特許第6856636号(P6856636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856636摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856636
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダ
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/08 20060101AFI20210329BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20210329BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20210329BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   F16D25/08 E
   F16D25/12 B
   F16J15/52 Z
   F16J3/04 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-519348(P2018-519348)
(86)(22)【出願日】2016年10月10日
(65)【公表番号】特表2018-536121(P2018-536121A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】DE2016200467
(87)【国際公開番号】WO2017063649
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】102015220206.2
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ハイトバウム
(72)【発明者】
【氏名】フランク フリーチュ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ザイター
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102010010137(DE,A1)
【文献】 特開2000−179578(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010021788(DE,A1)
【文献】 特表2001−511240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
F16J 3/04
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダ(1)であって、
ハウジング(2)と、
前記ハウジング(2)内に形成される少なくとも1つの圧力室(3)であって、該圧力室(3)内には、ピストン(4)が、レリーズ軸受(5)を操作すべく軸方向で摺動可能に収容されており、前記レリーズ軸受(5)は、半径方向内側に位置する軸受内レース(5a)と、半径方向外側に位置する軸受外レース(5b)とを有し、前記圧力室(3)の半径方向外側に配置されている予圧ばね(6)を介して付勢されている、圧力室(3)と、
前記レリーズ軸受(5)と相互作用関係にある支持リング(7)であって、前記支持リング(7)には、前記予圧ばね(6)が軸方向で支持されており、前記支持リング(7)は、少なくとも1つの保持手段(8)を有し、前記保持手段(8)には、異物が前記圧力室(3)内に入り込むのを防止する汚損防止手段(9)が軸方向で固定されている、支持リング(7)と、
を備えるスレーブシリンダ(1)において、
前記支持リング(7)は、金属薄板から形成されており、前記汚損防止手段(9)の端部が、別の支持リング(10)と前記保持手段(8)との間に配置されていることを特徴とする、摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダ。
【請求項2】
前記支持リング(7)は、段状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のスレーブシリンダ。
【請求項3】
前記支持リング(7)は、ベース部分(7c)と、前記ベース部分(7c)に接続する2つのランド(7a,7b)とから形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のスレーブシリンダ。
【請求項4】
前記支持リング(7)は、少なくとも1つの折り返し(7d)を有し、該折り返し(7d)は、縁曲げまたは折りたたみ曲げにより形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のスレーブシリンダ。
【請求項5】
