特許第6856660号(P6856660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スパーク アイピー ホールディングス ピーティーワイ エルティーディーの特許一覧

<>
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000002
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000003
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000004
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000005
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000006
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000007
  • 特許6856660-2容器式小型ビール醸造システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856660
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】2容器式小型ビール醸造システム
(51)【国際特許分類】
   C12C 13/02 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   C12C13/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-547967(P2018-547967)
(86)(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公表番号】特表2019-507605(P2019-507605A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】IB2016052843
(87)【国際公開番号】WO2017153818
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】2016900869
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518317258
【氏名又は名称】スパーク アイピー ホールディングス ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】サンダース, ジュリアン ヴェイセイ
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0285971(US,A1)
【文献】 米国特許第04542683(US,A)
【文献】 特開2002−306151(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102006009612(DE,A1)
【文献】 日本醸造協会誌,2000年,Vol.95, No.10,pp.729-739
【文献】 国立科学博物館 技術の系統化調査報告,2009年,第14集,pp.259-331
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00−13/06
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッシング、麦汁濾過および煮沸の醸造過程を実行するように構成された容器を有する2容器式小型ビール醸造システムであって、
マッシング過程および煮沸過程を実行するように構成された内部タン(28)を有する底部容器(2)と、
前記タン(28)と流体連通し、前記底部容器(2)の上に配置され、前記麦汁濾過過程を実行するように構成された上部容器(3)と、
前記タン(28)から前記上部容器(3)へ流体を移動させるためのポンプ(51)と、を備え、
前記底部容器(2)は、底部タン(28)へのアクセスを提供する開口部(21)を有し、
前記上部容器(3)は、フォルスボトム(34)および側部オリフィス(33)を備えていることを特徴とする、醸造システム。
【請求項2】
前記開口部(21)が上部開口部であり、上部容器(3)によって制限されないように配置され、前記上部容器(3)は前記底部タン(28)の上に偏心して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の醸造システム。
