(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0029】
<本発明および潜在クレームの記載>
[電源−1]
車両においては、例えば自動運転技術に対応する必要などにより、ワイヤハーネスの電源系統における信頼性を向上することが求められている。例えば、交通事故などに伴う車両の衝突の際であっても、重要な車載機器に対する電力供給が途絶えることがなく、車両だけで問題を回避できることが望ましい。また、ワイヤハーネスのような車両用回路体は、様々な種類の車両に対して部品を共通化したり、構成を単純化して、部品コストや製造コストを低減したり、部品の品番数を減らすことが求められている。そこで、以下の(1)〜(7)に示すように構成する。
【0030】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
を備え、
前記幹線は、2系統の電源ラインと、通信ラインとを有する
ことを特徴とする車両用回路体。
【0031】
この構成により、制御ボックス間に2系統の電源ラインが形成されるので、一方の電源ラインをバックアップ用として使用することにより電力供給が途絶える可能性を低減したり、必要に応じて一方の系統の電圧を高めることにより安定した電力を供給することができる。
【0032】
(2) 前記2系統の電源ラインは、互いに同じ電圧の電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0033】
この構成により、2系統の電源ラインを状況に応じて併用したり、一方をバックアップ用として使用することができる。
【0034】
(3) 前記2系統の電源ラインは、互いに異なる電圧の電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0035】
この構成により、電力消費が大きい負荷が接続された場合には、大きな電源電流が流れて供給線路における電圧降下が増大するので、高い電源電圧を選択することで、電力損失の増大を抑制できる。
【0036】
(4) 前記複数の制御ボックスは、
第1制御ボックスと、電源に対し前記第1制御ボックスよりも下流側の第2制御ボックスと、を有し、
前記第1制御ボックスは、前記第2制御ボックスに対し前記2系統の電源ラインのうちいずれか1系統のみの電源ラインを用いて電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0037】
この構成により、2系統の電源ラインのうちの1系統を予備用として確保しておき、使用中の電源ラインに異常が発生した場合に、当該予備用の電源系統に切り替えることが可能となる。
【0038】
(5) 前記車両に設置された補機に接続される枝線をさらに備える
ことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0039】
この構成により、電源から幹線に一括して電力を供給し、この幹線の電力を各補機に分配することが可能となる。
【0040】
(6) 前記枝線の一端は、前記制御ボックスに接続される
ことを特徴とする上記(5)に記載の車両用回路体。
【0041】
この構成により、補機に供給すべき電力を制御ボックスから分配することができる。
【0042】
(7) 前記2系統の電源ラインは、並走するように設置される
ことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0043】
この構成により、制御ボックス間を1つの幹線で接続することにより2系統の電源ラインを同時に配設することができる。
【0044】
[電源−2]
車両においては、車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い、オプション機器の違い等により、車両毎に異なる数、あるいは異なる種類の電装品(補機)が接続される。また、電装品の数や種類が変わると、ワイヤハーネスの構成が変化する可能性がある。また、車両の設計時に想定していなかった新たな種類の電装品を後で車両に追加する可能性もある。このような場合に、追加する電装品は、車両に既に搭載されている既存のワイヤハーネス等に接続するだけで使えることが望ましい。また、必要に応じて、各電装品を接続する位置を変更できることが望ましい。また、車両の種類や接続する電装品の数や種類が変化しても、共通の部品を用いてワイヤハーネス等を構成できることが望ましい。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0045】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを接続する枝線と、
を備え、
前記幹線および前記枝線は、それぞれ電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線が接続される枝線用接続部と、制御プログラムにしたがって前記枝線用接続部を制御することにより前記幹線から前記枝線へ電力を分配する枝線用制御部と、を有し、
前記制御プログラムは、前記枝線に接続される補機に応じて外部から変更可能である
ことを特徴とする車両用回路体。
【0046】
この構成により、枝線に接続されている補機の種類にかかわらず、制御プログラムを変更することにより幹線から枝線を介して補機に適切な電力を供給することができる。
【0047】
(2) 前記枝線用接続部は、前記枝線の端部が接続されるコネクタを複数有し、
複数の前記コネクタは、同一形状である
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0048】
この構成により、枝線を接続すべきコネクタを補機により異ならせる必要がなくなり、補機の増加や交換を容易に行うことができる。
【0049】
[通信−1]
車両においては、例えば自動運転技術に対応する必要があるため、例えばワイヤハーネスの通信系統における信頼性を向上することが求められている。例えば、交通事故などに伴う車両の衝突の際であっても、重要な車載機器の制御に用いる通信系統が通信可能な状態を維持でき、車両の制御状態に異常が生じないことが望ましい。また、通信経路として用いるワイヤハーネスのような車両用回路体は、様々な種類の車両に対して部品を共通化したり、構成を単純化して、部品コストや製造コストを低減したり、部品の品番数を減らすことが求められている。
そこで、以下の(1)に示すように構成する。
【0050】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
を備え、
前記幹線は、電源ラインと、通信ラインとを有し、
前記通信ラインは、前記複数の制御ボックスをリング状に接続するように配索される
ことを特徴とする車両用回路体。
【0051】
この構成により、複数の制御ボックス間を接続するいずれかの通信ラインに障害が発生したとしても、障害が発生した箇所と反対方向のルートを用いて通信を継続することができる。したがって、車両用回路体の幹線上における通信の信頼性を向上することができる。
【0052】
[通信−2]
車両のワイヤハーネス等には様々な電装品を接続する可能性がある。また、使用する部品を共通化したり、電装品のコネクタ等の接続位置を自由に変更できることが望ましい。そのため、一般的に用いられる通信規格を採用したり、一般的な形状の多数のコネクタ等を車両のワイヤハーネス上に用意しておくことも想定される。しかし、例えばセキュリティの観点から、特別に許可した場合を除き、一部のコネクタについては車両のユーザや第三者が自由に利用できないようにすることが求められる場合がある。しかし、標準規格の通信方式を採用したり、標準規格のコネクタを採用している場合には、空き状態のコネクタをユーザ等が勝手に使用する可能性があり、セキュリティ等の問題が発生する。
そこで、以下の(1)〜(5)に示すように構成する。
【0053】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
複数の制御ボックスと、
複数の前記制御ボックスを互いに接続する幹線と、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線および前記枝線は、それぞれ電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線の通信ラインが着脱可能な複数の枝線接続部を有し、
複数の前記枝線接続部には、前記枝線が接続されていない場合に物理的又は電気的にロック状態となるロック機能部が設置される、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0054】
この構成により、将来的に枝線が追加的に接続されることを可能とするよう、現時点で接続される枝線の数よりも多い枝線接続部を制御ボックスに設置したとしても、何も接続されていない枝線接続部に接続されるべきではない枝線が接続されることを防止できる。したがって、例えば制御ボックスの制御部のプログラムを悪意で書き換えることを目的として、何も接続されていない枝線接続部にプログラムの書き換え装置が接続されることを防止できる。
【0055】
(2) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、複数の前記コネクタの開口を一括して覆うカバー部材と、ロック状態において前記カバー部材が前記コネクタから離脱することを防止する鍵部と、を有する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0056】
この構成により、現時点でいずれの枝線接続部にも枝線を接続する必要がない場合には、すべての枝線接続部のコネクタをカバー部材で一括して覆い、鍵部によりカバー部材を取り外し不可能とすることができるので、間違ってあるいは悪意を持って枝線がコネクタに接続されることを防止できる。
【0057】
(3) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、いずれか1つの前記コネクタの開口の少なくとも一部を覆うカバー部材と、ロック状態において前記カバー部材が前記コネクタから離脱することを防止する鍵部と、を有する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0058】
この構成により、複数のコネクタのうち必要な箇所にのみカバー部材を取り付けて取り外し不可能とすることができる。したがって、複数のコネクタのうち一部のコネクタのみ枝線が接続されていない場合、当該コネクタにカバー部材を取り付け、間違ってあるいは悪意を持って枝線が当該コネクタに接続されることを防止できる。
【0059】
(4) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、少なくとも1つの前記コネクタの開口を覆うシール部材であり、
前記シール部材は、開封の有無を判別可能な開封表示手段を有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0060】
この構成により、シール部材が開封表示手段を有しているので、悪意を持ってコネクタに枝線を接続しようとする人物に対する抑止力として機能する。また、コネクタに不正に枝線が接続された場合に、ディーラーなどにおいてその事実を発見しやすくなる。
【0061】
(5) 複数の前記枝線接続部それぞれは、接続された対象物に対し信号を送信し、前記信号に対する前記対象物からの応答に応じて前記対象物との信号の送受信を許可するか否か決定する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0062】
この構成により、枝線接続部に接続されるべきではない枝線が接続されたとしても、枝線に接続されている対象物との通信を不可能とするため、不正な通信が行われ、制御ボックスや枝線に接続されている各補機の機能に悪影響が与えられることを防止することができる。
【0063】
[通信−3]
車両上の通信に関しては、例えばCAN、CXPI、イーサネット(登録商標)などの複数の標準規格のインタフェースが用いられる可能性がある。また、車両の種類毎、車両のグレード毎、あるいは車体上のエリア毎に、接続する電装品が採用している通信規格が異なる場合が考えられる。また、規格が異なる通信機器同士を相互に接続するためには、特別な通信ケーブル、コネクタ、通信インタフェースなどの機器を個別に用意しなければならないので、ワイヤハーネスの構成が複雑化したり、接続作業が繁雑になることが想定される。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0064】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線及び前記枝線は、それぞれ電源ラインと、通信ラインとを有し、
前記車両は、複数の領域に区画され、
少なくとも2以上の前記制御ボックスは、互いに異なる前記領域に配置され、前記枝線の通信ラインと前記幹線の通信ラインとの通信方式を変換するゲートウェイを有し、
複数の前記ゲートウェイは、前記幹線の通信ラインを介して互いに通信可能である、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0065】
この構成により、幹線の通信ラインとの枝線の通信ラインとの通信方式を変換するゲートウェイが車両の各領域に設置されるので、それぞれの領域に設置された補機をそれらの領域に設置された制御ボックスに枝線を介して接続することにより、これらの補機と幹線との間で信号の送受信が可能となる。
【0066】
(2) 前記ゲートウェイは、前記枝線を介して接続された前記補機が使用する通信方式に対応するよう通信方式を変更する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0067】
この構成により、通信方式にかかわらず様々な種類の補機をその補機が設置されている領域と同じ領域に設置されている制御ボックスに接続することが可能となる。
【0068】
[通信−4]
車両上においては、例えば各種のカメラが撮影した映像信号のように大容量のデータを伝送する機器同士を多数接続できることが望まれている。このような環境においては、高速で大容量の通信ができるように、光通信を採用することが想定される。しかし、車載システム全体を光通信網で接続すると、非常に高価なシステムになるのは避けられない。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0069】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線は、電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記枝線は、電源ラインおよび通信ラインのうち少なくともいずれか一方を有し、
前記幹線の通信ラインは、光信号用の伝送路を有し、
前記枝線の通信ラインは、電気信号用の伝送路を有する、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0070】
この構成により、制御ボックス間を接続する幹線が光信号用の伝送路を有しているので、制御ボックス間の伝送容量を増大させることが可能になる。また、光信号を利用するため、幹線内の電源ラインや外部の機器類から発生する電磁ノイズの影響を受けにくくなり、通信の信頼性を高めることができる。
【0071】
(2) 前記幹線の通信ラインの少なくとも1とは、複数の前記制御ボックスのうちの2つを直接接続する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0072】
この構成により、2つの制御ボックスが光信号用の伝送路で直接接続されるため、信号の送受信を高速で行うことができる。
【0073】
<実施例の記載>
本発明の車両用回路体に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0074】
<主要部位の構成例>
本発明の実施形態における車両用回路体を含む車載装置の主要部位の構成例を
図1に示す。
【0075】
図1に示した車両用回路体は、車載バッテリーなどの主電源の電力を車体各部の補機、すなわち様々な電装品に対してそれぞれ供給したり、電装品同士の間で信号のやり取りを行うために必要な伝送線路として利用されるものである。つまり、機能的には一般的なワイヤハーネスと同様であるが、構造が一般的なワイヤハーネスとは大きく異なる。
【0076】
図1に示した車載装置は、車体のエンジンルーム11と車室(乗員室)13とを区画するダッシュパネル16の近傍における車室内側の構成を表している。
図1に示すように、ダッシュパネル16の少し後方にあるインパネ部(インストルメントパネルの部位)には、補強材であるリーンホース(不図示)が車体の左右方向に向かって延びるように設置されている。そして、このリーンホースの近傍に、車両用回路体の主要な構成要素が配置されている。なお、この車体の左右方向に延伸する箇所の車両用回路体は、リーンホースに固定されていても、ダッシュパネル16に固定されていても、あるいは専用の固定具に固定されていてもよい。
【0077】
図1に示した車両用回路体には、複数のバックボーン幹線部21、22、23と、複数のバックボーン制御ボックス31、32、33とが含まれている。バックボーン幹線部21、22、23の各々は、電源ライン、アースライン、通信ライン等の線路を含んでいる。また、各バックボーン幹線部内の電源ラインおよびアースラインについては、断面形状が扁平な帯状の金属材料(例えば銅やアルミニウム)を採用し、これらの金属材料を互いに電気的に絶縁した状態で厚み方向に積層して構成してある。これにより、大電流の通過を許容可能になり、且つ厚み方向に対する曲げ加工が比較的容易になる。
【0078】
バックボーン幹線部21および22は、ダッシュパネル16の面に沿った箇所で、リーンホースの上方の位置にリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されている。また、バックボーン幹線部23は、車体の左右方向のほぼ中央部に配置されており、ダッシュパネル16の面に沿った箇所では上下方向に直線的に延びている。また、バックボーン幹線部23はダッシュパネル16と車室内フロアとの境界近傍でほぼ90度厚み方向に曲げられて、車室内フロアに沿って車体の前後方向に延びるように配置されている。
【0079】
バックボーン制御ボックス32は車体の左右方向のほぼ中央部に配置され、バックボーン制御ボックス31は左右方向の左端近傍に配置され、バックボーン制御ボックス33は左右方向の右端近傍に配置されている。
【0080】
そして、バックボーン幹線部21の左端はバックボーン制御ボックス31の右端と連結され、バックボーン幹線部21の右端はバックボーン制御ボックス32の左端と連結されている。また、バックボーン幹線部22の左端はバックボーン制御ボックス32の右端と連結され、バックボーン幹線部22の右端はバックボーン制御ボックス33の左端と連結されている。また、バックボーン幹線部23の前方の先端はバックボーン制御ボックス32の下端と連結されている。
【0081】
つまり、バックボーン幹線部21〜23と、バックボーン制御ボックス31〜33とで
図1に示すようにT字に似た形状に構成されている。また、バックボーン幹線部21〜23の内部回路は、バックボーン制御ボックス32を経由して互いに電気的に接続可能な状態になっている。
【0082】
<バックボーン制御ボックスの詳細>
車体の左側に配置されているバックボーン制御ボックス31には、主電源接続部31a、幹線接続部31b、および枝線接続部31cが備わっている。
図1に示すように、バックボーン制御ボックス31の主電源接続部31aには主電源ケーブル41が接続され、幹線接続部31bにはバックボーン幹線部21の左端が接続され、枝線接続部31cには複数の枝線サブハーネス42がそれぞれ接続される。
【0083】
また、
図1は示されていないが、バックボーン幹線部21の内部には2系統の電源ライン、アースライン、および通信ラインが含まれている。また、主電源ケーブル41の電源ラインおよびアースラインと接続するために、主電源接続部31aには2つの接続端子が設けてある。
【0084】
例えば、バックボーン幹線部21に含まれる2系統の電源ラインのうち、一方の電源ラインは主電源からの電力を供給する経路として利用される。また、もう一方の電源ラインは、例えば異常発生時にバックアップ用の電源電力を供給するための経路として利用される。
【0085】
また、バックボーン制御ボックス31の内部には、主電源ケーブル41、バックボーン幹線部21、枝線サブハーネス42の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続するための回路基板が含まれている。
【0086】
