【文献】
Datta-Mannan et al.,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2013年,Vol.344, No.3,p.616-623
【文献】
Yaden et al.,The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2014年,Vol.349, No.2,p.355-371
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筋力低下および/または筋変性と関連する疾患または障害の処置を必要とする対象におけるその処置における使用のための組成物であって、前記組成物は、有効量のフォリスタチン融合タンパク質を含み、前記フォリスタチン融合タンパク質は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含み、前記第1のアミノ酸配列は、配列番号15または16に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、前記第1のアミノ酸配列は、配列番号4のアミノ酸291〜302のいずれかに対応するアミノ酸で終わり、前記第2のアミノ酸配列は、免疫グロブリンのG(IgG)の定常ドメインを含む、使用のための組成物。
前記フォリスタチン融合タンパク質が、実質的な抗体依存性細胞介在性傷害作用(ADCC)を媒介しない、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記IgGの定常ドメインが、実質的な抗体依存性細胞介在性傷害作用(ADCC)および/または実質的な補体依存性細胞傷害作用(CDC)を媒介しないように選択されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
処置が、血清濾胞刺激ホルモン(FSH)レベル、肝臓サイズ、ヘマトクリットおよび網状赤血球レベルからなる群から選択される尺度に対して患者における実質的な効果を生じない、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
リンカーが、前記第1のアミノ酸配列のC末端部分を、前記第2のアミノ酸配列のN末端部分に直接連結している、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記第1のアミノ酸配列が、配列番号15または16に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、リンカーが、前記第1のアミノ酸配列のC末端部分を、前記第2のアミノ酸配列のN末端部分に直接連結しており、前記リンカーが、1〜10アミノ酸の長さであり、前記IgGの定常ドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含むIgG2の定常ドメインである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記疾患または障害が筋萎縮を伴い、前記筋萎縮が、サルコペニア、悪液質、がん、糖尿病、慢性閉塞性肺障害、腎不全、心不全、外傷、術後または不使用による萎縮、または長期にわたる換気支援、またはAIDS消耗症候群によって生じている、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記疾患または障害が、筋ジストロフィーであり、前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、エメリー−ドレイフス型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、または先天性筋ジストロフィーである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記疾患または障害が神経筋障害であり、前記神経筋障害が、ALS、シャルコー−マリー−トゥース病、ランバート−イートン筋無力症候群、代謝性ジストロフィー、脊髄性筋委縮症、皮膚筋炎、遠位型筋ジストロフィー、エメリー−ドレイフス型筋ジストロフィー、内分泌性ミオパシー、フリードライヒ運動失調、遺伝性ミオパシー、ミトコンドリアミオパシー、重症筋無力症または多発性筋炎である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
前記フォリスタチン融合タンパク質が配列番号43のアミノ酸配列を含むが、配列番号43の最後の(カルボキシ末端の)リシン(K)は必要に応じて非存在である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
部分的に、本開示は、投与される組織の近傍では、フォリスタチンリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンB、GDF8、およびGDF11)を阻害するように設計されているが、患者に対する全身効果は、ほとんど及ぼさないか、または全く及ぼさない、フォリスタチンポリペプチドを提供する。
【0005】
本明細書で記載されるフォリスタチンポリペプチドは、配列番号1〜4、7〜16および26〜43のうちのいずれかに、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。任意選択で、フォリスタチンポリペプチドは、二量体化するか、またはより高次の多量体を形成するように設計する。これは、フォリスタチンポリペプチドのフォリスタチン配列を、二量体化または多量体化を付与するドメインに融合させることにより達成することができる。このようなドメインの例は、例えば、免疫グロブリンのFc部分を含む、免疫グロブリンの定常ドメインである。任意選択で、フォリスタチン部分を、異種部分に直接接続するか、またはリンカーなどの介在配列を利用することもできる。リンカーの例は、配列TGGGである。任意選択で、フォリスタチンポリペプチドは、ヒトフォリスタチン288がヘパリン結合活性を有する様式で、ヘパリン結合活性を呈示し得る。代替的に、フォリスタチンは、ヒトフォリスタチン315の様式で、ヘパリン結合性ドメインがマスキングされている。部分的に、本開示は、治療的に最適化されたフォリスタチンポリペプチドであって、ADCC活性またはCDC活性が天然のヒトIgG1と比べて低減されたヒトIgGに由来する免疫グロブリン定常ドメインの部分を含むフォリスタチンポリペプチドを提供する。例は、IgG2、IgG3、IgG4、ハイブリッド体であるIgG2/4、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の改変体を含む。部分的に、本開示は、配列番号15または16のアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる、フォリスタチンの最適な活性形態であって、特に、フォリスタチン−Fcタンパク質など、二量体の融合タンパク質の文脈で、天然のFST(288)形態およびFST(315)形態と比べて優れたタンパク質の品質および活性をもたらす活性形態を提供する。
【0006】
ある特定の態様では、本開示は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、第1のアミノ酸配列が、配列番号15および16からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、第2のアミノ酸配列が、免疫グロブリンの定常ドメインを含む、ポリペプチドを提供する。任意選択で、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間に、リンカーポリペプチドが配置されている。任意選択で、リンカーポリペプチドは、配列TGGGを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。任意選択で、第2のアミノ酸配列は、IgG免疫グロブリンの定常ドメインを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。任意選択で、第2のアミノ酸配列は、ADCC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。任意選択で、第2のアミノ酸配列は、CDC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。任意選択で、第2のアミノ酸配列は、群:IgG1、IgG2、およびIgG4から選択されるIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。任意選択で、第2のアミノ酸配列は、その例が、IgG2、IgG4、およびIgG2/4ハイブリッド体、またはIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のいずれかの種々の変異体を含む、ヒトIgG1と比べて、ADCC、CDC、またはこれらの両方が低減された免疫グロブリンであり得る、IgG免疫グロブリンなど、免疫グロブリンのFc部分を含むか、またはこれからなる。ある特定の態様では、本開示は、配列番号38〜43の群から選択される配列に、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる、フォリスタチンポリペプチドを提供する。ある特定の態様では、本開示は、配列番号26〜28および32〜34の群から選択される配列に、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる、フォリスタチンポリペプチドを提供する。ある特定の態様では、本開示は、配列番号29〜31および35〜37の群から選択される配列に、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる、フォリスタチンポリペプチドを提供する。望ましいフォリスタチンポリペプチドは、ミオスタチン、GDF−11、アクチビンA、およびアクチビンBからなる群から選択される1つまたは複数のリガンドに、1nM、100pM、50pM、または10pM未満のKDで結合し得る。ある特定の態様では、上記で言及されたポリペプチドのいずれかは、ヘテロ二量体もしくはホモ二量体を含む二量体、またはより高次の多量体であり得る。上記で言及されたポリペプチドのいずれも、医薬調製物に組み込むことができる。
【0007】
ある特定の態様では、本開示は、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドのいずれかをコードする核酸と、このような核酸を含む細胞であって、フォリスタチンポリペプチドを生成するのに使用し得る細胞とを提供する。
【0008】
ある特定の態様では、本開示は、フォリスタチンポリペプチドをこのような組織に直接投与することにより、組織または臓器を処置するための方法を提供する。例えば、本開示は、患者における筋サイズまたは筋強度を増大させる方法であって、フォリスタチンポリペプチドの有効量を、それを必要とする患者の標的とされる筋肉への筋内投与経路により投与する工程を含み、増大した筋サイズまたは筋強度が、標的とされる筋肉内で生じ、フォリスタチンポリペプチドが、筋サイズまたは筋強度に対する実質的な全身効果を及ぼさない、方法を提供する。標的とされる筋肉は、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、および顔面上腕肩甲型筋ジストロフィーなど)、炎症性筋障害(封入体筋炎など)、筋傷害または筋外傷、筋不使用(長期にわたる仰臥または四肢固定の後で生じ得る)、および老化、がん、または種々の種類の慢性疾患の結果としての筋萎縮または筋力低下を含む、様々な筋障害における場合のように、損傷している場合もあり、衰弱している場合もあり、欠損している場合もある。方法はまた、健常であるが、標的とされる筋肉の筋サイズまたは筋強度の増大が所望される筋肉にも適用することができる。加えて、フォリスタチンポリペプチドの筋肉への投与は、体脂肪の全般的な減少を引き起こし、これにより、肥満または体脂肪の過剰と関連する他の障害を処置するために有用である得、任意選択で、フォリスタチンは、脂肪組織に直接投与することができる。フォリスタチンポリペプチドは、1つだけの標的とされる筋肉に投与することもでき、1つを超える標的とされる筋肉に投与することもできる。方法およびフォリスタチンポリペプチドを使用して、標的とされていない筋肉または他の臓器など、他の組織に対する実質的な効果を伴わずに、標的とされる組織、例えば、筋肉に対する効果を達成することができる。結果として、フォリスタチンの全身効果は、観察されない場合がある。例えば、標的とされる筋肉に対して対側の筋肉が、サイズまたは強度において実質的に増大しない場合もあり、患者において、血清FSHレベル、肝臓サイズ、ヘマトクリット、ヘモグロビン、および網状赤血球レベルからなる群から選択される尺度に対する実質的な効果が見られない場合もある。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
配列番号43のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目2)
配列番号43からなるアミノ酸配列を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)
配列番号43の最後の(カルボキシ末端の)リシン(K)が、非存在である、項目1または2に記載のポリペプチド。
(項目4)
配列番号42のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目5)
配列番号42からなるアミノ酸配列を含む、項目4に記載のポリペプチド。
(項目6)
配列番号42の最後の(カルボキシ末端の)リシン(K)が、非存在である、項目4または5に記載のポリペプチド。
(項目7)
項目1から6のいずれかに記載の2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
(項目8)
項目1から6のいずれかに記載のポリペプチドを含む医薬製剤。
(項目9)
項目7に記載のホモ二量体を含む医薬製剤。
(項目10)
項目1から6のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸。
(項目11)
項目10に記載の核酸を含む細胞。
(項目12)
筋障害に罹患した筋肉を処置するための方法であって、前記筋肉に、項目1から6のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは項目7に記載のホモ二量体を投与する工程を含む方法。
(項目13)
前記筋障害が、筋ジストロフィーである、項目12に記載の方法。
(項目14)
筋障害に罹患した筋肉を処置するための方法であって、前記筋肉に、項目8または9に記載の医薬調製物を投与する工程を含む方法。
(項目15)
前記筋障害が、筋ジストロフィーである、項目14に記載の方法。
(項目16)
第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記第1のアミノ酸配列が、配列番号15および16からなる群から選択されるアミノ酸配列からなり、前記第2のアミノ酸配列が、免疫グロブリンの定常ドメインを含む、ポリペプチド。
(項目17)
リンカーポリペプチドが、前記第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間に配置されている、項目16に記載のポリペプチド。
(項目18)
前記リンカーポリペプチドが、配列TGGGを含む、項目17に記載のポリペプチド。
(項目19)
前記第2のアミノ酸配列が、IgG免疫グロブリンの定常ドメインを含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目20)
前記第2のアミノ酸配列が、ADCC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目21)
前記第2のアミノ酸配列が、CDC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。(項目22)
前記第2のアミノ酸配列が、群:IgG1、IgG2、およびIgG4から選択されるIgG免疫グロブリンの定常ドメインを含む、項目16から21のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目23)
前記第2のアミノ酸配列が、免疫グロブリンのFc部分を含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目24)
前記第2のアミノ酸配列が、IgG免疫グロブリンのFc部分を含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目25)
前記第2のアミノ酸配列が、ADCC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンのFc部分を含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目26)
