特許第6856839号(P6856839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6856839
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】バーベキューグリル
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20210405BHJP
   A47J 37/07 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A47J37/06 331
   A47J37/06 316
   A47J37/07
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-199412(P2020-199412)
(22)【出願日】2020年12月1日
【審査請求日】2020年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2019-220662(P2019-220662)
(32)【優先日】2019年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519338463
【氏名又は名称】久田見 光太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】久田見 光太郎
【審査官】 川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−209404(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0220843(US,A1)
【文献】 特開平01−124426(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0112186(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1910557(KR,B1)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0471773(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00−37/07
F24C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(S)を取り囲む垂直な外壁(2)と、内部空間(S)の底部を密閉する底壁(3)と、内部空間(S)の上部を密閉する蓋(4)とを有し、少なくとも底壁(3)および蓋(4)には通気孔(5)が形成され、内部空間(S)と外壁(2)との間には加熱源(6)が配置され、内部空間(S)の上部で且つ加熱源(6)の上方領域以外の加熱領域(H)に焼き網(7)を配置し、この焼き網(7)の下側に水入れトレイ(8)を配置し、水入れトレイ(8)を高さ方向位置に配置できるようにするための少なくとも一つの水入れトレイ支持台(10)を有することを特徴とするバーベキューグリル(1)。
【請求項2】
上記加熱源(6)が固形燃料バスケットである請求項1に記載のバーベキューグリル(1)。
【請求項3】
上記固形燃料バスケットがバーベキューグリル(1)の内部空間(S)内に着脱自在に配置可能な固形燃料バスケットである請求項2に記載のバーベキューグリル(1)
【請求項4】
加熱源(6)を複数に分割し、内部空間(S)の外周に均等に配置した請求項1〜3のいずれか一項に記載のバーベキューグリル。
【請求項5】
上記の加熱源(6)、焼き網(7)、水入れトレイ(8)および水入れトレイ支持台(10)の全てまたは一部が着脱自在である請求項1〜4のいずれか一項に記載のバーベキューグリル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーベキューグリル(バーベキューコンロ)に関するものである。より具体的には、本発明は煙を発生させずに食材をジューシーな料理に調理することが可能な新規なバーベキューグリルに関するものである。本発明のバーベキューグリル構造では熱効率を悪くせずにジューシーな料理にすることができる。
【0002】
本発明はさらに、加熱源および焼き網の構造および配置を改良した、食材をジューシーな料理に調理することが可能で、しかも煙の発生がない、より効率的なバーベキューグリルの構造にも関するものである。
【背景技術】
【0003】
