(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856646
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】下方側シルと下方前方ピラーとを備えた自動車構造部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20210329BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20210329BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20210329BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20210329BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20210329BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20210329BHJP
B21D 53/88 20060101ALI20210329BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20210329BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20210329BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D25/04 A
C22C38/00 301Z
C22C38/38
C21D1/18 C
B21D22/20 E
B21D22/20 H
B21D22/20 Z
B21D53/88 Z
B23K26/21 N
C21D9/00 A
C22C38/58
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-530135(P2018-530135)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公表番号】特表2019-508300(P2019-508300A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2016002077
(87)【国際公開番号】WO2017097425
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2015/059484
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビオー,イバン
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102014102372(DE,A1)
【文献】
特開2011−195107(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/033177(WO,A1)
【文献】
特表2013−513514(JP,A)
【文献】
特表2016−504488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B21D 22/00−26/14
B21D 47/00−55/00
C21D 1/02−1/84
C22C 5/00−25/00
C22C 27/00−28/00
C22C 30/00−30/06
C22C 35/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部(6)と前端部(8)との間に延びる下方側シル(2)と、下方側シル(2)の前端部(8)から垂直に延びる下方前方ピラー(4)とを備える自動車構造部品を製造するための方法であって、方法が、
L形状を有する内側構造部品ブランクと、L形状を有する外側構造部品ブランクとを提供するステップであって、前記内側構造部品ブランク(38)と前記外側構造部品ブランク(38)とが平坦である、ステップと、
内側下方側シル部品(18)と、この内側下方側シル部品(18)とともに単一部品で形成された内側下方前方ピラー部品(20)とを有する内側自動車構造部品(14)を形成するように、内側構造部品ブランクを熱間スタンプするステップと、
外側下方側シル部品(28)と、この外側下方側シル部品(28)とともに単一部品で形成された外側下方前方ピラー部品(30)とを有する外側自動車構造部品(16)を形成するように、外側構造部品ブランクを熱間スタンプするステップと、
内側自動車構造部品(14)と外側自動車構造部品(16)とを組み立てて、自動車構造部品(1)を形成するステップと、
を含むことを特徴とする、自動車構造部品を製造するための方法。
【請求項2】
