特許第6856768号(P6856768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856768設計ツールからのデータおよびデジタルツイングラフからの知識を用いた自律生成設計合成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856768
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】設計ツールからのデータおよびデジタルツイングラフからの知識を用いた自律生成設計合成システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/27 20200101AFI20210405BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20210405BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20210405BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20210405BHJP
   G06N 5/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   G06F17/50 604D
   G06F17/50 630
   G06F17/50 604H
   G06F17/50 602A
   G06F17/50 614D
   G06F17/50 612A
   G06N5/00
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-552988(P2019-552988)
(86)(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公表番号】特表2020-515963(P2020-515963A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】US2018024490
(87)【国際公開番号】WO2018183275
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】62/476,961
(32)【優先日】2017年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リヴィオ ダルローロ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード スラヴィン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】サンジーヴ スリヴァスタヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ルチア ミラベッラ
(72)【発明者】
【氏名】スラジ ラヴィ ムスヴァティ
(72)【発明者】
【氏名】アルキメデス マルティネス カネド
(72)【発明者】
【氏名】エルハン アリソイ
【審査官】 堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−518449(JP,A)
【文献】 特開2002−197122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0188675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00−30/398
G06N5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルツイングラフを有するシステム内の自律生成設計システムであって、該システムは、
人間可読フォーマットでシステムの要求ドキュメントを受信し、該要求ドキュメントに含まれる要求および設計制約を含む有効情報を抽出して前記デジタルツイングラフへインポートする、要求抽出ツールと、
前記デジタルツイングラフと通信し、前記デジタルツイングラフに含まれる設計問題に関連する情報に基づいて設計代案のセットを生成し評価する、合成分析ツールと、
を含み、
前記合成分析ツールは、
前記要求と、前記デジタルツイングラフによって表現されているシステムの構成要素間の関係とに基づいて、設計代案のセットを生成する代案生成装置と、
前記要求と、前記設計制約とに基づいて、各設計代案を検証し、設計代案の品質を定量化するための所定のメトリックを計算する、定量化検証装置と、
を含む、
システム。
【請求項2】
前記システムはさらに、ユーザと自身とのインタラクションを取得するオブザーバを有する設計ツールを含み、該設計ツールは前記デジタルツイングラフと通信し、
前記デジタルツインと通信する前記設計ツール内のオブザーバは、前記設計ツールとユーザとのインタラクションの時系列を取得し、取得したインタラクションを有効情報に変換し、該情報を前記デジタルツイングラフに伝達する、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記システムはさらに、前記設計ツールおよび前記デジタルツイングラフと通信するインサイタを含み、該インサイタは、前記デジタルツイングラフを介して前記合成分析ツールから設計代案を受信し、設計ツールを介して、受信した前記設計代案をユーザに提示するように構成されている、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記システムはさらに、前記デジタルツイングラフと通信する要求抽出装置を含み、該要求抽出装置は、人間可読フォーマットで要求ドキュメントを受信し、該要求ドキュメントから有効情報を抽出して、該有効情報を前記デジタルツイングラフへインポートする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記要求抽出装置は、
人間可読形式で要求ドキュメントを受信するステップと、
人間可読ドキュメントをデジタル形式に変換するステップと、
前記ドキュメントに含まれるデータを識別するため、デジタルドキュメントを分析するステップと、
前記要求ドキュメント内のデータから有意味情報を抽出するため、前記ドキュメントに含まれているデータを圧縮するステップと、
前記有意味情報を前記デジタルツイングラフへインポートするステップと