我が国では、主に春頃から秋頃にかけて、屋外でバーベキューを行う文化が定着している。バーベキューグリルには、備え付けのもの、及び、持ち運び可能なものがあるが、多くが炭火焼きタイプである。従来の炭焼きタイプのバーベキューグリルでは、筐体の中に炭を敷き、その上に焼き網を設け、該焼き網に肉等の具材を乗せて焼く。しかしながら、このような構造では、肉に含まれる脂分が溶け出し、炭に直接降りかかるため、これが焼かれることで、煙が発生する。バーベキューで発生する煙は、参加者や近隣にとって不快であり、また、幼児や喘息等の疾患を持つ者がいる場合には、健康上の問題も引き起こし得る。さらに、昨今問題となっている煙害の原因ともなり、環境保護の観点からも、問題がある。加えて、従来のバーベキューは、煙が発生するがゆえに、室外で行わざるを得ず、一般に、室内で行うことは困難である。
【0004】
バーベキュー等で煙の発生を防ぐ一般的な方法は、強制排煙することであり、焼き肉店等で使用されている。しかし、強制排煙にはファン等の設備費を必要とし、電気代等のランニングコストがかかり、排煙ダクトに排煙浄化装置を設ける必要があり、さらに、定期的なクリーニングも必要である。
【0005】
加熱源を食材の上方に配置することで煙の発生を防ぐ、または減らすことができる。この方法では、発生した煙を加熱源で燃焼させて煙を消すものが多い。しかし、この方法では加熱源に燃焼残物、コークが付着し、頻繁な清掃を必要とし、長期的には加熱源の熱効率が低下する。
【0006】
[特許文献1](実用新案登録第3159884号公報)に記載の焼肉用調理装置では、焼肉網を装架した焼肉グリルが焼肉網、燃焼熱源および取り外し可能な水溜容器を備え、焼肉網は複数の凸部と複数の穿設された開口部とを並列に備え、長手方向の1辺が厚み方向に傾斜した傾斜部を有する網部と、傾斜部が向かい合って左右対になるように網部を複数配置して、傾斜部を下方に、傾斜部と対向辺を上方になるように網部を傾斜して取り囲む外延部と、外延部の長手方向の何れか一方とその対向辺との間に同方向に亘って延びる中間梁と、中間梁に下接して網部に上接される交換自在の複数の竹製及び木製の何れか一方から選ばれた板材とを備えている。
【0007】
この実用新案登録広報の[0014]には、板材を竹製及び木製にすることによって、食材は焦げ付きにくく、肉が柔らかく焼け、肉本来の甘味を味わうことができ、食材に竹製もしくは木製の香が付加され、食味の向上につながるとともに、竹の持つ殺菌・防腐効果も期待できると記載されている。また、取り外し可能な水溜容器を備えることで肉等を焼肉網上で焼いたときに出る肉汁が焼肉グリルの中央付近から流れ落ち、燃焼熱源上に垂れることなく、水溜容器内に落ち、煙が発生することがないと記載されている([0015]参照)。
【0008】
しかし、[特許文献1]の構造は熱効率が悪く、燃焼熱の大部分は大気中に失われる。また、可燃が食材の下方からしか行われないため、食材をジュシーな食品に調理するのが難しい。
【0009】
本発明者は、煙を発生させずに食材をジューシーな食品に調理する効率的な方法を種々研究した。その結果、加熱源,焼き網および水入れトレイの相対位置を工夫することで食材、特に肉類をジュシーな食品により効率的に調理でき、しかも煙の発生をなくすことができる、ということを発見し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3159884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ジューシーな食品に調理することができ、しかも、煙の発生が無いか極めて少なく、熱効率に優れたバーベキューグリルを提供することにある。
本発明の別の目的は、構造が簡単で、熱効率が極めて良く、しかも煙の発生が無い、食品、特に肉類をより効率的にジューシーな食品に調理できるバーベキューグリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、加熱源を食材の下部に配置した状態で、食材を下から加熱すると同時に、高温の水蒸気を含む熱で全方向から加熱することによって煙を発生させずに食材をジューシーな食品に調理することができるとういう発見に基づいている。
より具体的には、基本的に加熱源は食材の真下に配置せず、食材の下側側部に配置し、密閉蓋を用いて食材を全方向から輻射加熱することによって、煙を発生させずに食材をジューシーな食品に調理する。
【0013】
本発明は、内部空間(S)を取り囲む垂直な外壁(2)と、内部空間(S)の底部を密閉する底壁(3)と、内部空間(S)の上部を密閉する蓋(4)とを有し、少なくとも底壁(3)および蓋(4)には通気孔(5)が形成され、内部空間(S)と外壁(2)との間には加熱源(6)が配置され、内部空間(S)の上部で且つ加熱源(6)の上方領域以外の加熱領域(H)に焼き網(7)を配置し、この焼き網(7)の下側に水入れトレイ(8)を配置することを特徴とするバーベキューグリル(1)を提供する。
