(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨と係合する先端部および少なくとも一部に球面を有する基端部を有する骨係合部材と、前記骨係合部材の前記基端部の位置を基準とする前記骨係合部材の3次元的な揺動を可能とするように前記基端部を保持するヘッド部と、を備えた脊椎固定具に接合される脊椎固定具用アダプタであって、
前記骨係合部材は、前記基端部の基端側に開口された被係合部を備え、
前記ヘッド部は、下端部と上端部との間で前記骨係合部材の前記基端部を収容可能な収容部を画する内壁を有するヘッド部本体と、前記収容部内に挿通され、下端部が前記骨係合部材の前記基端部の球面に対応した形状を有する押さえ部材と、を備え、前記下端部から前記骨係合部材の前記先端部が露出するように前記骨係合部材が前記収容部内に収容されるように構成され、
前記押さえ部材は、前記脊椎固定具用アダプタを挿通可能な挿通孔を有し、前記収容部内において前記ヘッド部本体の前記内壁に接した状態となるように構成され、
前記脊椎固定具用アダプタは、
前記被係合部に係合するよう下方に突出した係合部と、
前記係合部から上方に延出され、前記ヘッド部の前記収容部内において前記係合部が前記骨係合部材の前記被係合部に係合された状態で、前記ヘッド部本体の前記内壁に前記押さえ部材を介して間接的に接することにより、前記脊椎固定具用アダプタと一体となった前記骨係合部材の前記3次元的な揺動を規制する規制部と、を備え、
前記規制部は、前記挿通孔の内壁の少なくとも一部に接することにより、前記骨係合部材の前記3次元的な揺動を規制するように構成される、脊椎固定具用アダプタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリアクシャルタイプの脊椎固定具は、ヘッド部に対して骨係合部材が自由に動くため、骨係合部材を脊椎骨に係合した状態でヘッド部にロッド部材を接続する際の自由度が高く、当該接続作業を容易に行うことができるという利点がある一方、脊椎骨の配列が理想的な形状になるようにロッド部材を変形させておいても、ヘッド部の自由度によりロッド部材による脊椎の矯正力が逃げてしまい、脊椎を十分に矯正できない場合が生じ得る。また、モノアクシャルタイプの脊椎固定具は、上記のような自由度がないため、ヘッド部へのロッド部材の接続作業が難しい場合があるが、ヘッド部の自由度によりロッド部材による脊椎の矯正力が逃げてしまうことがなく、脊椎の矯正を十分に行うことができるという利点がある。このように、脊椎固定具の各タイプは、それぞれメリットおよびデメリットが存在するため、脊椎固定術における施術においてはこれら複数のタイプの脊椎固定具が適宜選定されて用いられる。
【0006】
そのため、脊椎固定術の施術に際しては、これら複数のタイプの骨係合部材を予め個別に用意しておく必要がある。このため、実際に施術に要する骨係合部材の数より多い数の骨係合部材を予め用意することとなり、準備に手間がかかる、在庫管理が煩雑になるなどの問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、複数のタイプの脊椎固定具を予め個別に用意することなく複数のタイプの脊椎固定具として使用することができる脊椎固定システムおよびそれに用いられる脊椎固定具用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る脊椎固定具用アダプタは、骨と係合する先端部および少なくとも一部に球面を有する基端部を有する骨係合部材と、前記骨係合部材の前記基端部の位置を基準とする前記骨係合部材の3次元的な揺動を可能とするように前記基端部を保持するヘッド部と、を備えた脊椎固定具に接合される脊椎固定具用アダプタであって、前記骨係合部材は、前記基端部の基端側に開口された被係合部を備え、前記ヘッド部は、下端部と上端部との間で前記骨係合部材の前記基端部を収容可能な収容部を画する内壁を有し、前記下端部から前記骨係合部材の前記先端部が露出するように前記骨係合部材が前記収容部内に収容されるように構成され、前記脊椎固定具用アダプタは、前記被係合部に係合するよう下方に突出した係合部と、前記係合部から上方に延出され、前記ヘッド部の前記収容部内において前記係合部が前記骨係合部材の前記被係合部に係合された状態で、前記ヘッド部の前記内壁に直接的または間接的に接することにより、前記脊椎固定具用アダプタと一体となった前記骨係合部材の前記3次元的な揺動を規制する規制部と、を備えている。
