【文献】
Eric D. Diebold et al.,Digitally synthesized beat frequency multiplexing for sub-millisecond fluorescence microscopy,NATURE PHOTONICS,Macmillan Publishers Limited,2013年,7(10),806-810,Supplementary Information、インターネットで公開されている同旧version含む
【文献】
Jacky C. K. Chan et al.,Digitally synthesized beat frequency-multiplexed fluorescence lifetime spectroscopy,BIOMEDICAL OPTICS EXPRESS,2014年,5(12),4428-4436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線周波数を同時に発生させて、前記LOビーム及び前記RFコムビームを生成すべく前記無線周波数を前記音響光学偏向素子に与える無線周波数発生器を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記光検出器と通信して、前記蛍光信号を受けて、前記蛍光信号に基づいて前記サンプルの少なくとも1つの蛍光画像を再構成する分析モジュールを更に備えていることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記蛍光信号の周波数多重分離を行って前記ビート周波数を決定し、前記ビート周波数で変調された蛍光放射を発する前記サンプルの空間位置と前記ビート周波数を相関させることにより、前記蛍光画像を生成するように構成されていることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記蛍光信号の少なくとも一部のフーリエ変換を行うことにより、前記蛍光信号の周波数多重分離を行って前記ビート周波数を決定することを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記分析モジュールは、ビート周波数毎にビート周波数の振幅値を計算してビート周波数に対応する画像の位置に対応するピクセル値を与えることによって、前記蛍光画像を再構成することを特徴とする請求項14に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記蛍光信号の複数のデジタルコピーを生成することによって前記蛍光画像を再構成するように構成されており、コピーの数は前記RFコムビームに関連付けられる周波数の数に相当することを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記RFコムビームの1つの周波数と前記LOビームの周波数との差に等しいビート周波数に相当する周波数を有する正弦波及び余弦波を前記デジタルコピーの各々に乗じることによって複数の中間信号を生成するように更に構成されていることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記RFコムビームの周波数間の周波数間隔の半分に等しいバンド幅を有するローパスフィルタに各中間信号を通し、ビート周波数毎にビート周波数に対応する2つの中間信号の平方和の平方根を、ビート周波数で変調された蛍光放射を発する前記LOビーム及び前記RFコムビームにより照射されたサンプル位置に対応する画像ピクセルの振幅値として得るように更に構成されていることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記蛍光信号の複数のデジタルコピーの各々を、前記ビート周波数の1つに中心を置くバンドパスフィルタに通し、包絡線検出器を使用してビート周波数に対応する各ピクセルの振幅を推定することによって、前記蛍光信号の周波数多重分離を行うように構成されていることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記サンプルの暗視野画像を生成するための第1の検出アームと、前記サンプルの明視野画像を生成するための第2の検出アームとを更に備えていることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記分析モジュールは、前記蛍光画像と前記暗視野画像及び前記明視野画像の一方又は両方との複合画像を生成するように構成されていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
前記サブシステムは分析モジュールを更に有しており、前記分析モジュールは、前記光検出器と通信し、検出された前記励起信号を受けて、前記励起信号に関連付けられた前記ビート周波数を多重分離して前記ビート周波数の各々の位相を決定することを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の蛍光利用のフローサイトメトリでは、高速で流れる細胞、又はサブミリ秒の生化学的動態等のその他の高速現象のボヤケのない画像の取得が困難である場合がある。特に、キロヘルツ範囲の撮像フレームレートでのサンプルの短時間の露光では多くの蛍光色素の光放射が弱く、それによって、ボヤケのない画像を取得しにくくなる。更に、従来のシステムの多くは1つの撮像モードでしか動作しないため、サンプル分析のための十分な適応性を有することができない。
【0004】
そのため、蛍光分析のための改良された方法及びシステムに対するニーズがあり、特に、蛍光利用のフローサイトメトリを行うための改良された方法及びシステムに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、サイトメトリを行うためのシステムが開示されており、このシステムは、少なくとも1つの蛍光色素の励起に適した中心周波数を有するレーザビームを生成するためのレーザと、レーザビームを受けて、前記中心周波数に対して無線周波数(RF)シフトを夫々有する角度分離した複数のレーザビームを生成するための音響光学偏向素子とを備えている。角度分離したレーザビームは、ローカルオシレータビーム(LOビーム)及び複数のRFコムビームを有し、これらのビームの各々が、中心レーザ周波数に対して無線周波数シフトを示す。光学素子が、LOビームをRFコムビームの伝搬経路とは異なる伝搬経路に沿って導く。トップハットビーム整形素子がLOビームを受けて、例えばLOビームの伝搬方向に垂直な面内の1つの方向に沿ったトップハット強度プロファイルをLOビームに付与する。システムは、トップハット形のLOビーム及びRFコムビームを受けて、前記トップハット形のLOビーム及びRFコムビームの空間重なりによって結合ビームを与えるビームスプリッタと、その少なくとも一部が前記蛍光色素に関連付けられている複数の細胞を含み得るサンプルに結合ビームを導くための少なくとも1つの光学素子(例えばレンズ)とを更に備えており、LOビームはサンプルの複数の空間位置を、例えばサンプルがフローセルを通って流れているときに同時に照射し、前記RFコムビームの各々は前記空間位置の異なる位置を照射して、前記空間位置に前記蛍光色素があれば、前記蛍光色素から蛍光放射を引き出す。前記サンプルの空間位置の各々から発せられる蛍光放射は、前記LOビームの周波数とサンプルのその空間位置を照射しているRFコムビームの1つの周波数との差に相当するビート周波数を示す。
【0006】
ある実施形態では、無線周波数(RF)シフト間の周波数差は、前記蛍光色素のスペクトル吸収ピークのFWHM(半値全幅)より小さい。例として、無線周波数シフトは約10MHz〜約250MHzの範囲、例えば約50MHz〜約150MHzの範囲内である。ある実施形態では、無線周波数シフトは、約0.1MHz〜約4MHzの範囲の周波数だけ相互に分離している。
【0007】
ある実施形態では、上述のシステムは、ビームスプリッタの下流に配置されたレンズを更に備えており、レンズは、トップハット形のLOビームがRFコムビームの各々と重なり合うようにトップハット形のLOビーム及びRFコムビームを中間面に集束させる。各重なり位置におけるトップハット形のLOビームの強度プロファイルは、別の重なり位置におけるトップハット形のLOビームの強度プロファイルと実質的に同じとすることができる。場合により、LOビームはこの中間面に線形範囲(例えば、この面内の水平次元に沿った範囲)を有し、この範囲は、角度分離したRFコムビームの線形範囲(例えば、RFコムビーム間の最大水平距離)と実質的に等しい。トップハット形のLOビームは好ましくは、トップハット方向に(ビームの長い方向に沿って)実質的に均一な偏光を有する。
【0008】
例として、ある実施形態では、RFコムビームはガウシアン強度プロファイルを有し、トップハット形のLOビームは、ガウシアン強度プロファイルの最大強度と実質的に等しい強度を有する。更に、RFコムビームの偏光及びトップハット形のLOビームの偏光は並べられ得る。
【0009】
システムは無線周波数発生器を備えることができ、無線周波数発生器は、無線周波数シフトに対応する無線周波数を同時に発生させて、前記LOビーム及びRFコムビームを生成するために無線周波数を音響光学偏向素子に与える。ある実施形態では、無線周波数発生器は、ダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)RFコム発生器を有している。ある実施形態では、電子電力増幅器が、無線周波数発生器により生成された無線周波数駆動信号を音響光学偏向素子に与えるために増幅することができる。コントローラが、例えば、後で更に説明するようにシステムを異なる動作モードで動作させるため、及び/又は音響光学偏向素子に与える駆動信号の振幅及び/又は周波数を調整するために無線周波数発生器を制御できる。
【0010】
システムは、サンプルから発せられた蛍光放射があれば、その蛍光放射を検出して時間領域の蛍光信号を生成するための一又は複数の光検出器(例えば、一又は複数の光電子増倍管)を更に備えることができる。場合により、適したフィルタ(例えば、光学バンドパスフィルタ)が光検出器の前に設けられており、対象の蛍光周波数を透過させる一方、不要な放射周波数を遮断する。
【0011】
ある実施形態では、励起放射(すなわち、LOビーム及びRFコムビームの組合せ)は、サンプル内の複数の蛍光色素を同時に励起させることができる。このようなある実施形態では、システムは複数の光検出器を備えることができ、光検出器の各々はこれらの蛍光色素のうちの1つから発せられた蛍光放射を検出するために使用される。ある実施形態では、適したフィルタ、例えばバンドパスフィルタが光検出器の各々の前に設けられており、対象の蛍光周波数の放射を夫々の検出器に透過させる一方、不要な放射を遮断する。
【0012】