を実行する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記合成分析ツールは、設計およびエンジニアリングプラクティスを識別するための設計ワークフローを識別するコーザルエクスプローラを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記コーザルエクスプローラは、識別された前記設計ワークフローに基づき、ユーザに対して推奨動作順序を作成する、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記システムはさらに、前記デジタルツイングラフと通信する使用製品(PIU)データ抽出装置を含み、該PIUデータ抽出装置は、前記デジタルツイングラフ内に表現されている物理システムから動作データを受信し、前記デジタルツイングラフへのインポートのために有効情報を抽出する、請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記PIUデータ抽出装置は、
前記システムの構成要素から使用製品データを受信するステップと、
前記使用製品データをデジタル形式に変換するステップと、
前記データに含まれる有意味情報を識別するために、デジタルデータを分析するステップと、
前記PIUデータから前記有意味情報を抽出するために。前記PIUデータからの情報を圧縮するステップと、
前記有意味情報を前記デジタルツイングラフへインポートするステップと
を実行する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記システムはさらに、前記デジタルツイングラフと通信するエンジニアリング履歴抽出装置を含み、該エンジニアリング履歴抽出装置は、過去のエンジニアリング設計選択に関連するデータを受信し、該過去のエンジニアリング設計選択から有意味情報を抽出して、該有意味情報を前記デジタルツイングラフへインポートする、請求項1から9までのいずれか1項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)において、“System for Automated Generative Design Synthesis Using Data from Design Tools and Knowledge from a Digital Twin”なるタイトルにて2017年3月27日付提出の米国特許仮出願第62/476961号の優先権を主張するものであり、この出願は引用によりその全体が本願に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本願は、システムの設計に関する。より具体的には、本願は、デジタルツインによって支援される生成設計システムに関する。
【0003】
背景
複雑なシステム、例えばガスタービン、自動車または飛行機の設計には、膨大な量の手動労力が要求される。コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、コンピュータベースの効率を提供することで、幾分かの軽減を提供している。例えば、CADシステムは、システムの詳細な仮想モデルならびにその構成部品およびアセンブリの作成および分析を可能にしている。また、CADシステムは、部品およびアセンブリの性能および挙動をデジタルでシミュレート可能である。また、コンピュータ支援システムは、部品およびシステムの製造プランおよび生産命令を生成可能である。CADシステムはさらに、製造のライフサイクルにわたってデジタル形式での設計関連情報の管理を支援し、共同での製品開発を支援するための情報を提供することができる。
【0004】
コンピュータ支援プロセスの発展にもかかわらず、多くのエンジニアリングタスクがいまだに手動介入を要求しており、手間と時間とがかかっている。さらに、当該領域のノウハウは人的資産に結びついており、設計バリエーションの生成、分析モデルのセットアップ、結果の解釈、設計要求を満足するための設計パラメータの微調整、および適切な製造プロセスプランの作成のために存在し、かつ対応可能な、長年の経験を有する専門家が要求される。自動化エンジニアリングシステムは、上で確認した需要を満足し、人間の専門知識への要求の負荷を軽減する一方、手動システムに関連する予算の制約に起因して実現可能でなかった高度かつ洗練された設計を提供する。
【0005】
概要
デジタルツイングラフを有するシステム内の自律生成設計システムは、ユーザと自身とのインタラクションを取得するオブザーバを有し、かつデジタルツイングラフと通信する設計ツール、人間可読フォーマットでシステムの要求ドキュメントを受信し、当該要求ドキュメントに含まれる有効情報をデジタルツイングラフへインポートする要求抽出ツール(requirements distillation tool)、およびデジタルツイングラフと通信し、取得したユーザと設計ツールとのインタラクションとインポートした要求ドキュメントからの有効情報とに基づいて設計代案のセットを生成する、合成分析ツールを含む。本システムはさらに、デジタルツインと通信し、設計ツールとユーザとのインタラクションの時系列を取得して、当該ユーザインタラクションをデジタルツイングラフに伝達する、設計ツール内のオブザーバを含む。オブザーバに加えて、設計ツールおよびデジタルツイングラフと通信するインサイタが、デジタルツイングラフから設計代案を受信し、設計ツールを介して、受信した設計代案をユーザに提示する。
【0006】
設計生成システムの実施形態によれば、デジタルツイングラフと通信する要求抽出装置(requirements distiller)が、人間可読フォーマットで要求ドキュメントを受信し、デジタルツイングラフへのインポートのために、当該要求ドキュメントから有効情報を抽出する。要求抽出装置は、人間可読形式で要求ドキュメントを受信するステップ、人間可読ドキュメントをデジタル形式に変換するステップ、ドキュメントに含まれるデータの識別のために、デジタルドキュメントを分析するステップ、要求ドキュメント内のデータからの有意味情報の抽出のために、ドキュメントに含まれているデータを圧縮するステップ、および有意味情報をデジタルツイングラフへインポートするステップを実行する。
【0007】
ここでの実施形態による自律生成設計システムは、合成分析ツールを含む。合成分析ツールは、要求とデジタルツイングラフによって表現されているシステムの構成要素間の関係とに基づいて設計代案のセットを生成する代案生成装置、要求と要求ドキュメントに含まれる設計制約(design constraint)とに基づいて各設計代案を検証する定量化検証装置、ならびに設計およびエンジニアリングのプラクティス(engineering practice)を識別するための設計ワークフローを識別するコーザルエクスプローラを含む。コーザルエクスプローラは、識別された設計ワークフローに基づき、ユーザに対して推奨動作順序を作成し、設計ツールを介して当該推奨動作順序をユーザに提示する。本システムは、デジタルツイングラフと通信する使用製品(PIU)データ抽出装置(data distiller)を含むことができ、当該PIUデータ抽出装置は、デジタルツイングラフ内に表現されている物理システムから動作データを受信し、デジタルツイングラフへのインポートのために有効情報を抽出する。幾つかの実施形態では、PIUデータ抽出装置は、人間可読形式で要求ドキュメントを受信するステップ、人間可読ドキュメントをデジタル形式に変換するステップ、ドキュメントに含まれるデータの識別のため、デジタルドキュメントを分析するステップ、要求ドキュメント内のデータから有意味情報を抽出するため、ドキュメントに含まれているデータを圧縮するステップ、および有意味情報をデジタルツイングラフへインポートするステップを実行する。