前記第2のアミノ酸配列が、CDC活性がヒトIgG1と比べて低減されたIgG免疫グロブリンのFc部分を含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目27)
前記第2のアミノ酸配列が、群:IgG1、IgG2、IgG4、およびIgG2/4ハイブリッド体から選択されるIgG免疫グロブリンのFc部分を含む、項目16から18のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目28)
配列番号38〜43の群から選択される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目29)
配列番号26〜28および32〜34の群から選択される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目30)
配列番号29〜31および35〜37の群から選択される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目31)
項目16から30のいずれかに記載の2つのポリペプチドを含む二量体。
(項目32)
項目16から30のいずれかに記載の2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
(項目33)
項目16から30のいずれかに記載の二量体を含む医薬調製物。
(項目34)
項目16から30のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸。
(項目35)
項目34に記載の核酸を含む細胞。
(項目36)
患者における筋サイズまたは筋強度を増大させる方法であって、フォリスタチンポリペプチドの有効量を、それを必要とする患者の標的とされる筋肉への筋内投与経路により投与する工程を含み、ここで、増大した筋サイズまたは筋強度が、前記標的とされる筋肉内で生じ、前記フォリスタチンポリペプチドが、筋サイズまたは筋強度に対する実質的な全身効果を及ぼさない、方法。
(項目37)
前記標的とされる筋肉が、損傷しているか、衰弱しているか、または欠損している、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記標的とされる筋肉は健常であるが、前記標的とされる筋肉の筋サイズまたは筋強度の増大が所望される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記フォリスタチンポリペプチドを、1つだけの標的とされる筋肉に投与する、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記フォリスタチンポリペプチドを、1つを超える標的とされる筋肉に投与する、項目36から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
標的とされる筋肉に対して対側の筋肉が、サイズまたは強度において実質的に増大しない、項目36から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記フォリスタチンポリペプチドが、ミオスタチン、GDF−11、アクチビンA、およびアクチビンBからなる群から選択される1つまたは複数のリガンドに、1nM、100pM、50pM、または10pM未満のKDで結合する、項目36から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記フォリスタチンポリペプチドが、ミオスタチンに、1nM、100pM、50pM、または10pM未満のKDで結合する、項目36から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記フォリスタチンポリペプチドが、アクチビンAに、1nM、100pM、50pM、または10pM未満のKDで結合する、項目36から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記フォリスタチンポリペプチドが、さらにアクチビンAに、1nM、100pM、50pM、または10pM未満のKDで結合する、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記フォリスタチンポリペプチドが、マスキングされていないヘパリン結合性ドメインを含む、項目36から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記ヘパリン結合性ドメインが、配列番号5の内因性フォリスタチンヘパリン結合性配列を含む、項目36から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記ヘパリン結合性ドメインが、異種ヘパリン結合性配列を含む、項目36から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記フォリスタチンポリペプチドが、融合タンパク質である、項目36から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記フォリスタチンポリペプチドが、マスキングされていないヘパリン結合性ドメインを含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記フォリスタチンポリペプチドが、二量体を形成する、項目49または50に記載の方法。
(項目52)
前記フォリスタチンポリペプチドが、IgGの定常ドメインを含む、項目49から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記フォリスタチンポリペプチドが、IgGのFc部分を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG4、およびIgG2/4ハイブリッド体からなる群から選択される、項目52または53に記載の方法。
(項目55)
前記フォリスタチンポリペプチドが、実質的な抗体依存性細胞介在性傷害作用(ADCC)を媒介しない、項目36から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記フォリスタチンポリペプチドが、実質的な補体依存性細胞傷害作用(CDC)を媒介しない、項目36から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記フォリスタチンポリペプチドが、配列番号1〜4、7〜16および26〜43の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、項目36に記載の方法。
(項目58)
前記フォリスタチンポリペプチドが、配列番号15または16と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列からなるフォリスタチンに由来する第1のアミノ酸配列と;フォリスタチンに対して異種であり、IgGの定常ドメインを含む第2のアミノ酸配列とを含み、前記IgGの前記定常ドメインは、実質的なADCCおよび/または実質的なCDCを媒介しないように選択される、項目36に記載の方法。
(項目59)
前記第1のアミノ酸配列が、前記フォリスタチンポリペプチドの唯一のアミノ酸配列であって、配列番号4のヒトフォリスタチン配列内に固有に見出されるアミノ酸配列である、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記IgGの前記定常ドメインが、実質的なADCCおよび実質的なCDCを媒介しないように選択される、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記第2のアミノ酸配列が、IgGのFc部分を含む、項目58に記載の方法。
(項目62)
IgGの前記Fc部分が、IgG1、IgG2、IgG4、IgG2/4ハイブリッド体からなる群から選択される、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記フォリスタチンポリペプチドが、二量体を形成する、項目58から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記フォリスタチンポリペプチドが、ホモ二量体を形成する、項目63に記載の方法。(項目65)
前記患者において、血清FSHレベル、肝臓サイズ、ヘマトクリット、および網状赤血球レベルからなる群から選択される尺度に対して実質的な効果を引き起こさない、項目36から64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
配列番号15または16と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列からなるフォリスタチンに由来する第1のアミノ酸配列と;フォリスタチンに対して異種であり、IgGの定常ドメインを含む第2のアミノ酸配列とを含む融合タンパク質であって、前記IgGの前記定常ドメインが、実質的なADCCまたは実質的なCDCを媒介しないように選択される、融合タンパク質。
(項目67)
前記第1のアミノ酸配列が、前記フォリスタチンポリペプチドの唯一のアミノ酸配列であって、配列番号4のヒトフォリスタチン配列内に固有に見出されるアミノ酸配列である、項目66に記載の融合タンパク質。
(項目68)
前記IgGの前記定常ドメインが、ADCCおよびCDCを媒介しないように選択される、項目66に記載の融合タンパク質。
(項目69)
前記第2のアミノ酸配列が、IgGのFc部分を含む、項目66に記載の融合タンパク質。
(項目70)
IgGの前記Fc部分が、IgG1、IgG2、IgG4、IgG2/4ハイブリッド体からなる群から選択される、項目69に記載の融合タンパク質。
(項目71)
前記フォリスタチンポリペプチドが、二量体を形成している、項目66から70のいずれかに記載の融合タンパク質。
(項目72)
前記フォリスタチンポリペプチドが、ホモ二量体を形成している、項目66から70のいずれかに記載の融合タンパク質。
(項目73)
項目66から72のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む医薬調製物。
(項目74)
実質的に発熱物質非含有である、項目73に記載の医薬調製物。
(項目75)
項目66から72のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
(項目76)
項目75に記載の核酸を含む細胞。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.概観
ある特定の態様では、本開示は、フォリスタチンポリペプチドに関する。本明細書で使用される場合、用語「フォリスタチン」は、任意の種に由来するフォリスタチン(FST)タンパク質およびフォリスタチン関連タンパク質のファミリーを指す。フォリスタチンとは、高等動物のほぼ全ての組織内で発現する自己分泌性糖タンパク質である。フォリスタチンは当初、濾胞液から単離され、下垂体前葉からの濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を阻害するタンパク質画分として同定されたため、FSH抑制タンパク質(FSP)と命名された。その後、その主要な機能は、例えば、下垂体前葉内のFSHの分泌を増強する傍分泌ホルモンであるアクチビンを含む、TGF−βスーパーファミリーのメンバーの結合および中和であることが決定された。
【0019】
用語「フォリスタチンポリペプチド」は、フォリスタチンファミリーの任意の自然発生のポリペプチドのほか、例えば、リガンドへの結合(例えば、ミオスタチン、GDF−11、アクチビンA、アクチビンB)またはヘパリンへの結合を含む、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物、およびペプチド模倣物形態を含む)を含むポリペプチドを指すのに使用される。例えば、フォリスタチンポリペプチドは、任意の公知のフォリスタチンの配列に由来するアミノ酸配列であって、フォリスタチンポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一である配列を有し、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%、99%、またはこれを超える同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。用語「フォリスタチンポリペプチド」は、上記で言及されたポリペプチドのいずれかを、異種(非フォリスタチン)部分と共に含む融合タンパク質を指す場合がある。アミノ酸配列は、配列番号3により表されるヒトフォリスタチンの長鎖(315アミノ酸)形態内に固有に見出されない場合、フォリスタチンに対して異種であると理解される。本明細書では、異種部分の多くの例が提供され、このような異種部分は、融合タンパク質のフォリスタチンポリペプチド部分に、アミノ酸配列上で媒介なしに隣接する場合もあり、リンカーまたは他の配列などの介在アミノ酸配列により隔てられる場合もある。
【0020】
フォリスタチンは、代替的なmRNAスプライシングおよびタンパク質の可変的なグリコシル化に基づき、31〜49kDaの分子量範囲の単鎖ポリペプチドである。代替的にスプライシングされたmRNAは、315アミノ酸(すなわち、FST315)および288アミノ酸(すなわち、FST288)の2つのタンパク質をコードするが、フォリスタチン315は、タンパク質分解により、フォリスタチン303(FST303)にさらに分解され得る。アミノ酸配列の解析は、天然のヒトフォリスタチンポリペプチドが、5つのドメイン(N末端側から):シグナル配列ペプチド(配列番号1のアミノ酸1〜29)、N末端ドメイン(FSN)(配列番号1のアミノ酸30〜94)、フォリスタチンドメインI(FSDI)(配列番号1のアミノ酸95〜164)、フォリスタチンドメインII(FSDII)(配列番号1のアミノ酸168〜239)、およびフォリスタチンドメインIII(FSDIII)(配列番号1のアミノ酸245〜316)を含むことを明らかにした。PNAS, U.S.A.、1988年、85巻、12号、4218〜4222頁を参照されたい。
【0021】
ヒトフォリスタチン288(FST288)前駆体は、シグナルペプチドを、太字で指し示し、N末端ドメイン(FSN)を、一重の下線で指し示し、フォリスタチンドメインI〜III(FSI、FSII、FSIII)を、二重の下線で指し示す、以下のアミノ酸配列を有する。
【化1】
【0022】
プロセシング後の(成熟)ヒトフォリスタチン改変体であるFST(288)は、N末端ドメインを、一重の下線で指し示し、フォリスタチンドメインI〜IIIを、二重の下線で指し示す、以下のアミノ酸配列を有する。さらに、最初のシステインの前の、最初のアミノ酸であるGまたはNのいずれも、プロセシングにより除去されていてもよいし、いかなる帰結も伴わずに意図的に消失させてもよく、このようなわずかに小型のポリペプチドを含むポリペプチドもさらに含まれることが理解される。
【化2】
【0023】
ヒトフォリスタチン315(FST315)前駆体は、シグナルペプチドを、太字で指し示し、N末端ドメイン(FSN)を、一重の下線で指し示し、フォリスタチンドメインI〜III(FSI、FSII、FSIII)を、二重の下線で指し示す(NCBI受託番号:AAH04107.1;344アミノ酸)以下のアミノ酸配列を有する。
【化3】
【0024】
プロセシング後の(成熟)ヒトFST(315)は、N末端ドメインを、一重の下線で指し示し、フォリスタチンドメインI〜IIIを、二重の下線で指し示す、以下のアミノ酸配列を有する。さらに、最初のシステインの前の、最初のアミノ酸であるGまたはNのいずれも、プロセシングにより除去されていてもよいし、いかなる帰結も伴わずに意図的に消失させてもよい、このようなわずかに小型のポリペプチドを含むポリペプチドもさらに含まれることが理解される。
【化4】
【0025】
本開示のフォリスタチンポリペプチドは、フォリスタチンタンパク質の任意の自然発生のドメインのほか、有用な活性を保持するその改変体(例えば、変異体、フラグメント、およびペプチド模倣物形態)を含み得る。例えば、FST(315)およびFST(288)は、アクチビン(アクチビンAおよびアクチビンB)およびミオスタチン(および近縁のGDF11)の両方に対するアフィニティーが高いこと、ならびに、フォリスタチンドメイン(例えば、FSNおよびFSD I〜III)は、このようなTGF−βリガンドの結合に関与すると考えられていることが周知である。しかし、これらの3つのドメインの各々の、これらのTGF−βリガンドに対するアフィニティーは、異なり得ると考えられる。例えば、近年の研究は、N末端ドメイン(FSN)および2つのFSDIドメインだけをタンデムで含むポリペプチド構築物は、ミオスタチンに対する高アフィニティーを保持し、アクチビンに対するアフィニティーは、ほとんど顕示しないか、または全く顕示せず、マウスに導入されると、遺伝子発現により、全身の筋成長を促進することを実証している(Nakataniら、The FASEB Journal、22巻、477〜487頁(2008年))。