ある実施形態では、対物レンズが、ダイクロイックミラーによる反射を通じて励起放射(すなわち、LOビーム及びRFコムビームの組合せ)を受けることができ、励起放射を調査対象のサンプルに集束させることができる。サンプルにより発せられる蛍光放射は、対物レンズ及びダイクロイックミラーを通過し、一又は複数のレンズを通じて光検出器に集束することが可能である。サンプル内の複数の蛍光色素からの蛍光放射に対応する複数の蛍光周波数が複数の光検出器(例えば、光電子増倍管)を通じて検出されるある実施形態では、各光検出器は適したダイクロイックミラーに関連付けられることができ、ダイクロイックミラーから反射を通じて、蛍光色素のうちの1つからの蛍光放射に対応する周波数を有する蛍光放射を受ける。ダイクロイックミラーは、他の蛍光色素に対応する蛍光周波数を通過させて、下流にある他の検出器により検出させることができる。
【0013】
ある実施形態では、サンプルにより発せられる蛍光放射は、例えば一又は複数のレンズを通じて光ファイバに導かれ得る。光ファイバは、蛍光放射を受ける基端から放射が光ファイバから出る末端まで延びることができる。ある実施形態では、光ファイバの末端に光学的に結合された出射側レンズにより、光ファイバから出る蛍光放射を一又は複数の光検出器に導き易くなる。
【0014】
システムは分析モジュールを更に備えており、分析モジュールは一又は複数の光検出器と通信して、一又は複数の光検出器から一又は複数の時間領域の蛍光信号を受けて、サンプルの一又は複数の蛍光画像を再構成する。例えば、分析モジュールは、蛍光信号の周波数多重分離を行ってビート周波数を決定でき、ビート周波数を、サンプルの中のこれらのビート周波数で変調された蛍光放射を発する空間位置に相関させることにより、サンプルの蛍光画像を生成できる。例として、ある実施形態では、これらの空間位置はサンプルの水平次元に沿って存在することができる。ある実施形態では、サンプルがフローセル内を流れているとき、サンプルの様々な部分(例えば、サンプルの様々な水平範囲)からの蛍光放射が集められて分析されて、サンプルの2次元蛍光画像が生成される。
【0015】
ある実施形態では、分析モジュールは、(1)蛍光信号の少なくとも一部のフーリエ変換(例えば、FFT)を行って、ビート周波数に対応する信号の周波数成分を取得して、(2)周波数成分(ビート周波数)毎に、例えばその周波数成分の実部及び虚部の平方和の平方根を得ることによってその周波数成分の振幅値を計算して、そのビート周波数に対応する画像の位置に対応するピクセル値を与えることによって、サンプルの蛍光画像を再構成する。
【0016】
ある実施形態では、分析モジュールは、例えば増幅後に蛍光信号をデジタル化し、デジタル化された蛍光信号の複数のコピーを生成することにより、検出された蛍光信号の周波数多重分離を行うように構成されており、デジタル化されたコピーの数(N)はRFコムビームに関連付けられる周波数の数に相当する。周波数信号のデジタル化されたコピーの各々に、RFコムビームの1つの周波数とLOビームの周波数との差に等しいビート周波数に相当する周波数を有する正弦波及び余弦波を乗じ、複数の中間信号を生成する。各中間信号は、RFコムビームの周波数間の周波数間隔の半分と等しいバンド幅を有するローパスフィルタを通過する。RFコムビームの周波数の1つに相当するビート周波数毎に、そのビート周波数に対応するフィルタ処理された2つの中間信号の平方和の平方根が、そのビート周波数での変調を示す蛍光放射を発するLOビーム及びRFコムビームにより照射されたサンプル位置に対応する画像ピクセルの振幅値として得られる。
【0017】
ある実施形態では、分析モジュールは、検出された蛍光信号の周波数多重分離を、デジタル化された蛍光信号の一部のコピーを生成することによって実行するように構成されており、デジタル化されたコピーの数(N)はRFコムビームに関連付けられる周波数の数に相当する。デジタル化された蛍光信号の各コピーは、RFコムビームの1つに関連付けられるビート周波数を中心とするバンドパスフィルタにその蛍光信号を通すことによってフィルタ処理される。包絡線検出器が、その周波数に対応する各ピクセルの振幅を推定するために利用される。
【0018】
ある実施形態では、上述のシステムは、サンプルの明視野画像を生成するための検出アームと、サンプルの暗視野画像を生成するための別の検出アームとを更に備えている。明視野検出アームは、励起放射(すなわち、結合したLOビーム及びRFコムビーム)を順方向に、すなわちサンプルがフローセルに入るときの励起放射の伝搬方向に実質的に平行な方向に沿って受けるように、例えばサンプルが流れるフローセルに対して位置付けられることができる。更に、暗視野検出アームは、サンプルがフローセルに入るときの励起放射の伝搬方向に実質的に直交する方向に沿って、サンプルにより散乱した励起放射を受けるように、例えばフローセルに対して位置付けられることができる。
【0019】
ある実施形態では、明視野検出アーム及び暗視野検出アームの各々は一又は複数のレンズを有しており、レンズは、フローセルを透過した放射又は励起放射の伝搬方向とは異なる方向にサンプルにより散乱した放射を光検出器、例えば光電子増倍管に集束させる。場合により、適したフィルタ、例えばバンドパスフィルタが光検出器の前に設けられて、所望の放射周波数(例えば、励起周波数)を通過させる一方、不要な放射周波数を遮断することができる。
【0020】
場合により、分析モジュールは、明視野画像及び/又は暗視野画像と蛍光画像との重ね合わせを通じて合成画像を生成するように構成されている。
【0021】
関連する態様では、フローサイトメトリの方法が開示されており、この方法は、相互に無線周波数シフトされた複数のレーザビーム(RFコムビーム)をトップハット形レーザビーム(LOビーム)に重ね合わせることによって励起ビームを生成するステップであって、励起ビームは少なくとも1つの蛍光色素から蛍光を引き出すことができるステップと、励起ビームをサンプルに導いて、サンプル内に前記蛍光色素があれば蛍光色素を励起して、蛍光色素に蛍光放射を発せさせるステップとを有する。LOビームとRFコムビームとの重ね合わせの結果、RFコムビームの周波数とLOビームの周波数との差に相当する複数のビート周波数が空間的にエンコードされる。蛍光放射が検出されて周波数多重分離され、サンプルの蛍光画像が生成される。
【0022】
ある実施形態では、サンプルの明視野画像及び暗視野画像が生成され、明視野画像及び暗視野画像は蛍光画像により与えられる情報を補足することができる。ある実施形態では、上記のシステムは、サンプル上の複数の空間位置で蛍光色素の蛍光寿命測定を行い、蛍光寿命画像を形成するためのサブシステムを更に備えている。サブシステムは光検出器を有しており、光検出器は結合励起ビームを検出して、検出結果に応じて励起信号を生成する。分析モジュールは、光検出器と通信して、検出された励起信号を受けて、その励起信号に関連付けられるビート周波数を多重分離することにより、サンプル上の各空間位置におけるビート周波数の各々の位相を決定する。分析モジュールは、検出された蛍光信号に関連付けられるビート周波数の各々の位相を決定して、結合励起ビームに関連付けられる各周波数の位相を蛍光信号に関連付けられる夫々のビート周波数の位相と比較して、サンプル上の複数の空間位置における蛍光寿命測定を行うように更に構成されている。
【0023】
関連する態様では、フローサイトメトリを実行するシステムが開示されており、このシステムは、少なくとも1つの蛍光色素の励起に適した周波数を有するレーザビームを生成するためのレーザと、前記レーザビームを受けるように構成された音響光学偏向素子(AOD)、好ましくは1つの信号音響光学偏向素子と、一又は複数の駆動信号を前記AODに与えるための無線周波数発生器と、3つの動作モードを与えるように前記無線周波数発生器を制御するコントローラとを備えている。動作モードは、前記コントローラが周波数発生器に、複数の無線周波数駆動信号を前記AODに同時に与えさせて、サンプルの複数の空間位置を同時に照射するための複数の無線周波数シフトビームを生成させる第1の動作モードと、前記コントローラが周波数発生器に複数の無線周波数駆動信号を前記AODに連続的に与えさせて、サンプルに複数の無線周波数シフトビームを異なる時点に照射する第2の動作モードと、前記コントローラが周波数発生器に1つの無線周波数駆動信号を前記AODに与えさせて、サンプルに1つの周波数のビームを照射する第3の動作モードとを有する。特定の実施形態では、無線周波数シフトビームで照射される空間位置は1つの次元に沿って設けられ、それによって無線周波数シフトビームは1つの面に沿った2以上の位置に照射される。例えば、無線周波数シフトビームは、流れの長さ方向の軸に直交する面に沿った空間位置を照射してもよい。各無線周波数シフトビームは、サンプルで(例えば流れの表面で)相互に0.001μm以上離間していてもよく、例えば0.005μm以上、例えば0.01μm以上、例えば0.05μm以上、例えば0.1μm以上、例えば、0.5μm以上、例えば1μm以上、例えば2μm以上、例えば3μm以上、例えば5μm以上、例えば10μm以上、例えば15μm以上、例えば25μm以上、50μm以上離間していてもよい。
【0024】
関連する態様では、システムは、無線周波数シフトビームの一方(ここでは、「ローカルオシレータ(LO)ビーム」)を受けて、前記LOビームを、他方の周波数シフトビーム(ここでは、「RFコムビーム」)の伝搬経路とは異なる伝搬経路に沿って導くための光学素子を備えることができる。システムは、トップハット強度プロファイルをLOビームに付与するためのトップハットビーム整形素子と、第1の動作モードでトップハット形LOビームをRFコムビームと結合して、サンプルを照射するための複合励起ビームを形成する一又は複数の光学素子とを更に備えることができる。
【0025】
以下に簡単に説明する添付図面と共に以下の詳細な説明を参照することにより、本発明の各種の態様を更に理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本教示は一般に、サンプルの蛍光分析を行うための方法及びシステムに関する。後述するように、ある実施形態では、本教示によるシステムはサイトメトリを行うために3つの動作モードで動作できる。以下で本教示を説明するために使用される様々な用語は、特にことわりがないかぎり、当業界における通常の意味を有する。例えば、「蛍光色素」という用語は、本明細書では、当業界での通常の意味に従い、励起放射による照射に応じて放射を発することのできる蛍光化合物を指すために使用される。
【0028】
「サイトメトリ」及び「フローサイトメトリ」という用語も、当業界における通常の意味に従って使用される。特に、「サイトメトリ」という用語は、細胞を同定及び/又は選別し、又は他の手段で分析するための技術を指すことができる。「フローサイトメトリ」という用語は、流体流に存在する細胞を、例えば細胞を蛍光マーカで標識して放射励起を通じて蛍光マーカを検出することによって同定及び/又は選別し、又は他の手段で分析できるサイトメトリ法を指すことができる。「約」及び「実質的に」という用語は、本明細書では、数値を含む特性に関して最大変化率が10%又は5%であることを意味する。
【0029】