【0008】
デジタルツイングラフを含むシステムにおける自律生成設計方法によれば、要求ドキュメントを要求に関連する有効情報を抽出し、当該有効情報をデジタルツイングラフへインポートすること、ユーザと設計ツールとのインタラクションを取得し、当該インタラクションをデジタルツイングラフへインポートすること、要求ドキュメントの有効情報に基づいて設計代案のセットを合成すること、設計代案のセット内の各設計代案を要求ドキュメントの有効情報に対して検証すること、設計代案を所定のメトリックに基づいて定量化すること、および設計代案のセットのうち選択された設計代案をユーザに示唆することを含む。本方法はさらに、設計代案のセットの各設計代案についてシミュレーションを実行することにより、設計代案のセットの各設計代案を分析すること、および分析と定量化されたメトリックとに基づいて選択された設計代案を選択することを含む。
【0009】
幾つかの実施形態によれば、設計ツールは、設計動作を表すユーザからの命令を受信する。合成分析ツールは、設計代案のセットの分析に基づいて示唆用設計動作を生成し、示唆用設計動作をユーザに供給する。ユーザは設計ツールに対する命令を形成可能であるが、代替的に、合成分析ツールが示唆用設計動作を生成して当該示唆用設計動作をユーザに提示し、当該ステップを設計プロセスが完了するまで反復してもよい。
【0010】
幾つかの実施形態によれば、要求ドキュメントの抽出は、人間可読形式で要求ドキュメントを受信すること、人間可読ドキュメントをデジタル形式に変換すること、ドキュメントに含まれるデータを識別するためにデジタルドキュメントを分析すること、要求ドキュメント内のデータから有意味情報を抽出するためにドキュメントに含まれるデータを圧縮すること、および有意味情報をデジタルツイングラフへインポートすることを含みうる。
【0011】
実施形態によれば、本方法はさらに、設計代案のセットの生成の際の使用のため、デジタルツイングラフ内に表現されている物理システムの動作に関連する使用製品データをデジタルツイングラフへインポートすることを含みうる。
【0012】
デジタルツイングラフを有するシステムの自律生成設計方法の別の実施形態によれば、要求ドキュメントからの情報がデジタルツインへインポートされ、ソフトウェア設計ツールとユーザとのインタラクションが取得されて、デジタルツイングラフへインポートされ、インポートされたユーザインタラクションとインポートされた要求情報とに基づいて設計代案のセットが合成され、設計代案のセットのそれぞれについてデジタルツイングラフ内のシステムがシミュレートされ、さらに、シミュレーションに基づいて最適な設計代案が選択される。要求ドキュメントからのデータは、人間可読形式で要求ドキュメントを受信するステップ、人間可読ドキュメントをデジタル形式に変換するステップ、ドキュメント内のデータを識別するためにデジタルドキュメントを分析するステップ、要求ドキュメントに含まれるデータから有意味情報を抽出するために、ドキュメントに含まれるデータを圧縮するステップ、および有意味情報をデジタルツイングラフへインポートするステップを実行することにより、ドキュメントから抽出される。合成分析ツールでは、デジタルツイングラフ内に表現されている意味情報に基づいて設計代案のセットが生成され、要求情報に対して設計代案のそれぞれが検証され、取得された、人間のユーザとソフトウェア設計ツールとのインタラクションに対応する設計動作が識別され、さらに設計代案のそれぞれについてデジタルツイングラフにおいてシミュレーションが実行される。設計動作は、非限定の例としてであるが、シミュレーションまたは機械学習技術により実行可能な定量化検証に基づいて、最適な設計代案を実行するために選択される。一実施形態では、デジタルツイングラフによって表現されている物理システムからの使用製品情報が、システムのシミュレートの際の使用のため、デジタルツイングラフへインポートされる。
【0013】
本発明の上述した態様および他の態様は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を読む場合に最良に理解される。本発明を説明する目的で、現時点での好ましい実施形態を図面に示したが、本発明は開示した特定の手段に限定されないことを理解されたい。図面には以下の各図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】デジタルツインを用いた従来技術のシステムのブロック図である。
図2】本開示の実施形態による、デジタルツインに基づく自律生成設計システムのブロック図である。
図3】本開示の実施形態による、要求ドキュメンテーションとデジタルツイングラフにおいて使用される使用製品データとを抽出する方法のプロセスフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態による自律生成設計方法のプロセスフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態による自律生成設計方法のプロセスフローチャートである。
図6】本開示の実施形態の態様の実現に使用可能なコンピュータシステムのブロック図である。
【0015】
詳細な説明
デジタル知識ベースでこうした人的資産として存在しているエンジニアリング知識を取得し、これをデータおよびプロセスの履歴によって拡張し、さらにこれを動作データと組み合わせることは、設計代案を自動的に生成しかつ「一度で正しく」の目的を満足するため所定の時間にわたって学習を行える、パワフルなデジタルエンジニアリングシステムの解放にとって重要である。自動化システムは、OEMへの負荷を軽減するのみならず、予算の制約のために考慮できなかった、より良好かつより洗練された設計の作成のためにも所望される。
【0016】
デジタルツインは、現実世界のシステムの仮想コピーを提供する。システムの各構成要素がモデル化される。また、システムの付加的な態様を取得するために、構成要素間および構成要素と環境との間の関係も、デジタルツイン内にモデル化可能である。システム内の関係の識別およびモデル化により、デジタルツインは、システムの構成要素を定義するノードを含み、ノードを接続するエッジが関係を表すグラフとして表現するため、自身をレンダリングする。システムが動作する際、当該システムは、モデル化された関係および構成要素を良好に報知するため、デジタルツイングラフへインポートされるデータを生成する。過去のエンジニアリング決定も取得され、当該実現から学習される教説は、デジタルツインの分析履歴の一部となる。
【0017】