【0009】
上記構成によれば、脊椎固定具用アダプタを脊椎固定具に取り付けていない場合には、骨係合部材がヘッド部に対して3次元的に揺動可能である。一方、脊椎固定具用アダプタの係合部を骨係合部材の被係合部に係合させることにより脊椎固定具用アダプタが脊椎固定具に固定された状態で骨係合部材が揺動しようとすると、脊椎固定具用アダプタの規制部がヘッド部の内壁に接するため、骨係合部材のヘッド部に対する揺動が規制される。これにより、脊椎固定具用アダプタを脊椎固定具に取り付けるか否かで、骨係合部材のヘッド部に対する揺動態様を変更することができる。したがって、複数のタイプの脊椎固定具を予め個別に用意することなく複数のタイプの脊椎固定具として使用することができる。
【0010】
前記ヘッド部は、前記内壁を有するヘッド部本体と、前記収容部内に挿通され、下端部が前記骨係合部材の前記基端部の球面に対応した形状を有する押さえ部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記脊椎固定具用アダプタを挿通可能な挿通孔を有し、前記収容部内において前記内壁に接した状態となるように構成され、前記規制部が前記挿通孔の内壁に接することにより、前記骨係合部材の前記3次元的な揺動を規制してもよい。押さえ部材が収容部内において内壁に接した状態となり、かつ脊椎固定具用アダプタの規制部が押さえ部材の挿通孔の内壁に接することにより、脊椎固定具用アダプタの規制部は、ヘッド部本体に形成される内壁に間接的に接する。したがって、脊椎固定具用アダプタを押さえ部材の挿通孔に挿通して係合部を骨係合部材と係合させることにより、骨係合部材の3次元的な揺動を確実に規制することができる。
【0011】
前記ヘッド部の内壁は、円筒状に形成され、前記押さえ部材の外側面は、前記ヘッド部の前記内壁に対応する外径を有する円柱面状に形成され、前記規制部の外側面は、前記挿通孔の内径に対応する外径を有する円柱面状に形成されてもよい。これにより、ヘッド部に押さえ部材が密に接するとともに、押さえ部材が脊椎固定具用アダプタに密に接する。したがって、脊椎固定具用アダプタを脊椎固定具に取り付けた際に、骨係合部材を実質的に一軸上に固定することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る脊椎固定システムは、脊椎固定具および脊椎固定具用アダプタを備えた脊椎固定システムであって、前記脊椎固定具は、骨と係合する先端部および少なくとも一部に球面を有する基端部を有する骨係合部材と、前記骨係合部材の前記基端部の位置を基準とする前記骨係合部材の3次元的な揺動を可能とするように前記基端部を保持するヘッド部と、を備え、前記骨係合部材は、前記基端部の基端側に開口された被係合部を備え、前記ヘッド部は、下端部と上端部との間で前記骨係合部材の前記基端部を収容可能な収容部を画する内壁を有し、前記下端部から前記骨係合部材の前記先端部が露出するように前記骨係合部材が前記収容部内に収容されるように構成され、前記脊椎固定具用アダプタは、前記被係合部に係合するよう下方に突出した係合部と、前記係合部から上方に延出され、前記ヘッド部の前記収容部内において前記係合部が前記骨係合部材の前記被係合部に係合された状態で、前記ヘッド部の前記内壁に直接的または間接的に接することにより、前記脊椎固定具用アダプタと一体となった前記骨係合部材の前記3次元的な揺動を規制する規制部と、を備えている。
