特許第6856665号(P6856665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856665ブラシレス直流モータおよび角度信号を提供する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856665
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】ブラシレス直流モータおよび角度信号を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20210329BHJP
   H02K 11/225 20160101ALI20210329BHJP
【FI】
   G01D5/20 K
   H02K11/225
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-554744(P2018-554744)
(86)(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公表番号】特表2019-514013(P2019-514013A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017055449
(87)【国際公開番号】WO2017182191
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】102016206768.0
(32)【優先日】2016年4月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ウーターメーレン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ライディヒ
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327940(JP,A)
【文献】 特開昭62−47501(JP,A)
【文献】 特開2001−174206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
G01B 7/00− 7/34
H02K11/00−11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価・制御ユニット(7)と、
ステータと、
ロータと、
同時回転するベル形アーマチュア巻線(5)と、
前記ロータの角度位置を特定するセンサ(10)と、
を備えるアウタロータ型のブラシレス直流モータ(1)であって、
前記同時回転するベル形アーマチュア巻線(5)に、第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)と第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)とを備えるターゲット(20,20A,20B,20C)が被着されており、
前記センサ(10)は、第1のコイル(12)と第2のコイル(14)を備える渦電流センサとして形成されており、
前記センサ(10)は、前記ターゲット(20,20A,20B,20C)に対して半径方向に間隔を置いて、前記第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)が前記第1のコイル(12)に少なくとも部分的に重なるように配置されており、前記第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)が前記第2のコイル(14)に少なくとも部分的に重なるように配置されており、
前記センサ(10)は、前記第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)による前記第1のコイル(12)との重なり量の関数、および、前記第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)による前記第2のコイル(14)との重なり量の関数として、最大360°までの前記ロータの絶対的な角度位置を一意に表す角度信号を提供し、
前記第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)および前記第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)の厚さおよび/または幅は、一方は回転方向に向かって減少しており、他方は回転方向に向かって増加していることを特徴とする、ブラシレス直流モータ(1)。
【請求項2】
前記第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)および前記第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)の一方は回転方向に向かって幅が減少する三角形に形成されており、他方は回転方向に向かって幅が増加する三角形に形成されている、請求項1記載のブラシレス直流モータ(1)。
【請求項3】
前記評価・制御ユニット(7)は、前記角度信号をステータコイルの整流および/または出力調整のために使用することを特徴とする、請求項1または2記載のブラシレス直流モータ(1)。
【請求項4】