【0014】
本発明の好ましい実施例では、上記加熱源(6)は固形燃料を収容する固形燃料バスケットである。備え付けタイプのバーベキューグリルでは、固形燃料バスケット(6)を省略して、固形燃料以外の加熱源を用いることもできる。
【0015】
上記固形燃料バスケットは金網ボックスまたは格子ボックスにすることができる。この金網ボックスまたは格子ボックスはバーベキューグリル(1)の側壁に固定するか、内部空間(S)内に着脱自在に配置できる。
【0016】
上記の金網ボックスは固形燃料の熱を遮るものが少ないので、熱効率に特に優れている。金網ボックスは底面を含めた全ての面を金網でボックス状に成形して作ることができる。金網は安価であり、成形容易であるので、金網が劣化した場合に簡単に交換できる。また、金網ボックスを金属格子ボックスの中に配置して形状を安定させることもできる。
【0017】
格子ボックスは複数の金属棒を並べて作ることができる。実際には外周枠となる金属フレームに複数の金属棒を溶接して格子ボックスの形状にすることができる。固形燃料の熱を遮る面積を減らすために金属棒の本数を減らすのが好ましい。
【0018】
水入れトレイ(8)は底壁(3)上に直接配置してもよいが、水入れトレイ(8)を高さ方向位置に配置できるようにするための少なくとも一つの水入れトレイ支持台(10)上に配置するのが好ましい。複数の支持段を有する支持台(10)を用いて水入れトレイ(8)の垂直方向位置を調節することもできる。
【0019】
上記焼き網(7)の高さ方向位置は一定にするのが好ましい。焼き網(7)は左右の固形燃料バスケットに支持させる(構造1)か、焼き網支持具を用いて水入れトレイ(8)の上方の所定位置に維持する(構造2)ことができる。焼き網(7)は焼き網支持具別体でも一体でもよい。
【0020】
上記の焼き網支持具を焼き網(7)を載置する焼き網支持フレームとし、この焼き網支持フレームを水入れトレイ(8)で支持し、焼き網で焼く面積が水入れトレイ(8)中の水面の面積以下となるようにするのが特に好ましい。そうすることで煙の発生をほぼ完全に防ぐことができる。
【0021】
焼き網(7)に脚部(7')を付けることで焼き網(7)と焼き網支持具とを一体化することもできる。また、上記の水入れトレイ支持台(10)と焼き網持フレームとを一体化することもできる。
【0022】
上記の加熱源(6)、焼き網(7)、水入れトレイ(8)、支持台(10)、水入れトレイ支持台(10)または焼き網持フレームの全てまたは一部を着脱自在にすることで、バーベキューグリル(1)の内部空間(S)の掃除が容易になり、製造コストを下げる等のメリットも得られる。
【0023】
本発明のバーベキューグリルでは通気孔(5)が重要な役割をする。通気孔(5)をバーベキューグリル(1)の上下に配置することで新鮮な空気がバーベキューグリル(1)の下から上へ効率良く貫通し、煙突効果によって短時間で熱効率よく所在を加熱することができる。通気孔(5)の位置実施例に示した位置が好ましいが、他の場所でもよい。さらに追加の通気孔を設けることも可能である。
【0024】
本発明のバーベキューグリルは水入れトレイ中の水を直接加熱するものではないので、大量のスチームが発生することはない。本発明のバーベキューグリルはスチームオーブンのように食材がスチームで加熱するものではない。
【0025】
上記外壁(2)の水平断面形状が円形または四角形を含む多角形にすることができる。
【0026】
固形燃料バスケット(6)は複数に分割することができ、内部空間(S)の外周に均等または不均等に配置することができる。
【0027】
本明細書では構成を括弧( )中に参照符号を付けて説明をするが、本発明が参照符号を付けた特定の構成に制限されるものではなく、本発明は括弧を除いた特許請求の範囲に記載の構成によって定義される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバーベキューグリルを用いることで、全方向から加熱でき、ジューシーな食品に調理することができる。
本発明の構造を採用することで健康上の問題及び煙害も引き起さず、健康で、環境にも優しいバーベキューを楽しむことができる。
本発明では肉を焼いても、脂分が炭に滴り落ちることがなく、煙が発生しないため参加者や近隣に不快感を起こすことがない。
【0029】
