(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記状態識別手段は、前記所定領域内における前記所定の物理量の分布の傾きが変わる位置を特定することにより、液体状態の金属と固体状態の金属とを含む領域である固液領域と、前記固体領域とを識別することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ溶接装置。
前記判定手段は、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さ及び/又はレーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さを評価することにより、前記溶融池を評価することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記判定手段は、経時的にレーザ光が金属に対して相対的に移動することに伴う、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化を評価することにより、前記溶融池を評価することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記判定手段は、前記液体状態の金属を含む領域にある少なくとも2つの位置における、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの差を評価することにより、前記溶融池を評価することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記判定手段は、レーザ光の照射位置から所定距離にあり、前記照射位置の移動に伴って金属上を移動する前記液体状態の金属を含む領域にある所定位置において、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化を評価することにより、前記溶融池を評価することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記判定手段は、前記液体状態の金属を含む領域のうち、レーザ光の照射位置から特定距離以上離れた領域内において、一の位置と該一の位置の周辺の位置とにおける前記所定の物理量の差が所定量以上である該一の位置の有無を評価することにより、前記溶融池を評価することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
金属との相対的な位置を変化させながらレーザ光を金属に照射し、該金属の溶接を行うレーザ溶接装置により行われたレーザ溶接の品質の良否を判定するレーザ溶接品質判定装置であって、
金属の状態によって変動する所定の物理量の分布を、前記レーザ溶接装置によりレーザ光が照射された金属の所定領域において測定する測定手段と、
その測定手段により測定された前記所定領域における前記所定の物理量の分布に基づいて、各位置における前記所定の物理量の変化量である傾きを判断する傾き判断手段と、
その傾き判断手段により判断された傾きに基づいて、前記所定領域における固体状態だけの金属の領域である固体領域と、液体状態の金属を含む領域とを識別する状態識別手段と、
その状態識別手段により識別された前記液体状態の金属を含む領域を溶融池として特定する溶融池特定手段と、
その溶融池特定手段により特定された前記溶融池を評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する判定手段と、を備えることを特徴とするレーザ溶接品質判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法において、輝度はカメラの分光感度、光学系、金属材料の種類、レーザ強度などの条件に依存するため、これらの条件が一つでも変わると、閾値を設定し直さない限り、溶融池を特定する精度が下がり、結果としてレーザ溶接の品質の判定を精度よく行えないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、測定の条件にかかわらず高い精度でレーザ溶接の品質の判定ができるレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載のレーザ溶接装置は、金属へレーザ光を照射して該金属の溶接を行うものであって、レーザ光を発振して、金属との相対的な位置を変化させながらレーザ光を金属に照射させるレーザ光照射手段と、金属の状態によって変動する所定の物理量の分布を、前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射された金属の所定領域において測定する測定手段と、その測定手段により測定された前記所定領域における前記所定の物理量の分布に基づいて、各位置における前記所定の物理量の変化量である傾きを判断する傾き判断手段と、その傾き判断手段により判断された傾きに基づいて、前記所定領域における固体状態だけの金属の領域である固体領域と、液体状態の金属を含む領域とを識別する状態識別手段と、その状態識別手段により識別された前記液体状態の金属を含む領域を溶融池として特定する溶融池特定手段と、その溶融池特定手段により特定された前記溶融池を評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する判定手段と、を備える。
【0008】
請求項2記載のレーザ溶接装置は、請求項1記載のレーザ溶接装置において、前記所定の物理量は、温度である。
【0009】
請求項3記載のレーザ溶接装置は、請求項1又は2記載のレーザ溶接装置において、前記状態識別手段は、前記所定領域内における前記所定の物理量の分布の傾きが変わる位置を特定することにより、液体状態の金属と固体状態の金属とを含む領域である固液領域と、前記固体領域とを識別する。
【0010】
請求項4記載のレーザ溶接装置は、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記判定手段は、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さ及び/又はレーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さを評価することにより、前記溶融池を評価する。
【0011】
請求項5記載のレーザ溶接装置は、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記判定手段は、経時的にレーザ光が金属に対して相対的に移動することに伴う、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化を評価することにより、前記溶融池を評価する。
【0012】
請求項6記載のレーザ溶接装置は、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記判定手段は、前記液体状態の金属を含む領域にある少なくとも2つの位置において、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの差を評価することにより、前記溶融池を評価する。
【0013】
請求項7記載のレーザ溶接装置は、請求項1から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記判定手段は、レーザ光の照射位置から所定距離にあり、レーザ光の照射位置の移動に伴って金属上を移動する前記液体状態の金属を含む領域にある所定位置において、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の前記液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化を評価することにより、前記溶融池を評価する。
【0014】
請求項8記載のレーザ溶接装置は、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記判定手段は、前記液体状態の金属を含む領域のうち、レーザ光の照射位置から特定距離以上離れた領域内において、一の位置と該一の位置の周辺の位置とにおける前記所定の物理量の差が所定量以上である該一の位置の有無を評価することにより、前記溶融池を評価する。
