(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、Lenses having chromatic effect(USP 6,916,095 )や、Multilayer lens particularly for sunglasses (USP 25,668,618)や、Aid for color vision deficiencies (USP 35,574,517)などの発明は知られている。しかし、これらの発明は、何れも、デザインが画一的であり、バリエーションに富んだ個性的なデザインを実現できるものではない。
【0004】
一方、US公開公報20080151182 A1は、レンズ表面に複雑な迷彩パターン(camouflage pattern)を設ける手法を開示している。しかし、この発明は、レンズ表面に、何層もの印刷面を設ける製造工程を必要とするので、上記の発明と同様、バリエーションに富んだ個性的な商品の製造には全く適さない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するもので、バリエーションに富んだ個性的な商品を適量数だけ製造する構成を有する眼鏡レンズを提供することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明
に係る製造方法は、色彩の異なる第1と第2のプラスチック部材が一体化された眼鏡レンズであって、第1色彩に着色された視野側の第1部材と、第2色彩に着色された眼球側の第2部材と、を重ね合わせて一体化させる第1工程と、第1部材の凸表面、又は、第2部材の凹表面から、加工ヘッドを当接するか、又はレーザ光を照射することで、第1工程後のレンズの周辺表面の一部を除去する第2工程と、を有し、
前記第2工程では、レンズの周辺表面の一部を、周縁に向けて緩やかに肉薄化するか、或いは、レンズの周辺表面の一部を、第1部材の凸表面、又は、第2部材の凹表面に略直交する方向に研磨することを特徴とする。
【0007】
第2工程を設けることで個性的なデザインが可能となり、バリエーションに富んだ個性的な眼鏡レンズを適量ずつ製造することができる。本発明において、「着色された」とは、第1部材や第2部材そのものが、着色剤などで着色されている場合だけでなく、第1部材及び/又は第2部材において、その表裏面の何れか一方以上に着色層を設ける場合も含まれる。また、「着色層」は、印刷層に限定されず、第1部材と第2部材の接合面に設けられる接着剤や着色シート層も含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について更に詳細に説明する。
図1〜
図4は、第1部材B1と第2部材B2とで構成された眼鏡レンズ10を製造する第1工程を説明する図面である。各図面とも、左眼用の部材と、右眼用の部材レンズとを、左右一対に図示している。
【0010】
先ず、
図1は、視野側の第1部材B1,B1を示す断面図であり、
図2は、眼球側の第2部材B2,B2を示す断面図である。第1部材B1と第2部材B2は、各々、
図4に示す平面形状をしており、
図1と
図2は、
図4のA−A断面図である。
【0011】
第1部材B1と第2部材B2は、何れもプラスチック材であり、例えば、CR−39などのアリルジグリコールカーボネート(allyl diglycol carbonate)樹脂や、ウレタン(polyurethane)樹脂などの熱可塑性樹脂が好適に使用される。また、アクリル(acrylic resin )樹脂や、ポリカーボネート(polycarbonate )樹脂や、ナイロン(Nylon )などの熱硬化性樹脂も好適に使用される。
【0012】
特に限定されないが、この実施例では、第1部材B1と第2部材B2は、各々1mm程度の均一な板厚を有し、適度に湾曲した同一形状に成形されている。但し、第1部材B1と第2部材B2は、互いに異なる色彩に着色されており、例えば、第1部材B1は、シアン色に着色され、第2部材B2は、赤色に着色されている。
【0013】