【0013】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上に説明したように構成され、複数のタイプの脊椎固定具を予め個別に用意することなく複数のタイプの脊椎固定具として使用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。なお、明細書および特許請求の範囲の記載において、「上」方向および「下」方向は人体への施術時における脊椎固定具の向きに基づいて定められる。すなわち、脊椎に近い側が下であり、脊椎から遠い側が上であるように定義されている。
【0017】
まず、本実施の形態における脊椎固定具について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における脊椎固定システムに用いられる脊椎固定具の一例を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示す脊椎固定具の骨係合部材の基端部およびこれに係合される脊椎固定具用アダプタを示す斜視図である。また、
図3は、
図1に示す脊椎固定具および脊椎固定具用アダプタの軸線(長手軸)方向に沿った断面図である。
図1に示すように、脊椎固定具1は、脊椎骨等の骨と係合する骨係合部材2と、骨係合部材2の基端部を保持するヘッド部3とを備えている。
【0018】
骨係合部材2は、骨と係合する先端部2aおよび少なくとも一部に球面を有する基端部2b(
図2および
図3参照)を有している。
図1の例においては、骨係合部材2の先端部2aは、脊椎骨等の骨に螺合するねじ部を有するスクリューシャフトとして構成される。さらに、骨係合部材2は、基端部2bの基端側(上端部)に開口された被係合部2c(
図2および
図3参照)を備えている。被係合部2cは、例えばプラス、マイナス、六角等の多角形、星型等の種々の形状のうちの1つの形状を有する溝または穴を有している。
【0019】
骨係合部材2は、ヘッド部3に対して軸線方向相対回転可能に保持される。ヘッド部3は、骨係合部材2の基端部2bの位置を基準とする骨係合部材2の3次元的な揺動を可能とするように基端部2bを保持する。より具体的には、ヘッド部3は、下端部3aと上端部3bとの間で骨係合部材2の基端部2bを収容可能な収容部3cを画する内壁31を有している。骨係合部材2は、ヘッド部3の下端部3aから骨係合部材2の先端部2aが露出するように収容部3c内に収容される。
【0020】
ヘッド部3は、ほぼ円筒状に形成され、内壁31は、円筒の軸線方向に直交する断面が円状となるように形成されている。収容部3cの下端部(ヘッド部3の下端部3a)には、骨係合部材2の先端部2aが突出する突出孔32が形成されている。ヘッド部3の下端部3aは、骨係合部材2の基端部2bが突出孔32から抜け出ないような形状を有している。
図3においては、このような抜け止め形状がヘッド部3の本体と一体的に形成されているような構成を例示しているが、これに代えて、抜け止め部材をヘッド部3の本体(後述する33)に固定することとしてもよい。また、突出孔32の直径(最小値)は、骨係合部材2の基端部2bが有する球面の直径より小さい。
【0021】
以上のような構成により、ヘッド部3が保持された状態で、被係合部2cに対応する凸形状を有するドライバ(図示せず)を被係合部2cに係合させ、ドライバを軸線回りに回転させることにより、骨係合部材2をヘッド部3に対して相対回転させることができる。これにより、骨係合部材2を所定の椎骨に係合させたり、当該係合を解除させたりすることができる。
【0022】
ヘッド部3は、内壁31を有するヘッド部本体33と、収容部3c内に挿通され、下端部が骨係合部材2の基端部2bの球面に対応した形状を有する押さえ部材34と、を備えている。本実施の形態において、収容部3cは、押さえ部材34の下端部と、ヘッド部本体33の内壁31により画されており、骨係合部材2の基端部2bの球面部分が押さえ部材34の下端部およびヘッド部本体33の内壁31に対して摺動することにより、骨係合部材2が3次元的に揺動する。3次元的な揺動は、ヘッド部3の軸線方向(上下方向、Z軸)に直交する2つの軸(X軸、Y軸)回りの骨係合部材2の揺動を意味する。このように、脊椎固定具1は、ヘッド部3の軸線回り360°何れの方向へも骨係合部材2の軸線がヘッド部3の軸線に対して所定角度(例えば30°)の角度となる位置まで骨係合部材2がヘッド部3に対して揺動可能なポリアクシャルタイプの脊椎固定具である。
