【文献】
MINOURA N. et al.,Journal of Biomedical Materials Research,Vol.29 (1995),p.1215-1221
【文献】
PATRA C. et al.,Biomaterials,33(2012),p.2673-2680
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号16〜20、22、24〜27、30〜37、42〜64、67及び68の第1アミノ酸はリシン残基に置換され、配列番号21の第1アミノ酸はアルギニンに置換され、配列番号29の第1アミノ酸はアスパラギン酸に置換されている請求項1に記載のポリペプチド。
配列番号16〜22、24〜27、30〜37、42〜64、67及び68の第1アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸残基に置換され、配列番号29の第1アミノ酸はリシン又はアルギニン残基に置換されている請求項1に記載のポリペプチド。
配列番号16〜20、22、24〜27、30〜37、42〜64、67又は68のアミノ酸配列はN末端に14個以下のアルギニン残基をさらに含み、配列番号21のアミノ酸配列はN末端に14個以下のリシン残基をさらに含み、配列番号29のアミノ酸配列は14個以下のグルタミン酸残基をさらに含む請求項1に記載のポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】本願の一実施形態に係るペプチド(A7−1)の非生体由来物質として、ガラス、ジルコニウム、ビニール、ポリスチレンファイバー、PCL(Polycaprolactone)、チタニウム及びコラーゲンに対する接着性を示す結果であり、本願の一実施形態に係るペプチドをガラスに接着させた後、これに二硫化結合を介して結合したビオチンの検出を介して、本願ペプチドのガラスへの接着性を調べた結果で、ビオチンの信号は、本願ペプチドがガラスに接着されたことを示し、このような結果は、DTT(dithiothreitol)の処理で二硫化結合を分解時に消え、これは、前記結合が二硫化結合に依存することを示す。
【
図1B】本願の一実施形態に係るペプチド(A7−1)の非生体由来物質として、ガラス、ジルコニウム、ビニール、ポリスチレンファイバー、PCL(Polycaprolactone)、チタニウム及びコラーゲンに対する接着性を示す結果であり、
図1Aの実験を行うために使用された方法を図式的に示したもので、ガラス接着された本願のペプチドは、SH基を介して標識物質であるビオチン(Biotin)と連結されて、ビオチンは、抗体で検出でき、これはビオチンをペプチドから分離させるDTTの処理によって消える結果を示す。
【
図1C】本願の一実施形態に係るペプチド(A7−1)の非生体由来物質として、ガラス、ジルコニウム、ビニール、ポリスチレンファイバー、PCL(Polycaprolactone)、チタニウム及びコラーゲンに対する接着性を示す結果であり、
図1Aに記載された方法と同様であるがビオチンの代わりにFITC(fluorescein isothiocyanate)を使用して、種々の非生体由来物質の表面への接着性を分析する実験を図式的に示した。
【
図1D】本願の一実施形態に係るペプチド(A7−1)の非生体由来物質として、ガラス、ジルコニウム、ビニール、ポリスチレンファイバー、PCL(Polycaprolactone)、チタニウム及びコラーゲンに対する接着性を示す結果であり、分析結果を示して、本願のペプチドが種々の非生体由来物質の表面に接着性を有することを示したもので左側からPBS(phosphatebuffer saline)、FITC−コンジュゲートA7−1、そしてFITC染料を各材料に接着させた後、蛍光イメージを分析した結果である。
【
図2A】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドの骨移植材であるBio−OSS(登録商標)(Geistlich Pharma,Inc)の表面に対する接着性実験を行った結果で、本願に係るペプチドの商用化骨移植材への優秀な接着性を示す。
【
図2B】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドの骨移植材であるMBCP(Biomatlante)の表面に対する接着性実験を行った結果で、本願に係るペプチドの商用化骨移植材への優秀な接着性を示す。使用された蛍光顕微鏡倍率は200倍である。
【
図2C】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドの軟骨組織/細胞への接着性実験をマウスを利用して行った結果で、軟骨組織にPBS、FITC−コンジュゲートA7−1、またはFITC染料を各々注射器で注入してマウスを犠牲して組織を切開した後蛍光イメージ分析装備で蛍光を測定したもので、ペプチドが注入された軟骨だけで蛍光が検出された。これは、本願に係るペプチドがプロテオグリカンの主成分であるヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヘパリン(heparin)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)等のGAG(glycoaminoglycan)を多量含有する軟骨組織(*)組織で優秀な接着性を示し、後述する
図4Bの実験結果と一致する。
【
図2D】本願の一実施形態に係るCy3で標識されたペプチドの軟骨組織/細胞への接着性実験をマウスを利用して行った結果で、軟骨組織にPBS、Cy3−コンジュゲートA7−1、またはCy3染料を各々注射器で注入した後、マウスを犠牲して組織を切開した後、共焦点顕微鏡で蛍光を測定したもので、ペプチドが注入された軟骨(*)及び骨(bone#)で蛍光が検出された。これは本願に係るペプチドの軟骨組織への優秀な接着性を示して、後述する
図4Bの実験結果と一致する。
【
図2E】
図2Dと同様であるが、マウスの関節軟骨(articularcartilage)に注入した後、摘出された組織を破砕した後固定して、共焦点顕微鏡で蛍光を測定した結果で、GAGを多量含有する弾性線維(elastic fiber)または、細胞外基質(Extracellular matrix、ECM)に優秀な接着性を示して、後述する
図4Bの実験結果と一致する。
【
図2F】
図2Eと同様であるが、マウスの皮膚に処理した結果であり、これは弾性線維を多量含有する組織である皮膚または各組織部位(表皮及び真皮)の基質に対する優秀な接着性を示して、これは後述する
図4Bの実験結果と一致する。
【
図2G】
図2Fと同様であるが、マウスのヘアーに処理した結果であり、これは弾性線維を多量含有する弾性組織のヘアーに対する優秀な接着性を示し、これは後述する
図4Bの実験結果と一致する。
【
図2H】
図2Fと同様であるが、マウスの皮下脂肪注入した結果であり、本願に係るペプチドの結合組織(CT)に対する優秀な接着性を示す。
【
図2I】
図2Fと同様であるが、コラーゲン及びGAGを多量含有するマウスの眼球に処理した結果、処理30分後に観察した結果、眼球表面が強く着色されて、これは本願に係るペプチドのコラーゲンに対する優秀な接着性を示す。
【
図2J】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドのヘパリンまたはN−アセチルグルコサミンへの接着性を前記物質に連結されたビーズを利用した親和性クロマトグラフィーで行った結果である。標識されないコールドペプチドを追加する場合、FITC信号が急激に減少し、これは本願に係るペプチドの前記物質に対する接着性を示す。従って、本願に係るペプチドは、新規なヘパリン結合性/接着性があるペプチドとして伝達体として、またヘパリンが有する抗凝固効果をが緩和するために、または、成長因子に結合して細胞外基質に対する接近性を高めることができて、これによって細胞刺激をより亢進させるのに有用に使用できることを示す。
【
図2K】本願の一実施形態に係るCy3で標識されたペプチドのキチン(GlcNAc)または、ベータ(1.3)グルカンに対する接着性を示す蛍光顕微鏡観察結果で、本願に係るペプチドがFITC標識されたザイモサン(zymosan)粒子に蓄積されている。ザイモサン粒子は、イースト細胞壁を構成する成分で、これはキチン及びベータ(1.3)グルカンで構成されていて、キチンはN−アセチルグルコサミンの重合体であり、ベータ(1.3)グルカンはグルコースである。
【
図2L】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドのGlcNAc(N-acetylglucosamine)とMurNAc(N-acetylmuramicacid)で構成されたプロテオグリカンが主成分であるグラム陰性菌の細胞壁への接着性を示す結果で、対比染色はDAPIで行った後、蛍光顕微鏡で観察した。
【
図2M】本願の一実施形態に係るFITCで標識されたペプチドのGlcNAc(N-acetylglucosamine)とMurNAc(N-acetylmuramicacid)で構成されたプロテオグリカンが主成分であるグラム陽性菌の細胞壁への接着性を示す結果で、対比染色はDAPIで行った後、蛍光顕微鏡で観察した。
【
図3A】本願の一実施形態に係るペプチドの付着依存性細胞であるMC3T3−E1の培養皿への接着性実験を行った結果で、本願に係るペプチドを含む細胞は、顕微鏡観察結果、対照群(PBSで処理)と比較して、粗い細胞膜境界形態を示し、これは本願ペプチドによって細胞のような生体または生体由来物質の培養皿のような非生体由来物質への接着性を増加させることを示す。
【
