(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による集中度評価装置について説明する。本実施形態による集中度評価装置は、被験者の頭部に取り付けられたセンサを用いて、該頭部表面における脳電位信号を取得し、取得した脳電位信号から被験者の集中度の評価値を算出することにより、被験者の集中度を評価する。なお本実施形態では、
図3に示すような国際10−20法における電極位置を用いて、評価値の算出に用いる脳電位信号の取得位置を説明する。
【0018】
[測定原理]
最初に、本実施形態による集中度評価装置の測定原理について簡単に説明する。ヒトの脳の活動は、扁桃体、海馬、視床下部などから構成され、深部に位置する発生学的に古い脳である大脳辺縁系と、大脳の外側に位置する大脳新皮質との活動のバランスによって担われている。ヒトが何かに集中するという場合、クールな知的作業を担う頭頂葉新皮質(大脳新皮質)の活動が主として現れるが、悲しみや喜び、怒りといった感情的な面に脳活動が集中する場合には、主として大脳辺縁系の活動が支配的になる。
【0019】
クールな知的活動に関する脳の活動について説明する。暗算などの集中した作業を行ったとき、前頭正中部にθ波が出現することが知られており、このθ波はFmθ(Frontal midline θ rhythm)と呼ばれる。古くからFmθは着目されており、クレベリンテストや暗算のような精神活動時に前頭部θ波が出現し、注意・集中などの機能に関与していることが知られている(非特許文献2)。このθ波は国際10−20法におけるFz付近に優位にみられる。
【0020】
そこで本出願人は、Fzを含む前頭部から取得される脳電位信号のパワースペクトル値の平均値を集中度の指標に用いることができると考えた。Fmθは、Fzに強く出現するが、その周囲のF3、F4にも同様に出現する。F3にFmθが出現する人もいれば、F4にFmθが出現する人もいるなど、Fmθが出現する場所は個人によって様々である。これは、利き手や個人の脳の発達にも影響があると思われる。上記より本出願人は、例えばF3、F4、Fzの位置から取得される3つの脳電位信号のパワースペクトルを算出し、一般的にFmθの周波数帯域といわれる6〜7Hzを含む周波数帯域(例えば3〜7Hz)における平均を求めることで、高精度の評価ができる集中度の指標が算出可能であると考えた。
【0021】
なお、集中した作業を行ったときに出現するθ波は、出現しやすい人と出現しにくい人がいると言われており、年齢による出現率は5〜7歳は低く(20%)、8〜11歳が最高で(70%)、以後年齢を増すごとに低下する傾向がある。与えられた精神作業の難易度、種類、又は時間的制約によって出現量は影響される。
【0022】
一方、β波は安定して、前頭部(例えばFp1、Fp2、F3、F4)に出現する。前述のβ波を使用した主成分分析による集中度の方法は、集中した作業時に第1主成分の相対寄与率が高くなることに着目したものである。しかし、この相対寄与率は、脳波がコヒーレントであると増加し、コヒーレント性が低いと低下することから、安静閉眼時や安静開眼時の相対寄与率が大きく算出される傾向がある。したがって、集中していない安静閉眼時等の場合でも集中度が高いと誤った評価をすることがある。
【0023】
Fmθ波はβ波ほど安定して出現しないが、安静閉眼時や安静開眼時に、タスク中に比べて目立って出現するということはない。そこで、本発明の一実施形態では、安定的に適切に集中度を評価するために、上記のFmθ波帯域におけるパワー平均値と、β波帯域の主成分分析の結果とを結合した、前頭部新皮質の活動に基づいた評価値を定め、当該評価値により集中度を評価する。
【0024】
続いて感情的な面に関する脳の活動について説明する。何らかの感情に集中した場合には、古い脳である大脳辺縁系の活動、特に脳深部に位置する扁桃体やその周辺に位置する多くの神経核及び古皮質の活動が支配的になる。このような脳深部の活動を効率良く捉えるのには、頭部表面の3点に配置した電極から、同位相成分を抽出し演算する方式(特許文献1:PCT/JP2015/070893)が有効である。上記方式は、特に、大脳辺縁系の活動を有効に捉えるのには、扁桃体までの直達距離が短い前側頭葉(例えば、F3、F7、C3)の3電極に対して適用するのが有効である。本出願人は、非特許文献3に記載されている脳内挿入電極での電位観測波形から類推し、7Hz以下のδ波、θ波成分に観測帯域を限定すると、より大脳辺縁系の活動を有効に捉えることができると考えた。このような脳深部の活動は、感情が大きく変動する際の集中度に関連することが考えられるため、本発明の一実施形態では、脳深部の活動に基づいた指標値を定め、集中度の評価値の算出にあたって当該指標値を用いる。
【0025】
このように、本発明の一実施形態による集中度評価装置は、前頭部新皮質の活動に基づいた評価値を用いて車の運転や勉強のように感情の動きを伴わない場合の集中度の評価を行う。また、本発明の他の一実施形態による集中度評価装置は、前頭部新皮質の活動に基づいた評価値に加えて、脳深部の活動に基づいた指標値を更に用いて映画鑑賞のように感情移入した場合の集中度の評価を行う。