【0023】
ヘッド部3(のヘッド部本体33)は、収容部3cから上方に延びた延出部3dを備えている。延出部3dには、円周方向の一部において径方向に開口された一対のスロット35が形成されている。一対のスロット35は、延出部3dの上端部が開口され、下端部が円弧状となるように形成されている。延出部3dは、一対のスロット35により、収容部3cから上方へ延出される、互いに対向する一対の円弧状部36を有するように構成される。
【0024】
一対の円弧状部36の内壁には、セットスクリュー4(後述する
図5参照)を螺合可能なねじ溝37が設けられている。また、押さえ部材34の上端部34aは、ヘッド部3の軸線方向を含む所定の一断面(例えば
図3の断面)がロッド部材5(後述する
図5参照)の外径に対応した径を有する下に凸の円弧形状となるような曲面形状を有している。押さえ部材34は、収容部3c内において上下方向(軸線方向)に摺動可能に構成される。より具体的には、押さえ部材34は、円筒状に形成され、外径がヘッド部本体33の内壁31の内径に対応する大きさを有している。
【0025】
このような構成において、一対のスロット35を介して収容部3c内の押さえ部材34上にロッド部材5を載置した上で、セットスクリュー4をねじ溝37に螺合することにより、セットスクリュー4がロッド部材5を介して押さえ部材34および骨係合部材2の基端部2bを押圧することにより、ロッド部材5および骨係合部材2が固定される。
【0026】
このように、骨係合部材2がヘッド部3に対して3次元的に揺動可能なポリアクシャルタイプの脊椎固定具1であってもロッド部材5をセットスクリュー4を用いて固定した後は、骨係合部材2がヘッド部3に対して揺動できなくなるが、当該ロッド部材5の固定の際に、ヘッド部3が骨係合部材2に対して相対的に揺動し、ヘッド部3を適切な姿勢に保持することが難しい場合がある。このようなヘッド部3の相対的な揺動による影響が大きい場合には、骨係合部材2のヘッド部3に対する揺動を予め規制しておく必要がある。
【0027】
このため、本実施の形態における脊椎固定システムは、当該3次元的な揺動を規制するための脊椎固定具用アダプタ6を備えている。脊椎固定具用アダプタ6は、骨係合部材2の被係合部2cに係合するよう下方に突出した係合部6aと、係合部6aから上方に延出され、ヘッド部3の収容部3c内において係合部6aが骨係合部材2の被係合部2cに係合された状態で、ヘッド部3の内壁31に直接的または間接的に接することにより、脊椎固定具用アダプタ6と一体となった骨係合部材2の3次元的な揺動を規制する規制部6bと、を備えている。
図2に示す例において、骨係合部材2の基端部2bに設けられた被係合部2cは、星型(hexalobular)形状の穴を有している。これに合わせて、脊椎固定具用アダプタ6の係合部6aは、星型形状の凸状体として形成されている。規制部6bは、係合部6aの上端部から係合部6aの軸線方向に対して直交する方向(水平方向)に延出されたほぼ円柱状に形成されている。
【0028】
図3に示すように、脊椎固定具用アダプタ6は、骨係合部材2の被係合部2cに係合する際、ヘッド部3の上端部3bから収容部3c内に挿通される。
図4は、
図3において脊椎固定具用アダプタが骨係合部材の被係合部に係合された状態を示す図である。本実施の形態において、押さえ部材34は、脊椎固定具用アダプタ6を挿通可能な挿通孔38を有している。挿通孔38は断面が円形であり、その直径が脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bの外径に対応する大きさを有している。これにより、規制部6bは、押さえ部材34の挿通孔38内を上下方向に摺動可能となる。
【0029】