【0026】
加えて、FSDIドメインは、アミノ酸配列をKKCRMNKKNKPR(配列番号5)を有するヒトフォリスタチンのヘパリン結合性ドメインを含有する。このヘパリン結合性ドメインは、BBXBXXBBXBXB(配列番号6)[ここで、「B」とは、塩基性アミノ酸、特に、リシン(K)、またはアルギニン(R)を意味する]と表すことができる。したがって、本開示は、部分的に、自然発生のFSTタンパク質と比べて、所与のTGF−βリガンドに対する選択的結合および/または阻害を顕示する(例えば、ミオスタチンに対する高アフィニティーを維持する一方で、アクチビンに対するアフィニティーを有意に低減した)、改変体フォリスタチンタンパク質を包摂する。
【0027】
ある特定の態様では、本開示は、下記に示されるFSNドメインと、例えば、1つまたは複数の異種ポリペプチドとを含むポリペプチドを含み、さらに、下記に示される例(配列番号8)におけるように、最初のシステインの前の最初のアミノ酸であるGまたはNのいずれも欠失させ得ることが理解される。
【化5】
【0028】
ある特定の態様では、本開示は、ヘパリンに結合すると共に、ミオスタチン(および/またはGDF11)に結合する、最小限のコア活性を含有するFSDIドメインであって、下記に示されるようなFSDIドメインと、例えば、1つまたは複数の異種ポリペプチドとを含むポリペプチドを含む。
【化6】
【0029】
FSDI配列は、FSNドメインをさらに含むポリペプチドとして発現させることにより、構造的文脈で維持されると有利であり得る。したがって、本開示は、下記(配列番号10)に示されるFSN−FSDI配列と、例えば、1つまたは複数の異種ポリペプチドとを含むポリペプチドを含み、さらに、最初のシステインの前の最初のアミノ酸であるGまたはNのいずれも、プロセシングにより除去されていてもよいし、いかなる帰結も伴わずに意図的に消失させてもよく、このようなわずかに小型のポリペプチドを含むポリペプチドもさらに含まれることが理解される。
【化7】
【0030】
Nakaniらにより実証されたように、FSN−FSDI−FSDI構築物は、マウスにおいて遺伝子発現させると、全身筋成長を付与するのに十分であり、したがって、本開示は、下記のアミノ酸配列と、例えば、1つまたは複数の異種ポリペプチドとを含むポリペプチドを含む。
【化8】
【0031】
FSDI配列は、ミオスタチンおよびGDF11への結合を付与するが、アクチビン、特に、アクチビンAに加え、アクチビンBもまた、筋肉の負の調節因子であることが実証されており、したがって、ミオスタチン/GDF11群およびアクチビンA/アクチビンB群の両方を阻害するフォリスタチンポリペプチドは、より強力な筋効果をもたらし得る。さらに、ある特定のフォリスタチンポリペプチド、特に、ヘパリン結合性ドメインを含むフォリスタチンポリペプチドであり、より特定すれば、Fc融合物など、ホモ二量体形態のフォリスタチンポリペプチドの、低全身アベイラビリティーを実証する本明細書の知見を念頭に置くと、アクチビン阻害の、生殖軸および他の組織に対する公知の効果と関連する安全性の懸念も緩和される。FSDIIがアクチビンAおよびアクチビンBへの結合を付与することを踏まえて、本開示は、FSDIおよびFSDII(配列番号12)のほか、FSN−FSDI−FSDII構築物(配列番号13)と、例えば、1つまたは複数の異種ポリペプチドとを含むポリペプチドを提供する。
【化9】
【0032】
実施例で記載される通り、291アミノ酸のフォリスタチンポリペプチド(自然発生のFST−315の切断型を表す)は、有利な特性を有する。したがって、本開示には、プロセシングされていないFST(291)ポリペプチド(配列番号14)および成熟FST(291)ポリペプチド(配列番号15)が含まれ、異種タンパク質と組み合わせることができる。さらに、最初のシステインの前の最初のアミノ酸であるGまたはNのいずれも、プロセシングにより除去されていてもよいし、いかなる帰結も伴わずに意図的に消失させてもよく、下記に示される例(配列番号16)など、このようなわずかに小型のポリペプチドを含むポリペプチドもさらに含まれることが理解される。
【化10】
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明は、フォリスタチンのリガンド(フォリスタチンリガンドともまた称する)に、対象のフォリスタチンポリペプチド(例えば、FST−IgG融合ポリペプチド)で拮抗することに関する。したがって、本開示の組成物および方法は、1つまたは複数のフォリスタチンのリガンドの活性の異常と関連する障害を処置するのに有用である。例示的なフォリスタチンのリガンドは、アクチビンA、アクチビンB、ミオスタチン(GDF8)、およびGDF11など、一部のTGF−βファミリーメンバーを含む。
【0034】
本明細書のフォリスタチンタンパク質は、FSTと称する場合がある。FST(288)など、数字が後続する場合、これは、タンパク質が、フォリスタチンの288形態であることを指し示す。FST(288)−Fcとして提示される場合、これは、FST(288)とのC末端Fc融合物であって、介在リンカーを含む場合もあり、含まない場合もある融合物を指し示す。この場合のFcとは、この用語が本明細書で定義される通り、任意の免疫グロブリンFc部分であり得る。FST(288)−IgG2として提示される場合、これは、ヒトIgG2のFc部分の、FST(288)とのC末端Fc融合物を指し示す。
【0035】
アクチビンとは、二量体ポリペプチドの増殖因子であり、TGF−βスーパーファミリーに属す。2つの近縁のβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体(β
Aβ
A、β
Bβ
B、およびβ
Aβ
B)である、3つのアクチビン(A、B、およびAB)が存在する。追加のアクチビンCおよびEが同定されているが、これらのタンパク質の機能は、よく理解されていない。TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、神経細胞の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の作用因子である(DePaoloら、1991年、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500〜512頁;Dysonら、1997年、Curr Biol.7巻:81〜84頁;Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol.55巻:953〜963頁)。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化作用因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった(Murataら、1988年、PNAS、85巻:2434頁)。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成の天然の制御因子として働くことが示唆された。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンもまた、筋量および筋機能の負の調節因子として含意されており、アクチビンアンタゴニストは、インビボにおいて、筋成長を促進することが可能であり、筋喪失に対抗することが可能である。LinkおよびNishi、Exp Cell Res.、1997年6月15日;233巻(2号):350〜62頁;Heら、Anat Embryol(Berl)、2005年6月;209巻(5号):401〜7頁;Souzaら、Mol Endocrinol.、2008年12月;22巻(12号):2689〜702頁;Gilsonら、Am
J Physiol Endocrinol Metab.、2009年7月;297巻(1号):E157〜64頁;Zhouら、Cell、2010年8月20日;142巻(4号):531〜43頁。
【0036】
増殖および分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体中の骨格筋において高度に発現する。遺伝子導入マウスにおけるGDF8欠失変異は、骨格筋の顕著な肥大および過形成を特徴とする(McPherronら、Nature、1997年、387巻:83〜90頁]。骨格筋量の同様の増加は、ウシ(Ashmoreら、1974年、Growth、38巻:501〜507頁;SwatlandおよびKieffer、J. Anim. Sci.、1994年、38巻:752〜757頁;McPherronおよびLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、94巻:12457〜12461頁;ならびにKambadurら、Genome Res.、1997年、7巻:910〜915頁)および、驚くべきことに、ヒト(Schuelkeら、N Engl J Med、2004年、350巻:2682〜8頁)におけるGDF8の天然に存在する変異において明らかである。研究は、ヒトにおけるHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質の発現の増加が随伴することも示している(Gonzalez−Cadavidら、PNAS、1998年、95巻:14938〜43頁)。加えて、GDF8は、筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節することが可能であり、筋芽細胞の増殖を調節し得る(WO00/43781)。GDF8プロペプチドは、成熟GDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物活性を不活性化することができる(Miyazonoら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:6407〜6415頁;Wakefieldら(1988年)、J. Biol. Chem.、263巻:7646〜7654頁;およびBrownら(1990年)、Growth Factors、3巻:35〜43頁)。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合し、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質として、フォリスタチン、および、潜在的に、フォリスタチン関連タンパク質が挙げられる(Gamerら(1999年)、Dev. Biol.、208巻:222〜232頁)。
【0037】
本明細書中で使用される用語は、一般に、本発明の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびに、これらの作製方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲および意味は、その用語が使用される特定の文脈から明らかである。
【0038】
「約」および「およそ」とは一般に、測定の性質または精度を踏まえた、測定される量について許容可能な誤差の程度を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内であり、より好ましくは5%以内であることが典型的である。
【0039】
代替的に、かつ、特に、生体系では、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内であり、より好ましくは2倍以内である値を意味し得る。本明細書で与えられる数量は、そうでないことが言明されない限りにおいて概数であり、明示的に言明されていない場合でも、用語「約」または「およそ」が暗示され得ることを意味する。
【0040】
本発明の方法は、配列を互いと比較する工程であって、野生型配列を、1つまたは複数の変異体(配列改変体)と比較することを含む工程を含み得る。このような比較は典型的には、ポリマー配列のアラインメントであって、例えば、当技術分野で周知の配列アラインメントプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、いくつかを挙げれば、BLAST、FASTA、およびMEGALIGN)を使用するアラインメントを含む。当業者は、変異が残基の挿入または欠失を含有するこのようなアラインメントでは、配列アラインメントにより、挿入された残基または欠失させた残基を含有しないポリマー配列内に、「ギャップ」(典型的には、ダッシュまたは「A」で表される)が導入されることをたやすく理解することができる。
【0041】
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて「共通する進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指し、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含む。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。しかし、一般的な用法およびこの出願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
【0042】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有している場合も共有していない場合もある、核酸もしくはアミノ酸配列間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
2.フォリスタチンポリペプチド
【0043】
ある特定の態様では、本開示は、フォリスタチンポリペプチド(例えば、FST−Fcポリペプチド)と、特に、配列番号2、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16、およびこれらの改変体を含むポリペプチドにより例示される切断形態とに関する。任意選択で、フラグメント、機能的な改変体、および修飾形態の生物活性は、それらの対応する野生型フォリスタチンポリペプチドと同様であるか、同じであるか、またはこれらより改善されている。例えば、本開示のフォリスタチン改変体は、フォリスタチンリガンド(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、およびGDF8)に結合し、かつ、これらの機能を阻害し得る。任意選択で、フォリスタチンポリペプチドは、組織、特に、筋肉の成長を調節する。フォリスタチンポリペプチドの例は、配列番号1〜16および26〜43のいずれかによるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドのほか、配列番号1〜16および26〜43のいずれかのアミノ酸配列に、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるポリペプチドを含む。これらのポリペプチドにおけるバリエーションは、以下の指針に従い調製することができる。フォリスタチンポリペプチド内のアミノ酸の番号付けは、天然のリーダー配列を使用するのかどうかにかかわらず、配列番号1の配列に基づく。
【0044】
上記で記載した通り、フォリスタチンは、フォリスタチン−リガンド結合を媒介すると考えられる、3つのシステインに富む領域(すなわち、FSドメインI〜III)を特徴とする。さらに、研究者は、3つのFS結合性ドメイン(例えば、FSDI)の1つだけを含むポリペプチド構築物は、ある特定のフォリスタチンリガンド(例えば、ミオスタチン)に対する強力なアフィニティーを保持し、インビボにおいて、生物学的に活性であることを実証している。Nakataniら、The FASEB Journal、22巻、477〜487頁(2008年)を参照されたい。したがって、本開示の改変体フォリスタチンポリペプチドは、フォリスタチンタンパク質の1つまたは複数の活性部分を含み得る。例えば、本開示の構築物は、配列番号1のアミノ酸30〜95に対応する残基で始まり、配列番号1のアミノ酸316〜344に対応する位置で終わることが可能である。他の例は、配列番号1の30〜95位で始まり、アミノ酸164〜167または238〜244に対応する位置で終わる構築物を含む。他のものは、配列番号7〜16のいずれかを含み得る。
【0045】