【0015】
請求項9記載のレーザ溶接品質判定装置は、金属との相対的な位置を変化させながらレーザ光を金属に照射し、該金属の溶接を行うレーザ溶接装置により行われたレーザ溶接の品質の良否を判定するものであって、金属の状態によって変動する所定の物理量の分布を、前記レーザ溶接装置によりレーザ光が照射された金属の所定領域において測定する測定手段と、その測定手段により測定された前記所定領域における前記所定の物理量の分布に基づいて、各位置における前記所定の物理量の変化量である傾きを判断する傾き判断手段と、その傾き判断手段により判断された傾きに基づいて、前記所定領域における固体状態だけの金属の領域である固体領域と、液体状態の金属を含む領域とを識別する状態識別手段と、その状態識別手段により識別された前記液体状態の金属を含む領域を溶融池として特定する溶融池特定手段と、その溶融池特定手段により特定された前記溶融池を評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のレーザ溶接装置によれば、レーザ光が金属へ照射され、金属が溶接される。レーザ光照射手段により、金属との相対的な位置を変化させながらレーザ光が金属に照射される。レーザ光発振手段によりレーザ光が照射された金属の状態によって変動する所定の物理量の分布が、金属の所定領域において測定手段により測定される。測定手段によって測定された所定領域における所定の物理量の分布に基づいて、各位置における前記所定の物理量の変化量である傾きが、傾き判断手段により判断される。傾き判断手段によって判断された傾きに基づいて、所定領域における固体状態だけの金属の領域である固体領域と、液体状態の金属を含む領域とが状態識別手段により識別される。状態識別手段によって識別された液体状態の金属を含む領域が、溶融池特定手段により溶融池として特定される。溶融池特定手段によって特定された溶融池が判定手段により評価され、レーザ溶接の品質の良否が判定される。このように、レーザ光が照射される金属の所定領域内における所定の物理量の傾きに基づいて溶融池が特定される。ここで、所定の物理量は金属の状態によって変動するものであるため、固体領域と液体状態の金属を含む領域とでは所定の物理量が異なる。そのため、固体領域と液体状態の金属を含む領域との境界では、所定の物理量の傾きが変わる。このことは、溶融池を特定するための測定条件が変わったとしても変わりがない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、精度よく溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0017】
請求項2記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、測定手段により測定された所定領域内における温度の分布の傾きに基づいて、液体状態の金属を含む領域と固体状態だけの金属の領域とが状態識別手段により識別されるため、レーザ溶接時に発生するヒュームによるノイズの混入を抑制することができる。よって、高い精度で溶融池を特定することができるという効果がある。
【0018】
請求項3記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1又は2記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、状態識別手段により、所定領域内における所定の物理量の分布の傾きが変わる位置が特定される。液体状態の金属と固体状態の金属とを含む領域である固液領域では、所定の物理量が略一定となる一方、固液領域から固体領域へ変化する位置では所定の物理量が変化するため、所定の物理量の分布の傾きが変わる位置によって、固液領域と固体領域とが識別される。よって、物理量の分布の傾きに基づいて固液領域と固体領域とを識別することができ、溶融池を特定することができるという効果がある。
【0019】
請求項4記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さ及び/又はレーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さが判定手段により評価され、溶融池が評価される。金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さや、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さは、レーザ溶接の品質の良否に相関がある。一方で、所定の物理量の傾きに基づいて溶融池が特定されるので、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さや、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さを精度よく特定できる。これにより、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0020】
請求項5記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、経時的にレーザ光が金属に対して相対的に移動することに伴う、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化が、判定手段により評価される。溶接される金属間の隙間等によって、溶接の深さが一定ではなくなる。そのため、溶接される金属間の隙間の有無等によって、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さが経時的に変化する。よって、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向の液体状態の金属を含む領域の長さを経時的に評価することにより、レーザ溶接された各位置でレーザ溶接の品質が一定か否かを判定できる。よって、レーザ溶接の品質の判定の精度を高めることができるという効果がある。
【0021】
請求項6記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、液体状態の金属を含む領域にある少なくとも2つの位置において、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さの差が評価されることで、判定手段により、溶融池が評価される。よって、それらの位置同士でレーザ溶接の品質が一定か否かを判定できる。従って、レーザ溶接の品質の判定の精度を高められるという効果がある。
【0022】
請求項7記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、レーザ光の照射位置から所定距離にあり、レーザ光の照射位置の移動に伴って金属上を移動する液体状態の金属を含む領域にある所定の位置において、レーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さの経時的な変化が判定手段により評価される。溶接される金属間の隙間等によって、溶接の深さが一定ではなくなる。そのため、所定位置におけるレーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さが経時的に変化する。よって、所定位置におけるレーザ光が金属に対して相対的に移動する方向と直交する方向の液体状態の金属を含む領域の長さを経時的に評価することによりレーザ溶接された各位置でレーザ溶接の品質が一定か否かを判定できる。従って、レーザ溶接の品質の判定の精度を高めることができるという効果がある。
【0023】
請求項8記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加えて、次の効果を奏する。即ち、判定手段により、液体状態の金属を含む領域のうち、レーザ光の照射位置から特定距離以上離れた領域内において、一の位置と該一の位置の周辺の位置とにおける前記所定の物理量の差が所定量以上である該一位置の有無が評価されることで、溶融池が評価される。液体状態の金属を含む領域のうち、レーザ光の照射位置から特定距離以上離れた領域内において、周囲の物理量と比べて物理量が異なる位置が存在すると、レーザ溶接の品質が一定にならない原因となる。よって、一の位置と該一の位置の周辺の位置との所定の物理量の差が所定量以上である一の位置の有無を評価することで、レーザ溶接の品質が一定であるか否かを判定することができる。従って、レーザ溶接の品質の判定の精度を高めることができるという効果がある。