図1は、3つの動作モードで動作できる、本教示のある実施形態によるサイトメトリを実行するためのシステム10を概略的に示す。後でより詳しく述べるように、一動作モードでは、調査対象のサンプルを複数の励起周波数で同時に照射でき、励起周波数の各々は、例えばレーザビームの中心周波数をシフトすることによって得られる。より具体的には、基準レーザビーム(本明細書では、ローカルオシレータビームとも呼ぶ)を複数の無線周波数シフトレーザビームと組み合わせることによって生成されるレーザビームにより複数のサンプル位置を同時に照射でき、それによって各サンプル位置が基準ビーム、及び無線周波数シフトビームの1つにより照射されて、そのサンプル位置に対象の蛍光色素があれば蛍光色素を励起する。ある実施形態では、基準ビームはそれ自体、レーザビームの無線周波数シフトを通じて生成できる。それゆえ、サンプルの各空間位置は、基準ビームの周波数と無線周波数シフトビームの1つの周波数との差に対応する異なるビート周波数で「タグ付け」できる。換言すれば、蛍光色素により発せられる蛍光放射はビート周波数を空間的にエンコードする。蛍光放射を検出でき、その周波数成分を分析してサンプルの蛍光画像を構成できる。
【0030】
別の動作モードでは、サンプルはある時間間隔に亘り複数の励起周波数のレーザビームにより連続的に照射され得る。このようなある実施形態では、励起周波数は、レーザビームを受ける音響光学偏向素子(AOD)に、時間的に変化する駆動信号を与えることによって得られる。多くの実施形態では、レーザビームは、数百テラヘルツ(THz)の範囲、例えば約300THz〜約1000THzの範囲の周波数を有する。AODに与える駆動信号は典型的には、無線周波数範囲、例えば約10MHz〜約250MHzの範囲内にある。レーザビームがAODを通過すると、複数の回折ビームが生成され、回折ビームの各々は異なる回折次数に対応する。ゼロ次回折ビームは入射レーザビームの周波数に対する周波数シフトを示さないが、より高次の回折ビームは、駆動信号の周波数又はその倍数に相当する入射レーザビームの周波数に対する周波数シフトを示す。ある実施形態では、駆動信号によりシフトされた入射レーザビームの周波数に相当する周波数を有する一次回折ビームは、分析対象のサンプルに対象の蛍光色素があれば、その蛍光色素を励起するための励起ビームとして利用される。駆動信号は経時的に変化するため、一次回折ビームの周波数及び角度シフトも変化し、それによって様々な位置における様々な励起周波数でのサンプルの照射が可能になる。照射された各位置からの蛍光放射があると、その蛍光放射を集めて分析し、サンプルの蛍光画像を構成できる。
【0031】
また別の動作モードでは、システム10は1つの励起周波数によってサンプルの複数の位置を同時に照射するように動作でき、励起周波数は、例えばレーザビームの中心周波数を無線周波数でシフトすることにより発生し得る。例えば、サンプルの水平範囲は、1つの励起周波数のレーザビームで照射され得る。検出された蛍光放射は、サンプル、例えば細胞/粒子の蛍光含有量を分析するために使用できる。
【0032】
従って、システム10の1つの利点は、後述する利点の中でもとりわけ、システム10が異なるモートで蛍光放射データを取得することで大幅な適応性を有し、異なる動作モード間で切り替える際に別の機器を利用したり、システムに何らかの機械的調整を加えたりする必要がないという点である。
【0033】
特定の実施形態では、システムは一又は複数の光源を備えている。ある例では、光源は、狭帯域波長LED、レーザが含まれるが、これらに限定されない狭帯域光源、一又は複数の光学バンドパスフィルタ、回折格子、モノクロメータに連結された広帯域光源、又は、組み合わせることによって狭い帯域幅の照射光を生成するこれらのあらゆる組合せである。ある例では、光源は、単波長のダイオードレーザ(例えば488nmレーザ)等の単波長レーザである。ある実施形態では、本システムは1つの光源(例えばレーザ)を備えている。他の実施形態では、本システムは2以上の異なる光源を備えており、例えば3以上の異なる光源、4以上の異なる光源、5以上の異なる光源を備えている。例えば、システムは、第1の波長を出力する第1の光源(例えばレーザ)と第2の波長を出力する第2の光源とを備えてもよい。他の実施形態では、システムは、第1の波長を出力する第1の光源、第2の波長を出力する第2の光源、及び第3の波長を出力する第3の光源を備えている。
【0034】
各光源は、300nm〜1000nmの範囲の波長を有してもよく、例えば350nm〜950nm、例えば400nm〜900nm、450nm〜850nmの範囲の波長を有してもよい。特定の実施形態では、光源は、一又は複数の蛍光色素の最大吸収に対応する波長を有する(後述のとおり)。例えば、光源は280〜310nm、305〜325nm、320〜350nm、340〜375nm、370〜425nm、400〜450nm、440〜500nm、475〜550nm、525〜625nm、625〜675nm及び650〜750nmのうちの一又は複数の範囲内の波長を有する光を出力してもよい。特定の実施形態では、各光源は、348nm、355nm、405nm、407nm、445nm、488nm、640nm及び652nmから選択される波長を有する光を出力する。
【0035】
システム10は、レーザビーム14を生成するレーザ放射源12を備えている。例として、レーザビームは、約300nm〜約1000nmの範囲内の真空波長に相当する約1000THz〜約300THzの範囲の波長を有することができる。レーザビームのビーム径(例えば、ガウシアンレーザビームが使用される場合はビームウエスト)は、例えば約0.1mm〜約10mmの範囲とすることができる。一般性を損なうことなく、この実施形態では、レーザ放射源12は488nmの波長の放射を約1mmのビーム径で発する。
【0036】
レーザビームの周波数は、そのシステムが意図されている一又は複数の特定の用途に基づいて選択できる。具体的には、後でより詳しく述べるように、レーザ周波数は、例えば放射の吸収を通じて対象の蛍光色素の電子移動を励起するのに適しており、蛍光色素がより低い周波数で蛍光放射を発するような周波数とすることができる。様々なレーザ源を利用できる。このようなレーザ源のある例には、米国カリフォルニア州サンタクララのCoherent,Inc.が販売するSapphire 488−SF、Genesis MX−488−1000−STM(Coherent,Inc.)、OBIS 405−LX(Coherent,Inc.)、米国カリフォルニア州サクラメントのVortran Laser Technology,Inc.が販売するStadus 405−250、及び米国カリフォルニア州アーヴィンのNewport CorporationのLQC−660−110が含まれるが、これらに限定されない。一般性を損なうことなく、この実施形態では、レーザビームはレーザビームの伝搬方向に垂直な面にガウシアン強度プロファイルを有すると仮定される。
【0037】
ミラー16がレーザビーム14を受けて、反射を通じてレーザビームを音響光学偏向素子(AOD)18に導く。この実施形態では、AOD 18は、調節可能なポストホルダマウント(A)に取り付けられており、それによってAODはレーザビーム14の伝搬方向に垂直な軸を中心として回転できる。コントローラ21の制御下で動作するダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)20が、1又は複数の駆動信号をAOD 18に与えることができる。例として、ある実施形態では、これらの駆動信号は、約50MHz〜約250MHzの範囲の周波数に及ぶことができる。例えば、AODに与えられる駆動信号は、55MHz〜225MHzであってもよく、例えば60MHz〜200MHz、例えば65MHz〜175MHz、例えば70MHz〜150MHz、75MHz〜125MHzであってもよい。ある実施形態では、駆動信号は、約0.1MHz〜約4MHzの範囲の周波数だけ相互に分離していてもよい。例えば、駆動信号は、約0.2MHz〜約3.9MHzの周波数だけ相互に分離していてもよく、例えば約0.3MHz〜約3.8MHz、例えば約0.4MHz〜約3.7MHz、例えば約0.5MHz〜約3.6MHz、約1MHz〜約3.5MHzの周波数だけ相互に分離していてもよい。この実施形態では、電子電力増幅器201が、DDS 20により生成された無線周波数信号をAOD 18に与えるために増幅する。
【0038】
サンプルが複数の励起周波数で同時に照射される動作モードでは、RFコム発生器20は、複数のRF駆動信号を同時にAOD 18に与える。例として、同時に与えられるRF駆動信号の数は約20〜約200の範囲とすることができる。レーザビームと駆動信号との相互作用の結果、レーザ放射源12により生成されるレーザビームの周波数に対して駆動信号の1つに対応する周波数シフトを夫々有する複数の角度分離したレーザビームが生成される。いかなる特定の理論にも限定されることなく、AODでは、圧電トランスデューサがクリスタル、例えばクォーツクリスタル内で無線周波数フォノンを生成でき、このような無線周波数フォノンによるレーザビームの光子の散乱によって、周波数シフトレーザビームを生成できる。これらの周波数シフトレーザビームのうちの1つである22を本明細書では「ローカルオシレータ」(LO)ビームと呼び、周波数シフトレーザビームの残りである24を本明細書では、「RFコムビーム」と呼ぶ。周波数シフトレーザビームの角度分離は、例えば約1ミリラジアン〜約100ミリラジオンの範囲とすることができる。例えば、周波数シフトレーザビームの角度分離は、2ミリラジアン〜約95ミリラジアンの範囲であってもよく、例えば3ミリラジアン〜約90ミリラジアン、例えば4ミリラジアン〜約85ミリラジアン、例えば5ミリラジアン〜約80ミリラジアン、10ミリラジアン〜約75ミリラジアンの範囲であってもよい。
【0039】
LOビーム及びRFコムビームはレンズ26を通過する。レンズ26は、この実施形態では焦点距離が約50mmの収束レンズである。レンズ26を通過すると、LOレーザビームはミラー28により遮断され、ミラー28はLOビームを異なる方向(この実施形態ではLOビームの当初の伝搬方向に実質的に直交する方向)に変える。ミラー28は、RFコムビームがミラー28を通らず、レンズ30(この実施形態では焦点距離200mmを有する)に伝搬するようにRFコムビームに対して位置付けられている。このようにして、LOビーム及びRFコムビームは、異なる伝搬方向に沿って導かれる。上記で開示された方法でピックオフミラー28を使用することにより、1つのAODを利用して、LOビーム及びRFコムビームの両方を生成し、これらを以下の方法で結合して、サンプルを照射するための励起ビームを生成することができる。複数のAOD(例えば2つのAOD、つまり、LOビームを生成するための一方のAOD及びRFコムビームを生成するための他方のAOD)を使用するのではなく、1つのAODを使用することにより、システムの構成が単純となり、更に後でより詳しく説明するように、複数の異なる動作モードでシステムを効率的に使用できることになる。
【0040】