前記評価・制御ユニット(7)は、前記角度信号を別の車両システムおよび/または車両機能に出力することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のブラシレス直流モータ(1)。
【請求項5】
同時回転するベル形アーマチュア巻線(5)を備えて形成されたアウタロータ型のブラシレス直流モータ(1)のロータの角度位置を表す角度信号を提供する方法であって、
前記同時回転するベル形アーマチュア巻線(5)に被着されたターゲット(20,20A,20B,20C)の第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)による、渦電流センサとして形成されたセンサ(10)の第1のコイル(12)との重なり量の関数、および、前記ターゲット(20,20A,20B,20C)の第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)による、前記センサ(10)の第2のコイル(14)との重なり量の関数として、最大360°までの前記ロータの絶対的な角度位置を一意に表す前記角度信号を形成し、
前記第1の導電性のトラック(22.1,22.1A,22.1B,22.1C)および前記第2の導電性のトラック(22.2,22.2A,22.2B,22.2C)の厚さおよび/または幅は、一方は回転方向に向かって減少しており、他方は回転方向に向かって増加していることを特徴とする、
角度信号を提供する方法。
【請求項6】
前記角度信号を前記ブラシレス直流モータ(1)のステータコイルの整流および/または前記ブラシレス直流モータ(1)の出力調整のために使用し、かつ/または別の車両システムおよび/または車両機能に出力することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のカテゴリーに記載のブラシレス直流モータまたは角度信号を提供する方法から出発する。
【0002】
先行技術に基づき、センサ制御により整流されたり、センサレスで整流されたりするアウタロータ型のブラシレス直流モータが公知である。センサ制御による整流では、直流モータのロータの位置が、例えば光学センサおよび/またはホールセンサによって測定され、これにより、ステータの位相が相応に制御される。これによって、直流モータのほぼ「ジャークなし」の始動が可能となる。磁気センサの使用は、センサ磁石として永久励磁の磁石を二重使用することを想起させる。センサレスでの整流では、通常の場合、少なくとも三相のステータシステムの常に2つの巻線だけが制御されるので、ロータ位置の測定は、丁度制御されていないステータ巻線における誘導された電圧によって行われる。しかしながら、この信号はロータの運動時にしか提供されない。したがって、センサレスでの始動は特に問題をはらんでいる。このために、モータは固定のクロッキング方式で始動させられることが多い。初期のロータ位置が不確定であることに基づき、これによって、激しいジャークが生じてしまう。数多くの用途において、この挙動は受け入れがたい。
【0003】
さらに、先行技術に基づき、減速伝動装置を介して位置が変化させられるスロットルバルブまたはこれに類するシステム用のブラシレス直流モータを備えたサーボ駆動装置が公知である。この公知のサーボ駆動装置では、モータ制御のためのロータ位置に対して付加的に、機能的なアスペクトとして、出力要素の位置が検出される。このために、第2のセンサが必要となる。なぜならば、変速のために、複数回の(電気的な/機械的な)回転数の差異が要求されることがあるからである。モータ制御のために出力要素にセンサを使用することには問題がある。なぜならば、伝動装置遊びが、ロータ位置の特定時に比較的大きな角度誤差を招いてしまうからである。多数の電気的な極を備えたモータの使用によって、機械的な変速を部分的に省略することができる(ダイレクトドライブ)。センサレスでの作動の場合にも、磁気センサの使用および永久励磁の二重利用の場合にも、電気的な位相位置はモータシャフトの絶対的な位置に対応していない。
【0004】
欧州特許出願公開第0856720号明細書に基づき、例えば、自動車のステアリングホイールの回動角または回動角変化量を検出するための操舵角センサが公知である。この公知の操舵角センサでは、電気機械的な構成部材によって、回動角または回動角変化量に応じた電気的な信号が形成される。非接触式の操舵角センサは、ステアリングシャフトの端部に取り付けられた永久磁石から成っている。この永久磁石の磁化軸線は、ステアリングシャフトの軸線に対して垂直に位置している。永久磁石の領域には、磁界感応式のセンサが位置している。このセンサは、好ましくは、個別の形態または一体化された形態のホール素子から成っている。
【0005】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有するブラシレス直流モータおよび独立請求項7の特徴を有する、角度信号を提供する方法は、渦電流センサを用いてロータの絶対角度を特定するために、ブラシレス直流モータに設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線(Glocke)を機能化することによって、コスト削減と構成スペース縮小とが可能になるという利点を有している。センサは、ブラシレス直流モータの磁極対数に左右されることなく、最大360°まで一意に測定信号を供給する。この測定信号は、例えばステータコイルを整流するために使用することができる。このことは、特に電気車両でのジャークなしの始動のために不可欠である。強トルクのモータに相応に使用することによって機械的な変速を省略することができる用途では、センサを、モータ制御のほかに、出力もしくは有効機能の調整のために使用することもできる。したがって、第2のセンサを省略することができる。