主電源ケーブル41については、電源ラインおよびアースラインの各々の先端に接続した端子を主電源接続部31aの端子と接続し、ボルトとナットを用いて固定することにより、これらの回路を接続することができる。
【0087】
枝線サブハーネス42については、各々の先端に設けたコネクタが枝線接続部31cに対して着脱自在であり、必要に応じて回路を接続することができる。枝線サブハーネス42の各々は、電源ライン、アースライン、通信ラインの全て、またはそれらの一部分を含むように構成される。なお、
図1に示したバックボーン制御ボックス31においては、枝線接続部31cに6個のコネクタが備わっているので、最大で6個の枝線サブハーネス42を接続可能である。
【0088】
図1に示すように、バックボーン幹線部21〜23とバックボーン制御ボックス31〜33とを組み合わせ、更にバックボーン制御ボックス31〜33に様々な枝線サブハーネス42〜44を接続することにより、背骨(バックボーン)と似た単純な構造で、様々な伝送線路の配索を行うことが可能になる。
【0089】
例えば、オプションや追加で車両に搭載される様々な電装品に対しても、バックボーン制御ボックス31〜33のいずれかに接続する枝線サブハーネス42〜44の追加や変更だけで対応できるので、車両用回路体の幹線の構造に変更を加える必要がない。なお、本実施形態では枝線サブハーネス42〜44をバックボーン制御ボックス31〜33に接続する場合を想定しているが、例えばバックボーン幹線部21〜23上の適当な中継点の箇所に別の枝線サブハーネス(図示せず)を接続してもよい。
【0090】
実際の車載装置においては、例えば
図1に示すように、枝線サブハーネス42を経由して車両に備わった電子制御ユニット(ECU)51をバックボーン制御ボックス31やその他の電装品に接続することができる。また、枝線サブハーネス43を経由して、バックボーン制御ボックス32に電子制御ユニット51、52、53やその他の電装品を接続することができる。更に、枝線サブハーネス44を経由してバックボーン制御ボックス33に様々な電装品を接続することができる。そして、各電子制御ユニット51、52、53は、枝線サブハーネス42、43、44の通信ライン、およびバックボーン制御ボックス31〜33等を経由して車両上の様々な電装品を制御することができる。
【0091】
一方、
図1に示した車両用回路体は、車室13内部の電装品だけでなく、エンジンルーム11内の主電源や電装品との間の電気接続も行う必要がある。そして、エンジンルーム11と車室13との境界にはダッシュパネル16があり、電気接続部材がダッシュパネル16を貫通する箇所については完全にシールすることが求められる。すなわち、ダッシュパネルは、車室内の快適性を保つために、エンジンルームからの振動の絶縁、サスペンションからの振動や騒音の低減、高熱、騒音、臭い等の遮断の機能を備える必要があり、この機能を損なわないように、電気接続部材の貫通箇所にも十分な配慮が求められる。
【0092】
しかし、例えばバックボーン幹線部21〜23のように断面積が大きくしかも特定の方向以外には曲げにくいような部品がダッシュパネル16を貫通するように構成すると、貫通箇所のシールが非常に難しくなり、車両用回路体の配索作業も困難になる。
【0093】
図1に示した車両用回路体においては、その主要な構成要素であるバックボーン幹線部21〜23、およびバックボーン制御ボックス31〜33の全てが車室13側の空間に配置されているので、ダッシュパネル16を貫通する箇所の問題を容易に解決できる。
【0094】
実際には、
図1に示すように、バックボーン制御ボックス31の左端に接続した主電源ケーブル41がダッシュパネル16の貫通孔16aを通過するように配索し、エンジンルーム11内の主電源の回路とバックボーン制御ボックス31の電源回路との間を主電源ケーブル41を経由して接続する。これにより、主電源の電力をバックボーン制御ボックス31に供給することができる。また、主電源ケーブル41については曲げやすい材料を用いたり、断面形状を円形にしたり、断面積が比較的小さくなるように構成することが可能であるので、貫通孔16aにおけるシールを容易に行うことができ、配索作業を実施する際の作業性の悪化も回避できる。
【0095】
また、車室13内の車両用回路体にエンジンルーム11内の様々な電装品を接続する場合には、例えばバックボーン制御ボックス31に接続した枝線サブハーネス42の一部分がダッシュパネル16を貫通するように設置したり、バックボーン制御ボックス33に接続した枝線サブハーネス44の一部分がダッシュパネル16を貫通するように設置することで、所望の電気接続経路を実現できる。この場合、枝線サブハーネス42、44等は断面積が小さく、曲げることも容易であるため、ダッシュパネル16を貫通する箇所をシールすることは容易である。
【0096】
なお、エンジンルーム11側には主電源が存在するので、ダッシュパネル16を貫通する箇所に設置する枝線サブハーネスについては、電源ラインやアースラインを省略し、通信ラインだけに限定することもできる。また、このような特別な枝線サブハーネスについては、バックボーンの幹線から分岐した枝線サブハーネス42〜44とは別の、通信用の幹線として特別に構成しても良い。
【0097】
本実施形態の車載装置は、上述の
図1に示したような構成を基本としているが、更なる改良のために以下に説明するように、構成や動作について様々な変更や追加を行うことができる。
【0098】
<電力供給に関する特徴的な技術>
<システムの構成例>
図2に示したシステムは、電力供給および通信のための主要な経路を確保するためにバックボーン幹線BB_LMを備えている。また、バックボーン幹線BB_LMの途中には複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)が接続されている。バックボーン幹線BB_LMの上流側には、車両側の主電源であるメインバッテリーMBおよびオルタネータALTが接続されている。
【0099】
各制御ボックスCB(1)、CB(2)には様々な補機AEを接続するための接続部Cnxが設けてある。各補機AEは、車両上に搭載される様々な負荷、電子制御ユニット(ECU)等の電装品に相当する。
【0100】
図2に示した構成においては、補機AE(1)が枝線サブハーネスLS(1)を介して制御ボックスCB(1)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。また、補機AE(2)が枝線サブハーネスLS(2)を介して制御ボックスCB(1)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。同様に、補機AE(3)およびAE(4)は、それぞれ枝線サブハーネスLS(3)およびLS(4)を介して制御ボックスCB(2)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。
【0101】
また、各制御ボックスCBの接続部Cnxには
図2には示されていない複数のコネクタが装備されているが、これら複数のコネクタは全て共通の形状、大きさ、および構成になっている。したがって、各枝線サブハーネスLSを接続部Cnxのコネクタと接続する場合には、複数のコネクタのいずれを選択しても良い。
【0102】
したがって、主電源等からバックボーン幹線BB_LMに供給される電源電力は、制御ボックスCB(1)またはCB(2)の箇所で分岐され、分岐した箇所に接続した枝線サブハーネスLSを経由して各補機AEに供給される。
【0103】
<幹線の構成例>
バックボーン幹線BB_LMの構成例を
図3(a)および
図3(b)に示す。
図3(a)に示した例では、バックボーン幹線BB_LMは独立した2系統の電源ラインL1、L2と、アースラインL3と、2本の電線で構成される通信ラインL4、L5とを備えている。これらの電源ラインL1、L2、アースラインL3、通信ラインL4、およびL5は、互いに並走するように、すなわち互いに平行な線路として配置されている。なお、各補機AEが車体アースなど、他の経路で電源のアースと接続できる環境であれば、アースラインL3をバックボーン幹線BB_LMの構成要素から除外することもできる。
【0104】
また、
図3(a)に示した例では、2系統の電源ラインL1およびL2は、いずれも共通の12[V]の直流電源電圧を扱うように、構成されている。また、制御ボックスCBは、2系統の電源ラインL1およびL2のいずれか一方のみを選択して下流側に供給する機能を備えている。したがって、例えばバックボーン幹線BB_LMの途中で電源ラインL1、L2のいずれか一方のみが断線したような場合には、残りの正常な経路を用いて、各制御ボックスCBは電力供給を継続することができる。
【0105】
図3(b)に示した例では、バックボーン幹線BB_LMは、独立した2系統の電源ラインL1、L2Bと、アースラインL3と、2本の電線で構成される通信ラインL4、L5とを備えている。2系統の電源ラインL1、L2Bのうち、一方の電源ラインL1は12[V]の直流電源電圧を扱うように構成されている。また、他方の電源ラインL2Bは48[V]の直流電源電圧を扱うように構成されている。
【0106】
したがって、
図3(b)に示した構成においては、制御ボックスCBが2種類の電源電圧のいずれかを選択して配下の補機AEに供給することができる。そのため、例えば負荷の特性や状況に応じて適切な電源電圧を自動的に選択することもできる。例えば、電力消費が大きい負荷の場合には、大きな電源電流が流れて供給線路における電圧降下が増大するので、高い電源電圧を選択することで、電力損失の増大を抑制できる。また、
図3(b)に示した例と同様に、電源ラインL1、L2Bのいずれか一方のみが断線したような場合には、残りの正常な経路を用いて、各制御ボックスCBは電力供給を継続することができる。
【0107】
なお、2種類の電源電圧を使用する場合には、主電源側で、電圧を12[V]から48[V]に昇圧してバックボーン幹線BB_LMに供給することもできるし、いずれかの制御ボックスCBの内部で、バックボーン幹線BB_LMから供給された電圧が12[V]の電力を昇圧して48[V]の電力を生成することもできる。
【0108】
<電源系統の回路構成例>
制御ボックスCB内部の電源系統に関する具体的な構成例を
図4に示す。この構成においては、制御ボックスCBの内部に、マイクロコンピュータ(CPU)CBa、スイッチ回路CBb、およびブリッジ回路CBcが備わっている。
【0109】
また、マイクロコンピュータCBaはFPGA(field-programmable gate array)で構成されているため、外部からのプログラムの書き換え指示(リプログラム)により構成および動作を再構成できる。なお、本明細書におけるFPGAの構成は一例である。
【0110】
また、マイクロコンピュータCBaには通信ラインLxを経由して所定の診断ツールDTが接続される。実際には、車両の工場で調整を行ったりメンテナンスを行う際にのみ、診断ツールDTを接続する場合もあるし、常時診断を行って自動的に問題を回避できるように、診断ツールDTを標準的に車両に搭載しておく場合もある。
【0111】
なお、通信ラインLxについては、バックボーン幹線BB_LM内の通信ラインL4、L5をそのまま利用することもできるし、専用の通信線として別途用意することもできる。所定の管理者が、診断ツールDTを用いて指示を与えることにより、あるいは所定の修復プログラムの実行により、診断ツールDTがマイクロコンピュータCBaの構成および動作に関するプログラムの書き換えを行うことができる。
【0112】
スイッチ回路CBbは、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインL1又はL2から供給される直流電源電圧(+B)の電力を、複数の出力系統に分岐すると共に、出力系統毎に通電のオンオフを切り替える複数個のスイッチング素子を備えている。
図4の例では、6個のパワーFET(電界効果トランジスタ)をスイッチング素子として採用している。これらのスイッチング素子の各々は、マイクロコンピュータCBaの出力によりオンオフできるように構成されている。また、これらのスイッチング素子の動作に関しては、単純なオンオフの他に、例えばオンオフのパルス幅制御(PWM)を行うことにより、出力電力調整機能を持たせることも可能である。
【0113】
ブリッジ回路CBcは、スイッチ回路CBbの出力側にある複数の出力系統の間をブリッジとして相互に接続するための複数個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子も、マイクロコンピュータCBaの出力によりオンオフできるように構成されている。
【0114】
<電力制御機能の構成例>
制御ボックスCBが備える電力制御機能CBxの具体例を
図5に示す。この例では、代表的な電力制御機能として
図5に示した6種類の機能CBx0、CBx1、CBx2、CBx3、CBx4、およびCBx5が制御ボックスCBに備わっている。これらの機能はマイクロコンピュータCBaが実行する処理により実現する。
【0115】
機能CBx0:マイクロコンピュータCBaが様々な状況を検出し、検出した状況に応じて、バックボーン幹線BB_LMから供給される複数系統の電力の全てまたはいずれか一方のみの電力を選択的に下流、すなわち補機AE側に供給する。例えば、バックボーン幹線BB_LMが
図3(a)に示した構成の場合に、電源ラインL1、L2のいずれか一方の断線を検知すると、電源ラインL1、L2のうち正常な経路から供給される電力のみを出力経路に供給する。また、例えば、バックボーン幹線BB_LMが
図3(b)に示した構成の場合に、仕様として、または実際の負荷電流が大きい補機AEが接続されている出力系統に対しては、電源ラインL2Bから供給される電圧が高い(48[V])電力を優先的に選択して出力に供給する。
【0116】
機能CBx1:マイクロコンピュータCBaが枝線毎に、供給すべき電力の種類を識別する。具体的な電力の種類としては、常時電力が供給される「+B」と、アクセサリスイッチのオンオフに連動して電力供給の有無が制御される「ACC」と、イグニッションスイッチのオンオフに連動して電力供給の有無が制御される「IG」などがある。マイクロコンピュータCBaは、その配下に接続されている補機AEの種類を識別することにより、「+B,ACC,IG」の中でより適切な種類の電力を選択的に該当する枝線に供給する。なお、プログラムの定数データにより事前に決定された種類の電力を各枝線に供給してもよいし、実際に接続されている補機AEからIDなどの情報を取得して電力の種類を識別してもよい。
【0117】
機能CBx2:マイクロコンピュータCBaは、車両側に備わっているアクセサリスイッチおよびイグニッションスイッチのオンオフ状態を監視して、種類毎に各出力系統の電力のオンオフを制御する。すなわち、電力の種類として「ACC:アクセサリ」が割り当てられた出力系統の枝線に対しては、アクセサリスイッチがオンの時のみスイッチ回路CBbを導通にして電力を供給し、アクセサリスイッチがオフの時は電力を遮断する。また、電力の種類として「IG:イグニッション」が割り当てられた出力系統の枝線に対しては、イグニッションスイッチがオンの時のみスイッチ回路CBbを導通にして電力を供給し、イグニッションスイッチがオフの時は電力を遮断する。
【0118】
機能CBx3:マイクロコンピュータCBaは、診断ツールDTの指示に従い、各枝線へ供給する電源電力の種類「+B,ACC,IG」を変更(リプログラム)する。例えば、スイッチ回路CBb中の素子「FET4」が出力する電力の種類を標準状態では「IG」に割り当てておく。そして、変更すべき何らかの必要性が生じた時に、マイクロコンピュータCBaのリプログラムを実行し、素子「FET4」が出力する電力の種類を「ACC」に変更する。このような変更は、マイクロコンピュータCBaが素子「FET4」に与える制御信号の制御条件に影響を及ぼす。つまり、電力の種類として「IG」が割り当てられている場合には、イグニッションスイッチの状態に応じて素子「FET4」への制御信号が変化し、電力の種類として「ACC」が割り当てられている場合には、アクセサリスイッチの状態に応じて素子「FET4」への制御信号が変化する。
【0119】
機能CBx4:マイクロコンピュータCBaは、出力側に接続される枝線毎に、該当する電線を保護する。具体的には、出力系統毎に実際の通電電流を計測し、この通電電流から熱量を算出して、所定以上の温度上昇が生じる前に、スイッチ回路CBbの該当する系統を遮断する。
【0120】
機能CBx5:マイクロコンピュータCBaは、スイッチ回路CBbの素子毎に、故障の有無を検出し、故障発生を検知した場合はそれを自動的に回避して機能を維持する。具体的には、ブリッジ回路CBcを用いて隣接する出力系統間を互いに接続し、故障が発生した素子を通らない経路を一時的に利用して出力側への電力供給を継続する。
【0121】
なお、上記の「+B,ACC,IG」の代わりに、電力の種類の新しい区分として、「+BA」、「IGP」、「IGR」を採用することもできる。「+BA」は、ユーザが車両に近づいた時にオンになる系統の電力を表す。「IGP」は、イグニッションがオンになり、エンジンがフルの状態でオンになる系統の電力を表す。「IGR」は、タイヤが回っているときにオンになる系統の電力を表す。このような新区分の電力種類を採用する場合であっても、制御に必要な情報を取得することにより、
図5に示した各機能CBx1およびCBx2を同様に実現できる。
【0122】
<通信に関する特徴的な技術>
<切れない通信のための技術>
車両上に搭載される通信システムの構成例を
図6に示す。
図6に示した構成では、リング状に形成された通信用幹線BB_LCを採用している。なお、
図6には示してないが、この通信用幹線BB_LCは、電力供給用のワイヤハーネスあるいは、特別に用意された電源ラインを含むバックボーン幹線と一体的に構成される。
【0123】
図6に示した構成では、通信用幹線BB_LCの途中に分散した状態で複数の制御ボックスCB(1)〜CB(4)が接続されている。また、制御ボックスCB(1)〜CB(4)の配下には、それぞれ枝線サブハーネスLS(1)〜LS(4)を介して補機AE(1)〜AE(4)が接続されている。これらの補機AEは、車両上に配置される様々な負荷や、電子制御ユニット(ECU)のような電装品に相当する。
【0124】
複数の制御ボックスCB(1)〜CB(4)の各々は、幹線から分岐した電力を枝線サブハーネスLSを経由して補機AEに供給したり、通信用幹線BB_LCを経由する通信経路の分岐を行うための機能を備えている。各枝線サブハーネスLSは、電源ラインおよび通信ラインを備えている。また、枝線サブハーネスLSがアースラインを含む場合もある。
【0125】
図6に示した構成のシステムにおいて、補機AE(1)と補機AE(2)との間で通信を行う場合を想定する。この場合、リング状の通信用幹線BB_LCのうち、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(2)との間の経路を利用することにより、最短距離の経路で通信できる。
【0126】
但し、通信用幹線BB_LCの一部分で断線が発生する場合がある。しかし、仮に制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(2)との間の経路で通信用幹線BB_LCが断線したとしても、この経路全体がリング形状であるため、別の経路を利用することができる。すなわち、制御ボックスCB(1)から制御ボックスCB(4)およびCB(3)を順次に経由して制御ボックスCB(2)に至る通信経路を利用できるので、補機AE(1)と補機AE(2)との間の通信経路が途切れることはない。
【0127】
なお、
図2に示したバックボーン幹線BB_LMのように直線的な経路の通信システムであっても、
図6に示したリング形状の通信用幹線BB_LCをそのまま適用することが可能である。例えば、直線的なバックボーン幹線BB_LM上に、往路の通信用幹線BB_LCと、復路の通信用幹線BB_LCとの2つを1組として平行に配置し、往路と復路の通信用幹線BB_LCを端部でそれぞれ接続することにより、リング形状の、すなわち閉ループの通信経路を構成できる。
【0128】
<接続部のセキュリティ技術>
<物理的手段を用いた保護>
各制御ボックスCBの接続部Cnxを物理的に保護するための技術の具体例を
図8(a)、
図8(b)、および
図8(c)にそれぞれ示す。
図8(a)、
図8(b)、および
図8(c)に示した回路基板CBdは、各制御ボックスCBの内部に装備されている。
【0129】
制御ボックスCB(1)〜CB(4)の各々は、枝線サブハーネスLS等を介して様々な補機AEを配下に接続できるように、複数のコネクタを有する接続部Cnxを備えている。これらのコネクタは、例えばUSB(Universal Serial Bus)のような所定の規格に適合するように構成され、同時に複数の機器を接続できるように複数のコネクタを並べた状態で配置してある。
【0130】
