(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856601
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】硬カプセル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20210329BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20210329BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210329BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20210329BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20210329BHJP
A61K 38/43 20060101ALN20210329BHJP
A61K 38/00 20060101ALN20210329BHJP
A61K 35/74 20150101ALN20210329BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/44
A61K47/36
!A61K38/43
!A61K38/00
!A61K35/74 A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-191350(P2018-191350)
(22)【出願日】2018年10月10日
(62)【分割の表示】特願2015-560825(P2015-560825)の分割
【原出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2019-23216(P2019-23216A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年11月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-45989(P2013-45989)
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512054458
【氏名又は名称】キャプシュゲル・ベルジウム・エヌ・ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】田久保 貴久
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/025609(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/082824(WO,A1)
【文献】
特開2007−302570(JP,A)
【文献】
特表2013−505928(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/098612(WO,A1)
【文献】
特許第6420261(JP,B2)
【文献】
特開2010−168309(JP,A)
【文献】
特開2010−083900(JP,A)
【文献】
特開2007−211006(JP,A)
【文献】
特表2006−524684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸性を有し、腸溶コーティングで処理されていない硬カプセル;ならびに
前記硬カプセル中に充填される組成物であって、当該充填される組成物は、当該組成物中に胃液の侵入を阻止する作用物質および医薬品の混合物を含み、
ここで、前記医薬品はその成分が酸と接触したときに劣化するものであり、
胃液の侵入を阻止する前記作用物質が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナウバロウからなる群から選択される撥水剤を含む、
前記硬カプセル製剤。
【請求項2】
撥水剤を含む、胃液の侵入を阻止する前記作用物質が、さらにゲル化剤を含む、請求項1に記載の硬カプセル製剤。
【請求項3】
前記ゲル化剤は、グアーガム、ペクチン、ι(イオタ)型カラギーナン、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、アルギン酸、タマリンドガム、グルコマンナン、寒天、カードラン、ジェランガム、およびコラーゲンからなる群から選択される、請求項2に記載の硬カプセル製剤。
【請求項4】
前記ゲル化剤は、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、および ローカストビーンガムからなる群から選択される、請求項2に記載の硬カプセル製剤。
【請求項5】
前記医薬品は、タンパク質、酵素、または生菌である、請求項1に記載の硬カプセル製剤。
【請求項6】