【0024】
請求項9記載のレーザ溶接品質判定装置によれば、これをレーザ溶接装置により行われたレーザ溶接の品質の判定の良否に用いることで、請求項1記載のレーザ溶接装置と同等の作用・効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態であるレーザ溶接装置Sの概略について説明する。
図1は、そのレーザ溶接装置Sの全体像を示した概略図である。
【0027】
レーザ溶接装置Sは、レーザ光Lにより、例えば二枚に重ねた溶接対象金属(以下、単に「ワーク」と称す)Aを溶接するものである。ワークAには、鉄や銅等の金属が用いられる。レーザ溶接装置Sは、レーザを発振するためのレーザ発振器10を有し、レーザ発振器10により発振されたレーザ光Lは、光の伝送路である光ファイバ11を通って、光ファイバ11の一端と接続されるファイバアダプタ12に伝送される。そして、レーザ光Lは、ファイバアダプタ12から照射され、レーザ加工ヘッド16に入る。レーザ加工ヘッド16は、コリメートレンズ13、ダイクロイックレンズ14、集光レンズ15を備え、レーザ光LをワークAに照射するための装置である。
【0028】
レーザ加工ヘッド16内のファイバアダプタ12の出力側には、レーザ光Lの向きを平行状態に調整するためのコリメートレンズ13が配置されており、ファイバアダプタ12から照射されたレーザ光Lは、コリメートレンズ13によって平行光となる。コリメートレンズ13により平行光とされたレーザ光Lは、ダイクロイックレンズ14を通過する。このダイクロイックレンズ14は、レーザ光Lを通過させるが、少なくとも赤外線光は反射させるものである。そして、ダイクロイックレンズ14を通過したレーザ光Lは、レーザ光Lを集光するための集光レンズ15によって集光され、ワークAに照射される。
【0029】
ワークAは固定されており、レーザ加工ヘッド16が図中の溶接方向に移動することでレーザ光Lの照射位置とワークAとの相対的な位置が変化する。なお、レーザ加工ヘッド16を固定し、ワークAを図中の溶接方向と逆方向に移動することで、レーザ光Lの照射位置とワークAとの相対的な位置を変化させてもよい。
【0030】
レーザ光Lの照射によりワークAが加熱されると、ワークAが融解し溶融池が形成される。溶融池とは、レーザ光LがワークAに照射され加熱されることで、ワークAが融解した領域(液体状態の金属を含む領域)をいう。このとき、ワークAからはその温度によって異なる量の赤外線Iが放出される。ワークAから放出された赤外線Iは、集光レンズ15を通過し、ダイクロイックレンズ14によってコリメートレンズ13と異なる方向(プリズム17の方向)に反射される。
【0031】
そして、ダイクロイックレンズ14によって反射された赤外線Iは、光を反射させるためのプリズム17によってカメラ用集光レンズ18側に反射される。そして、赤外線Iは、赤外線Iを集光するためのカメラ用集光レンズ18によって集光され、赤外線カメラ19に入射する。赤外線カメラ19は、赤外線Iの放出量を可視化するための装置である。ワークAからはその温度によって異なる量の赤外線Iが放出されるため、赤外線カメラ19によって、赤外線カメラ19の撮影範囲であるワークA上の所定領域の赤外線分布を可視化することで、温度分布を可視化することができる。そして、この可視化された温度分布のデータは温度分布データ32aとして演算処理装置20に送信される。なお、本実施形態では、赤外線分布に基づいて温度分布を可視化している。レーザ光Lが照射される位置では粉塵であるヒュームが生じるものの、ヒュームが発する赤外線Iは少ない。そのため、赤外線分布に基づいて温度分布を可視化することで、ヒュームによるノイズの影響を抑えることができる。よって、高精度で温度分布を測定することができる。なお、プリズム17とカメラ用集光レンズ18との間に、可視光のみを遮断する可視光カットフィルタや特定波長領域(赤外線)のみを透過させるバンドパスフィルタ等の光学フィルタを設けてもよい。これにより、赤外線以外の測定に不要な光を削減することができるため、測定精度を向上できる。
【0032】
演算処理装置20は、温度分布データ32aに基づいて後述の判定処理等の演算処理を行うものである。演算処理装置20は、判定処理を実行することでレーザ溶接の品質の良否を判定する。そして、レーザ溶接の品質の良否を表示する表示装置21に、その判定の結果が表示される。
【0033】
次に、
図2を参照して演算処理装置20の電気的構成を説明する。
図2は、その電気的構成を示したブロック図である。
【0034】
演算処理装置20は、CPU(Central Proccesing Unit)30と、ROM(Read Only Memory)31と、RAM(Random Access Memory)32とを有しており、それらがバスライン33を介して接続されている。また、バスライン33には、上述した赤外線カメラ19、表示装置21が接続されている。
【0035】
CPU30は、ROM31に記憶されたプログラムデータ31aに従って、後述の判定処理等の各種演算を実行する演算装置である。ROM31は、CPU30によって実行されるプログラムデータ31aや固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。なお、書き換え不能なROM31に代えて、書き換え可能な不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュメモリ)を用いてもよい。
【0036】
後述の判定処理を実行するプログラムは、このROM31にプログラムデータ31aの一部として記憶され、判定データ31bは、固定値データの一部としてROM31に記憶される。また、判定データ31bは、溶接速度、ワークAの素材毎に、後述の溶融池の長さとワークAが融解した深さである溶込み深さとの対応関係を予め測定した実測値を示したデータであり、後述の判定処理においてレーザ溶接の品質の良否を判定する場合に使用される。
【0037】
ここで
図3を参照して判定データ31bについて説明する。
図3(a)は、ワークAとして鉄板上板1.0mm/鉄板下板6mmを使用し、溶接速度1.8m/分とした場合の判定データ31bの例を示す図であり、
図3(b)は、ワークAとして鉄板上板1.0mm/鉄板下板6mmを使用し、溶接速度0.9m/分とした場合の判定データ31bの例を示す図である。例えば、鉄板上板1.0mm/鉄板下板6mmに対して溶接速度1.8m/分でレーザ溶接を行った場合、レーザ出力や溶接速度の違いに応じて溶融池の長さと溶込み深さが
図3(a)のように変化する。即ち、溶融池の長さが4000μmのときの溶込み深さは3.60mmであり、溶融池の長さが4323μmのときの溶込み深さは3.64mmであり、溶融池の長さが4617μmのときの溶込み深さは3.96mmであり、溶融池の長さが4970μmのときの溶込み深さは4.56mmである。そして、これらの溶融池の長さと溶込み深さとの間には相関関係がある。そのため、これらのデータを補間することで、溶融池の長さに基づいて溶込み深さを推定することができる。推定された溶込み深さがレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内(例えば、3.8mm〜5.0mm)であれば、レーザ溶接の品質を良いと判断し、レーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内になければ品質が不良と判断する。レーザ溶接の品質の良否を判定する際の溶込み深さの範囲は、ワークAに用いる上板と下板との厚さに応じてレーザ溶接の品質が良となるように使用者が決めればよい。
【0038】
なお、本実施形態では判定データ31bにて記憶された溶融池の長さと溶込み深さとのデータを補間することで、溶融池の長さに基づいで溶込み深さを推定しているが、これに限定されるものではない。例えば、予め溶融池の長さと溶込み深さとの関係を示す近似直線の式を求めておき、その近似直線の式に溶融池の長さを代入することで溶込み深さを推定してもよい。
【0039】