デジタルツインは、製造および動作のデータを収集し分析する。エンジニアリング設計ツールからのデータ、およびエンジニアリング設計ツールとユーザとのインタラクションによってデジタルツインを拡張し、改善された特性(より良好な性能、より長い寿命、より低い製造コストなど)を有する新設計を合成するため、デジタルツイン内のデータおよび知識を水平化することが所望される。今日では、設計データおよび知識の大部分が経験豊富なエンジニアによって取得されている。その一部は、人間可読の技術報告およびドキュメントとして蓄積されるが、大部分は、自動化デジタルシステムが消費可能な形式では存在しない。それらは、分析システムで使用可能な形式でも存在しない。設計要求および目標は、多くの場合、自然言語のみで規定されている。当該領域の専門家は、特定の設計ストラテジに関する知識および知能を蓄積するため、「設計フィロソフィ」ドキュメントを作成する。設計検査結果およびこれに伴うシミュレーション分析データが要約され、設計レビュードキュメントとして蓄積される。この場合、当該ドキュメントは、将来の設計反復または設計バリエーションの報知のために使用される。詳細なデジタルモデル(3D、CAD、CAE、図面)も蓄積される。製造および動作のデータは取得されて増大していくが、典型的には種々異なるシステムにおいて取得されるので、任意の有意味な方式でエンジニアリングデータへのリンクが得られることはまれである。エンジニアが特定の設計特徴を裏付けるために行ったユーザインタラクションおよび決定は記録されない。当該情報はいずれも、新設計の合成の知的なガイドのために自動化方式では使用されない。
【0018】
本開示の実施形態は、エンジニアリングデータおよびエンジニアリングプロセス、設計エンジニアの経験、製造および動作のデータならびに「デジタルツイン」の環境に関する不特定の知識を取得して関連づけ、これらを用いて設計検査における新たなパラダイムを作成することをねらいとしており、ここで、設計者のねらいは、設計ツールが設計空間を自動的に探索し、問題の定義を満足する最適なソリューションへ向かって設計者らを導く、設計問題の定義および検査にある。設計ツールは、設計検査ストラテジを改善し、改善された新設計のバリエーションを提案するために、当該領域の専門家のプリファレンス、設計ツールとエンジニアとのインタラクション、さらにデジタルツイン内の製品データからの知識から連続的に学習する。この場合、設計ツールは、製造に要求される幾何学形状、材料および他の属性を含む設計のデジタル記述を自動的に生成する。設計ツールは、定常的に、一連の設計代案およびこれと共にCAE物理モデルおよび提案される設計目標に対する当該代案の妥当性検査に必要な分析データを生成し、結果を解釈し、設計者を最適な方向へ導くために彼らに対して情報を要約する。最終的に、設計ツールは、適切な製造プロセスプランを自動的に生成する。
【0019】
提案している設計システムは、今日の手動反復プロセスに代えて、完全な自動化設計を可能にする。当該設計システムは、広汎な設計空間の検査を効率的に可能にし、対立する種々の要求および制約を満足する適切な設計を発見する。デジタルツインにおいて取得された当該領域の知識を水平化することにより、専門家でなくとも熟練のエンジニアであれば、迅速に有効な設計を合成することができ、エンジニアの知識および経験をデジタル情報へ移行させて、これを人的資産より長期の組織財産として残すことができる。さらに、エンジニアによる設計よりも良好な性能を提供する革新的な新設計を発見することもできる。
【0020】
デジタルツインは、1つもしくは複数の物理オブジェクトのデジタル表現である。デジタルツインを用いて、設計からデコミッショニングまでのライフサイクル全体がシミュレート可能となり、仮想環境で観察可能となる。モノのインタネット(IoT)が開発されているので、物理システムのモデル化のためのデータの利用可能性の増大に伴ってデジタルツインの使用も増大しており、これにより、デジタルツインモデルの実現はより実際的となっている。デジタルツインは、関連する物理システムと通信可能であり、物理環境からリアルタイムデータ流を受信して当該リアルタイムデータを処理し、受信したデータ内に発見した前兆特徴に基づいて物理オブジェクトの種々の動作状態を予測する。人工知能および他の処理技術を介して、デジタルツインは、自身が表現している物理システムに関する理解、学習および推論を提供する。
【0021】
コンピュータ支援設計(CAD)ツールは、コンピュータシステムまたはワークステーションを用いて、オブジェクトまたはシステムの設計の作成、修正、分析および最適化を行う。CADシステムは、人間可読であって印刷可能な出力を含む出力、または設計を実現するための機械もしくは製造制御に対する動作命令を供給可能なデジタル出力を提供する。CAD出力は、情報、例えば材料、プロセス、寸法およびトレランスを伝達する。CADソフトウェアは、設計エンジニアが他の幾何学オブジェクトに関する寸法、配向およびパースに対して制御可能な種々の幾何学形状を形成できるよう、ユーザに対してグラフィックユーザインタフェース(GUI)を提供する。設計者は、初期設計を作成可能であり、または仕様もしくは設計要求に基づく修正または動作中の設計観察に基づく最適化を作成可能である。オペレータがCADソフトウェアをナビゲートするので、ユーザアクションのシーケンスが作成される。1つの時系列のユーザアクションは、設計課題に対応するアクションを表すパターンへとグループ化可能である。当該パターンは、当該アクションの必要性の識別に要求される人間の知識ならびにアクションが実行される方式の表現と考えることができる。
【0022】
ここで説明しているデジタルツインを用いた自律生成設計システムおよび自律生成設計方法の実施形態によれば、デジタルツインのパワーは、取得された人間の知識と設計要求とによって拡張され、これにより、新設計代案を形成するためのデジタルツインの学習推論能力が得られる。デジタルツインが生成する設計代案は、コンプライアンスを保証するため、要求に対して配列された状態で検証可能である。
【0023】
図1は、産業システムの従来の設計システムのブロック図である。産業システムは、産業機能を実行する物理存在130を含む。物理存在130は、例として、物理構成要素、例えばロボット、機械、コンベヤシステムおよび輸送車両を含むことができる。物理構成要素を支援または制御する他の構成要素、例えばセンサおよびアクチュエータも、物理存在130に含まれていてよい。物理構成要素からのデータ入力を受信し、受信した入力に基づいて論理動作を実行する制御システム135が設けられている。制御システム135は、論理動作の結果に基づいて出力を供給可能である。当該出力は、産業システムの動作を制御するための制御信号を含むことができる。出力は、トレランスを外れる条件についての音響アラーム、例えば高温アラーム、またはシステム制御を動作させるための制御信号を含んでよい。例えば、高温に応答して、出力信号により、超過温度を緩和するための冷却剤流を制御する弁を動作させることができる。