硬カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロースから成形される請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬カプセル製剤。
【請求項7】
耐酸性硬カプセル中での医薬品の酸分解を阻止する方法であって、
該硬カプセルは腸溶コーティングで処理されていないものであり、
医薬品と、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナウバロ
ウからなる群から選択される撥水剤とを混合すること、並びに
硬カプセルに医薬品と撥水剤の上記の混合物を充填すること、
を含む、前記方法。
【請求項8】
グアーガム、ペクチン、ι(イオタ)型カラギーナン、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、アルギン酸、タマリンドガム、グルコマンナン、寒天、カードラン、ジェランガム、およびコラーゲンからなる群から選択されるゲル化剤を添加することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医薬品は、タンパク質、酵素、または生菌である、請求項7または8に記載の方法 。
【請求項10】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースから硬カプセルを成形する工程であって、該硬カプセルは耐酸性を有し、腸溶コーティングで処理されていないものである前記工程;
医薬品と、ゲル化剤または撥水剤とを混合する工程、並びに
硬カプセルに医薬品と、ゲル化剤または撥水剤との混合物を充填する工程、
を含む、硬カプセル製剤の製造方法。
【請求項11】
ゲル化剤は、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガムおよびローカストビーンガムからなる群から選択される、請求項10に記載の硬カプセル製剤の製造方法。
【請求項12】
撥水剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナウバロウからなる群から選択される、請求項10に記載の硬カプセル製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は硬カプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を胃において崩壊することなしに、腸に送達するための手段として、硬カプセルの皮膜上に(即ち、殻上に)腸溶コーティングを適用する方法が知られている。
【0003】
近年、硬カプセルの膜(外殻膜)それ自体が、耐酸性である硬カプセルが開発され、販売されている(例えば、Capsugel製「DRCAPS(商標)」)。このような硬カプセルは、カプセルの皮膜(外殻)上にさらに腸溶コーティングを必ずしも適用する必要がないという点で優れている。
【0004】
耐酸性を有するこうした種類の硬カプセルは、通常、殻がたとえpH1.2を有する酸性溶液中でも溶解しないので(換言すると、硬カプセルは、生体の胃中で崩壊しないので)有用である。特に、硬カプセルが胃中で崩壊しない限り問題が生じない医薬品等のような物質(例えば、戻り臭の原因になり得るニンニク等)で硬カプセルを充填する場合、目立った問題なしに、予期する効果を達成することができる。
【0005】
しかし、十分な効果が得られない、耐酸性を有する硬カプセルを含めて、硬カプセル製剤を慎重に試験した結果、本発明者らは、硬カプセルが胃中で崩壊しないにもかかわらず、硬カプセルの殻自体が防水性ではないので、胃酸が、経時的に硬カプセル外殻を通して徐々に浸透し得るという驚くべき発見をした。その結果、本発明者らは、硬カプセル内に充填された薬品等のような物質が、酸(胃酸)と接触されるため、硬カプセルを医薬品等のような物質等(例えば、酸と接触する時、その成分が劣化する(変化する、分解する、または機能しなくなる)、タンパク質(ローヤルゼリー、乳タンパク質等)、酵素(ナットウキナーゼ(供給源、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto))、補酵素等)、および生菌(乳酸菌、ビフィズス菌等))で充填した場合、予期する効果が得られないことを見出した。
【0006】
特許文献1は、官能化ゼラチンを形成する、共有結合を有するゼラチン組成物に関する。
【0007】
特許文献2は、ポリマービーズおよび多糖類を有する医薬組成物であって、剤形が腸溶コーティングを有する前記組成物に関する。
【0008】
Capsugel Belgium NVに譲渡された(assigned to)特許文献3は、酸耐性カプセルに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2007/098612 A1
【特許文献2】米国特許第5,849,327号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0288562 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題に鑑み、本開示の目的は、一実施形態において、酸と接触した時その成分が