図3B】本願の一実施形態に係るペプチドの付着依存性細胞(MC3T3−E1)の疏水性培養皿への接着能を示した結果であり、既存の細胞接着能向上に使用される物質であるPLL(poly-L-lysin)と比較した結果で、本願に係るペプチドを含む細胞は、顕微鏡観察結果、対照群(PBSで処理及びPLL)と比較して、接着性が増加したことを示す。このような疏水性培養皿での接着能は、疏水性性質を帯びる様々な組織移植材料(PCLなど)が有する細胞接着の短所を補完できて、産業的応用価値が高いことを示す。
【
図3C】本願の一実施形態に係るペプチドの付着依存性細胞(ST2)の疏水性培養皿への接着能を媒体対照群と比較した結果で、本願に係るペプチドを含む細胞は、顕微鏡観察結果、対照群と比較して、接着性が増加したことを示す。
【
図3D】本願の一実施形態に係るペプチドの付着依存性細胞(C2C12)を解凍した後、これの培養皿への接着能を媒体対照群と比較した結果で、本願に係るペプチドを含む細胞は、顕微鏡観察結果、対照群と比較して、培養皿への接着性が増加した。特に解凍直後細胞の接着能は、細胞の生存に大変重要な影響を及ぼして、前記結果は、本願に係るペプチド接着剤が解凍後細胞の死滅を最小化するために有用に使用でき、一次細胞(primarycell)の培養分野で有用に使用できて産業的応用価値が高いことを示す。
【
図3E】本願の一実施形態に係るペプチドのマイトマイシン処理されたSTOフィーダ(feeder)細胞の親水性培養皿への接着能を陰性対照群(Mock)及びゼラチンと比較した結果で、本願に係るペプチドを含む細胞は、顕微鏡観察結果、陰性対照群及びゼラチンと比較して、接着性が増加したことを示す。
【
図3F】本願の一実施形態に係るペプチドの本図面に表示された種々の細胞(確立細胞株及び一次細胞)の疏水性培養皿への接着能を細胞代謝測定を利用して陰性対照群(Mock)と比較した結果である。前記結果は、本願に係るペプチドは、種々の細胞で陰性対照群と比較して、その接着性を増加させる可能性があることを示す。
【
図4A】本願に係るペプチドの細胞接着能の機序を糾明した分析結果である。A7−1による細胞接着が細胞表面の電解質(EDTA処理結果)や新しいタンパク質合成(CHX処理結果)を要しない反面、血清によっては初期に阻害が起きることを示す結果で、これは血清内存在する多くの種類のGAGがペプチドに一次的に結合したのが原因と判断される。
【
図4B】本願に係るペプチドの細胞接着能の機序を糾明した分析結果である。ペプチド細胞接着促進機序で、GAGまたはコラーゲンとの関連性を分析した結果で、上の図面は、コラーゲンとGAGのいずれに関連している結果で、酵素処理によって暫定的標的を分解することによって現れる現象を観察したものである。コラゲナーゼ処理による細胞接着の減少は、少なくともコラーゲンとの相互作用によるものである。そしてヒアルロニダーゼ処理は少なくともヘパリンサルフェートを加水分解することによって細胞接着が減少して、これはGAG中ヘパリンサルフェートとペプチドの相互作用を示す。下の図面は、GAGとの関連性を分析した結果で、ヘパリン及びC−サルフェートを添加した結果、A7−1を介して促進される細胞接着能が濃度依存的に顕著に減少して、このような結果は、A7−1の細胞接着能とGAGとの関連性を示す。GAG濃度変化は、種々の疾患と関連性が報告されていて、本願に係るペプチドは新規な、GAG結合性/接着性があるペプチドであり、血液内GAGを調節する新しいペプチドまたはGAGを標的化する伝達体として有用に使用される可能性があることを示す。
【
図4C】本願に係るペプチドの細胞接着能の機序を糾明した分析結果である。A7−1と溶解性RGDSペプチドを競争的に処理した結果で、A7−1非処理群では、溶解性RGDSを処理する場合、付着分子であるインテグリン(integrin)に優先的に結合して底(基質に)対する接着能を有意にに減少させるが、A7−1処理群ではRGDSを処理しても細胞の接着に全く影響を及ぼさないことが明らかになり、これはA7−1はインテグリンを介した付着依存的細胞接着とは別の細胞接着促進機序を有することを示す。
【
図5A】本願に係るペプチドの人工多能性幹細胞(iPSC, induced pluripotent stem cell)に対する接着能向上を測定するために製作されたレポーターシステム及びこれを利用した実験手順を図式的に示したもので、前記レポーターシステムは、人工多能性幹細胞の全分化能(Stemness)の指標でOct4遺伝子の活性を測定できる構造を含む。
【
図5B】
図5Aに係る構築水を利用してマウス人工多能性幹細胞の接着及び全分化能維持を細胞培養2日目及び3日目にOct4の発現の有無の検出で測定した結果で、対照群としてフィーダ細胞及びゼラチンで予めコートされた培養皿を使用しており、本願の一実施形態に係るペプチドは、予めコートさ(precoated)れるか、または培養液に混合(Mixed)される方式で追加され、二つの場合共にiPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった。
【
図5C】
図5Bと同様であるが、細胞培養4日目に測定した結果で、本願に係るペプチドは、iPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった。
【
図6A】全分化能を示す他のマーカーであるAlp(alkalinephosphotase)遺伝子の発現を染色を介して観察した結果で、本願に係るペプチドは、予めコートまたは培養液混合される場合共に、iPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった。
【
図6B】全分化能を示す他のマーカーであるNanog遺伝子の発現を染色を介して観察した結果で、本願に係るペプチドは予めコートまたは培養液混合される場合共に、iPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった。
【
図6C】
図6Aと同様の実験であるが、hESCを利用した実験結果であり、hESCに対してもフィーダ細胞またはマトリゲル(Matrigel)等の外部環境的変化なしでもよく成長する可能性があることを示す。
【
図7A】本願に係るペプチドを利用したバイオコンジュゲーション過程を図式的に示し、DSS(Disuccinimidylsuberate)リンカーを利用して本願の一実施形態に係るペプチドを骨形成タンパク質であるBMP2にコンジュゲーションした。
【
図7B】
図7AのようにBMP2にコンジュゲーションされた本願に係るペプチドを細胞培養皿に処理した後、C2C12細胞を培養してから48時間後に骨分化能遺伝子であるAlpの発現を測定した結果で、組換えBMP処理群(rhBMP2)または、架橋剤処理群(CL)と比較してAlp活性が増加し、これは本願のペプチド処理によって骨分化が促進されたことを示す。
【
図8A】本願に係るペプチドの安定性を造骨細胞(MC3TC−E1)を利用してテストした結果である。
【
図8B】本願に係るペプチドの安定性を造骨細胞(MC3TC−E1)を利用してテストした結果である。
【
図8C】本願に係るペプチドの安定性を造骨細胞(MC3TC−E1)を利用してテストした結果である。
【
図8D】本願に係るペプチドの安全性をテストした結果で、マウスの単核球(monocyte)を分離した後、ペプチド刺激を加えた後、炎症誘導が発生するか否かを調べた結果である。
【
図9A】既存の接着性ペプチドと本願に係るペプチドの効果を比較した結果で、脊髄由来の神経細胞を既存のペプチドでラミニン(laminin)とポリ−L−オルニチン(poly-L-ornithin)でコートされた培養皿及び本願の一実施形態に係るA7−1でコートされた培養皿を使用して培養した後、各時間帯別にCCK−8を分析した結果である。
【
図9B】既存の接着性ペプチドと本願に係るペプチドの効果を比較した結果で、培養4日後光学顕微鏡を介して比較観察した結果である。
【
図9C】既存の接着性ペプチドと本願に係るペプチドの効果を比較した結果である。本願の一実施形態に係るA7−1でコートされた一次培養細胞が神経由来細胞であるか否かを検証した結果で、神経標識タンパク質を免疫蛍光法で染色した後、共焦点顕微鏡を介して分析した結果である。前記結果は、本願に係るペプチドが既存のものと比較して格段に優秀な接着能を有することを示す。
【
図10A】hMSCを利用して細胞の接着進行過程(adhesion progression)がA7−1によって促進されることを糾明する結果で、細胞培養後6時間を基準に分析した結果であり、陰性対照群は依然として接着初期段階であるアクチン−リング形成が多数をなしているが、A7−1処理群の場合、すでにその段階をすぎてストレスファイバー形成が多数の細胞で観察されたことを示す。
【
図10B】hMSCを利用して細胞の接着進行過程(adhesion progression)がA7−1によって促進されることを糾明する結果で、細胞培養後6時間を基準に分析した結果であり、前記観察結果を定量したグラフである。
【
図10C】hMSCを利用して細胞の接着進行過程(adhesion progression)がA7−1によって促進されることを糾明する結果で、細胞培養後6時間を基準に分析した結果であり、細胞接着に係る幾何学的様態(geometric shape)(cellaspect ratio:細胞の横/縦の比率、1の場合完全な原形であり接着過程の最も初期状態で示す)を測定して示した結果で、A7−1の処理群で格段に成熟した接着能を示す。
【
図11】本願に係る様々な配列を有するペプチドとGAGのような細胞外基質間の相互作用を介して現れる細胞接着能促進を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一様態で、本願は下記の化学式Iで表されるペプチドに関する。
【0034】
(化I)
[X
1−X
2−X
3−X
4−X
5]
n
【0035】
前記化学式Iにおいて、
X
1は、極性の非荷電された任意のアミノ酸であり、
X
2、X