図2に戻り説明を続ける。RAM32は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU30によるプログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶する。
図2に示す通り、RAM32は、温度分布データ32a、形状データ32bを少なくとも記憶する。
【0040】
温度分布データ32aは、赤外線カメラ19により可視化されたワークAの温度分布のデータである。後述の判定処理では、この温度分布データ32aの温度分布の傾きから溶融池を特定する。
【0041】
形状データ32bは、判定処理において特定された後述する溶融池の幅や長さなどの溶融池の形状に関するデータである。判定処理では、この形状データ32bと判定データ31bとに基づいて溶込み深さを推定することで、レーザ溶接の品質の良否の判定が行われる。
【0042】
次に
図4を参照して、レーザが照射されたワークAの温度分布と金属の状態との関係について説明する。
図4(a)は、ワークAで温度が測定された領域である所定領域の金属の状態をレーザ光Lが照射される方向からみた場合の模式図であり、(b)は、そのときのx軸上での詳細な温度分布を示す図である。これらの図では、レーザ光LがA1の側からA2の側へと移動したときの状態を表している。そして、A1−A2方向をx軸とし、A1−A2方向と直交する方向をy軸としている。
【0043】
図4(a)においてレーザ光Lが照射されている位置であるレーザ中心位置に最も近い領域t1の金属の状態は、固体状態の金属を含まない液体状態の領域(以下、「非固体領域」と称す)であり、温度が最も高い。その周囲を囲む領域t2の温度がその次に高く、液体状態の金属と固体状態の金属とが存在する領域(以下、「固液領域」と称す)である。そして領域t2を取り囲む領域t3の温度が最も低く、固体状態の金属だけが存在する領域(以下、「固体領域」と称す)である。なお、A2側では、領域t2が大きく膨らみ丸みを帯びているのに対し、A1側では領域t2の先端は膨らんでいない。これは、レーザ光LがA1側からA2側に移動していることによるものである。即ち、A2側ではレーザ光Lが照射されてから急激に温度が上昇し、その周辺の広い範囲で温度が上昇しているのに対して、A1側ではレーザ光Lが照射されてからの時間経過が長く、固液領域となる温度帯が続いていることによるものである。また、A1−A2軸上において、A2側では領域t2を経ずに領域t3から領域t1となっているが、これはレーザ中心位置からの距離が近く、ワークAが加熱されてから直ちに温度が上昇していることによるものである。
【0044】
ここで、ワークAにおける金属の状態変化について説明する。ワークAは、常温では固体の金属である。レーザ光Lが照射されるとワークAの温度が上昇し、ワークAが固体の状態から液体の状態へと状態変化する。レーザ光Lの照射位置が移動すると、それまでレーザ光Lが照射されていた位置におけるワークAの温度は下降し始める。ワークAの温度が凝固点に達すると、ワークAは液体の状態から固体の状態へと状態変化を始める。このとき、ワークAが完全に固体の状態に変化するまで、温度は凝固点のままほとんど変化しない。そして、ワークAが完全に固体に状態変化すると、温度は下降を始める。即ち、凝固点より温度が低ければワークAは固体だけの状態であり、凝固点では固体と液体とが混在した状態であり、凝固点より温度が高い状態では固体が存在しない状態であるといえる。また、凝固点では温度がほぼ一定であり、その前後では温度が変化する。なお、このような金属の状態変化と温度変化との関係性は、ワークAの素材によって変わるものではない。
【0045】
図4(b)を参照して、x軸(A1−A2)上での詳細な温度分布について説明する。A2側の端の領域t3では温度は凝固点より低く一定である。A1側に向かうと、レーザ光Lの影響により領域t1付近で温度が上昇する。そして、凝固点より温度が高い領域t1では、レーザ中心位置に向かって温度が急上昇し、レーザ中心位置を過ぎると温度が急下降する。更にA1側に向かい、凝固点になると領域t2になり、温度はほぼ一定となる。そして、凝固点より温度が下がると領域t3になる。領域t3では、温度は下がった後一定となる。なお、A2側の端では融点において温度が一定となっていないが、これはレーザ中心位置からの距離が近く、ワークAが加熱されてから直ちに温度が上昇していることによるものである。
【0046】
領域t2と領域t3との境界を見てみると、温度分布の傾きが変化していることが分かる。即ち、領域t2側では温度分布の傾きは極めて小さいのに対して、領域t3側では、温度分布が下降するように傾いている。これは、領域t2は凝固点にあり温度がほぼ一定であるのに対して、領域t3は凝固点より温度が低く、温度が変化し始めるからである。また、領域t2と領域t1との境界でも、温度分布の傾きが変化する。即ち、領域t2側では凝固点で温度がほぼ一定なのに対して、領域t1側では凝固点より温度が高く、温度が変化する。
【0047】
上述の通り、領域t2では温度がほとんど変化していないことから、領域t2の温度は凝固点付近にあり、領域t2は固液領域であることが分かる。これに対して、領域t2よりも温度が高い方向に傾く領域t1は非固体領域であり、領域t2よりも温度が低い方向に傾く領域t3は固体領域であることが分かる。よって、温度分布の傾きによって、固液領域と、非固体領域と、固体領域とを識別できる。また、上述の通り、金属の状態変化と温度の変化との関係は、ワークAの素材によって変わるものではないので、ワークAの素材が変わったとしても温度分布の傾きによって、固液領域と、非固体領域と、固体領域とを識別できる。
【0048】
上述の通り、溶融池は、ワークAが融解した領域(液体状態の金属を含む領域)なので、溶融池とは非固体領域(領域t1)と固液領域(領域t2)とを合わせた領域を指す。なお、本実施形態では、レーザ中心位置を通るA1−A2方向の溶融池の長さのうち、溶融池のA1側の端からレーザ中心位置までの距離を「溶融池の長さ」とし、所定の位置におけるA1−A2方向に直交する方向の溶融池の長さを「溶融池の幅」とする。
【0049】
次に、
図5を参照して演算処理装置20のCPU30で実行される判定処理について説明する。
図5は、判定処理を示すフローチャートである。判定処理は、演算処理装置20が赤外線カメラ19から一画面分の温度分布データ32aを取り込むと実行される処理で、その温度分布データ32aから溶融池を特定し、その溶融池の形状に基づいてレーザ溶接の品質の良否を判断する処理である。
【0050】
判定処理では、先ずRAM32からA1−A2軸上の温度分布データ32aを読み出す(S1)。そして、その温度分布データ32aからA1−A2軸上の温度分布の傾きを生成する(S2)。即ち、A1−A2軸上の近隣の位置同士の温度の差を求め、その差から傾きを求める。なお、傾きを生成する前にA1−A2軸上の温度分布データ32aを平滑化する処理を行うのが好ましい。これにより、各画素のデータの誤差が傾きに反映されることを抑制できる。次いで、S2の処理で求めた温度分布の傾きに基づいて、固液領域と固体領域とを識別する(S3)。即ち、温度変化の傾きが極めて小さい固液領域から温度が低い方向に傾く固体領域へと変化する境界を判断することで、固液領域と固体領域とを識別する。これにより、固液領域と固体領域との境界を認識できる。
【0051】
次に、S2の処理で生成したA1−A2軸上の温度分布の傾きから温度分布が最大となる位置を特定し、その位置をレーザ中心位置として特定する(S4)。レーザ中心位置は、ワークAの中で最も高温となる場所だからである。そして、S3の処理で求めた固液領域のA1側の端からS4の処理で求めたレーザ中心位置までの距離を特定することで、溶融池の長さを特定する(S5)。次に、S5の処理で求めた溶融池の長さに基づいて、判定データ31bを補間して溶込み深さを推定する(S6)。そして、その溶込み深さがレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内(
図3の例では例えば、3.8mm〜5.0mm)にあるか否かを判断することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する(S7)。レーザ溶接の品質が良と判断されれば、レーザ溶接は引き続き実行される。一方、レーザ溶接の品質が不良と判断されれば、その旨を表示装置21に表示し、レーザ溶接を中断する。これにより、レーザ溶接の品質が不良であるという情報を生産工程に素早くフィードバックさせ、不良品の発生を減らすことができる。