劣化する医薬品等を含む硬カプセル製剤であって、医薬品等が、硬カプセルの外殻中に浸透する胃酸によって劣化しない前記硬カプセル製剤を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
長期にわたる鋭意検討の結果、本発明者らは、上記の問題は、下記の特性を有する硬カプセル製剤を開発することによって解決し得ることを見出した。
【0012】
一実施形態において、本開示の硬カプセル製剤は、耐酸性を有する硬カプセルであって、腸溶コーティングで処理されていない前記硬カプセルを含み、前記硬カプセル製剤が、硬カプセル中に、胃液の侵入を阻止する作用物質および医薬品を含む。
【0013】
胃液の侵入を阻止する作用物質は、酸性溶液(生体における胃液)が、硬カプセルの外殻を通して硬カプセル中に浸入し、硬カプセル内に充填された物質中に浸透することを実質的に(完全に、または部分的に)防止することに寄与する。
【0014】
一実施形態において、胃液の侵入を阻止する作用物質は、ゲル化剤および/または撥水剤である。換言すると、ゲル化剤および撥水剤の両方もまた使用することができる。これらの作用物質は、異なる機序により抑制効果に寄与するものと考えられ、ゲル化剤および撥水剤の両方を用いることは、さらに有用であると思われる。ゲル化剤は、膨潤することによって、酸性溶液(生体における胃液)が硬カプセル内に充填された物質中に浸透するのを防止するのに寄与するものと考えられる。一方、撥水剤は、その撥水作用によって、酸性溶液(生体における胃液)が浸透するのを防止するのに寄与するものと考えられる。
【0015】
硬カプセル製剤の一実施形態において、ゲル化剤を粉末として含めることができる。このようなゲル化剤は、好ましくは、グアーガム、ペクチン、ι(イオタ)型カラギーナン、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、アルギン酸、タマリンドガム、グルコマンナン、寒天、カードラン、ジェランガム、およびコラーゲンからなる群から選択することができる。このようなゲル化剤は、より好ましくはグアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、およびローカストビーンガムからなる群から選択することができる。
【0016】
硬カプセル製剤の一実施形態において、撥水剤を粉末として含めることができる。このような撥水剤は、好ましくはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナウバロウからなる群から選択することができる。
【0017】
一実施形態において、硬カプセル製剤は医薬品を含む。本開示の硬カプセル製剤の技術を最も有効に利用するためには、酸と接触した時、その成分が劣化する(変化する/分解する/または機能しなくなる)医薬品を使用することができる。このような医薬品には、例えば、タンパク質(ローヤルゼリー、乳タンパク質等)、酵素(ナットウキナーゼ(供給源、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto))、補酵素等)、および生菌(乳酸菌、ビフィズス菌等)が含まれる。
【0018】
本開示の硬カプセル製剤において、使用されるゲル化剤および撥水剤の量は、特に制限されない。所与の条件下(医薬品、賦形剤(excipient(s))、硬カプセル、これらの容量等)、ゲル化剤および撥水剤は、その効果が予期されるレベルに発揮される量で含めることができる。例えば、重量ベースで、ゲル化剤および撥水剤の量は、硬カプセル内に充填される物質の総重量の25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下であることができる。
【0019】
本明細書に開示された硬カプセル製剤は、それが適切である限り、任意の目的に使用す
ることができるが、特に医療または健康食品用途のカプセルとして使用することができる。
【0020】
本開示の硬カプセル製剤に使用される硬カプセルは、当業者には知られている方法によって製造することができ、市販されている硬カプセルを使用することもできる。硬カプセルのために任意の材料を使用することができ、このような材料の中でも、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびプルランが好ましい。硬カプセルは、硬カプセルの材料(および所望によりゲル化剤および/またはゲル化助剤)が溶解されている水溶液(ゲル)中に成形ピン(molding pin)を浸漬し、次いで成形ピンを取り出し、次いで硬カプセル材料をゲル化させ、乾燥させる方法により製造することができる。
【0021】
硬カプセルの製造を改良するための、可塑剤、保存剤、分散化剤、および他の賦形剤が知られており、本開示のカプセルにおけるこれらの適切な使用は、当業者から予期することができる修正の範囲内である。
【0022】