【0026】
以下に、前述の脳深部の活動を頭部表面の3点に配置した電極から捉える方法について、簡単に説明する。
【0027】
本方法においては、脳深部に等価ダイポール電源を仮定しており、このダイポール電位活動を解析するための電位分布測定を、頭皮上に配置した3つの異なる場所に配置された電極にて行う。脳深部に電源がある場合には、これら3つの電極で観測される電位波形には強い位相関係が存在するという事実に基づいて、この位相関係を評価する。このようにして、脳深部に仮定した等価ダイポール電源の時間的な挙動を近似的に推定する。これは、地震波に例えれば、表層に震源を持つ地震波が観測地点ごとに大きく異なるのに比し、深部に震源を持つ地震波では、近い距離をおいて配置された地震計ではほぼ同じ振幅・位相のP波が観測されることと同等な現象である。
【0028】
本方法においては、脳深部の活動に基づいて表面に現れる電位波形は近い距離離れた表面においてはほぼ同位相であることから、3つの電位の符号が同一であるデータのみを加算する構成とするのが好ましい。ただし、すべてのデータを演算の対象とすることもできる。
【0029】
具体的な情報処理としては、まず3つの電位信号が入力されると、3つの電位が同符号の信号を選択する。1つの例では、電位の符号を判定する際の基準電位は皮質活動を直接反映しない耳朶が用いられる。他の例では、帯域フィルタやデジタルフィルタで直流分が遮断される場合、それぞれの電極ごとの時間平均から見た正負の符号により判定する。
【0030】
続いて3重相関値を算出する。3重相関値は、3つの電極からの特定の周波帯域の電位信号をそれぞれEVA(t)、EVB(t)、EVC(t)としたとき、1つの電極の電位信号に対し、τ1、τ2の時間ずれのある信号との積を使用する。以下に示す式1は3重相関値Stの1つの例示である。ここでTは3重相関値の演算対象時間であり、Δtは各電位信号のデータサンプリング周期であり、Nは規格化するための定数であって、例えば3つの信号の積の計算回数である。
(式1)
【0031】
ここで、上述の演算で得られる遅延パラメータ空間上の3重相関プロットが、脳深部の等価ダイポール電源の挙動とどのような関係にあるかを、均一媒質からなる球状モデルを用いて説明する。以下では、説明の便宜上、球モデル各部の呼称を地球になぞらえ、北極(NP)、南極(SP)、赤道等と記載する。
【0032】
脳深部の活動は、等価的に、深部に微小電流源があるように脳の表面上で観測されることから、球の中心部に、南極から北極に向かう方向に微小電流源を仮定する。この電流源が球表面上につくる電位分布は、
図4に示すように、北半球では+、南半球では−、赤道上ではゼロ電位となる。また、この電流源は、赤道上180度経度の異なる点P1、P2と、NP、SPを含む面内で、周期T秒で時計方向に回転する。回転角度90度ごとに各時点での球表面電位分布は、
図5、
図6、
図7のように逐次変化する。この電位変化を球の表面上に、面P1、NP、P2、SPに平行な三角形の頂点に、3つの電極A、B、Cを配置する。各電極から測定された電位波形は、式1により相関値が計算され、計算結果が
図8の遅延パラメータ空間上にプロットされる。
【0033】
A、B、Cの各電極の電位の時間発展は
図9のグラフのようになり、各電極は位相差1/3Tの関係で周期Tの正弦波で変化をする。電極Aを基準にみるとこれらの電極の符号が最も一致するτ
1、τ
2の値はそれぞれ1/3+kと2/3+k(kは整数)であり、結果として
図8における縦横方向に黒丸のプロットで示されるような、周期Tでピークを持つ特性が得られる。またこれらのピークからいずれかの電極が半周期ずれるような位置は、1つの電極が必ず他の2つの電極と逆位相になるため電極の符号が一致することはない。そのため白丸のプロットで示されるような位置は値がプロットされない。
【0034】
上述のように、脳深部の等価ダイポール電源の回転を2次元の遅延パラメータ空間上のプロットとして観測することができる。
図8は、単一の等価ダイポール電源が球状の脳深部で滑らかに回転した場合を示している。しかしながら、ダイポールが複数ある場合や回転が滑らかでない場合には、
図8上のプロットは、同符号条件を満たす個々のケースが複雑に分布し、遅延パラメータ空間上に細かい凹凸となって現れる。
【0035】
このように、3重相関値やプロットのばらつきを用いることにより、脳深部の活動を捉えている。
【0036】
[第1の実施形態]
次に第1の実施形態の集中度評価装置1について説明する。第1の実施形態の集中度評価装置1は、前頭部に配置した3つの電極11よりFmθ波を含む脳電位信号を取得し、かつ前頭部に配置した4つの電極11よりβ波を含む脳電位信号を取得し、集中度の評価値を算出することにより、被験者の集中度を評価する。
【0037】
図1は、本発明の第1の実施形態による集中度評価装置1の全体構成図である。集中度評価装置1は、複数の電極11を有する頭部装着型センサ10と、複数の電極11と接続された電子装置20と、を備える。集中度測定装置1は、基準電位測定用の基準電極12を更に有する。基準電極12は不感電極として使用され、好ましくは耳朶接続用クリップ電極である。基準電極12は、電子装置20に接続される。電極11は、好ましくは、生理食塩水を含んだ多孔質ファイバー電極であり、電極上部は導線接続用金属円筒で構成される。