【0052】
以上、第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sによれば、温度分布データ32aの温度分布の傾きに基づいて溶融池を特定し、その溶融池の形状からレーザ溶接の品質の良否を判定することができる。そのため、溶融池を特定するために閾値を設定する必要がない。よって、測定の条件が変わったとしても、閾値を設定し直す必要がない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、精度よく溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0053】
また、温度分布は、ワークAの金属の状態によって変動するものであるため、固体領域と液体状態の金属を含む領域とでは温度が異なる。そのため、固体領域と液体状態の金属を含む領域との境界では、温度の傾きが変わる。このことは、溶融池を特定するための測定条件が変わったとしても変わりがない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、高い精度で溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0054】
次いで、
図6、
図7を参照して第2実施形態におけるレーザ溶接装置Sについて説明する。第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、溶融池の長さから溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定した。これに対して、第2実施形態では溶融池の幅から溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定する。なお、その他のレーザ溶接装置Sの構成及び判定処理の各処理は、第1実施形態と同一であるので、以下、同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図6(a)は、第2実施形態におけるレーザ溶接装置Sにより測定される所定領域の模式図であり、
図6(b)はそのときのy軸方向(B1−B2方向)での温度分布を示す図である。
図6(a)に示す通り、本実施形態ではレーザ中心位置からx軸方向に所定距離Dにある位置において、B1−B2方向の溶融池の幅を特定する。このときのB1−B2方向の温度分布は、
図6(b)の通りである。即ち、B1側では温度が凝固点以下で低くほぼ一定であるが、レーザ中心位置が通過したx軸に近付くと、B2側に向かうと温度が上昇し、温度が凝固点となり、ほぼ一定となる。その後、温度が下降し、その後ほぼ一定となる。即ち、レーザ中心位置が通過したx軸付近の温度が高く、x軸から離れた位置の温度は低くなっている。このときB1側とB2側の両端が固体領域となっている。そして、固体領域に挟まれる部分が液体状態の金属を含む領域となっており、
図6(b)の液体状態の金属を含む領域の長さが、溶融池の幅である。
【0056】
溶融池の幅も溶融池の長さと同様に溶込み深さと相関がある。そのため、予め溶融池の幅と溶込み深さとの関係を示す判定データ31bを用意しておくことで、判定処理において溶融池の幅から溶込み深さを推定することができる。そして、推定された溶込み深さに基づいて、レーザ溶接の品質の良否を判定することができる。
【0057】
次に、
図7を参照して判定処理について説明する。
図7は、第2実施形態におけるレーザ溶接装置Sの演算処理装置20のCPU30で実行される判定処理を示すフローチャートである。判定処理では、第1実施形態と同様のS1、S2、S4の処理が行われた後、S4の処理で特定されたレーザ中心位置から所定距離Dにあるx軸上の所定位置を特定する(S11)。この所定位置は、溶融池内(固液領域又は非固体領域内)にあればよく、固液領域内にあるとなおよい。固液領域内であれば、凝固点で温度が安定しているため、温度分布を高精度で測定することができるからである。
【0058】
その後、S12の処理では、S11の処理で特定した所定位置におけるB1−B2軸上の温度分布データ32aを読み出す。そして、その温度分布データ32aからB1−B2軸上の温度分布の傾きを生成する(S13)。次に温度分布の傾きに基づいて液体状態の金属を含む領域と固体領域とを識別し、B1側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界からB2側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界までの距離を特定することで、溶融池の幅を特定する(S14)。その後、S14の処理により特定された溶融池の幅から判定データ31bを使って溶込み深さを推定する(S15)。そして、第1実施形態と同様にS7の処理でレーザ溶接の品質の良否を判定する。これにより、溶融池の幅に基づいて溶込み深さを推定し、その溶込み深さからレーザ溶接の品質の良否を判定することができる。
【0059】
以上、第2実施形態におけるレーザ溶接装置Sによれば、温度分布データ32aの温度分布の傾きに基づいて溶融池を特定し、その溶融池の形状から溶融池の幅を特定してレーザ溶接の品質の良否を判定することができる。そのため、溶融池を特定するために閾値を設定する必要がない。従って、測定の条件が変わったとしても、閾値を設定し直す必要がない。その結果、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、精度よく溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0060】
また、温度分布は、ワークAの金属の状態によって変動するものであるため、固体領域と液体状態の金属を含む領域とでは温度が異なる。そのため、固体領域と液体状態の金属を含む領域との境界では、温度の傾きが変わる。このことは、溶融池を特定するための測定条件が変わったとしても変わりがない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、高い精度で溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0061】
なお、第1実施形態では溶融池の長さから溶込み深さを推定し、第2実施形態では溶融池の幅から溶込み深さを測定しているが、溶融池の長さと幅との両方に基づいて溶込み深さを推定してもよい。例えば、溶融池の長さから推定される溶込み深さと溶融池の幅から推定される溶込み深さとの相加平均を溶込み深さとして推定してもよい。
【0062】
また、溶融池の長さから推定される溶込み深さと、溶融池の幅から推定される溶込み深さとのいずれもがレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲にある場合にレーザ溶接の品質を良いと判断してもよい。更に、溶融池の長さから推定される溶込み深さと、溶融池の幅から推定される溶込み深さとのいずれか一方がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲にある場合にレーザ溶接の品質を良いと判断してもよい。
【0063】
その他、第2実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、第1実施形態と同一の構成によって、同一の効果を奏する。
【0064】
次に、
図8、
図9を参照して第3実施形態におけるレーザ溶接装置Sについて説明する。第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、溶融池の長さから溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定した。これに対して、第3実施形態では液体状態の金属を含む領域内の複数の位置で溶融池の幅を求め、それらの溶融池の幅の差を評価することでレーザ溶接の品質の良否を判定する。なお、その他のレーザ溶接装置Sの構成及び判定処理の各処理は、第1実施形態と同一であるので、以下、同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図8は、第3実施形態におけるレーザ溶接装置Sにより測定される所定領域の模式図である。