脊椎固定具用アダプタ6を押さえ部材34の挿通孔38内に挿通させつつ、係合部6aを骨係合部材2の基端部2bの被係合部2cに係合させると、規制部6bの外側面が押さえ部材34の挿通孔38を画する内壁に接した状態となる。上述したように、押さえ部材34は、外径がヘッド部本体33の内壁31の内径に対応する大きさを有している。したがって、骨係合部材2と一体となった脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bは、全周が押さえ部材34を介してヘッド部本体33の内壁31に接した状態となる。したがって、脊椎固定具用アダプタ6を脊椎固定具1に取り付けた際に、骨係合部材2を実質的に一軸上に固定するモノアクシャルタイプの脊椎固定具として機能させることができる。本実施の形態において、脊椎固定具用アダプタ6の装着時において、骨係合部材2の軸線は、ヘッド部3の軸線上から実質的にずれない。
【0030】
なお、骨係合部材2の軸線がヘッド部3の軸線上から実質的にずれないとは、骨係合部材2の軸線がヘッド部3の軸線に対して許容される誤差の角度範囲(例えば5°未満)を超えた角度に位置しないことを意味する。言い換えると、ヘッド部3と骨係合部材2とが脊椎固定具用アダプタ6によって完全に一体化されなくてもよい。
【0031】
以上のように、上記構成によれば、脊椎固定具用アダプタ6を脊椎固定具1に取り付けていない場合には、骨係合部材2がヘッド部3に対して3次元的に揺動可能である。一方、脊椎固定具用アダプタ6の係合部6aを骨係合部材2の被係合部2cに係合させることにより脊椎固定具用アダプタ6が脊椎固定具1に固定された状態で骨係合部材2が揺動しようとすると、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bがヘッド部3の内壁31に接するため、骨係合部材2のヘッド部3に対する揺動が規制される。これにより、脊椎固定具用アダプタ6を脊椎固定具1に取り付けるか否かで、骨係合部材2のヘッド部3に対する揺動態様を変更することができる。したがって、複数のタイプの脊椎固定具を予め個別に用意することなく複数のタイプの脊椎固定具として使用することができる。
【0032】
また、本実施の形態においては、既存のポリアクシャルタイプの脊椎固定具1に脊椎固定具用アダプタ6を取り付けるために、脊椎固定具1を加工する必要がない。したがって、既存の脊椎固定具1に脊椎固定具用アダプタ6を用いて簡単に複数の揺動態様を実現することができる。
【0033】
本実施の形態においては、押さえ部材34の外側面がヘッド部本体33において円筒状に形成される内壁31に対応する外径を有する円柱面状に形成され、かつ、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bの外側面が押さえ部材34の挿通孔38の内径に対応する外径を有する円柱面状に形成されている。これにより、ヘッド部本体33に押さえ部材が密に接するとともに、押さえ部材34が脊椎固定具用アダプタ6に密に接する。したがって、脊椎固定具用アダプタ6を脊椎固定具1に取り付けた際に、骨係合部材2の3次元的な揺動を安定的に規制することができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、押さえ部材34が収容部3c内において内壁31に接した状態となり、かつ脊椎固定具用アダプタ6が押さえ部材34の挿通孔38内において押さえ部材34に対して上下方向に摺動可能に構成されることにより、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bの外側面は、ヘッド部本体33に形成される内壁31に間接的に接する。したがって、脊椎固定具用アダプタ6を押さえ部材34の挿通孔38に挿通して係合部6aを骨係合部材2と係合させることにより、骨係合部材2の3次元的な揺動を確実に規制することができる。
【0035】