【0024】
産業システムを形成する物理オブジェクトは、典型的にはエンジニア101によって設計される。エンジニア101は、コンピュータ支援設計ツール110により作業し、産業システムの構成要素のための設計代案を形成する。設計ツールは、エンジニア101に設計に関するフィードバック、例えば幾何学制約もしくは提案された設計に基づく強度対重量の考察を供給可能である。エンジニア101は、要求ドキュメンテーション120を用いて少なくとも部分的に設計代案を形成する。要求120は、人間可読フォーマットで、設計される構成要素に要求される機能性および特性に関する情報をエンジニア101に供給するために形成される。
【0025】
エンジニア101の設計は、設計ツール110から出力され、設計を形成する物理システム(例えば工場)130へ供給される115。他の実施形態では、エンジニアの設計の主題となるのは、物理システム130そのものまたはその一部であってよい。物理システムが確立されると、システムの各相が仮想コピーとしてデジタルツイン140においてモデル化される。各モデルは、物理システム130のデジタル化コピー(またはツイン)である全体仮想モデル145を作成するために組み合わされる。デジタルツイン145は、動作が実行されている間、物理システム130のシミュレーションを実行する。デジタルツイン145は、物理システム130の構成要素の実行時の種々の状態に関する更新を受信することができる。デジタルツイン145は、将来のシミュレーションの更新および実行のために、システムからの更新情報を使用する。
【0026】
デジタルツインは、システム内の潜在的な問題または非効率性を識別するために人工知能技術も使用可能である。改善が示唆された場合、デジタルツイン145は、物理システム130もしくは制御システム135に対して、効率を改善するための調整を行う情報、または潜在的なエラーが切迫しているとの警告もしくは報知を供給することができる。図1に見られるように、設計ツール110およびエンジニア101を含む設計プロセスは手動であって、デジタルツイン145から別個に独立して動作する。デジタルツイン145は補助情報を供給可能であるが、実現には人的資産による受信および解釈が必須である。また、潜在的な設計代案は、関与するエンジニアの知識および経験に制限されている。
【0027】
図2によれば、デジタルツインを用いた自律生成設計システムが示されている。デジタルツインは、デジタルツイングラフ209を基礎としている。デジタルツイングラフ209は、システムに関する意味情報を含み、システムの構成要素間の因果関係を含む。デジタルツイングラフ209は、人工知能技術を用いて付加的な関係を識別し、システム内の構成要素間の適切なインタラクションから洞察を作成可能である。設計要求207は人間可読フォーマットで形成されている。要求抽出装置205は、設計ドキュメント207を受信し、当該ドキュメント207をデジタル化して、当該ドキュメントから有効情報を抽出するので、これにより有効情報をデジタルツイングラフ209へ組み込むことができる。
【0028】
システムの動作中、データは連続的に生成される。情報は測定可能であり、システムを通して配置されたセンサによって測定および取得される。当該情報は、使用製品(PIU)データ220と称されうる。当該情報220は、デジタルツイングラフ209に供給可能である。デジタルツイングラフ209は、PIUデータ220を用いて物理システムの動作をシミュレートする。シミュレーションに基づいて、動作状態に関するフィードバックを物理システムに供給可能である。幾つかの実施形態では、PIUデータ220は、最も有効な生産データを抽出し、これをデジタルツイングラフ209が最良に消費できる形式へ移行させるために、PIUデータを調整および処理するPIU抽出装置225によって処理可能である。
【0029】
設計ツール203は、ツールとユーザ(例えば設計エンジニア)215との間のGUIを提供する。エンジニア215は、設計プロセスを実行するため、ソフトウェア機能または命令を実行することにより、設計ツール203と対話する。図2のシステムは、オブザーバ機能部201を有する。オブザーバ201は、設計ツール203により、エンジニア215のインタラクションをアノニマスで監視および記録する。インタラクションは、エンジニア215によって実行されるアクションの時系列として取得可能である。一連のアクションを含むパターンが、所定条件に対するエンジニアのアクションまたはリアクションとして識別可能である。例えば、重量を軽減するため、オブジェクトの表面を格子として作成したり、または不要な中実領域を削除もしくは消去したりすることができる。オブザーバ201は、重量を軽減するという課題にエンジニアがどのように応答するかを学習するため、エンジニアのアクションを取得可能である。こうして、オブザーバ201は、エンジニア215の知識を抽出し、これをデジタル化形式で蓄積可能かつ呼び出し可能とする。オブザーバ201を介して、システムは、設計ツール203を使用したエンジニア215の集合的知識を取得可能かつ呼び出し可能である。設計ツール203と組み合わされたオブザーバ201の使用は、知識が人的資産に閉鎖されているという問題に対処することにより、いっそう自律生成設計に近づく。経験豊富なエンジニアのアクションを取得し、当該アクションから有効な知識または情報を抽出することにより、当該知識をデジタルツイングラフ209の拡張に使用して、要求と物理システムに含まれる意味関係とに応じた生成設計代案を形成することができる。
【0030】
設計ツール203はまた、デジタルツイングラフ209と設計ツール203との間でのユーザとの通信を補助するインサイタ機能部213を含む。設計プロセス中、システムは設計代案を生成し、またはオブザーバ201を介して取得されたユーザ入力に対する変更を提供する。インサイタ203は、デジタルツイングラフ209からの示唆を受信し、エンジニア215への示唆に関するフィードバックを供給する。
【0031】
図2の自律生成設計システムの中心となっているのは、デジタルツイングラフ209内に表現されたデジタルツインを考慮した設計代案の合成分析部である。合成分析を提供するサブシステムは、ここでの説明を通して“Galileo”250と称される。Galileo250は、デジタルツイングラフ209と通信し、デジタルツイングラフ209を介して、要求207、使用製品データ220および設計ツール203の情報へのアクセスを取得する。これは、シミュレーションとデータドリブン方法、例えば機械学習との組み合わせを用いて行われる。Galileo250は、学習推論モジュール218を含む。学習推論モジュール218は、代案生成装置217内の設計代案を合成するために人工知能を使用する。量子化機能部(クアント)219は、代案生成装置217が作成した設計代案を受け取り、当該設計代案を、デジタルツイングラフ209内に蓄積および表現されている要求207に対して検証し、各設計代案の品質を定量化するための所定のメトリックを計算する。いったん設計代案が検証されると、デジタルツイングラフ209の支援によりシミュレート可能となる。コーザルエクスプローラ211は、デジタルツイングラフ209内の設計ワークフローの展開を記録するツールを提供し、例えば同じ問題の解決が複数回試みられる場合のような再発する設計およびエンジニアリングのプラクティスを表す因果的関連性を識別可能である。抽出された要求207を考慮して、コーザルエクスプローラは、システム内の過去のアクションの水平化により、エンジニア215に受け取られるアクションのシーケンスを推奨可能であり、これにより基本的にはシステムが以前に解決した問題についての示唆が形成される。