3及びX
4は、L、V、I、E及びAのうちいずれか一つのアミノ酸であり、各々同じまたは異なり、
X
5は、KまたはRのアミノ酸である。
【0036】
前記nは1乃至5の整数であり、前記nが2以上である場合、各ペプチドのアミノ酸配列は、同じまたは異なり、前記アミノ酸は、D−またはL−型の天然または非天然アミノ酸またはその誘導体である。
【0037】
本願に使用された用語「アミノ酸」とは、20個の天然から発見されるアミノ酸及び非天然アミノ酸、生体内で翻訳後に変形されるアミノ酸、例えばホスホセリン及びホスホトレオニン;及び2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、ノルバリン、ノルロイシンのようなその他希少アミノ酸;細胞透過または生体内安定性向上のために変形されたものを含み、鏡像異性体であるD−及びL−形態をいずれも含むものである。本願で正荷電アミノ酸、負荷電されたアミノ酸、極性の非荷電されたアミノ酸及び非極性の脂肪族アミノ酸は、当業界に公示されていて、当業者なら適切なものを選択することができるはずである。
【0038】
一実施形態において、正荷電されたアミノ酸は、KまたはRである。
【0039】
他の実施形態において、前記負荷電されたアミノ酸は、DまたはEである。
【0040】
さらに他の実施形態において前記極性の非荷電されたアミノ酸は、S、T、C、P、NまたはQである。
【0041】
さらに他の実施形態において前記非極性の脂肪族アミノ酸は、G、A、L、V、MまたはIである。
【0042】
本願で使用された用語天然及び非天然において前者は細胞、組織または生体内で発見される形態の化合物を称し、後者はこのような化合物に様々な目的のために人為的変形が加えられたものを意味する。
【0043】
本願で使用された用語「ペプチド」、「ポリペプチド」とは、互いに交換的に使用され、アミノ酸の単位体が共有結合で連結された分子を称する。これは、元(native)アミノ酸またはその分解産物、合成ペプチド、組換え方式で製造されたペプチド、ペプチド模倣体(典型的に合成ペプチド)、及びペプトイド及びセミペプトイドのようなペプチド類似体と細胞透過または生体内安定性向上のために変形されたものを含む。このような変形は、これで制限するのではないが、N−末端変形、C−末端変形、CH
2−NH、CH
2−S、CH
2−S=O、CH
2−CH
2のようなペプチド結合変形、バックボーン変形、側鎖変形を含む。ペプチド模倣体化合物を製造する方法は、技術分野に公示されたもので、例えばQuantitative Drug Design、C.A.RamsdenGd.,Choplin Pergamon Press(1992)に記載された内容を参照することができる。
【0044】
本願で用語「接着」は、付着及び吸着を含むもので、可逆的、非可逆的接着を含み、他の側面では共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、水素結合などを含む一つ以上の化学的結合による接着を含む。
【0045】
本願で無機物または無機質表面は、相互交換的に使用され、優秀な静電気的伝導性により電子の分布が自由な物質または炭素、シリコンまたは窒素などを含まない通常的意味での無機物であり、特に表面が疏水性である物質を含み、その例としては金属、例えば鉄、銅、金、銀及び白金を含む貴金属、チタニウムまたはアルミニウム;セラミック、例えばジルコニア;カルシウム燐灰石結晶、例えばヒドロキシアパタイト;高分子合成樹脂、例えばポリエチレン;ガラス;及びこれらの組合せを含むが、これに制限されない。
【0046】
本願に係る用語「表面」とは、最も広い範囲で解釈され2次元以上の物質に存在するもので、特定形、特定の大きさに限定されず、特定単位体または分子水準の物質に存在する表面はもちろん、これらからなる物質が有する表面を含む。例えば、ナノメートル乃至マイクロメートル水準の粒子または物質に存在するものはもちろん数ミリメートル乃至数メートルの大きさの水準も含む。
【0047】
本願に係る化学式Iの化合物は、第1領域として細胞膜または細胞表面との結合に関わるだけでなくペブチドの個数を多様に適用することにより、本願に開示された様々な目的に使用できる。第1領域はペプチドの2次構造に影響を与えることができる核心領域として後述する他の機能領域の分子特性を良好に維持させる。第1領域が疎水性特性を有することにより分子間疎水性結合、細胞との疎水性結合に関与し、この領域が有する疏水性特性によって組織再生のための種々のナノ構造支持体、ゲルの成分などに活用され得る。
【0048】
本願に係るペプチドで第1領域は、5個のアミノ酸で構成された単位体が一つ以上含まれることができ、二つ以上含む場合、各単位体は異なるか同一であり得る。本願に係るペプチドに含まれる単位体の数は、ペプチドの製造、保管、伝達または後述する本願に係るペプチドの効能と用途のための機能化(functionalization)により多様である。例えば1乃至10個、1乃至9個、1乃至8個、1乃至7個、1乃至6個、1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、1乃至2個、または1個を含む。
【0049】
化学式IでX
1は任意のアミノ酸で、一実施形態においては、極性の非荷電されたアミノ酸、または、他の実施形態においては、S、T、C、P、NまたはQである。
【0050】
化学式IでX
2、X
3及びX
4は、各々L、V、I、E及びAのうちの一つで、各残基は同じまたは異なり、X
2−X
3−X
4配列は、例えばAAA、EEE、LVA、LVL、LVV、LLA、LLL、LLVなどであるが、これに制限されない。他の実施形態において、前記化学式IはX
1−LVV−X
5、X1−AAA−X
5またはX
1−EEE−X
5である。
【0051】
一実施形態において化学式Iの配列は、QLVVK(配列番号1)、QEEEK(配列番号2)、QAAAK(配列番号3)、NLVVK(配列番号4)、またはSLVVK(配列番号5)で表される。
【0052】
他の側面で本願は下記の化学式IIの化合物、または、前記化学式Iの化合物に一つ以上の下記の化学式IIの化合物を追加で含むペプチドに関する。
【0053】
(化II)
[X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X11]
n
【0054】
前記化学式IIにおいて、
X
6は、F、Y及びWのうちいずれか一つのアミノ酸で、
X
7は、KまたはRのアミノ酸で、
X
8は、A、M及びIのうちいずれか一つのアミノ酸で、
X
9は、L、M及びGのうちいずれか一つのアミノ酸で、
X
10は、任意のアミノ酸で、
X
11は、C、S及びTのうちいずれか一つのアミノ酸である。
【0055】
前記X
7及びX
8または前記X
10及びX
11のうち一つ以上は欠如されてもよく、
前記nは1または2である。
【0056】
前記化学式IIの化合物は、前記化学式Iの化合物のアミノ末端(N−末端)またはカルボキシ末端(C−末端)、またはN−末端及びC−末端のいずれに連結され得る。本願によると、前記化学式IIの化合物は、第2領域とも呼ばれて、第1領域と共に単一分子として存在する場合αヘリックス構造を容易に作ることができ、本願に係るペプチドに親水性特性を与える。
【0057】
化学式Iの第1領域と化学式IIの第2領域は、各々一つ以上含まれてもよく、その配列も様々なものになる。例えば、化学式I及びIIのペプチドが、各々一つ以上ずつ連結されて、化学式I−IIのペプチド、化学式I−化学式I−化学式II−化学式IIの構造を有したりまたは、例えば化学式I及びIIのペプチドが各々一つずつ順次連結されて、これが再び連結されて、化学式I−化学式II−化学式I−化学式IIのような構造を包含できたり、または化学式I−化学式II−化学式I、または、化学式II−化学式I−化学式IIのような構造を含むことができる。前記構造で化学式I及びIIの順番が変わってもよい。
【0058】
本願の一実施形態において、前記化学式IIのペプチドは、FRALPC(配列番号6)、FREEPC(配列番号7)、FRVVPC(配列番号8)、FEALPC(配列番号9)、YRALPC(配列番号10)、WRALPC(配列番号11)、FRALP(配列番号12)、FRAL(配列番号13)、またはFRPC(配列番号14)で表される。
【0059】
他の側面で本願の化学式Iのペプチド、または化学式IとIIをいずれも含むペプチドは、化学式IIIのX
121−15で表される第3領域をそのNまたはC末端に追加で含んでもよく、前記X
12は、陽または負荷電された任意のアミノ酸である。
【0060】
一実施形態において、前記化学式IIIで正荷電されたアミノ酸は、KまたはRである。
【0061】
他の実施形態において、前記化学式IIIで前記負荷電されたアミノ酸は、DまたはEである。
【0062】
さらに他の実施形態において、前記化学式IIIで前記極性の非荷電されたアミノ酸は、S、T、C、P、NまたはQである。
【0063】
本願の一実施形態において、本願のペプチドは、例えば下記で構成される群から選択され得る:RQLVVK(配列番号15);FRALPC(配列番号6);FRALPCRQLVVK(配列番号16);RQLVVKFRALPC(配列番号17);RQLVVKFRALPCRQLVVKFRALPC(配列番号18);RQLVVKFRALP(配列番号19);RQLVVKFRAL(配列番号20);KQLVVKFRALPC(配列番号21);RQKFRALPC(配列番号22);RQEEEKFRALPC(配列番号23);RQAAAKFRALPC(配列番号24);RQLVVKFRPC(配列番号25);RQLVVKFREEPC(配列番号26);RQLVVKFRVVPC(配列番号27);RQEEEKFREEPC(配列番号28);EQLVVEFEALPC(配列番号29);RQLVVKYRALPC(配列番号30);RQLVVKWRALPC(配列番号31);RNLVVKFRALPC(配列番号32);RSLVVKFRALPC(配列番号33);R-(QLVV)2-KFRALPC(配列番号34);R-(QLVV)