第1部材B1と第2部材B2の着色は、(1)着色剤を混合したプラスチック原材料(典型的にはペレット)を加熱溶解、又はキャスティングして成形すること、(2)成形後の透明なプラスチック部材に着色層を印刷又は蒸着させること、(3)成形後の透明なプラスチック部材を、染色槽に浸漬して染色すること、の何れかの方法によって実現される。
【0014】
そして、印刷、蒸着、又は、染色によってプラスチック部材を着色する実施例では、(a)プラスチック部材の凸表面だけに着色層を設ける場合と、(b)プラスチック部材の凹表面だけに着色層を設ける場合と、(c)プラスチック部材の凹凸表面全体に着色層を設ける場合とがある。
【0015】
2枚のプラスチック部材が、成形後に各々着色される場合は、着色後の第1部材B1,B1と着色後の第2部材B2,B2は、例えば、接着剤によって一体化され、
図3に示す左眼用と右眼用の眼鏡レンズが各々完成される。ここで、接着剤は、熱硬化又はUV硬化されるのが典型的である。
【0016】
2枚のプラスチック部材が、成形後に各々着色される着色工程では、例えば、(1)第1部材B1の凸表面、及び/又は、第1部材B1の凹表面に、第1色彩の着色層が形成され、(2)第2部材B2の凸表面、及び/又は、第2部材B2の凹表面に、第2色彩の着色層が形成される。
【0017】
また、(3)第1部材B1の凸表面に、第1色彩の着色層を形成し、第1部材B1の凹表面に第2色彩の着色層を形成する場合や、(4)第2部材B2の凸表面に第1色彩の着色層を形成し、第2部材B2の凹表面に第2色彩の着色層を形成する場合もある。
【0018】
そして、何れの場合も、その後の接着工程において、第1部材B1と第2部材B2が接着により一体化される。接着剤は、例えば、UV(ultraviolet )照射によって硬化される。
【0019】
但し、第1部材B1,B1と第2部材B2,B2は、必ずしも、接着により一体化される必要はなく、例えば、一方のプラスチック部材を完成させた後、これに重ねて、加熱溶解状態の他方のプラスチック原材料を射出成形するダブルインジェクション法や、他方のプラスチック原材料を押出成形するダブルキャスティング法などを採ることができる。
【0020】
この二重成形手法(Double Molding)では、例えば、最初に第2部材B2を製造し、硬化状態の第2部材B2に重ねて、第1部材B1を成形する。具体的には、赤色の着色剤を混合したプラスチック原材料を、加熱溶解させて成形して第2部材B2を製造し、次に、シアン色の着色剤を混合したプラスチック原材料を、加熱溶解させて成形して、硬化状態の第2部材B2に重ねて、第1部材B1を一体化させる。
【0021】
図5aは、この製法で製造された眼鏡レンズ10を示しており、第1色彩に着色された第1部材B1と、第2色彩に着色された第2部材B2とが一体化された断面構造を示している。このような構成は、同一の色彩モデルの眼鏡レンズを大量に製造する場合に適している。
【0022】
しかし、色彩の種類を増やし、且つ、多様な色彩の組み合わせを実現して、個性的な眼鏡レンズを製造する上では、上記の製法に限定されず、二重成形後に着色層を設けるもの好適である。この場合には、第1部材B1と、第2部材B2の双方又は一方が、非着色状態(透明状態)であれば、色彩のバリエーションを増やす上で好ましい。
【0023】
先ず、第1部材B1と第2部材B2が共に透明の場合について説明する。この場合は、その後の着色工程において、第1部材B1の凸表面に、第1色彩の着色層を設け、第2部材B2の凹表面に、第2色彩の着色層を設ける(
図5b参照)。二重成形の後に着色層を設けることで、色彩の組み合わせを大幅に増やすことができ、個性的な色彩の眼鏡レンズを適量ずつ製造することができる。
【0024】
なお、第1部材B1と第2部材B2が共に透明である必要はなく、その一方だけが透明であっても良い。例えば、最初に第2部材B2を製造し、硬化状態の第2部材B2に重ねて、透明な第1部材B1を成形する場合には、二重成形の後の着色工程で、第1部材B1の凸表面に第1色彩の着色層を設ける。
【0025】
このような手順を採る場合、第2部材B2は、プラスチック基材全体が、赤色に着色されている場合(
図6a参照)と、第2部材B2の凸表面、及び/又は、第2部材B2の凹表面に、既に、赤色の着色層が形成されている場合(
図6b〜