本明細書で記載されるフォリスタチンバリエーションは、種々の方法で、互いと組み合わせることもでき、異種アミノ酸配列と組み合わせることもできる。例えば、本開示の改変体フォリスタチンタンパク質は、FSDI(配列番号1のアミノ酸95〜164(すなわち、配列番号2)、FSDII(配列番号1のアミノ酸168〜239)、またはFSDIII(配列番号1のアミノ酸245〜316)から選択される、1つまたは複数のFSドメインを含むポリペプチドのほか、FSDI(配列番号1のアミノ酸95〜164(すなわち、配列番号2)、FSDII(配列番号1のアミノ酸168〜239)、またはFSDIII(配列番号1のアミノ酸245〜316)に、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列から選択される、1つまたは複数のFSドメインを含むタンパク質を含む。これらのFSドメインは、このような組換えタンパク質が、例えば、フォリスタチンリガンド結合活性(例えば、ミオスタチン)および生物活性(例えば、筋量および/または筋強度を誘導する)を含む所望の活性を維持するという条件の下で、本開示の改変体フォリスタチンポリペプチド内において任意の順序で組み合わせることができる。このようなフォリスタチン改変体ポリペプチドの例は、例えば、FSDI−FSDII−FSDIII、FSDI−FSDIII、FSDI−FSDI−FSDIII、FSDI−FSDII、FSDI−FSDI、FSN−FSDI−FSDII−FSDIII、FSN−FSDI−FSDII、FSN−FSDI−FSDI、FSN−FSDI−FSDIII、FSN−FSDI−FSDI−FSDIIIなどのドメイン構造を有するポリペプチドと、他の異種ポリペプチドを、これらのポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることにより得られるポリペプチドとを含む。これらのドメインは、直接連結することもでき、リンカーポリペプチドを介して連結することもできる。任意選択で、ポリペプチドリンカーは、任意の配列であることが可能であり、1〜50、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5アミノ酸を含み得る。ある特定の態様では、好ましいリンカーは、システインアミノ酸を含有しない。
【0046】
一部の実施形態では、本開示のフォリスタチン改変体は、1つまたは複数のフォリスタチンリガンドに対する結合アフィニティーを低減しているか、または消失させている。ある特定の態様では、本開示は、アクチビンに対する結合アフィニティーを低減しているか、または消失させているフォリスタチン改変体を提供する。ある特定の態様では、本開示は、アクチビンに対する結合アフィニティーを低減しているか、または消失させているが、ミオスタチンに対する高アフィニティーは保持するフォリスタチン改変体を提供する。
【0047】
ある特定の態様では、本開示は、FSDIIドメインに対応する配列または機能的に活性なFSDIIドメインを含まないフォリスタチン改変体を提供する。例えば、本開示のフォリスタチンポリペプチドは、FSDIIドメインの部分的欠失または完全な欠失を介して得られる改変体を含み得る。ある特定の態様では、このようなフォリスタチン改変体は、FSDII領域内の、1つもしくは複数のシステイン残基の欠失またはシステイン以外のアミノ酸による置換を含む。
【0048】
本開示のフォリスタチンタンパク質は、シグナル配列を含み得る。シグナル配列は、フォリスタチンタンパク質の、天然のシグナル配列(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜29)の場合もあり、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)シグナル配列もしくはミツバチメリチン(honey bee melatin)(HBM)シグナル配列など、別のタンパク質に由来するシグナル配列の場合もある。
【0049】
さらなるN−連結グリコシル化部位(N−X−S/T)を、フォリスタチンポリペプチドに付加することができ、FST−Fc融合タンパク質の血清半減期を延長することができる。N−X−S/T配列は一般に、リガンド結合性ポケットの外側の位置に導入することができる。N−X−S/T配列は、フォリスタチン配列と、Fcまたは他の融合物構成要素との間のリンカーに導入することができる。このような部位は、あらかじめ存在するSもしくはTに照らして適正な位置にNを導入することにより、またはあらかじめ存在するNに対応する位置にSもしくはTを導入することにより、最小限の労力で導入することができる。グリコシル化されることが予測される任意のSは、グリコシル化によりもたらされる保護のために、免疫原性部位を創出せずにTに変更させることができる。同様に、グリコシル化されることが予測される任意のTは、Sに変更させることができる。したがって、フォリスタチン改変体は、1つまたは複数の追加の、非内因性N−連結グリコシル化コンセンサス配列を含み得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療有効性または安定性(例えば、エクスビボの貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)を増強することなどの目的のために、フォリスタチンポリペプチドの構造を改変することにより機能的改変体を作製することを企図する。改変フォリスタチンポリペプチドは、例えば、アミノ酸の置換、欠失または付加によって生成することもできる。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。フォリスタチンポリペプチドのアミノ酸配列の変化の結果として、機能的相同体がもたらされるのかどうかは、野生型フォリスタチンポリペプチドと同様の様式で細胞内の応答を生成するか、または、野生型フォリスタチンと同様の様式で、アクチビンまたはミオスタチンなど、1つまたは複数のリガンドに結合する、改変体フォリスタチンポリペプチドの能力を評価することにより、たやすく決定することができる。
【0051】
ある特定の実施形態では、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を変更させるような、フォリスタチンポリペプチドの特異的変異を企図する。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O−連結もしくはN−連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O−連結グリコシル化部位については)野生型フォリスタチンポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、改変されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。フォリスタチンポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、フォリスタチンポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)フリーのカルボキシル基;(c)フリーのスルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)フリーのヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。これらの方法については、1987年9月11日に公開された、WO87/05330、ならびに、参照により本明細書に組み込まれる、AplinおよびWriston(1981年)、CRC Crit. Rev.
Biochem.、259〜306頁において記載されている。ActRIIBポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのフォリスタチンポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。化学的脱グリコシル化については、Hakimuddinら(1987年)、Arch. Biochem. Biophys.、259巻:52頁;およびEdgeら(1981年)、Anal. Biochem.、118巻:131頁によりさらに記載されている。ポリペプチドにおける、炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら、(1987年)、Meth. Enzymol.、138巻:350頁により記載されているように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。フォリスタチンポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得る。一般に、ヒトにおいて使用するためのフォリスタチンポリペプチドは、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現されるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
【0052】
本開示はさらに、改変体、特に、任意選択で切断型改変体を含むフォリスタチンポリペプチドのコンビナトリアル改変体のセットを生成する方法を企図し、コンビナトリアル変異体のプールは、機能的な改変体配列を同定するために、とりわけ有用である。このようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、薬物動態の変更またはリガンドへの結合の変更など、特性を変更させたフォリスタチンポリペプチド改変体を生成することであり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、フォリスタチンポリペプチド改変体は、フォリスタチンポリペプチドに結合する能力、フォリスタチンリガンドのフォリスタチンポリペプチドへの結合を妨害する能力についてスクリーニングされ得る。
【0053】
フォリスタチンポリペプチドまたはその改変体の活性はまた、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイで調べることもできる。例えば、フォリスタチンポリペプチド改変体の、筋生成に関与する遺伝子の発現に対する効果を評価することができる。これは、必要に応じて、1つまたは複数の組換えフォリスタチンリガンドタンパク質(例えば、アクチビンA)の存在下で実施することができ、細胞に、フォリスタチンポリペプチドおよび/またはその改変体と、任意選択で、フォリスタチンリガンドとを生成するように、トランスフェクトすることができる。同様に、フォリスタチンポリペプチドを、マウスまたは他の動物に投与することができ、筋量または筋強度など、1つまたは複数の筋特性を評価することができる。当技術分野では、このようなアッセイが周知であり、日常的である。応答性のレポーター遺伝子を、このような細胞株内で使用して、下流のシグナル伝達に対する効果をモニタリングすることができる。
【0054】
コンビナトリアルに誘導された改変体であって、天然に存在するフォリスタチンポリペプチドと比べて選択的な効力を有するリガンドトラップを生成することができる。このような改変体タンパク質は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する野生型フォリスタチンポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、天然のフォリスタチンポリペプチドのタンパク質分解、または、その崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他のプロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、そのフォリスタチンポリペプチドの半減期を調節することによってフォリスタチンポリペプチドレベルを変更するのに利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えフォリスタチンポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にし得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、本開示のフォリスタチンポリペプチドはさらに、フォリスタチンポリペプチド内に天然に存在する任意の翻訳後修飾に加えて翻訳後修飾を含み得る。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。結果として、修飾フォリスタチンポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類もしくは単糖類およびホスフェイトのような非アミノ酸成分を含み得る。このような非アミノ酸成分の、フォリスタチンポリペプチドの機能に対する影響は、他のフォリスタチンポリペプチド改変体について本明細書中に記載されるようにして試験され得る。フォリスタチンポリペプチドの新生形態を切断することによってフォリスタチンポリペプチドが細胞内で生成される場合、翻訳後プロセシングもまた、このタンパク質の正確な折り畳みおよび/または機能にとって重要となり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293)が、このような翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、そして、フォリスタチンポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。
【0056】
ある特定の態様では、フォリスタチンポリペプチドの機能的改変体または修飾形態は、少なくともフォリスタチンポリペプチドの部分と、1つまたは複数の融合ドメインとを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望される特性を与えるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−もしくはコバルト−結合化樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィーのための適切なマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS
6)融合パートナーと共に有用なQIAexpress(登録商標)システム(Qiagen)のような「キット」の形態で利用可能である。別の例としては、融合ドメインは、リガンドトラップポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、「エピトープタグ」(これは、特定の抗体に利用可能な、通常は短いペプチド配列である)が挙げられる。特定のモノクローナル抗体に容易に利用可能な周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびc−mycタグが挙げられる。いくつかの場合、融合ドメインは、関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質を解放することを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。解放されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の好ましい実施形態では、フォリスタチンポリペプチドは、インビボでフォリスタチンポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)と融合される。「安定化」とは、それが、崩壊の減少によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、血清半減期を増加させる任意のものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して所望の薬物動態特性を与えることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を与え得る。選択され得る融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、筋肉成長のさらなる刺激のような付加的な生物学的機能を与えるもの)が挙げられる。
【0057】
具体例としては、本開示は、免疫グロブリンのCH1ドメイン、CH2ドメイン、もしくはCH3ドメインなどの免疫グロブリンの定常ドメイン、またはFcを含むポリペプチドに融合させたフォリスタチンポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。ヒトIgG1およびIgG2に由来するFcドメインを下記に提供する(それぞれ、配列番号17および配列番号18)。本明細書で記載される通り、IgG2、IgG4、またはIgG2/4のFcドメインは、これらのヘパリン結合性ポリペプチドが付着し得る細胞に対して有害であり得るCDCおよび/またはADCC活性が、これらのFc種では低減されているため、ヘパリン結合活性を保持するフォリスタチンポリペプチドと融合させるのに特に有利である。CDC活性またはADCC活性を減殺する、他の変異も公知であり、本開示には、集合的に、任意のこれらの改変体が含まれ、フォリスタチン融合タンパク質の有利な構成要素として使用することができる。任意選択で、配列番号17のFcドメインは、Asp−265、Lys−322およびAsn−434(対応する完全長IgG1に従って番号付けして)のような残基における1または複数の変異を有する。特定の場合、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asp−265変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合では、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asn−434変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