一実施形態において、本開示の硬カプセル製剤は、硬カプセル、ならびに硬カプセル中に、胃液の侵入を阻止する作用物質および医薬品を含む。本明細書において、硬カプセルは、硬カプセルの皮膜(即ち、外殻)上に腸溶コーティングを適用されることも可能である。しかし、本開示の硬カプセル製剤の技術を最も有効に利用するために、好ましくは、腸溶コーティングが硬カプセルの外殻上に適用されていない硬カプセルが使用される。さらに、本開示の硬カプセル製剤の技術を最も有効に利用するために、硬カプセルは、好ましくは耐酸性である。本明細書において、耐酸性は、硬カプセルが生体(胃)中で、胃液によって実質的に溶解(崩壊)しないという特性を意味する。硬カプセルは、胃では溶解しないが、腸で溶解することが好ましい。このような耐酸性を有する硬カプセルは、市販されている(例えば、Capsugel製DRCAPS(商標))。一実施形態において、胃液の侵入を阻止する作用物質は、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナウバロウからなる群から選択することができる。
【0023】
本開示の範囲には、上記の1つまたは複数の特性の任意の組合せも含まれる。
【0024】
一実施形態において、硬カプセル製剤は、硬カプセル中で酸と接触した時その成分が劣化する医薬品等であって、硬カプセル殻の中に浸透する胃液によって劣化することを阻止することができる前記医薬品等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ラクトースのみを充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2A】ペクチン(三晶株式会社製「GENU Pectin DD slow set−J」)がラクトースに対して10重量%になるように、ペクチンがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2B】ペクチン(三晶株式会社製「GENU Pectin DD slow set−J」)がラクトースに対して25重量%になるように、ペクチンがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2C】グアーガムがラクトースに対して10重量%になるように、グアーガムがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2D】グアーガムがラクトースに対して25重量%になるように、グアーガムがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2E】λ(ラムダ)型カラギーナンがラクトースに対して10重量%になるように、λ(ラムダ)型カラギーナンがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図2F】λ(ラムダ)型カラギーナンがラクトースに対して25重量%になるように、λ(ラムダ)型カラギーナンがラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【
図3】アルギン酸がラクトースに対して10重量%になるように、アルギン酸がラクトースと混合された混合粉末を充填した硬カプセルの断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用される用語は、本明細書に記載の特定の実施形態を説明するために使用されており、本開示を限定するものではない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、その別の理解が文脈から明白である場合を除いて、記載されている事項(部材、工程、要素、または数値等)が存在することを意味するものであり、このような用語は、他の事項(部材、工程、要素、数値等)の存在は排除しない。
【0028】
異なる定義が示されない限り、本明細書で使用されるすべて用語(技術的用語および科学的用語を含めて)は、本開示が属する技術分野の当業者によって広く理解されるものと同じ意味を有する。異なる定義が明示的に示されない限り、明細書で使用される用語は、本明細書および関連技術分野における意味と整合する意味で解釈されるべきであり、理想化して、または過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態に、概略図を参照して説明されるものもあるが、概略図は、このような実施形態を分り易く説明するために誇張されていることもある。
【0030】
以下に、実施例を参照して、本開示を詳細に説明する。しかし、本開示は、様々な実施形態によって具現することができるので、本明細書に記載の実施例に限定されるものと解釈するべきではない。
【実施例1】
【0031】
食品添加物または医薬品添加物である、表1の粉末を他のいずれの粉末とも混合することなく、Capsugel製耐酸性硬カプセル(DRCAPS(商標)、サイズ1、無色透明)の分割した本体部に、本体の開口端面まで充填した。次に、青色1号で着色された日本薬局方第1液(pH1.2溶液)100μLをその上に滴下し、60分後に浸透率(%)を測定した(
