が接続ユニット30のユニット側コネクタ49にそれぞれそのまま接続する。
その他の構成については上記第1実施形態と同様である。
【0044】
<第2実施形態のワイヤハーネスシステムの利点について>
以上説明したように本実施形態のワイヤハーネスシステム2によれば、接続ユニット30の筐体31の裏面に2つの嵌合孔43が形成され、車両ボディBのボディ溝Dに2つのハーネス側コネクタ24がそれぞれ嵌合され挟持される。そして、接続ユニット30の設置と同時にオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ24が接続ユニット30のユニット側コネクタ49にそれぞれそのまま接続する。これにより、ワイヤハーネス10の組付けを簡素にして作業効率を向上させることができる。
その他の作用効果については上記第1実施形態と同様である。
【0045】
(第3実施形態)
次に、図7図10を参照して、本発明に係る第3実施形態のワイヤハーネスシステム3について説明する。図7は、本実施形態のワイヤハーネスシステム3を説明する斜視図である。図8は、図7に示す接続ユニット30を天地逆転にした状態を示す斜視図である。図9は、図7に示すオプション系サブハーネス22の先端に設けられるハーネス側コネクタ54を説明する斜視図である。図10は、図7に示す接続ユニット30を幹線11,12に積層して設置した状態を示す斜視図である。
なお、上記第1及び第2実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一或いは同等符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0046】
<各構成要素の説明>
図7及び図8に示すように、本実施形態では、接続ユニット30の筐体31の車両後側及び車両左側の側面に嵌合孔53Aがそれぞれ1つずつ形成される。さらに筐体31の裏面には、4つの嵌合孔53Bが形成される。筐体31の裏面の4つの嵌合孔53Bは、収納溝34を車両前後方向及び車両左右方向でそれぞれ挟んで配置される。すなわち、筐体31の裏面において、四隅に対応してそれぞれ嵌合孔53Bが形成される。ユニット側コネクタ59A,59Bは、これら側面及び裏面の嵌合孔53A,53Bに挿入可能とするため回路基板36の表裏両面に配置される。回路基板36上のユニット側コネクタ59Aは車両側方に開放してそれぞれ配置されており、その複数の接続部60Aが車両側方に向かってそれぞれ露出する。回路基板36の裏面のユニット側コネクタ59Aは車両下方に開放してそれぞれ配置されており、その複数の接続部60Bが車両下方に向かってそれぞれ露出する。
【0047】
そして、接続ユニット30の、筐体31の裏面のユニット側コネクタ59Bに対応するように、4つのハーネス側コネクタ54はワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部を車両前後方向及び車両左右方向でそれぞれ挟んで配置される。この4つのハーネス側コネクタ54がそれぞれ設けられるオプション系サブハーネス22は、ワイヤハーネス10の前側部10A、後側部10B、左側部10C及び右側部10Dそれぞれから分岐して車両ボディB上で配索される。
【0048】
また、図9に示すように、ワイヤハーネス10の後側部10B及び左側部10Cで囲われるハーネス側コネクタ54には、薄板状の接地端子55が一体に設けられる。接地端子55は、その一端部でこのハーネス側コネクタ54の接地用被接続部(不図示)に接続される。また、接地端子55の他端部にはボルト挿通孔56が形成されており、このボルト挿通孔56にスタッドボルトSが挿通して接地端子55が接地される。
【0049】
図9に示すように、このように構成されたワイヤハーネスシステム3において、接続ユニット30の筐体31がワイヤハーネス10の幹線11,12に積層して設置される。この際、その設置と同時に、ワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部に隣接して配置されるオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ54が、筐体31の裏面に設けられる接続ユニット30のユニット側コネクタ59Bにそれぞれそのまま接続する。
その他の構成については上記第1及び第2実施形態と同様である。
【0050】
<本実施形態の車両用電源供給システムの利点について>