【0058】
利用され得る、ヒトIgG1アミノ酸配列およびヒトIgG2アミノ酸配列の例を、下記に示す。
【化11】
【0059】
融合タンパク質の異なるエレメントは、所望の機能性と符合する任意の様式で配列し得ることが理解される。例えば、フォリスタチンポリペプチドを、異種ドメインに対してC末端に配置することもでき、代替的に、異種ドメインを、フォリスタチンポリペプチドに対してC末端に配置することもできる。フォリスタチンポリペプチドドメインと、異種ドメインとは、融合タンパク質内で隣接する必要はなく、追加のドメインまたはアミノ酸配列を、いずれかのドメインに対してC末端またはN末端に含めることもでき、ドメインの間に含めることもできる。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「免疫グロブリンFcドメイン」または単に「Fc」は、免疫グロブリン鎖定常領域、好ましくは免疫グロブリン重鎖定常領域、またはその部分のカルボキシル末端部分を意味すると理解される。例えば、免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン、または5)2つもしくはこれを超えるドメインと、免疫グロブリンヒンジ領域との組合せを含み得る。好ましい実施形態では、免疫グロブリンFc領域は、少なくとも、免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、好ましくはCH1ドメインを欠く。また、フォリスタチンポリペプチドは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、またはCH3ドメインなど、免疫グロブリンの1つだけのドメインを含み得ることも理解される。これらのドメインの多くは、望ましい薬物動態特性のほか、二量体化またはより高次の多量体化を付与する。
【0061】
一実施形態では、重鎖定常領域が由来する免疫グロブリンのクラスは、IgG(Igγ)(γサブクラス1、γサブクラス2、γサブクラス3、またはγサブクラス4)である。免疫グロブリンの他のクラスである、IgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)、およびIgM(Igμ)も使用することができる。適切な免疫グロブリン重鎖定常領域の選択については、米国特許第5,541,087号および同第5,726,044号において詳細に論じられている。特定の結果を達成するための、ある特定の免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスに由来する、特定の免疫グロブリン重鎖定常領域配列の選択は、当技術分野における技術水準の範囲内にあると考えられる。免疫グロブリンFc領域をコードするDNA構築物の部分は、ヒンジドメインの少なくとも一部と、好ましくはFcガンマのCH
3ドメイン、またはIgA、IgD、IgE、もしくはIgMのいずれかにおける相同なドメインの少なくとも一部とを含むことが好ましい。
【0062】
さらに、免疫グロブリン重鎖定常領域内のアミノ酸の置換または欠失は、本明細書で開示される方法および組成物の実施において有用であり得ることが企図される。1つの例は、上方のCH2領域内にアミノ酸置換を導入して、Fc受容体に対するアフィニティーが低減されたFc改変体を創出することである(Coleら(1997年)、J. Immunol.、159巻:3613頁)。加えて、多くの場合、C末端のリシンまたはKは除去され、このため、配列番号17または配列番号18において示されるFcドメインなど、本明細書で記載される任意のポリペプチドから、Fcドメイン内で見出されるC末端のKが除外され得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、本開示のフォリスタチンポリペプチドは、フォリスタチンポリペプチドを安定化させ得る1または複数の改変を含む。例えば、このような改変は、フォリスタチンポリペプチドのインビトロ半減期を増強させるか、フォリスタチンポリペプチドの循環半減期を増強させる、または、フォリスタチンポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化改変としては、融合タンパク質(例えば、フォリスタチンポリペプチドと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の改変(例えば、フォリスタチンポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、フォリスタチンポリペプチドからの炭水化物部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。融合タンパク質の場合、フォリスタチンポリペプチドを、IgG分子(例えば、Fcドメイン)など、安定化ドメインに融合させる。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、炭水化物部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性ポリマーも含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、本発明は、フォリスタチンポリペプチドの単離形態および/または精製形態であって、他のタンパク質から単離されているか、または別の方法で他のタンパク質を実質的に含まない形態を利用可能とする。
【0065】
ある特定の実施形態では、本開示のフォリスタチンポリペプチド(改変または非改変)は、当該分野で公知の様々な技法により生成することができる。例えば、そのようなフォリスタチンポリペプチドは、Bodansky, M.、Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年);およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)において記載されているものなどの標準的なタンパク質化学技術を使用して合成することができる。加えて、自動式ペプチド合成器も、市販されている(例えば、Advanced ChemTech 396型;Milligen/Biosearch9600)。代替的に、フォリスタチンポリペプチド、それらのフラグメントまたは改変体は、当該分野で周知の、種々の発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を使用して、組換えにより生成することもできる(下記も参照)。さらなる実施形態では、改変フォリスタチンポリペプチドまたは非改変フォリスタチンポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、またはPACE(paired basic amino acid converting enzyme)の使用を介する、天然に存在するまたは組換えにより生成された全長フォリスタチンポリペプチドの消化により生成することができる。(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)コンピュータ解析を使用して、タンパク質分解性切断部位を同定することができる。代替的に、このようなフォリスタチンポリペプチドは、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミン)によるものなどの当技術分野の公知の標準的な主義などで、天然に存在するまたは組換えにより生成された全長フォリスタチンポリペプチドから生成することができる。
3.フォリスタチンポリペプチドをコードする核酸
【0066】
ある特定の態様では、本発明は、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドのいずれかをコードする単離核酸および/または組換え核酸を提供する。対象核酸は、一本鎖でもよく、二本鎖でもよい。このような核酸は、DNA分子でもよく、RNA分子でもよい。これらの核酸は、例えば、フォリスタチンポリペプチドを作製するための方法において使用することができる。
【0067】
例えば、以下の配列は、自然発生のヒトフォリスタチン前駆体ポリペプチド(配列番号19)(NCBI受託番号:BC004107.2、1032bp)をコードする。
【化12】
【0068】
以下の配列は、成熟FST(315)ポリペプチド(配列番号20)をコードする。
【化13】
【0069】
以下の配列は、FST(288)ポリペプチド(配列番号21)をコードする。
【化14】
【0070】
以下の配列は、成熟FST(291)ポリペプチド(配列番号22)をコードする。
【化15】
【0071】
ある特定の態様では、フォリスタチンポリペプチドをコードする対象の核酸は、配列番号19〜22の改変体である核酸を含むことがさらに理解される。改変体ヌクレオチド配列は、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加、または欠失により異なる配列、例えば、対立遺伝子改変体を含み、したがって、配列番号19〜22に表示されるコード配列のヌクレオチド配列と異なるコード配列を含む。
【0072】
ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号19〜22に、特にそれらのフォリスタチンに由来する部分(配列番号1のアミノ酸95〜164に対応するヌクレオチド)と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である単離核酸配列または組換え核酸配列を提供する。当業者は、配列番号19〜22および配列番号19〜22の改変体に相補的な核酸配列もまた、本開示の範囲内にあることを理解する。さらなる実施形態では、本開示の核酸配列は、単離核酸配列であっても、組換え核酸配列であっても、かつ/または異種ヌクレオチド配列と融合させてもよく、DNAライブラリー内の核酸配列であってもよい。
【0073】
他の実施形態では、本発明の核酸はまた、配列番号19〜22に指定されるヌクレオチド配列、配列番号19〜22の相補配列、またはこれらのフラグメントに対して高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含む(例えば、ヌクレオチド19〜22)。
【0074】
当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーションの後に、50℃における2.0×SSCの洗浄を行い得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度と塩の両方が変更されても、温度または塩濃度が一定に保たれ、他の変数が変更されてもよい。一実施形態では、本発明は、室温における6×SSCとその後の室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0075】
遺伝子コードにおける縮重に起因して配列番号19〜22に示される核酸と異なる単離された核酸もまた、本開示の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が1より多いトリプレットによって示される。同じアミノ酸を特定するコドンまたは同義語(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに対する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。しかしながら、哺乳動物細胞の中には、本主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列の多型が存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子改変に起因して、所与の種の個体間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)におけるこれらのバリエーションが存在し得ることを理解する。任意およびあらゆるこのようなヌクレオチドのバリエーションと、結果として生じるアミノ酸の多型とは、本開示の範囲内である。
【0076】
特定の実施形態では、本開示の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。種々の宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知である。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくはアクチベーター配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本開示によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1つより多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化する。
【0077】
ある特定の態様では、本主題の核酸は、フォリスタチンポリペプチドをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、フォリスタチンポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、フォリスタチンポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組み合わせが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
【0078】
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えフォリスタチンポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
【0079】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて改変される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順、Molecular Cloning A Laboratory Manual、2nd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)16章および17章を参照のこと。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β−galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
【0080】
ある特定の実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のフォリスタチンポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のフォリスタチンポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
【0081】
本開示はまた、1または複数の本主題のフォリスタチンポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号19〜22)を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本開示のフォリスタチンポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0082】
したがって、本開示はさらに、本主題のフォリスタチンポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、フォリスタチンポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、フォリスタチンポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。ポリペプチドは、ポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、フォリスタチンポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のフォリスタチンポリペプチドは、タンパク質を精製するための当該分野で公知の技法であって、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびフォリスタチンポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体による免疫アフィニティー精製を含む技法を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはこれらの両方から単離することができる。好ましい実施形態では、フォリスタチンポリペプチドは、その精製を容易とするドメインを含有する融合タンパク質である。
