【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。実施例における評価項目は以下のとおりである。
【0033】
(1)衝撃吸収率
まず、PCB社製センサー(製品名;480C02)上に設置したステンレス板に、重さ10g、直径13mmのステンレス製ボールを40cmの高さから垂直落下させ、センサーに接続したヒオキ社製ハイレコーダ(製品名;MR8870)で衝撃量S
Aを測定した。次に、当該センサー上のステンレス板表面に実施例および比較例で得られたガラス層付積層体を載置し、当該ガラス層付積層体に上記ステンレス製ボールを40cmの高さから垂直落下させて同様に衝撃量S
Bを測定した。S
A、S
Bおよび下記式を用いて、衝撃吸収率を求めた。
衝撃吸収率(%)={(S
A−S
B)/S
A}×100
(2)鉛筆硬度
実施例および比較例で得られたガラス層付積層体について、JIS K 5600「引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定した。
【0034】
<製造例1:粘着剤層の形成>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート92重量部、N−アクリロイルモルホリン(ACMO)5重量部、アクリル酸2.9重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃ 付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー溶液を調製した。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は178万であった。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、架橋剤としてジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期:130℃)0.15重量部、およびトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物からなるポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)0.6重量部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。次いで、得られたアクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、150℃で3分間乾燥・架橋処理をおこない、乾燥後の厚さが5μmの粘着剤層Aを形成した。
【0035】
<製造例2:粘着剤層の形成>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部、酢酸エチル200重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃ 付近に保って7時間重合反応を行い、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度を30%に調整し、アクリル系ポリマー溶液を調製した。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は160万であった。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学社製)0.1重量部、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂社製)0.3重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)0.08重量部を配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。次いで、得られたアクリル系粘着剤溶液を、シリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ:38μm)の片面に塗布し、150℃で3分間乾燥・架橋処理をおこない、乾燥後の厚さが15μmの粘着剤層Bを形成した。
【0036】
<製造例3:粘着剤層の形成>
厚みを23μmとしたこと以外は製造例2と同様にして粘着剤層Cを形成した。
【0037】
<製造例4:粘着剤層の形成>
メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPMA)60重量部およびメタクリル酸メチル(MMA)40重量部、連鎖移動剤としてα−チオグリセロール3.5重量部、および重合溶媒としてトルエン100重量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリルオリゴマーを得た。オリゴマーの重量平均分子量は5100、ガラス転移温度(Tg)は130℃であった。
【0038】
一方、ラウリルアクリレート(LA)43重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)44重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)6重量部、およびN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)7重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF社製「イルガキュア184」0.015重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物(重合率;約10%)を得た。得られたプレポリマー組成物100重量部に、後添加成分として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.07重量部、上記のアクリルオリゴマー3重量部、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加し、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。
【0039】
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRF75」)を基材(兼重剥離フィルム)として、基材上に上記の光硬化性粘着剤組成物を厚み15μmになるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、カバーシート(兼軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルMRE75」)を貼り合わせた。この積層体に、カバーシート側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cm
2になるように位置調節したブラックライトにより紫外線を照射して光硬化を行い、厚み15μmの粘着剤層Dを形成した。
【0040】
<製造例5:粘着剤層の形成>
厚みを50μmとしたこと以外は製造例4と同様にして粘着剤層Eを形成した。
【0041】
<製造例6:衝撃吸収層の形成>
ラウリルアクリレート(LA)79重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)20重量部、および4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1重量部、ならびに光重合開始剤としてBASF社製「イルガキュア184」0.015重量部を配合し、紫外線を照射して重合を行い、プレポリマー組成物(重合率;約10%)を得た。得られたプレポリマー組成物100重量部に、後添加成分として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.30重量部、およびシランカップリング剤(信越化学製「KBM403」)0.3重量部を添加し、これらを均一に混合して、粘着剤組成物を調製した。以降の手順は製造例4と同様にして、厚み100μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を衝撃吸収層Iとした。
【0042】
<製造例7:衝撃吸収層の形成>
製造例6と同様にして厚み50μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を衝撃吸収層IIとした。
【0043】
<製造例8:衝撃吸収層の形成>
製造例6と同様にして厚み200μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を衝撃吸収層IIIとした。
【0044】
<製造例9:位相差層付偏光板の作製>
9−1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が43.0%以上となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%、ヨウ化カリウム5.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光子を形成した。
【0045】
9−2.偏光板の作製
上記で得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてアクリル系フィルム(表面屈折率1.50、40μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護層/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0046】
9−3.位相差層を構成する第1の液晶配向固化層および第2の液晶配向固化層の作製
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm
2の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.5μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
【0047】
9−4.位相差層付偏光板の作製
上記9−2で得られた偏光板の偏光子表面に、上記9−3で得られた液晶配向固化層Aおよび液晶配向固化層Bをこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と液晶配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と液晶配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。なお、それぞれの転写(貼り合わせ)は、上記8−2で用いた紫外線硬化型接着剤(厚み1.0μm)を介して行った。このようにして、保護層/接着層/偏光子/接着層/位相差層(第1の液晶配向固化層/接着層/第2の液晶配向固化層)の構成を有する位相差層付偏光板(円偏光板)を得た。得られた位相差層付偏光板の総厚みは52μmであった。
【0048】
<製造例10:樹脂フィルムの作製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた30L反応釜に、8000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10000gのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として10.0gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルパゾール570)を添加すると同時に、20.0gの開始剤と100gのトルエンからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。得られた重合体溶液に、10gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(Φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なラクトン環含有アクリル系樹脂ペレットを得た。ラクトン環含有アクリル系樹脂ペレットのラクトン環化率は97.0%、質量平均分子量は147700、Tg(ガラス転移温度)は130℃であった。押出機に、上記で得られたラクトン環含有アクリル系樹脂を供給し、250℃で溶融混錬後、Tダイから押出して、冷却ロールで水冷して引取り、厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムを、逐次二軸押出機で、縦延伸1.8倍(加熱温度140℃)、つづいて横延伸2.4倍(加熱温度140℃)し、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0049】
<実施例1>
ガラス層を構成するガラスフィルムとして、日本電気硝子社製「G−Leaf(登録商標)」(厚み50μm)を用いた。このガラスフィルムに、製造例1で得られた粘着剤層A(第1の粘着剤層)、製造例5で得られた衝撃吸収層I、および製造例3で得られた粘着剤層C(第2の粘着剤層)をこの順に積層し、ガラス層付積層体を得た。このガラス層付積層体の第2の粘着剤層に、製造例8で得られた位相差層付偏光板の保護層を貼り合わせ、最終的なガラス層付積層体を得た。最終的に得られたガラス層付積層体を上記(1)〜(2)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0050】
<実施例2〜9および比較例1〜5>
第1の粘着剤層、第2の粘着剤層および衝撃吸収層、ならびに光学フィルムまたは樹脂フィルムを表1に示す組み合わせで用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス層付積層体を得た。最終的に得られたガラス層付積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。なお、樹脂フィルムとしては、製造例10で作製したアクリル系樹脂フィルムを用いた。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から明らかなとおり、それぞれ特定の構成を有する第1の粘着剤層と衝撃吸収層と第2の粘着剤層とを組み合わせて用いることにより、所定値以上の衝撃吸収率を得ることができ、結果として、表面硬度(鉛筆硬度)および耐衝撃性に共に優れたガラス層付積層体を得ることができる。