(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の目的は、材料を特徴付けるための方法を提供することであり、これによって、曲げの間の材料の実際の応答を決定するため、すなわち、曲げの間の材料の応答を、材料の実際の応答を予測するために曲げの間の最大の印加される力が使用される曲げ試験(VDA 238−100標準試験など)を使用して得られたデータに基づく予測よりもより正確に予測するために、この方法が使用されてもよい。
【0016】
この目的は、以下の工程を含む、材料を特徴付ける方法によって達成される。
a.2つの平行なダイ支持部の間に単純に支持される材料の試料を提供する工程であって、前記支持部が同一のエッジ形状を有する工程と、
b.曲げナイフを介して外力Fを提供することによって試料を曲げる工程であって、前記力はダイ支持部の中心によって形成された平面に垂直な平面内で作用し、またこれはダイ支持部の間の中心線において材料と交差し、前記曲げナイフが少なくとも試料の長さ全体に延在する工程と、を含み、
c.方法は、以下の式[1]を使用して材料の断面モーメントM、を計算する工程を含み、
【数1】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Fは印加される曲げ力であり、
L
m(β
1)はモーメントアームであり、また
β
1は曲げ角度である。
【0017】
したがって、方法は、断面モーメントを計算するために曲げ角度を使用する工程によって特徴付けられた単純な3点曲げ方法である。
【0018】
「単純に支持される」によって、試料の各々の端部が自由な回転(または移動)をすることができ、また各々の端部支持はいかなる曲げモーメントも有しないことが意味される。これは典型的には、外力が印加されるときにナイフによって生成されたモーメントは曲げが行われる中心線に沿って生成されたモーメントによって平衡され、またプレートとローラーとの間の接触点においていかなる追加的な曲げまたは力の消散も行われないように、試料を平行なローラーを用いて支持することによって達成される。
【0019】
しかしながら、単純に支持された試料を達成するための代替的なやり方は、曲げの間のダイ支持部にわたる試料の端部の本質的に摩擦のない移動を確保するために潤滑剤を使用することを含む。この実施はマイクロ曲げ試験(すなわち、曲げ試験のダイ幅が1cmより小さく、さらに数μmまで小さい場合があり、ローラーをダイ支持部として使用することは可能でさえない場合がある)を実行するために使用される装置に特に良好に適合している。
【0020】
「同一のエッジ形状を有するダイ支持部」によって、試験の間に曲げナイフが動くときに、第一のダイ支持部と曲げナイフとの間に印加される曲げモーメントが、曲げナイフと第二のダイ支持部との間に印加される曲げモーメントとが正確に適合するように、ダイ支持部が相互に効果的に鏡面対称であることが意味される。典型的には、これはローラーなどの同一のダイ支持部を使用することによって達成されるが、摩擦が十分低いという条件で支点(すなわち、尖った頂部)または丸みのあるエッジ形状(
図45に示すような)などの他の支持形状を使用することができる。
【0021】
ダイ支持部のエッジ形状は、典型的には一定の半径を有する。これは曲げの間の摩擦のない動きを容易にし、かつR
dが一定のままになるのでモデルを単純化する。ダイエッジにおいて一定の半径を有する非ローラー支持部の例が
図45のマイクロ曲げ装置で示される。
【0022】
試料はダイ開口部の幅にわたって一定の断面を有することが好ましい。
【0023】
試料はダイ開口部の幅にわたって一定の厚さを有することが好ましい。
【0024】
管などの中空試料は、3点曲げ試験の間に時として座屈する可能性があり、これは力/変位プロファイルの不連続につながる。したがって、典型的には、試料は中実(すなわち、中空でない)断面を有する。
【0025】
典型的な試料のタイプとしては、バー、梁、及びプレートなどのように一定の断面を有するものが挙げられる。プレートは特に好ましい。
【0026】
したがって、本開示は、以下の工程を含む、材料を特徴付ける方法に関することが好ましい。
a.2本の平行なローラーの間に単純に支持される材料のプレートを提供する工程であって、前記ローラーが同一の直径を有する工程と、
b.曲げナイフを介して外力Fを提供することによってプレートを曲げる工程であって、前記力は両方のローラーの中心によって形成された平面に垂直な平面内で作用し、かつこれは両方のローラーの間の中心線においてプレートと交差し、前記曲げナイフは少なくともプレートの長さ全体に延在する、工程と、を含み
c.方法は、以下の式[1]を使用して材料の断面モーメントM、を計算する工程を含み、
【数2】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Fは印加される曲げ力であり、
L
m(β
1)はモーメントアームであり、また
β
1は曲げ角度である。
【0027】
曲げ角度β
1は、外力による曲げの間にダイ支持部(例えば、ローラー)のうちの1つとの接触点において試料(例えば、プレート)の表面法線によって動かされる角度である(すなわち90°(またはπ/2ラジアン)から試料(例えば、プレート)の開始平面と曲げられた平面との法線ベクトルの間の鋭角を引き算したものであり、開始平面は2つの平行なダイ支持部(例えば、ローラー)の中心線によって形成された平面に対応し、曲げられた平面は1つのダイ支持部(例えば、ローラー)の中心線と、ダイ支持部(例えば、ローラー)と試料(例えば、プレート)との間の接触線とによって形成された平面に対応し、この平面は、ダイ支持部(例えば、ローラー)に接触する点における試料(例えば、プレート)の法線を含む。
【0028】
角度β
1は、VDA 238−100標準、ISO 7438:2016及び同様のものなどの曲げ試験からの標準式を使用する、曲げのセットアップの幾何学形状から容易に計算することができる。完全性のために、β
1を計算する好適な式を以下に提供する。
【数3】
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式中、
L
0はダイ幅の半分であり、
Q=R
k+R
d+tであり
R
kはナイフ半径であり、
R
dはダイエッジの半径(ローラー半径)であり、
tは試料厚さであり、
Sは曲げナイフがこれを通して変位する垂直距離である。
【0029】
当業者には明白であろうように、式[0]の最終項(180/π)は、逆正弦関数からの結果をラジアンから度へと単に変換しているだけである。この項はスカラーであり、そしてβ
1を計算するうえで決定的ではない。
【0030】
β
1を計算するさらなるやり方は、以下の式を使用する。
【数4】
[この文献は図面を表示できません]
【0031】
L
m(β
1)は、角β
1におけるモーメントアームである。これは、真っ直ぐなフランジを仮定して、ナイフ及びダイのそれぞれの表面と角β
1との交点の間の水平距離に対応する(
図3a及び
図31を参照のこと)。
【0032】
当初は水平であるプレート(またはより一般的には試料)については、これはプレート(またはより一般的には試料)のローラーのうちの1つとの接触点における表面法線と垂線との間の角度と同等である。
【0033】
好ましい実施形態では、この目的は、VDA 238−100標準または類似の摩擦のない曲げ試験により曲げ試験を実行する工程を含む方法によって、すなわち、プレート曲げ試験を該標準に記述される通りに、該標準に記述される試験機器を使用して、該標準に記述されるやり方で試料を調製して、該標準に記述される試験条件下で、該標準に記述される手順を使用して、実行し、かつ標準に記述されるパンチストロークから曲げ角度β
1(VDA 238−100標準からの曲げ角度αの半分に等しい)を判定することによって、達成される。方法は、以下の式[1]を使用して材料の断面モーメントM、を計算する工程も含む。
【数5】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Fは印加される曲げ力であり、
L
m(β
1)はモーメントアームであり、また
β
1は曲げ角度である。
【0034】
次いで、この計算された断面モーメントMは、材料の実際の応答を予測するために使用されてもよい。
【0035】
材料の断面モーメント(通常VDA 238−100標準試験などの試験を使用して決定される印加される力ではなく)を計算することによって、その結果として流動応力σ
1すなわち、曲げられた材料のおおよその断面応力プロファイルのプロファイル)が以下の式[2]を使用して決定されてもよい。
【数6】
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式中、主歪みε
1は[3]から計算される。
【数7】
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式中Bは曲げの長さ(すなわち、試料(例えば、プレート)のダイ支持部に平行に延びる寸法での長さ)であり、tは試料厚さ(単位:mm)である(
図3a及び
図3bを参照のこと)。β
2は、該材料が曲げられる真の角度(単位:度)である。
【0036】
本明細書で使用される場合、
試料(例えば、プレート)の幅Lは、ダイ開口部を横切って(すなわち平行なダイ支持部の対の間に)延びる寸法であり、
試料(例えば、プレート)の長さBは、ダイ支持部と平行に延びる寸法であり、
一方で、試料(例えば、プレート)の厚さtは、曲げの間にナイフが移動する方向に延びる寸法である。
【0037】
したがって、「少なくとも試料の全体長さに延在する曲げナイフ」によって、いかなる座屈もなしに均一な曲げが形成されるように、曲げナイフが試料全体にわたって力を行使する能力を有することが意味される。
【0038】
「ダイ支持部」によって、試料(例えば、プレート)と接触するダイのエッジが意味される。本開示では、ダイ支持部は典型的にはローラー(すなわち、軸を中心として自由に回転する円筒)の外側のエッジである。2つのダイ支持部は、ダイ開口部にわたる均一な距離を確保するために平行である。
【0039】
主歪みε
1に対する上記の式[3]は、曲げられる材料が弾性的に変形する場合正確であることがわかってきた。しかしながら、材料がその弾性限界を超える場合には、典型的には塑性変形が発生する。これらの条件下では式[3]は正確ではなく、その代わりに以下の式[4b]を使用するべきである。
【数8】
[この文献は図面を表示できません]
【0040】