しかし、車両の車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い、車両を購入したユーザのオプション選択の違いなどにより、特定の制御ボックスCBについては、接続部Cnxのコネクタの全てが使用されない状態になったり、接続部Cnxのコネクタの一部が使用されない状態になる可能性がある。また、車両の車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い等を反映するように各制御ボックスCBの構成を変更すると、これらの構成を共通化できないため、制御ボックスCBの品番数が増え、製造コストも増大する。
【0131】
一方、車両出荷時の規定の状態で枝線サブハーネスLS等が何も接続されない空き状態のコネクタが接続部Cnxに存在する場合には、空き状態のコネクタに対してユーザまたは第三者が勝手に何らかの機器を不正に接続する可能性がある。このような不正を防止するために、
図8(a)、
図8(b)、および
図8(c)に示した物理的な構成を用いる。
【0132】
図8(a)に示した構成においては、接続部Cnxの6個全てのコネクタが使用されない場合を想定している。したがって、接続部Cnxのコネクタ全てが勝手に使用されないように、物理的な鍵付きカバーKc1を用いて、全コネクタの開口部等を閉塞する。
【0133】
鍵付きカバーKc1は、接続部Cnxの外側を覆うカバーであり、接続部Cnxにしっかりと固定することができる。また、鍵付きカバーKc1は鍵機構を内蔵しており、事前に用意した特定の物理的な解除キーKkを用いて操作しない限り、鍵付きカバーKc1の固定を解除することはできない構造になっている。したがって、解除キーKkを所持しない人がこの接続部Cnxのコネクタに何らかの機器を不正に接続することはできない。
【0134】
図8(b)に示した構成においては、接続部Cnxの一部のコネクタには所定の枝線サブハーネスLS等が接続され、残りのいくつかのコネクタが空き状態になる場合を想定している。したがって、接続部Cnxのうち、空き状態のコネクタに対しては、勝手に使用されないように、物理的な鍵付きカバーKc2を用いて、コネクタの開口部等を個別に閉塞する。
【0135】
鍵付きカバーKc2は、接続部Cnxにある形状および大きさが同じ6個のコネクタのいずれか1つに装着することにより、該当する1つの開口部を閉塞した状態でコネクタに固定できる構造になっている。また、鍵付きカバーKc1と同様に、鍵機構を内蔵しており、事前に用意した特定の物理的な解除キーKkを用いて操作しない限り、鍵付きカバーKc2の固定を解除することはできない構造になっている。
【0136】
図8(c)に示した構成においては、接続部Cnxの一部のコネクタには所定の枝線サブハーネスLS等が接続され、残りのいくつかのコネクタが空き状態になる場合を想定している。したがって、接続部Cnxのうち、空き状態のコネクタに対しては、勝手に使用されないように、物理的な封印用シールKsを用いて、コネクタの開口部等を個別に閉塞する。なお、複数のコネクタの開口部を1つの封印用シールKsで一括して覆うように構成してもよい。
【0137】
封印用シールKsは、例えば細長く薄いテープ状に形成され、樹脂などで形成されている。また、一般的に市販されている他のシールと明確に区別できるように、例えば表面等に特殊な模様などが印刷等により形成されている。また、封印用シールKsは、その長手方向の両端部が、接着等により接続部Cnxに固定される。
【0138】
封印用シールKsにより使用できないように開口部が覆われた特定のコネクタをユーザ等が不正に使用する場合には、封印用シールKsを破ったり、接着箇所をはがすことになるため、封印を解除した形跡を物理的に残すことができる。つまり、コネクタの不正な使用に関する確認を、所定の管理者等が事後に容易に行うことができる。
【0139】
<制御による保護>
各制御ボックスCBの接続部Cnxを電気的な制御により保護するための技術の具体例を
図9に示す。すなわち、回路基板CBd上に設けられた図示しないマイクロコンピュータが、
図9の制御を実行し、接続部Cnxにおける未使用のコネクタを不正使用から保護する。
【0140】
回路基板CBd上のマイクロコンピュータは、診断ツールなどを利用して事前に書き込まれたプログラムおよび定数データに基づき、マイクロコンピュータが管理している接続部Cnxにおけるコネクタ毎の使用有無を把握している。また、このマイクロコンピュータは、各々のコネクタに設けられた複数の端子の電圧を監視することにより、各々のコネクタに何らかの機器が接続されたか否かを実際に検知できる。
【0141】
このマイクロコンピュータは、ステップS11で、各通信ポート用コネクタの接続の有無を、コネクタ毎に監視する。そして、各コネクタに対する新たな接続を検知すると、ステップS12からステップS13に進む。そして、新たな接続を検知したコネクタが、未使用のコネクタとして登録されている場合には、次のステップS14に進み、不正接続の検知処理を実行する。
【0142】
ステップS14の処理により、例えば、不正使用されたことを表すデータを不揮発性メモリに保存したり、不正使用に関する異常表示を、メータユニットなどのディスプレイを用いて実行する。更に、該当するコネクタの通信を自動的に遮断して、機器の不正使用を防止することもできる。
【0143】
<様々な仕様の通信網および通信機器を相互接続するための技術>
車両に搭載される通信システムの構成例を
図7に示す。
図7に示した通信システムは、通信用幹線BB_LCを備えている。なお、
図7には示してないが、この通信用幹線BB_LCは、電力供給用のワイヤハーネスあるいは、特別に用意された電源ラインを含むバックボーン幹線と一体的に構成される。また、このバックボーン幹線には、アースラインが必要に応じて装備される。
【0144】
図7に示した構成においては、共通の通信用幹線BB_LC上に複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)が複数のエリアAR1、AR2、AR3に分散した状態で接続してある。エリアAR1、AR2、AR3等の具体例としては、エンジンルーム、インパネ領域、フロア領域、ラゲッジルームなどが想定される。
【0145】
制御ボックスCB(1)〜CB(3)の各々は、幹線上に供給される電力を分岐して補機AEに供給する機能や、通信線の経路を分岐して接続経路を確保するための機能を有している。更に、
図7に示した構成では、複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)の各々は、ゲートウェイGWを備えている。
【0146】
図7に示した複数のゲートウェイGW(1)〜GW(3)の各々は、基本的には通信プロトコル等の仕様が異なるネットワーク同士または機器同士を接続するための機能を提供する。
【0147】
例えば、車両上のシステムにおいては、CAN(Controller Area Network)、CAN_FD(CAN with Flexible Data Rate)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)、イーサネット(登録商標)、光通信網などのように互いに仕様が異なる様々な規格の通信機器やネットワークが、例えばエリア毎、車種毎等で採用される可能性がある。これらの仕様の違いをゲートウェイGWで吸収することにより、仕様が異なる機器同士を相互に接続し通信することが可能になる。
【0148】
図7に示した構成においては、エリア毎にそれぞれゲートウェイGWが制御ボックスCBに備わっているので、エリア毎に通信仕様が異なる場合であっても、ゲートウェイGWを使用して相互に通信回線を接続することができる。
【0149】
<高速通信を可能にするための技術およびゲートウェイの技術>
光通信機能およびゲートウェイ機能を備えた制御ボックスCBおよびバックボーン幹線BB_LMの通信系の構成例を
図10に示す。また、通信系統に電源電力を供給するための構成例を
図11に示す。
【0150】
図10に示したシステムにおいても、バックボーン幹線BB_LMに制御ボックスCBが接続されている。また、
図10に示したバックボーン幹線BB_LMは、電源ラインL1、L2、アースラインL3、通信ラインL4B、L5Bを備えている。なお、GNDはグランド、すなわちアースを意味している。
【0151】
図10の例では電源ラインL1は車両のメインバッテリー(BATT)と接続され、電源ラインL2はサブバッテリーと接続される。また、通信ラインL4BおよびL5Bは、光通信に対応するためにそれぞれ光ファイバで構成されている。幹線で光通信を採用することにより、車両上の様々な箇所で高速通信の実施が可能になる。また、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0152】
また、
図10に示した制御ボックスCBは、光通信の他に、イーサネット(登録商標)、CAN_FD、CXPIの各通信機能に対応している。具体的には、8組の通信ポートコネクタCP1〜CP8が制御ボックスCBに備わっている。通信ポートコネクタCP1、CP2はイーサネット(登録商標)専用の通信ポートであり、通信ポートコネクタCP3〜CP8の各々は、CAN_FDおよびCXPIのいずれかの仕様を選択可能な通信ポートである。また、8組の通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々は、金属(メタル)の通信線に対応した仕様になっている。分岐線をメタル仕様にすることで、分岐線の部品コストを低減できる。
【0153】
図10に示したように、この制御ボックスCBは、電源回路CB01、ゲートウェイ用制御回路CB02、PHY回路CB03、CB04、CB05、CB06、ネットワークスイッチCB07、CB08、トランシーバCB09、CB10、および切替回路CB11を備えている。
【0154】
電源回路CB01は、電源ラインL1、L2およびアースラインL3と接続されており、バックボーン幹線BB_LMから供給される電源電力に基づいて、ゲートウェイ用制御回路CB02等の各回路が必要とする電源電圧、例えば「+5[V]」を生成する。
【0155】
ゲートウェイ用制御回路CB02は、マイクロコンピュータ(略してマイコン)により構成されており、ゲートウェイ(GW)の機能を実現する。すなわち、規格が異なる通信間のプロトコル変換や、信号切替の制御を実施する。切替回路CB11を切り替えるための制御信号も生成する。
【0156】
PHY回路CB03、CB04、CB05、CB06は、イーサネット(登録商標)における物理層(PHYsical Layer)のインタフェース機能を提供する。また、PHY回路CB03およびCB04の各々は、光信号の2波長に対応し、光信号と電気信号との相互変換を行ったり、デジタル信号とアナログ信号との相互変換を行う機能を有している。また、PHY回路CB05、CB06は、イーサネット(登録商標)のメタル規格の信号に対応し、デジタル信号とアナログ信号との相互変換を行う機能を有している。
【0157】
ネットワークスイッチCB07、CB08は、イーサネット(登録商標)の規格に対応したスイッチ回路であり、受信したデータの宛先を見て、接続された各機器への転送の可否を判断する機能を有している。
【0158】
図10に示した構成においては、ネットワークスイッチCB07は、車両システム上のシャシー系、およびパワートレイン系の制御機能を割り当ててある。また、ネットワークスイッチCB08は、車両システム上のボディ系、エンターテインメント系、運転支援系、および高度運転支援系の制御機能を割り当ててある。ネットワークスイッチCB07は、PHY回路CB03およびCB04と、ゲートウェイ用制御回路CB02との間に接続してある。また、ネットワークスイッチCB08は、PHY回路CB03〜CB06と、ゲートウェイ用制御回路CB02との間に接続してある。
【0159】
トランシーバCB09およびCB10は、ゲートウェイ用制御回路CB02と切替回路CB11との間に接続してある。トランシーバCB09はCAN_FDの規格に対応した信号の送受信を行う機能を有している。また、トランシーバCB10はCXPIの規格に対応した信号の送受信を行う機能を有している。
【0160】
切替回路CB11は、2本の通信線を使用するCAN_FDと、1本の通信線のみを使用するCXPIとを共通の通信ポートコネクタCP3〜CP8で使用可能にするための切り替え機能を有している。具体的には、通信ポートコネクタCP3〜CP8の各々に接続する信号を切り替えるために12個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子のオンオフをゲートウェイ用制御回路CB02が出力する各制御信号で制御することにより、CAN_FDと、CXPIのいずれか一方の仕様に合わせた信号を通信ポートコネクタCP3〜CP8で使用できる。
【0161】
なお、例えばカメラや各種センサの信号のように比較的高い通信速度が必要とされる補機AEを制御ボックスCBの配下に接続する場合には、例えば通信ポートコネクタCP1又はCP2を用いることにより、高速通信の要求仕様を満たすことが可能になる。また、比較的低速の通信を行う補機AEを接続する場合には、通信ポートコネクタCP3〜CP8を使用することにより、必要最小限の通信機能を確保できる。
【0162】
通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に電源電力を供給するための回路構成例を
図11に示す。
図11の構成においては、制御ボックスCBに設けた端子CBz1、CBz2が主電源と接続されている。具体的には、メインバッテリーMBに内蔵されたヒュージブルリンクFLを経由して、端子CBz1がメインバッテリーMBの正極と接続されている。制御ボックスCBの端子CBz2はメインバッテリーMBの負極と接続されている。また、端子CBz1およびCBz2は、それぞれバックボーン幹線BB_LMの電源ラインL1およびアースラインL3と接続されている。なお、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインL2は、例えば図示しないサブバッテリーの正極と接続される。
【0163】
そして、8系統の通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に電源電力を供給するための電源回路CB01aが制御ボックスCBに内蔵されている。この電源回路CB01aは、通信ポートコネクタの系統毎に、スイッチ回路SW01、SW02、ダイオードD1およびD2をそれぞれ備えている。
【0164】
スイッチ回路SW01およびSW02の各々は、制御ボックスCB内の制御回路がオンオフ制御可能なスイッチング素子と、ヒューズとの直列回路として構成されている。ダイオードD1およびD2は逆流防止の機能を有する。
【0165】
したがって、スイッチ回路SW01、SW02のうち、SW01のみをオンにすることで、主電源からの電力を、通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に供給することができる。また、スイッチ回路SW01、SW02のうち、SW02のみをオンにすることで、サブ電源からの電力を、通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に供給することができる。
【0166】
<特別な光通信技術>
<複数種類の通信経路の組み合わせ>
車載システムの通信系の構成例を
図54に示す。
図54に示した車載システムは、5つの制御ボックスCB(1)〜CB(5)を備えている。また、3つの制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)の間はリング形状に構成された通信用幹線BB_LCで接続されている。更に、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(4)の間がP2P(Peer to Peer)の通信線路LPP1で接続され、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(5)の間がP2Pの通信線路LPP2で接続されている。そして、通信用幹線BB_LC、通信線路LPP1、およびLPP2のいずれについても、光通信を採用している。
【0167】
光通信を採用する場合、制御ボックスCBに相当する通信経路上の各中継ノードは、受信した光信号を電気信号に変換し、この電気信号を再び光信号に変換してから送信経路に送り出すように処理する。したがって、中継ノード毎に光信号の遅延が発生する。また、システム全体の通信経路をリング形状に構成する場合には、接続した中継ノードの数が増えるに従い、光信号の遅延が増大する。
【0168】
一方、
図54に示した車載システムにおいては、リング形状の通信用幹線BB_LCと、P2Pの通信線路LPP1、LPP2とを組み合わせてあるので、信号の遅延を抑制し、高速通信を行うことができる。すなわち、リング形状の通信用幹線BB_LC上のノード数が3であるため、このリング上で発生する遅延を最小限に抑制できる。
【0169】
したがって、例えば制御ボックスCB(3)と制御ボックスCB(4)との間で光通信を行う場合に、通信経路全体がリング形状である場合と比べて、信号遅延が少なくなり、高速通信が可能になる。
【0170】
また、リング形状の通信用幹線BB_LCを備えているので、通信経路に冗長性があり、通信の信頼性が向上する。すなわち、通信用幹線BB_LC上の1箇所で断線等が発生した場合には、断線していない別の経路を利用して通信を継続できる。なお、幹線を光通信用の伝送路で形成し、枝線を電気信号用の伝送路で形成し、これらを組み合わせてもよい。
【0171】
<複数波長の光信号の同時利用>
図54に示した車載システムにおける通信用幹線BB_LCの断面の構成例を
図55に示す。すなわち、
図54に示した通信用幹線BB_LCは、
図55に示すように、往路を構成する光ファイバケーブルFBC1と、復路を構成する光ファイバケーブルFBC2とを備えている。また、光ファイバケーブルFBC1、FBC2の各々は、2本の光ファイバFB11、FB12を内蔵している。
【0172】
本実施形態では、扱う光信号として特定の波長λ1と、λ1とは波長の異なる波長λ2を同時に利用している。そして、
図55に示すように一方の光ファイバケーブルFBC1は波長λ1の光信号を伝送し、もう一方の光ファイバケーブルFBC2は波長λ2の光信号を伝送するように構成されている。
【0173】
したがって、通信用幹線BB_LC上では2波長の光信号により2つの通信経路を同時に確保することができ、冗長性を持たせることができる。これにより、通信の信頼性を向上できる。
【0174】
具体例として、重要度または優先度に応じて2種類の波長の光信号を使い分ける。例えば、車両上で重要な負荷の制御に利用する信号は波長λ1の光信号に割り当て、重要度が低い負荷の制御に利用する信号は波長λ2の光信号に割り当てる。そして、重要度の高い波長λ1の光信号の通信が途絶えた場合には、送信すべき情報を、自動的に波長λ2の光信号に切り替える。これにより、通信を継続するための経路を確保できる。このような制御は、各制御ボックスCB上でマイクロコンピュータ等を利用して行うことができる。
【0175】
<波長多重化/時分割多重(TDM)の利用>
波長多重および時分割多重を行う光信号の構成例を
図56に示す。また、光波長多重通信を行う車載システムの通信系の構成例を
図57に示す。
【0176】
例えば、波長λ1の光信号と波長λ2の光信号とを同時に利用する場合には、2つの光信号の波長が異なるため、これらを
図56に示すように波長多重化して1本の光ファイバで伝送することができる。
【0177】
したがって、例えば
図55に示した2本の光ファイバFB11、FB12のいずれか一方を削減することができる。また、波長λ1の光信号に高い優先度を割り当て、波長λ2の光信号に低い優先度を割り当てることもできる。更に、光信号を時分割多重化することにより、1つの通信回線で
図56に示すように複数チャネルの光信号ch1、ch2、ch3を順次に伝送することができる。
【0178】
図57に示した車載システムは、3つの制御ボックスCB(1)、CB(2)、およびCB(3)を通信用幹線BB_LCを介して互いに接続してある。
図57に示した通信用幹線BB_LCは、往路と復路の各1本の光ファイバで構成してあり、全体としてリング形状に構成されている。
【0179】
通信用幹線BB_LCの1本の光ファイバ上に、
図56に示したように波長多重化および時分割多重化した光信号を送り込み、制御ボックスCB(1)〜CB(3)の間で光通信を行うことができる。
【0180】
図57に示した制御ボックスCB(1)〜CB(3)の各々は、受信側の回路と送信側の回路とを備えている。受信側の回路には、スプリッタ57−1、光/電気変換部(O/E)57−2、57−3、分岐部(DROP)57−4、57−5、および時分割分離部57−6が備わっている。また、送信側の回路には時分割多重化部57−7、挿入部(ADD)57−8、57−9、電気/光変換部(E/O)57−10、および57−11が備わっている。