3-KFRALPC(配列番号35);R-(QLVV)
4-KFRALPC(配列番号36);RQLVVK-(FRALPC)
2(配列番号37);(R)
2-QLVVKFRALPC(配列番号38);(R)
5-QLVVKFRALPC(配列番号39);(R)
10-QLVVKFRALPC(配列番号40);及び(R)
15-QLVVKFRALPC(配列番号41)。
【0064】
さらに他の実施形態において、本願のペプチドは、例えば下記で構成される群から選択され得る:RQLVVKFRALPC(配列番号17);KQLVVKFRALPC(配列番号21);RNLVVKFRALPC(配列番号32);RSLVVKFRALPC(配列番号33);RQVVVKFRALPC(配列番号42);RQIVVKFRALPC(配列番号43);RQAVVKFRALPC(配列番号44);RQEVVKFRALPC(配列番号45);RQLLVKFRALPC(配列番号46);RQLIVKFRALPC(配列番号47);RQLAVKFRALPC(配列番号48);RQLEVKFRALPC(配列番号49);RQLVLKFRALPC(配列番号50);RQLVIKFRALPC(配列番号51);RQLVAKFRALPC(配列番号52);RQLVEKFRALPC(配列番号53);RQAAAKFRALPC(配列番号24);RQEEEKFRALPC(配列番号23);RQLVVRFRALPC(配列番号54);RQLVVKYRALPC(配列番号30);RQLVVKWRALPC(配列番号31);RQLVVKFKALPC(配列番号55);RQLVVEFEALPC(配列番号56);RQLVVKFRLLPC(配列番号57);RQLVVKFRILPC(配列番号58);RQLVVKFRVLPC(配列番号59);RQLVVKFRELPC(配列番号60);RQLVVKFRAAPC配列番号61);RQLVVKFRAIPC(配列番号62);RQLVVKFRAVPC(配列番号63);RQLVVKFRAEPC(配列番号64);RQLVVKFRVVPC(配列番号27);RQLVVKFREEPC(配列番号26);RQEEEKFREEPC(配列番号28);RQEEEEFEEEPC(配列番号65);RQLVVKFRALXC(配列番号66);RQLVVKFRALPS(配列番号67);RQLVVKFRALPT(配列番号68);及びRQLVVKFRALPX(配列番号69)。前記ペプチドは、本願で合成された種々の変異を有する12merの配列及び接着実験結果を基に下記の記述事項を考慮して、可能な変異を導入して生成された配列で、その効果も本願実施例に記載されたように本願で開示されたものから予測可能であり、従って本願の範囲に含まれる。
【0065】
しかし、本願に係るペプチドは、前記のような配列に限定されず、これらの生物学的均等物(biologicallyequvalents)を含む。すなわち、アミノ酸配列に追加的な変形を与えることができる。このような変形は、例えばアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/または置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸の側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疏水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてできる。アミノ酸の側鎖置換体の大きさ、形及び種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンは、いずれも陽電荷を帯びた残基で;アラニン、グリシンとセリンは、似たような大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似する形を有する。従って、このようなことを考慮すると、アルギニン、リシンとヒスチジン;アラニン、グリシンとセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは生物学的に機能均等物といえる。
【0066】
また、アミノ酸変異を導入するに当たり、アミノ酸の疏水性インデックス(hydrophobicindex)が考慮され得る。各アミノ酸は、疏水性と電荷により疏水性インデックスが与えられる:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスタイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタメート(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパルテート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)。
【0067】
前記のような疏水性インデックスは、特にタンパク質の相互的な生物学的機能(interactivebiological function)を与えるに当たり重要である。類似の疏水性インデックスを有するアミノ酸で置き換えてこそ類似の生物学的活性を保有できることは公知の事実である。疏水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらに好ましくは±0.5以内の疏水性インデックス差を示すアミノ酸間の置換が有利である。
【0068】
また、類似の親水性数値(hydrophilicityvalue)を有するアミノ酸の間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質を招くことも周知である。
【0069】
例えば、米国特許第4,554,101号に開示された通り、次の親水性値が、各アミノ酸残基に与えられる:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。
【0070】
また、本願に係るペプチドの活性を全体的に変更させないアミノ酸置換は、当分野に公知である(H.Neurath、R.L.Hill,TheProteins,3rd Edition,Academic Press,New York,1979)。例えば、最も通常的に起きる置換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Gly間の置換が挙げられる。
【0071】
従って、上述したような生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本願に開示されたアミノ酸配列またはこれをコードする核酸分子は、本願に開示されたものと実質的同一性を有するものも含まれる。実質的同一性とは、本願に開示された配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインして、当業界で通常的に利用されるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合、少なくとも61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、さらに好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント法は当業界に公知である。例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.(1981)2:482; Needleman andWunsch,J.Mol.Bio.(1970)48:443; Pearson and Lipman,Methods inMol.Biol.(1988)24:307-31; Higgins and Sharp,Gene(1988)73:237-44; Higgins andSharp,CABIOS(1989)5:151-3; Corpet et al.,Nuc.Acids Res.(1988)16:10881-90; Huanget al.,Comp.Appl.BioSci.(1992)8:155-65及びPearson etal.,Meth.Mol.Biol.(1994)24:307-31に開示されている。NCBI BasicLocal Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.(1990)215:403-10)は、NBCIなどで接近可能で、blast、blastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動されて利用することができる。BLSATは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でアクセス可能で、このプログラムを利用した配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0072】
一実施形態において、上述した本願に係るペプチドは、C−末端が非反応性基、例えばNH2等のような基で置き換えられて安全性を高めることができる。
【0073】
さらに別の側面では、本発明は、また、本明細書に開示されたペプチドをコードするヌクレオチド配列、及びこれを含むベクター、および前記ベクターを含む細胞に関するものである。当業者は、当該技術分野で公知されたコドンからヌクレオチド配列を決定することができ、また、ヌクレオチドのクローニングおよび形質転換に使用される適切なベクターおよび細胞を選択することができる。
【0074】