本明細書で使用される際、式が[Xa]または[Xb]または[Xc]等として表現される場合、これらは実際には同等であり、かつ交換可能であり、値は単に代替的なパラメーターを使用しているだけである。典型的には、[Xa]/[Xb]等として表現される式は、一般的な記述では[X]として参照されることになる。
【0041】
式[4a]及び[4b]は等価であるが、大きい歪みに対して一般的かつ有効なので、実際には式[4b]が使用される。
【0042】
式[4b]は弾性変形と塑性変形との両方に対して正確であり、そのためすべての状況で主歪みε
1の正確な値を得るために式[3]の代わりに使用されてもよい。これらの式では、
Rは材料とナイフとの間の接触点における曲率の形状の半径である。
L
N(β
1、β
C)は、実際のモーメントアーム、またはナイフにおける実際の接触点とダイ半径との間の水平距離(すなわち、ナイフ及びダイが曲げられるプレートに接触するところの間の距離)である。
β
Cは、ナイフと材料との間の接触角(すなわち、曲げナイフの表面に接触する材料に対する角度)である。
Uは、式[5a/5b]を使用して計算されたエネルギーである。
【数9】
[この文献は図面を表示できません]
【0043】
式[5]では、
Sは曲げナイフがこれを通して変位する垂直距離である。
β
2は試料が曲げられる真の角度である。
【0044】
エネルギーUは、曲げの間に材料によって吸収される弾性エネルギー及び塑性エネルギーに対応する。実際には、曲げの間に印加される力及び曲げナイフの変位は容易に測定されうるので、これは典型的には式[5a]を使用して計算される。
【0045】
式[4b]から、以下の関係も見ることができる。
【数10】
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【0046】
本開示による方法は、材料の曲げに対する応答のすべての部分を、たった1つの単純な曲げ試験を使用してその外側表面からその中心までのその厚さ全体を通して決定することができるようにする。
【0047】
本開示による方法は、いつ材料が塑性歪みの局所化を呈するかを示すためにも使用されてもよい。本開示による方法を使用してキンキングも予測される場合がある。
【0048】
本開示は、VDA 238−100標準などの標準試験は材料の曲げの実際の応答を正確に予測しないという洞察に基づく。VDA 238−100標準試験を使用して実行された実験は、VDA 238−100標準試験によって決定された最大曲げ力を上回ったときでさえ、いかなる金属材料の欠陥も発生しなかったという事例を含む。延性材料については、曲げの間に印加される曲げ力(VDA 238−100標準試験におけるような)は常に最大レベルに達し、その後、角速度の減少に起因して減少することがわかってきた(これは理論的に実証することができる)。断面モーメントMの決定(そして印加される曲げ力Fは決定しない)は、したがって材料の実際の曲げ応答のより正確な予測を提供する。
【0049】
さらに、本開示の方法論を使用して、導関数によってその極値を見出すことによって自然最大力が発生する時の角度位置を決定することができる。
【数11】
[この文献は図面を表示できません]
【0050】
したがって、一定のモーメントMを仮定すると、断面がその定常状態レベルに達した時、
【数12】
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式中、L
0=ダイ幅の半分(すなわち、ローラーの中心間の距離の半分)、R
d=ダイのエッジ(ローラー)の半径、R
k=ナイフの半径、そしてβ
Fmaxは、F
maxにおける曲げ角度である。
【0051】
次いで、F
maxは以下のようになる。
【数13】
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【0052】
おおよその最大曲げモーメントは以下のように見積もられる。
【数14】
[この文献は図面を表示できません]
式中、B=曲げの長さ(すなわち、試料の曲げられる長さ、
図3bを参照のこと)、t=厚さ、そしてR
m=最終的な強度である。
【0053】
断面モーメントが一定という条件を仮定すると、自然のFの最大値に対する角度位置は試験装置の幾何学形状のみに依存することが本明細書で示される。しかしながら、材料がモーメント硬化挙動を示す場合、自然のピーク負荷は若干後に現れることになる。
【0054】
本開示の方法を使用すると、曲げ試験の間に材料が最大自然力を通過したときに操作者は情報を受けることができる。一部の事例では、すなわち、その延性に依存して、強度がおおよそ800MPa(例えば、800〜1000MPa)のレベルまで(または、第三世代鋼に対してはさらに高いレベルに対してさえ)の軟鋼に対しては、曲げ試験での材料の明白な欠陥(すなわち、曲げ試験の間に印加される力が下がる)以前にこの最大自然力に達する場合があり、本開示の方法論の材料の曲げ特性を決定する上で、標準の方法論を使用しては別の方法で導き出すことができない有用性を示す。VDA 238−100試験などの標準方法論の最大力を決定するうえでの欠陥は、印加される力及び曲げ角度の非線形性に起因して起こり、これは本開示の方法論を使用して補償される(下記の実施例を参照のこと)。
【0055】
本開示による方法は、VDA 238−100などの標準試験と置き換えることを意図しないが、これらを補完するものであることに注目すべきである。また、従来の空中曲げ試験に対して、ナイフ半径と材料の厚さの比率、すなわちR/t比率に関して推奨される材料の曲げ性の限界決定に対する必要性もまだある。しかしながら、その構造に関連して曲げの間の材料の挙動を調査できるようにする本開示による方法などの補完する方法に対する必要性もある。本開示による方法は、すなわち材料(特に金属材料)の中のキンキング傾向または不均一性を検出及び解析できるようにする。
【0056】
本開示の実施形態により、方法はβ
2及び計算された断面モーメントMのグラフをプロットし、モーメント曲線の弾性部分の傾きを決定することによって材料のヤング率Eを見積もる工程を含む。これにより傾きは以下のようになる。
【数15】
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式中Iは慣性モーメントであり、またE’は平面歪み内のヤング率であり以下により得られる。
【数16】
[この文献は図面を表示できません]
式中νはポアソン比である。鋼に対しては、これは以下のように表すことができる。
【数17】
[この文献は図面を表示できません]
【0057】
より一般的には、ヤング率は式[13](式[55]に基づく)を使用して示されてもよいことがわかった(
図16bを参照のこと)。
【数18】
[この文献は図面を表示できません]
【0058】
次いで、式[11]を使用することによって、これを有効歪み(E)に対する有効ヤング率へと変換することができる。
【0059】
本開示の実施形態により、計算された断面モーメントM、または計算された流動応力σ
1、または見積もられたヤング率E’、または比率M/M
e、または計算された平面歪みε
1は、材料から成る製品を最適化するために使用され、すなわち、計算された断面モーメントM、または計算された流動応力σ
1、または見積もられたヤング率E’、または比率M/M
e、または計算された平面歪みε
1は、特定の曲げ力に耐えるためにこの材料を利用する製品をどのように寸法決定、構築、及び/または設計するべきかを決定するために使用され、これによってその特定の用途に対する適合性が確かめられる場合がある。
【0060】
本開示の方法論は原理的には幅広い材料に対して適用可能であり、また本開示はVDA
238−100標準に関連して提示されるが、本開示を金属材料に限定された観点から見るべき理由はない。当業者には明白であろうように、本明細書で開示される方法論は、材料の構造的特性を弾性(すなわち、可逆)変形及び塑性(すなわち、不可逆)変形の両方の下で調査できるようにする。したがって、原理的には本明細書で開示される方法論を使用して任意のタイプの構造材料を調査することができる。唯一の実際の制限は、試験装置に単純に支持される時に、曲げナイフによって生じたたわみに起因して材料に誘発された変形が発生するように、その自重の下であらゆる有意な変形に対して耐えるように材料が十分に強いことである。ほとんどの事例では、これは単に好適な厚さ及び幅の試料を選択する当業者の問題にすぎず、これは十分に当業者の能力の範囲内であることになる。
【0061】
したがって、好適な材料には、金属材料、塑性材料、生物的材料、または複合材料を含む。
【0062】
好適な塑性材料には、シート状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド/サルファイド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンオキシド及び同様のものなどの熱可塑性プラスチックを含む。
【0063】
「生物的材料」によって、木材及び骨を含む植物または動物に由来する材料が意味される。
【0064】
好適な複合材料は、積層品(例えば、金属積層品、塑性積層品)、及び強化塑性樹脂(例えば、炭素繊維、ユニウィーブ(uniweave)樹脂、及び同様のもの)を含む。複合材料は、合板、MDF、及び同様のものなどの複合木材製品も含む。
【0065】
好適な金属材料は、金属、合金、及び複合材料(すなわち、多層体)金属製品(例えば、二層(もしくは多層)金属積層品、亜鉛めっき、または他の「金属コーティング」した金属)を含む。
【0066】
特に好ましくは、材料は金属材料である。
【0067】
金属材料は、鋼(高強度鋼もしくは超高強度鋼など)、アルミニウム合金、もしくはマグネシウム合金であってもよく、または任意の他の金属または金属合金を含んでもよい。
【0068】
本開示の実施形態によると、材料は、冷間圧延鋼または熱間圧延鋼などの冷間圧延金属材料または熱間圧延金属材料であってもよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「高強度鋼」は250MPaから最高550MPaの降伏強度を有し、一方で「超高強度鋼」は550MPa以上の降伏強度を有する。
【0070】
本明細書で使用される場合、引張強度はISO6892−1またはEN10002−1を使用して測定され、好ましくはISO6892−1を使用して測定される。
【0071】
開示される式を使用して異なる材料に対して得られたモーメント特性を重ねて、多層タイプの材料の断面挙動をシミュレーションしてもよい。これは、本明細書で開示される方法によって特徴付けられる個々の層の曲げ特性に基づいて多層材料の曲げ特性を予測できるようにする。
【0072】