【0181】
すなわち、制御ボックスCB(1)〜CB(3)においては、通信用幹線BB_LC内の1本の光ファイバから受信側の回路に光信号が入射する。この光信号は、スプリッタ57−1において、2つの波長λ1、λ2に分離される。分離された波長λ1の光信号は、光/電気変換部57−2で電気信号に変換され、分岐部57−4で2系統に分岐される。分岐された一方の電気信号は時分割分離部57−6に入力され、他方の電気信号は送信側の回路に入力される。
【0182】
同様に、分離された波長λ2の光信号は、光/電気変換部57−3で電気信号に変換され、分岐部57−5で2系統に分岐される。分岐された一方の電気信号は時分割分離部57−6に入力され、他方の電気信号は送信側の回路に入力される。時分割分離部57−6は、分岐部57−4、57−5の出力から入力される電気信号を時間毎に区分して、複数チャネル(ch1、ch2、ch3)の信号にそれぞれ分離される。
【0183】
例えば、制御ボックスCB(1)は、時分割分離部57−6が出力する1番目のチャネルの受信信号を補機AE11(ADASECU)に与える。また、制御ボックスCB(2)は、時分割分離部57−6が出力する2番目のチャネルの受信信号を利用できる。また、制御ボックスCB(3)は、時分割分離部57−6が出力する3番目のチャネルの受信信号を補機AE31(リアモニタ)に与える。
【0184】
制御ボックスCB(1)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch1)を利用し、補機AE12(ridar)の信号を優先度の高い信号として、補機AE13(DVDプレーヤ)の信号を優先度の低い信号として、それぞれ時分割多重化部57−7に入力する。時分割多重化部57−7は、入力された2系統の信号のそれぞれを、該当するチャネルのタイミングに割り当てて、時分割多重化した電気信号を生成する。優先度の高い信号および優先度の低い信号は、時分割多重化部57−7の出力から、それぞれ挿入部57−8および57−9に入力される。
【0185】
挿入部57−8は、優先度の高い信号について、受信信号と、時分割多重化部57−7の出力とをチャネル毎に合成した信号を生成する。挿入部57−9は、優先度の低い信号について、受信信号と、時分割多重化部57−7の出力とをチャネル毎に合成した信号を生成する。
【0186】
挿入部57−8の出力信号は、電気/光変換部57−10で波長がλ1の光信号に変換される。また、挿入部57−9の出力信号は、電気/光変換部57−11で波長がλ2の光信号に変換される。また、電気/光変換部57−10から出力される波長がλ1の光信号と、電気/光変換部57−11から出力される波長がλ2の光信号とが、通信用幹線BB_LC内の共通の1本の光ファイバに同時に供給され、波長多重化された光信号として送信される。
【0187】
同様に、制御ボックスCB(2)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch2)を利用し、補機AE21(カメラ)の信号を優先度の高い信号として、補機AE22(カメラ)の信号を優先度の低い信号として、それぞれ時分割多重化部57−7に入力する。また、制御ボックスCB(3)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch3)を利用し、補機AE32(カメラ)の信号を優先度の高い信号として、時分割多重化部57−7に入力する。
【0188】
いずれにしても、
図57に示した車載システムの通信系統においては、
図56に示したように波長多重および時分割多重された光信号を、通信用幹線BB_LC上の1本の光ファイバを利用して伝送できる。
【0189】
図57に示した車載システムにおいては、2種類の波長λ1、λ2を同時に利用し、波長毎に個別に信号処理している。また、波長の違いを優先度の違いに対応付けてある。したがって、例えば2種類の波長λ1、λ2のいずれか一方の通信に障害が発生したような場合には、正常な通信回線を優先度の高い信号の伝送に利用できるように切替制御を行うことも可能である。しかも、1本の光ファイバだけで通信経路を確保できる。
【0190】
<その他の特徴的な技術>
<ワイヤハーネスの品番数を削減する技術>
図12は、プリント基板と電線を組み合わせたワイヤハーネスの構成例を示す分解図である。
【0191】
ワイヤハーネスの構造は、車種、グレード、仕向地、オプションなどの違いに応じて様々に変化する可能性がある。そして、構成が変化すると、構成毎に各部品に個別に品番を付ける必要がある。構成の種類が増えると、品番数が増えるため製造コストが上昇する。
【0192】
そこで、ワイヤハーネスの構成要素を、構成の変化が生じないベースと、構成が変化するアディションとに区分する。そして、
図12に示したバックボーン部材12−1のように、プリント基板(PCB)上に構成された回路をワイヤハーネスのアディション要素として利用し、電線で構成されたサブハーネス12−2をワイヤハーネスのベース要素として利用し、これらのアディション要素およびベース要素を組み合わせて全体のワイヤハーネスを構成する。
【0193】
ここで、プリント基板上に構成された回路は、電子化することが容易であり、例えばFPGA(field-programmable gate array)デバイスを内蔵してプログラムを書き換えることにより、回路構成を容易に変更できる。そのため、バックボーン部材12−1については全て共通のハードウェアを採用でき、品番の増加を防ぐことができる。
【0194】
<後付け機器や持ち込み機器の接続に対応するための技術>
図13は、USBポートを備えた制御ボックスの外観の例を示す斜視図である。
【0195】
図13に示した制御ボックス13−1は、バックボーン幹線12−0と接続されており、所定の枝線ハーネスと接続するために複数の標準規格通信ポート13−2を備えている。具体的には、USB(Universal Serial Bus)規格の通信機能を備えた複数のコネクタが標準規格通信ポート13−2に設けてある。したがって、標準規格の通信ポートを備えた機器であれば、様々な機器を制御ボックス13−1を経由してバックボーン幹線12−0と接続することができる。つまり、様々な機器を車両に後付けしたり、ユーザが車両に持ち込んだ機器を接続することが容易になる。
【0196】
<制御ボックス等の機能を多様化するための技術>
図14(a)、
図14(b)、および
図14(c)は、制御ボックス等に内蔵する回路基板の3種類の構成例を示す平面図である。
【0197】
車両のワイヤハーネス等においては、車種、グレード、仕向地、オプションなどの種類に応じて、対応すべき機能が大きく変化する。例えば、バックボーン幹線上の各制御ボックスが対応すべき回路数、電流容量、処理速度、処理数などは、車両のグレード等に応じて変化する。もしも、全ての要求を満たす機能を全てのグレードの制御ボックスに搭載すると、最低コストが上昇するため、低コストの車両を提供できない。しかし、車種、グレード、仕向地、オプションなどの様々な組み合わせのそれぞれについて最適な構成の制御ボックスを用意すると、部品の品番数が大幅に増大するためコストが上昇する。
【0198】
そこで、
図14(a)、
図14(b)、および
図14(c)に示したように、使用する部品を共通化することにより、品番数の増大を抑制する。具体的には、標準化した3種類の回路基板14−1A、14−1B、14−1Cと、FPGAで構成したマイクロコンピュータ14−2とを組み合わせて必要とされる回路機能を実現する。
【0199】
回路基板14−1Aは、3種類のうち最もグレードが高いグレードA用の回路基板である。回路基板14−1Bは、3種類のうち2番目にグレードが高いグレードB用の回路基板である。また、回路基板14−1Cは、3種類のうち最もグレードが低いグレードC用の回路基板である。3種類の回路基板14−1A、14−1B、14−1Cは互いに基板のサイズ(大、中、小)が異なるため、基板の選択により回路数の変化に対応できる。また、回路数の変化に対応するために、使用するマイクロコンピュータ14−2の数を変更する。
【0200】
すなわち、グレードの低い車両の場合には対応すべき回路数が少ないので、
図14(c)に示すように小型の回路基板14−1Cと、1個のマイクロコンピュータ14−2との組み合わせで必要な機能を実現する。また、グレードが中くらいの車両の場合には対応すべき回路数が中間的なので、
図14(b)に示すように中型の回路基板14−1Bと、2個のマイクロコンピュータ14−2との組み合わせで必要な機能を実現する。また、グレードが大の車両の場合には対応すべき回路数が非常に多いので、
図14(a)に示すように大型の回路基板14−1Aと、3個のマイクロコンピュータ14−2との組み合わせで必要な機能を実現する。
【0201】
また、各マイクロコンピュータ14−2はFPGAであり、プログラムの書き換えが容易である。したがって、車両のグレード等の様々な仕様の違いに対応するために、各マイクロコンピュータ14−2のプログラムを書き換えて対応する。
【0202】
したがって、
図14(a)、
図14(b)、および
図14(c)に示した構成を採用する場合には、3種類の回路基板14−1A、14−1B、14−1Cのいずれかと、1種類のマイクロコンピュータ14−2のハードウェアとを用意するだけでよく、部品の種類および品番数の増大を抑制できる。
【0203】
<幹線等の部品の品番数を削減するための技術>
図15は、幹線を構成する配索部材の接続箇所の構成例を示す斜視図である。
【0204】
例えば、
図1に示したバックボーン幹線部21、22、23のような比較的大型の配索部材を形成する場合に、構成や形状などの仕様の違いによる部材の種類の増加や品番の増加を抑制するために、共通化した複数の部品を合体して1つの配索部材を構成することが考えられる。
【0205】
図15に示した構成例では、薄板状の2つの配索部材15−1、15−2を対向面同士で突き合わせて連結することでこれらを一体化できるように構成してある。具体的には、
図15に示すように、配索部材15−1の右側端面には突起部15−1aが形成され、配索部材15−2の左側端面には突起部15−1aと相補形状をなす凹部15−2aが形成されている。
【0206】
また、電源ライン(+12V)、アース(GND)、および所定の信号線とそれぞれ接続された複数の電極15−3が、配索部材15−1の右側端面に露出するように配置されている。図示しないが、同様に、配索部材15−2の左側端面にも、電極15−3の各々と接触可能な電極が配置されている。
【0207】
このように、連結箇所の形状、電極仕様などを事前に標準化した複数の配索部材15−1、15−2等の種類を選択し、選択した部材同士を組み合わせることにより、様々な仕様に対応する配索部材を構成することが可能である。この場合、標準化した配索部材の種類を減らすことが可能であり、品番数も削減できる。
【0208】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図16は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0209】
図16に示した制御ボックス16−1は、例えば、
図1に示したバックボーン幹線部21、22、23と接続される。また、車両を注文したユーザのオーダに応じて、ワイヤハーネス全体の機能や仕様が決定され、制御ボックス16−1の各接続部に所定の枝線サブハーネス16−2A、16−2B、16−2C、16−2Dが接続される。
【0210】
制御ボックス16−1上には、プログラムの書き換えが容易なマイクロコンピュータが搭載されている。このようなワイヤハーネスを製造する際に、導通チェッカー16−3を用意して、実際に接続し枝線サブハーネス16−2A、16−2B、16−2C、16−2Dの各端子と、制御ボックス16−1上の各端子との間の導通の有無を、検査する。そして、制御ボックス16−1上のマイクロコンピュータのプログラムを所定のツールで書き換える際に、導通チェッカー16−3と連動し、実際の導通状態を反映するようにプログラムの内容を書き換える。
【0211】
したがって、実際に作業者が制御ボックス16−1に組み付けた枝線サブハーネス16−2A、16−2B、16−2C、16−2Dの種類や、接続位置の違いなどを反映して、プログラムを適切に書き換え、実際の制御ボックス16−1内の回路接続状態を自動的に切り替えることができる。そのため、ワイヤハーネスの生産性が向上する。
【0212】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図17は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0213】
図17に示した制御ボックス17−1は、例えば、
図1に示したバックボーン幹線部21、22、23と接続される。また、車両を注文したユーザのオーダに応じて、ワイヤハーネス全体の機能や仕様が決定され、制御ボックス17−1の各接続部に所定の枝線サブハーネス17−2A、17−2B、17−2C、17−2Dが接続される。
【0214】
ここで、枝線サブハーネス17−2A、17−2B、17−2C、17−2Dの各々は通信機能を内蔵しており、それ自身に事前に割り当てられた固有の識別情報(ID)を接続先の制御ボックス17−1内のマイクロコンピュータに送信する。このマイクロコンピュータは、実際に接続された枝線サブハーネス17−2A、17−2B、17−2C、17−2Dの各々が送信したIDの組み合わせが、例えば「ABCD」、「ABDC」、「ACDB」等のいずれに該当するのかを識別することにより、各枝線の接続先に適用すべきソフトウェアのパターンを自動的に選択する。
【0215】
したがって、様々な枝線サブハーネス17−2A、17−2B、17−2C、17−2Dの各々の接続位置を、作業者が自由に選択できるので生産性が向上する。また、何らかの補機を後付けする場合にも、マイクロコンピュータが事前に把握している補機であれば、自動的に対応できる。
【0216】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図18(a)および
図18(b)は、幹線と枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0217】
図18(a)に示すように、幹線18−1と複数の制御ボックス18−2、18−3とで構成されるバックボーンに様々な枝線サブハーネス18−4、18−5を介して様々な補機を接続する場合に、各枝線サブハーネス18−4、18−5を接続するコネクタの位置が変化したり、各コネクタ内のピン配置が変化する可能性がある。
【0218】
例えば、
図18(b)に示した例では、制御ボックス18−2のコネクタ18−2bに対して、補機であるオートエアコン18−6Aと、マニュアルエアコン18−6Bとのいずれかを仕様の変化に応じて選択的に接続する場合を想定している。この場合、オートエアコン18−6Aにおけるコネクタのピン配置と、マニュアルエアコン18−6Bにおけるコネクタのピン配置とはそれぞれ異なる。
【0219】
このような変化に対応するために、制御ボックス18−2上にFPGAで構成されるマイクロコンピュータ18−2aを搭載し、制御ボックス18−3上にもFPGAで構成されるマイクロコンピュータ18−3aを搭載する。また、
図18(b)に示したオートエアコン18−6A、およびマニュアルエアコン18−6Bの本体またはコネクタ内にFPGAで構成されるマイクロコンピュータ18−2aを搭載する。
【0220】
そして、接続された枝線サブハーネス18−4、18−5の回路1本1本に対して、各々の接続先を、マイクロコンピュータ18−2a、18−3aが仕様に合わせたプログラムの書き換えにより適切に選択する。また、
図18(b)に示したように、補機側の枝線サブハーネスまたはそのコネクタに配置したマイクロコンピュータが、コネクタピン配置の違い等の仕様差を吸収するように制御する。これにより、制御ボックス18−2、18−3に各補機を接続する場合の接続仕様を補機側で吸収し、バックボーン側の仕様を共通化することが可能になる。
【0221】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図19は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す斜視図である。
【0222】
図19に示した制御ボックス19−1上には、様々な枝線および補機を接続するために、サイズや形状が共通の複数のコネクタ19−1a、19−1b、19−1c、19−1d、19−1e、19−1fが並んで配置されている。そして、補機を制御ボックス19−1に接続する場合には、複数のコネクタ19−1a〜19−1fのいずれかを選択して、枝線サブハーネス19−2A、19−2B、19−2Cをそれぞれ接続することになる。
【0223】
ここで、枝線サブハーネス19−2A、19−2B、19−2Cの各々の接続先のコネクタの位置は、必要に応じて作業者が車両の製造時に自由に選択できる。枝線サブハーネス19−2A、19−2B、19−2Cの接続先コネクタの位置の変化に対しては、制御ボックス19−1に内蔵したFPGAで構成されるマイクロコンピュータがプログラムの書き換えにより、制御ボックス19−1内の回路接続状態を自動的に変更することにより対応する。
【0224】
したがって、作業者は枝線サブハーネス19−2A、19−2B、19−2Cの各々の接続先のコネクタの位置を自由に選択でき、生産性が向上する。また、機能の共通化により部品の品番数を削減できる。
【0225】
<交流電力を使う技術>
図20は、車体上に配索した幹線および複数の枝線サブハーネスの配置例を示す斜視図である。
【0226】
図20に示した車載システムは、車体の前後方向に向けて直線的に配索したバックボーン幹線20−1と、これの各部に接続される複数の枝線サブハーネス20−2A、20−2B、20−2Cとを含んでいる。各枝線サブハーネス20−2A、20−2B、20−2Cは、バックボーン幹線20−1上に設けた制御ボックスに接続される。
【0227】
また、特徴的な事項として、バックボーン幹線20−1には交流電力を供給する。具体的には、AC200[V]程度の電圧を用いる。そして、各制御ボックスに変圧器および交流/直流変換器を装備し、制御ボックスの内部で交流電力を変圧すると共に所定の直流電圧に変換してから各枝線サブハーネス20−2A、20−2B、20−2Cに供給する。
図20に示した例では、各枝線サブハーネス20−2A、20−2B、20−2Cに、それぞれDC5[V]、DC48[V]、DC12[V]の直流電源電圧を供給している。
【0228】
このように、バックボーン幹線20−1上に交流電力を流すことで、直流の場合と比べて幹線における電力の損失を低減することが可能である。また、構成がシンプルで安価な変圧器を用いて電圧の変換ができるので、システムのコストを低減できる。電力の損失を低減することにより、車両の燃費が向上する。
【0229】
<多重通信を使う技術>
図21(a)および
図21(b)は、複数の制御ボックスおよびこれらの間を接続する通信用の幹線を示すブロック図である。
【0230】
図21(a)に示した構成では、2つの制御ボックス21−1、21−2の間を接続するバックボーン幹線の通信線21−3が、多数の電線の集合として構成されている。すなわち、伝送する信号の数だけ、個別の通信線を用意して各々の通信経路を確保する必要があるので、信号の数が増えると通信線の数も増える。
【0231】
一方、
図21(b)に示した構成では、2つの制御ボックス21−1B、21−2Bの間を接続するバックボーン幹線の通信線21−3Bが、1本または2本程度の通信線のみで構成されている。
【0232】
すなわち、
図21(b)に示した構成では、時分割多重(TDM)等の技術を採用することにより、複数系統の信号を1本の通信線上に重畳しているので、伝送する信号の数が増えた場合に、通信線の数を大幅に減らすことができる。なお、時分割多重(TDM)の代わりに周波数多重(FDM)の技術を採用してもよい。
【0233】
また、
図21(a)のように通信線の数が多い場合には、幹線の線路の中間部で通信線を分割する必要が生じる場合があるが、通信線の数を減らすことにより、通信線の分割が不要になり、構成を簡略化できる。したがって、回路数および部品数が削減される。
【0234】
<異常発生時のリカバリーのための技術>
図22は、リカバリー機能を備えた制御ボックスの構成例を示す電気回路図である。
バックボーン幹線や制御ボックスの内部等で、回路の断線などの異常が発生する場合がある。このような異常が生じると、枝線サブハーネスや負荷側に所定の電源電力が供給できなくなるので、様々な負荷を含む補機の動作が停止してしまう。これを防止するために、リカバリー機能を設ける。
【0235】