【0006】
本発明の実施の形態は、ステータと、ロータと、同時回転するベル形アーマチュア巻線と、ロータの角度位置を特定するセンサとを有するアウタロータ型のブラシレス直流モータを提供する。このブラシレス直流モータでは、同時回転するベル形アーマチュア巻線に、少なくとも1つの導電性のトラックを備えたターゲットが被着されており、センサが、少なくとも1つのコイルを備えた渦電流センサとして形成されており、センサが、ターゲットに対して半径方向に間隔を置いて、少なくとも1つの導電性のトラックが少なくとも1つのコイルに少なくとも部分的に重なるように配置されており、センサが、少なくとも1つの導電性のトラックによる少なくとも1つのコイルとの重なり量の関数として、最大360°までのロータの絶対的な角度位置を一意に表す角度信号を提供する。
【0007】
さらに、同時回転するベル形アーマチュア巻線を備えて形成されたアウタロータ型のブラシレス直流モータのロータの角度位置を表す角度信号を提供する方法が提案される。この方法では、同時回転するベル形アーマチュア巻線に被着されたターゲットの少なくとも1つの導電性のトラックによる、渦電流センサとして形成されたセンサの少なくとも1つのコイルとの重なり量の関数として、最大360°までのロータの絶対的な角度位置を一意に表す角度信号が形成される。
【0008】
本発明の要旨は、ブラシレス直流モータに設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線に導電性のトラックを被着すること、絶対角度位置を測定するための相応の渦電流センサを設けることおよび絶対角度位置を表す角度信号を提供することである。この角度信号は、ステータコイルの整流および/または出力の調整のために使用することができる。
【0009】
本発明の実施の形態は、直流モータの長さを増加させる軸端センサと比較して、付加的な構成スペースをほとんど必要としない。最大360°までの範囲内でロータの絶対的な角度位置を一意に特定することによって、駆動されるアッセンブリ、例えばフラップ等に設けられる付加的なセンサを節約することができる。さらに、渦電流原理の実現によって、EMCに関して、静的な磁界およびモータ電流に左右されることなく、ロバストな測定が可能となる。さらに、提供される角度信号によって、センサレスの方法と比較して、整流のより良好な調整が達成される。
【0010】
評価・制御ユニットとは、本明細書では、検出されたセンサ信号を処理するかもしくは評価する電気的な装置、例えば制御装置、特にモータ制御装置のことをいう。評価・制御ユニットは少なくとも1つのインタフェースを有することができる。このインタフェースはハードウェアおよび/またはソフトウェアにより構成することができる。ハードウェアによる構成では、インタフェースが、例えば、評価・制御ユニットの種々異なる機能を有する、いわゆる「システムASIC」の一部であってよい。しかし、インタフェースが、固有の集積回路であるかまたは少なくとも部分的に離散的な構成要素から成っていることも可能である。ソフトウェアによる構成では、インタフェースがソフトウェアモジュールであってよい。このソフトウェアモジュールは、例えば、別のソフトウェアモジュールに隣接してマイクロコントローラに存在している。機械可読の担体、例えば半導体メモリ、ハードディスクメモリまたは光学メモリに記憶されていて、プログラムが評価・制御ユニットによって実行されると、評価を実施するために使用されるプログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品も有利である。
【0011】
センサとは、本明細書では、物理的な量もしくは物理的な量の変化を直接的にまたは間接的に検出しかつ好ましくは電気的なセンサ信号に変換する少なくとも1つのセンサ素子を有する構成ユニットのことをいう。
【0012】
従属請求項に記載した手段および変化形態によって、独立請求項1に記載したブラシレス直流モータおよび独立請求項7に記載した、角度信号を提供する方法の有利な改良が可能となる。
【0013】
特に有利には、少なくとも1つの導電性のトラックの厚さおよび/または幅が、360°の一回転にわたって変化していてよく、これによって、測定が容易になる。
【0014】
直流モータの有利な構成では、センサが、少なくとも1つのコイルのインダクタンスの測定を介して、少なくとも1つの導電性のトラックによる重なり量の関数として角度信号を形成することができる。少なくとも1つのコイルは、少なくとも1つの導電性のトラックに渦電流を発生させる。この渦電流は、少なくとも1つのコイルのインダクタンスの、角度に応じた変化を発生させる。このインダクタンス変化は、評価・制御ユニットにおいて、例えば、周波数カウンタまたはLR回路を備えたLC発振回路と、減衰時間の測定とを介して特定することができる。代替的には、センサが、少なくとも2つのコイルの間の誘導結合を介して、少なくとも1つの導電性のトラックによる重なり量の関数として角度信号を形成することもできる。代替的な評価コンセプトは、変圧器に類似して、2つのセンサコイルの間の結合と同時に、少なくとも1つの導電性のトラックによる重なり量とを利用してもよい。