本開示の実施形態により、方法は材料のモーメント特性、すなわち材料の断面モーメントMを得る工程と、自由選択の曲げのセットアップのために、以下の式を使用して材料のスプリングバックを見積もるためにこれを使用する工程とを含む。
【数19】
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【0073】
または、代替として、
【数20】
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除荷した状態におけるフランジのおおよその長さW
mは、
【数21】
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また、ナイフと接触している材料の長さの半分は、
【数22】
[この文献は図面を表示できません]
であり、式中、
Δβ
totはスプリングバックの総量であり、
β
Selはフランジのスプリングバックであり、
β
Celはナイフと接触している材料に関連するスプリングバックであり、
M
Lはナイフ半径に起因する曲率の制限のために低減されたモーメントであり、
L
Nはモーメントアーム(湾曲したフランジを考慮した接線接触点間の水平距離)であり、
W
mはフランジの見積もられた長さ(すなわち、ダイから角β
Cが中立層と交差するところまで延在する中立層の長さ)であり、
W
Cは、ナイフによって形作られた材料の中立層の長さ(すなわち、ナイフを包む中立層の長さであり、角β
Cに対する中立層の長さと同等である)であり、
R
kは、ナイフ半径であり、
β
Cは材料とナイフとの間の接触角(すなわち、曲げられる試料に接触するナイフの表面によるナイフの半径に対する角度)であり、
β
1は曲げ角度である。
【0074】
「中立層」は当業者が精通しているであろう概念であり、曲げの間にいかなる圧縮または引張も受けない曲げられる試料の面を表す。したがって、3点曲げを受ける物質は複数の繊維から成ると見ることができると仮定する。曲げナイフが曲げ力を上方から印加するとき、試料の上面におけるこれらの繊維は、圧縮力を受け、一方で下面における繊維は伸展力を受け、両方の力は曲げの形状によって誘発される(曲げの外側の表面は延ばされ、一方で内側の表面は収縮される)。中立層は引張と圧縮とが平衡する層であり、曲げの間、名目上繊維の長さの変化がないことになる。この中立層の描写は
図44に概略的に示される。
【0075】
とりわけL
N、β
C、W
C、及びW
mの図式的な表示が
図32に示される。
【0076】
本開示の別の実施形態によると、方法は、材料断面モーメントMを得る工程と、以下の式を使用して材料の摩擦係数μを見積もるためにこれを使用する工程とを含む。
【数23】
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式中、M
mtrlは、材料に対して、摩擦のない曲げ試験機器を使用して得られた断面モーメント特性である。
【0077】
本開示は、コンピューター可読媒体上または搬送波上に保存された本開示の実施形態による方法の計算工程を、コンピューターまたは少なくとも1つのプロセッサに実行させるように準備された、コンピュータープログラムコード手段を含むコンピュータープログラムを備えるコンピュータープログラム製品にも関し、すなわち、本明細書に記述されるコンピュータープログラム製品は、これによって材料の断面モーメントM、及び/または他の特性のいずれかを計算するために使用されてもよい。
【0078】
本開示は、非限定的な実施例によって添付図面を参照しながら以下にさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本明細書では以下の略語が使用される。
M =断面(曲げ)モーメント
M
Max =最大曲げモーメント
M
L =ナイフ半径に起因する曲率の制限のために低減されたモーメント
M
mtrl =摩擦のない曲げ試験機器を使用して得られた断面モーメント特性
M
1 =断面モーメントMの成分
M
2 =断面モーメントMの成分
M
tot =M
1+M
2
M
e =弾性断面モーメント
F =印加された力
F
max =最大の印加された力
F
theor =理論的な力
S =曲げナイフがこれを通して変位される垂直距離
S
x =ナイフにおける接触点の水平移動
S
y =ナイフ表面に沿って上向きに移動することを考慮した接触点の総垂直移動
B =試料の長さ(ローラーに平行な次元での曲げの長さ、または試料の長さ)
t =試料の厚さ
β
1 =曲げ角度
β
2 =試料(例えば、プレート)が曲げられる真の角度
Δβ
12 =β
1とβ
2との間の差
β
C =材料とナイフとの間の接触角
β
S =形状角度(フランジの曲率の形状)
Δβ
tot =スプリングバックの総量
β
Sel =フランジのスプリングバック
β
Cel =ナイフと接触している材料に関連するスプリングバック
β
Fmax =F
maxにおける曲げ角度
β
* =他のパラメーターを計算するときに固定された、選択された曲げ角度
L
0 =ダイ幅の半分(すなわち、2つのローラーの中心点の間の距離の半分)
L
m(β
1) =角β
1におけるモーメントアーム(接線の接触点間の水平距離)
L
N(β
1,β
C)
=実際のモーメントアーム(ナイフにおける実際の接触点間の水平距離及びダイ半径、すなわちナイフ及びダイが曲げられる試料(例えば、プレート)と接触するところの間の距離)
L
e =中立層の水平距離のモーメントアーム(すなわち、角β
1と中立層との交点間の中立層の水平距離)
W
m =プレート内の中立層のダイと、ナイフと接触する点と、の間の長さで、ダイにおけるβ
1の中立層との交点から開始し、ナイフにおけるβ
Cの中立層との交点までの長さに対応する(すなわち、フランジの中立層のナイフ及びダイとの接触の間の見積もられた長さ−
図32を参照のこと)
W
C =ナイフによって形状にされた材料の中立層の長さ(
図32を参照のこと)
dW
m =湾曲した材料の長さの中立層に沿った増分
a =モーメントアームL
eに基づく中間層の長さ
A =モーメントアームL
mに基づく中間層の長さ
X =曲げアームL
Nに沿った座標
b =
図31に示すような増分移動での周辺距離
R =曲げられる材料の曲率の半径
R
d =ダイエッジの半径(すなわち、曲げの間試料が枢動するダイの湾曲したエッジ部分の半径)。ダイがローラーであるときは、これはローラー半径に対応する
R
k =ナイフ半径
R
m =最終強度
σ
1 =流動応力(平面歪み)
【数24】
[この文献は図面を表示できません]
ε
1 =主歪み(平面歪み)
【数25】
[この文献は図面を表示できません]
E =ヤング率
E’ =平面歪みでのヤング率
U =曲げの間に材料によって吸収される弾性エネルギー及び塑性エネルギー
U
el =曲げにおける弾性エネルギー
I =慣性モーメント
μ =材料の摩擦係数
μ
d =材料とダイエッジ(ローラー)半径との間の摩擦
ν =ポアソン比
【0081】
「単純に支持される」によって、試料の各々の端部(例えば、プレート)が自由に回転でき、また各々の端部支持部がいかなる曲げモーメントも有しないことが意味される。これは典型的には、外力が印加されるときにナイフによって生成されたモーメントは曲げが行われる中心線に沿って生成されたモーメントによって平衡され、またプレートとローラーとの間の接触点においていかなる追加的な曲げまたは力の消散も行われないように、試料(例えば、プレート)を平行なローラーを用いて支持することによって達成される。
【0082】
典型的には、ローラー(またはより一般的にダイエッジ)の上に置かれたとき、試料(例えば、プレート)は実質的に水平である。「実質的に水平」によって、曲げの前にローラーの上で平衡したとき、試料(例えば、プレート)が重力のために動きはしないことが意味される。実際には、試料(例えば、プレート)は典型的には水平であるが、当業者は、曲げナイフによって印加される力が2つのローラーの中心によって形成される平面に対して垂直な平面内であり、かつこれが2つのローラーの間の中心線の全体長さに沿った試料(例えば、プレート)と交差するという条件であれば水平からの非常に小さい変動も使用できることを理解するであろう。言いかえれば、試験が開始するときに試料(例えば、プレート)が、例えば、水平から2度であった場合、曲げナイフは試験の間垂直から同一の量(2度)の方向に移動(そしてその結果として力を印加)し、これにより試料の開始位置に対して垂直に曲げ力が印加される。
【0083】
曲げ力は試料(例えば、プレート)の長さ全体にわたって印加される。これは、試験の間、試料(例えば、プレート)が確実に均一に曲げられるようにし、かつ試料(例えば、プレート)の変形に起因する不完全な曲げからの内部力が生じるのではなく、ナイフに抵抗する力が確実に材料の曲げモーメントに対応するようにする。曲げ力が確実に試料(例えば、プレート)の長さ全体にわたって印加されるように、曲げナイフの長さは典型的には試料(例えば、プレート)の長さより長い。典型的には、曲げの間、曲げナイフは試料(例えば、プレート)のエッジを超えて延在する。しかしながら、端効果、すなわち、非平面歪み条件に起因して、エッジの近くではナイフは材料と接触しない。したがって、平面歪み条件の主応答を確保するためには、試料の長さは、好ましくは厚さの少なくとも10倍である。
【0084】
試料(例えば、プレート)は、典型的には、切断バリまたは破面部分(エッジ部に存在する可能性がある)がナイフ側に(すなわち、曲げの間圧縮を受ける試料側に)位置付けられるように置かれる。
【0085】
図1は先行技術によるVDA 238−100標準試験を使用する金属材料の曲げ性を決定するために使用される線図を示し、この中で金属材料の曲げ性はナイフ位置Sを最大の印加された曲げ力F
maxにおいて測定することによって決定される。
【0086】
図2は、本開示の実施形態による例示的な方法の工程を示す。方法は、VDA 238−100標準(または類似の摩擦のない曲げ)によりプレート曲げ試験を実行する工程と、以下の式を使用して前記材料の断面モーメントMを計算する工程と、を含む。
【数26】
[この文献は図面を表示できません]
式中Fは印加された曲げ力であり、L
m(β
1)はモーメントアームであり、またβ
1は曲げ角度である。計算された断面モーメントMは、曲げの間の材料の実際の応答を予測するために使用されてもよい。
【0087】
材料を特徴付けるためのこの改善された方法は、以下のエネルギー平衡の式を研究することによって見出された。
【数27】
[この文献は図面を表示できません]
式中、Fは印加される力、Sはナイフ位置、Mは材料試験試料のモーメント、そしてβ
2は真の曲げ角度である。
【0088】