【請求項3】
少なくとも前記底部タン(28)および/または前記上部容器(3)が実質的に円筒状 であり、前記上部容器(3)の直径は前記底部タン(28)の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の醸造システム。
【請求項4】
前記側部オリフィス(33)は、前記上部容器(3)の周辺にわたって延びることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項5】
前記側部オリフィス(33)は、前記上部容器(3)の前記フォルスボトム(34)と整列していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項6】
前記底部容器(2)は更に、前記底部タン(28)の周囲に少なくとも部分的に配置された加熱ジャケット(25)を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項7】
前記加熱ジャケット(25)は、流体加熱ジャケットであることを特徴とする、請求項6に記載の醸造システム。
【請求項8】
前記底部容器(2)は更に、内部流体熱交換器(26)を備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項9】
前記内部流体熱交換器(26)は、前記加熱ジャケット(25)の周囲に螺旋状に配置された給水管の形態を有することを特徴とする、請求項8に記載の醸造システム。
【請求項10】
前記底部タン(28)は接線方向入口(287)を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項11】
前記容器(2、3)の外部に流体熱交換器(52)を更に備えていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項12】
前記上部容器(3)の基部(38)は更に、少なくとも1つのスプレーヘッド(382)を備えていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の醸造システム。
【請求項13】
制御ユニット(41)と複数のセンサ(42〜46)とを含み、システムバルブ、ポンプ(51、54)、ならびにシステム(1)の他の付属の設備および構成要素に制御信号を提供するコンピュータ操作制御システム(4)を更に備えていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の醸造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、小規模な商用のクラフトビール醸造およびパブ醸造に適用可能なマッシング、麦汁濾過および煮沸の醸造過程を行うように構成された容器を有する2容器式小型醸造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
醸造は文明と同じくらい古い技術であり、水と炭水化物源からのアルコール飲料の生産に関係している。最近の科学および技術の発展により、連続醸造工程過程の理解と制御が可能になった。これらを熱力学によって制御された特定の時間および温度条件下で実行して、関連する有機化学および微生物学に影響を与えて、反復可能で望ましい結果を達成し得る。
【0003】
一般的に、最初の醸造過程では、大麦または小麦などの、麦芽処理した、または麦芽処理していないグレインを粉砕し、次いでマッシングと呼ばれる制御された浸漬工程において任意選択の添加炭水化物補助剤を温水中で混合し、それにより酵素が麦芽中の澱粉を糖に変換することが可能となる。第2過程の麦汁濾過中では、マッシュからの液体、すなわち麦汁がグレインから抜き取られ、グレインベッドは追加の温水の上部スプレーでスパージされて、グレインベッドは洗い流され余分な糖が回収される。第3過程では、甘い麦汁が煮沸され、ホップが加えられて、モルトの甘味と苦味のバランスが取られ、加えて香りと風味が提供される。次いで煮沸した麦汁を、冷却、酸素添加する前に、更なるホップ添加のためにワールプール処理をし、次いで酵母を接種して発酵工程を開始させ、それによりビールが作られ、それが冷却され、炭酸化され、および流通用に包装されるか、または現場で新鮮なまま直接提供される。
【0004】
典型的には、商用の醸造所がビールを包装して流通させており、醸造所の設計は製品単価を最小限に抑えるように最適化されている。このような醸造所には、熟練した醸造監督者と高価で大規模な設備が必要である。近代的なクラフト醸造所は小さく、典型的にはビールの風味の範囲を広げ、豊かにしようと努めている。これは、機械設計の改良および醸造工程の熱力学的制御によって促進することができる。