【0038】
頭部装着型センサ10は、固定具13によって複数の電極11が固定される。固定具13は、例えばヘルメットから切り出したブーメラン状プラスティック製の固定具である。頭部装着型センサ10は、被験者により装着された場合に、該被験者の頭部における
図3に示す国際10−20法の電極配置のうちの複数の位置に電極11が配置されるように構成される。説明の便宜上、
図1は3つの電極11が配置されていることを示すが、これは頭部装着型センサ10が複数の電極11を含むことの例示であり、これに限定されない。
【0039】
1つの例では、頭部装着型センサ10は、被験者により装着された場合に、該被験者の国際10−20法におけるF3、F4、Fz、Fp1、Fp2の位置にそれぞれ電極11が配置されるように構成される。ただし、電極11の配置場所は、前頭部表面における位置の1つの例示であって、これに限定されない。
【0040】
図2は、本発明の第1の実施形態による電子装置20のハードウェア構成図である。電子装置20はプロセッサ21、入力装置22、出力装置23、記憶装置24、及び通信装置25を備える。これらの各構成装置はバス16によって接続される。なお、バス16と各構成装置との間には必要に応じてインタフェースが介在しているものとする。電子装置20は、一般的なコンピュータであるが、スマートフォンやタブレット型コンピュータなどとすることもできる。
【0041】
プロセッサ21は、電子装置20全体の動作を制御するものであり、例えばCPUである。なお、プロセッサ21としては、MPU等の電子回路が用いられてもよい。プロセッサ21は、記憶装置24に格納されているプログラムやデータを読み込んで実行することにより、様々な処理を実行する。
【0042】
入力装置12は、電子装置20に対するユーザからの入力を受け付けるユーザインタフェースであり、例えば、タッチパネル、タッチパッド、キーボード、又はマウスである。出力装置13は、ユーザに集中度評価装置1の出力情報を出力又は表示するものであり、例えば、画像を出力するディスプレイである。出力装置13は、プリンタを含むこともできる。
【0043】
記憶装置14は、主記憶装置及び補助記憶装置を含む。主記憶装置は、例えばRAMのような半導体メモリである。RAMは、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、プロセッサ11が情報を処理する際の記憶領域及び作業領域として用いられる。主記憶装置は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であるROMを含んでいてもよい。この場合、ROMはファームウェア等のプログラムを格納する。補助記憶装置は、様々なプログラムや、各プログラムの実行に際してプロセッサ21が使用するデータを格納する。補助記憶装置は、例えばハードディスク装置であるが、情報を格納できるものであればいかなる不揮発性ストレージ又は不揮発性メモリであってもよく、着脱可能なものであっても構わない。補助記憶装置は、例えば、オペレーティングシステム(OS)、ミドルウェア、アプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に伴って参照され得る各種データなどを格納する。1つの例では、それぞれの電極11ごとに取得した脳電位信号の時系列データは、記憶部24に記憶される。
【0044】
通信装置15は、他のコンピュータとの間でデータの授受を行ったり、センサからのデータを受け取ったりするための装置である。本実施形態では、通信装置15は、ケーブルを用いた有線通信を行い、電極11から脳電位信号を受け取る。ただし、通信装置15は、移動体通信や無線LAN等の無線通信を行うこともでき、無線で電極11から脳電位信号を受信するように構成することもできる。
【0045】
変形例では、頭部装着型センサ10には、国際10−20法に基づくヘルメット型電極を用いて、選択的に複数の電極を使用することもできる。
【0046】
他の変形例では、頭部装着型センサ10は帽子装着型であり、
図10にその帽子装着型電極の外観概要図を、
図11に基準電極12としての導電性ゴム電極の概要図を示す。頭部装着型センサ10は、メッシュ状帽子に測定用の電極11が複数取り付けられたものである。電極11はプリアンプ14と接続されたシールドケーブル15と接続され、好ましくは食塩水を含んだ多孔質導電性ゴムが使用される。プリアンプ14は、電子装置20に接続される。基準電極12は、プリアンプ14と電気的に接続された導電性ゴム電極16であり、これによって耳朶接続用クリップ電極は不要となる。ここで、導電性ゴム状の電位均一化と、プリアンプ14からのケーブル接続の際の接触抵抗の低減を図るため、円周状の導電性ゴム電極と帽子の間には金属フィルム17が配置されている。
【0047】