この式は空中曲げの間に入力されたエネルギーと試験試料によって吸収されたエネルギーとの間に平衡が必要であることを示す。材料とダイエッジ(ローラー)半径μ
dとの間の摩擦は無視できると仮定される。
【0089】
図3aは、曲げの間に材料試験試料に作用する力及びモーメントを示す。L
m(β
1)はモーメントアームであり、これは初期値L
0(これはダイ幅の半分である)で開始し、そしてストロークの間減少する。曲げ角度β
1は、合計曲げ角度の半分である(VDA試験による)。
【0090】
図4は、VDA 238−100標準試験からの典型的な力線図を示し、印加される力F及びナイフの垂直変位Sを示す。
【0091】
ナイフの垂直変位Sは曲げ角度β
1の関数として以下のように幾何学的に表現することができる。
【数28】
[この文献は図面を表示できません]
【0092】
文献からの従来の式を適用することによって断面モーメントを計算する、すなわち
【数29】
[この文献は図面を表示できません]
そして距離Sも対応する曲げ角度β
1へと変換し、次いで断面モーメントM対曲げ角度β
1のプロットは、
図5に示す形状となる。
【0093】
曲げの間、エネルギー入力
【数30】
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と、内運動量及びそのエネルギー
【数31】
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との間に不一致があることが観察され、すなわち運動量に一般式を適用すると、
【数32】
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が使用される(
図5に示されるように)。文献を参照すると、曲げにおける断面モーメントは、完全な可塑化後はむしろ一定である。
【0094】
これによって、以下がわかった。
【数33】
[この文献は図面を表示できません]
【0095】
理論通り、これは正しい式を与えるナイフの移動距離Sと曲げ角度β
1との間の関係に間違いなく、これによってエネルギー平衡が達成される。Sとβ
1との間の非線形性を調査することによって、印加される力Fと断面Mの間の真の関係が以下のように導出される。
【0096】
幾何関数の一次導関数を取ると、式[23]は以下のようになる。
【数34】
[この文献は図面を表示できません]
【0097】
以下の関数で、
【数35】
[この文献は図面を表示できません]
曲げにおいて、材料厚さtを除いて、L
eはモーメント−アームL
mにほぼ等しい。
【0098】
幾何学的に、実際のモーメントアームは以下の通りである(
図3aを参照のこと)。
【数36】
[この文献は図面を表示できません]
【0099】
次いで、エネルギー平衡の式、式[5a/5b]は、導関数、式[27]を使用して以下のように表現することができる。
【数37】
[この文献は図面を表示できません]
【0100】
ここで新しい角度β
2が導入され、すなわち、エネルギー平衡に起因して曲げにおける実際の角度となり、またこれは適用される幾何学的曲げ角度β
1とは異なる(
図3aを参照のこと)。小さい曲げ角度β
1に対しては、断面モーメントMは
【数38】
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に等しく、本明細書ではM
1と呼ばれる。
【0101】
大きい曲げ角度を仮定すると、合計モーメントM
totはM
1とM
2の和となり、ここでM
2は未知の関数であるが、関数M
1の倍数と仮定され、M
totは以下のように表現することができる。
【数39】
[この文献は図面を表示できません]
【0102】
エネルギー平衡式を平衡するために、比率:
【数40】
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は、以下の式と等しいと仮定される。
【数41】
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これは、以下のようになる。
【数42】
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よって、
【数43】
[この文献は図面を表示できません]
は次に以下のようになる。
【数44】
[この文献は図面を表示できません]
最終的に、断面モーメントMの式は以下のようになる。
【数45】
[この文献は図面を表示できません]
【0103】
この材料の曲げ挙動をより正確に予測する正しい断面モーメントMの定式化は、大きい曲げ角度(すなわち典型的には6°より大きい角度)でさえ有効である。
【0104】
図7は、合計モーメントM
totをM
1とM
2との和として示す。一般式、M
1は、小さい曲げ角度(すなわち、最高約6°まで)に対してのみ有効である。角度β
2は材料が曲げられた真の角度であり、印加された曲げ角度β
1と同一ではない。
【0105】
フランジが湾曲している場合でさえもこの解が有効であることは理論的に確認することができ、すなわち、通常の曲げの間の場合のように、接触点は角β
1ではなく角β
Cで発生することになる(
図6a、
図6b、及び
図32を参照のこと)。
【0106】
詳細には、
図6aは、ナイフにおける試料(例えば、プレート)の曲率に起因して、及びナイフ自体の半径に起因して、材料と曲げナイフとの間の接触角β
Cが、ローラーにおいて試料(例えば、プレート)に垂直な表面によって動かされる曲げ角度β
1とはどのように異なるかを示す。
図6bは、ナイフが下へ移動する(すなわち、垂直変位dSが増加する)につれて、この接触点が曲げの中心点から外向きにどのようにそれるかを示す。
図32は、β
Cが試料(例えば、プレート)の曲率とどのように関係するかのより明確な表示を示す。
【0107】
したがって、
【数46】
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ここで、接触点の動きは以下によって記述される。
【数47】
[この文献は図面を表示できません]
【0108】
Sは垂直ナイフ移動であり、S
xはナイフにおける接触点の水平移動であり、そしてS
yはナイフ表面に沿って上向きに移動することを考慮した接触点の合計垂直移動である(
図6a、
図6b、及び
図32を参照のこと)。
よって、
【数48】
[この文献は図面を表示できません]
【0109】
上記の計算は曲げ角度β
1及びβ
2を参照し、かつこれら2つのパラメーターの間の違いを明確化する価値がある。
【0110】
曲げ角度β
1は、厳密に真っ直ぐなフランジを仮定して幾何学的に計算することができる、曲げに使用される従来の角度である。かかる仮定を使用すると、ナイフとダイとの両方における接触角は同一であり、かつβ
1と等しい。
【0111】
真の角度β
2は、エネルギー平衡、Fds=2Mdβに基づいてモーメントアーム、すなわち、L
m(ここではまだまっすぐなフランジを考える)の正しい長さを考慮に入れる。真の角度β
2とモーメントアームの正しい定式化L
mとの組み合わせは、特に、より厚い材料及び大きい曲げ角度に対してより正確な計算ができるようにする。
【0112】
モーメントアームL
mは接線の接触点(ナイフ及びダイ半径)間の水平距離であるが、一方でモーメントアームL
Nは実際の接触点間の水平距離である。中立層と関係があるモーメントアームはL
eと呼ばれ、かつ実際の曲げ角度β
2と関連して定義される
【0113】
これらのパラメーターは
図31及び
図32に示される。
図31では、aとAとの両方の寸法は、以下の式により、モーメントアームL
eとL
mに基づく中間層の長さを表す。
【数49】
[この文献は図面を表示できません]
【0114】
Aとaとの間の差異は線の端点である。したがって、aは接線が試料の表面と交差する点の間の距離に関して定義される。対照的に、Aは、ダイ及びナイフ上の接線点から延びる垂直線に関して定義されるので、中間層及びその角度変化dβ
2を表す。
【0115】
しかしながら、垂直変位dSは、曲げ角度β
1を介して周辺距離bに直接的に関連する。周辺距離bは、距離aとAとの両方を介して表現することができるが、A>aとして、角度dβ
1及びdβ
2のそれぞれでの異なる増分の関数としてである。どちらの場合にも、垂直変位dSは同一である必要がある。
【数50】
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長さAはaより大きいので、曲げ角度dβ
2はdβ
1より小さいことになる。
よって、
【数51】
[この文献は図面を表示できません]
【0116】
平面歪み(または主歪み)ε
1は、以下に記載するように、曲げにおけるエネルギー入力の量からも導出することもできる。
【0117】
以下の式は、湾曲している材料の中間層の形状半径と合計長さとの間の関係に関して周知である。
【数52】
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式中、dβは角度の増分であり、曲げ角度β
2の現在の状況と接触角β
Cとの間の間隔で作用する。
dW
mは材料の中立層に沿った長さの増分である。
Rは材料の曲率の半径である。
【0118】
曲率増分dS
mの長さの水平成分dL
Nは、以下のように表現することができる。
【数53】
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【0119】
接触角は以下の通りである
【数54】
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(以前に実証したように、β
Cに対する式と一致して(特に式[17]を参照のこと))。
よって、以下の通りである。
【数55】
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これは、次に以下のようになる。
【数56】
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式[48]を以下のように導くことができる。
【数57】
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は、モーメントMに関する形状−角度の導出された式である。
【0120】
これらの式はモーメントMに対する式から出発して導出することができ、以下と等しい。
【数58】
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【0121】
以下のように、
【数59】
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【数60】