【0015】
直流モータの別の有利な構成では、評価・制御ユニットが、角度信号をステータコイルの整流および/または出力調整のために使用することができる。さらに、評価・制御ユニットが、角度信号を別の車両システムおよび/または車両機能に出力することができる。
【0016】
角度信号を提供する方法の有利な構成では、少なくとも1つのコイルのインダクタンスの測定を介して、少なくとも1つの導電性のトラックによる重なり量の関数として角度信号を形成することができる。代替的には、少なくとも2つのコイルの間の誘導結合を介して、少なくとも1つの導電性のトラックによる重なり量の関数として角度信号を形成することもできる。
【0017】
角度信号を提供する方法の別の有利な構成では、角度信号をブラシレス直流モータのステータコイルの整流および/またはブラシレス直流モータの出力調整のために使用することができ、かつ/または別の車両システムおよび/または車両機能に出力することができる。
【0018】
本発明の複数の実施例を図面に示し、以下の記載において詳しく説明する。図中、同一の符号は、同一の機能もしくは類似の機能を実施するコンポーネントもしくは要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】アウタロータ型の本発明に係るブラシレス直流モータの一実施例の概略図である。
図2図1に示したブラシレス直流モータに設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線に被着された展開されたターゲットの第1の実施例の概略図である。
図3図1に示したブラシレス直流モータに設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線に被着された展開されたターゲットの第2の実施例の概略図である。
図4図1に示したブラシレス直流モータに設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線に被着された展開されたターゲットの第3の実施例の概略図である。
【0020】
発明の実施の形態
図1図4から明らかであるように、アウタロータ型の本発明に係るブラシレス直流モータ1の図示の実施例は、評価・制御ユニット7と、ステータ(図示せず)と、ロータ(図示せず)と、同時回転するベル形アーマチュア巻線5と、ロータの角度位置を特定するセンサ10とを有している。同時回転するベル形アーマチュア巻線5には、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cを備えたターゲット20,20A,20B,20Cが被着されている。センサ10は、少なくとも1つのコイル12,14を備えた渦電流センサとして形成されている。センサ10は、ターゲット20,20A,20B,20Cに対して半径方向に間隔を置いて、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cが少なくとも1つのコイル12,14に少なくとも部分的に重なるように配置されている。センサ10は、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cによる少なくとも1つのコイル12,14との重なり量の関数として、最大360°までのロータの絶対的な角度位置を一意に表す角度信号を提供する。
【0021】
原理的には、ブラシレス直流モータ1を作動させるために、評価・制御ユニット7がステータの少なくとも3つのコイルを制御して、たいてい永久励磁されるロータを駆動する回転磁界を発生させる(永久励磁式の同期モータ)。このためには、たいてい2つのコイルが同時に制御され、第3のコイルが無通電状態に切り換えられる。どの2つのコイルがロータに所望のトルク作用を与えているのかを識別するために、ロータ位置が求められる。このロータ位置は、先行技術に基づき公知の別の直流モータでは、例えばホールセンサもしくは光学センサを介して実現されるかまたは使用されていないコイルにおける誘導電圧の評価を介してセンサレスで実現される。センサレスの構成は、一般的に、始動トルクがほとんど要求されず、モータのジャークなしの起動が必ずしも必要とならない用途、例えばプロペラの駆動でしか使用されない。このようなブラシレス直流モータに伝動装置を介して接続されている用途では、たいていの場合、ロータの直接的な位置測定が実施される。たいていの直流モータは、1よりも大きな磁極対の数Np(典型的には4〜12)を使用している。したがって、電気的な制御が機械的な1回転の範囲内で4回もしくは12回整流を行う。360°の一意範囲でのロータの角度位置の特定は、モジュロ除法によって、以下の等式(1):
φ(e)=Mod(φ(abs),360°/Np) (1)
による電気的な位相位置φ(e)の計算を可能にする。なお、式中、φ(abs)は、ロータの絶対的な角度位置を表しており、Npは、磁極対の個数を表している。
【0022】
より小さな一意範囲を有するセンサもしくはロータ位置のセンサレスでの特定は、ロータもしくは出力要素の絶対的な位置に対する外挿を可能にしない。したがって、伝動装置を備えていないダイレクトドライブの場合でさえ、ロータ位置信号を出力の調整のために使用することが不可能となる。