内側構造部品ブランクおよび外側構造部品ブランクが、前記ブランクが熱間スタンプされる前は、フェライトおよびパーライトを主体とする構造を有し、内側自動車構造部品(14)および外側自動車構造部品(16)が、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内側自動車構造部品(14)と外側自動車構造部品(16)との各々が、1200MPaより大の引張強度を有するプレス硬化鋼部品で形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プレス硬化鋼の組成には、重量%で、
0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
外側構造部品ブランクが、キャビティを形成するU状の断面を得るように熱間スタンプされ、内側自動車構造部品(14)が、前記キャビティを閉じるように配置されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
内側自動車構造部品(14)と外側自動車構造部品(16)とがともにレーザー溶接されて、自動車構造部品(1)を形成する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
外側構造部品ブランクの材料は、内側構造部品ブランクの材料の引張強度よりも大である引張強度を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
内側構造部品ブランクの厚さは、外側構造部品ブランクの厚さよりも小さい、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法によって得られる自動車構造部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後端部と前端部との間に延びる下方側シルと、下方側シルの前端部からほぼ垂直に延びる下方前方ピラーとを備えるタイプの自動車構造タイプを製造するための方法に関する。
【0002】
本発明は、そのような方法によって得られる自動車構造部品にも関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の自動車構造部品は、自動車車両のフロントドアリングの下部を形成することが意図されている。そのような構造部品は、車両の乗員を保護するために、乗員室内へのいずれの侵入をも防止するように、車両に対する衝撃、たとえば、前方または側方の衝撃が生じた場合に、塑性変形に対する高い耐性を有していなければならない。したがって、前方ピラーおよび下方側シルは、衝撃が生じた場合実質的に変形しないように、高い引張強さおよび降伏強さを有する材料で形成されている。
【0004】
しかし、下方側シルと下方前方ピラーとが交差エリアにおいてともに溶接されることから、下方側シルと下方前方ピラーとの間の交差エリアに弱いポイントが残っている。したがって、衝撃が生じた場合、交差エリアが変形し得るか、下方前方ピラーと下方側シルとの間の交差部が破損さえする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、下方側シルと下方前方ピラーとの間の交差部を向上させる自動車構造部品を製造するための方法を提案することにより、この欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、上述のタイプの自動車構造部品を製造する方法に関し、本方法が、
L形状を有する内側構造部品ブランクと、L形状を有する外側構造部品ブランクとを提供するステップであって、前記内側構造部品ブランクと前記外側構造部品ブランクとがほぼ平坦である、ステップと、
内側下方側シル部品と、この内側下方側シル部品とともに単一部品で形成された内側下方前方ピラー部品とを有する内側自動車構造部品を形成するように、内側構造部品ブランクを熱間スタンプするステップと、
外側下方側シル部品と、この外側下方側シル部品とともに単一部品で形成された外側下方前方ピラー部品とを有する外側自動車構造部品を形成するように、外側構造部品ブランクを熱間スタンプするステップと、
内側自動車構造部品と外側自動車構造部品とを組み立てて、自動車構造部品を形成するステップと、
を含んでいる。
【0007】
L形状のブランクを使用することにより、内側下方前方ピラー部品を伴う単一のピースの内側下方側シル部品と、外側前方ピラー部品を伴う単一ピースの外側下方側シル部品とを形成することが可能になる。したがって、下方前方ピラーと下方側シルとの間の組立て平面が、内側構造部品と外側構造部品との間の自動車構造部品全体にわたって延びていることから、下方前方ピラーと下方側シルとの間の結合部はより強固である。したがって、自動車構造部品は、塑性変形に対してより高い耐性があり、衝撃が生じた場合におけるその挙動が向上している。
【0008】
本発明の他の有利な態様によれば、本方法は、単一または任意の技術的に可能な組合せで考慮される、以下の特徴の1つまたは複数を含んでいる。
【0009】
内側構造部品ブランクおよび外側構造部品ブランクが、前記ブランクが熱間スタンプされる前は、フェライトおよびパーライトを主体とする構造を有し、内側自動車構造部品および外側自動車構造部品が、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有する。