本実施の形態において、骨係合部材2の基端部2bにおける被係合部2cは、軸線方向に直交する平面に平行な端面2dを有している。また、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bの下面(係合部6aとの接続部)6cは、骨係合部材2の端面2dに対向する平面形状を有する。これにより、脊椎固定具用アダプタ6を骨係合部材2に安定的に係合させることができる。
【0036】
図5は、
図4においてヘッド部に脊椎固定具用アダプタが装着された状態でロッド部材が固定される様子を示す図である。
図5に示すように、脊椎固定具1に脊椎固定具用アダプタ6が装着された状態(モノアクシャルタイプとして機能する状態)においても、脊椎固定具用アダプタ6が装着されていない場合(ポリアクシャルタイプとして機能する場合)と同様に、押さえ部材34および/または脊椎固定具用アダプタ6上に、一対のスロット35を介してロッド部材5を載置した上で、セットスクリュー4をねじ溝37に螺合することにより、セットスクリュー4がロッド部材5を介して脊椎固定具用アダプタ6、押さえ部材34および骨係合部材2の基端部2bを押圧することにより、ロッド部材5および骨係合部材2が固定される。
【0037】
本実施の形態において、脊椎固定具用アダプタ6の(規制部6bの)上端部6dは、ヘッド部3の軸線方向を含む所定の一断面(例えば
図3の断面)がロッド部材5の外径に対応した径を有する下に凸の円弧形状となるような曲面形状を有している。さらに、脊椎固定具用アダプタ6の上下方向長さは、当該脊椎固定具用アダプタ6の上面が係合部6aが骨係合部材2の被係合部2cに係合された状態で押さえ部材34の上面と同じ面(曲面)となるように構成されている。これにより、ロッド部材5を押さえ部材34の上端部34aおよび脊椎固定具用アダプタ6の上端部6dでそれぞれ受けることができ、ロッド部材5を安定的に保持することができる。
【0038】
骨係合部材2は、軸線方向に沿った第1ガイド孔2eを有している。また、脊椎固定具用アダプタ6は、第1ガイド孔2eに対応する位置に係合部6aが延びる方向に形成された第2ガイド孔6eを有している。
【0039】
脊椎固定具1の骨係合部材2を脊椎骨に固定する手順は、以下のように行われる。まず、脊椎固定具1を係合する脊椎骨の所定箇所の上方が皮切される。皮切される範囲は、脊椎固定具1を平面視(軸線方向視)した際の投影範囲、すなわち、ヘッド部3および/またはヘッド部3を保持するためのエクステンダの最大径とほぼ同じ(少し大きい程度)が望ましい。その後、露出した脊椎骨に骨係合部材2の先端部2aのねじ径に対応するねじ溝がタップ等と呼称されるねじ溝形成器具を用いて形成される。その後、皮切箇所を通じて、形成された椎骨のねじ溝に脊椎固定具1が挿通される。この際、皮切箇所から椎骨のねじ溝に第1ガイド孔2eの内径より小さい外径を有するガイドワイヤが挿入され、挿入されたガイドワイヤが骨係合部材2の第1ガイド孔2e内を挿通するように脊椎固定具1がガイドワイヤによってガイドされることによって脊椎固定具1が皮切箇所から被施術者の体内へ導入される。その後、体内に導入された脊椎固定具1に対して骨係合部材2の被係合部2cにドライバを係合させてドライバを介して骨係合部材2を軸線回りに回転させることにより、骨係合部材2を脊椎骨のねじ溝に係合させる。
【0040】
さらに、体内に導入された脊椎固定具1をモノアクシャルタイプとして機能させるためには、再びガイドワイヤが第1ガイド孔2eに挿通され、その状態で脊椎固定具用アダプタ6の第2ガイド孔6e内にガイドワイヤが挿通するように脊椎固定具用アダプタ6がヘッド部3の収容部3c内に導入され、骨係合部材2の被係合部2cに係合部6aが係合される。このように、脊椎固定具用アダプタ6にもガイドワイヤを挿通可能な第2ガイド孔6eが設けられることにより、被施術者を必要以上に傷付けることなく揺動態様の変更を行うことができる。
【0041】
このため、第2ガイド孔6eの形状は、ガイドワイヤが円滑に通過可能な大きさである限り円形状でも多角形状でもよい。
【0042】
