特許第6856843号(P6856843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856843ベンゾトリアゾール誘導体化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856843
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール誘導体化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/20 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   C07D249/20 503
   C07D249/20 504
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-24821(P2018-24821)
(22)【出願日】2018年2月15日
(62)【分割の表示】特願2017-66478(P2017-66478)の分割
【原出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168148(P2018-168148A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】301000675
【氏名又は名称】シプロ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126549
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 信治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上坂 敏之
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3738837(US,A)
【文献】 特開2014−144932(JP,A)
【文献】 特開2011−190293(JP,A)
【文献】 特開2012−41333(JP,A)
【文献】 特開2005−290240(JP,A)
【文献】 特開平7−118378(JP,A)
【文献】 Makromolekulare Chemie,1984年,Vol.185, No.12,pp.2497-2509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール誘導体化合物の製造方法であって、
該製造方法の反応経路のなかで、4−カルボキシ−2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩と1,3−ジメトキシベンゼンとを反応させる工程を経ることを特徴とする、ベンゾトリアゾール誘導体化合物の製造方法。
【化1】
一般式(1)
[一般式(1)中、RおよびRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基であり、Rが水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルキル炭素数1〜2のアクリロイルオキシアルキル基、またはアルキル炭素数1〜2のメタクリロイルオキシアルキル基である]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾトリアゾール誘導体化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂等の有機物は、太陽光の紫外線の作用によって劣化することがよく知られている。樹脂においては、紫外線によって変色や強度低下が起こり、また、各種の機能性有機材料においては、紫外線によって分解して機能低下が起こる。
【0003】
これら有機物の紫外線による劣化を防止するため、一般的に紫外線吸収剤が用いられている。例えばディスプレイ表示装置において、偏光板保護フィルム等の光学フィルムに紫外線吸収剤を添加して、これら光学フィルムの変色を防止することが一般的に行なわれている。また、反射防止フィルムに含まれる近赤外線吸収剤の紫外線による劣化を防ぐため、反射防止フィルムに紫外線吸収剤が添加されている。また、有機ELディスプレイの発光素子には、蛍光材料や燐光材料等の各種有機物が使用されており、これら有機物の紫外線による劣化を防ぐため、ディスプレイの表面フィルムなどに紫外線吸収剤が添加されている。
【0004】
また、人体においては、紫外線によって皮膚や眼球が日焼けして、各種病気の原因になることがよく知られている。紫外線による眼球への影響としては、例えば、屋外の紫外線量の多い場所で太陽光線に眼を晒すと角膜炎を起こしやすく、また、水晶体への影響として、紫外線の蓄積性により白内障を引き起こす場合がある。
【0005】
紫外線による眼球の各種病気を防ぐために、紫外線吸収剤を眼鏡レンズまたはコンタクトレンズに添加して、紫外線が目に達するのを防止することが一般的に行なわれている。
【0006】
上記の各用途では紫外線を十分に遮断することが求められており、すなわち、太陽光のうち400nm以下の光を十分に遮断することが求められている。これまで使用されてきた紫外線吸収剤は350〜400nm、特に380〜400nmの長波長領域の吸収が弱いが、これらの長波長領域の紫外線を効率よく吸収するために多くの紫外線吸収剤が提案されている。例えば特許文献1〜3に記載されているように、ベンゾオキサジノン誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体などが上記の各用途で提案されている。しかしながら、特許文献1に記載されているベンゾオキサジノン誘導体は一般に耐光性が低く、長期の使用で紫外線吸収性能が低下することが予想される。また、特許文献2および3に記載されているトリアジン誘導体やベンゾトリアゾール誘導体は、長波長域の吸収が低く、紫外線遮断機能が不十分である。
【0007】
特許文献4〜5では、ベンゾトリアゾール誘導体にセサモールを修飾することで、長波長域の光を効率よく吸収できることが示されているが、400〜420nmの可視光域の吸収が強く、本化合物を光学フィルムや眼鏡レンズ等に添加すると黄色く着色することから、上記の各用途に使用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−10875号公報
【特許文献2】特開2010−168462号公報
【特許文献3】特開2004−325511号公報
【特許文献4】特開2012−41333号公報
【特許文献5】特開2012−25680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況を鑑みて、本発明における課題は、400nm以下の紫外線領域を強く吸収しながら着色が少なく、さらに長期にわたって紫外線遮断機能を示す高い耐光性をもつ紫外線吸収剤や樹脂組成物として好適に用いることができる化合物の収率のよい製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明者らは、下記の一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を合成する製造方法として、反応経路のなかで、4−カルボキシ−2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩と1,3−ジメトキシベンゼンとを反応させる工程を経ることで、上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を収率良く合成できることを見出した。