図4を参照されたい)。
【0032】
浸透率は、本体長(16.6mm)に対して、青色溶液が浸透した距離によって定義される。即ち、青色溶液が4.15mm浸透した場合、浸透率は25%(四捨五入後)となる。浸透率がより小さい場合、これは酸性溶液の浸透がより大きく阻止されたことを意味する(生体内で言えば、胃液の浸透がより大きく阻止されたことを意味する)。
【0033】
本実施例において、浸透率を以下の基準に基づいて評価した。
優:10%以下
良:11%以上から20%以下
可:21%以上から50%以下
不適:51%以上
【0034】
本実施例に使用された粉末は、ゲル化剤(必要に応じてゲル化剤粉末とも称される;ゲル化助剤は使用しなかった)および撥水剤(必要に応じて撥水性粉末とも称される)であった。通常の賦形剤を比較例として使用した。
【0035】
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1に示すように、比較例(通常の賦形剤)と比較して、ゲル化剤または撥水剤を使用する場合、酸性溶液の浸透が極めて顕著に阻止されたことが明らかである。比較例の1つであるラクトースの場合、浸透率は100%であった。これは、酸性溶液が本体長(16.6mm)全体に浸透したことを意味する。
【実施例2】
【0039】
カプセルの賦形剤として普及しているラクトース(実施例1において、ラクトースの場合、浸透率は100%であった)に、いくつかの粉末(ゲル化剤または撥水剤)を10重量%、25重量%、および50重量%で混合した後、実施例1と同じ方法で浸透率を測定した。
【0040】
この実施例では、浸透率を以下の基準に基づき評価した。
ランクAA:10%混合物に対して、浸透率10%以下
ランクA:25%混合物に対して、浸透率10%以下
ランクB:25%混合物に対して、浸透率15%以下
ランクC:25%混合物に対して、浸透率50%以下
ランク不適:上記以外のもの
【0041】
結果を表2に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表2に示すように、ゲル化剤または撥水剤を使用した場合、酸性溶液の浸透が極めて顕著に阻止されたことは明らかである。比較例において、ラクトース(賦形剤)のみを使用した場合、実施例1から明らかなように浸透率は100%であった。アルギン酸を用いた場合に示された結果は、あまり良くなかった(判定「C」)。
【0044】
表2に示すように、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、およびペクチン(三晶
株式会社製GENU Pectin DD slow set−J)は、AAのランクを受けた。キサンタンガムおよびローカストビーンガムは、Aのランクを受けた。ステアリン酸マグネシウム、タマリンドガム、グルコマンナン、およびι(イオタ)型カラギーナンは、Bのランクを受けた。アルギン酸は、Cのランクを受けた。
【実施例3】
【0045】
実施例2においてランクAAと評価された、ラクトースに対して10重量%および25重量%の、3種の粉末(即ち、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、およびペクチン(三晶株式会社製GENU Pectin DD slow set−J))を、ラクトースに混合することによって混合粉末を調製した。これらの混合粉末をCapsugel製耐酸性硬カプセル(DRCAPS(商標)、サイズ1、無色透明)に充填した。同様に、実施例2においてランクCと評価された、10重量%の粉末(アルギン酸)をラクトースに混合することによって混合粉末を調製した。この混合粉末を同じタイプの硬カプセルに充填した。さらに、ラクトースのみを同じタイプの硬カプセルに充填することによって比較例を調製した。
【0046】
上記で調製したこれらの充填された硬カプセルを、青色1号で着色されたpH1.2の溶液(日本薬局方、第1溶液)に37℃で2時間浸漬し、続いて取り出した。次いで、硬カプセルを鋭いメスで長軸方向に半分に切断して、その断面を露出させた。青色に着色された酸性溶液が、硬カプセル外殻を通してカプセル内容物中にどのように浸透したのか、および浸透の程度(または、換言すると、浸透が阻止されたか否か)を観察するために、硬カプセルを調べた。
【0047】
断面の写真を
図1、2、および3に示す。
【0048】
図1は、ラクトースのみを充填した硬カプセルの断面の写真である。この図に示すように、硬カプセルにラクトースのみを充填した場合、青色に着色された酸性溶液は、硬カプセル内に深く浸透し、充填された粉末と酸性溶液の間の広範囲の接触が起こった。
【0049】