本願に係るペプチドは、種々の生体由来または非生体由来の物質またはその表面に接着でき、このような特徴を利用して、一つの物質とこれと同じまたは異なる物質間の接着を媒介することができる。例えば、本願に係るペプチドを利用する場合、イン・ビトロで培養される細胞を培養皿に接着させることができ、細胞と細胞との間の接着を媒介したり、または蛍光物質などのような標識物質と結合したペプチドを使用する場合、細胞、組織などの標識に使用でき、有用な生活性物質、例えば骨形成タンパク質などのような物質を本願のペプチドに結合させて、生活性物質が効果を示すと期待される組織に処理する場合、治療効果を高めることができる。
【0075】
本理論に制限されないが、本願に係るペプチドは、ペプチドグリカン層に対する親和度があり、さらには微生物の細胞壁成分(lipopolysaccharide成分含む)はもちろん、イーストの細胞壁成分((1,3)−βグリカンを含む)に選択的に結合でき、様々な応用分野に使用できる。
【0076】
また、本願に係るペプチドは、種々の化合物をイプシロンアミノ基に結合させる方式で伝達体での機能を搭載して活用できる。
【0077】
本理論に制限されないが、本願に係るペプチドは、プロテオグリカンに対する高い親和力を示して、プロテオグリカンを軟骨を形成する組織構成成分として組織再生分野で応用価値が非常に広くて成形を含む様々な臨床手術に直接的に活用される物質を含む。従って、本願に係るペプチドは、軟骨を軟骨再生に、広く活用できる。本願に係るペプチドは、物質、特に生体由来物質、例えば生物に分類されるすべての動植物及び前記動植物から由来した一部を意味して、例えば、細胞、組織、器官を含む生体物質の表面を含む。
【0078】
このような側面から本願は、ペプチドは、薬物、標識物質、または標的物質を追加で含むことができる。
【0079】
さらに他の側面で本願は、本願に係るペプチドを含むバイオコンジュゲート用組成物に関する。
【0080】
他の側面で本願は、本願に係るペプチドを含む生体由来物質または非生体由来物質接着用組成物に関する。
【0081】
本願に係る一実施形態で本願に係る組成物またペプチドは細胞に適用され得る。本願に係るペプチドまたは組成物が適用され得る細胞は特に制限されず、植物、昆虫及び動物細胞に適用され、例えば動物細胞、特にヒト由来細胞に適用され得る。例えば、多分化能細胞、成体幹細胞、前駆細胞、または前駆細胞の接着に使用できる。多分化能細胞の例としては、ES細胞、GS細胞、及びiPS(人工多能性幹細胞)細胞を含む。成体幹細胞では、MSC(mesenchymal stem cells)、造血幹細胞、神経幹細胞を含む。前駆細胞の例としては、皮膚、真皮、内皮、表皮、筋肉、心筋、神経、骨、軟骨、脳、上皮、心臓、腎臓、すい臓、脾臓、口腔、角膜または毛髪由来の細胞を含む。
【0082】
ヒト由来細胞の例としては、ES細胞、iPS細胞、MSC、軟骨細胞、骨芽細胞、骨前駆細胞、中間葉細胞、筋芽細胞、心筋細胞、神経細胞、肝細胞、胚芽細胞、線維細胞、角膜上皮細胞、角膜内皮細胞、血管内皮細胞、及び造血幹細胞を含むが、これに制限されない。治療目的のために細胞は、自己、他家由来であり得る。
【0083】
本願の組成物が適用できる表面は、特に制限されず、親水性または疏水性の有機物または無機物表面をいずれも含む。一実施形態で本願の組成物が適用できる表面は、生体由来物質またはプラスチック、ガラス、高分子合成樹脂及び金属を含む非生体由来物質をいずれも含む。
【0084】
本願に係るペプチドまたは組成物の用途はこれに限定されないが、(1)水(水または塩分がある水)中にある基質間の接着;(2)骨、靭帯、筋、半月板(meniscus)及び筋肉治療及び人工材料移植のような成形外科的治療;(3)穿孔、創傷、切開などの治療、角膜移植、人工角膜挿入のような眼科的接合;(4)補正装置、架工疑歯、歯冠取り付け、揺れる歯の固定、折れた歯の治療及び充鎮剤固定のような歯科的接合;(5)血管接合、細胞組織接合、人工材料移植、傷縫合のような外科的治療;(6)植物の移植片接合、傷治癒のような植物での接合;(7)幹細胞を含む細胞または組織培養;(8)人工臓器、歯科、外科または眼科用医療装置、例えばインプラント、骨固定剤、骨ケージ、ガイドワイヤー、カテーテル及びステントを含む医療装置の物質;(9)骨表面、チタニウム、セラミックなど;(10)生理活性物質を含む種々の生体物質、例えば生体活性物質、薬物、標識物質、または標的物質などに対するバイオコンジュゲーションなどに利用できる。
【0085】
一実施形態においては本願のペプチドまたは組成物は、疾患の治療のための細胞または組織の移植または再建のための歯科的、眼科的または整形外科的治療に使用されて、この場合本願の接着組成物が適用できる表面はこれに制限されないが、PLGA、ヒドロキシアパタイト、ジルコニウム、チタニウム、鉄、ステンレススチール、チタニウム、白金、金、合金を含むか、これに制限されない。
【0086】
さらに他の実施形態において本願のペプチドまたは組成物は、支持体(support)への細胞の接着に使用される。本願で細胞接着表面または支持体は、細胞培養皿、マイクロビーズ、基底物質、組織移植物などを含み、例えば組織または細胞の培養、特に幹細胞の培養などに使用できる。本願に係る一実施形態においては本願のペプチドを利用した場合、従来の細胞接着に使用する物質と比較して格段に高い接着力を示した(
図1、2、3、4、5及び6等参照)。
【0087】
さらに他の実施形態において本願のペプチドまたは組成物は、バイオコンジュゲーションに使用される。バイオコンジュゲーションとは、二つのバイオ分子を安定した共有結合で連結する化学的方法/手段をいうもので、本願に係るペプチドは直接または低分子リンカーを使用して、様々なバイオ分子、例えば酵素、ホルモンを含むタンパク質、核酸、脂質または炭水化物に連結できる。このようなバイオコンジュゲーションは、研究用ツールとして、生化学的物質の検出、モニタリングなどに使用できたり、または、治療剤として治療用物質とコンジュゲーションされ、治療の効率性を高めたり、標的治療に使用できる。本願に係る一実施形態においては、骨形成タンパク質にコンジュゲーションされ、骨形成タンパク質の治療効果を増加させる。
【0088】
本願に係るペプチド及び組成物の使用方法は、通常の生体接着組成物の使用方法に準じて、代表的な方法は塗布法である。例えば、本願に係るペプチドまたは組成物の具体的な使用法、使用量及び台形などは、現在市販される製品であるCell−Tak(登録商標)(BD Biosciences,USA)を参照することができる。
【0089】
本願に係る組成物は溶剤型、水溶性、無溶剤型であってもよく、適用される表面の面積を基準に0.1乃至1000ng/mm
2、特に1乃至100ng/mm
2で使用できるが、これに限定されない。
【0090】
本願に係る組成物は、界面活性剤、酸化剤、架橋剤、または充鎮剤(filler)で処理したり、またはペプチドの濃度を調節することによって前記接着力及びこれに合わせて適用量を調節することができる。例えば、充鎮剤はコラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチンサルフェート、エラスチン、ラミニン、カゼイン、ヒドロキシアパタイト、アルブミン、またはフィブロネクチンを含むが、これに制限されない。
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし下記の実施例は本発明をより簡単に理解するために提供されるだけであって、本発明が下記の実施例に限定されない。
【0092】
(実施例)
<実施例1.接着性ペプチドの製造>
【0093】
実験に使用されたペプチドは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)(Fmoc)方法を介して合成されたもので、注文制作した(ルジェンSci、大韓民国;ペプトロン、大韓民国)。ペプチド効果の再現性検証のために、二つの会社を介して各3回(ルジェン)そして2回(ペプトロン)のペプチド合成を行っって、各合成物に対してて独立実験を介して分析を行って、合成回数別に同じ結果を収得した。
【0094】
<実施例2.接着性ペプチドと蛍光物質のコンジュゲーション及びこれの種々のp非生体由来表面への接着性分析>
【0095】
実施例1で合成されたペプチドは、A7−1(RQLVVKFRALPC;配列番号
17)(下記の表1の12mer(A)配列に該当)は、ビオチン(Thermo Scientific)、そしてFITC(Sigma)をCysにSH基を介して各々コンジュゲーションさせた。続いて、これをガラス、PCL、Ti、Col、Zr、ビニール、PSファイバーに処理した後(PBS中各10μM、常温で20分吸着後PBSで1回洗浄)、接着の有無はLAS(Fuji、日本)を利用したFITC蛍光イメージ測定を介して検出した。ペプチドに共有結合されたビオチンを遊離させるために、DTT(PBS中100mM、常温で20分処理後1回洗浄)で処理して還元反応を誘導した。対照群では染料だけを使用した。
【0096】
結果は、
図1A乃至
図1Dに記載されていて、抗体の検出は、本願に係るビオチンは本願に係るペプチドを介して実験に使用された表面に強く接着されて、特にこのような効果は、DTT処理によって消え(
図1A)、これはビオチンまたはFITCが本願ペプチドを介してガラスに接着されることを示す。
【0097】
<実施例3.本願に係る接着性ペプチドの種々の非生体及び生体由来物質に対する接着性分析>
【0098】
実施例2と基本的に同じ実験を行って、ガラスの代わりに骨移植材で広く使用されるBio−OSS(登録商標)(Geistlich Pharma,Inc)及びMBCP(Biomatlante)を使用した。処理条件は次のとおりである:Bio−Oss粒子を10μM濃度のペプチド−FITCコンジュゲートに添加して常温で10分間反応させて、続いて0.05% tween−20を含有するPBS溶液で48時間5回洗浄処理後、共焦点顕微鏡で分析した。(Zeiss LSM-700model with Zen 2011 software,x20)。