【0005】
例えば、米国特許第8993273(B1)号明細書は、グレインを発酵可能な糖にマッシングするための2容器式醸造システムを開示しており、これはマッシュタンである第1の容器と煮沸釜である第2の容器とを備え、煮沸釜は、開放上部と、閉鎖底部と、煮沸釜の開放上部と物理的接触関係に配置された蓋とを有し、マッシュタンは閉鎖底部およびフィルタシステムを有し、マッシュタンの閉鎖底部は煮沸釜の蓋と物理的接触関係にあり、マッシュタンの閉鎖底部近くでマッシュタンから煮沸釜内にドレインラインが連通し、ドレインライン内にフロー制御機構が配置され、加熱ユニットが煮沸釜に熱を伝達する。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0017354(A1)号明細書は、ビールを醸造するためのシステムを開示しており、これは、基部と、基部上に配置された煮沸釜と、煮沸釜と連通し煮沸釜に収容された流体を選択的に加熱するように構成された第1の加熱要素と、基部上に配置され1つ以上の固体または流体材料を内部に受容するように構成されたマッシュタンと、基部内に少なくとも部分的に配置され、煮沸釜およびマッシュタンに接続され、煮沸釜およびマッシュタンの中へ、中から外へ、およびこれらの間で流体を選択的に通過させるように動作可能なポンピングシステムと、基部内に少なくとも部分的に配置され、第1の加熱要素およびポンピングシステムを選択的に制御するように構成された制御システムと、を含む。基部は、好ましくは、台所のカウンタートップの面積よりも小さい面積を占めるように寸法決めされている。
【0007】
小型で自動化されたオールグレインビール醸造装置は、米国特許第9228163(B1)号明細書にも開示されており、米国特許第6032571号明細書は、自動制御下で単一容器内での家庭用ビール醸造のための自動化機械を開示している。
【0008】
本発明の目的は、全ての重要な醸造工程の側面を制御し改良するための、容易に、正確に、かつ繰り返して使用することができる、小型で費用効率の高い醸造システムを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、単一の場所で醸造、発酵および供給の統合制御を提供する小型で費用効率の高い醸造システムを提供することである。
【発明の概要】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による2容器式ビール醸造システムは、マッシングと煮沸過程を実行するように構成された内部タンを有する底部容器と、タンと流体連通する底部容器上に配置され、麦汁濾過過程を実行するように構成された上部容器と、タンから上部容器に流体を移動させるためのポンプとを備えている。
【0011】
これにより、小型構造が提供され、システムの空間およびポンプ数の要件が最小化される。
【0012】
本明細書の文脈において使用する場合、「醸造過程」は、プロセス流体が、他の容器に移送されるか、または醸造システムから外部に移送される、前または後に所与の容器内で発生する全ての工程を指す。従って、「醸造過程」の各々は、同じ容器内で逐次的に生じる複数の「工程」を伴っていてもよい。
【0013】
好ましくは、少なくとも底部タンおよび/または上部容器は実質的に円筒状であり、上部容器の直径は底部タンの直径よりも小さく、上部容器は底部タンの上に偏心して配置されている。
【0014】
これにより、底部容器の上部へのアクセスが容易になり、上部容器の側面へのアクセスが容易になり、容器の円筒形状は、ワールプール生成の回転対称性を提供し、温度均質性をもたらし、効果的なクリーン・イン・プレイス自動洗浄および最低製造コストに理想的な形状である。
【0015】
好ましくは、底部容器は、その内部タンへのアクセスを提供する上部開口部を備え、上部容器によって制限されないように配置されている。
【0016】
このような上部開口部は、特にマッシング過程の間にグリストを攪拌し、煮沸物にホップを添加するために、醸造者にとって簡便なアクセスを可能にする。
【0017】
好ましくは、上部容器は、スパージング中にグレインを簡便に保持するフォルスボトムを備えている。
【0018】
好ましくは、上部容器は側部オリフィスを備えている。
【0019】
側部オリフィスにより、容器を傾ける機能が全くなくても、使用済みグレインの上部容器からの簡便な排出が可能となる。
【0020】
好ましくは、側部オリフィスは、両方の容器の周辺にわたって延び、好ましくは、人間の腕の高さに位置する。
【0021】
好ましくは、側部オリフィスは、上部容器のフォルスボトムと整列している。
【0022】