他の変形例では、測定用の複数の電極11及び基準電極12は無線通信機能を有し、同様に無線通信機能を有する電子装置20へ、測定用のそれぞれの電極11と基準電極12から得られる脳電位信号の差分をそれぞれ脳電位信号として、無線で送信する。基準電極12は、測定用のそれぞれの電極11の中央に配置されるのが好適である。また、測定用の複数の電極11及び基準電極12は、脳電位信号をそれぞれ電子装置20へ送信し、電子装置20が測定用の電極11と基準電極12の脳電位信号の差分を計算し、それぞれの脳電位信号の入力としてもよい。
【0048】
なお電極11は、脳電位信号を計測することができるセンサの1つの例示であって、脳電位信号を計測できるものであれば、これに限定されない。
【0049】
図12は本発明の第1の実施形態による集中度評価装置1の機能ブロック図である。集中度評価装置1は、脳電位信号取得部31と、演算部32とを備える。
【0050】
脳電位信号取得部31は、被験者の頭部に取り付けられた電極11を用いて該頭部表面の複数の異なる位置における該被験者の脳電位信号を取得する機能を有する。脳電位信号取得部31は、基準電極の差として各電極11から取得される脳電位信号を時系列データとして取得する。1つの例では、脳電位信号取得部31は、国際10−20法におけるF3、F4、Fz、Fp1、Fp2の位置の頭部表面に取り付けられた電極11から脳電位信号を取得する。
【0051】
演算部32は、取得した脳電位信号から被験者の集中度の評価値を算出する。集中度評価装置1は、算出された集中度の評価値を用いて、被験者の集中度を評価又は判定することが可能となる。
【0052】
演算部32は、脳電位信号取得部31により取得された第1の複数の位置における脳電位信号のそれぞれからβ波帯域の少なくとも一部を含む第1の周波数帯域の時系列データを抽出する。続いて演算部32は、抽出したそれぞれの時系列データから生成された複数の次元の時系列データに対して主成分分析を行って第1主成分の相対寄与率PCAβを算出する。
【0053】
1つの例では、第1の複数の位置は、Fp1、Fp2、F3、及びF4の位置であり、演算部32は、4つの脳電位信号からβ波帯域の一部を含む13〜20Hzの4つの時系列データを抽出する。
【0054】
この場合、演算部32は、4つの時系列データから生成された4次元の時系列データに対して主成分分析を行う。4つの時系列データは、Fp1(t)、Fp2(t)、F3(t)、F4(t)と時間tの関数で示すことができる。演算部32は、4次元の座標空間において、各時間において取得された(Fp1(t)、Fp2(t)、F3(t)、F4(t))に対して主成分分析を行う。例えば、時系列データが、サンプリング周波数fs(Hz)=200Hz、5.12秒で取得される場合、4次元の座標空間における各プロットは、(Fp1(0.005)、Fp2(0.005)、F3(0.005)、F4(0.005))、(Fp1(0.010)、Fp2(0.010)、F3(0.010)、F4(0.010))、(Fp1(0.015)、Fp2(0.015)、F3(0.015)、F4(0.015))、…、(Fp1(5.120)、Fp2(5.120)、F3(5.120)、F4(5.120))の1024点となり、これに対して主成分分析を行う。
【0055】
演算部32は、主成分分析を行うことにより、第1主成分の相対寄与率PCAβ(各主成分の分散の総和に対する第1主成分の分散の割合)を算出する。なお、第1の複数の位置は、被験者の前頭部表面の4つの異なる位置とすることもでき、Fp1、Fp2、F3、及びF4に限定されない。
【0056】
上記のような算出処理とは別の処理として、演算部32は、脳電位信号取得部31により取得された第2の複数の位置における脳電位信号のそれぞれから、脳電位信号ごとにパワースペクトルをそれぞれ算出する。続いて演算部32は、算出したパワースペクトルを用いてθ波帯域の少なくとも一部を含む第2の周波数帯域内のパワー値をそれぞれ算出し、その平均値PowerAveを算出する。
【0057】
1つの例では、第2の複数の位置は、F3、F4、及びFzの位置である。演算部32は、3つの脳電位信号のそれぞれからパワースペクトルをそれぞれ算出し、3つのパワースペクトルそれぞれの3〜7Hz内の3つのパワー値を用いて、パワー平均値PowerAveを算出する。なお、第2の複数の位置は、被験者の前頭部表面の3つの異なる位置とすることもでき、F3、F4、及びFzに限定されない。
【0058】
演算部32は、算出した第1主成分の相対寄与率PCAβ及びパワー平均値PowerAveを用いて、評価値T1を算出する。以下に示す式2は評価値T1の1つの例示である。
(式2)
【0059】
このように本実施形態では、安定的に集中度を評価するために、相対寄与率PCAβとパワー平均値PowerAveとを結合することで、前頭部新皮質の活動に基づいた評価値を定義している。
【0060】
演算部32は、プログラムを電子装置20に実行させることで実現される。例えば電子装置20がコンピュータである場合、アプリケーションプログラムが読み込まれて実行されることにより、演算部202の機能が実現される。
【0061】