ある実施形態では、LOビームのビームプロファイルは、RFコムビームと再結合する前に変調される。例えば、LOビームのビームプロファイルは、ビームの空間寸法、ビーム形状、強度、空間分布又はこれらのあらゆる組合せで調整(増減)されてもよい。特定の実施形態では、LOビームのビームプロファイルの空間寸法が変調される。例えば、ビームプロファイルは、一又は複数の寸法で、例えば流れの長さ方向の軸に直交する軸に沿ってビームプロファイルを長くするように調整されてもよい。これらの実施形態の一例では、ビームプロファイルの空間寸法(例えば、一又は複数の寸法)は、1%以上増大してもよく、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、5倍以上増大してもよい。これらの実施形態による別の例では、ビームプロファイルの空間寸法(例えば、一又は複数の寸法)は、1%以上減少してもよく、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、5倍以上減少してもよい。
【0041】
他の実施形態では、LOビームのビーム形状が変調される。例えば、ビーム形状は、ビームプロファイルが一又は複数の寸法で長いように変調されてもよい。特定の例では、LOビームのビーム形状は、LOビームの伝搬方向に垂直な面内で長くされる。特定の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形のビームプロファイルから、流れの長さ方向の軸に直交する軸に長い楕円形ビームプロファイルへと変えられる。他の実施形態では、LOビームプロファイルの形状は、円形のビームプロファイルから、流れの長さ方向の軸に直交する軸に長い寸法を有する長方形のビームプロファイルに変えられる。
【0042】
また別の実施形態では、LOビームの強度が変調される。例えば、LOビームの強度は、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、5倍以上増大してもよい。他の実施形態では、LOビームの強度は、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、5倍以上減少する。特定の実施形態では、LOビームの強度は、RFコムビームの強度と一致するように変調される。例えば、LOビームは、RFコムビームの強度と10%以下だけ異なる強度を有してもよく、例えば9%以下、例えば8%以下、例えば7%以下、例えば6%以下、例えば5%以下、例えば4%以下、例えば3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば0.01%以下だけ異なる強度を有してもよく、LOビームの強度がRFコムビームと0.001%以下だけ異なる場合を含む。特定の例では、LOビーム及びRFコムビームの強度は同じである。
【0043】
また別の実施形態では、ビームプロファイルの空間分布も変調されてよい。例えば、LOビームは、LOビームの強度が一又は複数の寸法でガウシアンではなくなるように変調されてもよい。例えば、LOビームは、流れの長さ方向の軸に平行な第1の軸に沿ってガウシアン分布を有して、流れの長さ方向の軸に直交する第2の軸に沿ってガウシアン分布を有さないように変調されてもよい。
【0044】
あらゆるビーム整形プロトコルを使用してLOビームのビームプロファイルを変調してもよく、ビーム整形プロトコルには、屈折ビーム整形プロトコル及び回折ビーム整形プロトコルが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、LOビームはトップハットビーム整形素子により変調される。
【0045】
この実施形態では、LOビームは、他の収束レンズ32(この実施形態では約200mmの焦点距離)へと伝搬する。レンズ26及び収束レンズ32の組合せにより、LOビームを拡大してコリメートし、それによってトップハットビーム整形素子34の裏面開口を適切に満たす。より具体的には、LOビーム22は収束レンズ32を通過し、ミラー33及びミラー35によってトップハットビーム整形素子34に反射する。
【0046】
トップハットビーム整形素子34は、ガウシアンLOビームの同位相波面を整形して、トップハット強度プロファイルの形成を可能にする。より具体的には、トップハットビーム整形素子から出たLOレーザビーム22’はビームスプリッタ44により反射して、レンズ46(この実施形態では100mmの焦点距離)により中間像面48に集束される。中間像面48上のレーザビームは、ビームの伝搬方向に垂直な面に水平方向に沿ってトップハット強度プロファイルを有する。AOD 18と同様に、この実施形態では、ビームスプリッタ44は調節可能なポストホルダマウント(B)に取り付けられている。この実施形態では、トップハットビーム整形素子は、放射の偏光がビームのトップハット方向に沿って(この実施形態では水平方向に沿って)実質的に均一であるトップハットビームプロファイルを生成する。
【0047】
例示として、
図2Aは、LOレーザビームがトップハットビーム整形素子に入るときのLOレーザビームのガウシアン強度プロファイルを概略的に示している。
図2Bに概略的に示されているように、LOレーザビームは、水平方向に(この図ではページに垂直な方向に)延ばされて、プロファイルを通じて延びている各水平ライン、例えば水平ラインAに沿って実質的に一定であるが、縦方向にはガウシアンプロファイルに従って変化するビームプロファイルを中間像面48に示す。
【0048】
様々なトップハットビーム整形素子を利用できる。例として、非球面を有する屈折光学素子又は回折光学素子を使って、適した空間同位相波面を有するビームを生成でき、このビームは、レンズによる集束後にレンズの焦点面にトップハットプロファイルパターンを生成する。このようなトップハットビーム整形素子には複数の形状因子があり、この方法の様々な実施を本教示の各種の実施形態でサンプルでの適したLOビーム形状を生成するために利用できる。例えば、“Refractive optical system that converts a laser beam to a collimated flat−top beam”と題する米国特許第6295168号明細書、及び“Rectangular flat−top beam shaper”と題する米国特許第7400457号明細書は、何れもその全体が参照によって本願に援用され、本教示のある実施形態によるシステムにフラットトップビーム整形素子として使用できるビーム整形システムを開示している。例示として、
図3は、米国特許第7400457号明細書の
図1を再現したものであり(参照番号は異なる)、方形ビーム又は矩形ビームを与えるためのビーム整形システム300を概略的に示しており、ビーム整形システム300は、直交するように配置された2つの非球面シリンドリカルレンズ302、304を有している。第1の非球面シリンドリカルレンズ302はX軸に沿って入射ビームAを整形するためのレンズであり、第2の非球面シリンドリカルレンズ304はY軸に沿って入射ビームAを整形するためのレンズである。2つの交差する非球面シリンドリカルレンズは、X軸に沿ってフラットトッププロファイルを有する矩形レーザビームBを与えるように構成されている。第1の非球面シリンドリカルレンズ302の入射面302aは、表面の中心でより小さくレンズの両端に向かって滑らかに増大する可変曲率半径を有する非球面シリンドリカル凸面である。第2の非球面シリンドリカルレンズ304は、第1の非球面シリンドリカルレンズ302と同様であるが、第1の非球面シリンドリカルレンズ302に対して直交して配置されてY軸に沿ってビームを整形する。非球面シリンドリカルレンズ302、304の入射面302a/304a及び出射面302b/304bのプロファイルは、入射ビームAのXプロファイル及びYプロファイルと、結果として得られる矩形レーザビームBの所望の強度プロファイルとに応じて独立して選択可能である(例えば、同特許の5欄及び6欄参照)。
【0049】
利用可能な市販のトップハットビーム整形素子の一例は、例えば、カナダ,ラシーヌのOsela,Inc.が販売するDTH−1D−0.46deg−4mmである。
【0050】
後でより詳しく述べるように、ビーム整形素子を使ってLOビームを水平方向に沿って延ばすことにより、多くの利点が提供される。例えば、LOビーム及びRFコムビームの組合せが実質的に同様の照度で複数のサンプル位置を照射して、LOビームの強度及びRFコムビームの強度をサンプル位置全体に亘って一致させることにより、高い変調度での蛍光信号の強度振幅変調をもたらすことが保証され得る。このような強度の一致が行われないと、撮像システムは、視野が小さくなるかもしれず、AODを駆動する周波数(ピクセル)の全てを使用しないかもしれない。蛍光信号の変調度は、システムがサンプルの蛍光画像を再構成する能力で重要な役割を果たすため、全てのピクセルにおける励起ビート周波数の均一な高い変調度は、システムの動作にとって特に有利である。更に、RFコムビームを生成するためにAODに与えられる電子信号の振幅は、ダイレクトデジタルシンセサイザの出力を(例えばコントローラ21を使って)制御し、RFコムビームの強度が、RFコムビーム及びLOビームが重なり合う全ての空間位置に亘ってLOビームの強度と等しくなるようにRFコムビームを均等化することによって調整され得る。この特徴は、蛍光放射の強度振幅変調の高い変調度が確保されるという利点を提供する。
【0051】
図1を再び参照すると、RFコムビーム24は、レンズ26及びレンズ30の組合せを通じて、中間像面38に結像される。より具体的には、RFコムビーム24はレンズ26を通過し、ミラー28を避けてレンズ30に到達し、レンズ30がRFコムビームを、ミラー40、42を通じて中間像面38に導く。
【0052】
図4は、中間像面38における例示的な数のRFコムビームの分布を概略的に示している(一般性を損なうことなく、RFコムビームの数は、例示を目的として6(RF1,...,RF6と表示)が選択されているが、他の数も利用できる)。
図4に示されているように、RFコムビーム24は、中間像面38で水平方向に沿って相互に空間的に分離している。他の実施形態では、RFコムビーム24のうちの2以上は部分的に重なり合ってもよい。それゆえ、レンズ26及びレンズ30の組合せは、角度分離したRFコムビームを、水平方向の範囲に亘って空間的に分離した一組のビームに変換する。
【0053】
図1を再び参照すると、前述のように、ビームスプリッタ44は、トップハットビーム整形素子34から出たレーザビーム22’を受けて、そのレーザビームをレンズ46に反射し、レンズ46が今度はそのレーザビームを中間像面48に集束させ、中間像面48でLOビームはトップハットビームプロファイルを示す。ビームスプリッタ44はまた、中間像面38からRFコムビーム24を受けて、RFコムビームがビームスプリッタ44を通過できる。レンズ46はRFコムビーム24を中間像面48に集束させて、RFコムビーム24がトップハットビームプロファイルを有するLOビームと結合して結合ビーム49が生成される。
【0054】
例示として、
図5は、結合ビーム49の伝搬軸に垂直な面内における結合ビーム49の1つの例示的プロファイルを概略的に示す。結合ビームの強度プロファイルは、トップハットLOビームの強度プロファイル(四角形で概略的に示されている)及びRFコムビーム24の強度プロファイル(各々が円の1つで概略的に示されている)の重ね合わせとして生成される。後でより詳しく述べるように、LOビームとRFコムビームとのこの重ね合わせにより、水平範囲に沿った1つの空間位置に夫々対応する複数のビート周波数がその水平範囲に沿って与える。サンプルの水平範囲を照射すると、サンプルのある位置から発せられた蛍光放射は、振幅変調を通じて、その位置を照射する放射に関連付けられるビート周波数をエンコードする。