このような側部オリフィスは、上部容器へのアクセスを更に促進し、醸造者が使用済みグレインを簡便に、きれいに、かつ人間工学的に、入れ物内に掻き入れることを可能にする高さおよび位置を提示する。
【0023】
好ましくは、底部容器は更に、底部タンの周囲に少なくとも部分的に配置された加熱ジャケットを備えている。
【0024】
好ましくは、加熱ジャケットは、流体加熱ジャケット、好ましくは、少なくとも1つの電気加熱要素によって駆動されるオイル加熱ジャケットである。
【0025】
このような加熱ジャケットは、熱交換媒体として蒸気、蒸気と水、オイル、または任意の他の流体を使用してもよく、底部タンの内容物の均一な加熱を可能にしている。
【0026】
好ましくは、底部容器は更に、好ましくは、加熱ジャケットの周囲に螺旋状に配置された給水管の形の内部流体熱交換器を備えている。
【0027】
この内部螺旋状熱交換器により、いかなる追加のホット・リカー・タンまたは別個の温水加熱器も必要なくなり、むしろ加熱ジャケットを通過する間に加熱することによって、スパージングおよびクリーニングのための温水を制御された方法で得ることができる。
【0028】
好ましくは、底部タンに接線方向入口が設けられる。
【0029】
これにより、必要に応じて底部容器内にワールプールを生成することができる。
【0030】
好ましくは、システムは更に、容器の外部に流体熱交換器を備えている。
【0031】
この熱交換器により、再循環流体に熱を加えたり除去したりすることが可能になる。
【0032】
好ましくは、上部容器の基部は更に少なくとも1つのスプレーヘッドを備えている。
【0033】
スプレーヘッドは、上部容器内のフォルスボトム下のアンダレットプレナムへ流れを提供し、フォルスボトムが本来の位置にあるままで洗浄すること、およびスタックマッシュの場合にグレインベッドを持ち上げることを可能にする。
【0034】
場合により、システムは第2のポンプを含み、本明細書に記載された醸造システムの典型的な実施形態では必要ないが、非常に濃いマッシュの移送を促進するように最適化された容積式設計により、第1のポンプを補ってもよい。
【0035】
好ましくは、醸造システムは更に、制御ユニットと複数のセンサとを含み、システムバルブ、ポンプ、ならびにシステムの他の付属の設備および構成要素に制御信号を提供するコンピュータ操作制御システムを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明のこれらおよび他の特徴は、例示的な実施形態において、および添付の図面に関連して以下に提示される。
図1】容器ハッチが開いた状態の醸造システムの一実施形態の概略的側面図である。
図2図1に示す醸造システムの概略的垂直側面図である。
図3】容器ハッチが閉じている、図1および図2に示す醸造システムの概略的上面図である。
図4図1に示す平面A−Aに沿った、醸造システムの底部容器の概略的断面上面図である。
図5図3に示す平面B−B(底部容器)およびC−C(上部容器)に沿った、醸造システムの容器の概略的断面側面図である。
図6図1に示す平面D−Dに沿った、醸造システムの上部容器の概略的断面上面図である。
図7図1に示す醸造システムの実施形態の様々な構成要素間の接続を示す概略的なパイプおよび機器のダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
醸造システム1の図示された実施形態は、図2および図3に示すように、底部円筒容器2と、底部容器2の上に偏心させて積み重ねた上部円筒容器3とを備えている。底部容器2は、システム1の位置を安定させる足踏み式ブレーキ241を備えた車輪24で支持されている。ハンドル23と共に車輪24はまた、必要な場合にシステム1を簡便に移動できるようにしている。
【0038】
底部容器2は、醸造工程のマッシング過程および煮沸過程を実行するように構成され、一方、上部容器3は、マッシング過程と煮沸過程の間に生じる麦汁濾過過程を実行するように構成されている。容器2および3の両方は、これら容器に備えられている付属の設備および構成要素と一緒に、後で説明する形で互いに流体連通している。
【0039】
底部容器2は、ハンドル211を有するハッチ21の形態で、容器2の上部カバー22上でヒンジ212上に旋回可能に配置された上部開口部を備えている。上部容器3はまた、その上部カバー32上でヒンジ312に旋回可能に配置されたハンドル311を有する、同様のハッチ31を備えている。
【0040】