図13は、本発明の第1の実施形態の集中度評価装置1の情報処理を示すフロー図である。集中度評価装置1は、Fp1、Fp2、F3、及びF4などの前頭部表面の4つの位置において脳電位信号の時系列データである脳電位データを取得する(S1301)。次に集中度評価装置1は、取得した4つの脳電位データから、例えば13〜20Hzの帯域のデータをそれぞれ抽出するためにフィルタリングを行う(S1302)。次に集中度評価装置1は、抽出した4つの時系列データから生成された4次元の時系列データに対して主成分分析を行うことにより、第1主成分の相対寄与率PCAβを算出する(S1303)。
【0062】
上記処理とは別に、集中度評価装置1は、F3、F4、及びFzなどの前頭部表面の3つの位置において脳電位データを取得する(S1311)。次に集中度評価装置1は、取得した3つの各脳電位データから、それぞれの脳電位データごとにパワースペクトルを算出する(S1312)。次に集中度評価装置1は、3つのパワースペクトルの例えば3〜7Hzの3つのパワー値をそれぞれ算出し、その平均を算出することにより、平均値PowerAveを算出する(S1313)。
【0063】
集中度評価装置1は、上記のとおり算出した第1主成分の相対寄与率PCAβ及びパワー平均値PowerAveを用いて、被験者の集中度の評価値T1を算出する(S1321)。
【0064】
このような構成とすることにより、本実施形態では、集中度評価装置1は、被験者のFmθ波とβ波とを観測することにより、前頭部新皮質の活動に基づいた指標である評価値T1を算出する。後述の実施例で示すように、評価値T1は安静閉眼時等に大きな値とならないため、被験者の集中度をより安定的に適切に評価することが可能となる。
【0065】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態の集中度評価装置1について説明する。第2の実施形態の集中度評価装置1は、第1の実施形態の集中度評価装置1と同様の構成を有し、更に脳深部の活動を捉えるために頭部表面に配置した3つの電極より脳電位信号を取得し、被験者の感情度を算出する。第2の実施形態の集中度評価装置1は、評価値T1と被験者の感情度とを用いて、被験者の集中度を評価する。ここでは、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
第2の実施形態の集中度評価装置1の頭部装着型センサ10は、被験者により装着された場合に、脳深部の活動を捉えるための電極11が前側頭葉部の位置に更に配置されるように構成される。1つの例では、頭部装着型センサ10は、被験者により装着された場合に、該被験者の国際10−20法におけるF3、F4、Fz、Fp1、Fp2、F7、C3の位置にそれぞれ電極11が配置されるように構成される。この場合、脳電位信号取得部31は、被験者のF3、F4、Fz、Fp1、Fp2、F7、C3の位置の頭部表面に取り付けられた電極11から脳電位信号を取得する。ただし、電極11の配置場所は、前頭部表面における位置の1つの例示であって、これに限定されない。
【0067】
第2の実施形態においては、演算部32は、第1の実施形態と同様にして、被験者の評価値T1を算出する。更に、演算部32は、脳電位信号取得部31により取得された3つの異なる位置における脳電位信号のそれぞれから脳深部の活動に起因する特定の周波数帯域のデータをそれぞれ抽出する。次に演算部32は、抽出したそれぞれのデータの位相関係に基づいて、3つの異なる位置において取得した3つの脳電位信号の相関関係を示す相関値Sを算出し、算出した相関値Sの時間的なばらつきに基づいてばらつき指標値SDを算出する。次に演算部32は、算出した相関値Sとばらつき指標値SDを用いて、感情の強さを示す感情指標値Emを算出する。次に演算部32は、算出した評価値T1及び感情指標値Emを用いて、評価値T2を算出する。
【0068】
図14は、本発明の第2の実施形態の集中度評価装置1の情報処理を示すフロー図である。集中度評価装置1は、第1の実施形態の集中度評価装置1と同様の処理を行い、被験者の集中度の評価値T1を算出する(S1321)
【0069】
上記処理とは別に、集中度評価装置1は、F3、F7、及びC3などの前側頭葉に対応する頭部表面の3つの位置において脳電位データを取得する(S1401)。次に集中度評価装置1は、取得した3つの脳電位データから、例えば3〜7Hzのデータをそれぞれ抽出するためにフィルタリングを行う(S1402)。次に集中度評価装置1は、抽出した3つの時系列データから、3つの脳電位信号の相関関係を示す相関値Sを算出し、かつ算出した相関値Sの時間的なばらつきに基づいてばらつき指標値SDを算出することにより、感情の強さを示す感情指標値Emを算出する(S1403)。集中度評価装置1は、上記のとおり算出した評価値T1及び感情指標値Emを用いて、被験者の集中度の評価値T2を算出する(S1411)。以下に、集中度評価装置1によるEmの算出処理について、より詳細に説明する。
【0070】
最初に3重相関値S(相関値S)の算出について説明する。脳電位信号取得部31が頭部表面に取り付けられた3つの電極A、B、Cから取得する3つの脳電位信号の時系列データをVA(t)、VB(t)、VC(t)とする。演算部32は、デジタルフィルタ等のバンドパスフィルタを用いて、取得した3つの時系列データから脳深部の活動に起因する特定の周波数帯域(例えば3〜7Hz)の時系列データを抽出する。