【0010】
内側自動車構造部品と外側自動車構造部品との各々が、1200MPaより大の引張強度を有するプレス硬化鋼部品で形成される。
【0011】
プレス硬化鋼の組成には、重量%で、
0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物であるか、
0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%が含まれ、残りが、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。
【0012】
外側構造部品ブランクが、キャビティを形成するU状の断面を得るように熱間スタンプされ、内側自動車構造部品が、前記キャビティを閉じるように配置されている。
【0013】
内側自動車構造部品と外側自動車構造部品とがともにレーザー溶接されて、自動車構造部品を形成する。
【0014】
本発明は、後端部と前端部との間に延びる下方側シルと、下方側シルの前端部からほぼ垂直に延びる下方前方ピラーとを備えるタイプの自動車構造部品であって、自動車構造部品が、組立て平面に沿ってともに組み立てられた単一の内側構造部品と単一の外側自動車構造部品とのアセンブリによって形成されている、自動車構造部品にも関する。
【0015】
本発明の他の有利な態様によれば、自動車構造部品は、単一または任意の技術的に可能な組合せで考慮される、以下の特徴の1つまたは複数を含んでいる。
【0016】
内側自動車構造部品が、内側下方側シル部品と、この内側下方側シル部品とともに単一部品で形成された内側下方前方ピラー部品とを備え、外側自動車構造部品が、外側下方側シル部品と、この外側下方側シル部品とともに単一部品で形成された外側下方前方ピラー部品とを備えている。
【0017】
組立て平面に対してほぼ垂直な平面における外側自動車構造部品の断面が、キャビティを形成し、前記キャビティが、前記平面において内側自動車構造部品の断面によって閉じられている。
【0018】
自動車構造部品が、中空の筒状要素であり、下方側シルが長手軸に沿って延び、下方前方ピラーが、長手軸に対してほぼ垂直な高さ軸に沿って延びている。
【0019】
自動車構造部品が、上述の方法によって得られる。
【0020】
本発明の他の態様および利点は、例として与えられ、添付図面を参照して成される、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る自動車構造部品の斜視図である。
【
図2】本発明に係る方法で使用されるL形状のブランクの正面図である。
【
図3】
図2のL形状のブランクの熱間スタンプによって得られる、内側自動車構造部品および外側構造部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、「長手(longitudinal)」との用語は、通常の使用条件における自動車の後方−前方の方向に言及し、「横断(transversal)」との用語は、通常の使用条件における自動車の左−右の方向に言及する。「後方(rear)」および「前方(front)」との用語は、通常の使用条件における自動車の長手方向に関して規定され、「上方(upper)」および「下方(lower)」との用語は、通常の使用条件における自動車の高さ方向に関して規定される。「inner(内側)」および「outer(外側)」との用語は、自動車車両の内部および外部に関して規定されている。内側は、車両の内部に向けられるものを規定し、外側は、車両の外部に向けられるものを規定する。
【0023】
本発明は、下方側シル2および下方前方ピラー4を備えた自動車構造部品1を製造するための方法に関する。
【0024】
そのような自動車構造部品1は、上方自動車構造部品で、車両のドアを支持するように配置された1つまたは複数のドアリングなどの車両の側部構造を形成し、衝撃、たとえば、前方または側方の衝撃が生じた場合、乗員室内のいずれの種類の侵入をも防止することにより、乗員室を保護することが意図されている。
【0025】
下方側シル2は、後端部6と前端部8との間に長手軸Aに沿って長手方向に延びている。下方側シル2は、たとえば、長手方向に乗員の長さ全体に沿って延びている。そのような下方側シル2は、自動車車両のフロアパネルの側部に隣接して延び、ドアリングのもっとも下の部分を形成することが意図されている。
【0026】
下方前方ピラー4は、高さ方向に高さ軸Bに沿って、長手軸Aに対してほぼ垂直に延びる。下方前方ピラー4は、下端部10と上端部12との間で、車両の前方において延びている。下端部10は、下方側シル2の前端部6に隣接しており、下方前方ピラー4が下方側シル2の前端部6から延びていることを意味している。下方前方ピラー4は、左側自動車構造部品の下方前方ピラー4と右側自動車構造部品の下方前方ピラーとの間に横断方向に延びる、車両の内側の横断方向の交差部材を支持することが意図され、また、車両のステアリングコラムおよび他の機能要素を支持するように配置されている。下方前方ピラー4は、「ショットガンレール」とも呼ばれ、車両のフェンダーを支持するように、乗員室の前方に延びる上方フェンダーレールを支持することも意図されている。