前記保持手段(8)は、前記支持リング(7)に、打ち抜かれたまたは折り曲げられた少なくとも1つの保持ノーズにより形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のスレーブシリンダ。
【請求項6】
前記保持手段(8)は、
径方向で取り巻くように延びる少なくとも1つの保持ノーズの形態で形成されているか、または
等に前記支持リング(7)の周囲に分配される複数の保持ノーズの形態で形成されており、該複数の保持ノーズは、前記支持リング(7)のランド(7a,7b)に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のスレーブシリンダ。
【請求項7】
前記支持リング(7)には、少なくとも部分的に該支持リング(7)に対して相補的に形成される別の支持リング(10)が当接することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のスレーブシリンダ。
【請求項8】
前記別の支持リング(10)は、金属薄板から製造されており、両前記支持リング(7,10)の少なくとも一方は、両前記支持リング(7,10)を互いにセンタリングするかつ/または方向付けるセンタリング手段(11)を有することを特徴とする、請求項7記載のスレーブシリンダ。
【請求項9】
前記汚損防止手段(9)用の前記少なくとも1つの保持手段(8)は、前記別の支持リング(10)に形成されていることを特徴とする、請求項7または8記載のスレーブシリンダ。
【請求項10】
前記支持リング(7)は、前記軸受内レース(5a)の、半径方向内側に位置する面に堅固に結合されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のスレーブシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダであって、ハウジングと、ハウジング内に形成される少なくとも1つの圧力室であって、圧力室内には、ピストンが、レリーズ軸受を操作すべく軸方向で摺動可能に収容されており、レリーズ軸受は、半径方向内側に位置する軸受内レースと、半径方向外側に位置する軸受外レースとを有し、圧力室の半径方向外側に配置されている予圧ばねを介して付勢されている、圧力室と、レリーズ軸受と相互作用関係にある支持リングであって、支持リングには、予圧ばねが軸方向で支持されており、支持リングは、少なくとも1つの保持手段を有し、保持手段には、異物が圧力室内に入り込むのを防止する汚損防止手段が軸方向で固定されている、支持リングと、を備えるスレーブシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
スレーブシリンダ、特にコンセントリックスレーブシリンダは、クラッチを操作する液圧式のシステム内で使用される。クラッチペダルの操作によりマスタシリンダが操作される。マスタシリンダは、液圧管路内の流体柱をスレーブシリンダに向かって移動させる。これにより、スレーブシリンダ内に配置される、軸方向で摺動可能なピストンが操作され、他方、ピストンは、クラッチ側のレリーズ軸受に作用し、クラッチを操作する。
【0003】
コンセントリックスレーブシリンダ(CSC(concentric slave cylinder)ともいう)は、リング形のハウジングを有し、ハウジングは、トランスミッション入力軸周りに同心に配置されている。スレーブシリンダのハウジングは、要求に応じて金属から製造されるか、または射出成形法によりプラスチックから形成される。リング形のハウジング内には、少なくとも1つの圧力室が存在し、圧力室内には、リング形に形成されるピストンが軸方向で変位可能に配置されている。ピストンの外側には、レリーズ軸受に作用するエネルギアキュムレータ、例えば予圧ばねが設けられている。異物がスレーブシリンダの圧力室内に入り込むのを回避すべく、従来技術では、弾性的なベローズが設けられる。ベローズは、ピストンあるいは圧力室を外側から囲繞し、例えば独国特許出願公開第102013204126号明細書に看取可能であるように、一方側ではスレーブシリンダハウジングに、他方側ではプラスチックからなる支持リングに支持されており、支持リングは、レリーズ軸受に結合されている。これによりベローズは、軸方向でスレーブシリンダハウジングに留められている。
【0004】
従来技術において公知の解決手段は、異物がスレーブシリンダの圧力室内に入り込むのを回避することはできる。しかし、公知の解決手段の欠点は、プラスチックから形成される支持リングが破損する可能性があることである。それというのも、プラスチックから形成される支持リングが、汚損防止手段を固定するとともに、予圧ばねのための支持面も形成しているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明の課題は、従来技術における公知の欠点を回避することである。特に本発明の課題は、支持リングをより安定に構成すると同時に、低コストかつ簡単に製造可能に構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、独立請求項の特徴により解決される。本発明の有利な形態は、従属請求項に看取可能である。