【0011】
【化1】
一般式(1)
[一般式(1)中、RおよびRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基であり、Rが水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルキル炭素数1〜2のアクリロイルオキシアルキル基、またはアルキル炭素数1〜2のメタクリロイルオキシアルキル基である]
【発明の効果】
【0012】
一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、360nm付近に最大吸収波長を示して、紫外線を強く吸収しながら着色が少なく、長期にわたって紫外線遮断機能を示す高い耐光性をもつ紫外線吸収剤として有用である。本発明の製造方法のなかの工程である4−カルボキシ−2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩と1,3−ジメトキシベンゼンを反応させることで、一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を収率良く得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を収率良く製造する方法である。以下に下記一般式(1)において表される化合物について説明する。
【0014】
【化1】
一般式(1)
【0015】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基等が挙げられ、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基;カルボキシエチル基、カルボキシヘプチル基等のアルキル炭素数1〜7のカルボキシアルキル基;メトキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルヘプチル基等の各アルキル炭素数の合計が2〜15のアルキルオキシカルボニルアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシオクチル基等の炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基;メチルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシオクチル基等の各アルキル炭素数の合計が2〜15のアルキルカルボニルオキシアルキル基;アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシブチル基等のアルキル炭素数1〜4のアクリロイルオキシアルキル基;アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基等のアルキル炭素数1〜4のアクリロイルオキシヒドロキシアルキル基;メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシブチル基等のアルキル炭素数1〜4のメタクリロイルオキシアルキル基;メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基等のアルキル炭素数1〜4のメタクリロイルオキシヒドロキシアルキル基等が挙げられ、Rは、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基;カルボキシエチル基、カルボキシヘプチル基等のアルキル炭素数1〜7のカルボキシアルキル基;メトキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルヘプチル基等の各アルキル炭素数の合計が2〜15のアルキルオキシカルボニルアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシオクチル基等の炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基;メチルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシオクチル基等の各アルキル炭素数の合計が2〜15のアルキルカルボニルオキシアルキル基;フェニル基;トリル基;アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシブチル基等のアルキル炭素数1〜4のアクリロイルオキシアルキル基;アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基等のアルキル炭素数1〜4のアクリロイルオキシヒドロキシアルキル基;メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシブチル基等のアルキル炭素数1〜4のメタクリロイルオキシアルキル基;メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル基等のアルキル炭素数1〜4のメタクリロイルオキシヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物のうち、本発明の製造方法で好適に合成されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、RおよびRが水素原子であり、Rが炭素数1〜8のアルキル基であり、Rが水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルキル炭素数1〜2のアクリロイルオキシアルキル基、またはアルキル炭素数1〜2のメタクリロイルオキシアルキル基である。
【0017】
本発明の製造方法で合成されるベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。メチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、メチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−3−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、メチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、メチル 2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、オクチル 2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−エチルへキシル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−エチルへキシル 2−[4−(2−エチルへキシルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−アクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−メタクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−メタクリロイルオキシエチル 2−(4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−メタクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、2−メタクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート、フェニル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレート。