【0027】
自動車構造部品1は、下方側シル2に沿う長手軸A、および、下方前方ピラー4に沿う高さ軸Bに沿って延びる中空の筒状部材である。筒状部材により、自動車構造部品1が閉じた断面、たとえば、下方側シルに沿う長手軸Aに垂直、かつ、下方前方ピラーに沿う高さ軸Bに垂直な平面で、多角形の断面を有することが意味されている。
【0028】
自動車構造部品1は、長手軸Aおよび高さ軸Bを含む組立て平面においてともに組み立てられる、内側自動車構造部品14と外側構造部品16(
図3)とで形成されている。
【0029】
内側自動車構造部品14は、内側下方側シル部品18と、内側下方前方ピラー部品20とを備えている。内側下方側シル部品18と内側下方前方ピラー部品20とは一体になっており、内側下方前方ピラー部品20が内側下方側シル部品18とともに単一の部品に形成されていることを意味している。単一の部品により、次に説明するように、内側下方下方側シル部品18と内側下方前方ピラー部品20とが、同じブランクから形成されることと、内側下方側シル部品18と内側下方前方ピラー部品20との間の、溶接ステップなどの取付けステップがないこととが意味されている。内側自動車構造部品14はほぼ平坦であり、内側下方側シル部品18および内側下方前方部品20の両側における組立て平面に延びる溶接タブ22を備えている。図示の実施形態では、内側自動車構造部品14は、わずかに凹状であり、組立て平面から垂直に延び、溶接タブ22を保持するサイドウイング24を備えている。サイドウイング24は、内側フランク26から垂直に延び、組立て平面に対して平行な平面に延びるとともに、内側自動車構造部品14のメインの表面を形成する。内側自動車構造部品14が平坦な場合では、内側フランク26は、組立て平面において実質的に延び、溶接タブ22を直接保持している。
【0030】
外側自動車構造部品16は、外側下方側シル部品28と、外側下方前方ピラー部品30とを備えている。外側下方側シル部品28と外側下方前方ピラー部品30とは一体になっており、外側下方前方ピラー部品30が外側下方側シル部品28とともに単一の部品に形成されていることを意味している。単一の部品により、次に説明するように、外側下方下方側シル部品28と外側下方前方ピラー部品30とが、同じブランクから形成されることと、外側下方側シル部品28と外側下方前方ピラー部品30との間の、溶接ステップなどの取付けステップがないこととが意味されている。外側自動車構造部品16は、図示の実施形態によれば、ほぼU状の断面を有し、組立て平面に対して平行な平面に延びる外側フランク32と、外側フランク32から組立て平面に、前記外側フランク32の両側に延びるサイドウイング34とを備えている。サイドウイング34は、組立て平面に延びる溶接タブ36を保持している。サイドウイング34は、組立て平面に対して垂直な平面で延びる平坦形状、または、
図1および
図3に示すように、異なる平面に延びる枝部を有する、より複雑な形状などの、様々な形状である場合がある。外側自動車構造部品16はこうして、組立て平面に向かって開き、外側フランク32およびサイドウイング34によって制限されたキャビティを規定する。
【0031】
内側自動車構造部品14は、
図1に示すように、内側自動車構造部品14が外側構造部品16に取り付けられている場合、外側構造部品16によって規定されたキャビティを閉じるように配置されている。したがって、自動車構造部品1の閉じた断面は、内側自動車構造部品14の断面、および、外側自動車構造部品16の断面によって規定されている。
【0032】
上述の自動車構造部品1を製造するための方法がここで説明される。
【0033】
内側構造部品ブランクおよび外側構造部品ブランクが最初に提供される。内側構造部品ブランクと外側構造部品ブランクとが同じ形状を有することから、寸法に関する考慮事項とは別である。したがって、
図2に示す1つのブランク38のみを説明する。
【0034】
このブランクは、鋼シートから形成され、たとえば、鋼シートからある形状にレーザーでカットされる。鋼は、前記ブランクが熱間スタンプされる前は、たとえば、フェライトおよびパーライトを主体とする構造を有している。この構造は、内側構造部品14および外側構造部品16が、熱間スタンプの後に95%以上がマルテンサイトからなる構造を有するように構成されている。したがって、内側構造部品14および外側構造部品16は、プレス硬化鋼部品で形成される。プレス硬化鋼は、好ましくは、1200MPaより大の引張強度を有している。
【0035】
そのような鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.15%≦C≦0.5%、0.5%≦Mn≦3%、0.1%≦Si≦1%、0.005%≦Cr≦1%、Ti≦0.2%、Al≦0.1%、S≦0.05%、P≦0.1%、B≦0.010%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.20%≦C≦0.25%、1.1%≦Mn≦1.4%、0.15%≦Si≦0.35%、≦Cr≦0.30%、0.020%≦Ti≦0.060%、0.020%≦Al≦0.060%、S≦0.005%、P≦0.025%、0.002%≦B≦0.004%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。この組成のレンジにより、プレス硬化部品の引張強度は、1300MPaから1650MPaの間に含まれている。