【0007】
摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダであって、ハウジングと、ハウジング内に形成される少なくとも1つの圧力室であって、圧力室内には、ピストンが、レリーズ軸受を操作すべく軸方向で摺動可能に収容されており、レリーズ軸受は、半径方向内側に位置する軸受内レースと、半径方向外側に位置する軸受外レースとを有し、圧力室の半径方向外側に配置されている予圧ばねを介して付勢されている、圧力室と、レリーズ軸受と相互作用関係にある支持リングであって、支持リングには、予圧ばねが軸方向で支持されており、支持リングは、少なくとも1つの保持手段を有し、保持手段には、異物が圧力室内に入り込むのを防止する汚損防止手段が軸方向で固定されている、支持リングと、を備えるスレーブシリンダにおいて、本発明により、支持リングは、金属薄板から形成されている。
【0008】
支持リングを金属薄板から形成したことにより、支持リングは、低コストかつ安定に形成されることができる。
【0009】
予圧ばねは、直接的に支持リングおよび/またはハウジングに支持されていても、間接的に、例えば別の構成部材を介して支持リングおよび/またはハウジングに支持されていてもよい。
【0010】
レリーズ軸受は、直接的または間接的にピストンに結合されているかまたは相互作用関係にあることができる。このために、ピストンと軸受内レースとの間に配置される「保持金属薄板」を設けてもよい。
【0011】
有利な一形態では、支持リングは、段状に形成されている。特に支持リングは、ベース部分と、ベース部分に接続する2つのランドとから形成されている。それゆえ、支持リングは、軸方向で延在する第1のランドと、第1のランドに接続し、半径方向で延びるベース部分と、ベース部分に接続し、同様に軸方向で延びる別のランドとを有する。支持リングのこの構成により、組み付けスペースに関して最適化した形で、支持リングをスレーブシリンダ内に組み込むことが可能である。
【0012】
好ましくは、支持リングは、少なくとも1つの折り返しを有し、折り返しは、特に縁曲げ(Abkanten)または折りたたみ曲げ(Schwenkbiegen)により形成されている。折り返しあるいは折り目は、特に支持リングのベース部分に設けられている。これにより支持リングは、簡単に製造可能かつ極めて安定である。
【0013】
別の有利な一形態では、保持手段は、支持リングに、打ち抜かれたまたは折り曲げられた少なくとも1つの保持ノーズにより形成されている。保持ノーズは、汚損防止手段を受容し、軸方向で固定するために用いられる。
【0014】
保持手段は、少なくとも1つの保持ノーズ、特に半径方向で取り巻くように延びる少なくとも1つの保持ノーズの形態で形成されているか、または複数の保持ノーズ、特に均等に支持リングの周囲に分配される複数の保持ノーズの形態で形成されており、複数の保持ノーズは、支持リングのランドに配置されている。
【0015】
別の一実施の形態では、汚損防止手段はベローズである。ベローズは、特に弾性的に、例えばゴムまたはプラスチックから構成されている。
【0016】
有利には、支持リングには、少なくとも部分的に支持リングに対して相補的に形成される別の支持リングが当接する。この別の支持リングは、特に同様に金属薄板から形成されている。
【0017】
好ましくは、両支持リングの少なくとも一方は、両支持リングを互いにセンタリングするかつ/または方向付けるセンタリング手段を有する。これらのセンタリング手段は、例えばビードの形態で形成されていてもよい。ビードは、他方の支持リングの、相補的に形成される溝あるいは空所に係合する。
【0018】
好ましくは、汚損防止手段用の少なくとも1つの保持手段は、上述の別の支持リングに形成されている。
【0019】
別の有利な一形態では、支持リングは、軸受内レースの、半径方向内側に位置する面に堅固に結合されている。支持リングは、特に堅固に軸受内レースにプレス結合されている。支持リングと軸受との間の結合は、力結合(kraftschluessig)および/または形状結合(formschluessig)により実施することができる。
【0020】
以下に、本発明について実施例を基に添付図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施の形態によるスレーブシリンダの断面図である。
図1a図1に示した支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図1b図1に示した支持リングの3次元図である。