【0018】
上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を効率よく合成する方法は、その反応の反応経路のなかで4−カルボキシ−2−ニトロベンゼンジアゾニウム塩と下記の一般式(2)で示される1,3−ジメトキシベンゼン誘導体とを反応させる工程を経ることが好ましい。
【化2】
一般式(2)
[一般式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基である]
【0019】
下記(化3〜化11)では、上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)が得られるまでの反応経路を一例として示した。ただし、Xはハロゲン原子を表す。特に(化4)の反応工程を経ることで、本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を収率良く得ることができる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0020】
本発明の製造方法で合成されるベンゾトリアゾール誘導体化合物のうち、重合性の二重結合を有しているものに関しては、単独重合もしくは共重合を行うことが可能である。共重合可能な他の重合性モノマーは特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法で合成されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を添加可能な樹脂は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ-3−メチルブチレン、ポリメチルペンテンなどのα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、内部可塑性ポリ塩化ビニルなどの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミド、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、水溶性樹脂、粉体塗料用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0022】
本発明の製造方法で合成されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を樹脂に添加する場合、紫外線吸収剤としては上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物のみ、あるいは他の紫外線吸収剤と組み合わせて使用できる。上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物以外の紫外線吸収剤としては、一般に市場で入手できるもので紫外領域を吸収できるものであれば特に限定されない。例えば、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、サリシレート誘導体、シアノアクリレート誘導体、トリアジン誘導体等が用いられる。これらの紫外線吸収剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の製造方法で合成されるベンゾトリアゾール化合物は、樹脂に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール誘導体化合物の合成法および化合物の特性を示す。ただし本発明はこれらの様態のみに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
[中間体;5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの合成]
【化12】
【0026】
2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水875ml、炭酸ナトリウム56.5g(0.533モル)、4−アミノ−3−ニトロ安息香酸178.8g(0.982モル)を入れて溶解させ、36%亜硝酸ナトリウム水溶液197.1g(1.028モル)を加えた。この溶液を3000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、水875ml、62.5%硫酸372.0g(2.370モル)を入れて混合し、3〜7℃に冷却したものに滴下し、同温度で1時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を得た。5000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、1,3−ジメトキシベンゼン139.4g(1.009モル)、イソプロピルアルコール900ml、水390mlを入れて混合し、ジアゾニウム塩水溶液を5〜10℃で滴下し、5〜10℃で2時間撹拌した後に、10〜15℃で15時間撹拌した。32%水酸化ナトリウム水溶液280mlを加え、70℃で下層の水層を分離して除去し、イソプロピルアルコール75ml、水875mlを加えて生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、6−(4−カルボキシ−2−ニトロフェニルアゾ)−1,3−ジメトキシベンゼンを218.3g得た。
【0027】
3000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、6−(4−カルボキシ−2−ニトロフェニルアゾ)−1,3−ジメトキシベンゼン217.8g(0.657モル)、32%水酸化ナトリウム水溶液147.6g(1.181モル)、水370ml、イソプロピルアルコール1100ml、ハイドロキノン1.1gを入れて、60%ヒドラジン一水和物52.6g(0.630モル)を70℃で1時間かけて滴下し、同温度で3時間撹拌させた。62.5%硫酸でpH3に調整し、70℃で下層の水層を分離して除去し、得られた有機層を25℃に冷却して水820mlを加え、1時間撹拌を行ない、生じた沈殿物をろ過、水洗、乾燥し、5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール N−オキシドを158.9g得た。
【0028】
3000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール N−オキシドを156.8g(0.497モル)、イソプロピルアルコール780ml、水780ml、32%水酸化ナトリウム水溶液295.8g(2.366モル)を入れて、70〜80℃で二酸化チオ尿素255.9g(2.367モル)を30分かけて加えた。同温度で2時間撹拌し、62.5%硫酸でpH4に調整し、下層の水層を分液して除去し、イソプロピルアルコール480ml、水480mlを加え、得られた有機層を25℃に冷却して、生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥して、5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを107.4g得た。収率37%(4−アミノ−3−ニトロ安息香酸から)であった。