【0055】
再び
図1を参照すると、収束レンズ50(この実施形態では200mmレンズ)と、この実施形態では調節可能なポストホルダマウントCに取り付けられている対物レンズ52とが、中間像面48の画像をフローセル54を通って流れるサンプルへと中継するためのテレスコープを形成する。この実施形態では、ミラー56が結合ビーム49を収束レンズ50に反射して、結合ビームが収束レンズ50を通過した後、ダイクロイックミラー58が結合ビームを対物レンズ52に反射する。
【0056】
図6に概略的に示されているように、結合ビーム49は、フローセル54を通って流れるサンプル62の複数の空間位置60を同時に照射する。それゆえ、各空間位置60は、RFコムビームの1つとトップハット形LOレーザビームの一部との重なり合いによって照射される。これらの空間位置で、放射はサンプル内に対象の蛍光色素があれば、その蛍光色素を励起する。より具体的には、この実施形態では、LOビーム及びRFコムビームは、例えば蛍光色素を励起させた電子状態に電子遷移することを通じて、蛍光色素をサンプルの複数の空間位置60で同時に励起する。
【0057】
ある実施形態では、サンプルは、複数の細胞が取り込まれている流れる流体を含むことができる。場合により、細胞は一又は複数の蛍光マーカ(蛍光色素)で標識することができる。蛍光マーカのある例には、蛍光たんぱく質(例えば、GFP、YFP、RFP)、蛍光色素で標識された抗体(例えば、蛍光イソチオシアネート)(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、核酸染料(例えば、4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI))、SYTO16、propiedium iodide(PI)、細胞膜染料(例えば、FMI−43)及び細胞機能染料(例えば、Fluo−4、Indo−1)が含まれるが、これらに限定されない。別の場合では、細胞内に存在する内的蛍光色素を利用して、その細胞からの蛍光放射を引き出すこともできる。後でより詳しく述べるように、このような外的蛍光色素又は内的蛍光色素は、照射する放射に応じて電子励起を生じさせて蛍光放射(典型的には、励起周波数より低い周波数の蛍光放射)を発し、その蛍光放射が集められて分析される。
【0058】
例示として、いかなる特定の理論にも限定されることなく、
図7は、蛍光色素の基底電子状態Aと2つの励起電子状態B、Cとに対応する仮定のエネルギーレベルを示している。蛍光色素は、基底電子状態(A)から励起電子状態(B)へと放射エネルギーの吸収を介して励起され得る。蛍光色素はその後、例えば蛍光色素の振動モードによる無放射遷移によって、より低い励起電子状態Cへと緩和され得る。蛍光色素は、光遷移によって、より低い励起電子状態Cから基底電子状態に更に緩和されることができ、それによって励起周波数より低い周波数の蛍光放射を発する。理解すべき点として、この仮定の例は説明を目的として与えられているにすぎず、蛍光放射を発することのできる唯一の機構を示しているのではない。
【0059】
多くの場合、蛍光色素は、基底電子状態から励起電子状態に励起する周波数範囲の電磁放射を吸収できる。例示として、
図8は、
図7に関連して説明した仮の蛍光色素に関する吸収曲線を示す。本教示によるある実施形態の一実施例では、LO周波数は、対象の蛍光色素の吸収ピークに対応する周波数と一致するように選択できる。無線周波数シフトビームは、夫々のビート周波数だけ、吸収ピークから分離した周波数を有することができる。典型的には、これらの周波数分離は、励起周波数が一切低下しないように蛍光色素の吸収バンド幅と比較して小さい。例として、あくまでも例示として、破線A、BはLOビームの周波数及びRFコムビームの1つの周波数を概略的に示している(説明しやすさのために、図面は正確な縮尺で描かれていない)。サンプルの空間位置をLOレーザビーム及び図示のRFコムビームの1つの両方で同時に照射することにより、蛍光放射は、LOビームの周波数とRFコムビームの周波数との差に相当するビート周波数での振幅変調を示す。
【0060】
再び例示のために、いかなる特定の理論にも限定されることなく、LOビームとRFコムビームの1つとにより同時照射を通じて蛍光色素に生じさせる電界は、数学的に以下のように定義できる。
【0062】
式(1)中、
E
com は、結合ビームの電界を指す。
E
RFは、RFコムビームの1つに関連付けられる電界の振幅を指す。
E
LOは、LOビームに関連付けられる電界の振幅を指す。
Φ
0 は、レーザ放射源12により発せられるレーザビームの周波数を指す。
Φ
RFは、RFコムビームに関連付けられる周波数シフトを指す。
Φ
LOは、LOビームに関連付けられる周波数シフトを指す。
【0063】
LOビームの電界及びRFコムビームの電界の重ね合わせに応じて発せられる蛍光放射の強度は、(ω
RF−ω
LO)に相当するビート周波数での変調を示す。従って、LOビームとRFコムビームの1つとの重ね合わせにより照射されるサンプルの各空間位置から発せられる蛍光放射は、LOビームに関連付けられる無線周波数シフトとその空間位置を照射しているRFコムビームに関連付けられる無線周波数シフトとの差に対応するビート周波数での変調を示す。
【0064】
蛍光の放射のプロセスには有限の時間量(典型的には、一般的な有機蛍光色素の場合は1〜10ナノ秒)が必要であるため、発せられる蛍光は、励起ビート周波数が高すぎると、高い変調度を示さない。それゆえ、多くの実施形態では、励起ビート周波数は1/τ
f よりはるかに低くなるように選択され、τ
f は蛍光色素の特徴的な蛍光寿命である。ある例では、励起ビート周波数は1/τ
f より1%以上低くてもよく、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば3倍以上、5倍以上低くてもよい。例えば、励起ビート周波数は、1/τ
f より0.01MHz以上低くてもよく、例えば0.05MHz以上、例えば0.1MHz以上、例えば0.5MHz以上、例えば1MHz以上、例えば5MHz以上、例えば10MHz以上、例えば25MHz以上、例えば50MHz以上、例えば100MHz以上、例えば250MHz以上、例えば500MHz以上、750MHz以上低くてもよい。
【0065】
実施形態では、光検出器は、照射されたサンプルからの光(例えば、蛍光等の発光)を検出するように構成されている。実施形態では、光検出器は、一又は複数の検出器を有してもよく、例えば2以上の検出器、例えば3以上の検出器、例えば4以上の検出器、例えば5以上の検出器、例えば6以上の検出器、例えば7以上の検出器、8以上の検出器を有する。あらゆる光検出プロトコルが利用されてもよく、これらには幾つかある光検出器の中でも特に、能動ピクセルセンサ(APS)、4分割フォトダイオード、イメージセンサ、電界結合素子(CCD)、増強電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンタ、ボロメータ、焦電型検出器、フォトレジスタ、太陽電池、フォトダイオード、光電子増倍管、フォトトランジスタ、量子ドットフォトコンダクタ又はフォトダイオード及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、対象の光検出器は350nm〜1200nmの範囲の光を検出するように構成されており、例えば450nm〜1150nm、例えば500nm〜1100nm、例えば550nm〜1050nm、例えば500nm〜1000nm、400nm〜800nmの範囲の光を検出するように構成されている。特定の実施形態では、光検出器は、最大発光波長の光を検出するように構成されており、例えば395nm、421nm、445nm、448nm、452nm、478nm、480nm、485nm、491nm、496nm、500nm、510nm、515nm、519nm、520nm、563nm、570nm、578nm、602nm、612nm、650nm、661nm、667nm、668nm、678nm、695nm、702nm、711nm、719nm、737nm、785nm、786nm、805nmの光を検出するように構成されている。
【0066】
ある実施形態では、サンプルにより発せられる蛍光放射は、例えば励起ビームの伝搬方向に垂直な光路に沿って様々な方法で集められることができる。他の実施形態では、蛍光放射はエピ方向に検出される。
【0067】
図1を再び参照すると、この実施形態では、照射されたサンプルにある一又は複数の蛍光色素により発せられた蛍光放射は対物レンズ52を通過し、ダイクロイックミラー58を透過して光検出器64に到達する。より具体的には、この実施形態では、レンズ65がダイクロイックミラー58を透過した蛍光放射をスリット開口66に集束させる。スリット開口66を透過した蛍光放射は蛍光放射フィルタ68を通り、光検出器64に到達する。光検出器の前に設けられたスリット開口66(又は後述する他の実施形態では光学フィルタ)により、サンプルの特定の面から発せられる蛍光放射は通過する一方、その面以外からの蛍光放射は遮断されることができる。更に、蛍光放射フィルタ68、例えばバンドパスフィルタにより、蛍光放射は光検出器64に通過する一方、他の周波数の放射の通過は実質的に遮断されることができる。
【0068】
光検出器64は、ビート周波数の範囲全体からの信号を検出して透過させるのに十分なRFバンド幅を有する。適した光検出器のある例にはとりわけ、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード及びハイブリッド光検出器が含まれるが、これらに限定されない。例として、ある実施形態では、浜松ホトニクスが販売する光電子増倍管(例えば、R3896、R10699、H11462)を使用できる。光検出器は、受けた蛍光放射の検出結果に応じて信号、例えばこの実施形態ではアナログ信号を生成する。
【0069】
他の例として、
図9Aを参照すると、LOビームと空間的に分離したRFコムビームとによる同時照射に応じてサンプルにより発せられた蛍光放射は、対物レンズ52及びダイクロイックミラー58を通過し、基端102aから末端102bへと延びているマルチモード光ファイバ102にレンズ100を介して導かれる。より具体的には、マルチモード光ファイバ102の基端102aは、レンズ100の焦点面に近接して位置付けられて蛍光放射を受ける。光取出しレンズ104が光ファイバの末端102bに連結されており、ファイバから出た放射をコリメートする。
【0070】