【0032】
生成設計システムの幾つかの実施形態では、Galileoシステムは、設計プロセスを通してリアルタイムでユーザ215と対話する。エンジニア215が設計ツール203と対話すると、エンジニアのアクションがオブザーバ201によって取得され、当該アクションおよび設計ツール203からの出力がデジタルツイングラフ209へインポートされる。Galileoサブシステム250は、エンジニア215の最新のアクションを分析し、設計プロセスのうち、要求および任意の他の設計制約に一致する代替アクションまたは次ステップのアクションを分析する。Galileo250は、数千個の可能な設計代案をリアルタイムで生成および分析し、インサイタ213を介してユーザへ示唆を供給することができる。エンジニアはGalileo250の示唆の受容を選択可能であり、またはエンジニア215は自身の知識および経験に基づいて異なる決定を行うこともできる。設計プロセスが続行されると、当該設計プロセスが完了するまで、エンジニアおよびGalileoシステムからの入力は交番的に往復する。
【0033】
システムは所定の時間にわたって開発されるので、システムを形成しているエンジニアリング決定により、エンジニアリング履歴260が作成される。エンジニアリング履歴260は、所定の時間にわたるインスタンスから成る。エンジニアリング履歴260に含まれるデータは、履歴抽出装置265において抽出される。有意味情報が抽出され、デジタルツイングラフ209へインポートされる。
【0034】
別の実施形態によれば、Galileo250は、設計ツール203から取得された知識を伴う要求および制約の全てがデジタルツイングラフ209に沿って使用され、Galileoシステム250に提示される、スタンドアローンソリューションとして使用可能である。学習推論部218により、代案生成装置は設計代案のセットを合成する。各設計代案は、要求および制約に対して、クアント219により検証および分析される。コーザルエクスプローラは、設計ツールから収集されるデジタル化された人間の知識を探索し、付加的な設計代案または動作代案を開発する。各代案は、要求および他の動作効率を満足するための受容性に関し、定量化されたメトリックにしたがって分析および配列される。Galileoシステム250は、最良のソリューションを形成し、インサイタ213を介して設計ツール203内のユーザ215に当該ソリューションを提示する。
【0035】
エンジニアリング履歴260、要求ドキュメンテーション207およびPIU220のそれぞれに含まれるデータは相互に独立に使用可能であり、これによりGalileoシステム250内に設計代案が生成される。付加的に、これらのデータソースは、Galileoシステム250に有意味情報を供給してデジタルツイングラフ209に基づき設計代案を生成するために任意に組み合わせて使用可能である。
【0036】
図3は、本開示の実施形態による、要求および/またはPIUデータを受信する抽出プロセスを示すプロセスフローチャートである。要求は、人間可読ドキュメントとして受信される。この場合、ドキュメンテーションはデジタル化される310。例えば、人間可読ドキュメントは、コンピュータが読解可能かつ記憶可能なデジタルファイルとなるようにスキャン可能である。次いで、ドキュメントに含まれる生データが抽出される320。生データは、ドキュメンテーションのテキストに含まれる語句を含むことができ、例として、電子的に取得されたドキュメントでの光学文字認識(OCR)を実行することにより抽出可能である。さらに、損失のない一形態の圧縮が、抽出された生データに対して実行可能である330。圧縮は、有効情報を含むと考えられる語句またはフレーズを残した、共通の語句または目下の語句の除去を含むことができる。よって、生データは、有効情報の抽出のために分析可能である340。有効データは、デジタルツイングラフによって直ちに消費可能な形式で抽出され、デジタルツイングラフへインポートされる。抽出された情報は、システムの構成要素間の関係を考慮した洞察および意味情報のために分析される350。次いで、決定された意味論的意味および洞察がデジタルツイングラフへ組み込まれる360。
【0037】
図4には、本開示の実施形態による生成設計方法のプロセスフローチャートが示されている。ユーザ、例えば設計エンジニアは、設計選択を設計ツールへ入力する410。ユーザが供給した設計選択が取得され、デジタルツイングラフへ供給される。次いで、Galileoシステムが、付加的な設計代案を生成するために、デジタルツイングラフを用いて設計選択を分析する420。Galileoシステムにおいて生成された代案は、設計仕様および制約を考慮し、デジタルツイングラフを用いて分析および配列される430。次いで、配列された設計代案を考慮したフィードバックが、ユーザへのフィードバックとして供給される440。フィードバックおよび設計プロセスの現在状態に基づいて、ユーザは次の設計ステップを変更または更新することができる450。当該プロセスは、更新された次の設計ステップ450が設計ツールに入力される410ことにより、設計プロセスが完了するまで、反復される。
【0038】
図5は、本開示の一実施形態による、自律生成設計方法のプロセスフローチャートである。要求データは抽出され、デジタルツイングラフへ入力される510。情報は、要求内の情報の意味論的意味に基づいて、デジタルツイングラフへ組み込まれる520。デジタルツイングラフと通信する合成分析ツールは、デジタルツイングラフ内の要求情報に基づいて設計代案を生成する530。合成分析ツールは各設計代案を配列および検証する。提案された設計代案は、当該配列に基づいて選択され、ユーザに提示される550。提案された代案は、例として、コンピュータベースの設計ツールを介してユーザに提示可能である。幾つかの実施形態では、複数の設計代案が提示可能であり、各代案は設計要求および制約に対するトレードオフを有する。
【0039】
図6には、本発明の実施形態を実現可能な計算環境600の一例が示されている。コンピュータおよび計算環境、例えばコンピュータシステム610および計算環境600は、当該分野の技術者に公知であるので、ここで簡単に説明するにとどめる。
【0040】