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は、モーメントMのナイフとダイ半径との間の接触点の直線分布であり、
【数61】
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と単純に等しい。
【0122】
これは式を以下のようにする。
【数62】
[この文献は図面を表示できません]
式[55]を以下のように検証することができる。
【0123】
曲げにおける弾性エネルギー以下の通りである。
【数63】
[この文献は図面を表示できません]
式中Iは慣性モーメントであり、E’は平面歪みに対するヤング率である。
【0124】
小さい曲げ角度及び弾性状態ではβ
C=0、及びβ
2<<1、L
N≒L
mである。
【0125】
これにより以下のようになる。
【数64】
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これは弾性曲げについての文献から周知の式と一致する。
【数65】
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【0126】
弾性変形において、
【数66】
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【0127】
曲率の形状に対する式
【数67】
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によって、中立層(すなわち、歪みがゼロであり、材料の面の中間に位置付けられる(t/2における))を仮定して歪みを計算することができる。
【数68】
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【0128】
以前に実証した通り、
【数69】
[この文献は図面を表示できません]
【0129】
これによって、曲げアームL
Nに沿った座標Xにおける曲率対位置は所与の曲げ角度β
2*で表示できる。
【数70】
[この文献は図面を表示できません]
【0130】
1/Rに対する式によって、以下のようにヤング率も見積もることができる。
【数71】
[この文献は図面を表示できません]
【0131】
弾性状態において、
【数72】
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これによって、以下が得られる。
【数73】
[この文献は図面を表示できません]
【0132】
次いで平面歪みに対して、
【数74】
[この文献は図面を表示できません]
または有効歪みに対して、
【数75】
[この文献は図面を表示できません]
【0133】
本開示は、実行されるとき、コンピューターまたは少なくとも1つのプロセッサ上で、コンピューターまたは少なくとも1つのプロセッサに本開示の実施形態による方法(すなわち、これによって、コンピュータープログラムコード手段が、本明細書で記述される材料の断面モーメントM及び/または他の特性のうちのいずれかを計算するために使用されてもよい)を実行させる、コンピュータープログラムコード手段を含むキャリアも備え、キャリアは、電子信号、光信号、電波信号、またはコンピューター可読記憶媒体のうちの1つである。
【0134】
典型的なコンピューター可読記憶媒体としては、RAM、ROM、フラッシュメモリ、磁気テープ、CD−ROM、DVD、ブルーレイディスク等などの電子メモリが挙げられる。
【0135】
本開示は、プロセッサ内で実行されたとき、本開示の実施形態による方法の計算する工程を実施するソフトウェア命令を含むコンピュータープログラム製品をさらに含む。
【0136】
本開示は、本開示の実施形態による方法の計算する工程を実施するように構成された第一のモジュールと、所望により本開示のさらなる実施形態による方法の計算する工程を実施するように構成された第二のモジュールと、を備える装置をさらに含む。
【0137】
例えば、流動応力、主歪み等などの材料のさらなる特性を計算するために計算する工程を実施するように構成された所望による第二のモジュールとともに、第一のモジュールは、断面モーメントMを計算するための計算する工程を実施するように構成されてもよい。
【0138】
本開示は、該材料から成る製品を最適化するために、該計算された断面モーメントM、または計算された流動応力σ
1、または見積もられたヤング率E、または比率M/M
e、または計算された平面歪みε
1、または本明細書で開示される方法を使用して計算された他の特性が使用される、方法にさらに関する。
【0139】
実施例2でさらに記述される無次元比率M/M
eは、曲げの間に材料が不安定になる点を示すので、特に有用である。具体的には、M/M
eが1.5より低いとき、材料は変形硬化挙動示し、そして曲げの間安定である。M/M
eが1.5のレベルに達する時、材料は不安定になり、それによって欠陥に近くなる。
【0140】
したがって、本開示は、所与の材料に対してM/M
eが1.5より低いままになる条件を決定するための方法に関する。これらの条件の知識を用いて、当業者は特定の材料の所与の用途に対する適合性を確かめることができる。例えば、当業者は、材料が欠陥を有しないで(または最小限のリスクで)所望の形状へと曲げられる能力を有するかどうかを簡単に確かめることができ、広範な試験を行うことなく材料の適合性を予測することができる。したがって、この方法は、材料を複合材料製品中の構造要素として利用するさらなる工程を含んでもよく、この中で複合材料製品の製造の間、M/M
eの比率が1.5より低い条件下で材料が曲げられることを特徴とする。
【0141】
本開示は、曲げの間に材料が不安定になる点を決定するための方法にも関し、該方法は比率M/M
eが1.5になる点を決定することを含む。
【0142】
方法は、どの材料がある一定の使用のために必要な所定の値に適合する曲げ特性を持っているかを決定する目的で、異なる材料を評価するためにも使用されてもよい。
【0143】
異なる材料に対して得られたモーメント特性は、また重ねてもよく、多層材料の断面挙動を予測できるようにする、という利点がある。このようにして、当業者は新しい複合材料を設計し、かつ個々の層の知識に基づいて多層材料の曲げ特性を予測するために本開示の方法論を使用することができる。
【0144】
例えば、高強度鋼などの高強度金属材料は、しばしば曲げ特性は劣っている。延性がより高く、強度よりが低い材料の層を加えることで、曲げ特性が改善された複合材料を提供することができる。本開示の方法論を使用して、当業者は高強度材料に所望の曲げ特性を提供するために、どのタイプの材料が必要とされるかを必要以上の実験を用いずに決定することができる。
【0145】
異なる材料に対するモーメント特性をどのように重ねてもよいかのさらなる詳細が、実施例5で提供される。
【0146】
方法は、例えば、M/M
eの比率を研究することによって、異なる厚さを有する同一の材料の試料(例えば、プレート)を評価するためにも使用されてもよい。
【0147】
以下の実施例は、様々な鋼の曲げの間の特性を調査し、かつ特徴付けるために本開示の方法論を実践する。
【0148】
実施例1
断面モーメントMに対する新しい式の正確性を確認するために、引張応力データを使用して曲げ力Fが計算された。調査された材料は、引張強度が>700MPaで厚さが2.1mmの高強度熱間圧延鋼である。曲げデータ:ダイ幅L
o=70.5mm、ナイフ半径R
k=16mm、及びローラー半径Rd=25mmである。
【0149】
引張データは、
【数76】
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引張データを以下のようにして流動応力及び平面歪みへと変換した。
【数77】
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以下を仮定した。
【数78】
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さらに曲げ角度と歪みとの間の関係を以下のように近似した。
【数79】
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次いで、
【数80】
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次いで、合計モーメントMに対する式は以下のように書くことができる。
【数81】
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これを以下の式と組み合わせる。
【数82】
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こうして、力Fは以下のようになる。
【数83】
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曲げ角度β2とナイフ位置Sとの間の関係は、以下のように与えられる。
【数84】
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次いで、
図8に示す引張データを使用することによって、曲げ力の見積もりを得ることができ(
図8を参照のこと)、これは断面モーメントMに対する式の正確性を確認する。
【0150】
図9は引張試験データに基づく計算された曲げ力(実線)と、同一の材料だが異なるストローク長さSで実施された3つの個々の曲げ試験との間の比較を示す。3本の曲げ試験曲線の右側は除荷を示す。曲げの線は圧延方向(RD)に沿って配置され、また引張試験データは圧延方向に垂直(TD)に実施された。
【0151】
図10は、曲げ試験のための試料が切り取られる熱間圧延鋼製品10のコイルを概略的に図示する。曲げ試験は圧延方向(RD)と圧延方向を横切る方向(TD)との両方で実施されてもよい。さらに、好ましくは組織の対称性を確認するために、圧延機側を上に向けた試料と、下に向けた試料とで試験を実施することもできる。
図10は、コイルに対する熱間圧延鋼製品10の曲げ方向を示す。
【0152】
この実施例は、曲げ試験及び引張試験の間、金属材料10が類似の挙動を有することを示した。外側表面から内向きに特性が「スキャンされる」曲げと比較して、引張試験は断面特性の平均値なので、金属材料10がその厚さを通して均一な挙動を示していることをこの事例は示す。さらに、
図9は力が自然に下がることを示し、そしてこの事例ではいかなる欠陥のせいでもなく、これはVDA 238−100標準試験の欠点を図示する。
【0153】
実施例2