図22に示した構成においては、車両の主電源22−2から供給される電源電力を、制御ボックス22−1を経由して2つの負荷22−3、22−4にそれぞれ供給する場合を想定している。スイッチ22−1aを閉じることにより、負荷22−3に電力を供給することができる。また、スイッチ22−1bを閉じることにより、負荷22−4に電力を供給することができる。
【0236】
但し、スイッチ22−1bと接続されている線路上で断線等の故障が生じると、スイッチ22−1bを閉じても負荷22−4に電力が供給されなくない異常な状態になる。そこで、負荷22−4が非常に重要度の高い負荷である場合を想定し、
図22に示した構成では、スイッチ22−1bの経路と並列な状態で、バックアップ経路22−1cが接続されている。また、このバックアップ経路22−1cにはマイクロコンピュータ22−1eによりオンオフ制御可能なリレー22−1dが接続されている。
【0237】
マイクロコンピュータ22−1eは、スイッチ22−1bの通電経路に異常が発生したことを検知すると、リレー22−1dを自動的にオンに切り替えて、バックアップ経路22−1cを経由して負荷22−4に電源電力が供給されるようにリカバリー制御を実施する。また、車両のメータユニットに備わっているウォーニング表示部に、故障の発生を表示するように、マイクロコンピュータ22−1eが制御する。このリカバリー機能により、ワイヤハーネスおよび各種補機の動作に関する信頼性が向上する。
【0238】
<車両上の近接無線通信技術>
図23(a)および
図23(b)は、ワイヤハーネスと負荷との接続例を示すブロック図である。
図24は、車体上の各種構成要素の配置および接続の具体例を示す斜視図である。
【0239】
図23(a)に示すように、車両のドア23−3内に配置された各種補機をワイヤハーネスを介して車室内側のワイヤハーネス23−1と接続する場合には、ドアの開閉に伴って屈曲するワイヤハーネスの屈曲部位の電線束を、グロメット23−2の内部に通し、電線の保護、防水、防塵、防音などの機能を持たせるのが一般的である。しかし、グロメットを採用する場合には、ワイヤハーネスの配索作業が困難になるし、部品コストも増大する。
【0240】
そこで、
図23(b)に示した構成においては、車室内側のバックボーンにある制御ボックス23−4と、車両のドア23−7内に配置された各種補機とを接続するために、近接無線通信ユニット23−5、23−6を用いている。また、これらの近接無線通信ユニット23−5、23−6は、通信だけでなく、電源電力の給電も無線で行う機能を備えている。したがって、
図23(b)に示した構成を採用する場合には、グロメットは不要であり、補機の接続のための配索作業も非常に簡単になる。
【0241】
より現実的な車両上の構成例について説明する。
図24に示した構成においては、バックボーンメインライン24−1、インパネ部バックボーン24−2、エンコパ部バックボーン24−3等が幹線として車体上の各部に配索されている。また、これら幹線の各部に、制御ボックス(制御ボックス)24−41、24−42、24−43、24−44、24−45が配置されている。
【0242】
また、
図24に示した構成においては、ステアリングモジュール24−5と、制御ボックス24−41との間が、近接無線通信により無線接続されている。また、各制御ボックスとドア内の補機との間も近接無線通信により無線接続されている。また、ラゲージ空間に配置されているセンサ24−7、アンテナ24−8等の補機と、制御ボックス24−45との間も近接無線通信により無線接続されている。
【0243】
<ノイズ対策の技術>
図25(a)、
図25(b)、および
図25(c)は、幹線、制御ボックス、バッテリー等の接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0244】
図25(a)に示した構成例では、一般的な車両と同様に1個のメインバッテリー25−1およびオルタネータ25−2がワイヤハーネス25−3の端部近傍に接続されている。また、ワイヤハーネス25−3の様々な部位には、電子制御ユニット(ECU)25−4、25−5、電気モータ25−6などの補機が接続されている。
【0245】
図25(a)のような構成において、オルタネータ25−2や電気モータ25−6などの機器がノイズ源となり、これらが発生する電磁ノイズがその近傍にある電子制御ユニット25−4、25−5等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0246】
そこで、ノイズの影響を減らすために次のように対策を施す。すなわち、複数のバッテリーを用意して、バックボーン内で複数のバッテリーを分散配置すると共に、ノイズ源に近い位置にバッテリーを配置する。これにより、発生したノイズをバッテリーで吸収しやすくする。また、各電子制御ユニットへのノイズの回り込みを抑制できる。また、各ノイズ源やノイズの影響を受けやすい機器がバックボー上のどの位置に接続されても、ノイズの問題を解消できる。
【0247】
図25(b)に示した構成例では、メインバッテリー25−1の他に、2個のサブバッテリー25−1B、および25−1Cを分散した状態でワイヤハーネス25−3のバックボーン上に接続してある。したがって、ノイズ源である電気モータ25−6が発生したノイズは、その近傍に接続されているサブバッテリー25−1B、および25−1Cが吸収する。
【0248】
また、ノイズの影響を受けやすい電子制御ユニット25−4、および25−5は、ノイズ源に対して、サブバッテリー25−1B、および25−1Cよりも遠い位置に配置されているので、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0249】
図25(c)に示した構成例では、メインバッテリー25−1の他に、6個のサブバッテリー25−1B、25−1C、25−1D、25−1E、25−1F、25−1Gを分散した状態でワイヤハーネス25−3のバックボーン上に接続してある。また、サブバッテリー25−1Bは、メインバッテリー25−1と制御ボックス25−7Aとの間の幹線25−3Aと接続してある。サブバッテリー25−1Cは、制御ボックス25−7Aの内部回路と接続してある。
【0250】
サブバッテリー25−1Dは、2つの制御ボックス25−7A、25−7Bの間の幹線25−3Bと接続してある。サブバッテリー25−1Eは、制御ボックス25−7Bの内部回路と接続してある。サブバッテリー25−1Fは、2つの制御ボックス25−7B、25−7Cの間の幹線25−3Cと接続してある。サブバッテリー25−1Gは、制御ボックス25−7Cの内部回路と接続してある。
【0251】
図25(c)に示した構成のように、多数のサブバッテリーを接続する場合には、各々のサブバッテリーはどの場所に接続してもよい。各サブバッテリーがノイズフィルタとして機能するので、多数のサブバッテリーを接続することにより、電源供給ラインにおいてノイズを吸収する性能が向上する。
【0252】
<ノイズ対策の技術>
図26(a)、
図26(b)、
図26(c)、
図26(d)、および
図26(e)は、幹線および1つ以上のバッテリーの接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0253】
この技術では、以下の(1)、(2)、(3)の対策を施す。
(1)ノイズを吸収する特性を有するバッテリーを、バックボーン幹線のどの位置にでも接続できるように構成する。(2)電圧変動やノイズを影響をなくすため、バックボーン幹線の配索材料については、低インピーダンスのものを採用する。(3)バックボーン幹線の構成を共通化すると共に、車両毎の条件に応じて、バッテリーの取り付け位置を変更できるように構成する。
【0254】
図26(a)に示した構成においては、バックボーン幹線26−3の4箇所の端部のそれぞれに制御ボックス26−4A、26−4B、26−4C、26−4Dが接続してある。そして、メインバッテリー26−1は制御ボックス26−4Aの位置でバックボーン幹線26−3と接続し、サブバッテリー26−2は制御ボックス26−4Dの位置でバックボーン幹線26−3と接続してある。なお、メインバッテリー26−1およびサブバッテリー26−2を、制御ボックス26−4A、26−4B、26−4C、26−4Dのいずれの位置でバックボーン幹線26−3と接続する場合であっても、構成が共通のバックボーン幹線26−3を利用できる。
【0255】
図26(b)に示した構成においては、メインバッテリー26−1のみが、車両の前側にあるバックボーン幹線26−3の先端部と、制御ボックス26−4Aを経由して接続されている。
【0256】
図26(c)に示した構成においては、サブバッテリー26−2のみが、車両の後ろ側にあるバックボーン幹線26−3の後端部と、制御ボックス26−4Dを経由して接続されている。
【0257】
図26(d)に示した構成においては、メインバッテリー26−1が、車両の前側にあるバックボーン幹線26−3の先端部と、制御ボックス26−4Aを経由して接続され、サブバッテリー26−2が、車両の後ろ側にあるバックボーン幹線26−3の後端部と、制御ボックス26−4Dを経由して接続されている。
【0258】
図26(e)に示した構成においては、サブバッテリー26−2が車両の中央付近に配置され、バックボーン幹線26−3の中央部に、サブバッテリー26−2が直接接続されている。
【0259】
<ノイズ対策の技術>
図27は、幹線および複数のバッテリーの接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0260】
図27に示した構成においては、バックボーン幹線27−1の4箇所の端部に、それぞれ制御ボックス27−2、27−3、27−4、27−5が接続されている。そして、複数の制御ボックス27−2、27−3、27−4、27−5のそれぞれが小型のサブバッテリー(二次電池)を内蔵している。これらのサブバッテリーの各々は、バックボーン幹線27−1の電源ラインと接続されている。また、図示しないメインバッテリー等の主電源もバックボーン幹線27−1と接続されている。したがって、以下の(1)〜(4)に示す事項が実現する。
【0261】
(1)バックボーン幹線27−1の各部に対して、複数のバッテリーを分散配置することができる。これにより、負荷の要求電圧が高い場合の電圧変動を、各バッテリーからの電流供給で抑制できる。
【0262】
(2)バックボーン幹線27−1の各部には分散配置された複数のバッテリーを常時接続しておくことができる。これにより、回生の電気エネルギーがバックボーン幹線27−1上に現れた場合に、このエネルギーを各部の複数のバッテリーで効率よく回収することができる。したがって、回生エネルギーの回収率が向上する。
【0263】
(3)複数のバッテリーを備えているので、メインバッテリー等の主電源に異常が発生したような場合には、バックアップ用の電力をサブの複数のバッテリーから供給することができる。このような電力のバックアップ制御は、制御ボックス27−2、27−3、27−4、27−5等に備えたマイクロコンピュータを用いて自動的に行うことができる。
【0264】
(4)車両上のエリア毎にそれぞれバッテリーを備えているので、車両の衝突などに伴ってバックボーン幹線27−1の一部分に断線が生じたような場合であっても、各補機が配置されているエリアの近傍にあるバッテリーから電源電力を供給することができ、切れない安全な電源を実現できる。
【0265】
<ノイズ対策の技術>
図28は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0266】
図28に示した装置は、オルタネータ28−1、メインバッテリー28−2、バックボーン幹線28−3、ボデーアース28−4、補機28−5A〜28−5D、および枝線サブハーネス28−6A〜28−6Dを備えている。また、バックボーン幹線28−3は、電源ライン28−3aと、アース(GND)ライン28−3bとを備えている。ボデーアース28−4は、車両の車体を構成する金属を利用したアース経路である。
【0267】
図28に示した構成においては、バックボーン幹線28−3の上流側にオルタネータ28−1、およびメインバッテリー28−2が接続されている。また、バックボーン幹線28−3の各部位に、枝線サブハーネス28−6A〜28−6Dを介して、補機28−5A〜28−5Dが接続されている。
【0268】
また、オルタネータ28−1、およびメインバッテリー28−2の負極側の端子は、バックボーン幹線28−3のアースライン28−3bおよびボデーアース28−4の両方とそれぞれ接続されている。また、補機28−5Aおよび28−5Bの電源のアース側端子は、それぞれ枝線サブハーネス28−6Aおよび28−6Bを経由してバックボーン幹線28−3のアースライン28−3bのみと接続されている。また、補機28−5Cおよび28−5Dの電源のアース側端子は、それぞれボデーアース28−4のみと、専用のアース線または筐体アースを介して接続されている。
【0269】
なお、ボデーアース28−4を利用する場合の線路の抵抗値は、例えば0.7[mΩ]程度と非常に小さいが、バックボーン幹線28−3のアースライン28−3bを利用する場合には抵抗値が比較的大きくなる。
【0270】
バックボーン幹線28−3のアースライン28−3bは、抵抗値が比較的大きいので、大きな電流を流すと線路の抵抗により生じる電圧降下によりアース電位の変動をもたらす可能性がある。しかし、ボデーアース28−4を利用すれば、抵抗値が小さいので、アース電位の変動はほとんど生じない。
【0271】
図28に示した構成においては、補機28−5Aおよび28−5Bは消費する電源電流が比較的小さい状況を想定しているので、これらのアース端子をバックボーン幹線28−3のアースライン28−3bと接続してある。また、補機28−5Cおよび28−5Dは消費する電源電流が比較的大きい状況を想定しているので、これらのアース端子はボデーアース28−4と接続してある。このように接続することにより、アース電位の変動を抑制できる。
【0272】
また、オルタネータ28−1はDC/DCコンバータなどのスイッチング回路を内蔵しているので、スイッチングに伴ってノイズを発生する可能性が高い。しかし、
図28に示したように、オルタネータ28−1の負極側端子をボデーアース28−4と接続することにより、線路の抵抗が小さいため、発生したノイズをメインバッテリー28−2等を用いて吸収することができる。
【0273】
<車両と車外とで通信するための技術>
図29(a)は、車載システムの構成例を示すブロック図、
図29(b)は同じ車載システムの外観の例を示す斜視図である。
【0274】
図29(b)に示した車載システムは、複数個の制御ボックス29−1と、これらの制御ボックスの間を接続するバックボーン幹線29−4と、制御ボックスを介してバックボーン幹線29−4に接続した複数の枝線サブハーネス29−5とを備えている。
【0275】
また、
図29(a)に示したように、枝線サブハーネス29−5の配下に、補機29−3A、29−3B等が接続される。これらの補機29−3A、29−3Bの具体例として、例えばオーディオ装置や、電子制御ユニット(ECU)が接続される。また、
図29(b)に示したように、この例では複数個の制御ボックス29−1の1つの内部に、DCM(Data Communication Module)29−1aが備わっている。
【0276】
一般的な車両においては、様々な種類の補機が車外との間で無線通信を行うために、各々の補機がDCMと個別に接続されている。そのため、様々な回路の接続箇所がDCMに集中している。多くの回路が集中すると、ワイヤハーネスにおいて電線の加工本数が増え、コネクタのサイズも大きくなり、ワイヤハーネスの生産性が悪化する。
【0277】
そこで、
図29(a)に示した構成のように、1つの制御ボックス29−1にDCM29−1aを内蔵し、様々な補機29−3A、29−3Bを共通の制御ボックス29−1に接続する。
【0278】
図29(a)に示した制御ボックス29−1はバックボーン幹線29−4と接続されているので、車両上の様々な位置に配置される様々な種類の補機を、バックボーン幹線29−4と接続することで、この幹線を経由してDCM29−1aの無線通信機能を容易に利用できる。これにより、ワイヤハーネスの回路数を減らすことができ、ワイヤハーネスの部品コストおよび製造コストを低減できる。
【0279】
<幹線の電圧および消費電流に関する技術>
図30(a)および
図30(b)は、それぞれ異なるバックボーン幹線の構成例を示す縦断面図である。
図31は、特別な電源制御を実施する場合の電源電流と電圧との対応関係の例を示すタイムチャートである。
【0280】
車載システムにおいては、ワイヤハーネスに接続された補機の消費電流が大きくなると、アースラインの抵抗が大きい場合に、電圧降下が増大し、アース電位が変動しやすくなる。そして、補機のアース端子がアースラインから浮いたような状態になる場合がある。また、電源ラインにおける電圧降下により、補機に供給される電源電圧が低下する場合がある。
【0281】
そこで、本実施形態においては、共通のバックボーン幹線において、2種類の電源電圧、例えば+12[V]と+48[V]とを併用できるように構成し、状況に応じて2種類の電源電圧を使い分ける。
【0282】
図30(a)および
図30(b)に示したバックボーン幹線30−1は、2本の電源ライン30−1a、および30−1bと、アースライン30−1cと、通信線30−1dとを備えている。そして、本実施形態では、電源ライン30−1a、および30−1bの少なくとも一方について、供給する電源電圧を切り替えることができる。すなわち、+12[V]の電源電圧を選択した場合には、
図30(a)に示したように電源ライン30−1a、または30−1bに+12[V]の電源電圧を供給し、+48[V]の電源電圧を選択した場合には、
図30(b)に示したように電源ライン30−1a、または30−1bに+48[V]の電源電圧を供給する。
【0283】
例えば、メインバッテリー等の主電源から供給される直流電力を、バックボーン幹線30−1上に配置した制御ボックス内で昇圧または降圧することにより、+12[V]と+48[V]の切替を行うことができる。
また、制御ボックス内にあるマイクロコンピュータで制御を実施することにより、+12[V]と+48[V]の切替を自動的に行うこともできる。例えば、マイクロコンピュータで負荷の要求電流または実際の消費電流を監視すれば、これらの電流の大小に応じて
図31に示した例のように、電圧を自動的に切り替えることができる。
【0284】
つまり、負荷の消費電流が大きい時には、制御ボックスが供給する電圧を+12[V]から+48[V]に切り替えることで、アース電位の変動や、負荷へ供給する電圧の低下の影響を抑制できる。
【0285】
<幹線の構成に関する技術>
図32(a)、
図32(b)、および
図32(c)は、それぞれ異なるバックボーン幹線の構成例を示す縦断面図である。
【0286】
一般的な車両においては、電源電圧として+12[V]を利用している。しかし、負荷の消費電流が大きくなると、ワイヤハーネスにおける電圧降下の問題が発生する。また、電圧降下を減らすためにワイヤハーネスの電線径を大きくすると、ワイヤハーネスが肥大化し、重量も増える。
【0287】
そこで、ワイヤハーネスが扱う電源電圧として、+12[V]以外に、+48[V]も利用できるように構成する。
【0288】
図32(a)に示した構成では、バックボーン幹線を4本の配索材料(電線、バスバーなど)で構成している。そして、4本の配索材料のうち2本を+12[V]の電源ラインおよびアース(GND)ラインとして利用し、残りの2本を+48[V]の電源ラインおよびアースラインとして利用する。
【0289】
図32(b)に示した構成では、バックボーン幹線を3本の配索材料で構成している。そして、3本の配索材料のうち1本を+12[V]の電源ラインとして利用し、もう1本をアース(GND)ラインとして利用し、残りの1本を+48[V]の電源ラインとして利用する。
【0290】
図32(c)に示した構成では、バックボーン幹線を2本の配索材料で構成している。そして、2本の配索材料のうち1本を+12[V]/+48[V]共用の電源ラインとして利用し、もう1本をアース(GND)ラインとして利用する。
図32(c)の構成を利用する場合には、例えばバックボーン幹線上の制御ボックス内で、+12[V]/+48[V]の電圧切替を実施する。
【0291】
<節電制御に関する技術>
例えば、優先度の低い負荷に対する電力供給を減らしたり、優先度の低い負荷の通電を一時的に停止することにより、車両全体の電力消費を抑制することができ、電費の向上、バッテリーの小型化に繋がる。しかし、このような節電制御を常時実行すると、優先度の低い負荷をユーザが快適に利用できない場合がある。
【0292】
そこで、ある状況になったときにだけ、通常モードから節電モードに移行し、上記のような節電制御を実行することが想定される。ここで重要な事項は、通常モードから節電モードに移行するかどうかを決めるための判定条件をどのように定めるかである。