図6に示されているように、コンピュータシステム610は、通信機構、例えばシステムバス621またはコンピュータシステム610において情報を伝達するための他の通信機構を含むことができる。コンピュータシステム610はさらに、情報を処理するため、システムバス621に結合された1つもしくは複数のプロセッサ620を含む。
【0041】
プロセッサ620は、1つもしくは複数の中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)または当該分野で周知の任意の他のプロセッサを含むことができる。より一般的には、ここで使用しているプロセッサは、コンピュータ可読媒体上に記憶された、タスクを実行するための機械可読命令を実行する装置であり、ハードウェアおよびファームウェアの任意の一方もしくは組み合わせを含むことができる。また、プロセッサは、タスクを実行するために実行可能な機械可読命令を記憶するメモリを含んでもよい。実行可能なプロシージャまたは情報装置による使用のために情報を操作、分析、修正、変換または送信することにより、かつ/または出力装置へ情報を転送することにより、プロセッサは情報に作用する。プロセッサは、例えばコンピュータ、コントローラもしくはマイクロプロセッサの能力を使用可能であるかまたはこれらを含むことができ、汎用コンピュータでは実行されない特別目的の機能の実行のための、実行可能な命令を用いて調整可能である。プロセッサは(電気的にかつ/または実行可能な構成要素を含むものとして)任意の他のプロセッサに結合可能であるので、これらの間のインタラクションおよび/または通信が可能となる。ユーザインタフェースプロセッサまたはジェネレータは、ディスプレイイメージもしくはその部分を生成するための、電子回路またはソフトウェアもしくはこれら双方の組み合わせを含む公知の要素である。ユーザインタフェースは、プロセッサまたは他の装置とユーザとのインタラクションを可能にする1つもしくは複数のディスプレイイメージを含む。
【0042】
続いて、図6によれば、コンピュータシステム610は、情報およびプロセッサ620によって実行される命令を記憶するための、システムバス621に結合されたシステムメモリ630も含む。システムメモリ630は、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリ、例えば読み出し専用メモリ(ROM)631および/またはランダムアクセスメモリ(RAM)632の形式のコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。RAM632は、他の1つもしくは複数のダイナミック記憶装置(例えばダイナミックRAM、スタティックRAMおよびシンクロナスDRAM)を含むことができる。ROM631は、他の1つもしくは複数のスタティック記憶装置(例えばPROM、EPROMおよびEEPROM)を含むことができる。さらに、システムメモリ630は、プロセッサ620による命令の実行中、一時的な変数または他の中間情報を記憶するために使用可能である。コンピュータシステム610内の要素間での例えば起動中の情報の伝送を補助する基本ルーチンを含む基本入出力システム633(BIOS)は、ROM631内に記憶可能である。RAM632は、プロセッサ620によって直接にアクセス可能なデータおよび/またはプログラムモジュール、および/またはプロセッサ620上で現在動作しているデータおよび/またはプログラムモジュールを含むことができる。システムメモリ630は、付加的に、例えばオペレーティングシステム634、アプリケーションプログラム635、他のプログラムモジュール636およびプログラムデータ637を含んでもよい。
【0043】
コンピュータシステム610はまた、情報および命令を記憶した1つもしくは複数の記憶装置、例えば磁気ハードディスク641およびリムーバブルメディアドライブ642(例えばフロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、テープドライブおよび/またはソリッドステートドライブ)を制御するための、システムバス621に結合されたディスクコントローラ640を含む。記憶装置は、適切な装置インタフェース(例えば、スモールコンピュータシステムインタフェース(SCSI)、インテグレーテッドデバイスエレクトロニクス(IDE)、ユニバーサルシリアルバス(USB)またはFireWire)を用いて、コンピュータシステム610に追加可能である。
【0044】
コンピュータシステム610は、コンピュータユーザに情報を表示すべくディスプレイまたはモニタ666、例えば冷陰極管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)を制御するための、システムバス621に結合されたディスプレイコントローラ665を含むことができる。コンピュータシステムは、コンピュータユーザと対話してプロセッサ620に情報を供給するための入力インタフェース660および1つもしくは複数の入力装置、例えばキーボード662およびポインティングデバイス661を含む。ポインティングデバイス661は、例えば、方向情報および選択命令をプロセッサ620に伝達し、ディスプレイ666上のカーソル運動を制御するマウス、ライトペン、トラックボールもしくはジョイスティックを含むことができる。ディスプレイ666は、ポインティングデバイス661による方向情報および選択命令の伝達を補完もしくは置換する入力を可能にするタッチパネルインタフェースを提供可能である。幾つかの実施形態では、ユーザが着装可能なARデバイス667により、ユーザに物理世界および仮想世界の双方との対話を可能にする入出力の機能性を提供することもできる。ARデバイス667は、ディスプレイコントローラ665およびユーザ入力インタフェース660と通信し、ユーザに対して、ディスプレイコントローラ665により、ARデバイス667で生成された仮想のアイテムとの対話を可能にする。また、ユーザは、ARデバイス667によって検出されて、入力信号としてユーザ入力インタフェース660へ送信されるジェスチャを供給可能である。
【0045】
コンピュータシステム610は、プロセッサ620に応答して本発明の実施形態の処理ステップの一部もしくは全てを実行可能であり、これにより、メモリ、例えばシステムメモリ630に含まれる1つもしくは複数の命令の1つもしくは複数のシーケンスが実行される。こうした命令は、別のコンピュータ可読媒体、例えば磁気ハードディスク641またはリムーバブルメディアドライブ642からシステムメモリ630へ読み出し可能である。磁気ハードディスク641は、本発明の実施形態により使用される1つもしくは複数のデータストレージおよびデータファイルを含むことができる。データストレージコンテンツおよびデータファイルは、安全性の向上のために暗号化可能である。プロセッサ620は、システムメモリ630内に含まれている1つもしくは複数の命令シーケンスを実行するマルチプロセシング装置において使用可能である。代替実施形態では、ソフトウェア命令に代えてまたはこれに組み合わせて、固定配線型回路が使用可能である。したがって、実施形態は、ハードウェア回路およびソフトウェアの特定のいずれの組み合わせにも限定されない。