本発明では、加熱源(6)および焼き網(7)に対する水入れトレイ(8)の相対位置を調節することができ、それによって水入れトレイ(8)からの水蒸気と加熱源(6)からの放射熱、反射熱および対流熱とを総合した熱によって食材を加熱することができ、煙を発生させずに短時間で食材をジューシーな食品に調理することができる。特に、焼き網支持具を焼き網(7)を載置する焼き網支持フレームとし、この焼き網支持フレームを水入れトレイ(8)で支持し、焼き網で焼く面積が水入れトレイ(8)中の水面の面積以下となるようにすることで煙の発生をほぼ完全に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のバーベキューグリルの一つの好ましい実施例(構造1)の外側から見た時の概念的な斜視図。
図2】[図1]のバーベキューグリルの内部構造を説明するために、構成部品を分解して示した概念的な展開図。
図3】固形燃料バスケット(6)を内部空間(S)の両サイドに配置した時の[図1]の実施例の構造を説明するための概念的な透視図。
図4】[図3]の場合の実施例の概念的な水平断面図および横断断面図。
図5】固形燃料バスケット(6)を内部空間(S)の4つの側面に配置した時の[図1]の実施例の場合の[図4]と同様な概念的な水平断面図および横断断面図。
図6】固形燃料バスケット(6)を使用せず、熱源(炭)を内部空間(S)の底壁(3)に配置した時の[図1]の実施例の構造を説明するための概念的な水平断面図および横断断面図。
図7】[図1]のバーベキューグリルの蓋の構造を変えた変形実施例の概念的な斜視図。
図8】外壁(2)の水平断面形状を円形にした変形実施例の[図4]、[図5]の右側の水平断面図と同様な概念的な横断断面図。
図9】[図8]の変形実施例での固形燃料バスケット(6)の配置方法を示す2つの実施例の[図4]及び[図5]の左側と同様な概念的な水平断面図。
図10】〜
図17】本発明の構造1のバーベキューグリルを用いて牛肉を焼いた時の実験結果を示す図。
図18】各構成を分解して示した本発明のバーベキューグリルの別の好ましい実施例(構造2)の概念的な分解図。
図19】[図18]の実施例(構造2)のバーベキューグリルの概念的な垂直断面図で、食材が加熱源(6)からの放射熱、反射熱および対流熱とで総合的に加熱されることを説明するための図。
図20】水入れトレイ支持台(10)と焼き網持フレームとを一体化した時の構造を示す概念的な断面図。
図21】〜
図30】本発明の構造2のバーベキューグリルを用いて牛肉を焼いた時の実験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明で「ジューシーな食品」とは調理後の食材すなわち食品がおいしいと感じるような適度の液体成分(汁、肉汁、果汁等)を維持した状態に調理された食品をいう。この基準は人が実際に食べて判定する。
本発明で「加熱源を食材の下に配置した状態で、食材を高温の水蒸気を含む全方向からの熱によって加熱する」とは、食材を加熱源によって直接加熱するのではなく、食材の下に配置した加熱源から出た輻射熱と高温に熱せられた水蒸気によって、食材の全方向から加熱することを意味する。
【0032】
本発明の好ましい第1の実施例(以下、構造1という)では、肉類をバーベキューするために固形燃料バスケット(6)内に配置した燃料を着火させ、焼き網(7)上に肉類を置き、焼き網(7)の下側に水入れトレイ(8)を配置し、水入れトレイ(8)に水を注入し、蓋(4)をする。固形燃料バスケット(6)の燃焼によって生じた熱の大部分は蓋(4)によって閉じ込められ、肉類を下方から直接加熱するのに加えて、上方を含む全方向から加熱する。焼き網(7)は内部空間(S)の上部で且つ固形燃料バスケット(6)の上方領域以外の加熱領域(H)に配置されているので、加熱された肉類から滴り落ちる脂類が固形燃料上に落下して煙が発生することはない。さらに、水入れトレイ(8)に注入した水が固形燃料によって加熱され、水蒸気となって肉類を水蒸気加熱する。
【0033】
このとき、バーベキューグリル(1)内の温度は、約200300℃に達し、水入れトレイ(8)内の水は沸騰して水蒸気を発し、この水蒸気も、200300℃に加熱され、熱せられた空気と混ざって、肉類を加熱する。
【0034】
本発明では、加熱源による下からの直接加熱と、高温の水蒸気を含む全方向からの加熱との両方によって肉類を加熱することで、ジューシーな焼き肉にすることができる。また、本発明のバーベキューグリルは肉類の脂肪が適度に除去されるので、健康と美容の観点からも好ましい。
【0035】
上記外壁(2)はその水平断面形状が円形、楕円形、多角形等となるように任意に選択することができる。一般には水平断面形状を四角形にするのが好ましい。外壁(2)は耐火性のある任意の材料で作ることができるが、一般には金属板で作ることができる。本発明の好ましい実施例では外壁(2)、底壁(3)、蓋(4)および固形燃料バスケット(6)の全てを金属板、例えば鉄板、アルミ板等で作ることができる。[図1]、[図2]に示す函型のバーベキューグリルの場合には金属板に切断、成形、溶接作業等を行って簡単に作ることができる。