図6d参照)と、がある。
【0026】
なお、
図6eのように、第2部材B2の凸表面に、シアン色の着色層が形成されていると共に、第2部材B2の凹表面に、赤色の着色層が形成されている場合には、第1部材B1に着色層を設ける必要がない。但し、
図6fに示すように、第1部材B1の凸表面に、シアン色の着色層を更に設けても良い。
【0027】
何れの工程を採っても、この製法では、第2部材B2の凸表面、及び/又は、第2部材B2の凹表面に着色層を設ける分だけ、印刷作業などの作業手数が増加する。しかし、色彩のバリエーションを大幅に増し、個性的な色彩の眼鏡レンズを適量ずつ製造する上では好適である。
【0028】
ところで、最初に第1部材B1を製造し、硬化状態の第1部材B1に重ねて、透明な第2部材B2を成形する場合も考えられる。この場合には、二重成形の後の着色工程で、第2部材B2の凹表面に第2色彩の着色層を形成する。
【0029】
このような手順を採る場合、第1部材B1のプラスチック基材全体が、シアン色に着色されている場合(
図7a参照)と、第1部材B1の凸表面、及び/又は、第1部材B1の凹表面に、既に、シアン色の着色層が形成されている場合(
図7b〜
図7d参照)と、がある。
【0030】
なお、
図7eのように、第1部材B1の凸表面に、シアン色の着色層が形成されていると共に、第1部材B1の凹表面に、赤色の着色層が形成されている場合には、第2部材B2に着色層を設ける必要がない。但し、
図7fに示すように、第2部材B2の凹表面に、赤色の着色層を更に設けても良い。
【0031】
図5〜
図7に示す何れの場合も、
図3の一体化状態では、第1部材は第1色彩、第2部材は第2色彩に着色されている。例えば、シアン色と赤色の組み合わせであれば、視野側から見た場合、全体が一様な紫色であり、サングラス用の眼鏡レンズ10として、十分に使用可能と状態となる。但し、眼鏡レンズ10のデザインとしては、極めて平凡であり特徴には欠けることになる。
【0032】
そこで、本実施例では、眼鏡レンズ10の周辺表面の一部10b、10cを研磨して肉薄化する第2工程を更に設けている。研磨処理では、好適には、被加工ワーク(眼鏡レンズ)に接触する研磨ヘッドの移動軌跡を、自由に設定できる5軸研磨機が使用される。本実施例の5軸研磨機は、研磨ヘッドの移動軌跡を自由に設定できるので、
図3に示す二層構造の眼鏡レンズ10の周辺部を、任意に薄肉化することができる。
【0033】
図8は、第1部材B1と第2部材B2の側面が、凸表面に直交しないよう、第1部材B1の凸表面を斜めに研磨する傾斜研磨法を示している。なお、この実施例において、第1部材B1は、プラスチック原材料に着色剤が混合されて製造されており、基材全体が第1色彩となっている(
図5a、
図7a参照)。
【0034】
この実施例では、最外部10cの第1部材B1が完全に除去されるので、眼鏡レンズ10の最外部10cには、第2部材B2の第2色彩(赤)が露出する。一方、中央部10aに隣接するグラデーション部10bは、第1部材B1が徐々に薄肉化されることで、第3色彩(紫)から、少しずつ第1色彩(シアン)が抜けて、第2色彩(赤色)に向けて色彩が変化する。
【0035】
図示の通り、グラデーション部10bと、最外部10cは、何れも、曲線帯状に形成されており、使用者の視界を阻害しない範囲で、デザイン的なインパクトを与えている。なお、ここでは、第1部材B1の凸表面を斜めに研磨しているが、第2部材B2の凹表面を研磨しても良い。この点は、傾斜研磨法に限らず、以下に説明する直進研磨法でも同じである。
【0036】
図9は、
図8の場合と同じ傾斜研磨法を採用しているが、第1部材B1の周辺部10bだけを斜めに研磨した状態を示している。この実施例では、第2部材B2が視界側に露出することがないので、眼鏡レンズ10の中央部10aに隣接して、第3色彩(紫)から、少しずつ第1色彩(シアン)が抜けて、曲線帯状のグラデーション部10bが形成される。
【0037】
図10は、第1部材B1の側面が、凸表面にほぼ直交するよう、第1部材B1の凸表面の法線方向に研磨する直進研磨法を示している。この実施例では、法線方向に研磨を進め、第1部材B1、又は第1部材B1の着色層を除去するので、外周部10dに、第2部材B2の色彩が露出し、中央部10aの紫色とは、顕著に相違する赤色が出現する。