【0083】
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えフォリスタチンポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni
2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製フォリスタチントラップポリペプチドを提供し得る(例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
【0084】
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくは突出(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling−in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと)。
4.例示的な治療的使用
【0085】
ある特定の実施形態では、本開示の組成物であって、例えば、FST(288)−IgG1、FST(288)−IgG2、FST(291)−IgG1、FST(291)−IgG2、FST(315)−IgG1、FST(315)−IgG2、および本明細書で開示される他のフォリスタチンポリペプチドのいずれかを含む組成物を、本節で記載される疾患または状態であって、フォリスタチンポリペプチドおよび/またはフォリスタチンリガンド(例えば、GDF8)の活性の異常と関連する疾患または障害を含む疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。本明細書では一般に、これらの疾患、障害、または状態を、「フォリスタチン関連状態」と称する。ある特定の実施形態では、本開示は、個体に、上記で記載したフォリスタチンポリペプチドの治療有効量を投与することにより、それを必要とする個体を処置または予防する方法を提供する。これらの方法は、特に、動物、より特定すれば、ヒトの治療的処置および予防的処置を目的とする。
【0086】
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。
【0087】
フォリスタチン−リガンド複合体は、組織成長のほか、種々の構造の適正な形成などの早期発生プロセスにおいて、または、性的発育、下垂体ホルモンの生成、および筋肉の創出を含む、1つもしくは複数の発生後能において不可欠の役割を果たす。したがって、フォリスタチン関連状態は、組織成長の異常および発生の欠損を含む。
【0088】
処置のための例示的な状態として、神経筋障害(例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮)、うっ血性閉塞性肺疾患(およびCOPDと関連する筋消耗)、筋消耗症候群、サルコペニア、および悪液質が挙げられる。他の例示的な状態として、筋変性障害および神経筋障害、組織修復(例えば、創傷治癒)、ならびに神経変性疾患(例えば、筋委縮性側索硬化症)が挙げられる。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、FST−Fcポリペプチド)を、筋ジストロフィーのための処置の一部として使用する。用語「筋ジストロフィー」とは、骨格筋、ならびに、ある場合には、心臓および呼吸筋の段階的な筋力低下および劣化を特徴とする、変性性筋疾患の群を指す。筋ジストロフィーは、筋肉の微視的変化と共に始まる、進行性の筋消耗および筋力低下を特徴とする遺伝性障害である。筋肉が経時的に変性するにつれて、個人の筋強度は減衰する。本主題のフォリスタチンポリペプチドを含むレジメンで処置され得る、例示的な筋ジストロフィーとして、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、エメリー−ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドゥジー−デジェリン型としてもまた公知である)、筋強直性ジストロフィー(MMD)(スタイナート病としてもまた公知である)、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、遠位型筋ジストロフィー(DD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)が挙げられる。
【0090】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、フランスの神経学者である、Guillaume Benjamin Amand Duchenneにより、1860年代において、最初に記載された。ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、DMDのこの変化形について1950年代に最初に記載したドイツの医師であるPeter Emil Beckerに因んで名付けられた。DMDは、男性において最も高頻度の遺伝性疾患の1つであり、3,500人中1人の少年に影響を及ぼす。DMDは、X染色体の短腕部に位置するジストロフィン遺伝子が破壊されると生じる。男性が保有するX染色体のコピーは、1つだけであるので、男性が有するジストロフィン遺伝子のコピーも1つだけである。ジストロフィンタンパク質を伴わないと、筋肉は、収縮および弛緩の周期において容易に損傷する。疾患の早期では、筋肉は、再生により代償されるが、後に、筋前駆細胞は、進行する損傷に追いつけなくなり、健常筋肉は、非機能的な線維脂肪性組織で置きかえられる。
【0091】
BMDは、ジストロフィン遺伝子における異なる変異から生じる。BMD患者は、いくらかのジストロフィンを有するが、量が不十分であるか、または質が不良である。いくらかのジストロフィンを有することで、BMDを有する人の筋肉は、DMDを有する人の筋肉と同等の重度または迅速な変性からは保護される。
【0092】
例えば、近年の研究は、インビボにおいて、GDF8(フォリスタチンリガンド)の機能を遮断するかまたは消失させることにより、DMD患者およびBMD患者における少なくともある特定の症状を有効に処置し得ることを実証している。したがって、本主題のフォリスタチンポリペプチドは、GDF8阻害剤(アンタゴニスト)として作用することが可能であり、DMD患者およびBMD患者におけるGDF8の機能を、インビボで遮断する代替的な手段を構成する。
【0093】
同様に、本主題のフォリスタチンポリペプチドは、筋成長を必要とする他の疾患状態において、筋量を増大させる有効な手段をもたらす。例えば、ルーゲーリック病(運動ニューロン疾患)ともまた呼ばれるALSは、慢性で、治癒不能、かつ、制止不能なCNS障害であって、脳を骨格筋に接続するCNSの構成要素である運動ニューロンを攻撃するCNS障害である。ALSでは、運動ニューロンは、劣化し、最終的に死滅し、個人の脳は、完全な機能および呼びかけ(alert)を正常に保つが、運動の命令が筋肉に到達することはない。ALSに罹患する大半の人は、40〜70歳の間である。衰弱する最初の運動ニューロンは、腕部または脚部に至る運動ニューロンである。ALSを有する人は、歩行が困難な場合があり、物を落とし、倒れ、呂律が回らなくなり、制御不能に笑ったり泣いたりする場合がある。最終的に、四肢における筋肉は、不使用のために萎縮し始める。この筋力低下は、消耗性となり、個人は、車椅子を必要とするか、または床から起き上がることができなくなる。大半のALS患者は、疾患発症から3〜5年で、呼吸不全または肺炎のような、換気装置支援による合併症で死ぬ。
【0094】
シャルコー−マリー−トゥース病(CMT)は、本明細書で記載されるフォリスタチンポリペプチドの局所投与により処置することができる。CMTとは、末梢神経に影響を及ぼし、進行性であり、しばしば局所性である筋力低下および筋変性を結果としてもたらす、遺伝性障害の群である。処置し得る疾患の側面は、足部の変形(重度のハイアーチ足);下垂足(足部を水平に保つことの不可能);「打ち付ける」歩行(下垂足に起因する、歩行時に床を足部で打ち付ける);下脚部における筋喪失;足部におけるしびれ;平衡の困難;または手腕の衰弱を含む。
【0095】
様々な全身性筋障害であって、ランバート−イートン筋無力症候群(LEMS);代謝性ジストロフィー;脊髄性筋委縮症(SMA);皮膚筋炎(DM);遠位型筋ジストロフィー(DD);エメリー−ドレイフス型筋ジストロフィー(EDMD);内分泌性ミオパシー;フリードライヒ運動失調(FA);遺伝性ミオパシー;ミトコンドリアミオパシー;重症筋無力症(MG);多発性筋炎(PM)を含む筋障害を有する患者の筋肉を、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドにより処置することができる。
【0096】
1つまたは複数の筋肉の、術後または不使用による萎縮であって、股関節骨折;完全股関節形成術(THA);完全膝関節形成術(TKA)、または腱板断裂手術の後における萎縮を含む萎縮を有する患者の筋肉を、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドにより処置することができる。
【0097】
筋喪失または筋力低下を引き起こす他の様々な疾患を患う患者の筋肉であって、以下の疾患:サルコペニア、悪液質、肺がん、結腸がん、および卵巣がんを含む、種々の種類のがん、長期にわたる換気支援を受けている患者、糖尿病、慢性閉塞性肺障害、腎不全、心不全、末梢神経の外傷および障害、を有する患者の筋肉を含む筋肉を、本明細書で開示されるフォリスタチンポリペプチドにより処置することができる。
【0098】
フォリスタチンポリペプチドに誘導される筋量の増大はまた、筋消耗疾患を患う人の利益にもなり得る。GDF8の発現は、ヒトにおける除脂肪量と逆相関し、GDF8遺伝子の発現のこの増大は、AIDS消耗症候群を有する人における体重減少と関連する。AIDS患者におけるGDF8機能を阻害することにより、AIDSの少なくともある特定の症状を、完全に消失させないにせよ、緩和することができ、こうして、AIDS患者における生活の質を著明に改善することができる。
5.医薬組成物
【0099】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物(例えば、フォリスタチンポリペプチド)を、薬学的に許容されるキャリアと共に製剤化する。例えば、フォリスタチンポリペプチドは、単独で投与することができ、医薬製剤(治療用組成物)の構成要素として投与することもできる。対象の化合物は、ヒト医療または獣医科医療における使用のための、任意の好都合な方式による投与のために製剤化することができる。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明の治療方法は、組成物を外用投与する工程、全身投与する工程、またはインプラントもしくはデバイスとして局所投与する工程を含む。投与されるとき、本発明における使用のための治療用組成物は、当然ながら、発熱物質非含有であり、生理学的に許容される形態にある。さらに、組成物は、標的組織部位(例えば、骨、軟骨、筋肉、脂肪、またはニューロン)、例えば、組織損傷を有する部位への送達のための粘性形態で封入されているか、または注射されることが望ましい場合がある。外用投与は、創傷治癒および組織修復に適し得る。フォリスタチンポリペプチド以外の治療的に有用な作用因子であって、任意選択で、上記で記載した組成物中に含まれ得る作用因子も、代替的にまたは付加的に、本発明の方法において本主題の化合物(例えば、フォリスタチンポリペプチド)と共に同時または逐次的に投与することができる。
【0101】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、標的組織部位に1つまたは複数の治療化合物(例えば、フォリスタチンペプチド)を送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、そして、最適には身体内へと再吸収され得るマトリクスを含み得る。例えば、マトリクスは、フォリスタチンペプチドの遅速放出を提供し得る。このようなマトリクスは、他の移植医療用途に現在使用される材料から形成され得る。
【0102】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、見かけ上の様相および界面の特性に基づく。本主題の組成物の特定の用途が、適切な製剤を画定する。組成物のための可能性のあるマトリクスは、生分解性でかつ化学的に画定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の可能性のある材料は、生分解性でかつ生物学的に十分に規定されたもの(例えば、骨または皮膚のコラーゲン)である。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクスの成分から構成される。他の可能性のあるマトリクスは、非生分解性でかつ化学的に規定されたもの(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクス)である。マトリクスは、上述のタイプの材料の任意の組み合わせ(例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、または、コラーゲンおよびリン酸三カルシウム)から構成され得る。バイオセラミクスは、組成物(例えば、カルシウム−アルミン酸−リン酸)中で変化され得、孔径、粒子径、粒子の形状および生分解性を変更するように加工され得る。
【0103】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、例えば、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、ロゼンジ(矯味矯臭基材、通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガントを使用する)、散剤、顆粒剤の形態で、あるいは水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、あるいは水中油もしくは油中水の液体エマルジョンとして、あるいはエリキシルもしくはシロップとして、あるいは香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基材を使用する)として、および/あるいはマウスウォッシュなどとして経口投与することもでき、各々が、所定量の作用因子を活性成分として含有する。本開示の化合物と、任意選択で、1つまたは複数の他の活性成分とはまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとしても投与することができる。
【0104】
経口投与のための固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、本発明の1または複数の治療化合物は、1または複数の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)、および/または以下のうち任意のものと混合され得る;(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸):(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア):(3)湿潤剤(例えば、グリセロール):(4)崩壊剤(例えば、アガー−アガー、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム):(5)溶液抑制剤(solution retarding agent)(例えば、パラフィン):(6)吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物):(7)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール):(8)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ):(9)潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、およびこれらの混合物:ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、組成物はまた、緩衝剤も含み得る。また、同様の種類の固形組成物も、ラクトースまたは乳糖のほか、高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用して、軟充填ゼラチンカプセル中および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として利用することができる。