容器2および3の中心をずらした(偏心)積み重ねにより、システム1の小型の構造が提供され、その必要空間は最小化され、マッシュ攪拌およびボイルホップ添加に特に必要とされ得る、底部容器2の内部への容易なアクセスがヒンジ付きハッチ21を介して可能になる。更に、容器2および3が互いに上下に配置されているという事実により、それらの間での重力による麦汁濾過が可能になり、この工程中にグレインから麦汁を抜き取るための第2のポンプのいかなる必要性も不要となる。
【0041】
上部容器3の側壁にはまた、側部オリフィス33が設けられており、スクリュ333を用いてレバー332によって支持されたカバー331によって醸造中は密封されている。図2および図3に示すように、側部オリフィス33は、容器2および3の両方の周辺にわたって延び、醸造者にとって上部容器3の内部への人間工学的なアクセスが可能となる高さに配置される。側部オリフィス33(図5参照)の底部壁が上部容器3のフォルスボトムと位置が合っているので、醸造者はカバー331を取り外した後に、容器3の内部からどんなグレインでも容易に掻き出すことができる。この目的のために、側部オリフィス33はまた、側部オリフィス33の底端部から下方に突出した追加のシュート(図示せず)を備えていてもよい。
【0042】
ここで図4および図5を参照すると、底部容器2は、本実施形態では約450リットルの容量を有する容器またはタン28を備えている。別の実施形態では、容量は600、750またはそれ以上であり得る。
【0043】
タン28は、本実施形態では加熱オイルで駆動されハウジング251を備えた、加熱ジャケット25によって取り囲まれている。ジャケット25は、オイル入口252を介してオイルで満たされていてもよく、オイルの過剰分は、手動操作バルブ253によって閉じられたオイルオーバーフロー出口255を介して処分されてもよい。加熱ジャケット25の温度は、2つの電気加熱要素254によって制御および維持され、電気加熱要素254は各々、約20kWの出力を有し、加熱ジャケット25の容積の内部に放射状に配置されている。もちろん、加熱要素254は、図示したよりも高く配置され、タン28の内側の容積の内部に更に延びていてもよい。
【0044】
底部容器2はまた、加熱ジャケット25のハウジング251の周辺部にわたって配置された螺旋管状給水管26を備えている。給水官26は、入口261を介して給水されてもよく、水を加熱するための内部流体熱交換器として働き、水は後で説明するように、スパージングのために出口262を介して上部容器3に供給されてもよい。加熱ジャケット25は給水管26と共に、断熱材29によって取り囲まれており、タン28を含む底部容器2の全ての構成要素は外側鋼鉄シェル27内に収容されている。
【0045】
底部容器2のタン28は、ワールプールの後に形成される中央に堆積されたタンパク質およびホップ材料の堆積物から、ホップ添加された澄んだ麦汁を発酵槽に移送するための、中央ドレイン282および周辺ドレイン283を有する円錐状基部281を有する。
【0046】
タン28はまた、底部容器2の上部カバー22を介して導入された回転スプレーボール284を備えて、タン28のクリーン・イン・プレイス(CIP)再循環洗浄が可能となっており、その工程は自動化してもよい。
【0047】
タン28は更に、醸造中に蒸気が底部容器2に再流入することを防止するために、醸造所から排気する排出管と連結され得る蒸気出口285を備えている。代替として、出口285を蒸気凝縮器に連結して、蒸気をパイプでドレインに送ってもよい。
【0048】
温水と完全に混合されたグリストをタン28に供給するために、底部容器2の上部カバー22に取り付けられたグリストハイドレータ286が備えられている。グリストハイドレータ286は上部に漏斗を備え、グリストをタン28に簡便に注ぐことができる。ハイドレータは給水管によって供給され、入ってきた温水を薄いシート状に偏向させて、グリストを素早くかつ完全に水和させてマッシュを形成する。
【0049】
タン28および加熱ジャケット25はまた、サーモウェル46および45内に配置された温度センサ(図示せず)を備えている。サーモウェル46内に配置されたセンサは底部タン28内の流体の温度を測定するように構成され、一方、サーモウェル45内に配置されたセンサは加熱ジャケット25の温度を測定するように構成される。
【0050】
タン28は更に、接線方向入口287を備え、再循環流体のリターンフローがワールプールを促進させることを可能にしている。この接線方向入口は図4に示しており、再循環の入口流を矢印で示している。
【0051】
円筒状の上部容器3は、本実施形態では約300リットルの容積を有する。別の実施形態では、それは450、600またはこれを超え得る。
【0052】