【0071】
演算部32(集中度評価装置1)は、抽出した時系列データに対して、
図15のフローチャートに示す情報処理を実行する。
図15は、演算部32が3重相関値Sを算出する情報処理を示し、i秒からi+1秒における3重相関値Si(i=1、2、…、T)を算出する処理を示す。なお本フローチャートは、趣旨を逸脱しない範囲において変更することができる。
【0072】
ステップ1501において3つの信号が入力されると、ステップ1502において、それぞれの時系列データごとに標準偏差(σ
A、σ
B、σ
C)で割って規格化(EVA(t) =VA(t)/σ
A、EVB(t) =VB(t)/σ
B、EVC(t) =VC(t)/σ
C)する。この規格化処理は1秒ごとに行うのが好ましいが、これに限定されない。また上記3つの信号は、電極Aに対し、電極Bはτ1、電極Cはτ2の時間のずれを有している。なお前述の周波数抽出処理は、規格化処理後に行われてもよい。また規格化処理の前には、ノイズ処理を行うのが好ましい。ノイズ処理は、例えば、1)±100μV以上のセグメントを除く、2)フラットな電位(25msec以上一定の電位だった場合)を除く、3)±1μV以内の電位が1秒以上続く場合は除く、という処理から構成される。
【0073】
続いてステップ1503において、3つの信号の符号がすべて正(EVA(t)>0、EVB(t-τ1)>0、EVC(t-τ2)>0)、又はすべて負(EVA(t)<0、EVB(t-τ1)<0、EVC(t-τ2)<0)の信号のみを計算対象とする処理をする。
【0074】
ステップ1504において、時間ずれのある3つの電位信号の積を加算することで、3重相関値(3重相関値の1要素)を算出する。3重相関値の算出は、tがt=i+1秒となるまでΔt秒ずつずらして行う(S1506,S1507)。例えば、時系列データのサンプリング周波数をfs(Hz)とすると、fs=200Hzの場合はΔt=1/fs=0.005秒ずつずらして、3つの電位信号の積を算出する。本フローチャートにおいては3重相関値を算出するとともに3つの信号が正又は負になった時の回数Nを求め(S1505)、最後に割る(S1508)。
【0075】
ステップ1503〜ステップ1507では、3つの信号の符号がすべて同符号である場合のtについて、以下に示す式3を計算することにより、3重相関値Siを算出する。
(式3)
(i=1、2、…、T、τ1=Δt、2Δt、…、1(秒)、τ2=Δt、2Δt、…、1(秒))
【0076】
このようにして、1秒ごとにSiを全データT秒まで算出する(S
1、S
2、・・・、S
T)。T(秒)は好ましくは10(秒)である。上記のとおり、3重相関値は、全データ(T秒)について一度に算出されるのではなく、所定時間ごとに、例えば
図15に示すように1秒ごとに算出される。最終的に算出される3重相関値Sは、T個の3重相関値Siの平均値である。
【0077】
時間ずれτ1、τ2についても、Δt秒ずつずらして3重相関値Sを算出する。τ1及びτ2の取りうる値はΔtの整数倍に等しい1秒以下の時間であるが、これらの値の大きさの最大値は1秒に限定されない。なお3重相関値は、3つの信号の符号判定を行わずに、式3によって算出することもできる。
【0078】
続いてばらつき指標値SDの算出について説明する。演算部32は、遅延時間τ1、τ2をそれぞれ、Δt秒、2Δt秒、…、1秒ずつずらして算出された3重相関値Sを、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットする機能を有する。これにより、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットされた3重相関値分布の疑似3次元表示をすることができる。
【0079】
図16は、一の被験者(被験者X)から取得される脳電位信号に基づく3重相関値分布の疑似3次元表示である。この疑似3次元表示は、相関を有しないデータの影響を排除するため、予め定められたtの値、例えばt=t1、においてEVA(t1)、EVB(t1−τ1)及びEVC(t1−τ2)のすべてが同符号であったSi(τ1,τ2)のみをプロットしたものである。プロットするSiをこのように限定することにより、ノイズを除去し、より良い精度で3重相関値分布の疑似3次元表示を示すことができる。
【0080】
図17は、
図16と同様にして、他の一の被験者(被験者Y)から取得される脳電位信号に基づく3重相関値分布の疑似3次元表示である。
図16の特徴空間内の3重相関分布は滑らかであるのに対して、
図17の特徴空間内の3重相関分布は細かいピークが複雑に分布する場合が多いことが確認できる。
【0081】
演算部32は、上記の3重相関値分布の疑似3次元表示を用いて、ばらつき指標値SDを算出する。
図16及び
図17に示すように、2つの遅延時間パラメータ空間内で、被験者Xのデータでは樹木状の分布が規則的に並ぶのに対し、被験者Yのデータでは樹木状の分布の不規則性が大きい。この差を定量的に表現するために、