【0105】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該分野で一般に用いられる不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物]を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口用組成物はまた、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤、および保存剤を含む佐剤を含み得る。
【0106】
懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー−アガー、およびトラガント、ならびにこれらの混合物などの懸濁剤を含有し得る。
【0107】
本明細書で開示されるある特定の組成物は、皮膚または粘膜に外用投与することができる。外用製剤はさらに、皮膚透過強化剤または角質層透過強化剤として有効であることが公知の、多種多様な作用因子の1つまたは複数も含み得る。これらの例は、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルアルコールまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾンである。化粧品的に許容可能な製剤を作製するための追加の作用因子も、さらに含めることができる。これらの例は、脂肪、蝋、油、色素、香料、保存剤、安定化剤、および表面活性剤である。当技術分野で公知のものなどの角質溶解剤もまた、含めることができる。例は、サリチル酸および硫黄である。
【0108】
外用投与または経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤を含む。活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容されるキャリア、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、または促進剤と共に混合することができる。軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、本発明の対象の化合物(例えば、フォリスタチンポリペプチド)に加えて、動物脂肪および植物脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、および酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤も含有し得る。
【0109】
散剤およびスプレーは、対象の化合物に加えて、ラクトース、滑石、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤も含有し得る。スプレーは加えて、クロロフルオロハイドロカーボンなど、常用の推進剤、ならびに、ブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素も含有し得る。
【0110】
ある特定の実施形態では、非経口投与に適する医薬組成物は、1つまたは複数のフォリスタチンポリペプチドを、1つまたは複数の薬学的に許容される、無菌かつ等張の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液、もしくはエマルジョン、または、使用直前に無菌の注射用溶液もしくは注射用分散液に再構成され得る無菌粉末(抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、懸濁剤、もしくは増粘剤を含有し得る)と組み合わせて含み得る。本発明の医薬組成物中で利用され得る、適切な水性および非水性のキャリアの例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0111】
本発明の組成物はまた、保存剤、保湿剤、乳化剤、および分散化剤などの佐剤も含有し得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどを組み入れることにより確保することができる。を含む等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に組み入れることも望ましいと考えられる。加えて、注射可能な医薬形態の吸収の遅延も、例えば、吸収を遅延させる作用因子、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組み入れることにより、もたらすことができる。
【0112】
投与レジメンは、主治医が、本発明の主題の化合物(例えば、フォリスタチンポリペプチド)の作用を修飾する種々の因子について検討して決定することが理解される。種々の因子は、処置される疾患に依存する。
【0113】
特定の実施形態では、本発明はまた、本明細書に開示のフォリスタチンポリペプチドまたは他の作用因子のインビボ産生のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、上に列挙したような障害を有する細胞または組織中にフォリスタチンポリヌクレオチド配列を導入することによってその治療作用を達成する。フォリスタチンポリヌクレオチドの送達は、例えば、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いることによって達成され得る。フォリスタチンポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいことは、標的化されたリポソームの使用である。
【0114】
本明細書中で教示されるような遺伝子治療に利用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、好ましくは、RNAウイルス(例えば、レトロウイルス)が挙げられる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリのレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多数のさらなるレトロウイルスベクターが多数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、形質導入された細胞が同定および生成され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的特異的とされ得る。好ましい標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、フォリスタチンポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム中に挿入され得るか、または、ウイルスエンベロープに付着され得ることを認識する。好ましい一実施形態では、ベクターを、骨、軟骨、筋肉、またはニューロンの細胞/組織に標的化する。
【0115】
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクション法によって、レトロウイルスの構造遺伝子、gag、polおよびenvをコードするプラスミドを用いて直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は、次いで、関心のある遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
【0116】
フォリスタチンポリヌクレオチドのための別の標的化送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが、水性の内部に封入され得、そして、生物学的に活性な形態で細胞へと送達され得る(例えば、Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁(1981年)を参照のこと]。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移入のための方法は当該分野で公知である、例えば、Manninoら、Biotechniques、6巻:682頁、1988を参照のこと。リポソームの組成は通常、通常、ステロイド(特に、コレステロール)との組み合わせのリン脂質の組み合わせである。他のリン脂質または他の脂質も使用し得る。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。リポソーム産生に有用な脂質として、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドが挙げられる。例示的なリン脂質として、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいたリポソームの標的化もまた可能であり、当該分野で公知である。
【実施例】
【0117】
(実施例)
本発明は、ここで、一般的に記載されるが、単に本発明の特定の実施形態を例示する目的のために含められる以下の実施例を参照するとより容易に理解される。これらの実施例は、本発明を限定するとは意図されない。
(実施例1)
フォリスタチン−Fcタンパク質の生成
【0118】
フォリスタチン(FST)は、複雑な薬物動態挙動をとることが公知である。短い形態のFST(288)は、リガンドの遮断においてより有効であり、そのマスキングされていないヘパリン結合性ドメインに部分的に起因して細胞表面に結合することが報告されている。FST(315)は、それほど有効でなく、ヘパリン結合性ドメインを中和する酸に富むC末端のアミノ酸配列に起因して細胞表面にそれほど引き寄せられないと考えられている。文献では、フォリスタチンは一般に、全身効果を及ぼすものとして報告されている。本出願人らは、投与組織(注射される筋肉など)内で効果を及ぼす傾向があるフォリスタチン構築物を設計し得るのかどうか、およびフォリスタチンの二量体化により、組織内貯留の増強がもたらされるのかどうかを決定しようとした。免疫グロブリンのFcドメインは、二量体を形成することが公知である。フォリスタチン−Fc融合タンパク質の、筋肉および他の組織に対する効果について探索し、Fc媒介性の二量体化の、フォリスタチンポリペプチドの薬物動態特性に対する効果について評価するため、本出願人らは、IgG1のFc部分に融合させた、FST(288)またはFST(315)を含有する融合タンパク質を生成した。各フォリスタチンポリペプチドを、Fc部分に接合するために、TGGGリンカー配列を選択した。
【0119】
各FST−IgG1構築物のために、以下の3つのリーダー配列:
(1)フォリスタチンリーダー:MVRARHQPGGLCLLLLLLCQFMEDRSAQA(配列番号23)
(2)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号24)
(3)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号25)
について検討した。
【0120】
選択されたFST−Fcタンパク質は、フォリスタチンリーダーを組み込んでいる。FST(288)−IgG1融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化16】
【0121】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号28)をもたらすことができる。
【化17】
【0122】
FST(315)−IgG1融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化18】
【0123】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号31)をもたらすことができる。
【化19】
【0124】
タンパク質は、HEK−293細胞内またはCHO細胞内で発現させ、濾過およびプロテインAクロマトグラフィーにより、馴化培地から精製した。場合によって、アニオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーならびに/またはゲル濾過もまた使用した。
【0125】
タンパク質の活性は、アクチビンAまたはGDF11への結合により評価した。各場合において、タンパク質は、10pM未満のK
Dで結合する。
(実施例2)
マウスにおける、フォリスタチン−Fcタンパク質の全身投与の、筋量および筋強度に対する効果
【0126】
本出願人らは、全身投与の後に、野生型マウスにおける筋量および筋強度を増大させるフォリスタチン−Fcタンパク質の能力を決定した。除脂肪筋量の全身における実質的な増大を刺激することが周知であるActRIIB−Fc融合タンパク質を、陽性対照として使用した。
【0127】
C57BL/6マウスに、FST(288)−IgG1タンパク質、ヒトFST(315)−IgG1タンパク質、またはヒトActRIIB−Fcタンパク質を、毎週2回ずつ4週間にわたり投薬(10mg/kg;皮下(s.c.))した。マウスを、全身核磁気共鳴(NMR)走査にかけて、全身除脂肪組織量のパーセント変化を決定した。ActRIIB−Fcで処置されたマウスは、除脂肪組織における、ビヒクル対照群と比較した場合の有意な(およそ35%)増大を呈示した。FST(288)−IgG1またはFST(315)−IgG1タンパク質で処置されたマウスは、対照コホートと比較して、除脂肪組織量の増大をほとんど呈示しなかった。
図2を参照されたい。研究の終了時において、胸筋、前脛骨(TA)筋、腓腹筋、および大腿骨筋を摘出し、秤量した。
図4において示される通り、ActRIIB−Fc処置は、これらの筋肉群の各々における筋量を有意に増大させた。これに対し、FST(288)−IgG1またはFST(315)−IgG1処置群では、筋量の増大がほとんど観察されないか、または全く観察されなかった。
図2を参照されたい。
【0128】
この研究の経過ではまた、マウスを、筋強度の変化についても検討した。力変換器を引っ張るときにマウスが及ぼす力を測定して、前足握力を決定する。本出願人らは、ActRIIB−Fcタンパク質で処置されたマウスが、筋強度の増大を呈示することを観察した。これに対し、FST(288)−IgG1またはFST(315)−IgG1処置群では、握力の増大が観察されなかった。
図3を参照されたい。
【0129】
まとめると、結果は、ActRIIB−Fcの全身投与は、マウスにおける筋量および筋強度の両方を、ビヒクル対照動物と比較した場合に、大幅に増大させることを確認する。これに対し、フォリスタチン−Fc融合タンパク質である、FST(288)−IgG1またはFST(315)−IgG1により処置されたマウスでは、筋量または筋強度の増大が、ほとんど観察されないか、または全く観察されなかった。したがって、フォリスタチン−Fc融合タンパク質は、インビボにおいて全身投与された場合、筋量または筋強度に対する効果をほとんど及ぼさないか、または全く及ぼさないと考えられる。
(実施例3)
フォリスタチン−Fcタンパク質の全身投与の、FSHレベルに対する効果
【0130】
フォリスタチンは、シグナル伝達タンパク質のTGF−ベータスーパーファミリーのメンバーに結合し、かつ、これらを阻害するその能力について主に特徴付けられる。特に、フォリスタチンは、アクチビン活性の強力な阻害剤であることが公知である。アクチビンとは、濾胞刺激ホルモン(FSH)生成の強力な誘導因子である。FSHは、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン分泌細胞により、合成および分泌され、思春期の成熟時における成長および発育、ならびに体内の種々の生殖のプロセスを調節する。フォリスタチン−Fcポリペプチドの全身効果を評価するため、FSHレベルに対する効果について評価した。
【0131】
FST(288)−IgG1による処置(10mg/kg;毎週2回ずつの皮下(s.c.))は、3.836(±5.22)μg/mLの薬物循環レベルを結果としてもたらした。FST(315)−IgG1による同様の処置は、19.31(±1.85)μg/mLという、実質的により高度な血清薬物レベルを結果としてもたらした。
図5に指し示される通り、FST(288)−IgG1は、FSHの血清レベルに対して、著明な効果を何ら及ぼさなかったことから、このFST(288)−IgG1処置レジメは、全身アクチビン活性に対して、著明な影響を及ぼさないことが示唆される。これに対し、FST(315)−IgG1処置は、FSHの循環レベルの低下を結果としてもたらしたことから、FST(315)−IgG1の全身投与は、全身性のアクチビンシグナル伝達に対して効果を及ぼすことが指し示される。総じて、これらのデータは、FST(288)−IgG1など、マスキングされていないヘパリン結合性ドメインを伴うフォリスタチンポリペプチドであって、二量体化を媒介するFcドメインに融合させたフォリスタチンポリペプチドの使用が、全身活性をほとんど及ぼさないか、または全く及ぼさないタンパク質を結果としてもたらすのに対し、マスキングされたヘパリン結合性ドメインを伴うFST(315)−IgG1は、全身効果を達成するのに使用し得ることを指し示す。