なお、これに代えて、第2ガイド孔6eがドライバに軸線回り回転不能に係合される形状を有していてもよい。この場合、体外において先に骨係合部材2の被係合部2cに脊椎固定具用アダプタ6の係合部6aが軸線回り回転不能に係合されてから、皮切箇所を通じて形成された椎骨のねじ溝に脊椎固定具1が挿通されてもよい。体内に導入された脊椎固定具1および脊椎固定具用アダプタ6に対して脊椎固定具用アダプタ6の第2ガイド孔6eにドライバを係合させてドライバおよび脊椎固定具用アダプタ6を介して骨係合部材2を軸線回りに回転させることにより、骨係合部材2を脊椎骨のねじ溝に係合させることができる。
【0043】
また、体外において先に骨係合部材2の被係合部2cに脊椎固定具用アダプタ6の係合部6aを係合することにより、脊椎固定具用アダプタ6とヘッド部3とが軸線回り相対回転不能に圧入される場合には、第2ガイド孔6eはなくてもよい。この場合、体内に導入された脊椎固定具1のヘッド部3に所定の治具を軸線回り相対回転不能に取り付けて、当該治具を軸線回りに回転させることにより、ヘッド部3、脊椎固定具用アダプタ6を介して骨係合部材2を軸線回りに回転させて骨係合部材2を脊椎骨のねじ溝に係合させてもよい。また、脊椎固定具用アダプタ6とヘッド部3との圧入が十分でない場合には、所定の治具の構造を、ヘッド部3への取り付け時において押さえ部材34を骨係合部材2の基端部2bに押し付けることにより、ヘッド部3と骨係合部材2とが軸線回り相対回転不能とするような構造としてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0045】
例えば、上記実施の形態においては、ヘッド部3に一対のタブ部が延設されていない脊椎固定具1に脊椎固定具用アダプタ6を適用する例について説明したが、ヘッド部3に一対のタブ部が延設された脊椎固定具にも脊椎固定具用アダプタ6を適用してもよい。
【0046】
図6は、本発明の一実施の形態における脊椎固定システムに用いられる脊椎固定具の他の例を示す斜視図である。
図6に示す例において
図1に示す例と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図6に示す脊椎固定具1Bが
図1に示す脊椎固定具1と異なる点は、脊椎固定具1Bがヘッド部3の延出部3dの軸線方向先端部から軸線方向へ延びる一対のタブ部39を有することである。一対のタブ部39は、一対の円弧状部36のそれぞれの上端部から上方へ延出されている。一対のタブ部39は、所定の内径を有する。
【0047】
一対のタブ部39は、骨係合部材2が被施術者の骨に係合された状態で被施術者の皮膚(皮切箇所の開口部)より外方に延出する長さを有し、施術時における後述するロッド部材5またはセットスクリュー4等の通路として構成される。一対のタブ部39は、一対の円弧状部36との接続箇所39aの厚みが他より薄く形成されており、当該接続箇所39aより折り曲げることにより一対のタブ部39を延出部3dから切除することができる。なお、これに代えて、一対のタブ部39は、外表面に所定の延長部材を取り付け可能に構成され、延長部材は、延長部材が一対のタブ部39に取り付けられ、かつ、骨係合部材2が被施術者の骨に係合された状態で、被施術者の皮膚より外方に延出する長さを有し、施術時におけるロッド部材5またはセットスクリュー4等の通路として構成されてもよい。この場合、一対のタブ部39は、一対のタブ部39が単独で施術時におけるロッド部材5またはセットスクリュー4等の通路を形成する場合に比べて短い長さを有していてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態において、脊椎固定具用アダプタ6は、ヘッド部3(ヘッド部本体33)の内壁31に押さえ部材34を介して間接的に接するように構成されているが、これに限られず、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bがヘッド部3の内壁31に直接的に接してもよい。例えば脊椎固定具用アダプタ6は、押さえ部材34がない構成にも適用可能である。
【0049】