この実施例では、無次元モーメント(「Plastic Bending−Theory and Application」と題する、T.X.YouおよびL.C.Zhangによる出版物(ISBN 981022267X)に記述されるように)が例示されることになる。無次元モーメントは、最大断面モーメントM
maxと弾性断面モーメントM
eとの間の比率によって導出されうる。この比率には2つの限界がある。1.0に等しい下方限界と1.5に等しい上方限界である。第一の事例は材料が弾性的に変形されるときであり、後者の事例は材料がその絶対的な最大モーメントに達する状態である。以前は、これらの限界の間の材料の可塑化特性を得ることはできなかった。
図11は、曲げにおけるこれら2つの限界、すなわち、理論的弾性断面モーメントM
eと最大断面モーメントM
maxを示す式、及び両方の事例の応力分布の概略的な図も示す。
【0154】
比率の下方限界及び上方限界は、
図11に示される2つの式を使用して、以下の通りである。
【数85】
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しかしながら、弾性状態から最大載荷容量までの全間隔で材料応答全体を得るためには、式は以下のように書かれる。
【数86】
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式中、M(β
2)は新規に開示された関数である。
【0155】
この実施例で調査される金属材料10は、厚さが1.43mmで、引張強度が>1180MPaの高強度冷間加工複相グレード鋼である。
【0156】
図12は、VDA 238−100標準試験での曲げの間に印加される力対ナイフ位置Sを示す曲げ試験から、印加される力及びナイフの位置を測定することによって応答が得られた。材料は、横断方向(TD)と圧延方向(RD)に沿ってとの両方で試験された。次いで、力は新規に開示される式を使用して計算された断面モーメントMへと変形された(
図13を参照のこと)。角度β
2は、印加される曲げ角度β
1から不良角度Δβ
2を引くことによって得られ(計算するときにスプリングバック、すなわち曲げ過ぎ角を考慮することが重要である)、以下に示されるように計算される。
【0157】
エネルギー平衡の条件に基づいて関係を使用する。
【数87】
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次いでβ
2を積分から得ることができる。
【数88】
[この文献は図面を表示できません]
式中、β
1は式[23]を使用して計算される。
【0158】
本明細書では比率M/M
eは以下のように導出される。
【数89】
[この文献は図面を表示できません]
式[85a]は、式[4a]を使用して示されるように歪みの導関数を取ることによって導出される。結果として、材料が塑性変形を受けるとき、あまり正確ではない。この比率に対する代替的な式は以下の通りである。
【数90】
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この式は、すべての曲げ条件の下でより正確な結果を与えるために、歪みに対して[4b]を使用して数値的に解かれてもよい。比率M/M
eを計算するためのさらなる方法論は、式[92]に示すように、引張強度を使用する。
【0159】
式は、変形の弾性部分について、導関数として容易に検証することができる。
【数91】
[この文献は図面を表示できません]
は比率
【数92】
[この文献は図面を表示できません]
と等しく、すなわち
【数93】
[この文献は図面を表示できません]
は比率を1.0に等しくする。
【0160】
導関数が以下のようであるとき、
【数94】
[この文献は図面を表示できません]
次いで比率は1.5に等しくなる。これは、モーメントMが下がったとき、材料が破綻する、または歪みが局所化することを意味する。
【0161】
流動応力は、式[76]から導出されるモーメントからも得ることができる。
【数95】
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式中、主歪みε
1は以下から計算される。
【数96】
[この文献は図面を表示できません]
または、代替として、
【数97】
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式[86]をこの実施例に適用することによって、主歪みに対してプロットされた計算された無次元モーメント線
図M/M
eは、
図14a及び
図14bに示される(式[3]及び[4b]をそれぞれ使用する)。
【0162】
図15a及び
図15bは、流動応力対主歪みε
1のプロットを示し、ここでも式[3]及び[4b]をそれぞれ使用して計算される。
【0163】
本開示による方法を使用すると、材料のヤング率Eを見積もるために材料の曲げ挙動を使用できるようになる。
【0164】
平面歪みでのヤング率E’は以下によって得られる。
【数98】
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鋼に対しては、これは以下のように表すことができる。
【数99】
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この実施例では、ヤング率は以下によって与えられる。
【数100】
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【0165】
図16aは主歪みε
1対流動応力σ
1のグラフを示し、ヤング率はこれらから外挿される。
【0166】
ヤング率Eを得る別のやり方は、モーメント曲線の弾性部分の傾きを決定することにより(
図13に示されるもののように)、これによって傾きは以下のようになる。
【数101】
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好ましくは、ヤング率は式[13]を使用して数値的に見積もられてもよい。
【数102】
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この方法論の実施例は
図16bに示され、これはここでも2.18×10
5MPaの値を与える。
【0167】
有効応力と歪み、流動応力σ
1との間の関係は、平面歪み条件を仮定して、以下の式を使用して変換することができる。
【数103】
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そして以下を使用して真の値へと変換する。
【数104】
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【0168】
引張試験データを用いてグラフをプロットし比較することさえも可能である。これは、材料の特性がその表面からその中心へと同一である場合、どのように硬化挙動が作用するはずかを示すことになる。曲げと純粋な引張の間とで変形機構の結果が類似である場合、これは材料がその厚さを通して均質であることの証拠となる。
【0169】
引張データからM/M
e比率を画定するために、以下の導出された式が使用される。
【数105】
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図17は引張試験と曲げ試験との間の比較を示す。図示した事例では、曲げと均一な延びを比較すると、金属材料は、ほぼ類似のやり方で硬化するものと思われる。
【0170】
本開示の実施形態によると、方法は材料の断面モーメントMを得て、曲げにおけるセットアップの自由選択のためにスプリングバックを見積もるためにこれを使用する工程を含む。
【0171】
曲げるとき、曲げの最終的な角度を得るために、ある一定の角度数の「曲げ過ぎ」を行うことによってスプリングバックが常に補償される。最終的に所望の曲げを得るために「曲げ過ぎ」の角度数の量を見積もるのは困難である。高強度鋼などの材料を取り扱うとき、軟鋼などの材料と比較してスプリングバック挙動がより大きいのでさらにより複雑である。曲げに対するセットアップの4つの事例でスプリングバック効果を調査するために、薄い(3.2mm)超高強度鋼が使用された。最終的な強度はおおよそ1400〜1450MPaであった。
【0172】
方法は3つの工程を含む(
図18を参照のこと)。第一の工程では、材料は、曲げでの材料特性を決定するために、例えば、VDA 238−100標準試験タイプの曲げ、すなわち、完全に可塑化した断面を得る、摩擦のない曲げを実施することによって試験される。第二の工程では、モーメント曲線は、曲げのある一定の事例に対して幾何学的セットアップの自由選択の幾何学形状に関して変形される。第三の工程では、これらのデータはスプリングバックを計算するために使用される。均一な厚さは第一の工程で調査された材料から変換することができる。材料特性の差異に起因して、最も正確な結果は、第一の工程及び第二の工程と同一の材料のバッチを使用するときに得られる。
【0173】
材料特性は、VDA 238−100標準試験、または別のタイプの摩擦のない曲げ機器を実施することによって得られ、モーメント曲線対角度線図を得ることによって現在の材料の「拇印」を与える。材料特性を試験するとき、狭いダイ幅が使用され、また半径が小さいナイフが使用され、より厚い熱間圧延材料に対してはほぼ0.7
*tとする。ローラー半径は摩擦がない、すなわち回転できる。最大曲げ角度(曲げ角度β
1の半分)は30〜35°以下とし、材料挙動に関係しない誤ったエネルギーを加えるあらゆる種類の摩擦を除去するべきである。
【0174】
本開示による方法を使用することによって、
図4に示す線図などの測定された力対ナイフ位置、及び試験的セットアップに対する幾何学形状に基づいて、
図13に示すモーメント線図などのモーメント線図を得ることができる。
【0175】
ローラー半径を表すR
dは、例えば、40.0mmであってもよく、ナイフ半径は2.0mmであってもよく、t(材料厚さ)は3.2mmであってもよく、ダイ幅の半分L
0は46mmであってもよく、また最後に、材料の長さB(すなわち曲げる長さ)は75mmであってもよい。
【0176】
ナイフ半径が材料厚さに対してより大きい場合、及び増加したダイ幅(VDA 238−100標準試験と比較して)が使用される場合、支持部(すなわち、ナイフ及びローラー)の間の材料は曲率を受けることになることがわかった(
図19及び
図20の破線の曲線を参照のこと)。これはナイフと材料との間の接触は直線の接線点においてではなく、角度β
1ではなく角度β
Cにおいてであり、結果としてモーメントアームはL
mと比較してより長いL
Nであることを意味する(