図2】第2の実施の形態による支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図2a図2に示した支持リングの3次元図である。
図3】第3の実施の形態による支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図3a図3に示した支持リングの3次元図である。
図4】第4の実施の形態による支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図4a図4に示した支持リングの3次元図である。
図5】第5の実施の形態による支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図5a図5に示した支持リングの3次元図である。
図6】第6の実施の形態による支持リングを備えるスレーブシリンダの部分図である。
図6a図6に示した支持リングの3次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、スレーブシリンダ1を断面図で示している。スレーブシリンダ1は、ハウジング2を備え、ハウジング2内には、圧力室3が形成されている。圧力室3は、両側でハウジング2により画定されている。ハウジング2および圧力室3は、リング形に形成されている。圧力室3内には、リング形のピストン4が支持されており、ピストン4は、軸方向aで動作する。ハウジング2は、好ましくは、プラスチックまたは金属、例えばアルミニウムから形成されている。図示しないクラッチペダルの操作時、マスタシリンダが操作される。マスタシリンダは、圧力管路あるいは液圧区間を介してスレーブシリンダ1に接続されている。スレーブシリンダ1の圧力室3内の加圧により、ピストン4は、軸方向で変位され、これにより、レリーズ軸受5に作用する。他方、レリーズ軸受5は、クラッチを操作する。ピストン4の軸方向運動は、ピストン行程制限部、好ましくは、ストッパリングの形態のピストン行程制限部により制限される。ピストン行程制限部は、スレーブシリンダハウジング2のハウジング壁内にプレス嵌め等により固定される。ピストン行程制限部は、中心軸線Xに関して半径方向rで圧力室3内に達し、これにより、ピストンストッパを形成している。
【0023】
スレーブシリンダ1のピストン4は、ピストン−シール−結合部を介してシールに結合されている。シールは、溝付きシールリングであり、溝付きシールリングの蟻継ぎ幾何学形状は、ピストン−シール−結合部の、相補的に形成される受容部に嵌合される。シールは、2つのシールリップにより圧力室を封止している。
【0024】
ピストン4は、ピストン−軸受−結合部を介してレリーズ軸受5、特にレリーズ軸受5の軸受内レース5aに結合されている。レリーズ軸受5は、主として軸受内レース5aと、軸受外レース5bと、両軸受レース5a,5b間に配置されている詳しくは図示しない転動体とからなっている。ピストン−軸受−結合部は、好ましくは、保持金属薄板として形成されており、保持金属薄板は、軸受内レース5aとピストン4とに当接している。
【0025】
軸方向aで、レリーズ軸受5には、スラストディスクが接続しており、スラストディスクには、クラッチの皿ばねフィンガ部が載置されている。
【0026】
圧力室3あるいはスレーブシリンダ外壁の半径方向外側には、予圧ばね6の形態のエネルギアキュムレータが設けられている。予圧ばね6は、間接的または直接的に、軸方向aで一方側においてハウジング2に支持され、他方側においてレリーズ軸受5に支持されている。
【0027】
軸方向aでレリーズ軸受5と予圧ばね6との間には、支持リング7が設けられている。支持リング7は、金属、特に金属薄板から製造されている。支持リング7は、第1のランド7aと、第2のランド7bと、ベース部分7cとからなっている。ベース部分7cとランド7a,7bとは、一体に互いに結合されている、あるいは1ピースに形成されている。
【0028】
特に第2のランド7bは、保持ノーズの形態の、ランド7bの全周にわたって取り巻くように延びる1つの保持手段8を有する。しかし、複数の保持手段8を設けてもよい。複数の保持手段8は、特に規則的な間隔でランド7bの全周に分配されている。特に好ましくは、規則的な間隔で周囲に分配配置されている6つの保持ノーズが設けられている。汚損防止手段9が、支持リング7にクリップ結合により結合されていてもよい。
【0029】