以上説明したように本実施形態のワイヤハーネスシステム3によれば、接続ユニット30の筐体31の裏面に4つの嵌合孔53Bが形成され、この4つの嵌合孔53Bに対応してユニット側コネクタ59B及びハーネス側コネクタ54が配置される。そして、ハーネス側コネクタ54はワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部を車両前後方向及び車両左右方向でそれぞれ挟んで配置される。これにより、ワイヤハーネス10の交差部13及びその周辺部に隣接して配置されるオプション系サブハーネス22のハーネス側コネクタ54が筐体31の裏面に設けられる接続ユニット30のユニット側コネクタ59Bに接続した場合、接続ユニット30を車両ボディB上により安定的に設置し、且つワイヤハーネス10の移動(ずれ)をより強固に規制することができる。
その他の作用効果については上記第1及び第2実施形態と同様である。
【0051】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【0052】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスシステム1,2,3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]標準系回路線(21)によって構成される標準系サブハーネス(20)と、選択回路線(23)によって構成されるオプション系サブハーネス(22)とを有するワイヤハーネス(10)と、
前記ワイヤハーネス(10)に選択的に追加される仕様を実現するための回路線の一部を構成する回路網(38)を有する接続ユニット(30)と、
を備え、
前記ワイヤハーネス(10)は、前記オプション系サブハーネス(22)が当該ワイヤハーネス(10)の幹線(11,12)から分岐し、
前記接続ユニット(30)は、前記ワイヤハーネス(10)の幹線(11,12)から分岐した前記オプション系サブハーネス(22)の前記選択回路線(23)が、前記回路網(38)に接続される、
ことを特徴とするワイヤハーネスシステム(1,2,3)。
[2]前記ワイヤハーネス(10)は、車両のボディ(車両ボディ、B)上に配置され、
前記接続ユニット(30)は、前記ワイヤハーネス(10)の幹線(11,12)の上側に積層される、
ことを特徴とする[1]記載のワイヤハーネスシステム(1,2,3)。
[3]前記接続ユニット(30)は、筐体(31)をさらに有し、
前記筐体(31)は、前記回路網(38)を内部に収容し、且つ、前記ワイヤハーネス(10)の幹線(11,12)に積層されたときの該幹線(11,12)に対向する前記筐体(31)の一面は、前記幹線(11,12)を避けて前記ボディ(車両ボディ、B)に支持される
ことを特徴とする[2]記載のワイヤハーネスシステム(1,2,3)。
[4]前記ワイヤハーネス(10)は、前記ワイヤハーネス(10)の幹線(11,12)から分岐した前記オプション系サブハーネス(22)の先端部にハーネス側コネクタ(24,54)が設けられ、
前記接続ユニット(30)は、前記回路網(38)にユニット側コネクタ(39,49,59A,59B)が設けられ、前記筐体(31)の側面に形成された嵌合孔(33,43,53A,53B)を挿通されて前記ハーネス側コネクタ(24,54)と前記ユニット側コネクタ(39,49,59A,59B)が嵌合する、
ことを特徴とする[3]記載のワイヤハーネスシステム(1,2,3)。
【符号の説明】
【0053】
1,2,3 ワイヤハーネスシステム
10 ワイヤハーネス
10A ワイヤハーネスの前側部
10B ワイヤハーネスの後側部
10C ワイヤハーネスの左側部
10D ワイヤハーネスの右側部
11 第1幹線
12 第2幹線
13 交差部
14 アース線
15 接地端子
20 標準系サブハーネス
21 標準系回路線
22 オプション系サブハーネス
23 選択回路線
24 ハーネス側コネクタ
30 接続ユニット
31 筐体
32 蓋体
33 嵌合孔
34 収納溝
35 ボルト挿通孔
36 回路基板
37 基板本体
38 回路網
39 ユニット側コネクタ
40 接続部
43 嵌合孔
49 ユニット側コネクタ
50 接続部
53A 嵌合孔
53B 嵌合孔
54 ハーネス側コネクタ
55 接地端子
56 ボルト挿通孔
59A ユニット側コネクタ
60A 接続部
59B ユニット側コネクタ
60B 接続部
T テープ
B 車両ボディ(ボディ)
S スタッドボルト
D ボディ溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10