図2A〜2Fは、混合粉末で充填された硬カプセルの断面の写真であり、ここで、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、またはペクチン(三晶株式会社製GENU Pectin DD slow set−J)を、ラクトースに対してグアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、またはペクチンが10重量%または25重量%であるように、ラクトースと混合した。これらの図に示すように、わずか10%のこれらの粉末を含めた場合でさえ、驚くべきことに、青色に着色された酸性溶液は、硬カプセルの殻近傍にまでしか浸透しなかった。さらに、硬カプセル内部の大部分は乾燥しており、充填された粉末と酸性溶液の間の接触は、大幅に防止された(阻止された)。
【0050】
図3は、アルギン酸がラクトースに対して10重量%であるように、アルギン酸をラクトースと混合した混合粉末で充填された硬カプセルの断面の写真である。この場合、充填された粉末と酸性溶液の間の接触は、多少防止された(阻止された)。
【実施例4】
【0051】
実施例2においてランクAAと評価された、ラクトースに対して10%および25重量%の3種の粉末(即ち、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、およびペクチン(三晶株式会社製GENU Pectin DD slow set−J.))を、ラクトースに混合することによって混合粉末を調製した。これらの混合粉末をCapsugel製耐酸性硬カプセル(DRCAPS(商標)、サイズ1、無色透明)に充填した。さらに、ラクトースのみを同じタイプの硬カプセルに充填することによって比較例を調製した。
【0052】
上記で調製した充填された硬カプセルを、(実施例3と対称的に、溶液を青色1号で着色されていない)pH1.2の溶液(日本薬局方、第1溶液)に37℃で2時間浸漬し、続いて取り出した。次いで、硬カプセルを鋭いメスで長軸方向に半分に切断して、その断面を露出させた。
【0053】
ブロモフェノールブルーと呼ばれる二色呈色指示薬(ブロモフェノールブルー:3.0から4.6の間のpHで使用される酸塩基指示薬の一種;水溶液のpHが3.0以下の場合黄色になり、水溶液のpHが4.6以上の場合青〜紫色になる;この変化は可逆的である)の1滴を、各硬カプセルの露出した断面上に滴下した。
【0054】
この結果、実施例2においてランクAAと評価された、ラクトースに対して10重量%および25重量%の3種の粉末(即ち、グアーガム、λ(ラムダ)型カラギーナン、およびペクチン(三晶株式会社製GENU Pectin DD slow set−J.))をラクトースに混合することによって調製された混合粉末で硬カプセルを充填した場合、充填された材料の内部は青〜紫色になり、充填された材料は4.6以上のpHを有していた。したがって、これらの硬カプセルにおいて、酸性溶液の浸透によるいかなる影響も効果的に阻止されたものと理解される。比較例として、硬カプセルがラクトースのみで充填された場合、充填された材料の内部は黄色になり、酸性溶液の浸透による影響が明らかであった。
【実施例5】
【0055】
市販されている胎盤(ブタまたはウマの)をCapsugel製サイズ#1の酸耐性カプセル(DRCAPS(商標))に、胎盤(ブタまたはウマの)100%か、またはジェランガム40重量%を有する胎盤(ブタまたはウマの)60重量%を充填し、バンド付けし、pH1.2における耐酸性試験にかけ、続いて、pH6.8における溶解試験を行なった(n=6)。耐酸性試験の2時間後、胎盤(ブタまたはウマの)100%のカプセルは、酸による分解(degradation)により力価(titer)を失い、充填した粉末は、殻を通して透過した酸によって溶解された。切断したカプセルは、暗茶色のゲル化した残留物を示した。それに対して、ジェランガム40重量%を有する胎盤(ブタまたはウマの)60重量%のカプセルは、最初の製剤の67%の力価を示し、切開後のカプセル内部は損なわれていなかった。ジェランガム40重量%を有する胎盤(ブタまたはウマの)60重量%のカプセルは、pH6.8において8分以内で予想通り崩壊した。
【実施例6】
【0056】
市販されているナットウキナーゼ(供給源、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto))乾燥酵素粉末を、Capsugel製(DRCAPS(商標))サイズ#2酸耐性カプセルに、乾燥粉末酵素100%か、またはジェランガム9重量%およびpH中和剤(無水四ナトリウムピロホスファート)9重量%を有する乾燥粉末酵素81重量%の粉末で充填し、バンド付けし、pH1.2における耐酸性試験にかけ、続いて、pH6.8における溶解試験を行なった(n=6)。耐酸性試験の2時間後、乾燥酵素100%の粉末は、殻を通して透過した酸によって溶解された。切断したカプセルは、乾燥粉末酵素の完全な溶解および損傷を示した。それに対して、ジェランガム9重量%およびpH中和剤(無水四ナトリウムピロホスファート)9重量%を有する乾燥粉末酵素81重量%の粉末は、乾燥粉末酵素を切開後、カプセル内部は視覚的に損なわれていなかった。ジェランガム9重量%およびpH中和剤(無水四ナトリウムピロホスファート)9重量%を有する乾燥粉末酵素81重量%の粉末は、pH6.8において12〜24分以内で予想通り崩壊された。