【0038】
図示の通り、中央部10aには、変曲点を有する波状の輪郭線(境界ライン)が形成される。本実施例では、被加工ワーク(眼鏡レンズ)に接触する研磨ヘッドの移動軌跡を、自由に設定できる5軸研磨機を使用するので、
図10に示すような波状の輪郭線に限らず、更に複雑な輪郭線を形成することができる。そして、複雑な輪郭線の内外で、色彩が顕著に変化することで、デザイン的なインパクトを与えることができる。
【0039】
例えば、
図5a〜
図5b、
図6a〜
図6d、
図7a、
図7b、
図7e、
図7fの構成のように、第2部材B2の凸表面に、第1色彩の着色層を設けない実施例では、好適に、
図10のデザインを実現することができる。
【0040】
特に、
図5aと
図7aを除く構成では、着色層を除去する程度の、ごく僅かな研磨量で
図10のデザインを実現することができるので、非常に好適である(
図5b、
図6a〜
図6d、
図7b、
図7e、
図7f参照)。
【0041】
図11は、第2部材B2の凹表面に研磨ヘッドを当接して、外周形状に沿って、円環帯状に第2部材B2に切除溝11を設けた実施例を示している。この実施例では、第2色彩(赤色)の第2部材が円環帯状に切除されるので、第1色彩(シアン色)の円環溝(円環状の帯ライン)を形成され、印象深いデザインとなる。
【0042】
なお、第1部材B1の凸表面に研磨ヘッドを当接して、外周形状に沿って、円環帯状に第1部材B1を切除すれば、第2色彩(赤色)の円環溝が形成される。
【0043】
第2部材B2の凹表面を研磨するか、第1部材B1の凸表面を研磨するかに拘らず、切除ラインを連続させる必要は特になく、不連続な切除ラインとすることで、更に印象深いデザインを実現することもできる。
【0044】
第2部材B2の凹表面を研磨する場合、
図5b、
図6d、
図6e,
図6f、
図7a〜
図7dの構成のように、透明なプラスチック基材で構成された第2部材B2の凹表面だけに、第2色彩の着色層を設ける実施例では、第2色彩の着色層を除去する程度の、ごく僅かな研磨量で
図11のデザインを実現する上で、非常に好適である。
【0045】
一方、第1部材B1の凸表面を研磨する場合、
図5b、
図6a〜
図6d、
図7b、
図7e、
図7fの構成のように、透明なプラスチック基材で構成された第1部材B1の凸表面だけに、第1色彩の着色層を設ける実施例では、第1色彩の着色層を除去する程度の、ごく僅かな研磨量で
図11のデザインを実現する上で、非常に好適である。
【0046】
一方、
図5a、
図6aの構成のように、第2部材B2が第2色彩のプラスチック基材で構成される場合には、切除溝11の深さを適宜に変化させた円環溝を形成することで、グラデーション部を形成することができる。例えば、第2部材B2の凹表面に研磨ヘッドを当接して切除溝11を設ける実施例では、切除溝11が深い分だけ第2色彩が抜けるので、第1色彩に近い色彩となる。
【0047】
一方、例えば、第1部材B1の凸表面に研磨ヘッドを当接して切除溝11を設ける実施例では、切除溝11が深い分だけ第1色彩が抜けるので、第2色彩に近い色彩となる。
【0048】
第2工程を経ることで眼鏡レンズ10が完成状態となるが、必要に応じて、視野側及び又は眼球側に、適宜な保護膜を設けても良い。また、2枚のプラス部材B1,B2の間に、偏光膜を配置しても良い。
【0049】
以上、実施例について詳細に説明したが、5軸加工機に代えてレーザ加工機を使用することもできる。また、
図10では、直進研磨法を説明したが、これに代えて傾斜研磨法を採れば、
図8や
図9に示すようなグラデーション部10bを形成することができる。この場合、中央部10aの外方に、波状輪郭線に続いて、グラデーション部が形成されるのでデザイン上のインパクトが強い。
【0050】
また、着色された接着剤を使用して第1部材と第2部材を一体化させることで、第1部材又は第2部材を着色することもできる。このとき、第1部材が透明であれば、第1部材が接着剤で着色されることになる。一方、第2部材だけが透明であれば、第2部材が接着剤で着色されることになる。