【0293】
本実施形態においては、通常モードから節電モードに移行するための判定の材料として、過去のデータDAと、これから一日の予想データDBとを用意する。そして、過去のデータDAと、予想データDBとを比較して、本日の電力使用予測をユーザへ提示しつつ、車両側の制御装置が自動的に節電モードを選択する。
【0294】
過去のデータDAの具体例としては、日別、シーズン別、天候・気温・湿度などの環境条件別などの条件パターンを考慮して、条件パターン毎の電力使用量を計測して記録しデータ化する。また、学習機能を用いてデータを最適化する。
【0295】
予想データDBの具体例としては、本日の天気予想に基づくカーエアコンの使用量予測データ、スマートホンなどに登録されているユーザのスケジュールデータ、カーナビゲーション装置に入力された目的地情報などがある。そして、これらに基づいて特定の条件パターンを抽出することにより適切な予想データDBが得られる。
【0296】
<バッテリ上がりを防止するための技術>
例えば、外部の電源と接続することなく車両を駐車しているような場合には、車両上の補機のほとんどは停止状態であり、バッテリーが蓄積している電力はほとんど消費されない。それでも、例えば盗難防止装置のような一部の負荷は駐車中でも電力消費を継続するため、長期間に亘って駐車状態を継続すると、バッテリー上がりが生じ、車両を始動できない状況に陥る。
【0297】
そこで、本実施形態においては、バッテリー上がりを未然に防止するために車両上の制御装置が特別な制御を実施する。すなわち、制御装置はメインバッテリー等の電源における電力の残容量を把握すると共に、バッテリーから流出する通電電流や暗電流を計測して把握し、これらの情報に基づいて、バッテリー上がりが生じるまでの残り日数を予測する。そして、残り日数が少なくなった場合には、自動的にバッテリーからの電力供給を停止する。なお、供給電力を段階的に削減するように制御してもよい。
【0298】
<断線検知に関する技術>
図33は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0299】
図33に示した車載システムにおいては、バックボーン幹線33−4の先端側に主電源であるオルタネータ33−1およびメインバッテリー33−2が接続してあり、バックボーン幹線33−4の後端側に、スイッチ33−5を経由してサブバッテリー33−2Bが接続してある。
【0300】
また、バックボーン幹線33−4の中間部に、複数の制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cが互いに分散した状態で各位置に接続してある。また、バックボーン幹線33−4の構成要素として、電源ラインおよびアースラインが含まれている。そして、バックボーン幹線33−4の電源ラインは、電力の供給だけでなく、通信にも利用できるように構成してある。すなわち、既存の電力線通信(PLC)技術を採用することにより、直流の電源電力と、通信用の交流信号とが電源ライン上で重畳した状態で伝送される。
【0301】
したがって、複数の制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cの各々は、PLC通信用のインタフェースを内蔵しており、複数の制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cの間で相互にPLC通信を行うことができる。
【0302】
また、このような構成において、例えば2つの制御ボックス33−3A、33−3Bの間でバックボーン幹線33−4が断線すると、2つの制御ボックス33−3A、33−3Bの間でPLC通信ができない状態になる。したがって、PLC通信ができない状態になった場合には、制御ボックス33−3A、および33−3Bはバックボーン幹線33−4が断線したことを認識できる。また、断線が発生した位置を特定することも可能である。また、バックボーン幹線33−4が断線した場合でも通信ができるように、複数の制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cの各々は、近距離無線通信機能も搭載している。
【0303】
上記のような断線が生じた場合には、これを検知した制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cのいずれかのフェイルセーフ機能により、電力のリカバリー制御を実施する。すなわち、スイッチ33−5を閉じることにより、メインバッテリー33−2、およびサブバッテリー33−2Bの双方から、バックボーン幹線33−4に対して電源電力を供給する。そして、スイッチ33−5は閉じた状態を維持する。これにより、断線した位置よりも上流側では、各回路にメインバッテリー33−2から電力が供給され、断線した位置よりも下流側では、各回路にサブバッテリー33−2Bから電力が供給される。また、断線が発生した場合には、PLC通信を中止して、機能を限定した無線通信により、制御ボックス33−3A、33−3B、33−3Cの間の通信経路を確保する。
【0304】
<通信系統を共用するための技術>
図34は、通信ケーブルの構成例を示す縦断面図である。
【0305】
車両上の通信に関する標準規格としては、CANやCXPIなど複数の規格が存在している。したがって、車両の仕様の違い、車両上のエリアの違い、グレードの違いなどのために、複数の規格の通信インタフェースが混在する可能性がある。そして、規格毎に構成が異なる通信ケーブルなどの部品を使用することになる。構成が異なるので、複数の規格の部品を共用することができない。
【0306】
図34に示した通信ケーブル34−1は、CAN規格の通信、およびCXPI規格の通信のどちらでも利用できるように構成してある。この通信ケーブル34−1は、電源ライン34−1a、アース(GND)ライン34−1b、Hi側通信ライン34−1c、およびLo側通信ライン34−1dの4本の電線で構成されている。
【0307】
そして、CAN規格の通信を行う場合には、2つのHi側通信ライン34−1cおよびLo側通信ライン34−1dの両方を使用し、CXPI規格の通信を行う場合には、Hi側通信ライン34−1cのみを使用する。これにより、CAN、およびCXPIのいずれの規格の通信インタフェースと接続する場合であっても、構成が共通化された通信ケーブル34−1を利用できる。このような共通化により、ワイヤハーネスの製造が容易になり、様々な補機の後付けも容易になる。
【0308】
なお、CAN/CXPIの2種類のインタフェース接続を切り替えるための切替回路CB11の構成は、既に説明した
図10の中に示されている。
【0309】
<構成の共通化のための技術>
図35は、車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
【0310】
例えば
図1に示したような制御ボックス31〜33の配下に、枝線サブハーネスを経由して様々な補機を接続する場合に、大型の制御ボックスを採用することが難しく、枝線サブハーネスを接続するためのコネクタの数が制限されることもある。そのため、1つの制御ボックスに多数の補機を接続しようとする場合に、コネクタの口数が不足する可能性がある。すなわち、制御ボックスの間口が狭いので、多数のコネクタを制御ボックスに用意できない場合がある。
【0311】
そこで、本実施形態においては、
図35に示したモジュラー接続コネクタ(JC)35−1を用意する。このモジュラー接続コネクタ35−1は、テーブルタップに似た構成を有しており、上流側には1つの枝線サブハーネス35−5が接続されており、下流側の接続部35−1aには複数の機器を接続可能な多数のコネクタが備わっている。
【0312】
モジュラー接続コネクタ35−1の枝線サブハーネス35−5は、例えば
図35に示すように、1つの制御ボックス35−2Cのコネクタに枝線として接続される。
図35に示すように、モジュラー接続コネクタ35−1の内部には、2つのPHY回路、ネットワークスイッチ(switch)、ゲートウェイ(GW)、処理部、CAN−FD用インタフェース、CXPI用インタフェース、標準機能ドライバなどが備わっている。
【0313】
図35に示した構成においては、モジュラー接続コネクタ35−1の1つのPHY回路には、通信線35−8を経由して、カメラ、センサ系の機器35−7を接続してある。また、標準機能ドライバの配下には、2つの負荷を接続してある。
【0314】
モジュラー接続コネクタ35−1の下流側の接続部35−1aには多数のコネクタが備わっているので、多数の補機を必要に応じて接続することができる。例えば、
図35に示すようにDCMおよびアンテナを接続したり、電子制御ユニット(ECU)を介して負荷6を接続することができる。また、ECUの代わりに簡易な通信機能や出力制御機能を内蔵したコネクタ(Eコネ)を介して負荷を接続することもできる。
【0315】
また、モジュラー接続コネクタ35−1の下流側の接続部35−1aに、もう1個のモジュラー接続コネクタ35−1を直列に接続することも可能であるので、接続可能な機器の数を必要に応じて増やすことができる。なお、
図35中に示したECUボックス35−3等の構成要素については、後で詳細に説明する。
【0316】
<バックボーン幹線に光通信経路を組み込む技術>
前述の
図10に示してあるように、バックボーン幹線BB_LMの2本の通信ラインL4B、L5Bとして、光ファイバケーブルを採用し、光通信機能を制御ボックスCBに組み込む。これにより、幹線を利用して大容量または高速の通信が可能になるため、グレードの高い車両の通信にも利用できる。具体的には、10[Gbps]程度の最大通信速度を保障できるため、高解像度の映像のデータをタイムラグなく流すことが要求される用途にも適用できる。
【0317】
<制御ボックス内で光信号を扱うための技術>
光信号を扱うための機能を制御ボックスに搭載する。例えば、
図10に示した車載システムのように、制御ボックスCBの中に、PHY回路CB03、CB04を組み込むことで、電気信号を光信号に変換して送信したり、受信した光信号を電気信号に変換して受信処理することが可能になる。
【0318】
より具体的には、
図57に示した制御ボックスCB(1)のように、光/電気変換部57−2、57−3、および電気/光変換部57−10、57−11を組み込んで光信号および電気信号の相互変換を可能にする。
【0319】
<通信系統幹線の接続形態に関する技術>
図36は、通信系統をリング型に接続した車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
図37は、通信系統をスター型に接続した車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
【0320】
図36に示した車載システムにおいては、4個の制御ボックス36−1、36−2、36−3、および36−4をバックボーンの通信用幹線36−5で互いに接続してあり、この接続形態がリング形状に構成されている。
【0321】
すなわち、制御ボックス36−1が送出する信号は、通信用幹線36−5を経由して次の制御ボックス36−2に届き、制御ボックス36−2の内部で中継された信号が、制御ボックス36−2から通信用幹線36−5に送出されて次の制御ボックス36−3に届く。同様に、制御ボックス36−3が受信し中継した信号が、通信用幹線36−5に送出されて、次の制御ボックス36−4に届く。更に、制御ボックス36−4が受信し中継した信号が、通信用幹線36−5に送出されて、次の制御ボックス36−1に届く。このようにして、通信用幹線36−5上の信号は、リング形状の経路を中継されながら順次に伝送される。
【0322】
したがって、
図6に示した車載システムと同様の通信機能を果たす。また、通信用幹線36−5の経路を二重化すれば、一方の通信経路に異常が発生した場合でも、残りの正常な経路を利用して通信経路を確保できるので、信頼性が高まる。また、2つの経路を同時に使用することにより通信速度を2倍にすることもできる。
【0323】
一方、
図37に示した車載システムにおいては、5個の制御ボックス37−1、37−2、37−3、37−4、および37−5がバックボーンの通信用幹線37−5a、37−5bで互いに接続してあり、この接続形態がスター形状に構成されている。すなわち、1個の制御ボックス37−1を中心とし、その周囲に他の4個の制御ボックス37−2〜37−5がそれぞれ独立した経路で接続されている。
【0324】
また、
図37に示した構成においては、それぞれの通信経路が二重化されている。例えば、制御ボックス37−1と、制御ボックス37−3との間は、互いに独立している2本の通信用幹線37−5a、および37−5bによりそれぞれ接続されている。
【0325】
二重化された通信経路のそれぞれについては、例えば通信の優先度、重要度、セキュリティレベルの違い等に応じて使い分けることができる。具体的には、車両の走行に関係する通信には優先度の高い通信経路を利用し、そのほかの一般的な通信には優先度の低い通信経路を利用する。また、通信障害が発生したような場合に、二重化された通信経路の一方をバックアップとして利用することも考えられる。セキュリティレベルについては、プライベート、パブリックのように分けることができる。
【0326】
スター形状の中心の制御ボックス37−1は、次に送るパケットの送信先を、4つの制御ボックス37−2〜37−5の中から選択的に決定すると共に、2系統の通信経路のどちらに送るのかを決定する。
【0327】
車載システムの通信において、優先度を決定する場合には、一般的には部品毎に事前に決定されるので、例えばエンジン用ECUが扱う情報は常に優先度が高い情報として扱われる。しかし、実際には重要度の低い情報がエンジン用ECUで扱われる場合も多い。
【0328】
そこで、情報毎に重要性を表すIDを与え、このIDに基づいて伝送する情報の重要性を識別し、通信経路を自動的に選択する。すなわち、重要性の高い情報については、二重化されたバックボーンの通信用幹線37−5の通信用幹線37−5aで伝送し、重要性の低い情報は通信用幹線37−5bで伝送する。
【0329】
<車両上のシステム内で無線通信を利用する技術>
図38(a)、
図38(b)、および
図38(c)は、それぞれ異なる状況における機器間の通信接続状態を示し、
図38(a)は斜視図、
図38(b)および
図38(c)はブロック図である。
【0330】
例えば、
図38(a)に示したバックボーン幹線38−1上に通信線が含まれている場合には、バックボーン幹線38−1上に接続した複数の制御ボックス38−2、38−3の間で有線の通信を行うことができる。しかし、車両の衝突などの際に、バックボーン幹線38−1が被害を受けて通信線が断線する可能性がある。
【0331】
そこで、通信経路に冗長性を持たせるために、近距離の無線通信機能を各制御ボックス38−2、38−3に搭載する。これにより、
図38(a)に示す構成において、制御ボックス38−2、38−3の間で通信線が断線した場合であっても、無線通信回線を経由して、複数の制御ボックス38−2、38−3の間の通信経路を確保できる。また、断線が生じていない箇所では、バックボーン幹線38−1上の通信線を経由して制御ボックス間の通信経路を確保する。
【0332】
また、
図38(b)に示すように、制御ボックス38−4、38−5の間で通信線が断線し、同時に制御ボックス38−5、38−6の間でも通信線が断線した場合であっても、それぞれ無線通信により通信経路を確保できる。したがって、
図38(c)に示すように、制御ボックス38−4、38−5の間、制御ボックス38−5、38−6の間、および制御ボックス38−4、38−6の間で通信できる。これにより、通信経路の信頼性を確保できる。
【0333】
<バックボーン幹線の細径化に関する技術>
図39は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0334】
図39に示した車載システムにおいては、バックボーン幹線39−3の一方の端部(例えば車体の前方側)にオルタネータ(発電機:ALT)39−1を接続してあり、バックボーン幹線39−3の他方の端部(例えば車体の後部側)にメインバッテリー39−2が接続してある。
【0335】
また、バックボーン幹線39−3の中間部の各部に、負荷39−4A、39−4B、および39−4Cが所定の枝線サブハーネスを介して接続してある。また、
図39においては負荷39−4A、39−4B、および39−4Cのそれぞれを接続した箇所におけるバックボーン幹線39−3の電圧を、それぞれV1、V2、およびV3で表してある。
【0336】
通常は、オルタネータ39−1の直流出力電圧は、メインバッテリー39−2の端子間電圧よりも高くなる。したがって、
図39に示したように、「V1>V2>V3」の関係になる。
【0337】
また、
図39に示した構成においては、負荷39−4A、39−4B、および39−4Cの各々に流れる電源電流については、オルタネータ39−1からバックボーン幹線39−3上を右側に向かって流すこともできるし、メインバッテリー39−2からバックボーン幹線39−3上を左側に向かって流すこともできる。
【0338】
したがって、大きな電流を必要とする負荷に対して、オルタネータ39−1およびメインバッテリー39−2の両方から同時に電力を供給する場合であっても、オルタネータ39−1の電流と、メインバッテリー39−2の電流とが互いに異なる箇所を通過することになり、バックボーン幹線39−3上の同じ箇所に電流が集中するのを避けることができる。その結果、バックボーン幹線39−3の各部を流れる電流の定格最大値が削減され、バックボーン幹線39−3における電源ラインのバスバー等を細径化することが可能になる。
【0339】
<複数の負荷の配置形態に関する技術>
図40は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0340】
図40に示した車載システムにおいては、車体のエンコパ(エンジンルーム)領域40−2から車室内の領域40−1にかけて直線状にバックボーン幹線40−3が配索してある。そして、バックボーン幹線40−3には主電源であるオルタネータ(ALT)40−4、およびメインバッテリー等で構成される電源40−5が接続されている。
【0341】
また、バックボーン幹線40−3の各部には、所定の枝線サブハーネスを介して、車両上に存在する様々な種類の負荷40−6A、40−6B、40−6C、40−6Dが接続されている。
【0342】
また、この例では負荷40−6Aは大電力を消費する負荷である。また、負荷40−6BはECU、スイッチ、センサ、イルミネーションのように、消費する電力が小さい負荷である。負荷40−6Cは、ランプやボデー系に備わった電気モータのように中程度の電力を消費する負荷である。また、負荷40−6Dは、シャシー系に備わった電気モータのように大電力を消費する負荷である。
【0343】
図40に示したように、この構成においては、小電力の負荷40−6Bは、電源40−5に近い位置に接続してあり、大電力の負荷40−6Dは電源40−5からの距離が遠い位置に接続してある。このような位置関係で各負荷を接続することにより、バックボーン幹線40−3の末端における電圧降下を小さくすることができる。
【0344】
<不正機器接続防止に関する技術>
前述の制御ボックスCBなどに様々な機器を接続可能な汎用の接続ポート、例えばUSB規格の接続ポートが必要数以上に存在する場合には、この接続ポートのうち未使用状態の空きポートに、不正な機器が接続される可能性がある。例えば、車両のユーザが知らない間に、第三者が車両に侵入して、不正な機器を空きポートに接続する可能性も考えられる。
【0345】
そこで、侵入者が不正な機器を空きポートに接続するのを防止するための機能を提供する。具体的には、侵入センサを車両に搭載しておき、制御ボックスCB内などに設けられたマイクロコンピュータの制御により、侵入検知時には、不正接続された機器が作動しないように対処する。すなわち、該当する空きポートの電源および通信ラインを自動的に遮断するようにマイクロコンピュータが制御する。
【0346】
マイクロコンピュータは、接続ポート毎に、例えば通電電流を監視することにより、当該ポートが使用中のポートか、空きポートかを識別することができる。また、車両のイグニッションスイッチがオンになる毎に、各接続ポートの接続認証を行い、当該ポートが使用中のポートか否かを識別できる。
【0347】
<電源のバックアップおよびヒューズに関する技術>
図41は、バックアップ電源回路の構成例を示す電気回路図である。
【0348】
図41に示したバックアップ電源回路41−1は、各制御ボックスCBの内部に装備され、ほとんどの種類の補機に電力を供給するために利用できる。この回路には、
図41に示すように、メイン電源ライン41−2、サブ電源ライン41−3、2個のスイッチング素子41−5、2個のダイオード41−6、電源出力部41−7、およびアースライン41−9が備わっている。また、電源出力部41−7は、所定の枝線サブハーネスを接続するために設けられた制御ボックスCBのコネクタ41−8の一部分と接続されている。