多くの場合、サンプルを照射する励起放射は、十分に広い放射吸収スペクトルを有することができる複数の蛍光色素(例えば、有機蛍光色素)を励起し、それによって励起周波数はサンプル内の複数の蛍光色素の吸収スペクトル内に含まれる。すると、各蛍光色素は異なる周波数の蛍光放射を発する。一般性を損なうことなく、また例示を目的として、この実施形態では、検出システムは4つの光電子増倍管106、108、110、112を有しており、光電子増倍管の各々がコリメートされた放射のうち、照射されたサンプルの中の励起放射により励起した4つの蛍光色素の中の1つにより発せられる蛍光放射に対応する部分を受ける。より具体的には、ダイクロイックミラー114が、蛍光色素の1つにより発せられた第1の周波数の蛍光放射を光電子増倍管106に反射する一方、他の周波数の蛍光放射は透過することができる。別のダイクロイックミラー116が、異なる蛍光色素により発せられた異なる第2の周波数の蛍光放射を光電子増倍管108に反射する一方、また別の蛍光色素により発せられた第3の周波数の蛍光放射を含む、放射の残りの部分が第3のダイクロイックミラー118に到達して、第3のダイクロイックミラー118がその蛍光放射を光電子増倍管110に反射することができる。第3のダイクロイックミラー118は、第4の蛍光色素により発せられた第4の放射周波数の蛍光放射を含む放射の残りの部分を透過させて光電子増倍管112に到達させることができる。
【0071】
複数のバンドパスフィルタ120、122、124、126は、4つの蛍光周波数のうちの1つに夫々中心を置き、光電子増倍管106、108、110、112の前に夫々設けられている。光電子増倍管の各々により検出された信号は、後述するように分析されて、夫々の蛍光周波数で蛍光画像が生成される。ある実施形態では、複数の光検出器を使用するのではなく、1つの光検出器、例えば1つの光電子増倍管を使って、蛍光放射、例えば1つの蛍光色素からの発光に対応する蛍光周波数を検出できる。
【0072】
ある実施形態では、サンプルがフローセルの中を流れているとき、サンプルの異なる水平行が照射され、各水平行に関連付けられる蛍光放射が一又は複数の光検出器、例えば光電子増倍管106、108、110、112により検出される。
【0073】
図9Bは、
図9Aに関連して上述した検出システムと同様の検出システムを概略的に示しているが、この検出システムは、光ファイバを使用するのではなく、ダイクロイックミラー58を通過する複数の蛍光色素からの蛍光放射を含む蛍光放射が自由空間を伝搬して光電子増倍管106、108、112に到達する点が異なる。より具体的には、レンズ100は、蛍光放射をレンズ100及びレンズ104間に配置された開口126に集束させ、開口126は集束しない放射を遮断できる。レンズ104は、開口を通過した放射をコリメートし、コリメートされた放射は、
図9Aに関連して上述したように複数の光電子増倍管の間で分配される。
【0074】
ある実施形態では、システム10は、励起放射を使ってサンプルの(サンプルがない場合はフローセルの)暗視野画像及び明視野画像を与えるように構成できる。例として、
図9Cは、サンプルの暗視野画像及び明視野画像を夫々検出するための2つの検出アーム200、202を備えたシステム10のある実施形態を概略的に示している。
【0075】
より具体的には、検出アーム200は、励起放射の伝搬に垂直に位置付けられ、フローセルを流れるサンプルにより散乱した励起放射の一部を受ける。検出アーム200は2つのレンズ204、206を有しており、2つのレンズ204、206は、サンプルにより散乱した励起放射のうちの少なくとも一部をレンズ204により画定される立体角内で光電子増倍管208に集合的に導く。より具体的には、レンズ204は受けた散乱放射をコリメートし、レンズ206がコリメートされた散乱放射を光電子増倍管208に収束させる。この実施形態では、適したバンドパスフィルタ210が光電子増倍管208の前に設けられており、所望の周波数を有する放射を光電子増倍管208に通過させる一方、不要な周波数の放射を遮断することができる。光電子増倍管208の出力は、例えば後述する分析モジュールにより、当業界で知られている方法で処理して、暗視野画像を生成できる。
【0076】
検出アーム202は2つのレンズ212、214を有しており、レンズ212はフローセルから順方向に(実質的にフローセル54に入る励起放射の伝搬方向に沿って)出た励起放射をコリメートし、レンズ214はコリメートされた放射を光検出器216に集束させる。光検出器の前に設けられた適したフィルタ218、例えばバンドパスフィルタにより、励起周波数の放射を光検出器216に透過させる一方、その他の放射周波数の放射を実質的に遮断することができる。光検出器216の出力は、既知の方法で処理してフローセルの明視野画像を生成できる。
【0077】
従って、検出アーム200は、セルを通って流れる流体により散乱した励起放射を検出し、検出アーム202はフローセルを透過する励起放射を検出する。フローセルの中に流体が流れていないときには、光電子増倍管208により検出される信号はローであり、光検出器216により検出された信号は、フローセルを通る励起放射の散乱がほとんどなく、従って、励起放射の大きなパーセンテージ、時には全部がフローセル内を流れるときにはハイとなる。これに対して、フローセル内の流体サンプルの流れは、光電子増倍管208により生成される信号を、サンプルによる励起放射の一部の散乱によって増大させることができ、光検出器216により生成される信号はフローセルを透過する励起放射のレベルの低下に伴って減少する。
【0078】
別の例として、
図9Dに関して、本開示によるシステムの一実施形態では、フローセル54に対して励起放射の伝搬方向に実質的に直交して配置された検出アーム220aが、サンプル内の複数の蛍光色素により発せられる蛍光放射及びサンプルにより散乱する励起放射の両方を検出するための光検出器を有している。より具体的には、検出アーム220aはレンズ222、224を有しており、レンズ222、224は蛍光放射及び散乱した励起放射を開口226に導き、開口226は集束していない放射を遮断する。レンズ228は、開口を通過した放射をコリメートする。ダイクロイックミラー230が、暗視野画像を検出するために、放射のうち励起周波数の部分を光電子増倍管232に反射する一方、蛍光放射を通過させる。光電子増倍管232の前に設けられた適したフィルタ232a、例えばバンドパスフィルタにより、励起周波数の放射は光電子増倍管232に通過する一方、不要な放射周波数を遮断することができる。別のダイクロイックミラー234が、蛍光色素により発せられた第1の周波数の蛍光放射を光電子増倍管236に反射する一方、その他の蛍光色素により他の周波数で発せられた蛍光放射を通過させる。別のダイクロイックミラー238が、別の蛍光色素により第2の周波数で発せられた蛍光放射を光電子増倍管240に反射する一方、また別の蛍光色素により第3の周波数で発せられた蛍光放射を通過させて、この蛍光放射を光電子増倍管242により検出する。上述した実施形態と同様に、複数のフィルタ236a、240a、242aが光電子増倍管236、240、242の前に夫々設けられており、所望の周波数の放射を透過させる一方、不要な放射周波数の放射を実質的に遮断する。
【0079】
引き続き
図9Dを参照すると、本教示によるシステムのこの実施例には、例えば
図9Cに関連して説明したように、明視野画像を生成するための別の検出アーム220bが更に設けられている。より詳しくは、検出アーム202bは、励起放射の明視野画像を生成するために、光を光検出器216へと収束させる2つのレンズ212、214を有している。フィルタ218、例えばバンドパスフィルタが、光検出器216の前に設けられており、励起放射を光検出器へと通過させる一方、不要な放射周波数を遮断する。
【0080】
再び
図1と更に
図10とに関して、この実施形態では、光検出器により生成された信号を増幅するために、トランスインピーダンス増幅器70を光検出器64(又は
図9A〜9Dに関連して説明した光検出器の各々)の出力に連結することができる。データ分析ユニット72(本明細書では、分析モジュール又は分析器とも呼ばれる)が、増幅された信号を受けて、この信号を分析しサンプルの蛍光画像を生成する。データ分析ユニット72は、ハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアで実装できる。例えば、検出された蛍光データを分析する方法を、プロセッサの制御下でアクセスされる分析モジュールのリードオンリメモリ(ROM)ユニットに記憶して、受けた蛍光信号を分析することができる。
【0081】
後でより詳しく説明するように、分析方法は、時間的に変化する光検出器の出力の周波数成分を決定し、これらの周波数成分に基づいてサンプルの蛍光画像を構成する。光検出器の出力の周波数成分を決定するために様々な方法を利用できる。このような適した方法のある例には、フーリエ変換、ロックイン検波、フィルタ処理、I/Q復調、ホモダイン検波及びヘテロダイン検波が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
例として、
図11A及び
図11Bは、サンプルの蛍光画像を生成するために分析モジュール72によって実行され得る例示的な分析ステップを示す。ステップ(1)で、アナログ増幅信号をデジタル化して、デジタル化された蛍光データを生成する。ステップ(2)で、分析のためにデジタル化された蛍光データの適した部分(長さ)を選択する。例えば、分析のためにサンプルの照射された行(本明細書ではフレームとも呼ぶ)に対応する蛍光データを選択できる。あるいは、分析のためにデータフレームの一部を選択できる。
【0083】
ステップ(3)で、選択されたデータのフーリエ変換を実行する。例として、ある実施形態では、データの高速フーリエ変換(FFT)を行い、データの周波数成分を決定する。このようなある実施形態では、FFTのビンがデータ取得のために選択された周波数に対応し得る。例えば、256MHzのサンプリングレートの場合、256のサンプルが、1MHzだけ、例えばDCから128MHzまで相互に分離する周波数ビンを生成できる。FFT分析により、発せられた蛍光放射が増幅変調を示すビート周波数に相当する周波数が与えられる。
【0084】
引き続き
図11A及び
図11Bに関して、この実施形態では、ステップ(4)で、FFTデータにある各周波数成分の振幅値が、その周波数成分の実部成分及び虚部成分の平方和の平方根を得ることによって計算される。各周波数成分はサンプルの特定の位置から蛍光放射を引き出すために利用されたビート周波数の1つに対応するため、周波数成分の振幅値は、サンプルの水平行に沿ってその周波数成分に関連付けられる位置に関するピクセル値を与えることができる。このようにして、サンプルの水平行の画像に関するピクセル値を決定できる。サンプルがフローセルの中を垂直に流れているとき、サンプルの水平行毎に得られた蛍光データに関して上記のステップを繰り返すことができる。ピクセル値を使って、蛍光画像を構成できる(ステップ5)。
【0085】
前述のように、分析モジュール72は、本教示に従って当業界で知られている技術を使いハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアで実装できる。例として、