【0099】
またインビボ上でペプチドの接着能を検証するために、様々な組織に注入後、組織の薄切片を得て分析した。ペプチドの接着を確認するために、PBS、Cys−またはFITC−コンジュゲートA7−1、またはCysまたはFITC染料を10μM濃度でPBSに溶かした後、10〜20μlの水溶液を局部に塗ったり注射器で注入した。組織内接着誘導時間は2時間に固定して実験を行って、犠牲してから、組織摘出後、PBSで30分ずつ3回洗浄後、組織の薄切片を作って共焦点顕微鏡で分析した。実験を行った組織は、マウスの軟骨、皮膚、ヘアー、皮下脂肪及び眼球を中心に行っって、軟骨の場合、コラーゲナーゼを部分的に処理してエラスティックファイバー構造を露出させた後、強い洗浄後分析した。
【0100】
結果は、
図2A乃至
図2Mに記載されていて、本願に係るペプチドが非生体及び生体由来の様々な物質に接着される可能性があることを示す。本願に係るペプチドの商用化骨移植材への優秀な接着性を示して、特に、プロテオグリカン成分が多量含まれている組織、例えば弾性組織、結合組織そしてコラーゲンまたはヒアルロナン(hyaluronan)を多量含有する組織、そしてイースト、バクテリア細胞壁などに接着親和性があることを示す。
【0101】
また、本願のペプチドは、プロテオグリカンの主成分であるヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヘパリン(heparin)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)等のGAG(glycoaminoglycan)を多量含有する軟骨組織(*)で優秀な接着性を示して、後述する
図4Bの実験結果と一致する。参考としてGAGは、4種類の物質、すなわちヒアルロン酸(hyaluronic acid)、デルマタン硫酸(dermatan sulfate)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、ヘパリン及びヘパラン硫酸(heparin、heparan sulfates)、そしてケラチン硫酸(keratan sulfate)を含む。これらはいずれも事実上アミン基が結合したグルコースまたはガラクトースであるN−アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine)またはN−アセチルガラクトサミン(N-acetylgalactosamine)等で構成されるが、これは本願に係るペプチドがこのような六炭糖に高い親和性を有することを示して、これは本願発明に係るペプチドの標的特異的に作用可能であることを示す。
【0102】
<実施例4.接着性ペプチドを利用した細胞接着性向上効果>
【0103】
本実験に使用された材料は次のとおりである:PBS中の10mMのペプチド溶液(保存溶液、Stock solution);35mm径のプラスチック疏水性細胞培養皿(細胞培養用、Corning);DMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium、細胞培養培地:Hyclone);ウシ胎児血清(fetal bovineserum,Hyclone);及びC2C12(mouse myoblast、細胞、ATCC、CRL−1772);MC3T3−E1(Mouse C57BL/6 calvariacell,ATCC、CRL−2593)及びST2(bone marrow-derived stromacell:EMBO J.7:1337−1343,1983);STO(feeder細胞:ATCC、CRL−1503)、HEK−293(ATCC,CRL−1573)、SaOS2(ATCC,HTB−85)、HeLa(ATCC,CCL−2)、ROS17/2.8、NIH3T3(ATCC,CRL−1658)、RAW264.7(ATCC,TIB−71)、hMSC(Lonza,PT−2501)、hPDL(HPLF)(Sciencell,Cat.#2630)、hDPSC(Cells Tissues Organs 184:105-16方法に基づいて人体組織から分離)、mBMSC(Primary Bone Marrow Stromal Cell from mouse)、MC(PrimaryMouse Calvaria cell)、MEF(Mouse EmbryonicFibroblast)
【0104】
実験方法は次のとおりである。
細胞接着には、ペプチドを予めコートする方法とコートせず細胞培養液に直接添加して培養する二種類の方法で観察し、一致する結果を示した。コート方法を取る場合、PBSまたは、ウシ胎児血清を含まない細胞培養培地に一定濃度のペプチドを添加して、常温、30分間コートした後、溶液を除去した後、細胞を添加して多様な時間にかけて接着を測定した。また、培養培地にペプチドを添加する場合、細胞を懸濁する時、一定水準のペプチドを共に添加してよく懸濁した後培養皿に移した。細胞接着測定は次の通りに行われた。細胞接着は、ペプチドを添加しなかった場合を陰性対照群に、PBSそしてpoly−L−lysinをコートした場合を陽性対照群にして光学顕微鏡を介して通常の観察、アクチンフィラメント構造及び粗い細胞膜境界形態観察のために、F−actin染色及び共焦点顕微鏡分析、そして接着に対する定量化のために細胞の消費量またはDNA量を測定した。消費量は、CCK−8(Dojindo)を利用して、吸光度を測定して、DNA量は、ピコグリーン定量キット(Picogreenassay kit(Life Technologies))を製造者の方法のとおり利用して蛍光値を測定した。接着された細胞だけを定量化するために、接着されなかった細胞は捨ててPBSでさらに2回洗浄して表面に付いている細胞だけを消費量またはDNAを定量に使用した。
【0105】
結果は、
図3A乃至3Fに記載されている。これに示されたように、本願に係るペプチドは、種々の由来の付着依存的細胞の接着、例えば、一次細胞、確立された細胞及び解凍された細胞、フィーダ細胞の接着に有用に使用され、既に使用された物質であるPLLと比較して段違いにて優秀な効果を示した。
【0106】
<実施例5.接着性ペプチドの接着機序究明>
【0107】
本実施例では本願に係るペプチド接着能機序を究明しよう下記のとおり実験を行った。
【0108】
(1)タンパク質関与の有無
まず、タンパク質合成を阻害すると知られているEDTA、シクロヘキサミド(CHX)(10μM、37℃1時間)またはGAGで細胞を処理した後上述したような接着能を実験した。
【0109】
結果は、
図4Aに示されたとおり、EDTAまたはCHXを処理した場合にも接着能に差がないことが明らかになった。すなわち、A7−1による細胞接着が細胞表面の電解質(EDTA処理結果)でも新しいタンパク質合成(CHX処理結果)を必要としない反面、血清によっては初期に阻害が起きることを示す結果で、これは血清内存在する多くの種類のGAGがペプチドに一次的に結合したのが原因と判断される。血清内存在するGAGの濃度変化は、様々な疾患の発生と関連性があると報告された(Volpi N.etal.,Biochim Biophys Acta.(1995)Vol.18:49-58; Komosinska-Vassev K.et al.,ClinChim Acta.(2003)Vol.331:97-102; Anttonen A.et al.,LungCancer.(2003)Vol.41:171-7; Fuster M.M.et al.,Nat RevCancer.(2005) Vol.5:526-42; Hong Lu etal.,2010.Glycobiol.Insights Vol.2:13-28; Anower-E-KhudaM.F.et al.,Glycobiology.(2013)Vol.23:865-76; IbrahimS.A.et al.,J.of Medical Lab.& Diagnosis(2013)Vol.4:8-20)。従って、本願に係るペプチドは新規な、GAG結合性/付着性があるペプチドとして血液内GAG濃度を調節する新しいペプチドまたはGAGを標的化する伝達体として有用に使用できる可能性があることを示す。また、本願に係るペプチドは、細胞膜タンパク質との相互作用を介して接着能を増加させるのではないことを示している。
【0110】
(2)非タンパク質性物質関与の有無
次は、非タンパク質物質の関与の有無を調べて、その対象に細胞表面の細胞外メトリックス(Extracellualrmatrix,ECM)に多量含まれているプロテオグリカンとの関連性を分析した。
【0111】
−プロテオグリカンに対するペプチドの分子親和力−
プロテオグリカンを構成する主な成分であるヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヘパリン(heparin)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、デルマタン硫酸(dermatansulfate)、ケラタン硫酸(keratan sulafate)等のグリコアミノグリカン(glycoaminoglycan)(GAG)は、ECMを構成する主な成分でもあるが、ECM構造の保存性(structuralintegrity of ECM)を維持して細胞の形態を維持すると共に、細胞の接着、細胞の極性(cellpolarity)を調節する。ECMが有するこのような機能は、環境に対する細胞の適応を誘導すると共に複雑な一連の代謝過程と直接的に関連していて、様々な生理学的役割を調節する複合的機能を有する。プロテオグリカンに対する本願ペプチドの分子親和力は、(i)アフィニティークロマトグラフィー、(ii)精製されたGAG成分を利用した競争的結合を介した細胞接着調査、(iii)GAG成分を含むECMを特異的に分解する酵素を処理してペプチドによる細胞接着促進の抑制調査、以上の三つの方法を介して検証した。酵素処理の場合、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase(Sigma))、コラゲナーゼ(collagenase(Sigma))を処理した。精製されたGAGは、hyaluronan(Sigma)、コンドロイチン硫酸(chondroitinsulfate(Sigma))、ヘパリン(heparin(Sigma))、ヘパラン硫酸(heparan sulfate(Sigma))を各々使用した。