図19を参照のこと)。低減された断面モーメントM
Lを見積もることができるようにするために、実際の接触点を定義する必要がある。次いで、曲率を得る必要がある。この図では、形状角度β
Sが示される。この角度は、接触角β
Cと角度β
2におけるモーメントアームの仮定的な接触点との間の差異を示す(
図32も参照のこと)。したがってβ
Sは、ナイフにおいて曲率がないことを仮定した仮定的な接触角と、ナイフにおいて観察された接触角β
Cとの間の差異を表す。文献から、材料の形状または曲率(接触点、ナイフ、及びローラー間の)が捕捉的なエネルギーと比例することが留意される(
図19の斜線部を参照のこと)。
【0177】
曲げの中のエネルギーの分布全体を研究することによって(これは
図20に図示される)、接触角度β
Cに対する以下の式を得ることができることがわかった。
【数106】
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接触角β
Cは、弾性変形の間は0にほぼ等しい(
図21を参照のこと)。これは、曲率角度β
Cに対して積分を使用し、弾性モーメントに対する式に入れることによって示し、かつ確認することができる。したがって、接触角β
Cは曲げが塑性化した瞬間に増加し始める。
図21では、点線の曲線は曲げ角度を表し、破線の曲線は真の曲げ角度を表し、一点鎖線の曲線はナイフと材料との間の接触角を表し、そして最後に実線の曲線はフランジの形状角度を表す。
【0178】
ナイフ半径が小さいとき、すなわち、典型的には材料厚さの0.7倍以下(すなわち、R
k≦0.7t)のとき、真のモーメントアームL
mに対する式[29]が使用されてもよい。しかしながら、大きいナイフ半径を考慮するときは、材料はナイフと直線に対する接線において接触を持たず、角度βCにおいて接触を持つことが明白である(
図19に示される)。こうした場合には、モーメントアームL
Nは以下のようになる。
【数107】
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ナイフの半径が大きい場合には、材料がナイフの曲率に沿い始めると歪みの増加が停止することが明白である。その瞬間に歪みは一定になり、曲げ角度が増加してもナイフ半径によって制限される。このレベルの歪みは以前に得られた接触角β
Cを適用することによって計算できることはわかっている。
【0179】
ナイフ半径が材料の厚さと比較して小さい自由曲げに対しては、曲げ半径はいかなる制限もなしに自由に減少する。これによって、モーメントMの断面は最終的にその最大に達し、すなわち完全に可塑化される。大きいナイフ半径が使用される場合、曲げ半径はナイフの幾何学形状によって制限されることになり、したがってモーメントMの断面はある一定のレベルM
Lに低減されることになる。
【0180】
モーメントが水平軸Lに関して線形的に依存することが仮定されている(ここでも
図19及び
図20を参照する)。
【数108】
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式中、Mは材料が達成することができる完全な最大のモーメントである(参考の摩擦のない試験から幾何学的に変形される)。M
Lは、シミュレーションされる事例を表す、ナイフ半径によって制限されたモーメントである。
【0181】
小さいナイフ半径が使用される場合、接触点の動きはモーメントアームの長さに対して無視でき、結果としてM
L≒Mとなる。しかしながら、大きいナイフ半径が使用される場合、これらがL軸に沿って2つの異なる断面に位置するので、フルモーメントとM
Lとの間に差異が、よってL
NとLmとの間の差異があることになる。
【0182】
曲げ力を計算するための式、Fは以下のように導出される。
【数109】
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式中、L
0=ダイ幅の半分であり、R
k=ナイフ半径であり、R
d=ローラー半径であり、β
1=曲げ角度[ラジアン]であり、β
2=参考試験から幾何学的に変形された真の曲げ角度[ラジアン]であり、M=参考試験から得られ、かつ幾何学的に変形されたモーメントである。
【0183】
以下の式を使用して、非常に正確な様式でスプリングバックΔβ
TOTを見積もることができる。
【数110】
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式中、νはポアソン比であり、Eはヤング率である。
【0184】
鋼に対しては、これは以下のように表すことができる。
【数111】
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試験されるフランジのおおよその長さは、
【数112】
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そしてナイフと接触する材料の長さ(中立層に沿って)は、
【数113】
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【0185】
図22は、測定された力対変位に加えて、摩擦のない曲げから得られた曲線を示す。
図22の点線及び破線は、本開示による方法を使用し、かつVDA 238−100標準と同様に実施された参考曲げ試験からのデータを使用して計算された力を示す(すなわち、
図22の高負荷曲線)。実線は実際に測定された値を示す。本開示による方法を使用して、入力として参考試験からのデータを使用する実質的に正しい曲げ力を得ることができることを見ることができる。本開示による方法を使用するスプリングバックの計算から得られた結果が実施された試験と非常によく一致することがわかった。
【0186】
本開示の実施形態によると、方法は、VDA 238−100標準、または類似の摩擦のない曲げ試験による摩擦のない曲げ試験を実行することによって材料の断面モーメントMを得る工程と、材料の摩擦係数を見積もるために断面モーメントMを使用する工程と、を含み、これによって摩擦係数を生産の間に決定することができる。
【0187】
曲げサイクル全体の間、曲げ力及びナイフ位置を測定する必要がある。材料がエネルギーの形で吸収できるより多くまで曲げ力が増加する場合、(塑性エネルギー及び弾性エネルギー)、これは摩擦に起因するはずである。材料の断面モーメント挙動を研究することによって、摩擦に関連するエネルギー損失を分離することができる。このため、材料の摩擦係数も見積もることができる。かかる方法は、これによって、生産において材料の摩擦係数を見積もるためだけでなく、曲げのベースとして周知の挙動を有するダミー材料を使用し、かつその摩擦特性を研究する材料の層を追加して一般に摩擦係数を決定するためにも使用することができる。
【0188】
図23は、曲げ試験の間の曲げ負荷を表す力ベクトルを示す。断面モーメントMはローラー半径に対して法線力F
Nを成し、よって摩擦力が作り出される。曲げの間作用し、かつ測定される垂直力ベクトルF
yは
図23に示され、かつ曲げ力に対応する。
【0189】
摩擦係数μは以下の式を使用して計算される。
【数114】
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また垂直に作用する合計力は以下の通りである。
【数115】
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式中、パラメーターM
Measuredは、摩擦が関与する試験から得られたモーメント特性である。M
mtrlは、摩擦のない試験から得られる材料の参考特性である。しかしながら、完全な可塑化後はモーメント特性はほぼ一定なので、このパラメーターは一定に設定することができる(
図24の太い実線を参照のこと)。
【0190】
実施例3
数多くの曲げ試験が6mmの熱間圧延高強度鋼で異なる条件を用いて(すなわち、同一のタイプの材料をすべての事例に使用し、低摩擦及び超高摩擦で、潤滑剤を用いずにまたは異なる潤滑剤を用いて)実施された。
図25に力曲線を示す。開示される式を使用して力を断面モーメントへと変換することによって、摩擦の影響はより明らかになり(
図24を参照のこと)、かつ摩擦係数を見積もるために開示される式によって評価が可能になる。
【0191】
実施例4
開示される式を検証するために複数の曲げ試験の間に比較が行われた。
【0192】
曲げでは、試験シリーズの中では、異なる材料、厚さ、及び幾何学的ツーリングセットアップ(tooling−setup)が使用され、また生産のためには通常の条件が使用された。
図26では、試験と開示された式との間に良好な関係を見ることができる。
図27は、実験的に測定された力(F
max)とF
maxにおいて計算された角度との間の比較を示す。これらのデータでは、B/tは12と67との間である。
【0193】
散乱に関しては、モデルではいかなる摩擦も仮定されない。曲げられる材料の最終強度は検証されない。
【0194】
実施例5−複合材料
この実施例は、どのようにして複合材料のモーメント特性をその成分材料の特性に基づいて計算し得るかの実証を提供する。したがって、5mmのDX960(すなわちベース層材料または基材材料)と1mmのDX355からできているスキン層材料(両方とも鋼で形成される)とから形成された材料の特性を個々の材料のモーメント特性に基づいて予測することができる。
【0195】
歪みとモーメントとの両方を、以下の式を使用して変形することができる。
【数116】
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長さ単位当たりのモーメントは、
【数117】
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【0196】
図28は、t=4mmにて測定され、かつ最大t=6mmまでスケーリングされるDX355を用いたベース材料のモーメント特性のプロットを示す。
図28からDX355がはるかにより大きい変形硬化挙動を有することを見ることができ、これは曲げ性の性能の観点から好ましい。
【0197】
5mmのDX960と一緒になったDX355の1mmのスキン層(すなわち、DX960の5mmのコアの両側に2つの0.5mmのDX355のスキン層)からのモーメントへの貢献を計算するために、以下の計算が使用される。
【数118】
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したがって、フル厚さの材料モーメント特性(t
フル)から、低減された厚さのためにモーメント特性を引き算して(t
フル−t
層)、スキン層モーメント影響(または貢献)を提供する。
【0198】