図18に示すように、樹木の列がτ1、τ2軸に平行となるように、座標軸を回転する。
図18は、
図16に示す3次元表示を上から見た図で、3つの波形が同符号をとる領域を白で表示し、3信号のどれか1つ符号が異なる領域を黒で表す。このような表示をすると、被験者Xの場合には規則的な格子縞となるのに対して、被験者Yの場合には、
図19に示すように、格子縞が乱れることが確認できる。この乱れを定量化した指標がばらつき指標値SDである。
【0082】
図18及び
図19に示すように白い四角形の領域は、隣接する白い四角形の領域と、縦横方向にそれぞれ間隔を有する。その間隔を
図20に示すように、dxi(i=1,2、…、m)、dyj(j=1,2、…、n)とする。このdxiとdyjがτ1方向とτ2方向において、それぞれ白い四角形の縦横が均等に並んでいるか、又は白い四角形が乱れて並んでいるかを判断することで乱れ具合を定量化することができる。
【0083】
集中度評価装置1は、式4、式5に示すように、m個のdxiの標準偏差Std_dxとn個のdyjの標準偏差Std_dyを算出し、式6に示すように2つの標準偏差の平均値を求めることにより、ばらつき指標値SDを算出する。
(式4)
(式5)
(式6)
【0084】
3重相関値Sは、3つの脳電位信号の相関を示すものであり、ばらつき指標値SDは、乱れ具合やばらつき具合を示すものである。演算部32は、算出した3重相関値S及びばらつき指標値SDを用いて、感情の強さを示す感情指標値Emを算出する。以下に示す式7は感情指標値Emの1つの例示である。
(式7)
【0085】
演算部32は、算出した評価値T1及び感情指標値Emを用いて、評価値T2を算出する。以下に示す式8は評価値T2の1つの例示である。
(式8)
【0086】
このような構成とすることにより、本実施形態では、集中度評価装置1は、評価値T1に、更に脳深部の活動に基づいて算出された感情指標値Emを加えた、評価値T2を算出する。評価値T1を用いて車の運転等の感情の動きを伴わない場合の集中度の評価を行う第1の実施形態の集中度評価装置1に対して、第2の実施形態の集中度評価装置1は、脳深部の活動に基づいた指標値を更に用いているため、映画鑑賞のように感情移入した場合の集中度の評価を行うことが可能となる。このように、評価値T2を用いることにより、どれだけ関心を持って注目しているか等を評価することができることから、映像コンテンツの関心度や教育教材の評価に適用することもまた可能となる。
【0087】
[実施例]
本発明の実施形態による集中度評価装置1を用いて集中度の評価を行った実験について説明する。本実験において、第1主成分の相対寄与率PCAβは、Fp1、Fp2、F3、F4に配置された4つの電極11から抽出されたβ波(13Hz〜20Hz)の脳電位データに対して主成分分析を行うことにより算出した。また本実験において、パワー平均値PowerAveは、F3、F4、Fzに配置された3つの電極11から取得された脳電位データそれぞれから算出された3つのパワースペクトルの3〜7Hz内の3つのパワー値を平均することにより算出した。また本実験において、評価値T1は、式2により算出した。また本実験において、感情指標値Emは、F3、F7、C3に配置された3つの電極11から抽出された3〜7Hzの脳電位データに基づいて算出された相関値S及びばらつき指標値SDを用いて算出した。また本実験において、評価値T2は、式8により算出した。
【0088】
[実施例1]
実施例1では、第1の実施形態の集中度評価装置1を用いて、集中度を評価できることを説明する。本実施例においては、被験者Aと被験者Bの2名に、(1)安静閉眼(約2分)、(2)安静開眼(約3分)、(3)雑誌を100%集中で読む(約3分)、(4)雑誌を60%集中で読む(約3分)、(5)雑誌を30%集中で読む(約3分)、(6)英語の試験問題を解く、の状態になってもらった。それぞれの状態において、第1の実施形態の集中度評価装置1を用いて、脳電位信号を取得した。
【0089】
具体的には、各状態における脳電位信号の測定は、(1)安静閉眼は、静かに目を瞑った状態で測定し、(2)安静開眼は、目を開けた安静な状態で測定した。(3)雑誌を100%集中で読むは、1文字1文字真剣に読んでいるときに測定し、(4)雑誌を60%の集中で読むは、見出しを中心に読んでいるときに測定し、(5)雑誌を30%の集中で読むは、斜め読みをしているときに測定した。(6)英語の試験問題を解くは、英語のヒアリング試験を聞いて、口頭回答しているときに測定した。このように、状態(1)〜(6)は、感情の動きを伴わないと考えられる状態又はタスクである。
【0090】
図21は、各状態における各被験者の相対寄与率PCAβを示す図である。被験者2名とも雑誌の読み方の集中が100%、60%、30%と下がるにつれてPCAβも下がっており、英語試験のPCAβは安静開眼時よりも高くなっていることが図から確認できる。しかし、安静閉眼時のPCAβが一番大きいことが図から確認できる。
【0091】