図8に示す通り、本実施形態ではレーザ中心位置から所定距離(D1、D2、D3)にあって、溶融池内にある3つの位置(P1、P2、P3)において、溶融池の幅(W1、W2、W3)を特定し、これらの溶融池の幅の差を評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する。
【0066】
次に、
図9を参照して判定処理について説明する。
図9は、第3実施形態におけるレーザ溶接装置Sの演算処理装置20のCPU30で実行される判定処理を示すフローチャートである。判定処理では、第1実施形態の場合と同様のS1、S2、S4の処理が行われる。S1、S2、S4の処理が行われた後、S4の処理で特定されたレーザ中心位置から所定距離(D1、D2、D3)にあるx軸上の3つの所定位置(P1、P2、P3)が特定される(S21)。これらの所定位置は、溶融池内(固液領域又は非固体領域内)にあればよく、固液領域内にあるとなおよい。固液領域内であれば温度が凝固点で安定しているため、温度分布を高精度で測定することができるからである。
【0067】
次いで、S11の処理で特定した各所定位置(P1、P2、P3)におけるy軸方向の温度分布データ32aを読み出す(S22)。そして、その温度分布データ32aから所定位置(P1、P2、P3)におけるy軸方向の温度分布の傾きを算出する(S23)。次いで、温度分布の傾きに基づいて液体状態の金属を含む領域と固体領域とを識別し、y軸方向の一方の側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界からy軸方向の他方の側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界までの距離を特定することで、溶融池の幅(W1、W2、W3)を特定する(S24)。
【0068】
次いで、これらの溶融池の幅の差を評価する。そして、これらの溶融池の幅の差がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内(例えば、35μm以下)であれば、レーザ溶接の品質は良いと判断し、これらの溶融池の幅の差がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内になければレーザ溶接の品質は不良と判断する(S25)。溶融池の幅の差が適切な範囲にない場合は、レーザ光Lが照射されたワークAの温度が一定でない等の原因により、レーザ溶接の品質が一定でなくなる可能性があるからである。これにより、所定位置(P1、P2、P3)においてレーザ溶接の品質が一定であるか否かを判定することができる。よって、使用者はレーザ溶接の品質の一定性を確認することができる。
【0069】
なお、本実施形態では固液領域内の3つの所定位置について溶融池の幅を特定しているが、固液領域にある所定位置と非固体領域にある所定位置とが併存してもよい。例えば、非固体領域にある一の位置と固液領域にある一の位置とにおいて、溶融池の幅を求めてもよい。この場合、非固体領域にある位置の溶融池の幅と固液領域にある位置の溶融池の幅との差がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲より外れた場合、レーザ溶接の品質が不良であると判断してもよい。また、所定位置は3つの位置に限定されるものではない。所定位置同士の溶融池の幅の差を評価することができればよく、少なくとも2つの位置を所定位置とすればよい。
【0070】
その他、第3実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、第1実施形態と同一の構成によって、同一の効果を奏する。
【0071】
次に、
図10、
図11を参照して第4実施形態におけるレーザ溶接装置Sについて説明する。第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、溶融池の長さから溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定した。これに対して、第4実施形態ではレーザ中心位置から所定距離にあり、液体状態の金属を含む領域にある所定位置において、溶融池の幅を経時的に特定し、その溶融池の幅の経時的な変化の大きさを評価することでレーザ溶接の品質の良否を判定する。なお、その他のレーザ溶接装置Sの構成及び判定処理の各処理は、第1実施形態と同一であるので、以下、同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図10(a)は、第4実施形態におけるレーザ溶接装置Sにより測定される所定領域の模式図であり、
図10(b)は溶融池の幅の経時的変化を示す図である。
図10(a)に示す通り、本実施形態ではレーザ中心位置から所定距離Dにあり、液体状態の金属を含む領域にある所定位置において、溶融池の幅Wを特定する。ここで、レーザ光LがワークAに照射される位置は、A1の側からA2の側へ向かって移動する。これに伴い、溶融池の幅を特定する所定位置も移動する。即ち、レーザ光Lが照射される位置が経時的に変化すると所定位置も変化する。本実施形態では、所定位置が経時的に変化した際のその所定位置における溶融池の幅を特定する。そして、溶融池の幅の経時的な変化を評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する。
【0073】
図10(b)に示す通り、溶融池の幅は経時的に変動する。そこで、所定期間内の溶融池の幅の最大値と最小値との差を変動量として溶融池の幅の経時的な変化の大きさを求める。
【0074】
次に、
図11を参照して判定処理について説明する。
図11は、第4実施形態におけるレーザ溶接装置Sの演算処理装置20のCPU30で実行される判定処理を示すフローチャートである。判定処理では、第1実施形態の場合と同様のS1、S2、S4の処理が行われる。S1、S2、S4の処理が行われた後、S4の処理で特定されたレーザ中心位置から所定距離Dにある所定位置が特定される(S31)。この所定位置は、溶融池内(固液領域又は非固体領域内)にあればよく、固液領域内にあるとなおよい。固液領域内であれば、温度が凝固点で安定しているため、温度分布を高精度で測定することができるからである。
【0075】
その後、S32の処理では、S31の処理で特定した所定位置におけるy軸方向の温度分布データ32aを読み出す。そして、その温度分布データ32aから所定位置におけるy軸方向の温度分布の傾きを生成する(S33)。次に、S34の処理では、温度分布の傾きに基づいて液体状態の金属を含む領域と固体領域とを識別し、y軸方向の一方の側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界からy軸方向の他方の側の液体状態の金属を含む領域と固体領域との境界までの距離を特定することで、溶融池の幅を特定する。その後、S34の処理で特定された溶融池の幅をRAM32における形状データ32bとして記憶する(S35)。そして次に、形状データ32bに記憶された溶融池の幅のデータのうち、直近の所定期間内に記憶されたものの最大値と最小値との差から変動量を求めることで、所定期間内の溶融池の幅の経時的な変化の大きさを評価する(S36)。
【0076】
次に、S37の処理では、その変動量がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内(例えば、35μm以下)にあればレーザ溶接の品質は良いと判断する。一方、変動量がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲内になければレーザ溶接の品質は不良と判断する。例えば二枚重ねされた金属板であるワークAにおいて、金属板の間にレーザ溶接の品質の不良の要因となる隙間がある場合等には、温度変化が大きくなり、その結果として変動量が一定の範囲内に収まらなくなるからである。これにより、レーザ光Lの照射位置が移動した際、レーザ溶接された各位置でのレーザ溶接の品質のが一定であるか否かを判定することができる。よって、使用者はレーザ溶接の品質の一定性を確認することができる。
【0077】