基材(または母材)の厚さは、この事例では、以下のようになる。
【数119】
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上記の式を使用すると、以下が得られる。
【数120】
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スキン層、ベース層、及び複合材料に対するモーメント特性を
図29に示す。
【0199】
図30は、元のDX960材料と、5mmのDX960及び2つの0.5mmのDX355のスキン層を持つ複合材料の予測される特性との無次元モーメント曲線を示す。見ることができるように、複合材料は、高い方の歪みが1.5を下回る無次元モーメントを有することが予測され、これは曲げの間材料がより安定していて、欠陥のリスクがより低いと予測されることを意味する。
【0200】
実施例6−曲げに沿った材料の特性
圧延された960Mpaで厚さt=8mmの材料が、半径R
k=4mmのナイフを使用して、VDA 238−100標準に類似のプロトコルに従って曲げられた。モーメント曲線を
図35に示す。
【0201】
図33は、真の曲げ角度β
2が30°のときの曲げ長さL
Nに沿った各々の点Xに対する1/R(すなわち、曲げ半径の逆数)のプロットを示す。プロットは、Xの低い値、すなわち、プレートのダイに近い部分において曲げ半径が大きく、かつ限界において無限に近づいていくことを示す。これは、曲げダイとの接触点に近いほど、材料自体はより剛直なプレートのように作用する(すなわち、プレートの曲げが発生していないのでプレートがいかなる曲率も有しない)ことを意味する。あらゆる変形は弾性的である。しかしながら、ナイフに近いほど曲げ半径は減少する(そして1/Rは増加する)。さらに、ナイフに近いこの領域では塑性変形が発生する。
【0202】
モーメント対曲げ角度のプロットを
図35に示す。図は材料が可塑化すると曲げモーメントMが一定になることを示す。
【0203】
一定のモーメントMを適用することによって、本明細書で開示される式を使用して理論的な力F
theorを見積もることができる
図34では、この理論的な力を実際の力と一緒にプロットして示す。この結果は、鋼の欠陥点は自然力が最大になった後で発生することを示す。VDA 238−100標準によると、曲げ角度が一旦F
maxになると試験は中断されるべきであり、これは試験された鋼が標準試験の要件に準拠しないことを示す。
【0204】
実施例7−曲げに誘発された硬化
以下の実施例では、降伏強度が355MPaで、厚さが4mmの熱間圧延鋼をVDA 238−100標準に沿って曲げ試験に供した。
図36は、曲げモーメント対ナイフ位置のプロットを示し、一方で
図37は理論的力対曲げ角度のプロットを示す。
【0205】
図37では、曲げ角度が大きいにもかかわらず一定のモーメントが得られないことを見ることができる。この挙動は、曲げ角度の増加による材料の硬化に起因する。一定でないにもかかわらず、硬化は直線的な関係を上昇させ、かつ曲げモーメントに対して線形方程式を提供するように線形回帰を実行することができる(破線)。
【0206】
これらのプロットは、塑性変形または曲げが誘発した硬化が生じる場合があるその最大力を超えた材料の曲げ特性へのさらなる洞察を提供するために本明細書で記述される方法論をどのように使用し得るかを示す。
【0207】
実施例8−キンキング挙動の調査
厚さが6mmの熱間圧延960MPa鋼(引張強度がおおよそ1050MPa)を曲げ試験に供した。モーメント対曲げ角度のプロットを
図38に示す。
図38は欠陥において不連続が発生するまでのモーメントの減少を示す。モーメントは、線形方程式を提供するために線形回帰を使用してモデリングされ、これは次いで
図39でナイフ位置に対してプロットして示される力を計算するために使用される。
【0208】
したがって
図38及び
図39をプロットするために使用される方法論を、キンキング(すなわち、材料の不均一な曲率)が発生したかどうかを調査するために使用することができる。
【0209】
キンキング挙動を調査するさらなるやり方は、平面歪みを一定の曲げ角度に対する曲げの長さに沿ってプロットすることによる。キンキングが発生した区域は曲げの不連続として見えるようになり、そこでは長さをトラバースする際に歪みが滑らかではなく段階的に増加する。
【0210】
これを実証するために、2枚の6mm鋼板を曲げ試験に供する。
図40及び
図41は平面歪み対位置のプロットを示し、一方で
図42及び
図43はそれぞれM/M
e及び流動応力対平面歪みを示す。
図40及び
図41では、キンキング傾向を示す材料(実線)は、Xが30.5mm周辺のとき際立った歪みの増加を示す。この曲線の不連続は短い距離での歪みの著しい増加の特徴であり、これは不均一な曲率を引き起こす剪断変形に起因して発生する。この挙動は、非キンキング材料とは明瞭に異なるプロファイルを示す
図42及び
図43のプロットをもたらす。
【0211】
実施例9−マイクロ曲げ
この実施例は、グリーブル(Gleeble)試験片から調製された小さい試料を示す。グリーブル試験片は、引張試験試料を作製するには一般的に小さすぎ、マイクロ曲げ装置を使用した曲げのみしかできない。使用される曲げ装置(
図45に示す)は、小さい寸法の試料に適合するように設計された。曲げ装置の寸法は以下の通りである
【表1】
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【0212】
試験される試料の厚さは1〜1.5mmであり、また幅は10mmであった。曲げを補助するために試料とダイとの間にグリースを塗布することによって摩擦を低減した。曲げ試験からの結果を
図46〜
図48に示す。平面歪み条件を仮定した場合厚さ対幅の比率(t/B)は限界に近いものの、結果は満足のいくものであった。
【0213】
前述の開示から、本明細書で開示される新しい方法論が当業者に材料の曲げ特性を調査するための幅広い選択肢を提供することは明白である。理解を容易にするため、本明細書で開示される計算を実施するために必要な工程の概要を以下に提供する。
1)力F対ナイフによるストローク距離Sを測定する3点曲げ試験を実施する。試料と支持部との間の摩擦を最小限にして試料自体によって吸収されるエネルギーと関連しない必要以上のエネルギーの消費を避けるべきである。
2)試験機器に関する以下のパラメーターを測定する。
ダイ幅2・L
0、ダイ半径R
d、ナイフ半径R
k、試料長さB、及び試料厚さt。
3)積分
【数121】
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を行い、エネルギーを計算する。
4)以下の式を使用して曲げ角度β
1を計算する。
【数122】
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あるいは、以下の積分による。
【数123】
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5)以下の式によってモーメントMを計算する。
【数124】
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6)実際の曲げ角度β
2を計算する、すなわち、以下のエネルギー平衡による。
【数125】
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を計算することによって計算されたモーメントM及び実際の曲げ角度β
2を検証し、そしてこれをUと比較する(等しいはずである)。
7)実際の曲げ角度は2つの部分、すなわち、形状角度β
S、及びナイフにおける接触角β
Cから成る。
エネルギーUを以下のやり方で表現することができ、これによって2つの角度の計算を個々に行うことができる。
【数126】
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8)平面歪みε1は以下の式によって計算される。
【数127】
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9)次いで流動応力σ
1を以下によって見積もることができる。
【数128】
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10)無次元モーメント
【数129】
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は、以下の間隔の最大範囲を有する。
【数130】
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弾性状態から完全に塑性化した断面まで。
以下のように計算される。
【数131】
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11)平面歪み条件に対するヤング率E’は、以下によって簡単に定義することができる。
【数132】
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あるいは、弾性状態において応力σ
1と歪みε
1との間の傾きをチェックする。
12)現れた場合、最大負荷F
Max及び曲げ角度β
Fmaxの見積もり(多かれ少なかれ一定の安定状態モーメントM
maxを考慮する)。
【数133】
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おおよその最大曲げモーメントM
Maxは以下のように見積もることができる。
【数134】
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13)モーメントMはナイフと支持部との間に線形的に分布しているので、上記で設定されたパラメーターを曲げ手順の任意の段階でこれらの点の間にプロットすることができる(すなわちβ
1*)。水平X座標(ダイ支持部において開始し、接触点β
Cにおいて終了する)は以下の式によって計算される。
【数135】
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式中、L
N(β
1*)は曲げの選ばれた点における実際のモーメントアームであり、またM(β
2*)はその点におけるモーメントである。
【0214】
請求項の範囲内での本開示のさらなる変更は当業者には明白であろう。特に、本開示の方法論は当業者が鋼などの材料の特性を曲げの間調査できるようにする。所定の閾値に対する比較によって、当業者は本開示の方法を使用して、鋼などの材料の特定の使用に対する適合性を評価することができる。