【0036】
本発明のバーベキューグリルはキャンンプ用等の用途のためにコンパクトに折り畳みできる形態にすることもできる。例えば、その場合には外壁(2)を互いに分離可能または折り畳み可能な4枚の金属板で作ることができる。そうすることでバーベキューグリルを4枚の外壁部品と底壁(3)および蓋(4)で構成でき、携帯ケースにコンパクトに収容できる。4枚の外壁部品を連結する方法は公知の任意の連結方法、例えば係合、嵌合、ヒンジ結合、ネジ止め等で行うことができる。水平断面形状が円形、楕円形の場合にも外壁(2)を複数の外壁部品に分割することで同様にコンパクト化できる。
【0037】
本発明の好ましい実施例では加熱源(6)は固形燃料バスケット(6)である。この固形燃料バスケット(6)は任意の耐火材料で任意の形状に作ることができ、内部空間(S)と外壁(2)との間の任意の場所に配置できるが、固形燃料を燃やすための酸素が供給できる構造である必要がある。一般には金属の格子、籠、グリル、容器等で作ることができ、外壁(2)および/または底壁(3)に着脱自在に取り付けられる。すなわち、内部空間(S)の掃除を容易にするために、固形燃料バスケット(6)をフックを用いて外壁(2)に係止めするか、脚を介して底壁(3)上に支持できる。使用中に固形燃料バスケット(6)が不用意に動くのを防止するためのロック機構を設け、固形燃料バスケット(6)を上方へ引き上げるためのハンドル部を形成するのが好ましい。
【0038】
固形燃料バスケット(6)の上部は開放しておいてもよいが、食材等が落下するのを防止するために焼き網等でカバーをすることもできる。
【0039】
固形燃料バスケット(6)の数および配置は種々選択できる。水平断面形状が四角形であるバーベキューグリルの場合には内部空間(S)の両サイドまたは4つのサイド(全面)に固形燃料バスケット(6)を配置することができる。水平断面形状が円形であるバーベキューグリルの場合にも内部空間(S)の一部または全面に固形燃料バスケット(6)を配置することができる。
【0040】
固形燃料は一般に木炭であるが、それ以外の固形燃料、例えば薪、アルコール由来の固形燃料、バイオマス由来の成形薪、成形木炭、練炭(豆炭)等にすることができる。これらの固形燃料はアウトドア用として多種のものが市販されている。
【0041】
水入れトレイ(8)も任意の耐火材料、例えば金属板、セラミック、セラミックコーティング鉄板で作ることができる。本発明では、水入れトレイ(8)は任意の位置に配置することができるが、固形燃料バスケット(6)で囲まれた内部空間(S)の上部に配置されるときには、水入れトレイ(8)の上側外周端縁部を水平フランジ(10)の形に延長し、この水平フランジ(10)を固形燃料バスケット(6)の上側端部上に載置することができる。
【0042】
内部空間(S)内での水入れトレイ(8)の位置(高さ)は必要に応じて適宜選択できる。水入れトレイ(8)の高さ位置は被調理食材の種類や、調理方法(例えば、火加減の調整)によって選択できる。そのためには、上側水平フランジ(10)の外側寸法を水入れトレイ(8)を内部空間(S)中で上下に移動することができるような寸法とし、上側水平フランジ(10)と固形燃料バスケット(6)とが着脱自在に固定できる手段を上側水平フランジ(10)および/または固形燃料バスケット(6)に設けることができる。外壁部品(2)の一部を開放可能にして、水入れトレイ(8)を横からスライドさせて任意の位置に配置できるようにすることもできる。
【0043】
水入れトレイ(8)に水以外の液体、例えば、ジュースやアルコール飲料、茶、もしくはこれらに香草等を加えたものを入れることで、食材に香りや風味を付加することもできる。
【0044】
通気孔(5)は少なくとも底壁(3)および蓋(4)に形成する必要がある。通気孔の数、位置、寸法は調理の品質を考慮して実験によって決定できる。さらに、外壁(2)に空気孔を設けても本発明を逸脱するものではない。
【0045】
通気孔(5)の開口度を調節できるようにするために、通気孔(5)には開口調節手段を設けるのが好ましい。この開口調節手段は回転弁、ヒンジ弁、スライド弁等の任意の手段にすることができる。この開口調節手段の位置、寸法は固形燃料の燃焼に必要な酸素が供給できるように選択される。
【0046】
本発明のバーベキューグリルは肉類を焼く(バーベキューする)のに特に適しているが、肉類以外の食品の調理や予備処理にも好ましく使用できる。後で詳細に説明するが、本発明のバーベキューグリルの内部空間(S)は一種の釜になっているので、釜を必要とする調理に本発明のバーベキューグリルを使用することができる。例えば、肉類のバーベキュー以外に、ピザ、焼き芋等の加熱に使用することができる。