【0023】
本発明の実施の形態は、アウタロータ型のブラシレス直流モータ1に設けられた同時回転するベル形アーマチュア巻線5を、絶対角度位置の測定が360°の一意範囲で実現されるように機能化している。このためには、渦電流センサとして形成されたセンサ10の近くを、伝導性の材料から成るターゲット20,20A,20B,20Cが通過して、少なくとも1つのセンサコイル12,14のインダクタンスの、角度に応じた変化を発生させる。この変化は評価・制御ユニット7によって、例えば、周波数カウンタまたはLR回路を備えたLC発振回路と、減衰時間の測定とを介して特定することができる。図示の実施例では、ターゲット20,20A,20B,20Cが、ベル形アーマチュア巻線5の外面に被着された柱面を形成していて、それぞれ2つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cを有している。これらのトラック22,22A,22B,22Cは、ロータもしくは同時回転するベル形アーマチュア巻線5の角度位置に応じて、少なくとも1つのコイル12,14に少なくとも部分的に重なっている。代替的な評価コンセプトは、2つのセンサコイル12,14の間の結合と、同時に、ターゲット20,20A,20B,20Cによる重なり量とを求めてもよい。
【0024】
図1図4からさらに明らかであるように、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cの厚さおよび/または幅が、360°の一回転にわたって変化している。図示の実施例では、各ターゲット20,20A,20B,20Cが、互いに分離された2つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cを有している。この実施例では、それぞれ1つの第1の導電性のトラック22.1,22.1A,22.1B,22.1Cが、ターゲット20,20A,20B,20Cの柱面の左側方の縁部に延在しており、それぞれ1つの第2の導電性のトラック22.2,22.2A,22.2B,22.2Cが、ターゲット20,20A,20B,20Cの柱面の右側方の縁部に延在している。
【0025】
図1からさらに明らかであるように、ターゲット20の図示の第1の実施例では、第1のトラック22.1の幅が上方から下方へと減少しており、第2のトラック22.2の幅が上方から下方へと増加している。
【0026】
図2からさらに明らかであるように、ターゲット20Aの図示の第2の実施例では、電気的なトラック22Aが、それぞれ二等辺三角形の形状を有している。第2の実施例では、第1のトラック22.1Aの幅が上方から下方へと減少しており、第2のトラック22.2Aの幅が上方から下方へと増加している。
【0027】
図3からさらに明らかであるように、ターゲット20Bの図示の第3の実施例では、電気的なトラック22Bが、それぞれ直角三角形の形状を有している。第3の実施例では、第1のトラック22.1Bの幅が上方から下方へと増加しており、第2のトラック22.2Bの幅が上方から下方へと減少している。
【0028】
図4からさらに明らかであるように、ターゲット20Cの図示の第4の実施例では、第3の実施例に類似して、電気的なトラック22Cが、それぞれ直角三角形の形状を有している。第4の実施例における電気的なトラック22Cの三角形の面積は、第3の実施例よりも大きく寸法設定されている。第4の実施例では、第1のトラック22.1Cの幅が上方から下方へと増加しており、第2のトラック22.2Cの幅が上方から下方へと減少している。
【0029】
図2図4からさらに明らかであるように、図示の実施例では、センサ10が、相並んで配置された2つのコイル12,14を有しており、これによって、センサ10が、両コイル12,14のインダクタンスの測定を介して、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cによる重なり量の関数として角度信号を形成する。
【0030】
同時回転するベル形アーマチュア巻線5を備えて形成されたアウタロータ型のブラシレス直流モータ1のロータの角度位置を表す角度信号を提供する本発明に係る方法の実施の形態は、同時回転するベル形アーマチュア巻線5に被着されるターゲット20,20A,20B,20Cの少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cによる、渦電流センサとして形成されたセンサ10の少なくとも1つのコイル12,14との重なり量の関数として、最大360°までのロータの絶対的な角度位置を一意に表す角度信号を形成する。図示の実施例では、少なくとも1つのコイル12,14のインダクタンスの測定を介して、少なくとも1つの導電性のトラック22,22A,22B,22Cによる重なり量の関数として角度信号が形成される。
【0031】
この方法は、例えば、ソフトウェアまたはハードウェアにおいて実施されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの複合形態、例えば評価・制御ユニット7において実施されていてもよい。この評価・制御ユニット7は、角度信号をブラシレス直流モータ1のステータコイルの整流および/またはブラシレス直流モータ1の出力調整のために使用することができ、かつ/または別の車両システムおよび/または車両機能に出力することができる。
図1
図2
図3
図4