(実施例4)
マウスにおける、フォリスタチン−Fcタンパク質の局所投与の、筋量および筋強度に対する効果
【0132】
全身投与の後では、著明な効果が見られなかったが、本出願人らは、フォリスタチンを使用して、筋内(i.m.)投与の後で野生型マウスにおける筋量および筋強度を局所的に増大させ得るのかどうかについて、同様の実験法を使用して決定した。
【0133】
C57BL/6マウスに、FST(288)−Fcタンパク質、FST(315)−Fcタンパク質、またはヒトActRIIB−Fcタンパク質を、毎週2回ずつ4週間にわたり投薬(50マイクログラム;右腓腹筋にi.m.)した。最初の処置の後の種々の時点において、マウスを、全身核磁気共鳴(NMR)走査にかけて、全身除脂肪組織量のパーセント変化を決定した。ActRIIB−Fcで処置されたマウスは、除脂肪組織における、ビヒクル対照群と比較した場合の有意な増大を呈示した。これに対し、FST(288)−Fcタンパク質またはFST(315)−Fcタンパク質で処置されたいずれのマウスも、除脂肪組織量における、対照コホートと比較した有意な増大を呈示しなかった。研究の終了時において、右の注射された腓腹筋および左の対側腓腹筋の両方を摘出し、秤量した。
図6において示される通り、ActRIIB−Fc処置は、右腓腹筋および左腓腹筋の両方における筋量を、ビヒクルで処置されたマウスと比較して有意に増大させた。したがって、ActRIIB−Fcは、単一の筋肉内の局所投与に制限された場合でもなお、筋量の増大に対して全身効果を及ぼす。これに対し、FST(288)−FcおよびFST(315)−Fcのいずれも、右腓腹筋の筋量の有意な増大を結果としてもたらしたが、対側筋の質量に対する効果は及ぼさなかった。したがって、全身投与の後で観察された効果とは対照的に、フォリスタチンタンパク質は、筋肉に直接投与される場合に、筋量の強力な刺激因子であると考えられる。さらに、フォリスタチンは、筋量に対するその効果が、投与部位に局在化されるという点で、ActRIIB−Fcのような他の作用因子に対して顕著に異なる利点を有するとも考えられることから、フォリスタチンを、周囲の標的とされていない筋肉の正常な成長/活動に影響を及ぼさずに、選択された筋肉または筋肉群を標的とする療法のために使用し得ることが指し示される。
【0134】
本出願人らはまた、i.m.投与の後における、フォリスタチン−Fc融合タンパク質の血清レベルについても緊密にモニタリングした。FST(288)−IgG1による処置は、0.156(±0.245)μg/mLの薬物循環レベルを結果としてもたらした。FST(315)−IgG1による同様の処置は、3.58(±1.73)μg/mLという、わずかにより高度な血清薬物レベルを結果としてもたらしたが、これらのレベルは、FST(315)−IgG1の全身投与の後で観察されたレベルより実質的に低度であった。FST(288)−IgG1およびFST(315)−IgG1のいずれも、i.m.注射後において、患者血清中、FST(288)−IgG1の全身投与の後で観察されるレベル(すなわち、3.836(±5.22)μg/mL)より低レベルで循環するので、FST(288)−IgG1またはFST(315)−IgG1のいずれも、FST(288)−IgG1が、s.c.投与の後で、このような効果を及ぼさなかったのと同様に、FSHの血清レベルに対して、有意な効果を及ぼさないことが予測される。
図5を参照されたい。したがって、これらのデータは、FST(288)−IgG1およびFST(315)−IgG1のいずれも、特に、生殖的に活動的であるか、または生殖系に対する影響を最小化するように所望する患者における、標的化された筋成長を促進するのに十分に適することを指し示す。
【0135】
同様の実験を実行して、FST(288)−IgG1の、筋量および筋質に対する効果についての用量反応曲線を確立した。C57BL/6マウスに、毎週2回ずつ4週間にわたり、様々な量で(1〜100マイクログラム)、右腓腹筋にi.m.投薬した。
図8において示される通り、注射された筋肉の筋量の、対側筋と対比した選択的増大は、FST(288)−IgG1の用量の増量と共に大きくなった。筋断面は、筋量の増強が、低形成ではなくて、筋肉線維肥大の結果であることを明らかにした。
(実施例5)
局所作用型フォリスタチン−Fc融合タンパク質のFc最適化
【0136】
前出の実施例で記載した通り、FST(288)−IgG1およびFST(315)−IgG1などのフォリスタチン−Fc融合タンパク質は、筋肉および他の組織に対する全身効果が小さく、特に、タンパク質のFST(288)形態は、注射部位において活性である。本出願人らおよびその他は、FST(288)は、ヘパリン結合性ドメインにより細胞に結合し、この結合は、外因性ヘパリンにより消失させ得ることを確立した。結果として、本出願人らは、標的とされる細胞に対するCDC作用およびADCC作用を媒介することが公知である免疫グロブリンドメインが、ヘパリン結合性フォリスタチン構築物で処置された細胞への損傷を引き起こし得ることを決定した。このような損傷は、標的とされる組織内の免疫反応または標的とされる組織の成長の減殺として顕在化し得る。したがって、本出願人らは、フォリスタチンポリペプチドの変化形であって、CDC活性およびADCC活性を刺激する能力が減殺されていることが公知のIgG定常ドメインの例である、ヒトIgG2のFc部分を利用する変化形を生成した。この実験を実行して、代替的なFcドメインを使用するフォリスタチン−Fc融合タンパク質が、活性を保持するのかどうかを確認した。
【0137】
本出願人らは、IgG2のFc部分に融合させた、FST(288)またはFST(315)を含有する融合タンパク質を生成した。各フォリスタチンポリペプチドをFc部分に接合するために、TGGGリンカー配列を選択した。
【0138】
各FST−IgG2構築物のために、フォリスタチンリーダーを利用した。
【0139】
FST(288)−IgG2融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化20】
【0140】
これは、以下の核酸配列(配列番号44)によりコードされる。
【化21-1】
【化21-2】
【化22】
【0141】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号34)をもたらすことができる。
【化23】
【0142】
FST(315)−IgG2融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化24】
【0143】
これは、以下の核酸配列(配列番号45)によりコードされる。
【化25】
【化26】
【0144】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号37)をもたらすことができる。
【化27】
【0145】
タンパク質は、HEK−293細胞内またはCHO細胞内で発現させ、濾過およびプロテインAクロマトグラフィーにより、馴化培地から精製した。場合によって、アニオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーならびに/またはゲル濾過もまた使用した。
【0146】
タンパク質の活性は、アクチビンAまたはGDF11への結合により評価した。各場合において、タンパク質は、10pM未満のK
Dで結合する。これらのデータは、フォリスタチン−IgG2融合タンパク質が、生成、発現され、ピコモル濃度のリガンド結合活性を保持し得ることを指し示す。
(実施例6)
最適化された局所作用型フォリスタチン−Fc融合タンパク質
【0147】
最適のフォリスタチン−Fc融合タンパク質を生成し得るのかどうかについて評価するため、FST(288)およびFST(315)のC末端の間の様々な切断型を生成した。これらの切断型の1つであって、アミノ酸291で終わり、FST(291)と称する切断型は、FST(315)のマスキングドメインの小部分を含有するにもかかわらず、他の形態と比較して優れた発現特性を示し、所望されるヘパリン結合活性を保持した。この形態を、ヒトIgG1およびヒトIgG2のFc部分に融合させて、FST(291)−IgG1およびFST(291)−IgG2を生成した。
【0148】
各フォリスタチンポリペプチドを、Fc部分に接合するために、TGGGリンカー配列を選択した。
【0149】
各FST−IgG1構築物のために、フォリスタチンリーダーを利用した。
【0150】
FST(291)−IgG1融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化28】
【0151】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号40)をもたらすことができる。
【化29】
【0152】
FST(291)−IgG2融合物は、下記に示される、プロセシングされていない成熟アミノ酸配列を有する。
【化30】
【0153】
最初の「GN」配列を除去し、以下のポリペプチド(配列番号43)をもたらすことができる。
【化31】
【0154】
タンパク質は、HEK−293細胞内またはCHO細胞内で発現させ、濾過およびプロテインAクロマトグラフィーにより、馴化培地から精製した。場合によって、アニオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーならびに/またはゲル濾過もまた使用した。
【0155】
タンパク質の活性は、アクチビンAまたはGDF11への結合により評価した。各場合において、タンパク質は、10pM未満のK
Dで結合する。
【0156】
追加の切断型の実験を実行して、TGGGリンカーの文脈で、効力が大きく、処置される組織内に貯留する傾向が強く、処置される組織内で炎症反応または免疫反応を生成する傾向が小さいポリペプチドを生成するように、最適のリガンドおよびヘパリン結合活性を呈示するフォリスタチン−IgG2構築物を同定した。この目的で、FST(278)−IgG2、FST(284)−IgG2、FST(291)−IgG2およびFST(303)−IgG2と称する一連の構築物を生成し、互いと比較し、FST(288)−IgG2およびFST−(315)−IgG2とも比較した。ヘパリンへの結合は、ヘパリンの存在下または非存在下において細胞からのタンパク質回収量を測定することにより評価し、ELISAにより定量化し、ヘパリンの存在下で回収されたタンパク質のヘパリンの非存在下で回収されたタンパク質に対する比として表した。下記の表で示される通り、FST(278)−IgG2、FST(284)−IgG2、FST(288)−IgG2およびFST(291)−IgG2の全てが、3.00〜4.00という同様の比を示すのに対し、FST(303)−IgG2およびFST(315)−IgG2は、それぞれ、1.50および0.97の比を示す。これは、291位と303位との間により多くのアミノ酸が含まれるほど、ヘパリン結合活性が急激に低減されることを指し示す。
【表1】
【0157】
アクチビンおよびGDF11の阻害を評価するための細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイ(WO/2006/012627において記載されている、A−204レポーター遺伝子アッセイ)を実行した。下記の表で示される通り、構築物を、288位を超えて伸長させたところ、リガンド阻害の増強がもたらされた。
【表2】
【0158】
ヘパリン結合データおよびリガンド阻害データをまとめると、本実施例で使用されたTGGGリンカー、または同様のサイズのリンカー(例えば、1〜10アミノ酸、任意選択で、3〜8アミノ酸のサイズのリンカー)の文脈では、291〜302位で終わるFST−IgG2構築物は、FST(288)−IgG2と比べて、リガンド阻害が増強されており、FST(315)−IgG2と比べてヘパリンへの結合が増強されていること、およびFST(291)−IgG2は、局所投与および局所効果に最適のタンパク質を代表することが明らかである。
(実施例7)
マウスにおける、FST(291)−IgG2タンパク質の局所投与の、筋量および筋強度に対する効果
【0159】
本出願人らは、筋内(i.m.)投与の後の野生型マウスにおける筋量および筋強度を局所的に増大させるのに使用した場合の、最適化FST(291)−IgG2タンパク質の活性を評価した。
【0160】
C57BL/6マウスに、ビヒクル(PBS)、FST(291)−IgG2、またはIgG1に由来する対照Fcを、毎週2回ずつ4週間にわたり投薬(50マイクロリットル中に100マイクログラム;左腓腹筋にi.m.)した。研究の終了時において、左の注射された腓腹筋および右の対側腓腹筋の両方を摘出し、秤量した。
図9において示される通り、FST(291)−IgG2処置は、注射された左腓腹筋内の筋量を、ビヒクルで処置されたマウスと比較して、顕著な程度に有意に増大させたが、対側筋では効果が観察されなかった。加えて、胸筋および大腿骨筋を秤量したところ、ビヒクルまたはFST(291)−IgG2の投与の結果としての変化は示されなかった。したがって、FST(291)−IgG2の効果は、注射された筋肉群に制限されており、全身効果はほとんど及ぼさないか、または全く及ぼさない。同様の実験を実行して、三頭筋および前脛骨筋を含む、異なる筋肉群に注射した。各場合に、注射された筋肉の選択的肥大が観察された。
【0161】
追加の実験を実行して、FST(288)−IgG1およびFST(291)−IgG2の、筋成長に対する効果を直接比較した。いずれの構築物も、注射された筋肉(腓腹筋)内の著明な筋量の増大を促進したが、FST(291)−IgG2が、対側筋と対比して注射された筋肉においておよそ42%の増大を引き起こしたのに対し、FST(288)−IgG1は、対側筋と対比して注射された筋肉においておよそ22%の増大を引き起こした。
【0162】
したがって、これらのデータは、FST(291)−IgG2が、それを必要とする患者における、標的とされる筋肉の成長を促進するために最適の化合物であることを指し示す。
(実施例8)
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおける、FST(291)−IgG2タンパク質の局所投与の、筋肉に対する効果
【0163】
FST(291)−IgG2の、筋量に対する効果を、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおいて評価した。マウスのC57BL/10ScCN−Dmd
mdx/J(mdx)株は、ヒトデュシェンヌ型筋ジストロフィーについての、十分に確立されたモデルである(Bulfield, Sillerら、1984年;Partridge、2013年)。
【0164】
mdxマウスおよび野生型バックグラウンド株であるC57BL/10SnJ(WT)について、2つの個別の研究を実施した。第1の研究では、マウスが6週齢に達したときに、処置(FST(291)−IgG2またはビヒクル対照)を開始した。第2の研究では、マウスが4週齢に達したときに、処置を開始した。いずれの研究でも、マウスの左腓腹筋に、100μgのFST(291)−IgG2を、注射1回当たり50μLの固定容量で、筋内に毎週2回ずつ施した。4週齢のマウスは、4週間にわたり処置し、6週齢のマウスは、6週間にわたり処置した。
【0165】
剖検時に、注射された(左)脚部および対側の注射されていない(右)脚部に由来する腓腹筋を切除し、秤量した。いずれの研究でも、FST(291)−IgG2で処置されたWT動物に由来する、注射された腓腹筋のサイズは、対側脚部ならびにビヒクル対照と比較して有意に(P<0.001)大きかった。いずれの研究でも、FST(291)−IgG2で処置された腓腹筋は、体重に照らして標準化されたサイズが、WTマウスおよびmdxマウスのいずれにおいても、対側筋およびビヒクル処置動物と比較して、有意に大きかった。筋量の増大は、若齢動物において、老齢動物におけるよりいくぶんか顕著であった。対側筋と比べたパーセントの増大に関して、FST(291)−IgG2は、筋量を、6週齢のWTマウスおよびmdxマウスにおいて、それぞれ、34.2%および16.4%増大させた。4週齢のWTマウスおよびmdxマウスでは、それぞれ、62.8%および41.8%の筋量の増大が観察された。
【0166】
これらのデータは、毎週2回ずつの筋内FST(291)−IgG2投与を使用して、アクチビン/ミオスタチンシグナル伝達を遮断することにより、筋ジストロフィーのマウスモデルにおける筋量が増大することを実証する。筋量の増大は、注射された筋肉内だけで局所的に生じる。
参照による組込み
【0167】
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0168】
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。