【0047】
本発明の好ましい第2の実施例(以下、構造2という)では、固形燃料バスケットを内部空間(S)内に着脱自在に配置できる金網ボックスまたは格子ボックスにする。
【0048】
本発明では、加熱源(6)および焼き網(7)に対する水入れトレイ(8)の相対位置を調節することで水入れトレイ(8)からの水蒸気と加熱源(6)からの熱を総合した放射熱、反射熱および対流熱によって食材を加熱することができる。水入れトレイ(8)の相対位置は食材の種類や量に応じて適宜変えることができる。
【0049】
上記焼き網(7)は水入れトレイ(8)上に支持するか、左右の固形燃料バスケットに支持させるか、焼き網支持具を用いて水入れトレイ(8)の上方の所定位置に維持することができる。この焼き網支持具は焼き網(7)を載置する焼き網持フレームすることができる。焼き網(7)に脚部(7')を付けることで焼き網(7)と焼き網支持具とを一体化することもできる。焼き網(7)の高さ方向位置は一定にするのが好ましいが、わずかに変えることもできる。
【0050】
水入れトレイ(8)および焼き網(7)はそれぞれ水入れトレイ支持台(10)および焼き網持フレームで支持できる。水入れトレイ支持台(10)はバーベキューグリルの底部上に支持でき、焼き網持フレームは水入れトレイ支持台(10)上に支持できる([図18]参照)。焼き網支持フレームを水入れトレイ(8)で支持し、焼き網で焼く面積が水入れトレイ(8)中の水面の面積以下となるようにすることで煙の発生をほぼ完全に防ぐことができる。
【0051】
第1の実施例(構造1)で説明した構成の中で第2の実施例(構造2)に適用可能な構成は第2の実施例(構造2)でも使用できる。例えば、固形燃料バスケットを内部空間(S)の両サイドまたは4つのサイド(全面)に配置することができる。
【0052】
以下、[図1]〜[図6]を用いて本発明の構造1の好ましい実施例について説明する。
図1]は全体形状が四角い立方体である本発明の好ましい実施例のバーベキューグリルを外側から見た時の概念的な斜視図である。この[図1]にはバーベキューグリルの垂直な外壁(2)と蓋(4)とが見える。外壁(2)の外側側面には握り部(21)が溶接、ねじ止め等で固定されている。蓋(4)にもハンドル(41)が溶接、ねじ止め等で固定されている。蓋(4)にはさらに通気孔(5)が形成されている。[図1]では見えない底壁(3)には本発明のバーベキューグリルを地面から一定高さの所に維持するための脚(31)が溶接、ねじ止め等で固定されている。
【0053】
図2]は[図1]のバーベキューグリルの内部構造を説明するために構成部品を分解して示した概念的な展開図である。この図は説明図で、各構成部品の相対寸法および位置は正確なものではない。この本発明のバーベキューグリルは内部空間(S)を有し、この内部空間(S)は垂直な外壁(2)、底壁(3)および蓋(4)によって区画される。
【0054】
内部空間(S)の上部を密閉する蓋(4)は、4つの外壁(2)の上端部で形成される四角形の上方開口部の上に載置できるが、上方開口部中に一部が挿入される構造、または、上方開口部の外側外周の一部を覆う構造にすることもできる。[図2]に示した実施例では、蓋(4)の4つの壁面(42)が蓋本体(43)の平面より上に突出させてあるが、この構造に限定されるものではない。なお、「密閉」とは完全密封することではなく、単に閉じることを意味する。
【0055】
蓋本体(43)にはハンドル(41)が溶接され、さらに通気孔(5)が形成されている。通気孔(5)には通気孔(5)の開口度を調節するための開口調節手段として回転弁(51)が設けられている。この回転弁(51)は回転可能なデイスクで、このデイスクは蓋本体(43)に中心軸(52)で回動自在に固定され、通気孔(5)の開口面積に対応する孔(53)が形成されている。この開口調節手段をヒンジ弁、スライド弁にすることもできる。
【0056】
図7]に示す変形実施例では、ハンドル(41)を蓋(4)の両側の壁面(42)に取り付けた金属の吊下げ線(41’)とし、蓋本体(43)の中央部をヒータ加熱領域(H)としている。このヒータ領域(HEATER)の上にケトルや鍋等の調理器具を載せて加熱源として使用することができる。吊下げ線(41’)の代わりに蓋(4)の両側の壁面(42)に係合孔(図示せず)を形成することもできる。
【0057】