また、脊椎固定具は、上記実施の形態で説明した脊椎固定具1,1Bに限られず、種々の態様をとり得る。例えば、上記実施の形態において、ヘッド部3の内壁31に形成されたねじ溝37にセットスクリュー4が螺合される構成としたが、セットスクリュー4がロッキングキャップ等の仲介部材を介してヘッド部3の延出部3dに取り付けられることとしてもよい。この場合、ヘッド部3の延出部3dの内壁31には、仲介部材との係合部(凹部または凸部等)が設けられ、仲介部材は、筒状の形状を有し、外側に当該内壁31の係合部に係合するような形状を有している。仲介部材の内壁には、ねじ溝が形成され、セットスクリュー4が螺合可能に構成される。
【0050】
また、脊椎固定具のヘッド部3の形状は、上記実施の形態で説明したような円筒状に限られない。例えば、ヘッド部3は、断面多角形の角筒状でもよいし、断面外周が曲線部および直線部を含む形状(角筒の角が丸められた形状等)でもよい。ヘッド部3の上端部3bに保持部材係合用の溝等の被係合部が形成されていてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態において、脊椎固定具用アダプタ6の規制部6bは、押さえ部材34を介してヘッド部3の内壁31に軸線回りの全周にわたって接しているが軸線回り方向に接していない箇所(隙間のある箇所)が存在してもよい。すなわち、規制部6bは、脊椎固定具用アダプタ6の係合部6aが骨係合部材2の被係合部2cに係合した状態で、骨係合部材2が少なくとも所定の一方向に揺動しようとした場合に、ヘッド部3の内壁31の少なくとも一箇所に直接的または間接的に接すればよい。
【0052】
図7Aおよび
図7Bは、本発明の一実施の形態における脊椎固定システムに用いられる脊椎固定具および脊椎固定具用アダプタの他の一例を示す断面図である。各図において、左上の図は、軸線に直交するZ軸方向断面図(X−Y平面断面図)を示し、右の図は、Z−X平面断面図を示し、下の図は、Y−Z平面断面図を示す。なお、
図7Aおよび
図7Bの例では脊椎固定具用アダプタがヘッド部3の内壁31に直接的に接する態様について例示しているが、これらの例においても押さえ部材34を介して間接的に接する態様としてもよい。
【0053】
図7Aの例における脊椎固定具1Bは、ヘッド部3の内壁31Bが軸線に直交する断面が四角形となるような4つの平面を有している。脊椎固定具用アダプタ6Bの規制部6bは、当該内壁31の4つの平面のうちの何れかの対向する2つの平面(ここではX軸方向に対向する2つの平面)に常に接した状態となるような形状を有している。これにより、脊椎固定具1Bは、骨係合部材2の被係合部2cに脊椎固定具用アダプタ6Bの係合部6aが係合した状態で、本来の3次元的な揺動のうち、Y−Z平面内の揺動は許容されるが他の方向への揺動は規制される。すなわち、脊椎固定具用アダプタ6Bが取り付けられた脊椎固定具1Bは、骨係合部材2が所定の一平面内で揺動するユニプラナータイプの脊椎固定具として機能する。
【0054】
また、
図7Bの例における脊椎固定具1Cは、構造的には上記実施の形態における脊椎固定具1と変わらず、円筒状の内壁31を有している。脊椎固定具用アダプタ6Cの規制部6bは、脊椎固定具用アダプタ6Cの軸線がヘッド部3の軸線に一致している状態で外側面と内壁31との間に所定の間隙を有するように構成されている。
図7Bの例では、規制部6bの外径がヘッド部3の内壁31の内径より小さい。これにより、脊椎固定具1Cは、骨係合部材2の被係合部2cに脊椎固定具用アダプタ6Cの係合部6aが係合した状態でも3次元的な揺動が可能である。しかしながら、脊椎固定具用アダプタ6Cによってその揺動の範囲が狭くなるように規制される。例えば、骨係合部材2の軸線とヘッド部3の軸線とが一致する状態を0°とすると、脊椎固定具用アダプタ6Cが取り付けられていない場合には、骨係合部材2は、約30°程度の位置まで揺動するが、脊椎固定具用アダプタ6Cが取り付けられた場合には、骨係合部材2は、約10°程度の位置までしか揺動できない。このように、脊椎固定具用アダプタ6Cによって揺動範囲が小さくなるように規制されてもよい。