S37の処理の後、溶接が終了したか否かが判断される(S38)。S38の処理で溶接が終了していないと判断されると(S38:No)、S1の処理に戻る。そして、溶接が終了するまで、S1の処理からS38の処理までが1秒間隔で繰り返し実行される。一方、溶接が終了したと判断されると(S38:Yes)、判定処理は終了する。
【0078】
本実施形態では、溶融池の幅の経時的変化の大きさを評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定しているが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ中心位置から溶融池のA1側の端までの長さである溶融池の長さの経時的変化の大きさを評価することで、レーザ溶接の良否を判定してもよい。
【0079】
本実施形態では、形状データ32bに記憶された溶融池の幅のデータのうち、直近の所定期間内に記憶されたものの最大値と最小値との差から変動量を求めることで、直近の所定期間内の溶融池の幅の経時的な変化の大きさを評価しているが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ溶接を開始してから現在までの最大値と最小値の差から変動量を求めてもよい。
【0080】
その他、第4実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、第1実施形態と同一の構成によって、同一の効果を奏する。
【0081】
次に、
図12、13を参照して第5実施形態におけるレーザ溶接装置Sについて説明する。第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、溶融池の長さから溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定した。これに対して、第5実施形態では、液体状態の金属を含む領域のうち、レーザ光Lの照射位置から特定距離以上離れた固液領域内における温度の傾きを評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定する。なお、その他のレーザ溶接装置Sの構成及び判定処理の各処理は、第1実施形態と同一であるので、以下、同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図12は、第5実施形態におけるレーザ溶接装置Sにより測定される所定領域の模式図である。
図12に示す通り、レーザ光Lの照射位置から特定距離D離れて設けられた観察領域O内で固液領域に温度が異常に高い箇所Eが存在した場合、その箇所Eではレーザ溶接の品質の不良の要因となる金属の蒸発が大きいブローホールが発生している可能性がある。このとき、温度が異常に高い箇所Eでは周囲に比べて温度が高くなっているため、温度の傾きが高い方向へと変化する。従って、温度の傾きが変化する場合は、レーザ溶接の品質が不良であると判断する。
【0083】
次に、
図13を参照して判定処理について説明する。
図13は、第5実施形態におけるレーザ溶接装置Sの演算処理装置20のCPU30で実行される判定処理を示すフローチャートである。判定処理では、第1実施形態の場合と同様のS1、S2、S4の処理が行われる。S1、S2、S4の処理が行われた後、S4の処理で特定されたレーザ中心位置から特定距離D離れた固液領域内に観察領域Oが特定される(S41)。この観察領域Oは、温度分布の傾きを観察する領域である。この観察領域Oは、固液領域内にあることが望ましい。固液領域内であれば、レーザ中心位置から離れているため、非固体領域のように温度が高くなく、異常な高温箇所を発見しやすいからである。そのため、非固体領域を含まないように特定距離を設定することが望ましい。
【0084】
その後、S42の処理では、S41の処理で特定した観察領域Oの温度分布データ32aを読み出す。そして、その温度分布データ32aから観察領域内のx軸上の各位置におけるy軸方向の温度分布の傾きを生成する(S43)。次に、S44の処理では、温度分布の傾きに基づいて液体状態の金属を含む領域と固体領域とを識別し、溶融池の範囲を特定する。そして、観察領域O内の溶融池において、温度の傾きを評価する(S45)。次に、S46の処理では、S45の処理で温度の傾きがレーザ溶接の品質が良となる適切な傾き以上の傾きとなる場所がある場合は、レーザ溶接の品質が不良であると判断する。一方、温度の傾きがレーザ溶接の品質が良となる適切な傾き以上の傾きとなる場所がない場合は、レーザ溶接の品質は良いと判断する。これにより、観察領域内の溶融池におけるレーザ溶接の品質が一定であるか否かを判定することができる。よって、使用者はレーザ溶接の品質の一定性を確認することができる。
【0085】
本実施形態では、観察領域O内の溶融池において、温度の傾きを評価することで、固液領域に温度が異常に高い箇所が存在するか否かを判断しているが、これに限定されるものではない。例えば、観察領域O内の溶融池において、予め設定した温度以上となる箇所の有無によって、固液領域内に温度が異常に高い箇所が存在するか否かを判断してもよい。また、このとき温度が異常に高い箇所の面積が所定の広さ以上の場合、レーザ溶接の品質は不良であると判断し、温度が異常に高い箇所の面積が所定の広さ以上でない場合、レーザ溶接の品質は良であると判断してもよい。
【0086】
その他、第5実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、第1実施形態と同一の構成によって、同一の効果を奏する。
【0087】
次に、
図14を参照して第6実施形態におけるレーザ溶接装置Sについて説明する。第1実施形態におけるレーザ溶接装置Sは、温度分布の傾きから固体領域と、固液領域と、非固体領域とを識別し、これに基づいて溶融池を特定した。これに対し、第6実施形態では、輝度分布の傾きから固体領域と、固液領域と、液体領域とを識別し、これに基づいて溶融池を特定する。なお、その他のレーザ溶接装置Sの構成及び判定処理の各処理は、第1実施形態と同一であるので、以下、同一の構成については第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
第1実施形態のレーザ溶接装置Sでは、ダイクロイックレンズ14として、レーザ光Lを通過させるが、少なくとも赤外線光は反射させるものを使用している。これに対し、本実施形態では、レーザ光Lをコリメートレンズ13側からワークA側に通過させるが、少なくとも可視光をワークA側からプリズム17側へ反射させるものを使用する。そして、赤外線カメラ19の代わりに可視光を撮影するカメラにより、画像を撮影する。なお、プリズム17とカメラ用集光レンズ18との間に、赤外線のみを遮断する赤外カットフィルタや特定波長領域(可視光)のみを透過させるバンドパスフィルタ等の光学フィルタを設けてもよい。これにより、可視光以外の測定に不要な光を削減することができるため、測定精度を向上できる。
【0089】
図14(a)は、本実施形態におけるレーザ溶接装置Sにより測定される所定領域の金属の状態の模式図であり、
図14(b)は、そのx軸上での詳細な輝度分布を示す図である。
図14(a)において所定領域の金属の状態は、レーザ光Lが照射されている位置であるレーザ中心位置に最も近い領域が非固体領域であり、輝度が最も高い。その周囲を囲む固液領域の輝度がその次に高く、そして固液領域を取り囲む固体領域の輝度が最も低くなる。
【0090】
図14(b)を使って、A1−A2軸(x軸)上での詳細な輝度分布について説明する。この輝度分布の傾きの変化は、
図3(b)の温度分布の傾きの変化と酷似している。即ち、A2側の固体領域では低い輝度で一定となっており、非固体領域に近付くと輝度が上昇する。そして、非固体領域では輝度は上昇し、レーザ中心位置付近で最大となる。その後、輝度は低下し、固液領域では輝度はほぼ一定となる。そして固体領域では、輝度が低下し、その後ほぼ一定となる。これは、金属の輝度が金属の状態によって変化することによるものである。このように、輝度分布の傾きの変化は温度分布の傾きの変化と酷似しているため、輝度分布の傾きによって、固液領域と、非固体領域と、固体領域とを識別できる。即ち、固液領域では輝度の分布の傾きがほとんどない。これに対して、固液領域よりも輝度が高い方向に傾く領域は非固体領域であり、固液領域よりも輝度が低い方向に傾く領域は固体領域である。よって、輝度分布の傾きによって、固液領域と、非固体領域と、固体領域とを識別できる。これにより、赤外線カメラ19を使用する必要がなく、簡単に溶融池を特定することができる。なお、レーザ中心位置付近で輝度が最も高くなっているが、これはレーザ光L自体の明るさによるものである。