固形燃料バスケット(6)は固形燃料を入れる容器であり、底辺に通気孔を有する金属ボックスや格子バスケットで構成することができる。固形燃料バスケット(6)は内部空間(S)と外壁(2)との間に配置される。[図3]は2つの固形燃料バスケット(6)をバーベキューグリル(1)の左右両側に配置した実施例の図であり、[図4]はその場合の固形燃料バスケット(6)の配置を示すバーベキューグリル(1)の概念的な水平断面図(左側)と概念的な横断面図(右側)である。[図5]は4つの固形燃料バスケット(6)を内部空間(S)の全外周に配置した実施例の図で、[図5]の左側は[図4]と同様な水平断面図、図の右側は横断面図である。
【0058】
本発明では、内部空間(S)の上部で且つ固形燃料バスケット(6)の上方領域以外の加熱領域(H)に焼き網(7)を配置する。ここで、「固形燃料バスケット(6)の上方領域以外の加熱領域(H)」とは数学的に厳密な意味を有するものではなく、「固形燃料バスケット(6)の上方領域には食材は配置しない」ということを表現したものであり、「実質的に」とは固形燃料バスケット(6)の上方領域に焼き網(7)を配置しないということではないことを表現したものである。実際には、焼き網(7)の端部を固形燃料バスケット(6)の上側端縁上で支持することができる。本発明では、固形燃料バスケット(6)の上方領域以外の加熱領域(H)が調理領域である。この加熱領域(H)は実質的に焼き網(7)の面積に対応し、[図4]、[図5]に示すHの領域である。本発明では加熱された肉類から滴り落ちる脂類が固形燃料上に落下して煙が発生することはない。
【0059】
水入れトレイ(8)は焼き網(7)の下側に配置する。[図4]、[図5]、[図8]に示した実施例では水入れトレイ(8)は水入れトレイ(8)の上側水平フランジ(10)を固形燃料バスケット(6)の上側端縁上で支持し、その上に焼き網(7)を載置している。水入れトレイ(8)に注入した水は固形燃料によって加熱され、水蒸気となって肉類を水蒸気加熱する。
【0060】
この水入れトレイ(8)は内部空間(S)内の任意の高さ位置に配置でき、水入れトレイ(8)の高さ位置は被調理食材の種類や、調理方法(例えば、火加減の調整)によって選択できる。水入れトレイ(8)の高さ位置を調節自在にするためには、上側水平フランジ(10)の外側寸法を水入れトレイ(8)を内部空間(S)中で上下に移動することができるような寸法とし、上側水平フランジ(10)と固形燃料バスケット(6)とが着脱自在に固定できる手段(図示せず)を上側水平フランジ(10)および/または固形燃料バスケット(6)に設ける。
【0061】
図8]は外壁(2)の水平断面形状を円形にした変形実施例の概念図で、[図4][図5]の右側の水平断面図と同様な概念的横断断面図である。この場合の固形燃料バスケット(6)の配置方法の2つの実施例は[図9]に示してある。[図9]の左側は固形燃料バスケット(6)を内部空間と同心に配置した場合の図であり、[図9]の右側の図は固形燃料バスケット(6)を内部空間と一部のセクターに配置した場合の図である。
【0062】
以下、[図18]〜[図20]を用いて本発明の構造2の好ましい形態を説明する。各図面は概念図で、各部品の相対寸法は正確なものではない。
【0063】
図18]は本発明のバーベキューグリルの別の好ましい実施例(構造2)の概念的な分解図で、構造2の部品では、構造1と同じ部品には同じ参照符号にダッシュ(')付けて示してある。構造2では各構成部品が着脱自在で、バーベキューグリル(1)から完全に取り出すことができ、掃除が容易になり、各部品の取付けコストを下げることができる。さらに、各構成部品を互いに入れ子式になるような寸法にすることによってバーベキューグリルの運送時に他の物品を収容する収容空間をバーベキューグリル内部に提供することができる。
【0064】
構造1と構造2の構成は基本的に同じであるが、固形燃料バスケットを金網ボックスとし、焼き網(7')および水入れトレイ(8')の支持構造を簡素化した点が相違する。
【0065】
構造1では固形燃料バスケットが金属板で作られていたが、構造2では固形燃料バスケットは金網ボックスである。この金網ボックスは固形燃料の熱を遮るものが少ないので、熱効率に特に優れている。
【0066】
また、構造1では使用時に焼き網(7')を水入れトレイ(8')上に支持させるが、構造2では焼き網支持具上に支持する。[図18]に示す実施例では焼き網(7')に脚部(71)を付けることで焼き網(7')と焼き網支持具とを一体化してある。焼き網で焼く面積は水入れトレイ(8)中の水面の面積以下にする。そうすることで煙の発生をほぼ完全に防ぐことができる。焼き網支持具すなわち脚部(7')は水入れトレイ(8)上に支持させることができる([図19]参照)。
【0067】