【0029】
(実施例2)
[中間体;5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの合成]
【化13】
【0030】
2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを107.1g(0.358モル)、酢酸540ml、62.5%硫酸365.2g(2.327モル)、95%硫酸221.8g(2.148モル)を入れて、130〜140℃で20時間撹拌後、水480mlを加えて沈殿物をろ過、水洗し、粗結晶を得た。得られた粗結晶をイソプロピルアルコール130ml、4−メチル−2−ペンタノン300mlでリパルプ洗浄して、5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを59.5g得た。収率58%(5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。
【0031】
(実施例3)
[化合物(a);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化14】
化合物(a)
【0032】
2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを59.5g(0.209モル)、トルエン900ml、N,N−ジメチルホルムアミド3.6ml、塩化チオニル93.1g(0.783モル)を加えて、60〜65℃で20時間撹拌した。続いて減圧で溶媒を回収して、トルエン415ml、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル271.9g(2.089モル)を加え、80℃で15時間撹拌した。水400mlを加えて、70℃で下層の水層を分離して除去し、同様に水300mlを加えて70℃で下層の水層を分離する操作を3回繰り返した後、溶媒を減圧で回収してイソプロピルアルコール190ml、水40mlを加えて、5℃に冷却して生じた沈殿物をろ過、洗浄、乾燥して粗結晶を得た。この粗結晶をイソプロピルアルコールで再結晶して、化合物(a)を19.2g得た。収率23%(5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。融点116℃。
【0033】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−20AT((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:25℃
移動相: メタノール/水=95/5(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
検出:UV250nm
<測定結果>
HPLC面百純度97.2%
なお、以下の実施例4〜6も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0034】
また、化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは359.0nmであり、その波長のモル吸光係数εは27800であった。スペクトルを図1に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
なお、以下の実施例7〜8も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0035】
また、化合物(a)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL JNM−AL300
共振周波数:300MHz(1H−NMR)
溶媒:クロロホルム−d
1H−NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、mはmultipletの略とする。以下の実施例4〜8においても同様である。なお、以下の実施例4〜8も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.27(s,1H,phenol−OH),8.71(m,1H,benzotriazole−H),8.32(d,1H,J=9.0Hz,benzotriazole−H),8.04(m,2H,benzotriazole−H,phenol−H),6.71(d,1H,J=3.0Hz,phenol−H),6.64(m,1H,phenol−H),6.18(m,1H,C=CH−H),5.62(m,1H,C=CH−H),4.60(m,4H,methacryloyl−O−CH−CH−H),3.94(s,3H,phenol−O−CH−H),1.97(m,3H,CH=C−CH−H)
【0036】
(実施例4)
[化合物(b);2−アクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化15】
化合物(b)
【0037】
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルをアクリル酸2−ヒドロキシエチルとした以外は実施例3と同様にして、化合物(b)を収率34%(5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)で得た。融点は111℃、HPLC面百純度は93.3%であった。
【0038】
また、化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルを測定したところ、最大吸収波長λmaxは358.6nmであり、その波長のモル吸光係数εは27900であった。スペクトルを図2に示す。スペクトルの測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:UV−1850((株)島津製作所製)
測定波長:250〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10ppm
なお、以下の実施例5〜6も本実施例と同様の測定条件で紫外〜可視吸収スペクトルの測定を行った。
【0039】
また、化合物(b)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.23(s,1H,phenol−OH),8.69(m,1H,benzotriazole−H),8.28(d,1H,J=9.3Hz,benzotriazole−H),8.09(m,1H,benzotriazole−H),7.92(m,1H,phenol−H),6.69(m,1H,phenol−H),6.61(m,1H,phenol−H),6.45(m,1H,CH=CH−H),6.20(m,1H,CH=CH−H),5.87(m,1H,CH=CH−H),4.58(m,4H,acryloyl−O−CH−H,acryloyl−O−CH−CH−H),3.87(s,3H,phenol−O−CH−H)
【0040】
(実施例5)
[化合物(c);メチル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化16】