【0349】
コネクタ41−8上には、4個の端子41−8a、41−8b、41−8c、41−8dが備わっている。端子41−8a、および41−8dは、それぞれ電源出力部41−7のアース(GND)ライン、および電源ラインと接続される。また、端子41−8b、および41−8cは、2本の通信ラインと接続される。なお、端子41−8a、41−8b、41−8c、および41−8dの端子サイズは、それぞれ1.5、0.5、0.5、1.5とする。
【0350】
バックアップ電源回路41−1のメイン電源ライン41−2には、車両のメインバッテリー等からの直流電力が、バックボーン幹線を経由して供給される。また、サブ電源ライン41−3には、所定のサブバッテリー等からの直流電力が、バックボーン幹線等を経由して供給される。なお、バックボーン幹線のサブ電源ライン及びメイン電源ラインの少なくともいずれか一方には、車両駆動等に用いられる高圧バッテリパックの電力をDC/DCで降圧し、サブ電源として供給してもよい。
【0351】
2個のスイッチング素子41−5をオンオフ制御するための制御信号41−4は、制御ボックスCB内に設けられた図示しないマイクロコンピュータから供給される。このマイクロコンピュータが制御信号41−4を適切に制御することで、次の(1)、(2)、および(3)に示すような機能を実現できる。
【0352】
(1)電子ヒューズ機能:
負荷電流の大きさを監視して、所定以上の過大電流の通電を検知した場合には、自動的に通電経路を遮断する。また、正常な状態に戻ったことを検知した場合には、通電経路を再接続する。
【0353】
(2)メイン/サブ電源の自動切替機能:
例えば、通常はメイン電源ライン41−2側の電力のみを負荷側に供給し、メイン電源ライン41−2の故障などを検知した場合には、サブ電源ライン41−3側から負荷に電力を供給するように自動的に切り替える。つまり、サブ電源ライン41−3をバックアップ用の電源供給経路として利用する。また、比較的消費電力の大きな負荷を接続する場合には、メイン電源ライン41−2およびサブ電源ライン41−3の両方から同じ負荷に対して同時に電力を供給する。これにより電源側の電力容量の不足を補うことができる。
【0354】
(3)電源種類(+B,+BA,IG等)の切替機能:
このバックアップ電源回路41−1が電源出力部41−7に供給する電力の種類をマイクロコンピュータが自動的に切り替える。電力の種類としては、「+B」、「ACC」、「IG」、「+BA」、「IGP」、「IGR」などがある。
【0355】
「+B」は、常時バッテリーから電力が供給される系統の電力を表す。「ACC」は、車両のアクセサリー(ACC)スイッチのオンオフに連動して電力が供給される系統の電力を表す。「IG」は、車両のイグニッション(IG)スイッチのオンオフに連動して電力が供給される系統の電力を表す。「+BA」は、ユーザが近づいた時にオンになり電力が供給される系統の電力を表す。「IGP」は、イグニッションがオンになり、エンジンがフルの状態で電力が供給される系統の電力を表す。「IGR」は、緊急時に必要とされる電力を供給する系統を表し、実際にはタイヤが回っているときに電力が供給される。
【0356】
マイクロコンピュータが実行する処理により、2個のスイッチング素子41−5の各々を状況に応じて適切にオンオフ制御することで、上記のような様々な種類の電力を負荷側に供給することができる。
【0357】
<パワー負荷用電源回路に関する技術>
図42は、パワー負荷用電源回路の構成例を示す電気回路図である。
【0358】
図42に示すパワー負荷用電源回路42−1は、各制御ボックスCBの内部に装備され、例えば特別に大きな電源電力を必要とする負荷に電力を供給するために利用できる。この回路には、
図42に示すように、メイン電源ライン42−2、スイッチング素子42−5、電源出力部42−6、およびアースライン42−3が備わっている。また、電源出力部42−6は、所定の枝線サブハーネスを接続するために設けられた制御ボックスCBのコネクタ42−7と接続されている。
【0359】
コネクタ42−7上には、2個の端子42−7a、42−7bが備わっている。端子42−7a、および42−7bは、それぞれ電源出力部42−6のアース(GND)ライン、および電源ラインと接続される。なお、端子42−7a、および42−7bの端子サイズは、いずれも4.8とする。例えば、車両のブロアモータが所定のパワーケーブルを介して、コネクタ42−7に接続される。
【0360】
パワー負荷用電源回路42−1のメイン電源ライン42−2には、車両のメインバッテリー等からの直流電力が、バックボーン幹線を経由して供給される。アースライン42−3は、バックボーン幹線のアースライン、あるいは車両のボデーアースと接続される。
【0361】
スイッチング素子42−5をオンオフ制御するための制御信号42−4は、制御ボックスCB内に設けられた図示しないマイクロコンピュータから供給される。このマイクロコンピュータが制御信号42−4を適切に制御することで、上記の「電子ヒューズ」の機能を実現することができる。また、負荷に電力を供給するタイミングを適切に制御することができる。例えば、メインバッテリーの電力残容量を反映して制御タイミングを決定したり、節電のためのタイミング制御を行うことができる。
【0362】
<複数の通信プロトコルに対応するための技術>
図44は、複数の通信プロトコルを切り替え可能な制御ボックスの構成例を示すブロック図である。
【0363】
車両上の通信システムにおいては、例えばCAN(Controller Area Network )や、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)の標準規格に適合した複数種類の通信インタフェースが利用される可能性がある。そして、通信相手の通信インタフェースが採用している規格が違うと、通信仕様や通信プロトコルが異なるため、相互に通信することができない。したがって、同じ規格の通信インタフェース同士を接続するように、通信システムを構成する必要がある。
【0364】
そのため、通信インタフェースだけでなく、コネクタや接続ケーブルについても、通信規格毎に異なる部品を用意しなければならず、部品の品番数が増加したり、製造コストの上昇に繋がる。
【0365】
そこで、
図44に示した制御ボックス44−1、44−2は、CANおよびCXPIの両方の規格のプロトコルに対応し、部品の共通化、およびプロトコルの自動切り替えを可能にしている。
【0366】
図44に示した制御ボックス44−1は、マイクロコンピュータによって制御される4つのPHY回路、2つのネットワークスイッチ(Switch)、ゲートウェイ(GW)の機能を内蔵している。このゲートウェイは、CAN−FD規格、およびCXPI規格の両方の通信プロトコルに対応している。
【0367】
また、制御ボックス44−1の内部には、CAN−FD規格の通信インタフェースと、CXPI規格の通信インタフェースとが内蔵され、制御ボックス44−1の接続部44−1aには4個の独立したコネクタが備わっている。また、もう一方の制御ボックス44−1は、無線PHY回路を更に備えている。
【0368】
接続部44−1aの各コネクタは、切替回路44−4を内蔵している。この切替回路44−4のCAN接続部44−4aは、CAN−FD規格の通信インタフェースと接続され、CAN−FD規格の「+側」および「−側」の1組の通信信号を扱うことができる。また、切替回路44−4のCXPI接続部44−4bは、CXPI規格の通信インタフェースと接続され、CXPI規格の1つの通信信号を扱うことができる。切替回路44−4のCAN接続部44−4a、およびCXPI接続部44−4bの信号経路は、内部の制御可能なスイッチを経由して共通接続部44−4cの2つの端子と接続されている。このスイッチは、内部のゲートウェイ(GW)により制御される。
【0369】
また、共通接続部44−4cの2つの端子と、電源ライン、アースラインとの4つの端子を含む共通のコネクタが、各制御ボックス44−1、44−2に備わっている。
【0370】
図44中に示したモジュラーケーブル44−5は、CAN規格の信号に対応するために、「GND」、「CANFD−」、「CAN FD+」、および「電源」の4つの端子および4本の電線を備えている。また、モジュラーケーブル44−6は、CXPI規格の信号に対応するために、「GND」、「CXPI」、「GND」、および「電源」の4つの端子および4本の電線を備えている。つまり、2つのモジュラーケーブル44−5、44−6は同じ数の端子および電線を有しているので、共通の部品として使用できる。
【0371】
構成が共通のモジュラーケーブル44−5、または44−6を制御ボックス44−1の共通のコネクタと接続することにより、CAN−FD規格およびCXPI規格のいずれの通信にも対応できる。
【0372】
実際には、制御ボックス44−1内のマイクロコンピュータの制御により、初期状態ではCAN−FD規格の通信を選択し、CXPI規格の通信機器が相手側に接続された場合には自動的にCXPI規格の通信に切り替える。具体的には、モジュラーケーブル44−5、又は44−6を経由して相手側の通信機器が接続されたときに、マイクロコンピュータが信号のスキャニングを行い、相手が何を要求しているのかを把握する。そして、CAN規格のプロトコルにより通信を確立できない場合には、CXPI規格のプロトコルに切り替えて通信の確立を試みる。この時、マイクロコンピュータが切替回路44−4のスイッチを切り替えることにより、切替回路44−4内で信号経路を切り替えて、コネクタの各端子に流す信号の形式を、CAN形式(2本の信号線)から、CXPI形式(1本の信号線)に変更できる。
【0373】
<制御ボックスおよびECUの配置に関する技術>
図43は、車載システムの構成例を示すブロック図である。
【0374】
図43に示した車載システムにおいては、2つの制御ボックス43−1、43−2の間がバックボーン幹線43−4を介して接続されている。また、ECUボックス43−3がバックボーン幹線43−5を経由して制御ボックス43−1と接続されている。
【0375】
ECUボックス43−3の内部には、エアコン制御用のECU(電子制御ユニット)と、その他の複数のECUが内蔵されている。制御ボックス43−1は例えば車両のインパネ部に配置される。
【0376】
制御ボックス43−2の配下には、枝線である2つのモジュラーケーブル43−8を介して、ECU43−6およびコネクタ43−7が接続されている。また、他の枝線を経由して、PTCヒータ43−9も制御ボックス43−2の配下に接続されている。ECU43−6の出力には、複数の負荷43−10が接続されている。また、コネクタ43−7は電子回路を内蔵し、制御ボックス43−2との間で通信する機能や負荷の通電を制御する機能を内蔵している。
【0377】
図43に示した車載システムにおいては、制御ボックス43−2の配下に負荷43−10としてエアコンが接続された場合に、制御ボックス43−2内のマイクロコンピュータが、ECUボックス43−3内のエアコン制御用のECUの代わりに、エアコンの制御を実施することもできる。その場合には、ECUボックス43−3内のエアコン制御用のECUを削減することができる。
【0378】
一方、
図35に示した車載システムにおいては、制御ボックス35−2Aに、イーサネット(登録商標)規格の通信線35−6を経由して、ECUボックス35−3が接続されている。ECUボックス35−3の内部には、例えば10個程度の互いに独立したECUを内蔵することができる。したがって、多数のECUを一箇所に集中的に配置することができる。ECUボックス35−3内の各ECUの配下には、様々な負荷を接続することができる。
【0379】
また、ECUボックス35−3の内部にはCAN FD規格の通信インタフェース、ゲートウェイ(GW)、およびPHY回路が備わっている。したがって、ECUボックス35−3内の各ECUは、制御ボックス35−2A〜35−2Eを経由して、車両上の様々な機器との間で通信することができる。なお、ECUボックス35−3に内蔵される各ECUは着脱自在であり、必要に応じて交換することができる。また、各ECUの装着位置を変更することもできる。
【0380】
<通信系統の2重化に関する技術>
図46(a)および
図46(b)は、車載システムの構成例を示すブロック図である。
故障が生じた場合や、車両の衝突に伴って通信線が断線したような場合には、機器間で通信できない状態になる。しかし、例えば車両に自動運転などの技術を搭載する場合には、通信システムにより高い信頼性が要求されるので、通信経路が途絶えないように配慮する必要がある。
【0381】
そこで、
図46(a)および
図46(b)に示した車載システムにおいては、信頼性を高めるために、少なくとも重要度の高い箇所については、電源供給経路および通信経路を2重化するように構成してある。
【0382】
図46(a)に示した構成においては、制御ボックス46−1と、制御ボックス46−2との間がバックボーン幹線46−4を介して互いに接続され、制御ボックス46−1と、制御ボックス46−3との間がバックボーン幹線46−5を介して互いに接続されている。また、
図46には示されていないが、バックボーン幹線46−4、および46−5の各々は、電源ライン、アースライン、および通信ラインを含み、電源ライン、および通信ラインはそれぞれ独立した2系統の線路を備えている。
【0383】
また、制御ボックス46−2の配下には、枝線であるモジュールケーブル46−7を経由して、制御ユニット46−6が接続されている。また、制御ボックス46−3の配下には、枝線であるモジュールケーブル46−8を経由して、制御ユニット46−6が接続されている。制御ユニット46−6の配下には、枝線サブハーネス46−10を介して複数の負荷46−9が接続されている。
【0384】
また、モジュールケーブル46−7および46−8の各々は、2系統の電源ラインと、アースラインと、2系統の通信ラインとを備えている。なお、アースラインを2系統にすることもできる。
【0385】
したがって、例えば制御ボックス46−1から、バックボーン幹線46−4、制御ボックス46−2、およびモジュールケーブル46−7を経由して制御ユニット46−6に指示を与える場合の通信経路および電力供給経路は全て2重化されている。また、制御ボックス46−1から、バックボーン幹線46−5、制御ボックス46−3、およびモジュールケーブル46−8を経由して制御ユニット46−6に指示を与える場合の通信経路および電力供給経路も全て2重化されている。
【0386】
そのため、例えばバックボーン幹線46−4、46−5、モジュールケーブル46−7、46−8のいずれかにおいて、1系統の通信ラインが断線した場合であっても、断線していないもう一方の系統の通信ラインを用いて通信経路を確保できる。
【0387】
また、例えばバックボーン幹線46−4、またはモジュールケーブル46−7において、2系統の通信ラインが同時に断線したような場合であっても、制御ボックス46−1から、バックボーン幹線46−5、制御ボックス46−3、およびモジュールケーブル46−8を経由する通信経路に切り替えることにより、制御ユニット46−6の制御に必要な通信経路を確保できる。
【0388】
一方、
図46(b)に示した車載システムにおいては、中央の制御ボックス46−12と、複数の制御ボックス46−11、46−13、46−14、46−15等が、それぞれ独立したバックボーン幹線46−17、46−16、46−18等を介して相互に接続されている。また、各制御ボックスの配下には、枝線を経由して制御ユニット又は負荷が接続されている。
【0389】
また、例えば制御ユニット46−21Aは、枝線46−22を経由して中央の制御ボックス46−12と接続されており、更に、制御ユニット46−21Aは、枝線46−23を経由して制御ボックス46−14と接続されている。
【0390】
したがって、制御ボックス46−12が制御ユニット46−21Aに対して指示を与える場合には、枝線46−22を経由して通信する経路と、バックボーン幹線46−18、制御ボックス46−14、および枝線46−23を経由して通信する経路とのどちらでも使うことができる。つまり、複数の経路の一方で断線が生じた場合であっても、残りの正常な通信線を用いて必要な通信経路を確保できる。
【0391】
<モジュール化した機器の接続形態に関する技術>
図47は、運転席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
【0392】
図47に示した回路モジュール47−4は、運転席ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス47−1と、枝線サブハーネス47−2および47−3を介して接続されている。枝線サブハーネス47−2および47−3は、車体と運転席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。
【0393】
枝線サブハーネス47−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続され、枝線サブハーネス47−3の通信線は、イーサネット(登録商標)の通信インタフェースに接続されている。
【0394】
回路モジュール47−4上には、モジュラー接続コネクタ47−8の他に、標準インタフェースを備える補機として、複数の電子制御ユニット(ECU)47−10、47−11、サイドテレビジョン47−9等が備わっている。また、アンテナ47−5、スピーカ47−6、センサ47−7、汎用通信コネクタ47−12等も備わっている。
【0395】
モジュラー接続コネクタ47−8は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。なお、モジュラー接続コネクタ47−8内の各標準通信インタフェースは、単に受け取った信号をそのまま通過させて出力側に送り出す機能を有している。
【0396】
電子制御ユニット47−10、47−11、および汎用通信コネクタ47−12は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ47−8の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ47−12は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ47−8の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ47−17や、ドア内の各種イルミネーション機器47−18が接続されている。
【0397】
電子制御ユニット47−10は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/WMTR)が接続されている。
また、電子制御ユニット47−11は、ドアに設置されたアウターミラーを制御する機能を有するマイクロコンピュータを内蔵している。電子制御ユニット47−11の出力にミラーの構成要素47−14、および47−15が接続されている。汎用通信コネクタ47−12の出力には、ミラーヒータ47−16、メモリスイッチ等47−19が接続されている。
【0398】
図48は助手席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
図48に示した回路モジュール48−4は、助手席ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス48−1と、枝線サブハーネス48−2および48−3を介して接続されている。枝線サブハーネス48−2および48−3は、車体と助手席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。
【0399】
枝線サブハーネス48−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続され、枝線サブハーネス48−3の通信線は、イーサネット(登録商標)の通信インタフェースに接続されている。
【0400】
回路モジュール48−4上には、モジュラー接続コネクタ48−8の他に、標準インタフェースを備える補機として、複数の電子制御ユニット(ECU)48−10、48−11、サイドテレビジョン48−9等が備わっている。また、アンテナ48−5、スピーカ48−6、センサ48−7、汎用通信コネクタ48−12等も備わっている。
【0401】
モジュラー接続コネクタ48−8は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。電子制御ユニット48−10、48−11、および汎用通信コネクタ48−12は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ48−8の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ48−12は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ48−8の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ48−17や、ドア内の各種イルミネーション機器48−18が接続されている。