図12は分析器72の例示的な実施例を概略的に示しており、分析器72は、増幅器70から増幅された蛍光信号を受けて、この蛍光信号をデジタル化してデジタル化された蛍光データを生成するアナログ−デジタル変換器74を有している。分析モジュールは、計算及び論理演算の実行を含む、分析モジュールの動作を制御するための中央処理ユニット(CPU)76を更に有している。分析モジュールは、ROM(リードオンリメモリ)78、RAM(ランダムアクセスメモリ)80及び固定メモリ82も有している。通信バス84が、分析モジュールの各種の構成要素間の通信、例えばCPU 76とその他の構成要素との間の通信を容易にする。メモリモジュールは、蛍光データを分析するための命令と分析結果とを記憶するために使用できる。例として、ある実施形態では、データ分析のための命令、例えば
図11A及び
図11Bに関連して述べた上記のステップを実行するための命令をROM 78に記憶できる。CPUは、ROM 78に記憶された命令を使って、RAM 80に記憶されたデジタル化された蛍光データに対する作業を行い、サンプルの蛍光画像(例えば1次元画像又は2次元画像)を生成できる。CPUは、固定メモリ82、例えばデータベースに蛍光画像を記憶させることができる。
図12に概略的に示されているように、分析モジュールは任意に、受けたデータ(例えば、蛍光データ)からピクセル強度及びその他の数量の計算を実行するためのグラフィック処理ユニット(GPU)76’を有することができる。
【0086】
ある実施形態では、光検出器により生成される出力信号の周波数復調は、ロックイン検波技術を使って実現できる。例として、
図13A及び
図13Bに関して、このような一実施形態では、増幅された蛍光信号をデジタル化し(ステップ1)、デジタル化された蛍光信号の一部のコピーを生成する(ステップ2)。その際、デジタル化されたコピーの数(N)はRFコムビームに関連付けられる周波数の数に相当する。信号のデジタル化された各コピーに、RFコムビームの1つの周波数とLOビームの周波数との差に等しいビート周波数に相当する周波数を有する正弦波及び余弦波を乗じて複数の中間信号を生成する(ステップ2)。各中間信号を、RFコムの周波数間の周波数間隔の半分に等しい帯域幅を有するローパスフィルタに通す(ステップ3)。
【0087】
RFコムビームの周波数の1つに相当するビート周波数毎に(換言すれば、照射されたサンプルの空間位置に対応する周波数毎に)、その周波数に対応するフィルタ処理された2つの中間信号の平方和の平方根を、その周波数を有するLOビーム及びRFコムビームにより照射されたサンプル位置に対応する画像ピクセルの振幅値として得る(ステップ4)。ある実施形態では、同じビート周波数に対応する(すなわち、同じサンプル位置に対応する)複数の蛍光データ信号を上述の方法で処理でき、ピクセル値を平均して平均ピクセル値を得ることができる。
【0088】
サンプルがフローセルの中を垂直に流れているとき、サンプルの水平行毎に得られた蛍光データに関して上記のステップを繰り返すことができる。ピクセル値を使って蛍光画像を構成できる(ステップ5)。
【0089】
上述のロックイン検波方法は、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はハードウェアで実装できる。例として、一実施形態では、上述したロックイン検波方法は、特に7以上の周波数が使用される場合、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使って実装できる。ある実施形態では、スイスのチューリッヒのZurich Instrumentsが販売するHF2L−MF多周波数増幅器等の多周波数ロックイン増幅器を使用できる。
【0090】
更なる例として、ある実施形態では、検出された蛍光信号の周波数復調は、バンドパスフィルタに基づく画像復調技術を利用して実現できる。
図14A及び
図14Bに関して、このような周波数復調方法の一実施形態では、光検出器64及び増幅器70により与えられる蛍光信号をデジタル化し(ステップ1)、デジタル化された信号の複数のコピーを生成する(ステップ2)。その際、デジタル化されたコピーの数(N)はRFコムビームに関連付けられる周波数の数に相当する。デジタル化された蛍光信号の各コピーは、RFコムビームの1つに関連付けられるビート周波数(すなわち、サンプルの特定の位置に関連付けられるビート周波数)に中心を置くバンドパスフィルタに信号を通すことによってフィルタ処理する(ステップ3)。より具体的には、各バンドパスフィルタは、N個のビート周波数のうちの1つに中心を置き、隣り合うビート周波数間の周波数間隔の半分と等しいバンド幅を有する。
【0091】
各ビート周波数で包絡線検出器を使用して、水平ライン毎にそのビート周波数に対応する各ピクセルの振幅を推定する(ステップ4)。場合により、ピクセルに対応する複数のピクセル値を、そのピクセルに関連付けられるサンプル位置に対応する複数の蛍光信号を処理することによって得て平均化して平均ピクセル値を得る。サンプルがフローセルの中を垂直に流れているとき、サンプルの水平行毎に得られた蛍光データに関して上記のステップを繰り返すことができる。ピクセル値を使って、サンプルの1次元蛍光画像又は2次元蛍光画像を構成できる(ステップ5)。
【0092】
分析モジュールは、明視野画像データ及び暗視野画像データを受けて処理するように更に構成できる。例えば、
図9C及び
図10に関して、分析モジュール72は、光検出器208、216から暗視野画像データ及び明視野画像データを受けて、暗視野画像及び明視野画像を生成するように更に構成できる。例えば、
図12に関して、例えば既知の方法で暗視野画像及び明視野画像を生成するための命令を固定メモリ82に記憶できる。プロセッサ76はこれらの命令を使って、受けた暗視野画像データ及び明視野画像データを処理して画像を生成できる。分析モジュールは、例えば蛍光画像と明視野画像及び暗視野画像の一方又は両方とを重ね合わせることによって複合画像を生成するように更に構成できる。
【0093】
上述したシステム10のような本教示によるシステムによって生成される蛍光画像、明視野画像及び暗視野画像を様々な方法で使用できる。例えば、蛍光画像は、従来のフローサイトメータにより生成されるデータと比較できる値を生成するように統合され得る。蛍光画像は、その画像を生成させた蛍光プローブの位置を決定するために分析することもできる(例えば、蛍光プローブが核であるか、細胞質であるか、細胞小器官に局所化されているか、又は細胞膜の外側にあるかを決定できる)。更に、ある用途では、全てが同じ細胞から得られた異なる蛍光バンドを検出することにより得られた複数の蛍光画像を使って、ある細胞内の複数の蛍光プローブの共局在化の度合いを決定できる。加えて、とりわけ細胞の形態、細胞内情報伝達、インターナリゼーション、細胞間相互作用、細胞死、細胞周期及びスポット計数(例えばFISH)の分析が、マルチカラー蛍光画像、明視野画像及び暗視野画像を使って可能となる。
【0094】
前述したように、システム10は、少なくとも3種類のモードで動作できる。上述した一モードでは、LOビーム及び複数のRFコムビームがサンプルの一部(例えば、水平範囲に沿って配置された位置)を同時に照射し、照射された位置から発せられた蛍光放射を検出して分析することにより、サンプルの蛍光画像を構成する。別の動作モードでは、複数のRF駆動信号をAODに同時に与えるのではなく、駆動信号を含む周波数ランプがAODに与えられ、それによってレーザビームの周波数は時間と共に開始周波数(f
1 )から最終周波数(f
2 )へと変化する。周波数ランプ内の駆動周波数毎に、レーザビームの周波数はその駆動周波数だけシフトされ、サンプルは周波数シフトレーザビームにより照射されて、サンプルから周波数放射が引き出される。換言すれば、この動作モードでは、システムは、ある時間間隔に亘って中心レーザ周波数からシフトされた複数の周波数でサンプルを連続的に照射することにより、サンプルからの蛍光放射を得るように動作する。AODにより生じる周波数シフトは角偏向を伴い、それによって、同じ光路を使ってビームはサンプル全体に亘って高速で走査される。
【0095】
より具体的には、この動作モードでは、RF周波数シンセサイザ10を使用して、AOD 18に与えられる駆動信号を開始周波数(f
1 )から最終周波数(f
2 )へとランプする。例として、駆動信号をランプする周波数範囲は、約50MHz〜約250MHzとすることができる。ある実施形態では、駆動信号を約100MHz〜約150MHzへとランプする。この実施形態では、駆動周波数はある期間に亘り連続的に変化し、それによって例えば高速が実現される。他の実施形態では、駆動周波数は別々の段階で開始周波数(f
1 )から最終周波数(f
2 )へと変化することができる。
【0096】
周波数シフトビームがミラー28を通らず、レンズ26、レンズ30、ミラー40/42、ビームスプリッタ44、レンズ46、ミラー56、レンズ50、ミラー58及び対物レンズ52により画定される光路に沿って伝搬し、サンプルホルダの中を流れるサンプルの一部を照射するように、駆動周波数は選択される。ランプ速度は好ましくは、サンプルがビームを通って流れる際に、発せられる蛍光放射に基づいて生成される蛍光画像の垂直方向へのあらゆるボヤケを改善し、好ましくは防止するように十分高速である。これは、例えばランプ速度をサンプルの流動速度と一致させることによって実現できる。サンプルにおけるレーザスポットサイズは、適した速度を推定するために使用できる。例として、1マイクロメートルのレーザスポットサイズの場合、1本のラインに亘る走査時間は、サンプルの流れる速度が毎秒0.1メートルであるとき、画像のボヤケを防止するためには10μ秒以下とすべきである。
【0097】
励起放射による照射に応じてサンプルから発せられる蛍光放射は、上述した方法で集められて検出される。具体的には、
図10に関して、蛍光放射は光検出器64により検出される。検出された蛍光は増幅器70により増幅され、増幅信号は分析モジュール72によって分析されて、サンプルの蛍光画像が再構成される。画像の再構成は、水平ピクセル位置を、開始周波数(f
1 )から最終数(f
2 )まで走査期間内の特定の時間に割り当てることによって実行される。上述した動作モードのように周波数成分の振幅を分析することよってピクセル値を得るのとは異なり、この動作モードで使用される復調方式は、検出された蛍光信号の時間領域値を使用して値を画像のピクセルに割り当てる。サンプルが垂直方向に流れているときにこのプロセスを繰り返すことにより、サンプルの2次元蛍光画像を得ることができる。
【0098】
サンプルにより発せられる蛍光放射があれば、その蛍光放射を光検出器64により集める。
図10に関して、検出された蛍光放射は増幅器70により増幅される。分析モジュール72は増幅信号を受ける。この動作モードでは、分析モジュールは蛍光信号を分析して、サンプル、例えば細胞/粒子の蛍光含有量を決定する。この動作モードでサンプルを励起するビームは1つだけであるため、サンプルの励起に応じてビート周波数は発生しない。従って、蛍光信号の周波数領域には画像情報がない。その代わりに、検出された蛍光信号は時間領域でエンコードされた画像情報を有する。この動作モードでは、検出された蛍光信号の時間値を水平画素座標として使用して蛍光信号のデジタル化された電圧値をピクセル値(輝度)として使用することにより、画像をデジタルで再構成できる。AODに与えられる駆動周波数の各走査により、画像の1つの水平ライン(行)が生成される。画像の再構成は、サンプルが照射領域(地点)を通って流れているときに連続走査により実現される。