化合物(c)
【0041】
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルをメチルアルコールとした以外は実施例3と同様にして、化合物(c)を収率46%(5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)で得た。融点は185℃、HPLC面百純度は96.0%であった。最大吸収波長λmaxは357.8nmであり、その波長のモル吸光係数εは26400であった。スペクトルを図3に示す。
【0042】
また、化合物(c)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.23(s,1H,phenol−OH),8.65(m,1H,benzotriazole−H),8.26(d,J=9.0Hz,1H,benzotriazole−H),8.07(m,1H,benzotriazole−H),7.89(m,1H,phenol−H),6.67(m,1H,phenol−H),6.59(m,1H,phenol−H),3.86,3.99(each s,each 3H,phenol−O−CH−H and C=O−O−CH−H)
【0043】
(実施例6)
[化合物(d);2−エチルへキシル 2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化17】
化合物(d)
【0044】
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを2−エチルへキシルアルコールとした以外は実施例3と同様にして、化合物(d)を収率28%(5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)で得た。融点は56℃、HPLC面百純度は98.2%であった。最大吸収波長λmaxは358.6nmであり、その波長のモル吸光係数εは27800であった。スペクトルを図4に示す。
【0045】
また、化合物(d)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.26(s,1H,phenol−OH),8.67(m,1H,benzotriazole−H),8.28(d,1H,J=9.3Hz,benzotriazole−H),8.09(m,1H,benzotriazole−H),7.92(m,1H,phenol−H),6.69(m,1H,phenol−H),6.61(m,1H,phenol−H),4.31(m,2H,benzotriazole−CO−O−CH−H),3.87(s,3H,phenol−O−CH−H),1.78(m,1H,2−ethylhexyl−CH),1.51(m,8H,2−ethylhexyl−CH),0.96( m,6H,2−ethylhexyl−CH
【0046】
(実施例7)
[化合物(e);オクチル 2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化18】

化合物(e)
【0047】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、ピリジン106.0g(1.340モル)を入れた後、36%塩酸197.0g(1.945モル)を15分かけて加えて1.5時間撹拌し、溶媒を100g回収してピリジン塩酸塩のスラリーを得た。続いて5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを20.0g(0.067モル)加えて160℃で21時間撹拌し、70℃まで冷却して水250mlを加えて、32%水酸化ナトリウム水溶液でpH3に調整した。30℃に冷却して生成した沈殿物をろ過、水洗、乾燥して、5−カルボキシ −2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを18.1g得た。収率100%(5−カルボキシ −2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。
【0048】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ −2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを9.0g(0.033モル)、炭酸ナトリウム4.4g(0.042モル)、オクチルクロライド11.8g(0.079モル)、N,N−ジメチルホルムアミド20ml、ヨウ化カリウム0.5g、ポリエチレングリコール400を1.3g入れて、130〜140℃で3時間撹拌した。トルエン100ml、水100mlを加えて、70〜75℃で下層の水層を分液して除去し、さらに水100ml、酢酸2mlを加えて、70〜75℃で下層の水層を分液して除去した。減圧でトルエンを回収して、イソプロピルアルコール40mlを加えて、生成した沈殿物をろ過、洗浄、乾燥して、粗結晶を5.6g得た。この粗結晶をイソプロピルアルコールで再結晶して、化合物(e)を4.7g得た。収率29%(5−カルボキシ −2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールから)であった。融点97℃。最大吸収波長λmaxは360.2nmであり、その波長のモル吸光係数εは28600であった。スペクトルを図5に示す。
【0049】
また、HPLC分析により、化合物(e)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L−2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A−212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: メタノール/水=99/1
流速:1.0ml/min
検出:UV250nm
<測定結果>
HPLC面百純度99.0%
なお、以下の実施例8も本実施例と同様の測定条件でHPLC測定を行った。
【0050】
また、化合物(e)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.26(s,1H,phenol−OH),8.68(s,1H,benzotriazole−H),8.29(d,1H,J=9.0Hz,benzotriazole−H),8.11(d,1H,J=8.9Hz,benzotriazole−H),7.93(d,1H,J=9.0Hz,phenol−H),6.69(m,2H,phenol−H),4.38(t,2H,benzotriazole−CO−O−CH−H),4.01(t,2H,phenol−O−CH−H),1.46(m,24H,octyl−CH),0.91(s,6H,octyl−CH
【0051】
(実施例8)
[化合物(f);2−メタクリロイルオキシエチル 2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−カルボキシレートの合成]
【化19】
化合物(f)
【0052】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、化合物(e)を3.3g(0.0067モル)、水酸化ナトリウム0.8g(0.0200モル)、イソプロピルアルコール25ml、水25mlを入れて、70〜75℃で2時間撹拌した。62.5%硫酸1mlを加えてpH5に調整し、生成した沈殿物をろ過、洗浄、乾燥して、5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを2.5g得た。