図22は、各状態における各被験者のパワー平均値PowerAveを示す図である。被験者2名とも、安静閉眼時に比べ、雑誌読んでいるときと英語の試験問題を解いているときのPowerAveが大きくなっていることが図から確認できる。なお、注意して凝視した際にもFmθの脳電位が大きくなる傾向があるため、被験者Aの安静開眼時のPowerAveが大きくなっているのは、安静開眼時にどこか1点を凝視したことに起因するものと考えられる。
【0092】
図23は、各状態における各被験者の評価値T1を示す図である。被験者2名とも雑誌の読み方の集中が100%、60%、30%と下がるにつれてT1も下がっており、英語試験のT1も高いことが図から確認できる。また、安静閉眼時は静かに目を瞑っているだけのタスクであり、この集中度が最も小さくなっていることが図から確認できる。したがって、評価値T1を用いて、個人ごとに安静閉眼時からの変化量でタスクごとの集中度のレベルを評価することが可能であることが理解される。
【0093】
[実施例2]
実施例2では、感情の動きを伴う集中の集中度の評価にあたって、第2の実施形態の集中度評価装置1が有効であることを説明する。本実施例においては、ある被験者に、(1)算数理科問題を解く(約30秒)、(2)道徳問題を解く(約1分)、(3)面白動画を視聴する(約70秒)、(4)感動CMを視聴する(約3分)、の状態になってもらった。それぞれの状態において、第1の実施形態の集中度評価装置2を用いて、脳電位信号を取得した。
【0094】
具体的には、各状態における脳電位信号の測定は、(1)算数理科問題を解くは、算数理科知識を問う問題を解いている状態で測定し、(2)道徳問題を解くは、困難な問題にぶつかったときの対処法を考えている状態で測定した。(3)面白動画を視聴するは、赤ちゃんがコミカルな動きをして笑いを誘う動画を視聴している状態で測定し、(4)感動CMを視聴するは、感動する動画を視聴している状態で測定した。このように、状態(1)と(2)は、感情の動きを伴わないタスクにおける集中度の測定であり、状態(3)と(4)は、感情の動きを伴うタスクにおける集中度の測定である。なお、(3)、(4)の動画視聴については、実施例3においても他の被験者に視聴させているが、(3)の面白動画は、どの被験者も笑って見ていた動画であり、(4)の感動CMは、涙する被験者も多数おり、被験者の大半が感動したと答える動画である。
【0095】
図24は、各状態における被験者の評価値T1と感情指標値Emを示す図である。感情の動きを伴うタスク時の状態(3)と(4)は、T1が比較的小さくEmが比較的大きく、感情の動きを伴わないタスク時の状態(1)と(2)は、T1が比較的大きくEmが比較的小さいことが図から確認できる。このように、両者は異なる傾向を示す。したがって、感情の動きを伴う場合の集中度の評価にあたっては、Emを考慮した評価値T2を用いた方が適切に評価できる可能性が高いことが分かる。
【0096】
[実施例3]
実施例3では、第2の実施形態の集中度評価装置1を用いて、感情の動きを伴う集中の集中度の評価ができることを説明する。本実施例においては、被験者13名に(1)安静閉眼(約3分)、(2)安静開眼(約2分)、(3)面白動画を視聴する(約70秒)、(4)嫌悪動画を視聴する(約50秒)、(5)感動CMを視聴する(約3分)、の状態になってもらった。それぞれの状態において、第2の実施形態の集中度評価装置1を用いて、脳電位信号を取得した。なお被験者13名は、男性7名、女性6名であり、全員右利きである。
【0097】
具体的には、(4)嫌悪動画を視聴するにおける脳電位信号の測定は、蛇がカエルを丸飲みする動画を視聴している状態で測定した。
【0098】
図25は、各状態における各被験者の評価値T1を示す図であり、
図26は、各状態における各被験者の感情指標値Emを示す図であり、
図27は、各状態における各被験者の評価値T2を示す図である。T1、Em、及びT2は被験者13名の平均値である。状態(3)〜(5)において感情指標値Emが大きいことが
図26から確認できる。また状態(3)〜(5)において、状態(1)、(2)と比較して、評価値T2が大きいことが
図27から確認できる。なお状態(4)については、見ていて気持ち悪い動画のため、評価値T2が最も小さいものとなっていることが分かる。
【0099】
したがって、評価値T2を用いて、感情の動きを伴うタスクごとの集中度のレベルを、個人ごとに安静閉眼時からの変化量で評価することが可能であることが理解される。
【0100】
他の実施形態では、上記で説明した本発明の実施形態の機能ブロック図などに示す情報処理を実現する方法やプログラムとすることができるし、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とすることもできる。
【0101】
以上に説明してきた各実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各実施例は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて本発明の任意の実施形態に適用することができる。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。