【0046】
上述したように、コンピュータシステム610は、本発明の実施形態によりプログラミングされた命令を保持し、データ構造、テーブル、記録もしくはここで説明している他のデータを収容するための、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体もしくはメモリを含むことができる。ここで使用している「コンピュータ可読媒体」なる語は、プロセッサ620による実行のための命令の供給に関与する任意の媒体をいう。コンピュータ可読媒体は、限定的ではないが、非一時性かつ不揮発性の媒体、揮発性の媒体および送信媒体を含む多数の形態を取りうる。不揮発性の媒体の非限定の例には、光学ディスク、ソリッドステートドライブ、磁気ディスクおよび磁気光学ディスク、例えば磁気ハードディスク641またはリムーバブルメディアドライブ642が含まれる。揮発性の媒体の非限定の例には、ダイナミックメモリ、例えばシステムメモリ630が含まれる。送信媒体の非限定の例には、同軸ケーブル、銅線、およびシステムバス621を形成するワイヤを含む光ファイバが含まれる。送信媒体は、例えば無線波通信および赤外線データ通信において形成される音波または光波の形態を取ることもできる。
【0047】
計算環境600は、さらに、1つもしくは複数のリモートコンピュータ、例えばリモート計算装置680への論理コネクションを用いてネットワーク環境において動作するコンピュータシステム610を含むことができる。リモート計算装置680は、パーソナルコンピュータ(ラップトップもしくはデスクトップ)、モバイルデバイス、サーバ、ルータ、ネットワークPC、同位装置または他の共通ネットワークノードであってよく、典型的には、コンピュータシステム610に対して相対的な上述した多数もしくは全ての要素を含む。ネットワーク環境で使用される場合、コンピュータシステム610は、ネットワーク671、例えばインタネットを介して通信を確立するためのモデム672を含むことができる。モデム672は、ユーザネットワークインタフェース670または他の適切な機構を介してシステムバス621に接続可能である。
【0048】
ネットワーク671は、インタネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、直接コネクションもしくは直列コネクション、セルラフォンネットワークもしくは他の任意のネットワーク、またはコンピュータシステム610と他のコンピュータ(例えばリモート計算装置680)との通信を可能にする能力を有する媒体を含む、当該分野で一般に公知の任意のネットワークまたはシステムであってよい。ネットワーク671は有線、無線またはその組み合わせであってよい。有線接続は、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(USB)、RJ‐6、または当該分野で一般に公知の任意の他の有線接続を用いて実現可能である。無線コネクションは、Wi‐Fi、WiMAX、Bluetooth、赤外線、セルラネットワーク、衛星コネクションまたは当該分野で一般に公知の他の任意の無線コネクション方法を用いて実現可能である。付加的に、複数のネットワークを、単独でもしくは相互に組み合わせて、ネットワーク671内の通信を可能にするために動作させることができる。ここで使用している実行可能なアプリケーションは、プロセッサが例えばユーザの命令または入力に応答して、例えばオペレーティングシステム、文脈データ取得装置または他の情報処理装置の所定の機能を実現するように調整するコードまたは機械可読命令を含む。実行可能プロシージャは、コードまたは機械可読命令のセグメント、サブルーチン、またはコードの他の別個のセクション、または1つもしくは複数の特定のプロセスを実行する実行可能なアプリケーションの部分である。当該プロセスは、入力データおよび/またはパラメータを受信すること、受信した入力データについての動作を実行することおよび/または受信した入力パラメータに応答して機能を実行すること、および得られた出力データおよび/またはパラメータを提供することを含みうる。
【0049】
ここで使用しているグラフィックユーザインタフェース(GUI)は、ディスプレイプロセッサにより形成され、プロセッサまたは他の装置とユーザとのインタラクションおよび関連するデータの取得および機能の処理を可能にする、1つもしくは複数のディスプレイイメージを含む。GUIはまた、実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションも含む。実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションは、ディスプレイプロセッサがGUIディスプレイイメージを表す信号を形成するように調整する。当該信号は、ユーザにより観察されるイメージを表示するディスプレイ装置に供給される。プロセッサは、実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションの制御のもと、入力装置から受信した信号に応答してGUIディスプレイイメージを操作する。こうして、ユーザは、入力装置を用いてディスプレイイメージと対話でき、これによりプロセッサまたは他の装置とユーザとのインタラクションが可能となる。
【0050】
ここでの機能およびプロセスステップは、ユーザ命令に応答して自動的に、または完全にもしくは部分的に実行可能である。自動的に実行されるアクティビティ(ステップを含む)は、1つもしくは複数の実行可能命令または装置動作に応答して、ユーザによる当該アクティビティの直接の開始なしに実行される。
【0051】
図のシステムおよびプロセスは非排他的なものである。他のシステム、プロセスおよびメニューは、同一の課題を解決する本発明の基本方式によって導出可能である。本発明を特定の実施形態に関して説明したが、ここに図示および説明した実施形態および変形形態は説明のためのみのものであることを理解されたい。現行の設計に対する修正も、本発明の観点から逸脱することなく、当該分野の技術者により実現可能である。ここで説明したように、種々のシステム、サブシステム、エージェント、マネージャおよびプロセスは、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素および/またはこれらの組み合わせを用いて実現可能である。ここでの特許請求の範囲の要素はいずれも、明示的に「〜のための手段」との語句を用いて記載されていないかぎり、米国特許法第112条第6段落の但し書きの意に解釈されるべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6