【0112】
(i)アフィニティークロマトグラフィーを利用したペプチド−ヘパリンまたはペプチド−N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)との相互作用測定
【0113】
クロマトグラフィーのために、ヘパリン−アガロースビーズ(heparin-agarosebead(Biovision))そしてGlcNAc−アガロースビーズ(Sigma)を各々使用した。PBS−T溶液に10ngのFITCで標識されたペプチド(F−ペプチド)をBSAで予めコートされたヘパリン−アガロースビーズそしてGlcNAc−アガロースビーズと常温で10分間反応させた後、PBS−T溶液で3回洗浄後、再びPBS溶液に懸濁した後、蛍光を測定した。競争的結合を誘導するために、FITCが標識されないペプチド(Cold)を各々1:1、1:10(10倍)そして1:100(100倍)だけ添加した後、ビーズと反応させた後、蛍光を測定した。陰性対照群としてFITC染料だけを各ビーズに反応させて測定して、ビーズをPBSに懸濁した後、マイクロプレートに移して測定される蛍光値をブランクとして使用した。
図4Bに示された結果は、ヘパリンまたはGAGの構成成分であるGlcNAcにペプチドが高い親和力を有していることを示す。
【0114】
(ii)精製されたGAG成分を利用した競争的結合を介した細胞接着能調査
【0115】
図4Bの結果は、競争的方式によるGAG処理した本願のペプチドの接着能阻害を示して、本願に係るペプチドの接着能は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、そしてコンドロイチン硫酸の添加により阻害された。
【0116】
(iii)GAG成分を含むECMを特異的に分解する酵素を処理してペプチドによる細胞接着促進の抑制:ECMを構成するプロテオグリカン(proteoglycan)だけでなくコラーゲンなどのフィブリルタンパク質はGAGを含む。GAGを含むコラーゲンを加水分解したりGAGの一つであるヒアルロナンを加水分解するヒアルロニダーゼを処理してペプチドによる細胞接着促進能を調べた結果、いずれも細胞接着能力が阻害されることが明らかになった。これもペプチドによる細胞接着促進がGAGとの相互関連があることを示す証拠である。
【0117】
実験方法は次のとおりである:(i)精製されたGAG成分処理による競争的抑制は、トリプシンで処理された細胞懸濁液に各GAGを5mg/mlになるよう添加して37℃で10分間反応後、ペプチドがコートされた培養皿に移してから30分後接着された細胞に対するDNAを定量化して接着程度を測定した。DNA定量は、ピコグリーン定量キット(picogreenassay kit(Life Technologies))を利用して行った;(ii)コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ処理による細胞接着調査は、トリプシンで処理された細胞をウシ胎児血清を含まない培地に懸濁させてから各酵素を添加後37℃で30分間反応した。酵素は10000unit/10
3cell水準で処理して、酵素反応後EDTA及びウシ胎児血清を添加して酵素の活性を不活性化させたてから遠心分離後、新しい培地に懸濁した後、ペプチドがコートされた培養皿で2時間培養した。接着された細胞の測定は、ピコグリーン定量(picogreenassay)を行う前PBSで2回洗浄後、接着された細胞だけ回収してDNAを定量化した。
【0118】
結果は、
図4Bに記載されている。結果は、本願のペプチドがプロテオグリカンに対して高い親和力があることを示す結果で、軟骨を形成する組織構成成分は、組織再生分野で応用価値が非常に広くて成形を含む様々な臨床施術に直接的に活用される物質に対する接着能を示すものである。従って、これは本願のペプチドが軟骨を含むプロテオグリカン層との優秀な結合能は、軟骨再生、薬物伝達などに広く活用できる潜在的物質であることを示す。
(3)RGDと比較
【0119】
付着依存的細胞(MC3T3−E1)にA7−1ペプチド(10μM)または、これと共に溶解性RGDsペプチド(0、10、100及び1000μM)を試験チューブで細胞と共に10分間反応して競争的に処理してから培養皿に移した後、再び10分間恒温器で接着を誘導した。10分後再び培養液を除去してPBS溶液で2回洗浄して残っている未接着状態の細胞を除去して、ペプチドを含まない新しい培地とCCK−8(Dojindo)を混合して恒温器で1時間反応後、450nmで吸光度を測定した。CCK−8と混合された培地をブランクにして吸光度を測定した。
【0120】
結果は、
図4Cに記載されている。これに示されたとおり、RGDSペプチドを単独で処理した場合、濃度依存的に接着が減少することが明らかになった。一方、A7−1とRGDペプチドを競争的に処理した場合、A7−1非処理群では水溶性RGDを処理する場合インテグリンに結合して底に(基質に)対する接着能を有意に減少させるが、A7−1処理群ではRGDを処理するにもかかわらず細胞の接着に全く影響を及ぼさないことが示され、これはA7−1は、RGDが作用するインテグリンを介した付着依存的細胞接着とは別の細胞接着促進機序を有することを示す。
【0121】
このような結果は、RGDsペプチドを利用した細胞接着または組織再生技術がすでに良好に確立されているが、これとは異なる機序で、技術的差別性があることを示して、またRGDsを利用した商用化技術は、効率性が良くないと知られていて、これに代わることができる優秀な技術であることを示す。
【0122】
<実施例6.接着性ペプチドを利用した胚芽幹細胞接着性向上効果>
【0123】
ペプチドを100μM水準で培養材質にコートしたりナノ構造を製作してマウス人工多能性幹細胞とヒト胚芽幹細胞接着及び全分化能を下記のとおり調べた。
【0124】
ヒト胚芽幹細胞の場合、hESC−media(当該分野で一般的に使用される培養液組成)、mTeSR(hES専用培地、Stem cell technology社から購入)、Essential 8(hES専用培地、Gibco BRL社から購入)、そして各々に対して10ng/ml bFGFだけを添加した血清排除培養液(血清によって細胞の接着能力が抑制される現象を防止するための培養液条件)条件で培養して従来の様々な培養技法に対して相互互換性があるか否かを共に分析した。また、細胞の場合、コロニー状態の培養技法と0.25%トリプシン−EDTAを処理して単一細胞を利用した培養技法で分析した。フィーダ−フリー(feeder−free)に対するESCまたはiPSC培養効果を検証するために、フィーダ−フリー(feeder−free)条件でESCまたはiPSC培養効果を検証するために、比較のための陽性対照群としてマトリゲル(Matrigel(登録商標)(hESC))及びゼラチン(gelatin(miPSC))が使用された。陽性対照群としての支持細胞(Feeder cell)での培養も行った。
【0125】
該当細胞を
図5Aに記載された胚芽幹細胞の全分化能(Stemness)の指標でOct4遺伝子の活性を測定できる構造を有するプラスミド(Szabo et al.,2002,Mechanismsof Development Vol.115:157-160)を利用して蛍光顕微鏡で分析した(
図5)。また、全分化能を示す他のマーカーであるAlp及びNanog遺伝子に対する発現を、これに特異的な抗体を使用して染色して蛍光顕微鏡で観察して、hES細胞培養で細胞の接着性向上の有無も調べた(
図6)。
【0126】
結果は、
図5及び6に記載されている。
図5に記載された通り、本願のペプチドは、予めコート(precoated)されるが、または培養液に混合(Mixed)された方式で追加された、二つの場合共にiPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった(
図5B)。さらに、細胞培養4日目の場合も本願に係るペプチドは、iPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが明らかになった(
図5C)。また、
図6A及び
図6Bに記載された通り、本願に係るペプチドは、予めコートまたは培養液混合される場合共に、iPSCの接着を媒介して全分化能も維持させることが示されて、hESCを利用した実験でもフィーダ細胞またはマトリゲル(Matrigel)等の外部環境的変化なくても細胞の接着を媒介して全分化能も維持させることが示された(
図6C)。
【0127】
<実施例7.接着性ペプチドとタンパク質のバイオコンジュゲーション>
【0128】
本実験に使用された材料は下記のとおりである。
【0129】
実施例1で合成されたペプチドは、10μM(PBS中)濃度で使用;1.9cm
2面積のプラスチック細胞培養皿(24-well plate、Corning社製品);DSS(Disuccinimidyl suberate,C
16H
20N
2O
8,Thermo Scientific Inc.);組換えヒトBMP2(rhBMP2,BDbioscience);DMSO(Dimethyl sulfoxide、DSSを溶かす溶媒、Sigma-Aldrich社);Tris−HCl、pH7.0(Stopsolution);PBS(phosphate buffered saline,reactionsolution)。