さらに、ハウジング2に載置される(図示しない)付加的な支持部12が設けられていてもよい。支持部12は、リング形に構成されていることができ、ハウジング2内に支持部12に対して相補的に構成される受容部内に載置されている。支持部12は、同様に詳しくは図示しないランドを有し、ランドには、汚損防止手段9の固定用の保持手段が設けられていてもよい。支持部12の保持手段は、支持リング7の保持手段8と同様に形成されていてもよい。予圧ばね6は、好ましくはハウジング側で支持部12に支持され、レリーズ軸受側で支持リング7に支持されている。あるいは、予圧ばね6は、図1に示すように直接的にハウジング2に支持されていてもよい。而して予圧ばね6は、圧力室3の半径方向外側において圧力室のハウジング外壁と、ハウジング2から延出する別のランドとの間に位置している。この別のランドには、汚損防止手段9が固定あるいは当接されてもよい。予圧ばね6の半径方向外側には、汚損防止手段9が設けられている。
【0030】
弾性的な汚損防止手段は、保持手段によって、支持リング7にもハウジング2にも固定される。このために、汚損防止手段9は、支持リング7の保持手段8と相互作用関係にある少なくとも1つの受容部を有する。さらに、汚損防止手段を固定する保持ノーズの形態の複数の保持手段8は、支持リング7の周囲に均等に分配されて存在していてもよい。好ましくは、支持リング7は対称に構成されている。
【0031】
汚損防止手段9は、好ましくは、ベローズである。ベローズは、弾性的に構成されており、異物粒子がスレーブシリンダ1の圧力室3内に侵入するのを防止する。
【0032】
図1aは、スレーブシリンダ1の部分図であり、第1の実施の形態における支持リング7を示している。支持リング7は、ベース部分7cを有し、ベース部分7cには、第1のランド7aが、特に略90°の角度をなして軸方向aでレリーズ軸受5に向かって延在している。このとき、第1のランド7aは、特に軸受内レース5aの、半径方向内側に位置する面にプレス嵌めされている。さらに、ベース部分7cの第2の端部には、第2のランド7bが延在し、第2のランド7bは、同様に略90°の角度をなして圧力室3に向かって延在している。
【0033】
図1bに示すように、支持リング7は、好ましくは1ピースに形成されている。支持リング7は、金属薄板ディスクから製造され、複数回折曲されており、その結果、第1のランド7aの領域および第2のランド7bの領域に折り目が形成される。レリーズ軸受5の軸受内レース5aの領域内での支持リング7のプレス嵌めを保証すべく、第1のランド7aの領域には、湾出部が打ち出される。第2のランド7bの領域には、同様に折り目が設けられており、折り目には、折曲により汚損防止手段9用の保持手段8が形成される。この保持手段8は、汚損防止手段9に設けられた空所に係合し、これにより、汚損防止手段9を軸方向で留めることができる。あるいは、支持リング7を1ピースにアルミニウムまたはプラスチックから製造してもよい。
【0034】
図2は、支持リング7の第2の実施の形態を示している。支持リング7は、ベース部分7cの領域において折り目あるいは折り返しが生じるように成形されている。保持手段8は、第2のランド7bに打ち出しにより形成されている。図2aには、リング形の支持リング7の周囲に、打ち出された保持ノーズの形態の特に複数の保持手段8が形成されていることが看取可能である。
【0035】
図3は、第3の実施例による支持リング7を示している。支持リング7には、直接的に別の支持リング10が当接している。別の支持リング10は、同様に金属薄板から形成されている。しかし、別の支持リング10を別の材料、例えばプラスチックから製造してもよい。支持リング7は、本実施例でも、第1のランド7aと、第1のランド7aに接続するベース部分7cと、少なくとも部分的に、ベース部分7cに接続する少なくとも1つの第2のランド7bとを有する。図3aにも看取可能であるように、別の支持リング10は、ベース部分10aを有し、ベース部分10aは、少なくとも部分的に支持リング7のベース部分7cと直接的に当接している。両ベース部分10a,7cは、好ましくは軸方向aで延在している。別の支持リング10のベース部分10aには、略90°の角度をなして少なくとも1つのランド10bが接続する。ランド10bには、保持手段8、特に保持ノーズの形態の保持手段8が設けられている。これらの保持手段8は、折り曲げあるいは折曲により形成される。特に少なくとも1つのランド10bには、汚損防止手段9を留める保持手段が設けられる。ランド10bは、好ましくは、直接的には支持リング7の第2のランド7bに当接していない。好ましくは、ランド10bと第2のランド7bとの間には、間隙が設けられている。好ましくは、別の支持リング10の周囲には、規則的な間隔で複数のランド10bが設けられ、複数の保持手段を有する。支持リング7,10は、センタリング手段11を介して互いにセンタリングされ得るあるいは方向付けられ得る。これらのセンタリング手段11は、支持リングの一方にまたは両方の支持リングに設けられていることができる。センタリング手段11は、特に突起、好ましくは別の支持リングに設けられる突起である。あるいは別の支持リング10に切欠きを設け、そして支持リング7に湾出部を設け、支持リング7の湾出部が、別の支持リング10の、対応するように形成された切欠きに係合するようにしてもよい(逆もまた然り)。これによりセンタリング手段は、両支持リング7,10相互の回り止めもなしている。図3および3aに示す実施例によれば、これにより、支持リング7,10からなる2ピースの支持リングが提案される。