【0091】
以上、第6実施形態におけるレーザ溶接装置Sによれば、輝度分布の傾きに基づいて溶融池を特定し、その溶融池の形状からレーザ溶接の品質の良否を判定することができる。そのため、溶融池を特定するために閾値を設定する必要がない。よって、測定の条件が変わったとしても、閾値を設定し直す必要がない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、精度よく溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0092】
また、輝度分布は、ワークAの金属の状態によって変動するものであるため、固体領域と液体状態の金属を含む領域とでは輝度が異なる。そのため、固体領域と液体状態の金属を含む領域との境界では、輝度の傾きが変わる。このことは、溶融池を特定するための測定条件が変わったとしても変わりがない。従って、溶融池を特定するために行われる測定の条件に関わらず、高い精度で溶融池を特定できるので、高い精度でレーザ溶接の品質を判定できるという効果がある。
【0093】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしてもよい。また、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0094】
例えば、第1実施形態から第5実施形態の少なくとも2つを組み合わせて実施してもよい。例えば、溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅から溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定するのに加えて、液体状態の金属を含む領域内の複数の位置で溶融池の幅を求め、それらの溶融池の幅の差を評価することでレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。更に、形状データ32bに記憶された溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅のデータのうち、直近の所定期間内に記憶されたものの最大値と最小値との差から変動量を求めることで、直近の所定期間内の溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅の経時的な変化の大きさからレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。これらに加えて、レーザ光Lの照射位置から特定距離以上離れた固液領域内における温度の傾きを評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。この場合、全ての判定でレーザ溶接の品質が良と判定されなければ不良としてもよい。また、全ての判定で少なくとも1つでレーザ溶接の品質が良と判定されれば良としてもよい。なお、第1実施形態から第5実施形態の少なくとも2つを他の組み合わせになるように、組み合わせてもよい。
【0095】
また、輝度によって溶融池を特定した場合であっても、第1実施形態から第5実施形態のいずれかと組み合わせて実施してもよい。更に、第1実施形態から第5実施形態の少なくとも2つと組み合わせて実施してもよい。例えば、その溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅から溶込み深さを推定し、それによってレーザ溶接の品質の良否を判定するようにしてもよい。加えて、液体状態の金属を含む領域内の複数の位置で溶融池の幅を求め、それらの溶融池の幅の差を評価することでレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。更に、形状データ32bに記憶された溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅のデータのうち、直近の所定期間内に記憶されたものの最大値と最小値との差から変動量を求めることで、溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅の経時的な変化の大きさからレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。これらに加えて、レーザ光Lの照射位置から特定距離以上離れた固液領域内における温度の傾きを評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。この場合、全ての判定でレーザ溶接の品質が良と判定されなければ不良としてもよい。また、全ての判定で少なくとも1つでレーザ溶接の品質が良と判定されれば良としてもよい。なお、第1実施形態から第5実施形態の少なくとも2つを他の組み合わせになるように、組み合わせてもよい。
【0096】
上記第1実施形態では、レーザ中心位置から溶融池のA1側の端までの距離を溶融池の長さとして求めているがこれに限定されるものではない。例えば溶融池のA1側の端からA2側の端までの距離(固液領域の長さ)を溶融池の長さとしてもよい。固液領域の長さも溶込み深さと相関があるからである。
【0097】
上記第1実施形態では、溶融池の長さから溶込み深さを推定し、その溶込み深さからレーザ溶接の品質の良否を判定しているが、これに限定されるものではない。例えば、判定データ31bに溶融池の長さとレーザ溶接の品質の良否との関係を示すデータを記憶しておき、測定された溶融池の長さがレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲にあればレーザ溶接の品質を良いと判断してもよい。溶融池の長さと溶込み深さとは相関関係があり、溶込み深さとレーザ溶接の品質の良否とは相関関係があることから、溶融池の長さとレーザ溶接の品質の良否にも相関関係があるといえるからである。また、溶融池の幅についても同様に判定データ31bに溶融池の幅とレーザ溶接の品質の良否との関係を示すデータを記憶しておき、測定された溶融池の幅がレーザ溶接の品質が良となる適切な範囲にあればレーザ溶接の品質を良いと判断してもよい。
【0098】
上記実施形態では、レーザ溶接装置Sにおいてレーザ溶接の品質を判断しているが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ溶接装置Sと共に使用されるレーザ溶接品質判定装置において、レーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。具体的には、レーザ溶接品質装置は、少なくとも赤外線カメラ19、演算処理装置20を備え、赤外線カメラ19により撮影された温度分布データ32aの温度分布の傾きから、演算処理装置20において溶融池を特定し、その溶融池の長さ及び/又は幅から溶込み深さを推定し、その溶込み深さからレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。加えて、液体状態の金属を含む領域内の複数の位置で溶融池の幅を求め、それらの溶融池の幅の差を評価することでレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。更に、形状データ32bに記憶された溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅のデータのうち、直近の所定期間内に記憶されたものの最大値と最小値との差から変動量を求めることで、溶融池の長さ及び/又は溶融池の幅の経時的な変化の大きさからレーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。これらに加えて、レーザ光Lの照射位置から特定距離以上離れた固液領域内における温度の傾きを評価することで、レーザ溶接の品質の良否を判定してもよい。この場合、全ての判定でレーザ溶接の品質が良と判定されなければ不良としてもよい。また、全ての判定で少なくとも1つでレーザ溶接の品質が良と判定されれば良としてもよい。