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、鋼の組成には、たとえば、重量%で、0.24%≦C≦0.38%、0.40%≦Mn≦3%、0.10%≦Si≦0.70%、0.015%≦Al≦0.070%、Cr≦2%、0.25%≦Ni≦2%、0.015%≦Ti≦0.10%、Nb≦0.060%、0.0005%≦B≦0.0040%、0.003%≦N≦0.010%、S≦0.005%、P≦0.025%、%が含まれ、残りは、鉄と、加工の結果のやむを得ない不純物である。この組成のレンジにより、プレス硬化部品の引張強度は、1800MPaより高くなっている。
【0038】
内側構造部品ブランクと外側構造部品ブランクとが、同じ材料で形成されるものとして説明されているが、本発明はそのような実施形態に限定されないことを理解されたい。各ブランクは、内側自動車構造部品と外側自動車構造部品とに異なる機械的特性を与えるように、異なる材料、たとえば、異なるグレードの鋼で形成することができる。一例によれば、内側構造部品ブランクの材料と、外側構造ブランクの材料とは、外側自動車構造部品16が内側自動車構造部品の引張強度より大である引張強度を有するように選択することができる。
【0039】
ブランク38の厚さは、たとえば、0.7mmから3mmの間に含まれている。内側構造部品ブランクの厚さは、やはり、外側構造部品ブランクの厚さと異なる場合があり、たとえば、内側自動車構造部品14と外側自動車構造部品16とに異なる機械的特性を与えるために、前記厚さより小である場合もある。
【0040】
ブランク38はほぼ平滑である。ブランク38は、Lの形状を与え、下方側シルブランチ40と下方前方ピラーブランチ42とを備えている。下方側シルブランチ40は、長手軸に対応する軸Aに沿って延び、軸Aに沿って測定して、下方側シル2の長さに等しい長さを有している。下方前方ピラーブランチ42は、下方側シルブランチ40の一方の端部から、高さ軸に対応し、軸Aに対してほぼ垂直な軸Bに沿って延びる。下方前方ピラーブランチ42の長さは、軸Bに沿って測定して、下方前方ピラー4の長さに等しい。下方側シルブランチ40では軸Aに垂直な方向に沿い、下方前方ピラーブランチ42では軸Bに垂直な方向に沿って測定される、ブランク38の幅は、内側構造部品ブランクに関する、内側ブランク26の幅と、サイドウイング24の幅と、溶接タブ22の幅とを合わせた幅にほぼ等しく、また、外側構造部品ブランクに関する、外側ブランク32の幅と、サイドウイング34の幅と、溶接タブ36の幅とを合わせた幅にほぼ等しい。
【0041】
内側構造部品ブランクは、熱間スタンプされて、内側自動車構造部品14を形成する。より具体的には、このブランクの下方側シルブランチ40を熱間スタンプすることにより、内側下方側シル部品18が形成され、下方前方ピラーブランチ42を熱間スタンプすることにより、内側下方前方ピラー部品20が形成される。したがって、内側自動車構造部品14は、単一のブランクから得られる。
【0042】
外側構造部品ブランクは、熱間スタンプされて、外側自動車構造部品16を形成する。より具体的には、このブランクの下方側シルブランチ40を熱間スタンプすることにより、外側下方側シル部品28が形成され、下方前方ピラーブランチ42を熱間スタンプすることにより、外側下方前方ピラー部品30が形成される。したがって、外側構造部品16は、単一のブランクから得られる。
【0043】
内側自動車構造部品14と外側構造部品16とは、こうして、内側自動車構造部品の溶接タブ22と外側自動車構造部品の溶接タブ36とをともに取り付けることにより、組立て平面においてともに取り付けられる。この取付けは、たとえば、レーザー溶接によって得られる。
【0044】
したがって、自動車構造部品1は、単一の内側自動車構造部品14と単一の外側構造部品16とのアセンブリで形成される。
【0045】
したがって、自動車構造部品1の製造は、この製造が熱間スタンプと、2つのブランクのアセンブリのみを必要とすることから、より単純になる。さらに、下方前方ピラーを下方側シルに取り付けるステップは、これら部品が一体に形成されることから、必要とされない。
【0046】
さらに、得られた自動車構造部品1は、下方側シル2と下方前方ピラー4との間の交差部に弱いポイントが存在しないことから、より強固で、塑性変形に対してより耐性がある。内側自動車構造部品14と外側自動車構造部品16との間の取付けは、下方側シル4の長さ全体、および、下方前方ピラー4の長さ全体にわたって分布される。したがって、得られる自動車構造部品1は、自動車車両に対する衝撃に耐え、乗員室内へのいずれの種類の侵入も防止するように良好に適合されている。