【0036】
図4および4aには、第4の実施例による支持リングを示してある。図3と同様、支持リングは、第1の支持リング7と第2の支持リング10とからなる2ピースに形成されている。支持リング7および10の構造は、図3および3aに示した上述の実施例に概ね相当している。図4に示した構成では、支持リング7,10は、ランド10bが支持リング7の第2のランド7bに直接的に当接することでセンタリングされる。これにより別途のセンタリング手段11は省略可能である。図4に看取可能であるように、支持リング7あるいは支持リング10は、略45°の角度をなしてベース部分のところを延在する少なくとも1つの面を有する。ベース部分7c,10aのこの面は、半径方向内側に配置される予圧ばね6用の当接部あるいはストッパ12として用いられる。好ましくは、支持リングのベース部分10aまたはベース部分7cに、軸受外レース5bの半径方向外側に配置される(図示しない)別のランドが配置されてもよい。この場合、この別のランドは、軸受外レース5bに少なくとも部分的に軸方向でオーバラップし、これにより、異物がレリーズ軸受5内に入り込むことを防止する。このランドは、特に支持リング7,10と1ピースに形成されていることができる。
【0037】
図5には、支持リング7および10からなる2ピースの支持リングを備えるスレーブシリンダ1を示してある。本実施例でも、両支持リング7,10は、有利には、金属薄板から形成されている。支持リング10には、第3のランド7eが接続し、第3のランド7eは、軸方向aでレリーズ軸受5に向かって延在している。第3のランド7eは、軸受外レース5bの半径方向外側に配置されており、軸受外レース5bを少なくとも部分的に軸方向aで囲繞し、これにより、異物および/または液体がレリーズ軸受5内に入り込むのを防止することができる。図5aは、図5に示した支持リングの詳細を示している。図5aには、支持リング7内に統合された回り止め14を示してある。支持リング7の第1のランド7aには、センタリング部が設けられており、センタリング部は、軸受内レース5aの内面と当接する。
【0038】
図6は、1ピースの支持リング7を備えるスレーブシリンダを示しており、支持リング7は、第1のランド7aと、第2のランド7bと、折り返し7dを有するベース部分7cと、第3のランド7eとを有し、第3のランド7eは、軸受外レース5bを半径方向外側から少なくとも部分的に囲繞する。図6aには、より詳細に、第3のランド7eの領域にも折り返しが設けられており、これにより、支持リングを簡単に製造可能にかつ安定に構成することができることを示してある。さらに、支持リングに設けられた開口13が看取可能である。開口13は、例えば打ち抜きにより形成されることができ、汚損防止手段9の動作時に汚損防止手段9内の空気の空気抜きに用いられる。支持リング7の周囲にわたって複数の開口13を設けることができ、開口13は、特に規則的な間隔で分配配置されている。回り止め14も再度明示してある。回り止め14および開口13は、支持リング7,10の図示のすべての実施の形態で使用可能である。
【0039】
上述の実施例は、摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダであって、ハウジングと、ハウジング内に形成される少なくとも1つの圧力室であって、圧力室内には、ピストンが、レリーズ軸受を操作すべく軸方向で摺動可能に収容されており、レリーズ軸受は、半径方向内側に位置する軸受内レースと、半径方向外側に位置する軸受外レースとを有し、圧力室の半径方向外側に配置されている予圧ばねを介して付勢されている、圧力室と、レリーズ軸受と相互作用関係にある支持リングであって、支持リングには、予圧ばねが軸方向で支持されており、支持リングは、少なくとも1つの保持手段を有し、保持手段には、異物が圧力室内に入り込むのを防止する汚損防止手段が軸方向で固定されている、支持リングと、を備え、かつ支持リングは、金属薄板から形成されている、摩擦クラッチを操作する液圧式のレリーズシステム用のスレーブシリンダに関する。
【符号の説明】
【0040】
1 スレーブシリンダ
2 ハウジング
3 圧力室
4 ピストン
5 レリーズ軸受
5a 軸受内レース
5b 軸受外レース
6 予圧ばね
7 支持リング
7a 第1のランド
7b 第2のランド
7c ベース部分
7d 折り返し
8 保持手段
9 汚損防止手段
10 別の支持リング
10a ベース部分
10b ランド
11 センタリング手段
12 ストッパ
a 軸方向
r 半径方向
X 中心軸線
図1
図1a
図1b
図2
図2a
図3
図3a
図4
図4a
図5
図5a
図6
図6a