水入れトレイ(8')は少なくとも一つの水入れトレイ支持台(10)上に配置するのが好ましい。[図18]に示す実施例では水入れトレイ(8')は脚部(11)を有する水入れトレイ支持台(10)上に支持される。脚部(11)は底部上に支持される。
【0068】
本発明の構造2では、[図18]に示すように、食材(F)が加熱源(6')からの放射熱、反射熱および対流熱とで総合的に加熱され、実施例の結果が示すように、食品、特に肉類をより効率的にジューシーな食品に調理することができる。
【0069】
複数の支持段(10−1)〜(10−4)を有する支持台(10)を用いて水入れトレイ(8')の垂直方向位置を調節することもできる。[図20]に示すように、水入れトレイ支持台(10)と焼き網持フレームとを一体化することもできる。
【0070】
本発明の構造2では、水蒸気と肉との距離が遠く、炭の放射熱が下から照射されるため、短時間で上面、下面を両方一度にこんがり焼くことができ、短時間で焼けるため、肉汁が必要以上に外に出ず、ジューシーに焼ける。また、焼き網が水受けの内側に完全にセットされているので焼けた肉の油は水受けの中に確実に落ち、煙はほとんど出ない。
【実施例】
【0071】
(A)構造1
以下、[図1]に示す構造1のバーベキューグリルで実験した本発明のバーベキューグリルを用いることで牛肉をバーベキューした時に食品の品質が向上することを示す実験結果を示す。
【0072】
試験目的
本発明のバーベキューグリルでは煙が出ず、しかも、ジューシーな焼き上がりになるという事を確認すること。
試験方法
厚さが約40mmの牛肉(肩ロース)を使用し、下記の8つの条件で、牛肉の各々の表面を8分間焼いて、(1)煙の発生を観察し、(2)焼き上がり品質を5人のパネラーが実際に食べて評価した。
【0073】
実験条件
蓋(4)の有無、水入れトレイ(8)中の水の有無および炭(6)配置方法を関数として[表1]に示す組み合わせで行った。
【0074】
【表1】
【0075】
実験結果
焼き上がり品質を5人のパネラーが実際に食べて評価した結果、条件5の「間接焼き(両側炭設置)+蓋有り+水有り」が燃焼試験の結果、最も(1)煙が少なく、かつ(2)ジューシーな焼き上がりであった。
実験結果は[図10]〜[図17]に示してある。
【0076】
(B)構造2
以下、[図19]に示す構造2のバーベキューグリルで実験した本発明のバーベキューグリルを用いることで牛肉をバーベキューした時に食品の品質がさらに向上することを示す実験結果を示す。
【0077】
試験目的
本発明の構造2では、水蒸気と肉との距離が遠く、炭の放射熱が下から照射されるため、短時間で上面、下面を両方一度にこんがり焼くことはでき、短時間で焼けるため、肉汁が必要以上に外に出ず、ジューシーに焼け、水受けの完全に内側に焼き網がセットされているので焼けた肉の油は完壁に水受けの中に落ちることを確認すること。
試験方法
試験方法は構造1とほぼ同じにした。加熱時間は8分にした。
【0078】
実験条件
蓋(4)の有無、水入れトレイ(8)中の水の有無および炭(6)の配置条件(位置)を関数として[表2]に示す組み合わせ(燃焼条件)で行った。[表2]には結果も示してある。
【0079】
【表2】
【0080】
実験結果
焼き上がり品質を5人のパネラーが実際に食べて評価した結果、実験番号2−4および実験番号3−4の「間接焼き(両側炭設置、片側炭設置)+蓋有り+水有り」が煙がなく且つ短時間でジューシーな焼き上がりになることが確認できた。
実験結果は[図21]〜[図30]に示してある。
【符号の説明】
【0081】
S 内部空間
H 加熱領域
1 バーベキューグリル。
2 外壁
3 側壁
4 蓋
5 通気孔
6 固形燃料バスケット
7 焼き網
8 水入れトレイ
9 固形燃料バスケット用グリッド
10 トレイ支持台
【要約】
【課題】ジューシーな食品に調理することがで、しかも、煙の発生がなく、熱効率に優れたバーベキューグリルを提供する。
【解決方法】内部空間(S)を取り囲む垂直な外壁(2)と、内部空間(S)の底部を密閉する底壁(3)と、内部空間(S)の上部を密閉する蓋(4)とを有し、少なくとも底壁(3)および蓋(4)には通気孔(5)が形成され、内部空間(S)と外壁(2)との間には加熱源が配置され、内部空間(S)の上部で且つ加熱源の上方領域以外の加熱領域(H)に焼き網(7)を配置し、内部空間(S)内部の焼き網(7)の下側に水入れトレイを配置する。加熱源(6)および焼き網(7)に対する水入れトレイ(8)の相対位置を調節することで水入れトレイ(8)からの水蒸気と加熱源(6)からの放射熱、反射熱および対流熱とを総合した熱によって食材を加熱することができ短時間で食材をジューシーな食品に調理することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30