図5に示すように、容器3は中央ドレイン381を備えている円錐状基部38を有する。円錐状基部38上には、スパージング中にグレインを保持するためのスロット付き水平円盤状のフォルスボトム34がある。上部容器3は、スパージングを含む醸造工程の麦汁濾過過程のためだけに使用されるので、加熱または断熱する必要はない。
【0053】
上部容器3は、温度センサ(図示せず)を備えるサーモウェル44と、容器3のCIP再循環洗浄のための回転スプレーボール36と、麦汁濾過中にグレインベッドの上部にスパージ水を穏やかに導入するためのスプリンクラ371用のスパージアーム37と、穏やかで跳ね散らしのない容器の充填を可能にするフロー偏向器35と、フォルスボトム34のすぐ上の低レベル入口39とを備えている。
【0054】
上部容器3の円錐状基部38は更に、環状マニホールド383を介してスプレーヘッド382に供給する入口パイプ384を備え、容器3内のフォルスボトム34下のアンダレットプレナムに流れを提供し、フォルスボトムが本来の位置にあるままで洗浄し、スタックマッシュ中に温水でグレインベッドを持ち上げることを可能にする。
【0055】
ポンプ51および一連の弁を有するパイプ網は、容器2と3との間のプロセス流体およびマッシュスラリの移送、底部容器2内での再循環、および醸造所からドレインまたは発酵槽への移送を可能にしている。電気作動式バルブを有する統合されたクリーン・イン・プレイス(CIP)システムにより、自動完全洗浄および洗い流しのための苛性洗浄液の再循環が可能になる。
【0056】
任意選択の容積式設計の第2のポンプ54は、容器2から容器3への濃いマッシュの移送を促進する。
【0057】
グループ5の下に分類されたシステム1の全ての他の付属の構成要素を、システムの特徴と併せて、醸造工程、および特に、醸造システムの本実施形態の様々なセンサ、構成要素、バルブおよび連結を示す図7を参照して以下に説明する。
【0058】
図7に示すように、システムは手動で操作することができ、またはコンピュータ操作制御システム4を含んでもよく、これは、システムの全てのセンサから情報を収集し、ならびにシステムバルブ、ポンプおよび他の構成要素4に制御信号を提供し、ならびに破線で概略的に示す電気加熱要素254に電力を供給する制御ユニット41を含んでいる。制御システム4は、麦汁醸造装置を制御するだけでなく、パブ醸造を促進するために発酵タンクおよびサービングタンクの温度およびカーボネーションの制御を提供することもできる。図面を簡単にするために、図7に示すバルブは数値で参照していない。しかし、それらの機能性は、以下の説明に基づいて当業者に理解されるものであることは明らかである。
【0059】
第1過程では、グレインおよび/または麦芽処理したグレインを粉砕してグリストとし、底部容器2のタン28内に導入し、次いで特定温度の温水と混合してマッシュを形成する。
【0060】
この目的のために、水はタン28内で加熱ジャケット25によって加熱される。水は、接線方向入口287を通して、またはグリストハイドレータ286を通して、その漏斗の中にグリストが注ぎ込まれる際に、タン28内に導入されてもよい。次いで、グリストは、手動でかつ簡便に、開放されたハッチ21を通して醸造者によって攪拌されてもよい。
【0061】
加熱を伴わないシングル・インフュージョン・マッシュを実行してもよいし、代替として、各温度を達成したら保持する、逐次増加の温度静止を用いた、ステップ・マッシュ・プロファイルを実行して、特定の酵素群をグリストに順次作用させることができる。
【0062】
マッシングの間、制御ユニット41は、電気加熱要素254、ならびにサーモウェル46および45内に配置された温度センサを用いて加熱ジャケット25の温度を制御して、所望の予めプログラムされた、ランプおよびステップのマッシュプロファイル、または所望のマッシュ持続時間に対するシングルインフュージョン温度を実現して、グレインの澱粉をより単純な発酵性糖に変換する。「マッシュアウト」温度への最終的な上昇を用いて、麦汁の粘度を低下させ(麦汁濾過を促進するため)、酵素を変性させて麦芽糖プロファイルを固定してもよい。
【0063】
温度均一性を提供し、そうしなければ抽出効率を低下させ、好気性アセトバクタを有害なレベルにまで成長させるであろう、あらゆるドウボールの分解を助けるために、マッシュを接線方向入口287を介して再循環させてもよい。
【0064】
マッシング後、グリストスラリは、ポンプ51を用いてタン28から中央基部ドレイン282、パイプ2821を通って上部の麦汁濾過容器3の低レベル入口39に汲み上げられる。
【0065】
第1のランニングと呼ばれるマッシュ流体は、グレインがなくなるまで洗い流された後に、重力下で上部の麦汁濾過容器3の中央ドレイン381を通して連結管3811を介し底部タン28に落とされる。
【0066】