【0402】
電子制御ユニット48−10は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/WMTR)が接続されている。
また、電子制御ユニット48−11は、ドアに設置されたアウターミラーを制御する機能を有するマイクロコンピュータを内蔵している。電子制御ユニット48−11の出力にミラーの構成要素48−14、および48−15が接続されている。汎用通信コネクタ48−12の出力には、ミラーヒータ48−16、およびランプ48−19が接続されている。
【0403】
図49は、リア席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。なお、リア席ドアパネルについては左右で同一の構成である。
【0404】
図49に示した回路モジュール49−3は、リア席(左右の各々)ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス49−1と、枝線サブハーネス49−2を介して接続されている。枝線サブハーネス49−2は、車体とリア席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。枝線サブハーネス49−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続されている。
【0405】
回路モジュール49−4上には、モジュラー接続コネクタ49−4の他に、標準インタフェースを備える補機として、電子制御ユニット(ECU)49−5等が備わっている。モジュラー接続コネクタ49−4は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。電子制御ユニット49−5は、モジュラー接続コネクタ49−4の標準通信インタフェースと接続されている。
【0406】
また、モジュラー接続コネクタ49−4の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ49−7や、ドア内の各種イルミネーション機器49−8、49−9、49−10が接続されている。
【0407】
電子制御ユニット49−5は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/WMTR)49−6が接続されている。
【0408】
図50は、車両のルーフに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
図50に示した回路モジュール50−3は、車体のルーフ部に配置されており、車室内側に設置されている制御ボックス50−1と、枝線サブハーネス50−2を介して接続されている。枝線サブハーネス50−2は、車体とルーフを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。枝線サブハーネス50−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続されている。
【0409】
回路モジュール50−3上には、モジュラー接続コネクタ50−4の他に、標準インタフェースを備える補機として、電子制御ユニット(ECU)50−6、レインセンサ50−14等が備わっている。また、マイク50−5、汎用通信コネクタ50−7等も備わっている。
【0410】
モジュラー接続コネクタ50−4は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。なお、モジュラー接続コネクタ50−4内の各標準通信インタフェースは、単に受け取った信号をそのまま通過させて出力側に送り出す機能を有している。
【0411】
電子制御ユニット50−6、レインセンサ50−14、および汎用通信コネクタ50−7は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ50−4の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ50−7は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ50−4の標準駆動回路の出力に、各種のランプ負荷50−12、50−13が接続されている。
【0412】
電子制御ユニット50−6は、スライディングルーフの開閉等の駆動制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、スライディングルーフスイッチ50−8、および駆動用の電気モータ50−9が接続されている。汎用通信コネクタ50−7の出力には、メーデースイッチ50−10、およびインナーリアビューミラー50−11が接続されている。
【0413】
図51は、スマート接続コネクタの構成例を示すブロック図である。
図51に示したスマート接続コネクタ51−3は、車両上の様々な箇所で汎用的に使えるジョイント機能を提供する要素であり、枝線サブハーネス51−2、および標準インタフェース51−1を介して、所望の制御ボックスと接続することができる。
【0414】
また、スマート接続コネクタ51−3の出力側コネクタ51−7に、例えば
図51に示すように、ドアロックモータスイッチ51−8、各種イルミネーション機器51−9、51−10、51−11、ドアロックモータ51−12等を接続することができる。
【0415】
また、スマート接続コネクタ51−3の内部には、制御回路51−4が設けてある。制御回路51−4は、標準通信インタフェース51−4a、電源回路51−4b、マイクロコンピュータ(CPU)51−4c、信号処理回路(STRB)51−4d、入力回路51−4e、IPD (Intelligent Power Device)51−4f、およびモータドライバ51−4gを備えている。
【0416】
スマート接続コネクタ51−3の出力側コネクタ51−7には、各種の電源電力を出力する端子と、通信用の端子と、入力回路51−4eに入力する信号のための端子と、IPD51−4fで駆動する負荷を接続するための端子と、電気モータを接続するための端子とが備わっている。
【0417】
出力側コネクタ51−7に出力する電源電力については、マイクロコンピュータ51−4cの処理によって電子ヒューズを作動させたり、電力の種類(+B、+BA、IG等)を切り替えることができる。この制御を行うために、出力側コネクタ51−7の各端子と、入力側電源ラインとの間にスイッチング素子が接続されている。このスイッチング素子のオンオフをマイクロコンピュータ51−4cが制御する。
【0418】
<新たなユニットを追加して機能を追加するための技術>
本実施形態では、車載システムの共通インタフェースに対して、新規のユニットを接続し、機能追加を行う場合のシステム側の制御を想定している。例えば、
図2に示したシステムにおいて、各制御ボックスCBの接続部Cnxのコネクタに、枝線サブハーネスLSを介して新規の補機AEを接続する場合が想定される。但し、新たに接続する新規のユニットが必ずしも正規のユニットであるとは限らないので、システム全体のセキュリティを確保するために特別な制御を実施する必要がある。
【0419】
図示しないが、この場合に実行する手順の具体例は次の通りである。
ステップS50:車両のディーラー等において、作業者等が該当する新規のユニット(補機)を枝線サブハーネスLSを介して制御ボックスCBの接続部Cnxに接続する。
【0420】
ステップS51:車両のディーラー等において、車両メーカ等が提供する車両専用の診断ツール(例えば「タスキャン」)を作業者等が車両上のシステムに接続し、接続したユニットを診断のためにスキャンするための命令を実行する。
【0421】
ステップS52:前記診断ツールからの命令に従い、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータがスキャン処理を開始する。そして、まず最初に接続部Cnxに繋がる1つめの標準インタフェースに電源を投入し、この標準インタフェースを利用する通信について、CAN通信の通信可否をマイクロコンピュータが自動的に識別する。
【0422】
ステップS53:ステップS52でCAN通信が成立しない場合には、マイクロコンピュータが通信仕様をCANからCXPIに切り替えて、CXPI通信で通信可否を識別する。
【0423】
ステップS54:ステップS52,S53において、CAN通信、CXPI通信のいずれも成立しない場合には、マイクロコンピュータが、該当する標準インタフェースの電源を遮断する。
【0424】
ステップS55:ステップS52,S53において、CANまたはCXPIの通信が成立した場合には、前記診断ツールと、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータと、接続先の補機(新規のユニット等)との間で通信を行い、前記診断ツールが所定の処理を実行することにより、該当する補機についての認証処理を行う。認証処理の内容については、事前に規格化しておく。
【0425】
ステップS56:ステップS55で認証に成功した場合には、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータが、該当する標準インタフェースの補機について、電源電力の供給条件をマイクロコンピュータ自身の記憶装置内に登録する。例えば、認証により判明した補機の種類、あるいはID情報に基づき、供給すべき電力の種類が、「+B,+BA,IG,IGP」等のいずれに該当するのかを自動的に識別し、その識別結果を登録する。
【0426】
ステップS57:2つめ以降の各標準インタフェースについても、上記のステップS52〜S56の処理を順次に繰り返す。
【0427】
ステップS58:全ての標準インタフェースについて上記のスキャン処理が終了した後で、前記診断ツールまたは制御ボックスCB内のマイクロコンピュータは、新規に追加されたユニットについて、該当する機能を追加することについて、ユーザ(又は作業者)が確認できるようにメッセージ等を表示する。この表示は、例えば車両上のメータユニットの表示部などを用いて表示する。
【0428】
ステップS59:ステップS58でユーザが確認した機能について、該当する機能を実際に使用できる環境に移行するための情報を、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータがそれ自身の記憶装置上に記憶する。
【0429】
したがって、例えば車両メーカ等が許可していない不正な機器をユーザや第三者が車載システムに接続しようとしても、不正な機器は正規の車載システムとの間で通信を行うことができないし、通信用のコネクタを経由して電力供給を受けることもできないので、不正な機器は全く動作しない。
【0430】
<車載システムの通信系の接続形態に関する技術>
図52(a)、
図52(b)、および
図53は、それぞれ異なる車載システムの通信系の構成例を示すブロック図である。
【0431】
図52(a)に示した車載システムは、3系統の通信網V2−CAN、V1−CAN、MS−CANを備えており、これらの間はゲートウェイで相互に接続されている。また、通信網V2−CANは、エンコパ(エンジンルーム)系の機器に割り当てられ、通信網V1−CANは、エンジン系の機器(メータユニットを含む)に割り当てられ、通信網MS−CANはボディ系の機器(ドア、パワーシート等)に割り当てられている。
【0432】
また、通信網MS−CANはドメインとして車両全体に配置され、通信網V1−CANおよびV2−CANのそれぞれは、車体上のエリア毎に区分されている。各通信網MS−CAN、V1−CAN、V2−CANの配下に様々な補機が接続される。
【0433】
図52(b)に示した車載システムは、運転支援系、パワートレイン系、シャーシ系、ボデー系、マルチメディア系の各々に割り当てられた複数のドメインのそれぞれを担当する複数の通信網が相互に接続されている。各通信網は、CAN規格の通信インタフェースを採用している。これら複数組の通信網は、車内全体の領域で、互いに並走するように配索されている。
【0434】
図53に示した車載システムは、「エリア1」、「エリア2」、「エリア3」、「エリア4」、「エリア5」のエリア毎に、ドメイン分けされており、エリア毎にそれぞれ通信網が形成されている。また、各エリア間を接続する幹線については、高速通信を可能にするために光通信網が用いられている。
【0435】
光通信網を用いることにより、例えば1[Gbps]程度の高速通信がエリア間で可能になる。光通信網の通信容量は、各エリア内の通信網において複数系統に分配され、様々な補機の通信にそれぞれ割り当てられる。また、通信の優先度については、補機等の機器の各々に事前に割り当てられた固有のID情報に基づいて決定される。
【0436】
<制御ボックス内部の構成に関する技術>
図45は、制御ボックスの構成例を示すブロック図である。
【0437】
図45に示した車載システムは、バックボーン幹線45−7、45−8を介して互いに接続された5つの制御ボックス45−1、45−2、45−3、45−4、45−5、およびECUボックス45−6を備えている。
【0438】
図45に示すように、バックボーン幹線45−7は、2系統の電源ラインと、アースラインとを備えている。また、バックボーン幹線45−8は、2系統の通信ラインを備えている。
【0439】
制御ボックス45−1の内部には、2系統の電源部45−10、2組のネットワーク(イーサネット:登録商標)ハブ45−11、45−12、ゲートウェイ(GW)の通信制御部45−13、WiFi通信モジュール45−14、ネットワーク(イーサネット:登録商標)ハブ45−15、電力制御部45−16、スイッチング回路45−17A、45−17B、45−17C、コネクタ45−21、45−22、45−23、および45−24が備わっている。
【0440】
バックボーン幹線45−8に含まれる2系統の通信ラインのうち、一方の通信ラインがネットワークハブ45−11と接続され、もう一方の通信ラインがネットワークハブ45−12と接続されている。なお、ネットワークハブ45−11側の通信系統は、車両のパワートレイン系およびシャシー系用に割り当ててあり、ネットワークハブ45−12側の通信系統は、車両のボデー系およびマルチメディア系用に割り当ててある。
【0441】
ゲートウェイ(GW)の通信制御部45−13は、制御ボックス45−1内に設けられたマイクロコンピュータ(図示せず)の制御により実現する機能であり、次に示す各機能を含んでいる。
【0442】
(1)プロトコル等の規格が異なる複数ネットワーク間の相互接続
(2)関係パケットの受信
(3)信号の送信
(4)制御系の通信、運転支援系通信の分類
(5)高ランク情報の迂回通信
【0443】
WiFi通信モジュール45−14は、制御ボックス45−1を車上に搭載された他の機器やユーザが所持している機器との間で無線接続するために利用される。
【0444】
ネットワークハブ45−15は、通信制御部45−13の1つの通信経路を分岐して、コネクタ45−21、45−22、45−23のいずれかの通信経路と接続する機能を有している。
【0445】
電力制御部45−16は、制御ボックス45−1内に設けられたマイクロコンピュータ(図示せず)の制御により実現する機能であり、次に示すような電源電力の制御機能を備えている。
【0446】
(1)過大な電流が流れたときに経路を遮断する電子ヒューズ機能。
(2)「+B,+BA,IGP,IGR」等の電力の種類を制御する機能。
(3)電源に異常が発生した時に、2系統の電源ラインを使い分けて重要な系統の電源をバックアップする機能。
(4)S&S(stop&start)切替機能。
【0447】
スイッチング回路45−17A、45−17B、45−17Cは、2系統の電源ラインの各々をそれぞれコネクタ45−21、45−22、および45−23の電源ラインと接続するための制御可能な2個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子は、電力制御部45−16の各機能を実現するマイクロコンピュータが出力する制御信号により個別にオンオフ制御される。
【0448】
コネクタ45−21、45−22、および45−23の各々は、電源ラインの端子、アースラインの端子、および2本の通信ラインの各端子の4つを備えている。これらのコネクタ45−21、45−22、および45−23の配下には、所定の枝線サブハーネスを経由して様々な種類の補機を接続可能である。
【0449】
以上のように、本発明に係る車両用回路体は、様々な電装品と車両上の電源との間および電装品同士の電気接続のための構造、特に幹線部分の構成を簡素化し、新たな電線の追加も容易にできる。
【0450】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車両用回路体の特徴をそれぞれ以下[1]〜[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線(バックボーン幹線部21、22、23)と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックス(バックボーン制御ボックス31、32、33)と、
を備え、
前記制御ボックスは、補機と直接的又は間接的に接続される枝線(枝線サブハーネスLS)と接続可能であり、
前記幹線は、所定の電流容量を有する電源ライン(L1、L2)と、所定の通信容量を有する通信ライン(L4、L5)とを有する、
車両用回路体。
【0451】
[2] 前記幹線は、2系統の電源ライン(L1、L2)を有する、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0452】
[3] 前記枝線は、電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線が接続される枝線用接続部(スイッチ回路CBb、ブリッジ回路CBc、接続部Cnx)と、制御プログラムにしたがって前記枝線用接続部を制御することにより前記幹線から前記枝線へ電力を分配する枝線用制御部(マイクロコンピュータCBa)と、を有し、
前記制御プログラムは、前記枝線に接続される補機に応じて外部から変更可能である、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0453】
[4] 前記幹線(BB_LC)の通信ラインは、前記複数の制御ボックスをリング状に接続するように配索される、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0454】
[5] 前記枝線は、電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線の通信ラインが着脱可能な複数の枝線接続部(Cnx)を有し、
複数の前記枝線接続部には、前記枝線が接続されていない場合に物理的又は電気的にロック状態となるロック機能部(カバー部材(鍵付きカバーKc1)および鍵部(Kk)、(鍵付きカバーKc2)および鍵部(Kk)、(封印用シールKs)、又はステップS12〜S14)が設置される、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0455】
[6] 前記枝線は、電源ラインと、通信ラインとを有し、
前記車両は、複数の領域(AR1、AR2、AR3)に区画され、
少なくとも2以上の前記制御ボックスは、互いに異なる前記領域に配置され、前記枝線の通信ラインと前記幹線の通信ラインとの通信方式を変換するゲートウェイ(GW)を有し、
複数の前記ゲートウェイは、前記幹線(BB_LC)の通信ラインを介して互いに通信可能である、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0456】
[7] 前記枝線は、電源ラインおよび通信ラインのうち少なくともいずれか一方を有し、
前記幹線の通信ラインは、光信号用の伝送路(光ファイバ)を有し、
前記枝線の通信ラインは、電気信号用の伝送路(金属の通信線)を有する、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0457】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0458】
本出願は、2016年6月24日出願の日本特許出願(特願2016−125287)、2016年6月24日出願の日本特許出願(特願2016−125896)、2016年6月30日出願の日本特許出願(特願2016−131165)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。