【0099】
また別の動作モードでは、システム10はサンプルの複数の位置を1つの励起周波数で同時に照射することより動作でき、この励起周波数は、例えばレーザビームの中心周波数を無線周波数でシフトすることによって発生し得る。より具体的には、再び
図1に関して、このような動作モードでは、1つの駆動無線周波数をAOD 18に与えることにより、AOD 18に入射するレーザビームに対してシフトされた周波数を有するレーザビームが生成される。更に、周波数シフトレーザビームは、AODに入射するレーザビームに対して角度シフトを示し、それによって、無線周波数レーザビームはミラー28によって遮断されて、レンズ32及びミラー33、35を通じてトップハットビーム整形素子34に向かって反射する。トップハットビーム整形素子34を出たビームは、ビームスプリッタ44により反射して、レンズ46によって中間像面48に集束される。この中間像面48では、
図15Aに概略的に示されているように、レーザビーム1000が水平方向に沿って延ばされたプロファイルを示す。
【0100】
水平方向に延ばされたレーザビームは、ミラー56により収束レンズ50に反射する。収束レンズ50を通過したレーザビームはミラー58によって対物レンズ52に反射する。前述したように、収束レンズ50及び対物レンズ52は、トップハットプロファイルのレーザビームを中間像面48からフローセル54の中を流れるサンプルへと中継するためのテレスコープを形成する。
【0101】
水平方向に延ばされたレーザビームはサンプルの水平範囲を照射して、サンプル内に対象の蛍光色素があれば、その蛍光色素をその水平範囲に沿って励起する。それゆえ、この動作モードでは、サンプルの複数の水平位置が異なる励起周波数で照射される第1の動作モードとは異なり、サンプルの複数の水平位置が同じ励起周波数で照射される。この動作モードでは、使用者が流れる細胞又は粒子の画像を得ることができない。しかしながら、この動作モードでは典型的には、他の2つの動作モードの場合より高い光学パワーをサンプルに与えることができ、これは、画像が不要な場合に、より高い信号対ノイズ比のデータの取得に有益となり得る。この動作モードには、音響光学偏向素子を駆動する電子信号を変化させるだけでアクセスでき、システムにあらゆる機械的変更を加える必要がない。
【0102】
従って、システム10は3つの異なる動作モードで動作してサンプルから蛍光放射を引き出すことができる。
【0103】
ある実施形態では、蛍光寿命測定は、例えば無線周波数シフトビーム及びローカルオシレータビームの各々のビートの位相を検出された蛍光信号の夫々の無線周波数成分の位相と比較することによって、サンプル上の各サンプル位置で実行できる。例として、
図15Bは、このような蛍光寿命測定を可能にする上述したシステム10の改良型であるシステム10’を示している(簡潔さを期し、
図1に示されている特定の構成要素はこの図では示されていない)。具体的には、RFコムビームのうち、ビームスプリッタ44に入射した部分は、ビームスプリッタによって収束レンズ400(例示として、この実施形態では収束レンズ400の焦点距離は200mmであるが、その他の焦点距離も使用できる)に反射する。収束レンズ400は、RFコムビームのその部分をフォトダイオード402で集束させ、フォトダイオード402は励起ビームを検出する。フォトダイオード402の出力は、分析モジュール72によって受けることができる(
図10参照)。分析モジュールは、例えば上述した復調方法の1つを使って励起ビームの周波数多重分離を行って、励起ビームの中の各無線周波数成分の位相を決定できる。このため、検出された蛍光信号の無線周波数成分毎に、その無線周波数成分の位相が比較され得る基準位相が与えられ得る。例えば、励起信号のFFTの実部成分及び虚部成分又はロックイン型復調のI成分及びQ成分を利用できる。あるいは、サンプル/フローセルの明視野画像を検出する検出器の出力を使って、蛍光ビート周波数の位相が比較され得る基準位相を得ることができる。
【0104】
より具体的には、分析モジュール72は、例えば上述した方法で、検出された蛍光信号の周波数多重分離を行うことができる。当業者であればわかるように、蛍光信号のビート周波数毎に無線周波数成分の位相を励起ビームの夫々の基準位相と比較して、空間的に分解された蛍光寿命測定値及び蛍光寿命画像を得ることができる。
【0105】
特定の実施形態では、本システムは、流れ内のサンプルにより発せられる光を検出するために上述の光学構成を利用するフローサイトメータシステムを備えている。特定の実施形態では、本システムは、米国特許第3960449号明細書、米国特許第4347935号明細書、米国特許第4667830号明細書、米国特許第4704891号明細書、米国特許第4770992号明細書、米国特許第5030002号明細書、米国特許第5040890号明細書、米国特許第5047321号明細書、米国特許第5245318号明細書、米国特許第5317162号明細書、米国特許第5464581号明細書、米国特許第5483469号明細書、米国特許第5602039号明細書、米国特許第5620842号明細書、米国特許第5627040号明細書、米国特許第5643796号明細書、米国特許第5700692号明細書、米国特許第6372506号明細書、米国特許第6809804号明細書、米国特許第6813017号明細書、米国特許第6821740号明細書、米国特許第7129505号明細書、米国特許第7201875号明細書、米国特許第7544326号明細書、米国特許第8140300号明細書、米国特許第8233146号明細書、米国特許第8753573号明細書、米国特許第8975595号明細書、米国特許第9092034号明細書、米国特許第9095494号明細書及び米国特許第9097640号明細書に記載されているフローサイトメータの一又は複数の構成要素を備えているフローサイトメータシステムであり、これらの開示を参照によって本願に援用する。
【0106】
前述したように、ある実施形態では、本システムは、フローサイトメータの流れ等の流れ内を流れるサンプル中の粒子(例えば、細胞)を撮像するために構成されている。流れ内の粒子の流速は、0.00001m/s以上であってもよく、例えば0.00005m/s以上、例えば0.0001m/s以上、例えば0.0005m/s以上、例えば0.001m/s以上、例えば0.005m/s以上、例えば0.01m/s以上、例えば0.05m/s以上、例えば0.1m/s以上、例えば0.5m/s以上、例えば1m/s以上、例えば2m/s以上、例えば3m/s以上、例えば4m/s以上、例えば5m/s以上、例えば6m/s以上、例えば7m/s以上、例えば8m/s以上、例えば9m/s以上、例えば10m/s以上、例えば15m/s以上、25m/s以上であってもよい。例えば、流れのサイズ(例えば、フローノズルオリフィス)に応じて、本システムにおける流れの流速は0.001μL/分以上であってもよく、例えば0.005μL/分以上、例えば0.01μL/分以上、例えば0.05μL/分以上、例えば0.1μL/分以上、例えば0.5μL/分以上、例えば1μL/分以上、例えば5μL/分以上、例えば10μL/分以上、例えば25μL/分以上、例えば50μL/分以上、例えば100μL/分以上、例えば250μL/分以上、500μL/分以上であってもよい。
【0107】
以下の例は、本教示の各種の態様を更に説明するためにのみ与えられており、必ずしも本発明の教示を実施する最適な方法又は得られる最適な結果を示そうとしているわけではない。
【0108】
実施例1
図9Aに関連して上述した検出システムと同様の検出システムを備える
図1に関連して説明したシステムと同様のシステムを使って、イリノイ州レイクフォレストのSpherotech Inc.がRCP−30−5Aの商品名で販売する8つの異なるレベルの蛍光染料で染色したポリスチレンビーズからの蛍光放射を測定した。また、このシステムを使って上述の方法で明視野画像及び暗視野画像も生成した。
【0109】
図16Aは、暗視野強度対明視野強度の散布図である。
図16Aの長方形の部分をゲートとして使い、
図16B、
図16C及び
図16Dに示されているデータを生成した。このデータには測定した全ての事象(合計50,000の事象を検出した)の約32%が含まれている。
図16Bは、各粒子により発せられた赤色蛍光(PI)対緑色蛍光(FITC)の散布図を示す。この
図16Bは、異なる輝度レベルの8つの集合を明確に示している。
図16C及び
図16Dは同じデータのヒストグラムである。
【0110】
実施例2
図9Aに関連して上述した検出システムと同様の検出システムを備える
図1に関連して上記に説明したシステムと同様のシステムを使って、CD45−FITC及びヨウ化プロピジウムで染色した、固定された末梢血白血球のFIRE画像、明視野画像及び暗視野画像を得た。サンプルには、Calcein−AMで染色した生体HeLa細胞の分画も含めた。細胞は、データ取得中にフローセルを0.5メートル/秒の速度で流れた。
【0111】
図17Aに示されている画像は、上から下に、明視野、CD45−FITC及びヨウ化プロピジウム蛍光チャネルの重ね合わせ、明視野、暗視野、CD45−FITC、及びPIチャネル蛍光である。補償は適用せず、全ての画像をオートスケールで観察した。2番、3番、5番、8番、9番、12番、17番、20番及び21番の細胞はHeLa細胞(集合B)であり、それ以外は白血球(集合A)である。
【0112】
図17Bは、集合Aが白血球を示して集合BがHeLa細胞を示す散布図である。
【0113】
実施例3
図9Aに関連して上述した検出システムと同様の検出システムを備える
図1に関連して上記に説明したシステムと同様のシステムを使って、CD45−FITC及びヨウ化プロピジウムで染色した、固定された末梢血白血球のFIRE画像、明視野画像及び暗視野画像を得た。サンプルは、抗EpCAM−FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した、固定されたMCF−7細胞のわずかな分画でスパイクした。細胞は、データ取得中にフローセルを0.5メートル/秒の速度で流れた。
【0114】
図18Aに示されている画像は、上から下に、明視野、FITC及びPIチャネル蛍光の重ね合わせ、明視野、暗視野、FITC、及びPI蛍光である。白血球の集合では、緑色蛍光はPI染料から漏れた蛍光のアーチファクトである。画像は全て、輝度のオートスケールで観察し、それゆえ、白血球はFITC蛍光を示すが、これはPIからのわずかな蛍光漏出信号である。1番、2番、4番、5番、10番、13番、15番及び16番の細胞はMCF−7細胞である。
【0115】
図18Bは、集合Aが白血球を示して集合BがMCF−7細胞を示す散布図である。
【0116】
当業者であればわかるように、本教示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができる。特に、上述の様々な特徴、構造又は特性は、適した方法で組み合わせられ得る。例えば、一実施形態に関連して述べた検出システムを別の実施形態で使用してもよい。