グレインベッドからの追加の糖の洗い流しをするための麦汁濾過は、螺旋管状給水管26内で加熱されたスパージ水を用いて実行し、これを本管水圧から出口262を介して、またはポンプ51を使用して、供給管372を介してスパージアーム37のスプリンクラ371に導入して、グレインベッド上に散布して、グレインから残った糖を洗い流してもよい。
【0067】
加熱ジャケット25内の加熱温度がスパージング工程を通して減衰するにつれて、スパージ水温は、温度センサ42によって螺旋状熱交換器26の出口262で測定され、ポンピング速度およびジャケット25加熱電力を調整することにより制御されて、所望のスパージ水温およびスパージ速度が維持される。
【0068】
これらのスパージされた第2のランニングはまた、中央ドレイン381を介して底部タン28に集められる。
【0069】
甘い麦汁は加熱ジャケット25によって加熱されて煮沸され、1つ以上のホップ添加物の所定のホップ添加スケジュールに従ってホップ添加され、早期のボイル添加はホップアルファ酸の異性化を通して苦味をよりもたらし、遅めの添加は揮発性の芳香族化合物をより保持して香りと風味に寄与する。
【0070】
煮沸後、加熱ジャケット25の加熱は停止され、ホップ添加麦汁を中央ドレイン282を介してポンピングし、タン28の側面の接線方向入口287を介して戻すことによってワールプールが形成される。このプロセス全体にわたって、更なるホップチャージを異なる温度で追加することができ、制御システム4は、冷却液流量センサ(ソレノイドバルブ)43を介して外部流体熱交換器52への再循環ポンピング速度および低温側冷却流体流量を制御しながら、温度と時間にわたる所定のワールプール冷却プロファイルを達成する。
【0071】
ワールプール処理および冷却の後、麦汁が発酵のための所望の温度にあるとき、外部熱交換器52への冷却流は止められ、冷却されたホップ添加麦汁はスプレーボール284を通って再循環されてもよく、周囲空気との接触を通して酸化され、ワールプールが落ち着いて、タン28の中央にタンパク質ブレイク材料およびホップ材料が落とされ、それにより澄んだ麦汁を周辺ドレイン283からパイプ2831を通して抜き取り、発酵槽へ移送してもよい。ポンピング速度および熱交換器52の冷却は、制御システム4によって制御され、所望のホップ添加プロファイル、ホップ添加麦汁温度および溶存酸素レベルを達成する。所望であれば、追加の純酸素を、再循環中の酸素添加焼結石(図示せず)を介してまたは発酵槽に移送する際に、入口53を通してホップ添加された麦汁に導入することができる。
【0072】
本発明の上記の実施形態は単なる例示である。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は誇張されているか、または最小化されている場合がある。しかし、これらおよび他の要因は、本発明の趣旨を限定するものとみなすべきではなく、本発明の意図した保護範囲は添付の特許請求の範囲に示される。
【符号の説明】
【0073】
1 ビール醸造システム
2 底部容器
21 ハッチ
211 ハンドル
212 ヒンジ
22 上部カバー
23 ハンドル
24 車輪
241 ブレーキ
25 加熱ジャケット
251 ハウジング
252 オイル入口
253 バルブ
254 電気加熱要素
255 オイルオーバーフロー出口
26 内部流体熱交換器(螺旋管状給水管)
261 入口
262 出口
27 外側シェル
28 タン
281 円錐状基部
282 中央ドレイン
2821 パイプ
283 周辺ドレイン
2831 パイプ
284 回転スプレーボール
2841 供給管
285 蒸気出口
286 グリストハイドレータ
287 接線方向入口
29 断熱材
3 上部容器
31 ハッチ
311 ハンドル
312 ヒンジ
32 上部カバー
33 側部オリフィス
331 カバー
332 レバー
333 スクリュ
34 フォルスボトム
35 フロー偏向器
36 回転スプレーボール
37 スパージアーム
371 スプリンクラ
372 供給管
38 円錐状基部
381 中央ドレイン
3811 連結管
382 スプレーヘッド
383 環状マニホールド
384 入口パイプ
385 支柱
39 入口
4 制御システム
41 制御ユニット
42 温度センサ(スパージ水)
43 冷却液流量センサ
44 上部容器サーモウェル
45 加熱ジャケットサーモウェル
46 底部タンサーモウェル
5 付属構成要素
51 ポンプ
52 外部流体熱交換器
521 入口
522 出口
53 酸素注入口
54 マッシュ移送ポンプ(容積式またはスクリュ式)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7