【0130】
分析概念は、図式的に
図7Aに図示されている。
図7Aを参照すると、架橋剤を使用して本願のペプチドに目的する生活性を有する様々な物質、例えばBMPのような治療用タンパク質を連結して使用すると、本願ペプチドの接着性により、処理した部位に治療用タンパク質の濃度を高めることができて、治療効果を最大化することができる。
【0131】
実験方法は次のとおりである。ペプチド−rhBMP2共有結合(Cross−linking)反応は、基本的に使用された架橋連結子(Cross−linker)製造社の方法に従って行われ、要約するとその過程は次のとおりである:(i)ペプチドコート:細胞培養皿に200μlのペプチド溶液(PBS溶液中の10μMの前記実施例1のペプチド)を分注して4℃で18時間吸着させた;(ii)DSS−BMP2複合体形成:rhBMP2に対して20molar過量のDSSを100μlの反応溶液で1時間共有結合を誘導した。1.9cm
2面積当たりrhBMP2は300ng水準になるべく調整して、この時対照群で各々DSS、rhBMP2、DSS−rhBMP2をコートして使用したところ、この場合いずれも培養皿表面材質に吸着力がないため、洗浄過程で相当量消失することを観察し、従ってこの場合陰性対照群として使用された;(iii)ペプチド−DSS−BMP2複合体形成:100μlのDSS−BMP2複合体を予めペプチドでコートされた皿に注意して添加した後(overlay)、4℃で24時間反応;(iv)反応停止:1M Tris溶液を200μl添加して常温で15分放置することによって共有結合後残存するDSSを全て中和させた;(v)洗浄:PBS溶液で10回洗浄後、細胞添加前までウシ胎児血清が含まれないDMEM培地を添加した後37℃に予め放置した;(vi)C2C12懸濁液準備及び造骨細胞分化:4x10
5個のC2C12細胞を300μlの2%ウシ胎児血清を含むDMEM培地に懸濁した後、細胞を準備した。ペプチド−DSS−BMP2複合体がコートされた皿に予め含まれていたDMEMは除去して、300μlの細胞培養液を添加して、5%CO
2/37℃条件の培養器で48時間細胞の分化を誘導した;(vii)細胞分化測定:C2C12細胞の造骨細胞への分化能はアルカリホスファターゼ(Alkaline phosphotase)の活性を細胞染色法で測定した。
【0132】
結果は
図7Bに記載されている。これに示された通り、組換えBMP処理群(rhBMP2)または架橋剤処理群(CL)と比較してAlp活性が増加して、これは本願のペプチド処理によって骨分化が促進されたことを示す。
【0133】
<実施例8.本願に係るペプチドの安全性分析>
【0134】
本願に係るペプチドの安全性を造骨細胞(MC3TC−E1)を利用してテストした。実施例1で合成した本願に係るペプチドA7−1を造骨細胞に0.1μM、1μM、10μM及び100μMの濃度で処理した後、増殖(
図8A)、生存(
図8B)及び分化能(
図8C)に及ぼす影響を測定したもので、分化能の場合、MC3T3−E1細胞株またはC2C12細胞株を使用して、前記細胞株を骨形成分化培地(6日間処理)とBMP2(rhBMP2、10ng/ml、3日間処理)で刺激を与えて分化を誘導して、分化効果は、細胞染色を介して行われた。結果は
図8A乃至8Cにあり、濃度に応じた増殖率、生存率、分化の可否に影響を及ぼさないことが明らかになった。
【0135】
また、本願に係るペプチドの安全性をマウスの単核球(monocyte)を利用してテストした。マウスの骨髄から分離した単核球に本願に係るペプチドで処理してから加えた後、炎症誘導が発生するか否かを調べた。陽性対照群でLPSを処理して、24時間後炎症誘発因子マーカーであるIL−1β(interleukin-1β)、Tnf−α(Tumor necrosis factor-α)、iNos(Induciblenitric oxide synthase)、Cox−2(cyclooxygenase-2)を各々リアルタイムRT−PCR方法を使用して測定した。その結果、本願に係るペプチドは炎症を誘発しないことを確認した。結果は
図8Dにあり、本願に係るペプチドは炎症を誘発しないので、生体内使用が安全した物質と判断された。
【0136】
<実施例9.接着性ペプチドを利用した一次神経細胞接着能向上及び培養>
【0137】
本実施例では、神経細胞接着及び培養に及ぼす影響を既存の接着性ペプチドと効果を比較した。ペプチドを100μM水準で培養材質にコートしたりナノ構造を製作してマウス胚芽脳組織とラットの脊髄から神経由来細胞を得て接着された細胞を光学顕微鏡で分析してCCK−8を介した代謝を測定して分析した。この時、陽性対照群としてLamininとpoly-L-ornithin(Sigma)を混用して製造者の濃度及び方法の通りコートして使用して、細胞接着を定量化するために(各時間に対して)接着しなかった細胞は、PBSで洗浄して除去して、培養培地と細胞の代謝を測定するCCK−8溶液(Dojindo)を混合して添加した後、1時間培養後450nmで吸光度を測定した。
【0138】
結果は
図9に記載されている。
図9Aは、脊髄由来の神経細胞を既存のペプチドでラミニン(laminin)とポリ−L−オルニチン(poly-L-ornithin)とでコートされた培養皿及び本願の一実施形態に係るA7−1でコートされた培養皿を使用して培養した後、各時間帯別にCCK−8を分析した結果であり、A7−1がコート(吸着)された条件で接着能が大幅の差を示した。
図9Bは、培養4日後光学顕微鏡を介して比較観察した結果であり、同じ量の細胞を使用したが、接着の程度はA7−1で最も優れている。
図9Cは、本願の一実施形態に係るA7−1でコートされた皿で培養された一次培養細胞が神経由来細胞であることを神経細胞に特異的マーカーを利用して検証した結果で、神経標識タンパク質(GFAP、MAP2及びNestin)を免疫蛍光法で染色した後、共焦点顕微鏡を介して分析した結果である。前記結果は、本願に係るペプチドが既存のものと比較して格段に優秀な接着能を有することを示す。
【0139】
<実施例10.ヒトMSC(MesenchymalStem Cell)の接着能向上効果>
【0140】
A7−1ペプチドを100μM水準でガラス材質の滅菌されたカバースリップ(coverslip)コートした後、MSC細胞(MesenchymalStem cell)を6時間培養した後、細胞の接着進行過程(adhesion progression)をアクチン繊維に対する蛍光染色試薬であるローダミンファロイジン(RhodaminePhalloidin)染色剤(Life TechnologyCat.#R415)と細胞の核(DNA)を染色するDAPI(Sigma D9542)染色剤を各々使用して細胞を染色した後、共焦点顕微鏡で分析した。この時、陰性対照群でA7−1ペプチドをコートしなかったカバースリップ(coverslip)に細胞を接着して比較した。結果は、
図10に記載されている。
図10Aで陰性対照群は、依然として接着初期段階であるアクチンリング(actin-ring)形成が多数をなしているが、A7−1処理群の場合、既にその段階をすぎてストレスファイバー形成が多数の細胞で観察され、
図10Bは、このような観察結果を定量したグラフであり、
図10Cは、細胞接着に係る幾何学的様態(geometric shape)(cellaspect ratio:細胞の横/縦の比、1の場合完全な原形であり接着過程の最も初期状態で示す。Prager-Khoutorskyet al.,2011.Nature Cell Biology 13,1457-1465参考)を測定して示した結果であり、A7−1の処理群で格段に成熟した接着能を示す。
【0141】
<実施例11.様々な配列のペプチドを利用した接着能実験>
【0142】
下記表1のような配列及び名称を有するペプチドを実施例1で共に合成した後、ヘパリンまたはN−アセチルグルコサミン(GAG)に対する接着能を実施例4に記載された方法と同じ方法を利用して測定した。
【0144】
結果は、
図11に記載されている。これに示されたように本願のペプチドは、第1領域(化学式)、第2領域(化学式)及び第3領域(化学式)が様々な組み合わせで並べられたり、または各領域の配列が本願に定義されたようなアミノ酸で置き換えられた場合にも効果を示すことが分かる。
【0145】
<実施例12.様々な配列のペプチドを利用した接着能実験II>
【0146】
表1にA配列と命名されたRQLVVKFRALPC(配列番号17)配列を基準に置き換えられる残基の側鎖の化学的性質、大きさ、電荷的特性及び/または表1の実験結果等を考慮して、次の表2のような配列を生成してその結果を横のカラムに表示した。太字で表示された部分が置き換えられた部分であり、実施例11のRQLVVKFRALPCを利用した実験結果と比較して予測される効果の程度を+の個数で表現した。
【0148】
前記表2の配列のカラムで太字で表示された部分がA配列と比較して置き換えられた部分で、接着能カラムでボールド体で表示されなかった結果は、実施例12及び
図11の結果を根拠に表示したもので、ボールド体で表示された文字は置き換えられる残基の特徴及び本願に開示された実験結果を根拠に予測された結果である。
【0149】
以上、本願の例示的な実施例に対して詳細に説明したが、本願の権利範囲はこれに限定されず次の請求範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の種々の変形及び改良形態も本願の権利範囲に属する。
【0150】
本発明で使用されるすべての技術用語は、特に定義されない限り、本発明の関連分野で通常の当業者が一般的に理解できるような意味として使用される。本明細書に参考文献と記載されるすべての刊行物の内容は本発明に導入される。