【0053】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5−カルボキシ −2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを2.5g(0.0065モル)、塩化チオニル2.0g(0.0168モル)、トルエン50ml、N,N−ジメチルホルムアミド0.2mlを入れて、62〜68℃で1時間撹拌した。減圧でトルエンを回収して、トルエン50ml、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.8g(0.0138モル)、ピリジン1.3g(0.0164モル)を加えて、72〜78℃で1時間撹拌した。水30ml、62.5%硫酸0.5mlを加えて、70〜75℃で下層の水層を分液して除去し、減圧でトルエンを回収し、イソプロピルアルコール30mlを加えて、生成した沈殿物をろ過、洗浄、乾燥して、粗結晶を2.2g得た。この粗結晶をイソプロピルアルコールで再結晶して、化合物(f)を1.4g得た。収率42%(化合物(e)から)であった。融点69℃、HPLC面百純度は94.8%であった。最大吸収波長λmaxは360.8nmであり、その波長のモル吸光係数εは28700であった。スペクトルを図6に示す。
【0054】
また、化合物(f)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.24(s,1H,phenol−OH),8.70(s,1H,benzotriazole−H),8.31(d,1H,J=12.9Hz,benzotriazole−H),8.11(d,1H,J=10.5Hz,benzotriazole−H),7.95(d,1H,J=9.0Hz,phenol−H),6.69(m,2H,phenol−H),6.18(s,1H,C=CH−H),5.62(s,1H,C=CH−H),4.64(m,2H,methacryloyl−O−CH−H),4.56(m,2H,benzotriazole−CO−O−CH−H),4.01(t,2H,phenol−O−CH−H),1.97(s,3H,CH=C−CH−H),1.45(m,12H,octyl−CH),0.90(s,3H,octyl−CH
【0055】
(比較例)
従来の一般的な紫外線吸収剤である化合物(g);3−(2H−ベンゾトリアゾール −2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルメタクリレート、および長波長域を強く吸収することが出来るセサモールを有するベンゾトリアゾール誘導体化合物である化合物(h);2−[2−(6−ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−ベンゾトリアゾール−5−イル]エチルメタクリレートを比較例として合成した。
【0056】
[紫外線吸収フィルムの作製]
実施例7で得られた化合物(e)を0.1g、ポリメタクリル酸メチル1.9g、メチルエチルケトン4.0g、トルエン4.0gを混合して溶解し、紫外線吸収剤を有した樹脂組成物の溶液を得た。得られた紫外線吸収剤を有した樹脂組成物の溶液を、バーコーターNo.20を用いてガラス板(厚み2mm)に塗布し、加熱乾燥90℃を2分、120℃を3分の順で行った後、減圧乾燥40℃を12時間実施して溶媒を除去し、膜厚4μmの紫外線吸収剤を5%有するポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。一方、比較例で合成した化合物(g)、(h)をそれぞれメタクリル酸メチルと共重合して、5%の紫外線吸収剤を含む共重合体とし、次いで化合物(e)と同様の方法でフィルム化して、膜厚4μmの紫外線吸収剤を5%有するポリメタクリル酸メチルフィルムを得た。
【0057】
[紫外線遮断試験]
市販の昇華転写方式コンパクトフォトプリンター(Canon SELPHY CP600)に使用されているイエロー染料、シアン染料、マゼンダ染料の転写フィルムに、上記で得られた化合物(e)、(g)、(h)の紫外線吸収剤を5%有するポリメタクリル酸メチルフィルムを乗せて転写フィルムを保護し、ウェザーメーターで100時間疑似太陽光を照射して退色を確認した。レベル5は退色なし、レベル4はわずかに退色、レベル3はある程度退色、レベル2はほとんど退色、レベル1は完全に退色として、5段階で評価した結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
[可視光透過率測定]
上記で得られた化合物(e)、(h)のクロロホルム中での可視光透過率を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表1より、従来の長波長域を吸収できる化合物(h)と同様に、本発明品は長時間にわたって高い紫外線遮断機能を有していることがわかり、さらに表2より、化合物(h)と比較して440〜470nmの可視光域の透過率が高いことから、着色が低いことがわかり、有用な紫外線吸収剤であると言える。なお、実施例および比較例により得られた化合物の紫外線遮断試験、および可視光透過率測定の条件は次の通りである。
【0062】
<紫外線遮断試験条件>
装置:スーパーキセノンウェザーメーター SX−75(スガ試験機(株))
照射照度:180W/m
照射時間:100時間
ブラックパネル温度:63℃
槽内湿度:50%
【0063】
<可視光透過率測定条件>
装置:UV−1850((株)島津製作所製)
測定波長:400〜 500nm
溶媒:クロロホルム
濃度:10000ppm
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の製造方法で製造された上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物は、360nm付近に最大吸収波長を示して、優れた紫外線遮断機能を有しながら着色が少なく、さらに太陽光に長時間さらされても、紫外線遮断機能が損なわれることがない。よって、紫外線で劣化する材料や人体の保護に用いることが出来、特に着色が大きいと問題がある用途に好適に用いることが出来る。また、本発明の製造方法では、上記ベンゾトリアゾール誘導体化合物を収率良く合成することが出来、低コストで製造出来ることから、幅広い用途で利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】化合物(a)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図2】化合物(b)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図3】化合物(c)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図4】化合物(d)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図5】化合物(e)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図6】化合物(f)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6